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  • 特開-筒型リニアモータ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023069885
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】筒型リニアモータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 41/03 20060101AFI20230511BHJP
【FI】
H02K41/03 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021182066
(22)【出願日】2021-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 浩介
(72)【発明者】
【氏名】袴田 眞一郎
(72)【発明者】
【氏名】芝原 大智
【テーマコード(参考)】
5H641
【Fターム(参考)】
5H641BB06
5H641BB14
5H641GG02
5H641GG04
5H641GG08
5H641HH03
5H641HH08
5H641HH10
5H641JA02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】コアに寸法誤差があってもコギング推力を低減可能な筒型リニアモータを提供する。
【解決手段】筒型リニアモータ1は、界磁Fと、筒状であって界磁Fに対して軸方向へ移動可能に配置されて複数のティース3bを有して軸方向に間隔をあけて並べて配置される複数のコア3,3と、コアのティース3b,3b間のスロット3cに装着される巻線4とを具備する電機子2と、コア3,3を1つずつ保持する複数のホルダ21,22とを備え、ホルダ21,22は、コア3,3より軸方向長さが長いコア装着部21a,22aと、コア装着部21a,22aの一端側に設けられる対向部21b,22bと、ホルダ21,22同士を連結する連結部21c,22dとを有し、全てのコア21,22において、コア装着部21a,22aの軸方向長さL3,L4が等しく、対向部21b,22bの軸方向長さLF1,LF2が等しい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
界磁と、
筒状であって前記界磁に対して軸方向へ移動可能に配置されて界磁側の周囲に軸方向に並べて設けられる複数のティースを有して軸方向に間隔をあけて並べて配置される複数のコアと、前記コアの前記ティース間のスロットに装着される巻線とを具備する電機子と、
前記コアを1つずつ保持するとともに前記コアと同数だけ設けられて互いに軸方向に連結される複数のホルダとを備え、
前記ホルダは、それぞれ、前記コアが装着されるとともに前記コアよりも軸方向長さが長いコア装着部と、前記コア装着部の一端側に設けられて前記コアの一端側に対向する対向部と、前記ホルダ同士を連結する連結部とを有し、
全ての前記ホルダにおいて、前記コア装着部の軸方向長さが等しく、前記対向部の軸方向長さが等しい
ことを特徴とする筒型リニアモータ。
【請求項2】
前記電機子の軸方向の一端の位置を基準位置とし、前記コアの軸方向の設計長さと所定長さとを加算した基準長さをLとし、前記電機子の軸方向で一端側から数えた前記コアの順番をN(ただし、Nは2以上の整数)とすると、前記電機子の軸方向で一端側からN番目のコアは、前記基準位置から(N-1)×Lの距離に配置される
ことを特徴とする請求項1に記載の筒型リニアモータ。
【請求項3】
前記コア装着部と前記対向部の合計軸方向長さは、前記コアの軸方向の設計長さと所定長さとを加算した基準長さに等しい
ことを特徴する請求項1に記載の筒型リニアモータ。
【請求項4】
前記所定長さは、前記コアにおけるスロットピッチの整数倍である
ことを特徴とする請求項2または3に記載の筒型リニアモータ。
【請求項5】
隣り合うホルダの一方の前記対向部と、隣り合うホルダの他方の前記コア装着部とが当接している
ことを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の筒型リニアモータ。
【請求項6】
前記連結部は、
前記コア装着部および前記対向部のいずれか一方に設けられる螺子軸と、
前記コア装着部および前記対向部のいずれか他方に設けられて前記螺子軸が螺合される螺子孔とを有する
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の筒型リニアモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筒型リニアモータに関する。
【背景技術】
【0002】
筒型リニアモータは、たとえば、筒状の界磁と、界磁内に軸方向へ移動可能に挿入された電機子とを備え、電機子は、環状であって外周に複数の環状のティースを備えた複数のコアと、ティース間のスロットに装着される巻線とを備えている。このように構成された筒型リニアモータでは、電機子の巻線への通電によって界磁を電機子に対して軸方向へ駆動できる。
【0003】
筒型リニアモータでは、界磁の駆動方向が軸方向であるために電機子におけるコアが軸方向において端部を持っており、コアの端効果によるコギング推力が発生してしまう。
【0004】
