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2023-6993検査装置、位置調整ユニット及び位置調整方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023006993
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】検査装置、位置調整ユニット及び位置調整方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 1/06 20060101AFI20230111BHJP
   G01R 31/28 20060101ALI20230111BHJP
   H01L 21/66 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
G01R1/06 E
G01R31/28 K
H01L21/66 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021109928
(22)【出願日】2021-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】000153018
【氏名又は名称】株式会社日本マイクロニクス
(74)【代理人】
【識別番号】100180275
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 倫太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100161861
【弁理士】
【氏名又は名称】若林 裕介
(72)【発明者】
【氏名】成田 聡
(72)【発明者】
【氏名】白戸 順
【テーマコード(参考)】
2G011
2G132
4M106
【Fターム(参考)】
2G011AA02
2G011AC06
2G011AC14
2G011AE03
2G132AF07
2G132AL03
2G132AL11
4M106AA01
4M106BA01
4M106BA10
4M106DD04
4M106DD06
4M106DD12
4M106DD13
(57)【要約】
【課題】オペレータの感覚による操作方法ではなく、電極パッドに対するプローブの初期の位置合わせを高精度で調整できるようにする。
【解決手段】本発明は、被検査体の電極に対して電気的に接触させた接触子を用いて、被検査体の電気的特性を検査する検査装置において、接触子と、接触子の先端位置を調整する位置調整部と、接触子と電極との接触荷重値を検出する荷重検出部とを有する位置調整ユニットと、特定方向における接触子の接触変位量と、接触子及び電極の接触荷重値との関係に基づいて、特定方向における接触子の初期位置を導出する位置導出部と、位置導出部により導出された、特定方向における初期位置に基づいて、接触子の先端位置を移動させる移動実行部とを備える。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査体の電極に対して電気的に接触させた接触子を用いて、前記被検査体の電気的特性を検査する検査装置において、
前記接触子と、前記接触子の先端位置を調整する位置調整部と、前記接触子と前記電極との接触荷重値を検出する荷重検出部とを有する位置調整ユニットと、
特定方向における前記接触子の接触変位量と、前記接触子及び前記電極の接触荷重値との関係に基づいて、特定方向における前記接触子の初期位置を導出する位置導出部と、
前記位置導出部により導出された、特定方向における前記初期位置に基づいて、前記接触子の先端位置を移動させる移動実行部と
を備えることを特徴とする検査装置。
【請求項2】
前記接触子がカンチレバー型接触子であり、
前記位置導出部が、特定方向における前記接触子の接触変位量と、前記接触子及び前記電極の接触荷重値との比例関係に基づいて、特定方向における前記接触子の初期位置を導出する
ことを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記位置導出部が、前記接触子と前記電極との接触後、
特定方向における前記接触子の接触変位量と、そのときの接触荷重値とを含む測定結果を、少なくとも2個以上測定し、
2個以上の前記測定結果を用いて導出した単位長あたりの荷重変化値と、前記測定結果とを用いて、特定方向における前記接触子の初期位置を導出する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の検査装置。
【請求項4】
被検査体の電極に対して電気的に接触させる接触子の先端位置を調整する位置調整ユニットにおいて、
前記接触子の先端位置を調整する位置調整部と、
