(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023069931
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】封止用樹脂組成物、封止用樹脂組成物の製造方法、及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20230511BHJP
B29C 43/34 20060101ALI20230511BHJP
C08K 3/013 20180101ALI20230511BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20230511BHJP
H01L 21/56 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
C08L101/00
B29C43/34
C08K3/013
H01L23/30 R
H01L21/56 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021182173
(22)【出願日】2021-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】片岡 陵佑
(72)【発明者】
【氏名】棚橋 靖詔
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 元貴
【テーマコード(参考)】
4F204
4J002
4M109
5F061
【Fターム(参考)】
4F204AA36
4F204AC01
4F204AD19
4F204AH37
4F204FA01
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4J002GQ00
4M109AA01
4M109BA04
4M109CA22
4M109EA02
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4M109EB02
4M109EB03
4M109EB04
4M109EB12
4M109EB13
5F061AA01
5F061BA04
5F061CA22
5F061DE02
5F061DE04
(57)【要約】
【課題】蒔きむらと、粉立ちとが、生じにくい封止用樹脂組成物、この封止用樹脂組成物の製造方法、及びこの封止用樹脂組成物から作製される半導体装置の製造方法を提供する。
【解決手段】複数の粒子からなる封止用樹脂組成物である。JIS Z8815-1994の乾式ふるい分け試験に準拠し、目開き1mmのふるい、目開き0.85mmのふるい、目開き0.5mmのふるい、及び目開き0.3mmのふるいを記載された順番に使用することによって、封止用樹脂組成物をふるい分けするふるい分け試験が行われる場合に、複数の粒子のうち80質量%以上の粒子は、目開き0.85mmのふるい、目開き0.5mmのふるい、及び目開き0.3mmのふるいのうち、いずれか一つのふるい上に留まる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の粒子からなる封止用樹脂組成物であり、JIS Z8815-1994の乾式ふるい分け試験に準拠し、目開き1mmのふるい、目開き0.85mmのふるい、目開き0.5mmのふるい、及び目開き0.3mmのふるいを記載された順番に使用することによって、前記封止用樹脂組成物をふるい分けするふるい分け試験が行われる場合に、前記複数の粒子のうち80質量%以上の粒子は、前記目開き0.85mmのふるい、前記目開き0.5mmのふるい、及び前記目開き0.3mmのふるいのうち、いずれか一つのふるい上に留まる、
封止用樹脂組成物。
【請求項2】
前記ふるい分け試験が行われる場合に、前記複数の粒子のうち90質量%以上の粒子は、前記目開き0.85mmのふるい、前記目開き0.5mmのふるい、及び前記目開き0.3mmのふるいのうち、いずれか一つのふるい上に留まる、
請求項1に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項3】
前記ふるい分け試験が行われる場合に、前記目開き0.85mmのふるい上に留まる粒子と、前記目開き0.5mmのふるい上に留まる粒子と、前記目開き0.3mmのふるい上に留まる粒子との合計が、前記複数の粒子全体の95質量%以上である、
請求項1又は2に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項4】
前記複数の粒子が、平坦面と、曲面とを有し、前記平坦面と直交する少なくとも一つの断面が、前記平坦面に由来する線分と、前記曲面に由来し前記線分の二つの端部間を連結する凸曲線である曲線とで表される輪郭形状を有する粒子を含む、
請求項1から3のいずれか一項に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項5】
前記曲面が、前記平坦面の外周に接する凸曲面である、
請求項4に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項6】
前記線分の長さL1と、前記曲線の長さL2とが、下記の式(1)に示す関係を有する、
1.1×L1<L2<2×L1・・・(1)
請求項4又は5に記載の封止用樹脂組成物。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の封止用樹脂組成物を製造する方法であり、前記封止用樹脂組成物の原料と溶剤とを含む混合物の液滴を平坦な面の上に付着させる液滴作製工程と、
前記液滴を乾燥させる乾燥工程と、を含む、
封止用樹脂組成物の製造方法。
【請求項8】
前記乾燥工程は、前記液滴を加熱する第一加熱工程と、前記第一加熱工程の後に続く、前記液滴を加熱する第二加熱工程とを含み、前記第二加熱工程における加熱温度は、前記第一加熱工程における加熱温度よりも高い、
請求項7に記載の封止用樹脂組成物の製造方法。
【請求項9】
半導体素子と、前記半導体素子を封止する封止材と、を備える半導体装置の製造方法であり、
請求項1から6のいずれか一項に記載の封止用樹脂組成物を、金型に配置する配置工程と、
前記封止用樹脂組成物を、圧縮成形法で成形することで前記封止材を作製する圧縮成形工程と、を含む
