(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023006995
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 33/105 20160101AFI20230111BHJP
A61K 36/53 20060101ALI20230111BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20230111BHJP
A61K 8/9789 20170101ALI20230111BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
A23L33/105
A61K36/53
A61P3/10
A61K8/9789
A61Q19/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021109930
(22)【出願日】2021-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】517374971
【氏名又は名称】アットモア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076082
【弁理士】
【氏名又は名称】福島 康文
(74)【代理人】
【識別番号】100192496
【弁理士】
【氏名又は名称】西平 守秀
(72)【発明者】
【氏名】真鍋 松也
【テーマコード(参考)】
4B018
4C083
4C088
【Fターム(参考)】
4B018MD66
4B018ME10
4B018ME14
4B018MF01
4B018MF06
4C083AA111
4C083EE12
4C083FF01
4C088AB38
4C088AC05
4C088CA01
4C088CA03
4C088MA35
4C088MA37
4C088MA52
4C088NA14
4C088ZC35
(57)【要約】 (修正有)
【課題】メイラード反応(グリケーション)によるAGEsの生成を抑制することができる、天然物由来の糖化反応抑制組成物を提供する。
【解決手段】マンジェリコン(Ocimum gratissimum)の葉の加工物を有効成分として含有する。組成物としては、飲食品、医薬品または化粧品が挙げられる。マンジェリコンの葉の加工物は、生体への悪影響は非常に少なく(またはなく)、かつメイラード反応(グリケーション)によるAGEsの生成を抑制することができる。すなわち、マンジェリコンの葉の加工物を有効成分として含有する組成物は、糖化反応抑制効果、最終糖化産物の生成抑制効果または最終糖化産物の蓄積除去効果を有しており、AGEsに関連する各種の組織障害または症状の予防などへの利用が期待できる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マンジェリコン(Ocimum gratissimum)の葉の加工物を有効成分として含有し、糖化反応抑制効果を有する、
組成物。
【請求項2】
マンジェリコン(Ocimum gratissimum)の葉の加工物を有効成分として含有し、最終糖化産物の生成抑制効果を有する、
組成物。
【請求項3】
マンジェリコン(Ocimum gratissimum)の葉の加工物を有効成分として含有し、最終糖化産物の蓄積除去効果を有する、
組成物。
【請求項4】
前記マンジェリコンの葉の加工物は、葉の乾燥物および/または葉の抽出物である、
請求項1~3のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項5】
飲食品、医薬品または化粧品である、
請求項1~4のいずれか1つに記載の組成物。
【請求項6】
マンジェリコンの葉を乾燥する第1工程と、
前記第1工程を経て得られる前記マンジェリコンの葉の乾燥物を粉砕する第2工程と、
前記第2工程を経て得られる前記マンジェリコンの葉の粉砕物をそのまま原料として使用して最終糖化産物の生成抑制のための飲食品を製造する第3工程と、
を含む、飲食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マンジェリコンの葉の加工物を有効成分として含有し、糖化反応抑制効果、最終糖化産物の生成抑制効果または最終糖化産物の蓄積除去効果を有する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ブドウ糖などは、タンパク質またはアミノ酸との間で糖化反応(メイラード反応)が発生し、このような糖化産物が生成されることは食品分野などでは褐変現象として古くからよく知られる。人間の生体内でも同様に、加齢などにより分解反応の進行が困難になってくると前述のような糖化反応が発生して、糖化産物の生成に傾向する場合があることが知られるようになった。また、糖化産物の生成により、体内でのタンパク質の機能が損なわれる可能性があることも知られるようになった。
なお、糖化反応はメイラード反応としても知られ、その呼び名は発見者の名前に由来ししている。また、糖化反応は一般にグリケーションとも呼ばれることもある。
【0003】
このようなメイラード反応による糖化産物は最終的に最終糖化産物(Advanced Glycation End Products:以下、AGEsともいう。)として生成され生体内に蓄積する。そのAGEsの生成は活性酸素の発生を含む複雑な反応を経由し不可逆反応である。また、生体内では、これらの反応は長期間に亘り、ゆっくりとした化学反応とされる。