前記接触子と前記電極との接触荷重値を検出する荷重検出部と、
特定方向における前記接触子の接触変位量と、前記接触子及び前記電極の接触荷重値との関係に基づいて、特定方向における前記接触子の初期位置を導出する位置導出部と、
前記位置導出部により導出された、特定方向における前記初期位置に基づいて、前記接触子の先端位置を移動させる移動実行部と
を有することを特徴とする位置調整ユニット。
【請求項5】
接触子と、前記接触子の先端位置を調整する位置調整部と、前記接触子と被検査体の電極との接触荷重値を検出する荷重検出部とを有する位置調整ユニットで、前記電極に対して電気的に接触させる接触子の先端位置を調整する位置調整方法であって、
位置導出部が、特定方向における前記接触子の接触変位量と、前記接触子及び前記電極の接触荷重値との関係に基づいて、特定方向における前記接触子の初期位置を導出し、
移動実行部が、前記位置導出部により導出された、特定方向における前記初期位置に基づいて、前記接触子の先端位置を移動させる
ことを特徴とする位置調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査装置、位置調整ユニット及び位置調整方法に関し、例えば、半導体ウェハ上の半導体集積回路の電気的特性を検査する検査装置に適用することができる。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体ウェハ上に形成された半導体集積回路(デバイス)のうち、特定のデバイスの電気的特性を個別に検査する検査装置がある(特許文献1参照)。
【0003】
この種の検査装置には様々なタイプがあるが、図5及び図6に例示するように、オペレータが手動でプローブの先端位置を微調整する位置調整ユニットを備える検査装置がある。
【0004】
図7に例示するように、従来の検査装置の位置調整ユニット9は、プローブ97のX方向位置を微調整するXノブ91、Y方向位置を微調整するYノブ92、Z方向位置を微調整するZノブ93とを有している。オペレータは、Xノブ91とYノブ92とZノブ93を操作して、プローブ97の先端がデバイスの電極パッドに接触するように、プローブ97の位置を微調整する。
【0005】
以下では、図8を参照して、デバイスの電極パッドに対するプローブ位置の初期設定方法を簡単に説明する。
【0006】
まず、オペレータは顕微鏡やカメラ等を用いて、デバイスの電極パッド80とプローブ97とを認識する。オペレータは、Xノブ91及びYノブ92を操作して、XY平面上におけるプローブ97の位置合わせをする(図8(A)参照)。
【0007】
例えば、図8(A)は電極パッド80上面を上方から見た平面図である。プローブ97の先端位置が、電極パッド80の略中央部にないとき(図8(A-1)参照)、オペレータはXノブ91及びYノブ92を操作して、プローブ97の先端を二次元方向に移動させて、プローブ97の先端位置が電極パッド80の略中心位置となるようにする(図8(A-2)参照)。
【0008】
次に、オペレータは、Zノブ93を操作して、プローブ97の先端位置をZ方向に下降させる。このとき、プローブ97の先端が電極パッド80に接触するまで、プローブ97の先端位置を下降させる(図8(B-1)参照)。さらに、プローブ97の先端が電極パッド80の表面を滑るまで、オペレータはZノブ93を操作して少しずつプローブ97の位置を下降させる(図8(B-2)参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003-142536号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
近年、半導体ウェハ上の配線パターンや、デバイスの電極パッドは、微細化の一途を辿っており、これに比例して、電気信号の授受役割を担うプローブの位置合わせも難易度を増している。したがって、従来よりも簡単な操作方法で、高精度にプローブの位置合わせをすることができる検査装置が求められている。
【0011】
しかしながら、上述したように、プローブ位置の初期設定方法は、全てオペレータの感覚によるものであり、特にプローブのZ方向の位置合わせに関しては、数ミクロン(μm)程度の動きを捉える必要がある。
【0012】
例えば、プローブのZ方向の位置合わせが正しく行なわれない場合、プローブの破損や電極パッドの破損の要因になってしまうおそれがあり、また、デバイスの検査品質にも影響が生じ得る。
【0013】
そのため、オペレータの感覚による操作方法ではなく、電極パッドに対するプローブの初期の位置合わせを高精度で調整することができる検査装置、位置調整ユニット及び位置調整方法が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