半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、封止用樹脂組成物、封止用樹脂組成物の製造方法、及び半導体装置の製造方法に関し、詳細には、半導体素子の封止に使用可能な封止用樹脂組成物、この封止用樹脂組成物の製造方法、及びこの封止用樹脂組成物から作製される半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂組成物による封止の方法として、粒子状の樹脂組成物を使用する圧縮成形法が例示される。例えば、特許文献1には、顆粒状のエポキシ樹脂組成物を金型に蒔いた後に加熱し、溶融したエポキシ樹脂組成物が半導体素子を取り囲むようにエポキシ樹脂組成物を硬化させることによって、半導体素子が封止されることが記載されている。このエポキシ樹脂組成物は、遠心製粉法、粉砕ふるい分け法、及びホットカット方等によって製造された特定の粒度分布を有する顆粒状であり、そのため、蒔きむらを抑制できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明者の調査によると、特許文献1に記載のエポキシ樹脂組成物では、粉砕により作製された粒子径の小さな粒子からなるため、蒔きむらは生じにくいが、一方で、エポキシ樹脂組成物の粒子の表面からの粉立ちが生じやすくなってしまうという問題がある。
【0005】
本開示の課題は、蒔きむらと、粉立ちとが、生じにくい封止用樹脂組成物、この封止用樹脂組成物の製造方法、及びこの封止用樹脂組成物から作製される半導体装置の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る封止用樹脂組成物は、複数の粒子からなる封止用樹脂組成物であり、JIS Z8815-1994の乾式ふるい分け試験に準拠し、目開き1mmのふるい、目開き0.85mmのふるい、目開き0.5mmのふるい、及び目開き0.3mmのふるいを記載された順番に使用することによって、前記封止用樹脂組成物をふるい分けするふるい分け試験が行われる場合に、前記複数の粒子のうち80質量%以上の粒子は、前記目開き0.85mmのふるい、前記目開き0.5mmのふるい、及び前記目開き0.3mmのふるいのうち、いずれか一つのふるい上に留まる。
【0007】
本開示の一態様に係る封止用樹脂組成物の製造方法は、前記封止用樹脂組成物の原料と溶剤とを含む混合物の液滴を平坦な面の上に付着させる液滴作製工程と、前記液滴を乾燥させる乾燥工程と、を含む。
【0008】
本開示の一態様に係る半導体装置の製造方法は、半導体素子と、前記半導体素子を封止する封止材と、を備える半導体装置の製造方法であり、前記封止用樹脂組成物を、金型に配置する配置工程と、前記封止用樹脂組成物を、圧縮成形法で成形することで前記封止材を作製する圧縮成形工程と、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一態様によると、蒔きむらと、粉立ちとが、生じにくい封止用樹脂組成物、この封止用樹脂組成物の製造方法、及びこの封止用樹脂組成物から作製される半導体装置の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1Aは、本開示の一実施形態に係る粒子の斜視図、
図1Bは、本開示の他の実施形態に係る粒子の斜視図、
図1Cは、本開示の他の実施形態に係る粒子の斜視図である。
【
図2】
図2Aは、本開示の一実施形態に係る粒子の側面図、
図2Bは、本開示の一実施形態に係る粒子の平面図、
図2Cは、
図2BのI-I切断線における断面図である。
【
図3】
図3Aは、本開示の他の実施形態に係る粒子の側面図、
図3Bは、本開示の他の実施形態に係る粒子の平面図、
図3Cは、
図3BのI-I切断線における断面図である。
【
図4】
図4Aは、本開示の他の実施形態に係る粒子の側面図、
図4Bは、本開示の他の実施形態に係る粒子の平面図、
図4Cは、
図4BのI-I切断線における断面図である。
【
図5】
図5Aは、本実施形態に係る、封止用樹脂組成物が作製される際に用いられるディスペンサー装置の平面図、
図5Bは、前記ディスペンサー装置の正面図、
図5Cは前記ディスペンサー装置の側面図である。
【
図6】
図6Aから
図6Eは、本実施形態に係る、半導体装置の製造方法の各工程を示す概略の断面図である。
【
図7】
図7は、本実施形態に係る、半導体装置の製造方法によって製造された半導体装置を示す概略の断面図である。
【
図8】
図8は、本開示の実施例1の封止用樹脂組成物の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施形態について説明する。なお、本開示は下記の実施形態に限られない。下記の実施形態は、本開示の様々な実施形態の例に過ぎず、本開示の目的を達成できれば設計に応じて種々の変更が可能である。
【0012】
<封止用樹脂組成物>
本開示の一実施形態に係る封止用樹脂組成物について説明する。
【0013】
本開示の一実施形態に係る封止用樹脂組成物は、複数の粒子からなる。JIS Z8815-1994の乾式ふるい分け試験に準拠し、目開き1mmのふるい、目開き0.85mmのふるい、目開き0.5mmのふるい、及び目開き0.3mmのふるいを記載された順番に使用することによって、封止用樹脂組成物をふるい分けするふるい分け試験が行われる場合に、複数の粒子のうち80質量%以上の粒子は、目開き0.85mmのふるい、目開き0.5mmのふるい、及び目開き0.3mmのふるいのうち、いずれか一つのふるい上に留まる。
【0014】
本実施形態によれば、封止用樹脂組成物は、前記の粒子からなるため、封止用樹脂組成物が金型に配置される際の蒔きむらが生じにくく、かつ封止用樹脂組成物からの粉立ちが生じにくい。
【0015】
本実施形態に係る封止用樹脂組成物の、より具体的な構成について説明する。
【0016】
<封止用樹脂組成物の粒子>
(粒子径)
本実施形態に係る粒子の粒子径について詳細に説明する。
【0017】
上述の通り、JIS Z8815-1994の乾式ふるい分け試験に準拠し、目開き1mmのふるい、目開き0.85mmのふるい、目開き0.5mmのふるい、及び目開き0.3mmのふるいを記載された順番に使用することによって、封止用樹脂組成物をふるい分けするふるい分け試験が行われる場合に、複数の粒子のうち80質量%以上の粒子は、目開き0.85mmのふるい、目開き0.5mmのふるい、及び目開き0.3mmのふるいのうち、いずれか一つのふるい上に留まる。この場合、本実施形態に係る封止用樹脂組成物は、粒子の均一性が高いため、封止用樹脂組成物が金型に充填される際に、相対的に大きな粒子径を有する粒子が、表面に浮き上がってくる現象が起きにくくなる。このため、封止用樹脂組成物が金型に配置される際の蒔きむらが生じにくい。さらに、粒子径の小さな粒子の割合が低いため、封止用樹脂組成物からの粉立ちが生じにくい。
【0018】
また、上述のふるい分け試験が行われる場合、複数の粒子のうち90質量%以上の粒子は、目開き0.85mmのふるい、目開き0.5mmのふるい、及び目開き0.3mmのふるいのうち、いずれか一つのふるい上に留まることが好ましく、複数の粒子のうち3.0質量%以上の粒子は、目開き0.85mmのふるい、目開き0.5mmのふるい、及び目開き0.3mmのふるいのうち、いずれか一つのふるい上に留まることがより好ましい。
【0019】