このようなコアの端効果によるコギング推力を低減するために、軸方向でコア間に磁極ピッチの2分の1の長さの間隔を設けて電機子を構成した筒型リニアモータが提案されている。このように構成された筒型リニアモータでは、一方のコアの端効果によるコギング推力を他方のコアの端効果によるコギング推力で打ち消すようにして、全体としてコギング推力を低減している(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-178955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された筒型リニアモータでは、コア間の間隔を磁極ピッチの2分の1の長さにしてコアを軸方向に配置することで、一方のコアのコギング推力を他方のコアのコギング推力で打ち消すようにしているものの、コアに寸法誤差があると、電機子全体でコアの寸法誤差が積み重なって各コアが適切な位置に配置されなくなり、コギング推力の低減効果が減殺してしまう問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、コアに寸法誤差があってもコギング推力を低減可能な筒型リニアモータの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明の筒型リニアモータは、界磁と、筒状であって界磁に対して軸方向へ移動可能に配置されて界磁側の周囲に軸方向に並べて設けられる複数のティースを有して軸方向に間隔をあけて並べて配置される複数のコアと、コアのティース間のスロットに装着される巻線とを具備する電機子と、コアを1つずつ保持するとともにコアと同数だけ設けられて互いに軸方向に連結される複数のホルダとを備え、ホルダは、それぞれ、コアが装着されるとともにコアよりも軸方向長さが長いコア装着部と、コア装着部の一端側に設けられてコアの一端側に対向する対向部と、ホルダ同士を連結する連結部とを有し、全てのホルダにおいて、コア装着部の軸方向長さが等しく、対向部の軸方向長さが等しいことを特徴とする。
【0009】
このように構成された筒型リニアモータによれば、コアが対応するホルダにおけるコアの軸方向長さよりも長いコア装着部に装着されており、ホルダが互いに軸方向に連結されるので、コアが互いの寸法に影響を受けるなく、ホルダによって軸方向に位置決めされ、コアの軸方向の長さに寸法誤差があっても、ホルダのみの寸法を正しく管理することによって、コアを適切な位置に位置決めできる。
【0010】
また、電機子の軸方向の一端の位置を基準位置とし、コアの軸方向の設計長さと所定長さとを加算した基準長さをLとし、電機子の軸方向で一端側から数えたコアの順番をN(ただし、Nは2以上の整数)とすると、電機子の軸方向で一端側からN番目のコアは、前記基準位置から(N-1)×Lの距離に配置されてもよい。
【0011】
このように構成された筒型リニアモータによれば、電機子に設置される2番目以降のコアの一端は、1番目のコアの反コア側端の一端を基準とした基準位置から必ず(N-1)×Lの距離に配置されて、全部のコアの寸法誤差が電機子の軸方向で重畳されないので、各コアの界磁に対する配置のずれを各コアの寸法誤差内に収めることができる。
【0012】
さらに、筒型リニアモータにおけるホルダは、コア装着部と対向部の合計軸方向長さがコアの軸方向の設計長さと所定長さとを加算した基準長さに等しくてもよい。このように構成された筒型リニアモータによれば、各ホルダに対応するコアを装着後、ホルダ同士を連結するだけで、電機子に設置される2番目以降のコアの一端を1番目のコアの反コア側端の一端を基準とした基準位置から必ず(N-1)×Lの距離に配置できる。
【0013】
また、所定長さをスロットピッチの整数倍の長さに設定してもよい。このように構成された筒型リニアモータによれば、推力低下を招くことが無く、各コアの巻線を単一の駆動回路で駆動できる。
【0014】
さらに、筒型リニアモータは、隣り合うホルダの一方の対向部と、隣り合うホルダの他方のコア装着部とが当接してもよい。
【0015】
このように構成された筒型リニアモータによれば、ホルダを連結するだけで、コアを自動的に適正な位置に位置決めできる。
【0016】
また、筒型リニアモータは、連結部がコア装着部および対向部のいずれか一方に設けられる螺子軸と、コア装着部および対向部のいずれか他方に設けられて螺子軸が螺合される螺子孔とを有してもよい。このように構成された筒型リニアモータによれば、コアを対応するホルダのコア装着部に装着した後、螺子孔に螺子軸を螺合させてホルダを連結するだけで、筒型リニアモータを容易に製造できる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の筒型リニアモータによれば、コアに寸法誤差があってもコギング推力を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】一実施の形態における筒型リニアモータの縦断面図である。
図2】一実施の形態の一変形例における筒型リニアモータの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。一実施の形態における筒型リニアモータ1は、図1に示すように、界磁Fと、筒状であって界磁Fに対して軸方向へ移動可能に配置されて界磁側の周囲に軸方向に並べて設けられる複数のティース3bを有して軸方向に間隔をあけて並べて配置される2つのコア3,3と、コア3,3のティース3b,3b間のスロット3cに装着される巻線4とを具備する電機子2と、コア3,3を1つずつ保持するとともにコア3,3と同数だけ設けられて互いに軸方向に連結される2つのホルダ21,22とを備えて構成されている。なお、コア3,3の符号の添え数字は、電機子2の軸方向の図1中右端側となる一端2a側から数えた場合の順番を示しており、コア3は、電機子2の一端2a側から数えて1番目のコアを示しており、コア3は、電機子2の一端2a側から数えて2番目のコアを示している。
【0020】
以下、筒型リニアモータ1の各部について詳細に説明する。電機子2は、コア3,3と、コア3,3のティース3b,3b間のスロット3cに装着された巻線4とを備えており、非磁性体のロッド11の外周に装着されている。本実施の形態の筒型リニアモータ1では、界磁Fが筒状とされていて、電機子2は界磁F内に軸方向へ移動可能に挿入されて界磁Fに対して軸方向に相対移動でき、本実施の形態では固定子とされている。
【0021】
コア3,3は、ともに同形状とされており、円筒状のコア本体3aと、環状であってコア本体3aの外周に設けた複数のティース3bとを備えて構成されてロッド11の外周に間隔をあけて軸方向に並べて装着されている。
【0022】
コア本体3aは、前述の通り円筒状であって、その横断面積は、コア3の軸線を中心とする円筒でティース3bの内周から外周までのどこを切っても、ティース3bを前記円筒で切断した際にできる断面の面積以上となるように肉厚が確保されている。