かかる課題を解決するため、第1の本発明は、被検査体の電極に対して電気的に接触させた接触子を用いて、被検査体の電気的特性を検査する検査装置において、(1)接触子と、接触子の先端位置を調整する位置調整部と、接触子と電極との接触荷重値を検出する荷重検出部とを有する位置調整ユニットと、(2)特定方向における接触子の接触変位量と、接触子及び電極の接触荷重値との関係に基づいて、特定方向における接触子の初期位置を導出する位置導出部と、(3)位置導出部により導出された、特定方向における初期位置に基づいて、接触子の先端位置を移動させる移動実行部とを備えることを特徴とする。
【0015】
第2の本発明は、被検査体の電極に対して電気的に接触させる接触子の先端位置を調整する位置調整ユニットにおいて、(1)接触子の先端位置を調整する位置調整部と、(2)接触子と電極との接触荷重値を検出する荷重検出部と、(3)特定方向における接触子の接触変位量と、接触子及び電極の接触荷重値との関係に基づいて、特定方向における接触子の初期位置を導出する位置導出部と、(4)位置導出部により導出された、特定方向における初期位置に基づいて、接触子の先端位置を移動させる移動実行部とを有することを特徴とする。
【0016】
第3の本発明は、接触子と、接触子の先端位置を調整する位置調整部と、接触子と被検査体の電極との接触荷重値を検出する荷重検出部とを有する位置調整ユニットで、電極に対して電気的に接触させる接触子の先端位置を調整する位置調整方法であって、(1)位置導出部が、特定方向における接触子の接触変位量と、接触子及び電極の接触荷重値との関係に基づいて、特定方向における接触子の初期位置を導出し、(2)移動実行部が、位置導出部により導出された、特定方向における初期位置に基づいて、接触子の先端位置を移動させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、電極パッドに対するプローブの初期の位置合わせを高精度で調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施形態に係る位置調整ユニットの構成を示す構成図である。
図2】実施形態におけるZ方向の微調整処理の構成を示す構成図である。
図3】実施形態に係る位置調整ユニットによるプローブの位置の初期設定の処理動作を示すフローチャートである。
図4】実施形態において、荷重変換器の出力値とプローブのZ方向の変位量との関係を示す関係図である。
図5】実施形態に係る検査装置の外観概略構成を示す構成図である。
図6】実施形態に係る検査装置の位置調整ユニットを上方から見たときの平面図である。
図7】従来の検査装置に搭載の位置調整ユニットの構成を示す構成図である。
図8】従来の検査装置において電極パッドに対してプローブを接触させる様子を上方から見た平面図と側面から見た側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(A)実施形態
以下では、本発明に係る検査装置、位置調整ユニット及び位置調整方法の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0020】
(A-1)実施形態の構成
(A-1-1)検査装置
この実施形態に係る検査装置は、基本的に、既存の検査装置と同じ又は対応する構成を備える。したがって、この実施形態でも、図5及び図6を用いて検査装置の構成を説明する。
【0021】
図5は、実施形態に係る検査装置の概略構成を示す構成図である。図6は、実施形態に係る検査装置の位置調整ユニットを上方から見たときの平面図である。
【0022】
図5において、実施形態に係る検査装置1は、筐体20と、当該筐体20内に、複数の位置調整ユニット10、ステージ21及びステージ駆動部22を有する。さらに、検査装置1は顕微鏡23を備えている。
【0023】
検査装置1は、ステージ21上面に載置された半導体ウェハに形成された半導体集積回路(デバイス)の電気的特性を検査するものである。
【0024】
図5において、検査装置1の構成要素の多くは筐体20内に収められており、検査装置1の筐体20が作業台5に載置されている状態を示している。
【0025】
検査装置1の筐体20は、内部が空間となっており、筐体20の内部には、板部材25が設けられている。筐体20は、板部材25を隔てて、上側の内部空間である上段部26と、下側の内部空間である下段部27とに分かれている。
【0026】
筐体20の下段部27には、半導体ウェハを載置するステージ21と、ステージ21を駆動させるステージ駆動部22とが設けられている。また、筐体20の上段部26には、複数の位置調整ユニット10が設けられている。
【0027】