【0004】
通常の健康状態では、生成されたAGEsは代謝によって体外へ排出されるが、加齢などが原因で代謝速度が遅くなると生体内の組織のそれぞれに日常的に蓄積され易くなる。AGEsが組織に過度に蓄積されると、さまざまな組織障害または症状を引き起こすことがさまざま研究で指摘されている。
【0005】
たとえば、これらAGEsの体内での蓄積は、腎糸球体組織硬化部や腎動脈硬化症などの糖尿病合併症だけでなく、アルツハイマー病などの神経変性疾患、皮膚老化、骨の老化、眼球の老化、アルブミン蛋白の老化に深く関与することが近年明らかにされている。そのため、AGEsの生成を日常的に抑制することが、生体内の糖化反応を阻止することにつながり、結果的にアンチエイジングを実現して健康長寿を維持することが可能となる。また、AGEsは皮膚の組織では肌の褐変化や肌のくすみの原因ともされており、美容の点からもその生成を抑制することは重要である。
【0006】
日常的に摂取されるものでメイラード反応を抑制しかつ副反応が少ない物質については、自然界に存在する植物素材の中からさまざまな研究・探索されている。たとえば、従来例として、ユズなどの柑橘類の揮発性油状物を有効成分とするメイラード反応抑制物質が知られる(たとえば、特許文献1参照)。また、ボタン属植物抽出物、タツナミソウ属植物抽出物、セイヨウヤマハッカ属植物抽出物、ヒマワリ属植物抽出物、アロエ属植物抽出物、アマドコロ属植物抽出物、アマ属植物抽出物、バラ属植物抽出物、シナノキ属植物抽出物、カンアオイ属植物抽出物、ドクダミ属植物抽出物、カントウ属植物抽出物、ワレモコウ属植物抽出物、ハッカ属植物抽出物、ニワトコ属植物抽出物の1種または2種以上の成分からなるものも知られる(たとえば、特許文献2参照)。
【0007】
ところで、沖縄の熱帯域に自生する植物として、マンジェリコン(学名:Ocimum Bacilicum)が知られる。マンジェリコンは、シソ科メボウキ属(Ocimum)に属する植物であり、ブラジルまたはヨーロッパ南部、中国にも分布する熱帯植物である。マンジェリコンは、ハーブの1種であり全草が芳香し、1mぐらいの高さまで成長する。ブラジルなどの南米などでは、マンジェリコンは肉料理で臭みを取る調理用ハーブとして使用されており、家庭で広く一般的に使用されている。また、単に調理用ハーブとしてだけではなく、以前からマンジェリコンを含有する健康食品などは多数存在しており、その健康食品の効果としてたとえば肥満の予防、生活習慣病の改善の他、血糖値または血圧の降下なども示唆されている(たとえば、非特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004-035424号公報
【特許文献2】特開2003-212749号公報
【非特許文献1】J.C Aguiyi, C I et al. "Igweh,Hypoglycaemic activity of Ocimum gratissimum in rats," Fitoterapia Vol. 71,4, (2000): 444-446
【非特許文献2】Egesie, U G et al. "Safety and hypoglycaemic properties of aqueous leaf extract of Ocimum gratissimum in streptozotocin induced diabetic rats." Nigerian journal of physiological sciences : official publication of the Physiological Society of Nigeria vol. 21,1-2 (2006): 31-5
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
発明者らは、日常的な食習慣(お茶などの飲料も含む)にありかつ副反応が少ない天然植物に着目して多角的に探索および研究をした結果、マンジェリコンの葉の加工物、すなわち乾燥物および/または抽出物に優れた糖化反応抑制効果、最終糖化産物の生成抑制効果または最終糖化産物の蓄積除去効果を有することを見いだして本発明を完成させた。
【0010】
つまり、本発明の目的は、マンジェリコンの葉の加工物として葉の乾燥物および/または葉の抽出物を有効成分として含有し、糖化反応抑制効果、最終糖化産物の生成抑制効果または最終糖化産物の蓄積除去効果を有する組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の前述した目的は、後記の構成により達成される。
(1)マンジェリコン(Ocimum gratissimum)の葉の加工物を有効成分として含有し、糖化反応抑制効果を有する、組成物。
(2)マンジェリコン(Ocimum gratissimum)の葉の加工物を有効成分として含有し、最終糖化産物の生成抑制効果を有する、組成物。
(3)マンジェリコン(Ocimum gratissimum)の葉の加工物を有効成分として含有し、最終糖化産物の蓄積除去効果を有する、組成物。
(4)前記マンジェリコンの葉の加工物は、葉の乾燥物および/または葉の抽出物である、(1)~(3)のいずれか1つに記載の組成物。
(5)飲食品、医薬品または化粧品である、(1)~(4)のいずれか1つに記載の組成物。
(6)マンジェリコンの葉を乾燥する第1工程と、前記第1工程を経て得られる前記マンジェリコンの葉の乾燥物を粉砕する第2工程と、前記第2工程を経て得られる前記マンジェリコンの葉の粉砕物をそのまま原料として使用して糖化反応抑制のための飲食品を製造する第3工程と、を含む、飲食品の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