【0023】
本実施の形態では、図1に示すように、コア3の外周に10個のティース3bが、軸方向に等間隔に並べて設けられており、ティース3b,3b間にそれぞれ巻線4が装着される空隙でなるスロット3cが形成されている。なお、本実施の形態では、ティース3bは、断面形状を台形にして外周における幅よりも内周における幅を大きくして内周側の磁路断面積を大きく確保しているが、内周から外周まで軸方向長さ(幅)が等しい矩形の断面形状をしていてもよい。
【0024】
また、本実施の形態では、図1中で隣り合うティース3b,3b同士の間には、空隙でなるスロット3cが合計で9個設けられている。そして、このスロット3cには、巻線4が巻き回されて装着されている。巻線4は、U相、V相およびW相の三相巻線とされている。また、図1中右側のコア3の9個のスロット3cには、図1中左側から順に、W相、W相、W相とU相、U相、U相、U相とV相、V相、V相、V相とW相の巻線4が装着されている。図1中左側のコア3の9個のスロット3cには、図1中左側からW相とU相、U相、U相、U相とV相、V相、V相、V相とW相、W相、W相の巻線4が装着されている。また、コア3,3は、具体的に図示はしないが、それぞれティース3bを1つずつ含むように軸方向で分割された10個のピースを軸方向に積層しつつ接着することで製造されている。
【0025】
そして、このように構成されたコア3,3は、出力軸である非磁性体で形成されたロッド11の外周に装着されている。ロッド11は、それぞれコア3,3を1つずつ保持するとともにコア3,3と同数だけ設けられて筒型リニアモータ1の軸方向に連結されるホルダ21,22と、図1中左方のホルダ22に連結される連結ロッド23とを備えている。
【0026】
電機子2の軸方向の一端2a側となる図1中で右端側から数えて1番目のホルダ21は、非磁性体で形成されており、外周にコア3が装着されるコア装着部21aと、コア装着部21aの図1中右端側となる一端側に設けられてコア3の右端側となる反コア側の一端に対向する円盤状の対向部21bと、コア装着軸21aの左端側となる他端側から開口する螺子孔21cとを備えている。
【0027】
コア装着部21aは、円柱状であって外径がコア3の内周に嵌合可能な径に設定されていて、左端となる他端の外周に螺子部21a1を備えている。また、コア装着軸21aの左端となる他端から螺子孔21cが開口している。対向部21bは、コア装着部21aの一端に一体に設けられている。対向部21bは、円盤状であって外周に後述する界磁Fにおけるインナーチューブ9の内周に摺接するウェアリング21b1を備えている。また、コア装着部21aの長さL3は、基準長さLから対向部21bの軸方向長さLF1を差し引いた長さに設定されており、コア装着部21aに装着されるコア3の軸方向の長さより長い。
【0028】
基準長さLは、コア3,3の設計上の軸方向長さである設計長さL1とコア3におけるスロットピッチPの2倍の長さに設定される所定長さL2とを加算した長さとされている。換言すれば、ホルダ21の軸方向において、コア装着部21aの反対向部側端から対向部21bの反コア装着側端までの距離L5は、基準長さLに等しい。なお、本実施の形態の筒型リニアモータ1では、各コア3のスロット3cに装着される巻線4の相が前述のように設定されているため、所定長さL2をスロットピッチPの2倍に設定しているが、巻線4の相の配置により所定長さL2をスロットピッチPの整数倍に設定することも可能である。
【0029】
そして、図1中の電機子2の一端側となる図1中右端側から数えて1番目のコア3は、ホルダ21に保持される。具体的には、コア3内にホルダ21のコア装着部21aを挿入した後、コア装着部21aの螺子部21a1に非磁性体で形成されたナット24を螺着する。すると、コア3は、対向部21bとナット24とで挟持されてコア装着部21aの外周に固定されてホルダ21に保持される。なお、螺子部21a1に接着剤を塗布してナット24の弛みを防止してもよいし、ナット24の他にナット24を締め付ける別のナットを螺子部21a1に螺着してナット24の弛みを防止してもよいし、他の構造を用いてナット24の弛みを防止してもよい。
【0030】
電機子2の一端側となる図1中で右端側から数えて2番目のホルダ22は、非磁性体で形成されており、外周に電機子2の一端側から数えて2番目のコア3が装着されるコア装着部22aと、コア装着部22aの図1中右端側となる一端側に設けられてコア3の右端側となる一端側に対向する対向部22bと、コア装着部22aの左端側となる他端側から開口する螺子孔22cと、対向部22bの右端側となる一端側から突出して隣接するホルダ21の螺子孔21cに螺合される螺子軸22dを備えている。
【0031】
コア装着部22aは、円柱状であって外径がコア3の内周に嵌合可能な径に設定されていて、左端となる他端の外周に螺子部22a1を備えている。また、コア装着部22aの左端となる他端から螺子孔22cが開口している。対向部22bは、コア装着部22aの一端に一体に設けられている。対向部22bは、外周に後述するインナーチューブ9の内周に摺接するウェアリング22b1を備えている。
【0032】
そして、図1中で電機子2の一端側となる図1中右端側から数えて2番目のコア3は、ホルダ22に保持される。具体的には、コア3内にホルダ22のコア装着部22aを挿入した後、コア装着部22aの螺子部22a1に非磁性体で形成されたナット25を螺着する。すると、コア3は、対向部22bとナット25とで挟持されてコア装着部22aの外周に固定されてホルダ22に保持される。なお、螺子部22a1に接着剤を塗布してナット25の弛みを防止してもよいし、ナット25の他にナット25を締め付ける別のナットを螺子部22a1に螺着してナット25の弛みを防止してもよいし、他の構造を用いてナット25の弛みを防止してもよい。
【0033】