筐体20内に設けられている板部材25には、円形の開口部251が設けられており、この開口部251の周縁に、複数の位置調整ユニット10が配置されている。図6に例示するように、各位置調整ユニット10は、開口部251を通じて、ステージ21に載置されている半導体ウェハのデバイスの電極パッドにプローブ17を電気的に接触させることができる。
【0028】
検査実施前に、検査装置1は、半導体ウェハ上のデバイスの電極パッドに対して、各位置調整ユニット10のプローブ17を電気的に接触させるため、プローブ17の初期位置合わせ(ファーストコンタクト)を行なう。
【0029】
検査装置1は、オペレータが半導体ウェハ上の微細なデバイスを視認するため、顕微鏡23を備えている。なお、検査装置1は、顕微鏡23に代えて又は顕微鏡23に加えて、例えばCCDカメラ等のカメラ(撮像装置)を備え、カメラが撮影した映像をディスプレイ等の表示部に表示するようにしてもよい。
【0030】
検査の際、検査装置1は、位置調整ユニット10のプローブ17を介して、デバイスの電極パッドに電気信号を与える。他方、デバイスが電気信号を出力すると、電気信号はプローブ17を介して検査装置1に与えられる。検査装置1は、デバイスへの電気信号の値及び又はデバイスからの電気信号の値などに基づいて、デバイスの電気的特性を検査する。
【0031】
(A-1-2)位置調整ユニット
図1は、実施形態に係る位置調整ユニット10の構成を示す外観斜視図である。
【0032】
図1において、位置調整ユニット10は、本体部100、X方向位置調整部(以下「Xノブ」と呼ぶ。)11、Y方向位置調整部(以下「Yノブ」と呼ぶ。)12、Z方向位置調整部(以下「Zノブ」と呼ぶ。)13、Zノブ駆動部18、荷重変換器19、アイソレータ15、アーム支持部14、Lアーム部16、プローブ17を有する。
【0033】
位置調整ユニット10は、Lアーム部16の先端に直線状のプローブ17を設けたカンチレバー型プローブの位置を調整して、半導体ウェハ上のデバイスの電極パッドにプローブ17を電気的に接触させるものである。位置調整ユニット10は、オペレータによる操作でプローブ17の位置を調整するものなので、マニピュレータとも呼ばれる。
【0034】
なお、位置調整ユニット10は、カンチレバー型プローブを備えるものであれば、図1に例示する構成に限定されず、例えば、Lアーム部16に代えて、直線状アーム部を設け、直線状アーム部がプローブ17を支持してもよい。いずれにしても、位置調整ユニット10はカンチレバー型プローブの位置を調整するものとする。
【0035】
プローブ17は、導電性材料で形成されたものであり、デバイスの電極パッドの表面に対して電気的に接触する接触子である。プローブ17は、直線状の接触子であり、プローブ17の一方の端部はLアーム部16に支持され、プローブ17の他方の端部(「先端部」とも呼ぶ。)は電極パッドに接触する。したがって、プローブ17はカンチレバー型プローブである。
【0036】
Lアーム部16は、プローブ17を支持する支持部材である。Lアーム部16は、導電性材料で形成されており、Lアーム部16の一方の端部(例えば、下方端部)はプローブ17を支持し、他方の端部(例えば、上方端部)が検査装置1側と電気信号を伝搬する配線(図示しない)と接続する。
【0037】
アーム支持部14は、Lアーム部16を支持する部材である。この例の場合、アーム支持部14は、アイソレータ15の一方の端部に設けられる。例えば、アーム支持部14は、Lアーム部16の垂直方向(Z方向)の延びる部材の部分を支持する溝部を有しており、この溝部に、Lアーム部16の垂直方向の部材を嵌めて支持する。
【0038】
アイソレータ15は、絶縁性材料で形成されたものである。アイソレータ15は、アーム支持部14と荷重変換器19との間に介在して、検査時に荷重変換器19及び本体部100側への通電を防止するためのものである。
【0039】
荷重変換器19は、カンチレバー型のプローブ17に作用する荷重量(荷重値)を電気信号に変換し、その信号値を検査装置1の制御部243に与えるものである。
【0040】
荷重変換器19は、カンチレバーのプローブ17の先端が電極パッドに接触しているときの力の大きさ(荷重量)を測定できるものであればよく、例えば、荷重を検出するロードセル等を適用できる。荷重変換器19は、本体部100とLアーム部との間に設ける。
【0041】
例えば、図1に例示するように、ロードセルとしての荷重変換器19は、上面に2個の歪ゲージ191及び192と、下面に2個の歪ゲージ193及び194とを有している。プローブ17と電極パッドとの接触時に圧力が加わり、荷重変換器19が変形(例えば撓み)すると、歪ゲージ191~194も変形し、歪ゲージ191~194の抵抗値が変化する。そのため、荷重変換器19に入力電圧が印加されると、歪ゲージ191~194の抵抗値の変化に応じた電圧が出力する。したがって、荷重変換器19からの出力電圧の値に基づいて、プローブ17と電極パッドとの接触時の力の大きさを測定する。