上述のふるい分け試験が行われる場合に、目開き0.85mmのふるい上に留まる粒子と、目開き0.5mmのふるい上に留まる粒子と、目開き0.3mmのふるい上に留まる粒子との合計が、複数の粒子全体の95質量%以上であることが好ましい。この場合、封止用樹脂組成物が金型に配置される際の蒔きむらが更に生じにくく、かつ封止用樹脂組成物からの粉立ちが更に生じにくい。加えて、封止用樹脂組成物が製造される際の生産性の観点から好ましい。また、上述のふるい分け試験が行われる場合に、目開き0.85mmのふるい上に留まる粒子と、目開き0.5mmのふるい上に留まる粒子と、目開き0.3mmのふるい上に留まる粒子との合計が、複数の粒子全体の1.0質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることがさらに好ましい。
【0020】
(形状)
本実施形態に係る粒子の形状について
図1から
図4を参照しながら、詳細に説明する。
【0021】
上述の通り、本実施形態に係る封止用樹脂組成物は、複数の粒子からなる封止用樹脂組成物である。
【0022】
本実施形態に係る粒子4は、例えば、平坦面5と、曲面6とを有し、平坦面5と直交する少なくとも一つの断面が、平坦面5に由来する線分51と、曲面6に由来し、線分51の二つの端部間を連結する凸曲線とで表される形状を有することが好ましい。この場合、封止用樹脂組成物が金型に蒔かれた後に転がりにくくなり、その結果、この封止用樹脂組成物が金型に配置される際の蒔きむらが生じにくくなる。これは、粒子4の姿勢は、平坦面5が下方を向いた状態で安定しやすくなるためであると、推察される。さらに、この場合、粒子4が破砕されにくくなるため、封止用樹脂組成物からの粉立ちが更に生じにくい。
【0023】
本実施形態に係る粒子4における平坦面5の形状は、例えば、円形、楕円形、扇形、一方向に長い形、又は複数の円が一部重なった状態で直線状に並んだ形等が挙げられる。これらの中でも、平坦面5の形状は、円形が好ましい。
【0024】
本実施形態に係る粒子4における曲面6は、平坦面5の外周に接する凸曲面であることが好ましい。この場合、粒子4の平坦面5が下方を向いた状態となることで、粒子4の安定性が高くなり、封止用樹脂組成物が金型に蒔かれた後に転がりにくくなる。その結果、この封止用樹脂組成物が金型に配置される際の蒔きむらが起こりにくくなる。また、この凸曲面は、わずかに歪んでいてもよく、また、わずかなへこみを有していてもよい。すなわち、凸曲面は、見た目で凸曲面であると認識できればよい。
【0025】
本実施形態に係る粒子4における平坦面5と直交する少なくとも一つの断面が、曲面6に由来し、線分51の二つの端部間を連結する曲線61を有していることが好ましい。曲線61の形状は、例えば、凸状、凹状、又は波形となる凹凸状等が挙げられる。これらの中で、曲線61の形状は、凸状が好ましい。すなわち、曲線61は、凸曲線であることが好ましい。さらに、凸曲線の形状は、例えば、円弧状、又は弓状等が挙げられる。これらの中で、凸曲線の形状は、円弧状であることが好ましい。また、この凸曲線は、わずかに歪んでいてもよく、また、わずかなへこみを有していてもよい。すなわち、凸曲線は、見た目で凸曲線であると認識できればよい。
【0026】
本実施形態では、前記の平坦面5に由来する線分51の長さL1と、線分51の二つの端部間を連結する曲線61の長さL2とが、下記の式(1)に示す関係を有することが好ましい。
1.1×L1<L2<2×L1・・・(1)
【0027】
L2が、1.1×L1よりも大きい場合、粒子4が搬送される際の衝撃等により破砕されにくくなり、その結果、封止用樹脂組成物からの粉立ちが更に生じにくくなる。そして、L2が、2×L1よりも小さい場合、封止用樹脂組成物が金型に蒔かれた後に転がりにくくなり、その結果、この封止用樹脂組成物が金型に配置される際の蒔きむらが更に起こりにくくなる。加えて、L2は、L1の1.3倍以上であればより好ましく、1.5倍以上であれば更に好ましい。また、L2は、L1の2.0倍以下であればより好ましく、1.8倍以下であれば更に好ましい。
【0028】
L1は、0.3mm以上が好ましく、0.5mm以上がより好ましい。また、L1は、1.7mm以下が好ましく、1.0mm以下がより好ましい。L2は、0.65mm以上が好ましく、0.85mm以上がより好ましい。また、L2は、1.8mm以下が好ましく、1.5mm以下がより好ましい。
【0029】
本実施形態に係る粒子4のアスペクト比は、3以下が好ましい。この場合、粒子4は搬送される際の衝撃等により破砕しにくくなる。粒子4が破砕した場合、封止用樹脂組成物の微粉が発生し、その結果、封止用樹脂組成物からの粉立ちが生じやすくなる。なお、ここでいうアスペクト比は、次のように定義している。まず、100個の粒子について、粒子の顕微鏡像から、粒子の最大長径と、この最大長径と直交する幅寸法とを測定する。次に、その結果に基づき、(最大長径)/(幅寸法)の値を算出する。そして、100個の粒子における、(最大長径)/(幅寸法)の値の平均値を、アスペクト比とする。また、アスペクト比の上限は、5である。
【0030】
粒子4の表面は、平滑であることが好ましい。この場合、粒子4の表面から微粉が生じにくくなり、そのため粉立ちが更に生じにくくなる。
【0031】
次に、本実施形態に係る具体的な粒子4の形状について説明する。
【0032】
(第一形状)
本実施形態に係る粒子4は、第一形状を有する粒子(以下、粒子40という)を含むことが好ましい。粒子40の形状を、
図1A、及び
図2Aから
図2Cに示す。
図1A及び
図2Aに示すように、粒子40は、円形の平坦面5と、その平坦面5の外周に接するドーム状の凸曲面である曲面6とを有する。
図2Bに示すように、粒子40を平坦面5とは反対側から俯瞰したときの形状は、円形である。
図2Cに示すように、粒子40の断面の形状は、平坦面5に由来する線分51と、曲面6に由来し、線分51の二つの端部間を連結する円弧状の凸曲線とを有する。
図2Cは、
図2Bに示されるI-I線、すなわち、粒子40を、平坦面5の中心を通り、かつ平坦面5と直交する面で切断したときの断面を示している。粒子40が有する平坦面5の中心を通り、かつ平坦面5と直交する、いかなる断面図においても、粒子40の断面の形状は、平坦面5に由来する線分51と、曲面6に由来し、線分51の二つの端部間を連結する円弧状の凸曲線とを有する。さらに、いかなる断面図においても、線分51の長さL1と、曲線61の長さL2とが、上記の式(1)に示す関係を満たす。加えて、粒子40は、上述したアスペクト比の条件を満たす。これらにより、粒子40が金型に蒔かれた後に転がりにくくなる。さらに、搬送の際に生じる衝撃等により、粒子40が破砕されにくくなる。
【0033】
(第二形状)
本実施形態に係る粒子4は、第二形状を有する粒子(以下、粒子41という)を含むことも好ましい。粒子41の形状を、
図1B、及び
図3Aから
図3Cに示す。