なお、ホルダ22の対向部22bの軸方向長さLF2はホルダ21の対向部21bの軸方向長さLF1に等しく、ホルダ22のコア装着部22aの長さL4は、基準長さLから対向部22bの軸方向長さLF2を差し引いた長さに設定されており、コア装着部22aに装着されるコア3の軸方向の長さより長い。よって、ホルダ22のコア装着部22aの長さL4は、ホルダ21のコア装着部21aの長さL3と等しい。つまり、全てのホルダ21,22において、コア装着部21a,22aの軸方向長さL3,L4が等しく、対向部21b,22bの軸方向長さLF1,LF2が等しい。よって、ホルダ22の軸方向において、コア装着部22aの反対向部側端から対向部22bの反コア装着側端までの距離L6は、基準長さLに等しい。また、ホルダ21とホルダ22とは、ホルダ22が螺子軸22dを有しているのに対して、ホルダ21は螺子軸を有していない点でのみ異なっており、その他の構造、形状、寸法を同じにしている。なお、ホルダ21,22においてコア装着部21a,22aの図1中右端から右方側は、全て対向部21b,22bであり、ホルダ21,22における対向部21b,22bの形状は、円盤状となっているが、コア3,3に当接してコア3,3を軸方向で位置決めできる限りにおいて円盤状には限定されず、任意に設計変更可能であって、たとえば、コア3,3が当接する部分のみ大径でそれ以外の部分の径が小径となるような形状も採用できる。また、対向部21b,22bの形状は、軸方向の長さが同一であれば、各ホルダ21,22間で異なった形状とされてもよい。
【0034】
そして、2番目のコア3が装着された2番目のホルダ22は、螺子軸22dを図1中で右方に配置される1番目のコア3が装着された1番目のホルダ21の螺子孔21cに螺合して、1番目のホルダ21に連結される。本実施の形態では、ホルダ21,22同士を連結する連結部は、ホルダ21における螺子孔21cとホルダ22における螺子軸22dとで構成されている。このように、ホルダ22の螺子軸22dをホルダ22に隣接するホルダ21の螺子孔21cに螺合して、ホルダ22の対向部22bの図1中右端となる一端をホルダ21のコア装着部21aの図1中左端となる他端に当接させる。前述した通り、コア装着部21aの軸方向長さL3は、基準長さLから対向部21bの軸方向長さLF1を差し引いた長さとなっており、対向部21bの軸方向長さLF1と対向部22bの軸方向長さLF2がともに等しい。また、ホルダ21,22同士を連結する連結部を除いたコア装着部21a,22aと対向部21b,22bの合計軸方向長さL5,L6、つまり、ホルダ21とホルダ22のコア装着部21a,22aの図1中左端から対向部21b,22bの図1中右端までの軸方向長さは、コア3,3の軸方向の設計長さと所定長さとを加算した基準長さLに等しい。
【0035】
前述のように、ホルダ21とホルダ22とを互いに軸方向に連結してホルダ22の対向部22bの一端とホルダ21のコア装着部21aの他端とを当接させると、ホルダ21の対向部21bの図1中左端となる他端からホルダ22の対向部22bの図1中左端となる他端までの距離は必ず基準長さLとなる。そして、1番目のホルダ21と2番目のホルダ22とが連結されると、軸方向で1番目のコア3と2番目のコア3との間に所定長さL2の隙間が形成される。所定長さL2は、前述した通り、本実施の形態の筒型リニアモータ1では、コア3,3におけるスロットピッチPの2倍の長さ2Pとされている。
【0036】
このようにロッド11を構成するホルダ21,22にそれぞれ対応するコア3,3を取り付けると、各コア3がそれぞれ対向部21b,22bとナット24,25とで挟持されてホルダ21,22に保持されるので、電機子2の軸方向で一端2aを基準位置として、当該一端2a側から数えて2番目に配置されるコア3図1中右端となる一端までの距離は、基準長さLに等しくなる。そして、コア3,3の実際の軸方向の長さが設計長さL1に等しい場合、1番目のコア3と2番目のコア3との間の距離はスロットピッチPの2倍の長さ2Pに設定される所定長さL2に等しくなる。
【0037】
なお、コア3が3つ以上設けられる場合、ホルダ22の図1中左端に、ホルダ22をコア3と同数となるように追加すればよい。つまり、電機子2に設置されるコア3がN個(ただし、Nは2以上の整数)である場合、電機子2の軸方向の一端2a側から数えてN番目のホルダ22にN番目のコア3を保持させるようにして、コア3を保持したホルダ21にコア3を保持したホルダ22を順番に連結すればよい。このようにコア3,3,・・・,3を保持したホルダ21,22を連結すると、コア3のうち電機子2の軸方向の一端2aの位置を基準位置とし、コア3,3の軸方向の設計長さL1と所定長さL2とを加算した基準長さをLとし、電機子2の軸方向で一端2a側から数えたコア3の順番をN(ただし、Nは2以上の整数)とすると、電機子2の軸方向で一端2a側からN番目のコア3は、基準位置から(N-1)×Lの距離に配置される。
【0038】
つづいて、連結ロッド23は、図1中右端となる一端に螺子軸23aを備えており、ホルダ22の螺子孔22cに螺子軸23aを螺合することでホルダ22に連結される。このように、ロッド11は、本実施の形態の筒型リニアモータ1では、2つのホルダ21,22と連結ロッド23とで構成されている。
【0039】
また、連結ロッド23の外周には、外周にウェアリング12aを備えて非磁性体で形成されたスライダ12が装着されている。そして、電機子2を保持したロッド11は、界磁F内に軸方向移動自在に挿入される。ロッド11の図1中左端は、界磁Fの外周を覆うバレル7の図1中左端に装着された環状のヘッドキャップ15内を通じてバレル7から外方へ突出している。また、ロッド11の図1中左端側となる基端側は、筒型リニアモータ1が設置される機器等への取り付けを可能とするブラケット16が取り付けられている。
【0040】
なお、各コア3におけるスロット3cに装着された同相の巻線4同士は、図示しない渡り線によって直列に接続される。また、直列接続された各相の他端の巻線4から引き出されたリード線17は、ロッド11とロッド11の外周を覆う筒状のカバー14との間の環状隙間内を通じてロッド11の図1中左端となる基端側から筒型リニアモータ1の外方へと引き出されて図示しないインバータ等の駆動回路を介して電源に接続される。そして、本実施の形態の筒型リニアモータ1では、電機子2は、固定子として機能する。