【0042】
Xノブ11、Yノブ12及びZノブ13は、プローブ17の先端位置を微調整する位置調整機構の調節ノブである。Xノブ11はX方向の微調整機構の調節ノブであり、Yノブ12はY方向の微調整機構の調節ノブである。
【0043】
Zノブ13は、Z方向の微調整機構の調節ノブであり、Zノブ13は、例えばモータ等のZノブ駆動部18から駆動力を受けて駆動する。つまり、Xノブ11及びYノブ12は、従来の位置調整ユニットと同様に、オペレータにより手動で操作されるものであるが、Zノブ13は、Zノブ駆動部18により自動で動かされる。言い換えると、位置調整ユニット10は、少なくとも、プローブ17のZ方向位置を自動的に微調整する。
【0044】
図2は、実施形態におけるZ方向の微調整処理の構成を示す構成図である。
【0045】
図2において、Z方向の微調整処理の構成は、荷重変換器19、差動増幅回路241、A/D変換器242、制御部243、モータ制御部244、Zノブ駆動部18を有する。
【0046】
荷重変換器19は、入力電圧が印加され、歪ゲージ191~194の変形により、歪ゲージ191~194の抵抗値が変化し、これに応じて変化し得る出力電圧を出力する。
【0047】
差動増幅回路241は、荷重変換器19から出力される2つの電圧値を入力し、2つの電圧値を差分した差分値に差動利得で増幅してA/D変換器242に出力する。
【0048】
A/D変換器242は、差動増幅回路241からの出力値(アナログ信号)をデジタル信号に変換して制御部243に与える。
【0049】
制御部243は、荷重変換器19からの出力された荷重値に基づいて、プローブ17のZ方向の変位量を制御する。制御部243は、CPU、ROM、RAM、EEPROM、入出力インタフェース等を有する装置を適用できる。制御部243は、CPUが、ROMに格納される処理プログラム(例えば、Z方向調整プログラム等)を実行することにより、Z方向の微調整処理が実現される。
【0050】
制御部243によるプローブ17のファーストコンタクト時のZ方向微調整方法については、動作の項で詳細に説明するが、制御部243は、Z方向の初期設定位置を導出する位置導出部としての機能を有する。
【0051】
モータ制御部244は、制御部243の制御の下、Zノブ駆動部18に対して駆動制御するものである。モータ制御部244の制御方法についても動作の項で詳細に説明する。
【0052】
Zノブ駆動部18は、例えばモータ等を適用でき、モータ制御部244の制御を受けてZノブ13を駆動するものである。Zノブ駆動部18がZノブ13を駆動することにより、プローブ17のZ方向の位置を移動させる。
【0053】
(A-2)実施形態の動作
次に、実施形態に係る位置調整ユニット10によるプローブ17の位置の初期設定の処理動作を、図面を参照しながら説明する。
【0054】
図3は、実施形態に係る位置調整ユニット10によるプローブ17の位置の初期設定の処理動作を示すフローチャートである。図4は、荷重変換器19の出力値とプローブ17のZ方向の変位量との関係を示す関係図である。
【0055】
被検査体としての半導体ウェハはステージ21上に載置され、オペレータがステージ駆動部22を操作して、ステージ21の位置を適切な位置に合わせる。
【0056】
オペレータは、顕微鏡23を覗き込み、半導体ウェハ上のデバイスの電極パッドとプローブ17とを認識する。そして、オペレータはXノブ11及びYノブ12を操作して、プローブ17をXY平面の二次元方向に移動させて、プローブ17の先端位置が電極パッドの略中央になるように位置合わせをする(S101)。
【0057】
二次元方向のプローブ17の位置合わせが終わると、オペレータは、Zノブ13を操作して、プローブ17をZ方向に下降させて、プローブ17の先端を電極パッドに接近させる(S102)。なお、S102の工程は、プローブ17を効率的に位置合わせをするため、オペレータが手動で行うこととしているが、自動的に行うようにしてもよい。
【0058】
次に、例えば設定開始のスイッチ等をオペレータがONする等をトリガーとして、プローブ17のZ方向位置の初期設定処理が開始する。
【0059】
荷重変換器19に所定値の電圧が印加されており、荷重変換器19は荷重検出可能となっている。
【0060】
制御部243は、モータ制御部244に対して、プローブ17をZ方向へ下降指示をする。これを受けて、モータ制御部244は、Zノブ駆動部18を駆動させて、プローブ17をZ方向へ下降開始する(S103)。
【0061】
このとき、例えば、モータ制御部244は、1ミクロンずつプローブ17をZ方向に下降させる。制御部243は、プローブ17と電極パッドとのコンタクト荷重を検出する荷重変換器19の出力電圧値と、予め設定した圧力不感帯閾値とを比較する(S104)。