図1Bに示すように、この粒子41は、一方向に長くかつ両端が円弧状の形状を有する平坦面5と、平坦面5の外周に接する凸曲面である曲面6とを有する。凸曲面は、平坦面5の長手方向に沿った軸を有する半円筒の両端に球面の一部を繋げた形状を有する。
図3Bに示すように、粒子41を平坦面5とは反対側から俯瞰したときの形状は、一方向に長い形状である。
図3Cに示すように、粒子41の断面の形状は、平坦面5に由来する線分51と、曲面6に由来し、線分51の二つの端部間を連結する円弧状の凸曲線とを有する。
図3Cは、
図3Bに示されるI-I線で切断したときの断面、すなわち、粒子41を、平坦面5と直交し、かつ平坦面5の長手方向とも直交する面で切断した場合の断面を示している。
図3Cに示す断面において、線分51の長さL1と、曲線61の長さL2とが、上記の式(1)に示す関係を満たす。ただし、粒子41は、上述したアスペクト比の条件を満たさない。このため、上述の第一形状の粒子40の方が、破砕されにくく、その結果、微粉が発生しにくい。
【0034】
(第三形状)
本実施形態に係る粒子4は、第三形状を有する粒子(以下、粒子42という)を含むことも好ましい。粒子42の形状を、
図1C、及び
図4Aから
図4Cに示す。
図1Cに示すように、この粒子42は、複数の円が一部重なった状態で直線状に並んだ平坦面5と、凸曲面ではなく、長手方向と平行な断面の輪郭が波形となる凹凸である曲面6(
図4A参照)とを有する。
図4Bに示すように、粒子42を平坦面5とは反対側から俯瞰したときの形状は、複数の円が一部重なった状態で、直線状に並んだ形状である。
図4Cに示すように、粒子42の断面の形状は、平坦面5に由来する線分51と、曲面6に由来し、線分51の二つの端部間を連結する円弧状の凸曲線とで表される形状を有する。
図4Cは、
図4Bに示されるI-I線で切断したときの断面、すなわち、粒子41を、平坦面5と直交し、平坦面5の長手方向とも直交し、かつ曲面6における凸状の部分の頂部を通る面で切断した場合の断面を示している。
図4Cに示す断面において、線分51の長さL1と、曲線61の長さL2とが、上記の式(1)に示す関係を満たす。しかし、粒子42は、上述したアスペクト比の条件を満たさない。粒子42は、凸曲面を有しておらず、かつ好ましいアスペクト比の条件を満たしていないため、上述の第一形状の粒子40、及び第二形状の粒子41の方が破砕されにくく、微粉が生じにくい。
【0035】
なお、粒子40、粒子41及び粒子42の各々の形状は、上記で説明された形状から若干歪んでいてもよく、わずかな凹みを有していてもよい。すなわち、粒子40、粒子41及び粒子42の各々は、上記で説明された形状と同視しうる形状を有すればよい。また、粒子4の形状は上記のみに限られず、粒子4は、上記の粒子40、粒子41及び粒子42以外の、種々の形状を有する粒子を含みうる。
【0036】
<封止用樹脂組成物の組成>
本実施形態に係る封止用樹脂組成物の組成について、詳細に説明する。
【0037】
本実施形態に係る封止用樹脂組成物の組成は、例えば、封止材として使用される適宜の組成を有することができる。
【0038】
封止用樹脂組成物は、例えば、反応性樹脂(A)と、硬化剤(B)と、硬化促進剤(C)と、無機充填材(D)とを含むことができる。すなわち、封止用樹脂組成物の原料は、例えば、反応性樹脂(A)と、硬化剤(B)と、硬化促進剤(C)と、無機充填材(D)とである。
【0039】
反応性樹脂(A)は、封止材の製造に使用される適宜の反応性樹脂を含むことができる。反応性樹脂(A)は、例えば、熱硬化性樹脂、及び紫外線硬化性樹脂等よりなる群から選択される少なくとも一種を含むことができる。
【0040】
熱硬化性樹脂は、例えば、エポキシ樹脂、イミド樹脂、フェノール樹脂、シアネート樹脂、メラミン樹脂、アクリル樹脂よりなる群から選択される少なくとも一種を含むことができる。
【0041】
エポキシ樹脂は、例えば、アルキルフェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、骨格を有するナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、多官能型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラキスフェノールエタン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ブロム含有エポキシ樹脂、ポリアミンとエピクロルヒドリンとの反応により得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂、及び多塩基酸とエピクロルヒドリンとの反応により得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂よりなる群から選択される少なくとも一種を含むことができる。
【0042】
硬化剤(B)は、封止材の製造に使用される適宜の硬化剤を含むことができる。硬化剤(B)は、例えば、ジシアンジアミド、フェノール系硬化剤、シクロペンタジエン、アミン系硬化剤、フェニレン骨格又はビフェニレン骨格を有するアラルキル型樹脂、及び酸無水物等よりなる群から選択される少なくとも一種を含むことができる。フェノール系硬化剤は、1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を含むことができる。フェノール系硬化剤は、例えば、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、多官能型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、テルペン性フェノール樹脂、ナフタレン型フェノール樹脂、トリアジン変性ノボラック樹脂、及びビスフェノール型樹脂よりなる群から選択される少なくとも1種を含むことができる。ビスフェノール型樹脂は、例えば、ビスフェノールA型樹脂、ビスフェノールF型樹脂、及びビスフェノールS型樹脂よりなる群から選択される少なくとも1種を含むことができる。
【0043】
硬化促進剤(C)は、封止材に使用される適宜の硬化促進剤を含むことができる。硬化促進剤(C)は、例えば、三級アミン、三級アミン塩、ホスフィン、ホスホニウム塩、トリアリールホスフィン類、テトラフェニルホスホニウム・テトラフェニルボレート、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、及び1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7よりなる群から選択される少なくとも一種を含むことができる。
【0044】