【0041】
他方、界磁Fは、本実施の形態では、複数の環状の主磁極の永久磁石6aと複数の環状の副磁極の永久磁石6bとを軸方向に交互に積層して構成した磁石列6と、磁石列6の外周に嵌合される円筒状であって磁性体で形成されるバックヨーク8とを備えて構成されている。
【0042】
界磁Fは、円筒状の非磁性体で形成されるバレル7と、バレル7内に挿入される円筒状の非磁性体のインナーチューブ9との間に形成された環状隙間内に収容されており、本実施の形態では、可動子として機能する。よって、本実施の形態の筒型リニアモータ1の可動子は、界磁F、バレル7およびインナーチューブ9を備えて構成されている。
【0043】
なお、図1中で主磁極の永久磁石6aと副磁極の永久磁石6bに記載されている三角の印は、着磁方向を示しており、主磁極の永久磁石6aの着磁方向は径方向となっており、副磁極の永久磁石6bの着磁方向は軸方向となっている。主磁極の永久磁石6aと副磁極の永久磁石6bは、交互に積層されており、隣り合う主磁極の永久磁石6a同士および隣り合う副磁極の永久磁石6b同士の磁極配置が逆向きとなるように配置されて所謂ハルバッハ配列の磁石列6を形成している。そして、界磁Fの内周側には、軸方向でS極とN極が交互に現れるように永久磁石6a,6bが配置されている。
【0044】
また、主磁極の永久磁石6aの軸方向長さは、副磁極の永久磁石6bの軸方向長さよりも長くなっており、本実施の形態では、副磁極の永久磁石6bの軸方向の長さの2倍から5倍の範囲になるように設定されている。主磁極の永久磁石6aの軸方向長さを前述した範囲になるようにすればコア3,3との間の主磁極の永久磁石6aとの間の磁気抵抗を小さくできコア3,3へ作用させる磁界を大きくできるので筒型リニアモータ1の推力を向上できる。
【0045】
また、本発明の筒型リニアモータ1では、永久磁石6a,6bで形成された磁石列6の外周にバックヨーク8を設けている。バックヨーク8を設けると副磁極の永久磁石6bの軸方向長さを短くしても磁気抵抗の低い磁路を確保できるため、主磁極の永久磁石6aの軸方向長さを長くする際の筒型リニアモータ1の推力を効果的に向上できる。より詳しくは、永久磁石6a,6bの外周にバックヨーク8を設けると、磁気抵抗の低い磁路を確保できるので副磁極の永久磁石6bの軸方向長さを短くしても磁気抵抗の増大が抑制される。よって、主磁極の永久磁石6aの軸方向長さを副磁極の永久磁石6bの軸方向長さよりも長くするとともに永久磁石6a,6bの外周に筒状のバックヨーク8を設けると筒型リニアモータ1の推力を大きく向上させ得る。バックヨーク8の肉厚は、主磁極の永久磁石6aの外部磁気抵抗の増大を抑制に適する肉厚に設定されればよい。なお、バックヨーク8を設けると磁気抵抗の増大を抑制できるが、バックヨーク8の省略も可能である。
【0046】
なお、副磁極の永久磁石6bは、主磁極の永久磁石6aより高い保磁力を有する永久磁石とされている。永久磁石における残留磁束密度と保磁力は、互いに密接に関係しており、一般的に残留磁束密度を高めると保磁力は低くなり、保磁力を高めると残留磁束密度が低くなるという、互いに背反する関係にある。ハルバッハ配列では、副磁極の永久磁石6bには減磁方向に強い磁界が印加されるため、副磁極の永久磁石6bの保磁力を高くして減磁を抑制し、強い磁界をコア3,3に作用させるようにしている。対して、コア3,3に対して作用する磁界の強さは、主磁極の永久磁石6aの磁力線数に左右される。そのため、主磁極の永久磁石6aに高い残留磁束密度の永久磁石を使用して強い磁界をコア3,3に作用させるようにしている。本実施の形態では、副磁極の永久磁石6bを主磁極の永久磁石6aよりも保磁力を高くするのに際して、副磁極の永久磁石6bの材料を主磁極の永久磁石6aの材料よりも保磁力が高い材料としている。よって、材料の選定によって、主磁極の永久磁石6aと副磁極の永久磁石6bの組合せを簡単に実現できる。なお、本実施の形態では、主磁極の永久磁石6aは、ネオジム、鉄、ボロンを主成分とする残留磁束密度が高い材料で構成され、副磁極の永久磁石6bは、前記材料にジスプロシウムやテリビウム等の重希土類元素の添加量を増やした減磁しにくい磁石で構成されている。
【0047】
前述したところでは、界磁Fは、より強い磁界を電機子2へ作用させるべく永久磁石6a,6bをハルバッハ配列で積層した構成を備えているが、電機子2側に軸方向で交互にS極とN極とが現れるように永久磁石を積層して電機子2に磁界を作用させることができればよいので、ハルバッハ配列以外の配列で積層した複数の永久磁石で構成されてもよい。
【0048】
つづいて、インナーチューブ9は、筒状であって非磁性体で形成されており、界磁Fの内周に嵌合されている。さらに、インナーチューブ9の図1中左端には、環状の内径がインナーチューブ9の内径よりも小径で外径がインナーチューブ9の外径よりも大径なヘッドキャップ15が一体に設けられている。また、インナーチューブ9の内周には、ロッド11に装着されたスライダ12およびロッド11の各ホルダ21,22の対向部21b,22bに設けた各ウェアリング12a,21b1,22b1が摺接しており、スライダ12および各ホルダ21,22の対向部21b,22bによって3点支持されて電機子2は、ロッド11とともに界磁Fに対して偏心せずに軸方向へスムーズに移動できる。インナーチューブ9は、コア3,3の外周と界磁Fの内周との間の環状の隙間を形成するとともに、スライダ12および各ホルダ21,22の対向部21b,22bと協働して電機子2の軸方向移動を案内する役割を果たしている。なお、インナーチューブ9は、非磁性体で形成されればよいが、合成樹脂で形成されると筒型リニアモータ1の質量推力密度向上効果が高くなる。なお、質量推力密度は、筒型リニアモータ1の性能を示す一つの指標であって、数値が高い程、効率よく推力を発揮できることを示す。また、インナーチューブ9は、電機子2を界磁Fに挿入する際に、コア3の界磁Fへの吸着を防ぐので、良好な組立性を実現できる。このように、インナーチューブ9を設ける利点は多々あるが、インナーチューブ9の省略も可能である。
【0049】