【0062】
そして、出力電圧値が圧力不感帯閾値未満であれば(S104/YES)、処理はS103に戻り、制御部243は、モータ制御部244に対してプローブ17のZ方向下降を継続して指示する。他方、出力電圧値が圧力不感帯閾値以上であれば(S104/NO)、処理はS105に移行する。
【0063】
ここで、圧力不感帯とは、下降するプローブ17の先端が電極パッドの表面に対して不安定な接触状態とみなせる範囲をいう。すなわち、プローブ17が電極パッドに確実に接触しているとまでは言えず、コンタクト荷重による圧力(反力)も不安定な状態である。
【0064】
したがって、圧力不感帯の領域を脱したとみなせる圧力不感帯閾値を用いて、荷重変換器19の出力電圧値が圧力不感帯閾値未満のときには、圧力(コンタクト荷重による反力)が小さく、接触状態が不安定な状態と判断する。逆に、荷重変換器19の出力電圧値が圧力不感帯閾値以上のときには、圧力がある程度大きく、プローブ17が確実に接触しているとみなすこととしている。
【0065】
S103及びS104では、不安定な接触状態を除外するため、プローブ17を徐々に下降させていき、荷重変換器19の出力電圧値と圧力不感帯閾値とを比較して、プローブ17が電極パッドに対して確実に接触した状態を検出している。
【0066】
また、モータ制御部244及びZノブ駆動部18の動作を簡単に説明する。例えば、Zノブ駆動部18がステッピングモータである場合、1ミクロンずつ下降させるZノブ13の回転量相当のZノブ駆動部18の回転角度に比例するパルス信号を、モータ制御部244がZノブ駆動部18に出力する。これにより、例えば1ミクロンずつ等のように、プローブ17を徐々に下降させることができる。
【0067】
S105では、荷重変換器19の出力電圧値が圧力不感帯閾値以上となったときに、制御部243は、Z方向に下降させたプローブ17の変位量(図4のz1)と、荷重変換器19の出力値(図4のf1)とを読み取り、(z1,f1)を保存する(S105)。
【0068】
次に、制御部243は、プローブ17のZ方向位置を、さらに、予め定めた下降変位量(例えば、50μm等)だけ下降させる(S106)。例えば、制御部243は、プローブ17の変位量z1の値を保存後、プローブの変位量をゼロリセットする。そして、制御部243は、事前設定した下降変位量の値をセットし、制御部243は、モータ制御部244に、下降変位量だけプローブ17を下降させるように指示する。モータ制御部244は、Zノブ駆動部18を駆動してプローブ17を下降変位量だけ下降させる。
【0069】
そして、制御部243は、予め定めた下降変位量だけ下降させたプローブ17の変位量(図4のz2)と、そのときの荷重変換器19の出力値(図4のf2)とを読み取り、(z2,f2)を保存する(S107)。
【0070】
次に、制御部243は、(z1,f1)及び(z2,f2)を、式(1)に代入して、電極パッドに対するプローブ17のZ方向の初期設定値z0を導出する(S108)。
z0=z1-f1/[(f2-f1)/(z2-z1)] …(1)
ここで、式(1)を説明する。式(1)において、[(f2-f1)/(z2-z1)]は、Z方向の単位変位量あたりの荷重の変化量を示している。これは、カンチレバー型プローブの場合、Z方向の変位量と反力(荷重変化量)との関係は比例関係にあるという特性を利用して、Z方向の単位変位量あたりの荷重変化量を求めている。
【0071】
S106で、予め定めた下降変化量だけプローブ17の位置を下降させているが、これはZ方向の変位量と反力(荷重変化量)との関係(比例関係)を求めるためである。したがって、プローブ17を下降させる下降変化量の値は、任意の値を用いることができる。
【0072】
また、Z方向の変位量と反力(荷重変化量)との関係は、プローブ17が電極パッドに対して安定して接触していることが必要となる。したがって、プローブ17の不安定な接触状態を除外するため、S103及びS104で、荷重変換器19の出力電圧値と圧力不感帯閾値以上とに基づいて、プローブ17が安定して接触していることを判断するようにしている。
【0073】
プローブ17のZ方向の初期設定値z0が導出されると、制御部243は、モータ制御部244に対して、Z方向の初期設定値までプローブ17を下降させる指示を行なう。これを受けて、モータ制御部244はZノブ駆動部18を動作させ、Zノブ駆動部18がZノブ13を動かすことで、プローブ17がZ方向の初期設定値z0まで下降して、プローブ17位置の初期位置合わせをする(S109)。
【0074】