無機充填材(D)は、封止材に配合される適宜の無機充填材を含むことができる。無機充填材(D)は、電気絶縁性を有することが好ましい。ここで、電気絶縁性とは、無機充填材(D)の体積固有抵抗率が1×109Ω/cm以上であることを意味する。無機充填材(D)は、金属酸化物、金属窒化物、金属炭酸塩、及び金属水酸化物よりなる群から選択される少なくとも一種を含むことができる。金属酸化物は、例えば、アルミナ、溶融シリカ、球状シリカ、球状溶融シリカ、結晶性シリカ、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化チタン、酸化ベリリウム、酸化銅、亜酸化銅、及び酸化亜鉛等よりなる群から選択される少なくとも一種を含むことができる。金属窒化物は、例えば、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、及び窒化ケイ素等よりなる群から選択される少なくとも一種を含むことができる。金属炭酸塩は、例えば、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム等よりなる群から選択される少なくとも一種を含むことができる。金属水酸化物は、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、及び水酸化マグネシウム等よりなる群から選択される少なくとも一種を含むことができる。無機充填材(D)の形状は、例えば、球状、扁平状、楕円状、チューブ状、ワイヤ状、針状、板状、ピーナッツ状、又は不定形状等が挙げられる。これらの中でも、無機充填材(D)の形状は球状が好ましい。この場合、後述する液滴作製工程において、無機充填材(D)を含んだ混合物(c)が、ディスペンサーから吐出されやすくなる。
【0045】
封止用樹脂組成物は、上述の原料以外の添加剤を含んでいてもよい。添加剤は、例えば、カップリング剤、分散剤、難燃剤、難燃助剤、離型剤、イオントラップ剤、揺変性付与剤、界面活性剤、消泡剤、レベリング剤、顔料、着色剤、低応力化剤、粘着付与材、及びシリコーン可撓剤よりなる群から選択される少なくとも一種を含む。
【0046】
封止用樹脂組成物は、半導体の要求性能に応じて、適宜の組成を有しうる。すなわち、封止用樹脂組成物は、半導体の要求性能に応じて、上述した原料及び添加剤以外の成分を含むことができる。
【0047】
<封止用樹脂組成物の製造方法>
本実施形態に係る封止用樹脂組成物の製造方法について、詳細に説明する。
【0048】
本実施形態に係る封止用樹脂組成物の製造方法は、封止用樹脂組成物の原料と溶剤とを含む混合物の液滴を、平坦な面の上に付着させる液滴作製工程と、液滴を乾燥させる乾燥工程と、を含む。この場合、例えば、上述の第一形状を有する粒子、第二形状を有する粒子、及び第三形状を有する粒子のような、平坦面と曲面とを有する粒子が作製されやすく、また、粒子の大きさにおける均一性が高く、かつ平滑な表面を有する粒子が作製されやすい。これらにより、封止用樹脂組成物が金型に配置される際の蒔きむらがより生じにくくなり、かつ封止用樹脂組成物からの粉立ちがより生じにくくなる。さらに、乾燥工程は、液滴を加熱する第一加熱工程と、第一加熱工程の後に配置される、液滴を加熱する第二加熱工程とを含む。そして、第二加熱工程における加熱温度は、第一加熱工程における加熱温度より高いことが好ましい。また、液滴作製工程の前に、封止用樹脂組成物の原料と溶剤とを混合することで混合物を作製する、混合物作製工程を備えていてもよい。
【0049】
(混合物作製工程)
まず、封止用樹脂組成物を製造するために、例えば、封止用樹脂組成物の原料と、溶剤とを準備する。封止用樹脂組成物の原料は、上述の通り、反応性樹脂(A)と、硬化剤(B)と、硬化促進剤(C)と、無機充填材(D)等とすることができる。
【0050】
次に、上述の原料等を計量して配合した後に、均一になるように混練し、混練物(a)を得る。この混練物(a)は、上述の原料等が配合された市販の組成物を使用しても構わない。次に、この混練物(a)を冷却コンベアで伸ばして板状にしてから、粉砕することで粉砕物(b)を得る。そして、この粉砕物(b)と溶剤とを混合することによって混合物(c)を作製する。
【0051】
混合物(c)を作製する際に用いられる溶剤は、例えば、メチルエチルケトン(MEK)、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトン、及びメチルイソブチルケトン(MIBK)等よりなる群から選択される少なくとも一種を含むことができる。混合物(c)に対する溶剤の百分比は、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。また、混合物(c)に対する溶剤の百分比は、30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましい。なお、使用する混練物(a)の組成、又は後述する乾燥工程の乾燥条件に合わせて、適宜溶剤が選択されることが好ましい。また、この混合物(c)は、上述の原料等と溶剤とが混合された市販の組成物を使用しても構わない。
【0052】
(液滴作製工程)
次に、混合物(c)を平坦な面の上に付着させることで、液滴を作製する。混合物が吐出される際の混合物(c)の粘度は、0.5Pa・s以上60.0Pa・s以下に調整されていることが好ましく、1.0Pa・s以上20.0Pa・s以下に調整されていることがより好ましい。これは、混合物(c)の粘度が調整されている場合、均一な大きさ及び形状の液滴が作製されやすくなり、その結果、均一性の高い粒子からなる封止用樹脂組成物が得られやすいからであると、推察される。また、必要に応じて混合物(c)の温度を調製することによって、混合物(c)の粘度を、上記の範囲内に調整することが好ましい。
【0053】
具体的に液滴を作製する方法としては、例えば、ディスペンサー装置7を用いる方法が挙げられる。封止用樹脂組成物が作製される際に、ディスペンサー装置7が用いられた場合、滑らかな混合物(c)の液滴が作製されやすく、その結果、平滑な表面を有する粒子からなる封止用樹脂組成物が得られやすくなる。平滑な表面を有する粒子からなる封止用樹脂組成物が金型に蒔かれた場合、粉立ちが生じにくい。
【0054】
ディスペンサー装置7を用いて液滴を作成する方法について、
図5を参照しながら説明する。ディスペンサー装置7は、基台12と、ステージ13と、吐出部14と、第一駆動部15と、第二駆動部16と、制御部(不図示)とを備える。
【0055】
ステージ13は、平坦な上面を有し、基台12の上方に配置されている。ステージ13上に、対象物3が配置される。この対象物3は、例えば、平坦な面である。ステージ13は、ステージ13対して対象物3を固定可能であってもよい。例えば、ステージ13は、対象物3を固定する留め金を備えていてもよい。またステージ13は、ステージ13に配置された対象物3を負圧によって固定する吸着テーブルでもよい。
【0056】
第一駆動部15は、ステージ13を基台12の上方に保持し、かつステージ13を基台12に対して、上下方向と直交する一つの方向に移動させる。第一駆動部15は、例えば、アクチュエータ及びモータ等を備える。
【0057】