また、インナーチューブ9を非磁性体の金属としてもよいが、非磁性体の金属である場合、電機子2が軸方向へ移動する際にインナーチューブ9の内部に渦電流が生じて、電機子2の移動を妨げる力が発生してしまう。これに対して、インナーチューブ9を合成樹脂とすれば渦電流が生じないので筒型リニアモータ1の推力をより効果的に向上できるとともに、筒型リニアモータ1の質量を低減できる。なお、インナーチューブ9を合成樹脂とする場合、フッ素樹脂で製造すればスライダ12および各ホルダ21,22の対向部21b,22bとの間の摩擦および摩耗を低減できる。また、インナーチューブ9を他の合成樹脂で形成してもよく、また、摩擦および摩耗を低減するべく他の合成樹脂で形成されたインナーチューブ9の内周をフッ素樹脂でコーティングしてもよい。
【0050】
バレル7は、非磁性体で有底筒状に形成されており、界磁Fの磁力によってバレル7の外周に砂鉄等のコンタミナントの付着が防止されている。そして、バレル7およびインナーチューブ9の図1中右端は、バレル7における底部7aによって閉塞されており、バレル7の図1中左端は、インナーチューブ9の左端に設けられてバレル7の内周に螺子締結されるヘッドキャップ15によって閉塞されている。また、バレル7の図1中右端の底部7aには、筒型リニアモータ1を機器等への取り付け可能なブラケット7bを備えている。筒型リニアモータ1は、固定子側となるロッド11の基端に取り付けられたブラケット16と、可動子側となるバレル7の端部を閉塞する底部7aに設けられたブラケット7bを利用して機器等へ取り付けられて使用される。
【0051】
なお、本実施の形態では、インナーチューブ9とヘッドキャップ15とが一体とされて一部品として構成されているが、インナーチューブ9とヘッドキャップ15とは別部品として構成されてもよい。さらに、バレル7とヘッドキャップ15の固定に際しては、螺子締結以外にもボルトやナットによる締結や溶接といった他の固定方法を採用してもよい。また、バレル7における筒部分と底部7aとを別部品として筒部分と底部7aとを連結するようにしてもよい。
【0052】
なお、ヘッドキャップ15は、内周に挿入されるロッド11を覆うカバー14の軸回りをシールするシール部材15aを備えており、筒型リニアモータ1内へのダストや水などの侵入を防止している。また、バレル7およびインナーチューブ9の軸方向長さは、電機子2、スライダ12および各ホルダ21,22の対向部21b,22bの合計の軸方向長さよりも長く、電機子2は、界磁F内の軸方向長さの範囲で図1中左右へストロークできる。
【0053】
なお、界磁Fにおける永久磁石6a,6bを積層して形成される磁石列6は、バレル7の端部を閉塞する底部7aとバレル7の開口端に螺着されるヘッドキャップ15とで挟持されてバレル7に固定される。具体的には、磁石列6の図1中左端とヘッドキャップ15との間、および、磁石列6の図1中右端と底部7aとの間には、それぞれ環状のリテーナ18,19が介装されており、これらリテーナ18,19を介して磁石列6がヘッドキャップ15と底部7aとで挟持されて界磁Fのバレル7に固定されるとともにバレル7に対する軸方向の位置が調整されている。なお、ヘッドキャップ15とバレル7における底部7aとで界磁Fの位置調整と固定が可能であれば、リテーナ18,19を省略できる。また、リテーナ18,19は、それぞれ複数のワッシャを積層して構成されてもよい。
【0054】
筒型リニアモータ1は、電機子2と界磁Fとが互いに軸方向へ相対移動でき、巻線4への通電によって可動子である界磁Fを軸方向に駆動して前記機器等へ推力を与えることができる。そして、たとえば、巻線4に対する界磁Fの電気角をセンシングし、前記電気角に基づいて通電位相切換を行うとともにPWM制御により、各巻線4の電流量を制御すれば、筒型リニアモータ1における推力と可動子である界磁Fの移動方向とを制御できる。なお、前述の制御方法は、一例でありこれに限られない。このように、本実施の形態の筒型リニアモータ1では、電機子2が固定子であり、界磁Fは可動子として振る舞う。また、電機子2と界磁Fとを軸方向に相対変位させる外力が作用する場合、巻線4への通電、あるいは、巻線4に発生する誘導起電力によって、前記相対変位を抑制する推力を発生させて筒型リニアモータ1に前記外力による機器の振動や運動をダンピングさせ得るし、外力から電力を生むエネルギ回生も可能である。
【0055】
以上、本実施の形態の筒型リニアモータ1は、筒状の界磁Fと、筒状であって界磁Fの内周に界磁Fに対して軸方向へ移動可能に配置されて界磁F側の周囲に軸方向に間隔を開けて設けられる複数のティース3bを有して軸方向に間隔を開けて並べて配置される複数のコア3,3と、コア3,3のティース3b,3b間のスロット3cに装着される巻線4とを具備する電機子2と、コア3,3を1つずつ保持するとともにコア3,3と同数だけ設けられて互いに軸方向に連結される2つのホルダ21,22とを備え、ホルダ21,22は、それぞれ、コア3,3が装着されるとともにコア3,3よりも軸方向長さが長いコア装着部21a,22aと、コア装着部21a,22aの一端側に設けられてコア3,3の一端側に対向する対向部21b,22bとを有し、全てのコア3,3において、コア装着部21a,22aの軸方向長さL3,L4が等しく、対向部21b,22bの軸方向長さLF1,LF2が等しい。
【0056】
このように構成された筒型リニアモータ1によれば、コア3,3が対応するホルダ21,22におけるコア3,3の軸方向長さよりも長いコア装着部21a,22aに装着されており、ホルダ21,22が互いに軸方向に連結されるので、コア3,3が互いの寸法に影響を受けるなく、ホルダ21,22によって軸方向に位置決めされる。よって、本実施の形態の筒型リニアモータ1によれば、コア3,3の軸方向の長さに寸法誤差があっても、ホルダ21,22のみの寸法を正しく管理することによって、コア3,3を適切な位置に位置決めできる。
【0057】
ここで、コア3,3が軸方向で分割されたピースを軸方向に積層しつつ接着することで製造される場合、ピース毎に寸法誤差があり、ピース同士の接着加工の際にもコア3,3の軸方向で寸法誤差を生じさせるため、コア3,3の全体の軸方向長さは、設計長さL1通りにならず寸法誤差を含んだものとなる場合が多い。