上述したように、オペレータは、Xノブ11及びYノブ12を操作して、XY平面上におけるプローブ17の位置を微調整し、その後、プローブ17のZ方向位置については、制御部243が導出した初期設定位置まで、プローブ17が自動的に下降する。これにより、プローブ17のファーストコンタクトであるZ方向の初期設定位置。
【0075】
(A-3)実施形態の効果
以上のように、この実施形態によれば、オペレータ個人の感覚に依存していたプローブの位置合わせを自動化することにより、プローブの初期の位置合わせを精度よく調整することができる。
【0076】
また、この実施形態によれば、半導体ウェハを載せているステージ(チャック)が移動した際に傾きが生じていても、プローブの位置合わせを自動的に行うことができるので、どの場所でも、同じ精度で安定したコンタクトが得られる。
【0077】
さらに、この実施形態によれば、Z方向の変位量と反力(荷重変化量)との関係が得られるので、オペレータが、任意の圧力でコンタクト、又は任意のプローブオーバドライブ量でコンタクトを自動で行うことが可能となる。
【0078】
(B)他の実施形態
上述した実施形態においても種々の変形実施形態を言及したが、本発明は、以下の変形実施形態にも適用できる。
【0079】
(B-1)Z方向の変位量と反力(荷重変化量)との関係は、少なくとも、Z方向位置及び荷重(反力)の値の任意の2点がわかれば導くことが可能である。したがって、プローブ17と電極パッドとの安定接触後、少なくとも、Z方向位置と荷重(反力)値との2点以上を取得できるのであれば、上述した実施形態の方法に限定されない。
【0080】
例えば上述した実施形態では、予め定めた下降変位量が50μmである場合を例示したが、下降変位量の値は50μmに限定されず、Z方向の変位量と反力(荷重変化量)との関係性が得られる値であればよい。このとき、プローブを下降させることにより、電極パッド及び又はプローブが破損する可能性もあるので、これらの点を考慮して、下降変位量の値を決定することが望まれる。
【0081】
また例えば、上述した実施形態では、2点目は、制御部がプローブを下降変位量だけ下降させたZ方向位置z2と、そのときの荷重値f2とを求める場合を例示したが、これに限らない。例えば、制御部は、荷重変換器19からの出力値が予め定めた荷重値となるまで、プローブを下降させ、出力値が事前の荷重値となったときのZ方向位置を求めるようにしてもよい。この場合も、2点目を得ることができるので、上述した実施形態と同様の効果が得られる。
【0082】
なお、少なくとも2点以上あれば、Z方向の変位量と反力(荷重変化量)との関係性を得られるが、Z方向位置と荷重(反力)値との関係は、3点以上であってもよい。
【0083】
(B-2)上述した検査装置における位置調整方法は、デバイスの電気的特性を検査するたびに図3に例示する処理を行なうようにしてもよいし、又は図3で求めたZ方向の変位量と反力(荷重変化量)との関係を利用できるのであれば、検査のたびに図3の処理を行なわなくてもよい。
【0084】
言い換えれば、検査対象チップ毎に、図3の処理で、単位長あたりの荷重変化値(Z方向変位量と荷重変化値の比例関係の傾き)を求めてもよいし、又は、既に求めた単位長あたりの荷重変化値を利用できるのであれば、その単位長あたりの荷重変化値を利用して、プローブのZ方向位置を微調整してもよい。
【0085】
例えば、図3の処理でプローブ位置の初期設定後、検査対象チップへの位置ずれが生じたときや、検査対象チップの種類が異なる等の場合には、検査対象チップ毎に傾きを求める処理を行なう方がよい。他方、例えば同一種類のチップを検査対象とするなどのときには、そのまま傾きを利用できるので、その場合には、改めて傾きを求めることなく、プローブのZ方向位置を設定するようにしてもよい。
【0086】
(B-3)式(1)は、(z1,f1)と(z2,f2)から、単位長あたりの荷重変化量を導出し、その単位長あたりの荷重変化量の比例式が、点(z1,f1)を通り、F=0とするときのZの値を導出する式である。
【0087】
式(1)は一例であり、この式に限定されず、点(z2,f2)を通り、F=0とするときのZの値を導出する式であってもよい。
【符号の説明】
【0088】
1…検査装置、10…位置調整ユニット、11…Xノブ、12…Yノブ、13…Zノブ、14…アーム支持部、15…アイソレータ、16…Lアーム部、17…プローブ、18…Zノブ駆動部、19…荷重変換器、20…筐体、21…ステージ、22…ステージ駆動部、23…顕微鏡、25…板部材、26…上段部、27…下段部、80…電極パッド、100…本体部、191…歪ゲージ、192…歪ゲージ、193…歪ゲージ、194…歪ゲージ、241…差動増幅回路、242…A/D変換器、243…制御部、244…モータ制御部、251…開口部。
図1
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図8