吐出部14は、ステージ13の上方に配置されている。吐出部14は、本体17と、本体17の下端に取り付けられているノズル1を備える(
図5B参照)。ノズル1は、吐出口が下方を向くように、配置される。また、吐出口は、生産効率向上のために、複数存在することが好ましい。本体17内には、混合物(c)が貯留されており、かつ本体17内には、混合物(c)をノズル1へ断続的に供給する機構(以下、吐出機構)が備えられている。
【0058】
第二駆動部16は、吐出部14をステージ13に対して保持し、かつ吐出部14を、上下方向と直交し、かつ第一駆動部15によるステージ13の移動方向Xとも直交する、一つの方向に移動させる。ここでいう、移動方向Xとは、吐出口に対して、対象物3が移動する方向のことを示す。第二駆動部16は、例えば、アクチュエータ及びモータを備える。
【0059】
また、第二駆動部16は、吐出部14を、吐出部14の上下方向位置を変更可能なように保持している。これにより、対象物3とノズル1との間の上下方向の距離が変更可能となる。
【0060】
ここで、
図5Aから
図5Cに示す例において、上下方向を対向方向Zとして、第一駆動部15よってステージ13が移動する方向を直交方向Yとして、第二駆動部16によって吐出部14が移動する方向を移動方向Xとして、各々規定する。
【0061】
図5に示すディスペンサー装置7を作動させると、ステージ13が停止した状態で、第二駆動部16は、吐出部14を、対象物3の上方で、移動方向Xの一方の向き(以下、第一の向きという)に移動させる。これにより、ノズル1の吐出口が対象物3と対向した状態で、対象物3がノズル1に対して相対的に移動方向Xの第一の向きとは反対向きに(以下、第二の向きという)に移動する。吐出部14が移動している間、吐出部14における吐出機構が作動して、吐出部14におけるノズル1の吐出口から混合物(c)が吐出される。これにより、吐出口から吐出された混合物(c)が対象物3に到達する。続いて、吐出機構が停止して吐出口からの混合物(c)の吐出が停止し、かつ第二駆動部16は吐出部14の移動を停止させる。
【0062】
第二駆動部16が吐出部14を移動させるときには、まず第二駆動部16は、吐出部14が停止している状態から吐出部14の移動を開始させる。このとき、例えば、第二駆動部16はまず吐出部14の移動速度を増大させてから吐出部14を等速で移動させ、続いて吐出部14の移動速度を減少させて、吐出部14を停止させる。この場合、好ましくは、吐出部14が停止している間は吐出機構が停止していることで吐出口からは混合物(c)は吐出されない。吐出部14が移動開始してから、吐出部14の速度が増大している間も、吐出口からは混合物(c)は吐出されない。吐出部14の移動速度が等速になってから、吐出機構が作動することで吐出口から混合物(c)が吐出され、吐出部14の移動速度が減少する前に吐出機構が停止して吐出口からの混合物(c)の吐出が停止される。続いて、吐出口から混合物(c)が吐出されないまま、吐出部14の移動速度が減少し、続いて吐出部14が停止する。この場合、吐出部14が等速で移動している間のみ吐出口から混合物(c)が吐出されるため、対象物3に配置される混合物(c)の偏りが、特に生じにくくなる。
【0063】
第二駆動部16が吐出部14の移動を停止させたら、続いて第一駆動部15がステージ13を直交方向Yの一方の向き(以下の、第三の向きという)に一定距離移動させてから停止させる。これにより、対象物3がノズル1に対して相対的に直交方向Yの第三の向きに一定距離移動する。
【0064】
続いて、ステージ13が停止した状態で、第二駆動部16は、吐出部14を、対象物3の上方で、移動方向Xの第二の向きに移動させる。これにより、ノズル1の吐出口が対象物3と対向した状態で、対象物3がノズル1に対して相対的に移動方向Xの第一の向きに移動する。吐出部14が移動している間、吐出部14における吐出機構が作動して、吐出部14におけるノズル1の吐出口から混合物(c)が吐出される。これにより、吐出口から吐出された混合物(c)が対象物3に到達する。続いて、吐出機構が停止して吐出口からの混合物(c)の吐出が停止し、かつ第二駆動部16は吐出部14の移動を停止させる。
【0065】
第二駆動部16が吐出部14の移動を停止させたら、続いて、第一駆動部15がステージ13を直交方向Yの第三の向きに一定距離移動させてから停止させる。これにより、対象物3がノズル1に対して相対的に直交方向Yの第三の向きに一定距離移動する。
【0066】
上位の動作が繰り返されることで、対象物3上に混合物(c)の液滴が付着される。
【0067】
なお、ディスペンサー装置7の構成及び動作は、上記のみに限られない。
【0068】
ディスペンサー装置7により混合物(c)の液滴が作製される場合に、ディスペンサー装置7の吐出条件を適宜設定することによって、所望の形状及び大きさを有する液滴を作製することができる。
【0069】
ディスペンサー装置7のノズル1から吐出される混合物(c)は、断続的に吐出される。ノズル1から混合物(c)が断続的に吐出される場合、吐出口から吐出された混合物(c)は、対象物3上で、移動方向Xに並ぶ粒状に成形される。すなわち、対象物3上に、粒状の混合物(c)の液滴が得られる。この粒状の混合物(c)の液滴を乾燥させた場合、例えば、
図1Aに示すような粒子が得られやすくなる。ただし、ノズル1から混合物(c)が断続的に吐出されても混合物(c)が吐出される間隔及び対象物3の移動速度によっては、対象物3上で混合物(c)の液滴が連なることで、混合物(c)が線状に成形される。すなわち、対象物3上に、線状の混合物(c)の液滴が得られる。この線状の混合物(c)を乾燥させた場合、例えば、
図1B又は
図1Cに示すような粒子が得られやすくなる。
【0070】
また、液滴を作製する方法は、ディスペンサーを用いる方法だけに限定されない。液滴を作製するその他の方法は、例えば、スクリーン印刷機を用いることによって平坦な面に混合物(c)を塗布する方法等が挙げられる。
【0071】
(乾燥工程)
次に、平坦な面の上に付着させた混合物(c)の液滴を乾燥させる。液滴を乾燥させる方法としては、例えば、液滴を加熱することで乾燥させる方法が挙げられる。加熱する方法としては、例えば、乾燥機、強制送風循環タイプの恒温器等の乾燥装置、又は実験用プレート等を使用する方法が挙げられる。乾燥工程は、液滴を加熱する第一加熱工程と、第一加熱工程の後に続く、液滴を加熱する第二加熱工程とを含み、第二加熱工程における加熱温度の方が、第一加熱工程における加熱温度よりも高いことが好ましい。これは、加熱工程を段階的に行うことによって、液滴に含まれる溶剤の急激な気化膨張を抑制することができ、その結果、液滴の爆発を生じにくくすることができるからである。
【0072】
第一加熱工程の加熱温度は、液滴の爆発を生じさせることなく、液滴中の溶剤を低減できるように設定されることが好ましく、第二加熱工程の加熱温度は、液滴中の溶剤を充分に低減できるように設定されることが好ましい。すなわち、第一加熱工程の加熱温度及び第二加熱工程の温度は、使用する溶剤に合わせて適宜設定されることが好ましい。