【0058】
従来の筒型リニアモータのように、コア3,3間の間隔だけを正確に所定長さL2としてコア3,3を軸方向に配置する場合、電機子2の全体でコア3,3の寸法誤差が積み重なって各コア3,3と界磁Fとが適切な位置に配置されなくなり、コギング推力の低減効果が減殺してしまう。これに対して、本実施の筒型リニアモータ1では、前述したとおり、コア3,3の軸方向の長さに寸法誤差があっても、コア3,3が互いの寸法に影響を受けずに済み、全てのコア3,3の寸法誤差が電機子2の軸方向で重畳されないので、ホルダ21,22のみの寸法を正しく管理することによって、各コア3,3の界磁Fに対する配置のずれを各コア3,3の寸法誤差内に収めることができる。
【0059】
よって、本実施の形態の筒型リニアモータ1によれば、各コア3,3の界磁Fに対する配置のずれを各コア3,3の寸法誤差内に収めて、電機子2に設置された全部のコア3,3の寸法誤差が重畳して電機子2の全体で各コア3,3の界磁に対する配置が大きくずれてしまうのを防止できるので、コア3,3の磁極数とスロット数の関係に起因して生じるコギング推力をコア3,3の配置を最適化することで抑制できる。以上より、本実施の形態の筒型リニアモータ1によれば、コア3,3に寸法誤差があっても、コギング推力を低減できる。
【0060】
さらに、コア3,3を1つずつ保持するとともにコア3,3と同数だけ設けられるホルダ21,22とを備えた筒型リニアモータ1では、ホルダ21,22に1つずつコア3,3を取り付けることでコア3,3を位置決めできる。よって、このように構成された筒型リニアモータ1によれば、筒型リニアモータ1の製造が容易となる。
【0061】
また、本実施の形態の筒型リニアモータ1では、コア3,3のうち電機子の軸方向の一端2aの位置を基準位置とし、コア3,3の軸方向の設計長さL1と所定長さL2とを加算した基準長さをLとし、前記電機子の軸方向で一端2a側から数えたコア3の順番をN(ただし、Nは2以上の整数)とすると、電機子2の軸方向で一端側からN番目以降のコア3は、基準位置から(N-1)×Lの距離に配置されている。
【0062】
このように構成された筒型リニアモータ1によれば、N番目のコア3の一端は、必ず、1番目のコア3の反コア側の一端2aを基準として、基準長さLの(N-1)倍の距離だけ離間した位置に位置決めされる。このように、本実施の筒型リニアモータ1では、電機子2に設置される2番目以降のコア3の一端は、1番目のコア3の反コア側端の一端2aを基準とした基準位置から必ず(N-1)×Lの距離に配置されて、全部のコア3,3の寸法誤差が電機子2の軸方向で重畳されないので、各コア3,3の界磁Fに対する配置のずれを各コア3,3の寸法誤差内に収めることができる。
【0063】
また、コア3,3がティース3b毎に分割されたピースを積層して形成されている場合に、コア3,3の軸方向の寸法と設計長さL1とに誤差が生じやすいが、スロット3b内に巻線4を組付けしやすくなるので電機子2の製造が容易となる。よって、本実施の形態の筒型リニアモータ1によれば、コア3,3を軸方向で分割したピースで形成する製造工程を採用して電機子2の製造を容易にしたい場合であっても、コギング推力を効果的に低減できる。コア3,3が分割ピースで形成されずに一体として製造される場合であってもコア3,3の軸方向長さに寸法誤差が発生するので、一体として製造されるコアを持つ筒型リニアモータに対しても本実施の形態の筒型リニアモータ1の構造を採用してコギング推力を低減できる。
【0064】
さらに、本実施の形態の筒型リニアモータ1におけるホルダ21,22は、コア装着部21a,22aと対向部21b,22bの合計軸方向長さがコア3,3の軸方向の設計長さと所定長さとを加算した基準長さLに等しい。また、ホルダ21,22の各コア装着部21a,22aの軸方向長さL3,L4同士が等しく、各対向部21b,22bの軸方向が長さLF1,LF2同士が等しくなっており、コア装着部21a,22aの軸方向長さL3,L4は、コア3,3の軸方向長さよりも長い。そのため、ホルダ21,22を連結した状態で、対向部21b,22bのコア3,3が当接する当接面(各対向部21b,22bの図1中端面)の距離が必ず基準長さLに等しくなるので、各ホルダ21,22に対応するコア3,3を装着後、ホルダ21,22同士を連結するだけで、電機子2に設置される2番目以降のコア3の一端は、1番目のコア3の反コア側端の一端2aを基準とした基準位置から必ず(N-1)×Lの距離に配置される。よって、このように構成された筒型リニアモータ1によれば、全部のコア3,3の寸法誤差が電機子2の軸方向で重畳されないので、各コア3,3の界磁Fに対する配置のずれを各コア3,3の寸法誤差内に収めることができる。
【0065】
また、前述した通り、本実施の形態の筒型リニアモータ1では、所定長さL2をスロットピッチPの整数倍の長さに設定している。このようにすると、界磁Fの磁極に対してコア3とコア3とが等しい電気角で対向できるようになるので、界磁Fの磁石ピッチとコア3のスロットピッチにずれが生じず、推力低下を招くことが無く、各コア3,3の巻線4に同一のタイミングで通電して筒型リニアモータ1を駆動できるようになる。よって、所定長さL2をスロットピッチPの整数倍の長さに設定する場合には、推力低下を招くことが無く、各コア3,3の巻線4を単一の駆動回路で駆動できる。
【0066】
さらに、本実施の形態の筒型リニアモータ1は、隣り合うホルダ21,22の一方の対向部22bと、隣り合うホルダ21,22の他方のコア装着部21aとが当接している。このように構成された筒型リニアモータ1によれば、コア3,3を対応するホルダ21,22のコア装着部21a,22aに装着した後、コア装着部21aと対向部22bとを当接させてホルダ21,22同士を連結するだけで、コア3,3を自動的に適正な位置に位置決めできる。
【0067】
また、本実施の形態の筒型リニアモータ1は、界磁Fが筒状であって、コア3,3が界磁Fの内周側に配置されており、コア装着部21a,22aが円柱状であって外周にコア3,3が装着されており、ホルダ21,22が、それぞれ、コア装着部21a,22aの他端側から開口する螺子孔21c,22cを有し、ホルダ21,22のうち1番目のコア3以外のコア3を保持するホルダ22が対向部22bの一端側から突出して隣接するホルダ21の螺子孔21cに螺合される螺子軸22dを備えている。このように構成された筒型リニアモータ1によれば、コア3,3を対応するホルダ21,22のコア装着部21a,22aに装着した後、螺子孔21cに螺子軸22dを螺合させてホルダ21,22を連結するだけで、コア3,3を自動的に適正な位置に位置決めでき、筒型リニアモータ1を容易に製造できる。
【0068】
なお、図2に示した一実施の形態の一変形例の筒型リニアモータ1Aのように、界磁Fが筒状であって、コア3,3が界磁Fの内周側に配置されており、コア装着部21a,22aが円柱状であって外周にコア3,3が装着されており、ホルダ21,22は、コア装着部21a,22aの他端側から突出する螺子軸21e,22eを有し、ホルダ21,22のうち1番目のコア3以外のコア3を保持するホルダ22が対向部22bの一端側から開口して隣接するホルダ21の螺子軸21eが螺合される螺子孔22fを有してもよい。一変形例の筒型リニアモータ1Aにおけるホルダ21,22は、コア装着部21a,22aに螺子孔21c,22cの代わりに螺子軸21d,22dを備えるとともに、対向部22bに螺子軸22dの代わりに螺子孔22fを備えている点で、筒型リニアモータ1におけるホルダ21,22と異なっている。一実施の形態の一変形例の筒型リニアモータ1Aのその他の構成については、一実施の形態の筒型リニアモータ1の構成と同様である。このように構成された一実施の形態の一変形例の筒型リニアモータ1Aによれば、一実施の形態の筒型リニアモータ1と同様に、コア3,3を対応するホルダ21,22のコア装着部21a,22aに装着した後、螺子孔22fに螺子軸21eを螺合させてホルダ21,22を連結するだけで、コア3,3を自動的に適正な位置に位置決めでき、筒型リニアモータ1Aを容易に製造できる。
【0069】
このように、筒型リニアモータ1,1Aでは、連結部がコア装着部21a,22aおよび対向部21b,22bのいずれか一方に設けられる螺子軸21f,22dと、コア装着部21a,22aおよび対向部21b,22bのいずれか他方に設けられて螺子軸21f,22dが螺合される螺子孔21c,22eとを備えている。このように構成された筒型リニアモータ1,1Aによれば、螺子孔22fに螺子軸21eを螺合させてホルダ21,22を連結するだけで、筒型リニアモータ1,1Aを容易に製造できる。
【0070】
なお、連結部は、コア装着部21a,22aおよび対向部21b,22bのいずれか一方に設けられる圧入軸部と、コア装着部21a,22aおよび対向部21b,22bのいずれか他方に設けられて前記圧入軸部が圧入される孔とで構成されてもよい。
【0071】
また、本実施の形態の筒型リニアモータ1,1Aでは、一方のホルダ21のコア装着部21aの先端の肩部を他方のホルダ22の対向部22bに当接させているが、コア装着部21aの先端に対向部22bに当接可能なフランジ等のストッパを設けてもよい。このようにすれば、コア装着部21aの一部を成す前記ストッパを対向部22bに当接させてホルダ21,22同士を連結するだけで、コア3,3を自動的に適正な位置に位置決めできる。なお、この場合、連結部は、螺子軸と螺子孔とで構成されてもよいし、圧入軸部と孔とで構成されてもよく、ストッパについてはコア装着軸21a,22aを構成する軸の外周にスナップリング等を装着することで設けてもよいし、ストッパとして機能できる限りにおいてストッパの形状も任意に変更できる。
【0072】
さらに、本実施の形態の筒型リニアモータ1は、界磁Fが電機子側となる内周に非磁性体のインナーチューブ(チューブ)9を有し、電機子2のコア3,3の近傍にインナーチューブ9の内周に摺接する対向部21b,22bを備えている。このように構成された筒型リニアモータ1によれば、複数のコア3,3を備える電機子2が対向部21b,22bによって支持されるため、界磁Fに対して電機子2が偏心することなく円滑に軸方向へ移動できる。なお、筒型リニアモータ1が界磁Fの外周側に電機子2が配置される構造を採用する場合、界磁Fの外周に非磁性体のチューブを設けて、前記チューブの外周に摺接するウェアリングを電機子2側に設けられるの内周に設ければよい。
【0073】
なお、対向部21b,22bは、コア3,3の一端に対向してコア3,3を軸方向に位置決めする機能を果たす限りにおいて、外周形状は任意に変更できるが、インナーチューブ9の内周に摺接して電機子2の円滑な軸方向への移動を実現する上では円盤状とされる方が好ましい。
【0074】
また、コア3,3の位置決めに際して、コア装着部21a,22aの長さL3,L4を予め基準長さLから対向部21b,22bの軸方向長さLF1,LF2を差し引いた長さに設定しているので、ホルダ21,22同士の単純な連結によってコア3,3を軸方向で自動的に位置決めできるが、コア装着部21a,22aの外周に嵌合するワッシャを用いて、コア装着部21a,22aに対してコア3,3を軸方向に微調整して位置決めしてもよい。
【0075】
また、本実施の形態の筒型リニアモータ1では、電機子2の外周側に筒状の界磁Fを配置する構造を採用しているが、コア3の内周側にティース3bを設けてコア3の内周側に巻線4が装着されるスロット3cを形成して、電機子2の内側に界磁Fを挿入する構造を採用してもよい。
【0076】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、および変更が可能である。
【符号の説明】
【0077】
1・・・筒型リニアモータ、2・・・電機子、2a・・・電機子の一端、3,3,3・・・コア、3b・・・ティース、3c・・・スロット、4・・・巻線、12,21,22・・・ホルダ、21a,22a・・・コア装着部、21b,22b・・・対向部、21c,22c・・・螺子孔(連結部)、22d・・・螺子軸(連結部)、F・・・界磁、L・・・基準長さ、L1・・・コアの設計長さ、L2・・・所定長さ、N・・・コアの順番を示す番号
図1
図2