【0073】
第一加熱工程の加熱温度と第二加熱温度との温度差は、10℃以上から60℃以下が好ましく、20℃以上から40℃以下がより好ましい。
【0074】
第一加熱工程の加熱時間は、10秒以上が好ましく、30秒以上がより好ましい。この場合、混合物(c)の液滴に含まれる溶剤が除去されやすくなる。また、第一加熱工程の加熱時間は、360秒以下が好ましく、60秒以下がより好ましい。この場合、粒子を効率よく生産できる。
【0075】
第二加熱工程の加熱時間は、60秒以上が好ましく、120秒以上がより好ましい。この場合、液滴に含まれる溶剤が除去されやすくなる。また、第二加熱工程の加熱時間は、600秒以下が好ましく、300秒以下がより好ましい。この場合、粒子を効率よく生産できる。
【0076】
乾燥工程後の封止用樹脂組成物に含まれる溶剤の濃度は、100ppm未満であることが好ましい。このとき、封止用樹脂組成物に含まれる溶剤の濃度は、JIS K0067-1992に記載された試験方法で確認することができる。
【0077】
液滴を乾燥させる方法は、液滴を加熱して乾燥させる方法だけに限定されない。その他の液滴を乾燥させる方法として、例えば、液滴を減圧して乾燥させる方法が挙げられる。すなわち、液滴を乾燥させる際に、真空乾燥装置が用いられてもよい。また、液滴を乾燥させる際に、加熱することと、減圧することとが、同時に行われても構わない。
【0078】
<半導体装置の製造方法>
本実施形態に係る封止用樹脂組成物を用いた半導体装置の製造方法を、
図6及び
図7を参照しながら説明する。
【0079】
本実施形態に係る半導体装置30の製造方法は封止用樹脂組成物200を、金型20に配置する配置工程と、圧縮成形法で成形することで封止材100を作製する圧縮成形工程と、を含む。また、この半導体装置の製造方法は、金型20内に配置した封止用樹脂組成物200を予備加熱する予備加熱工程を含むことも好ましく、さらに、圧縮成形法で作製された封止材100を加熱する後硬化工程を含むことも好ましい。
【0080】
次に、半導体の製造方法に含まれる、上記の工程について、詳細に説明する。
【0081】
(計量工程)
まず、
図6Aに示すように、封止用樹脂組成物200の計量を行う。より詳細には、複数の粒子からなる封止用樹脂組成物200を、容器19内に供給して、容器19内の封止用樹脂組成物200を適宜の計量手段によって計量する。なお、圧縮成形機2が備える下型21に封止用樹脂組成物200を直接供給する場合には、圧縮成形機2が備える計量ユニットによって封止用樹脂組成物200を計量してもよい。
【0082】
(配置工程)
次に、
図6Bに示す金型20を用意する。この金型20は圧縮成形機2に備えられている。金型20は、下型21及び上型22から構成されている。下型21は、下型21の中に封止用樹脂組成物200を配置することができるように、凹型の形状を有している。また、上型22は、下型21の上側に設置されている。上型22の下型21に対向する面には、基板23が設置されている。この基板23には、複数の半導体素子24が設けられている。基板23は、例えば、半導体パッケージ用基板、又はリードフレーム等である。半導体素子24は、例えば、ICチップ等の半導体チップ、トランジスタ、及びダイオード等よりなる群から選択される少なくとも一種を含むことができる。そして、配置工程では、
図6Bに示すように、用意した金型20内に封止用樹脂組成物200を配置する。より詳細には、封止用樹脂組成物200を、下型21に配置する。封止用樹脂組成物200は、均一性の高い粒子からなるため、封止用樹脂組成物200が下型21に撒かれた後に、粒子の分離が起こりにくい。このため、粒子を含む封止用樹脂組成物200を下型21に配置する際の蒔きむらを抑制することができ、封止用樹脂組成物200を下型21内に均一に撒くことができる。
【0083】
(予備加熱工程)
次に、
図6Cに示すように、下型21を加熱することで、下型21内に配置された封止用樹脂組成物200を予備加熱する。予備加熱時の下型21の温度は、例えば、2℃から200℃の範囲内であることが好ましい。また、加熱時間は、30秒から40秒の範囲内であることが好ましい。ただし、予備加熱時の下型21の温度は、使用する封止用樹脂組成物200の組成に応じて、適宜調整される。
【0084】
(圧縮成形工程)
次に、
図6Dに示すように、封止用樹脂組成物200を圧縮成形法で成形することで封止材100を作製する。より詳細には次の通りである。下型21を加熱しながら、下型21を上型22に向かって移動させる。このとき、封止用樹脂組成物200は加熱されたことにより溶融し、流動性を有している。そのため、溶融した封止用樹脂組成物200は、半導体素子24を覆うことができる。そして、封止用樹脂組成物200によって、半導体素子24が封止される。また、封止用樹脂組成物200が、下型21に均一に撒かれているため、金型20への封止用樹脂組成物200の供給不足が起こりにくい。さらに、封止用樹脂組成物200は、均一性の高い粒子からなるため、下型21との接触面積が大きくなりやすい。このため、封止用樹脂組成物200が、下型21内で溶融しやすくなる。圧縮成形工程における下型21の温度は、例えば、130℃から200℃の範囲内であることが好ましい。また、圧縮成形工程の圧縮時間は、例えば、10秒から300秒の範囲内であることが好ましい。さらに、圧縮成形工程の圧縮圧力は、例えば、2.0MPaから20.0MPaの範囲であることが好ましい。ただし、圧縮成形工程における下型21の温度、圧縮時間、及び圧縮圧力は、使用する封止用樹脂組成物200の組成に応じて適宜調整される。
【0085】
(後硬化工程)
次に、
図6Eに示すように、封止用樹脂組成物200を硬化させる。より詳細には、次の通りである。封止用樹脂組成物200を金型20に入れた状態で所定時間加熱することによって、封止用樹脂組成物200を硬化させることができる。これにより、封止用樹脂組成物200の硬化物である封止材100が形成される。そして、この封止材100によって、半導体素子24が、封止される。後硬化工程における金型20の温度は、例えば、100℃から200℃の範囲内であることが好ましい。また、圧縮成形工程の圧縮時間は、例えば、60秒から300秒の範囲内であることが好ましい。なお、圧縮成形工程における下型21の温度、及び圧縮時間は、使用する封止用樹脂組成物200の組成に応じて適宜調整される。また、封止用樹脂組成物200を硬化させた後に、半導体素子24が設けられた基板23を金型20から取り外すこともできる。
【0086】
上記の工程により、封止用樹脂組成物200の硬化物である封止材100によって半導体素子24が封止された半導体装置30を得ることができる。また、半導体装置30を製造する方法は、上記の製造方法に限られず、その他の工程を備えていてもよい。また、上記の工程によって製造された半導体装置30は、
図7に示すように、基板23と、基板23の上に設けられた複数の半導体素子24と、複数の半導体素子24を覆う封止材100とを含む。
【実施例0087】
以下、本実施形態の具体的な実施例について説明する。なお、本実施形態は、下記の実施例のみに制限されるものではない。
【0088】
(実施例1)
実施例1は次のようにして行われた。
【0089】
<封止用樹脂組成物の原料>
実施例で使用された封止用樹脂組成物の原料を以下に記載した。
・反応性樹脂:エポキシ樹脂(ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂を3:1)、配合量:78重量部
・硬化剤:フェノール樹脂硬化剤、配合量:60重量部
・硬化促進剤:トリフェニルホスフィン、配合量:1重量部
・無機充填材:溶融シリカ(最大粒径20μm以下)、配合量:860重量部
・離型剤:天然カルナバワックス、配合量:1重量部
【0090】
<溶剤>
実施例で使用された溶剤を以下に記載した。
・メチルエチルケトン(MEK 沸点:79℃)
【0091】
<混合物作製工程>
上述した原料と溶剤とを計量して配合した後に、均一になるように、混練機(株式会社栗本鐵工所 型番:T5 KCRニーダ)を使用して混練し、混練物を得た。次に、この混練物を冷却コンベア(KBKスチールプロダクツ株式会社製)で伸ばして板状にしてから、粉砕することで粉砕物を得た。そして、この粉砕物と溶剤とを混合機(井上製作所株式会社製 型番:PLM-50)を使用して混合することによって混合物を作製した。このとき、混合物に対する溶剤の割合は15%であり、室温(25℃)における混合物の粘度は16Pa・sであった。
【0092】
<液滴作製工程>
作製された混合物をJET式ディスペンサー(武蔵エンジニアリング株式会社製 型番MJET-A-2-4CTR)に供給し、鉄板の上に乗せたA4シートに混合物を吐出することで、A4シート上に混合物の液滴を作製した。また、このときの吐出条件を表1に示した。
【0093】
<乾燥工程>
実験用プレート(アズワン社製 型番:1-5170-01)を使用して、加熱することでA4シート上の混合物の液滴を乾燥させることで、封止用樹脂組成物(比重:1.80g/cm
3)が作製された。また、このときの第一加熱工程及び第二加熱工程の実施条件を表1に示した。そして、この乾燥工程により、複数の粒子からなる封止用樹脂組成物を得た。ここで、実施例1で得られた封止用樹脂組成物の粒子の写真を
図8に示す。さらに、この粒子は、
図1Aで示す形状の粒子に該当し、粒子の表面は平滑である。
【0094】
(実施例2~3)
実施例2から実施例3では、液滴作製工程におけるディスペンサー装置の吐出条件が異なることを除いて、実施例1と同様の方法で封止用樹脂組成物が作製された。また、実施例2から実施例3の各々のディスペンサー装置の吐出条件を、それぞれ表1に示した。実施例2から実施例3で得られた粒子は、いずれも
図1Aで示す形状の粒子に該当し、粒子の表面は平滑である。
【0095】
(比較例1)
比較例1に関しては以下の通りに行われた。
【0096】
<封止用樹脂組成物の原料>
実施例と同じ原料を使用した。
【0097】
<作製方法>
上述した原料を計量して配合した後に、均一になるように、混練機(株式会社栗本鐵工所株式会社製 品名T5 KCRニーダ)を使用して混練し、混練物を得た。次に、この混練物を冷却コンベア(井上製作所株式会社製 型番:PLM-50)で伸ばして板状にしてから、パワーミル破砕機(株式会社ダルトン株式会社製 型番:P-3)を使用して破砕することで、比較例1の封止用樹脂組成物を得た。
【0098】
また、比較例1の封止用樹脂組成物の写真を
図9A及び
図9Bに示した。
図9から確認できるように、比較例1の封止用樹脂組成物の表面は平滑でなく、粒子の形状及び大きさも揃っていない。
【0099】
次に、実施例及び比較例で得られた封止用樹脂組成物に関して、後述する評価試験を行った。
【0100】
[ふるい分け評価試験]
実施例1から実施例3、及び比較例1に関して、乾燥工程を経て得られた封止用樹脂組成物400gを、JIS Z8815-1994の乾式ふるい分け試験に準拠し、目開き1mmのふるい、目開き0.85mmのふるい、目開き0.5mmのふるい、及び目開き0.3mmのふるいを記載された順番に選択し、それぞれのふるいを10分間ふるうことによって、封止用樹脂組成物をふるい分けするふるい分け試験を行った。このときのふるい分け試験の結果を表1に示した。また、このとき使用したふるいの形状、ふるいの大きさ、及びふるいの種類を以下に記載した。
・ふるいの形状:円筒形
・ふるいの大きさ:200mm径
・ふるいの種類:織網
【0101】
[蒔き性評価試験]
実施例1から実施例3、及び比較例1に関して、乾燥工程を経て得られた封止用樹脂組成物10gを、モールディング装置(TOWA株式会社製 型番CPM-1080)を用いて、7.424cmの大きさの金型に蒔いた後、成形温度175℃で120秒間成形させることで封止用樹脂組成物を硬化させた。
【0102】
このときの蒔き性の評価を目視で確認し、結果を以下の表記方法で表1に示した。
「A」:金型中に封止用樹脂組成物の硬化物で覆われていない箇所が見られない
「B」:金型中に封止用樹脂組成物の硬化物で覆われていない箇所が見られる
【0103】
実施例1から実施例3の封止用樹脂組成物を用いた場合、金型中に封止用樹脂組成物の硬化物で覆われていない箇所が見られないことから、封止用樹脂組成物の蒔き性が良好であったことが確認できる。これに対して、比較例1の封止用樹脂組成物を用いた場合、金型中に封止用樹脂組成物の硬化物で覆われていない箇所が見られており、実施例1から実施例3と比較すると封止用樹脂組成物の蒔き性が良好でなかったことが確認できる。また、実施例3と、実施例3よりも目開き0.5mmのふるい上百分率が低い実施例3とを比較すると、金型に蒔かれた際の封止用樹脂組成物の外観は、実施例3の方がより平坦であった。
【0104】
【0105】
(乾燥工程の条件)
実施例1で行った乾燥工程に関して、この乾燥工程の乾燥条件が変更された場合に生じる封止用樹脂組成物への影響を確認した。
【0106】
[粒子形状評価試験]
実施例1において、乾燥工程で液滴の乾燥が行われる際に、この乾燥工程の条件を、表2に示す条件1から条件3までのそれぞれの条件に設定して乾燥を行い、そのときに得られた封止用樹脂組成物の粒子の形状を目視で確認し、結果を以下の表記方法で表2に示した。
「A」:液滴の爆発は起こらず、粒子形状を保てている
「B」:液滴の爆発が起こり、粒子形状を保てていない
【0107】
【0108】
乾燥工程の乾燥条件が条件1に設定された場合、すなわち、実施例1の条件で乾燥工程が行われた場合、加熱工程が段階的に実施されるため、液滴の爆発は起こらなかった。これに対して、乾燥工程の条件が、条件2又は条件3に設定された場合、乾燥工程中に液滴の爆発が生じ、所望の粒子が得られないことが確認できた。