AGEsは、種々の生活習慣病との関連性が強く示唆されている物質であり、特に生体内の糖化を招来し、結果的に糖尿病およびその合併症などの症状の進行に深く関与することが知られている。
【0013】
ここで、本発明の組成物は、天然植物であるマンジェリコンの葉の加工品として葉の乾燥物または抽出物を有効成分として含有する。この有効成分として用いるマンジェリコンの葉は、日常的にたとえばお茶などの飲料品または料理用ハーブとして食用に一般的に利用されるものであり、安全性の高いものである。
【0014】
このため、生体への悪影響は非常に少なく(またはなく)、かつ糖化反応(メイラード反応)によるAGEsの生成を抑制することができる。すなわち、本発明の組成物は、糖化反応抑制効果、最終糖化産物の生成抑制効果または最終糖化産物の蓄積除去効果を有しており、AGEsに関連する各種の組織障害または症状の予防などへの利用が期待できる。そして、組成物としてたとえば飲食品(錠剤またはサプリメントなど)、医薬品または化粧品へ適用することもできる。
【0015】
以上、本発明について簡潔に説明した。さらに、以下に説明される発明を実施するための形態(以下「実施形態」という。)またはその例(以下「実施例」ともいう。)を通読することにより、本発明の詳細はさらに明確化されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、発明に係るサプリメントの製造方法を例示する工程図である。
【
図2】
図2は、発明に係る有効性確認試験での摂取前群および3箇月間継続群の平均値を示すグラフである。
【
図3】
図3は、発明に係る有効性確認試験での摂取前群および6箇月間継続群の平均値を示すグラフである。
【
図4】
図4は、発明に係る有効性確認試験での3箇月間継続群および6箇月間継続群の平均値を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る組成物に関する実施形態について、以下に説明する。
ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。たとえば、すでによく知られた事項の詳細説明または実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
なお、以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することは意図されない。
【0018】
また、前述したように「メイラード反応」とは、還元糖のカルボニル基と、アミノ化合物のアミノ基と、の非酵素的反応であり、糖化反応とも呼ばれる。メイラード反応(糖化反応)により、還元糖とアミノ化合物とが縮合してシッフ塩基が形成され、アマドリ転位の後、種々の中間体を経て、結果的に最終糖化産物(Advanced Glycation End products:以下AGEsともいう。)が形成される。本発明においてメイラード反応の阻害は糖化反応の抑制、AGEs生成の抑制およびAGEs蓄積除去抑制の意味を含み、すなわち、これらの用語は互いに同義または類似の関係とされる。
【0019】
また、本発明でいう「AGEs」(最終糖化産物)は、メイラード反応(糖化反応)による生成物の総称とされる。たとえば、AGEsには、Nε-カルボキシメチルリシン(CML)、Nε-カルボキシエチルリシン(CEL)、アルグピリミジン、ペントシジン、ピラリン、クロスリン、GA-ピリジン、Nω-カルボキシメチルアルギニン(CMA)、フロイルフラニルイミダゾール(2-(2-furoyl)-4(5)-(2-furanyl)-1H-imidazole)およびグルコスパンなどが含まれる。
【0020】
[本実施形態に係る組成物について]
まず、本実施形態の組成物について説明する。本実施形態の組成物は、マンジェリコン(Ocimum gratissimum)の葉の加工物を有効成分として含有するものである。この含有により、本実施形態の組成物は、糖化反応抑制効果、最終糖化産物の生成抑制効果または最終糖化産物の蓄積除去効果を有することが可能となる。
【0021】
マンジェリコンは、前述したように、シソ科メボウキ属(Ocimum)に属する植物であり、ブラジルまたはヨーロッパ南部、中国にも分布する熱帯植物である。原産はブラジルである。また、マンジェリコンは、ハーブの1種であり全草が芳香し、1mぐらいの高さまで成長する。ブラジルなどの南米では、マンジェリコンは肉料理で臭みを取る調理用ハーブとして使用されており、家庭で広く一般的に使用されている。国内では、マンジェリコンは沖縄県内で栽培され、春に種を蒔(ま)くと夏頃から花を咲かせ、晩秋に枯れる。
【0022】
本実施形態では、組成物の有効成分としてマンジェリコンの葉を用いる。マンジェリコンの葉を用いることで、糖化反応抑制効果、最終糖化産物の生成抑制効果または最終糖化産物の蓄積除去効果を得ることが可能となるからである。ただし、葉以外の部位(たとえば茎など)が多少混在した場合でも特に支障とはならない。また、本実施形態では、マンジェリコンの葉の加工物として具体的には葉の乾燥物または葉の抽出物が用いられる。
【0023】
葉の乾燥物とは、収穫されたマンジェリコンの葉を洗浄した上で所定の乾燥装置などを適宜用いて水分のみが除去されたものである。また、マンジェリコンの葉の乾燥物は、乾燥される前後で、粉砕、粉砕または製粉などの工程が行われて、最終形態が粉末状にされてもよい。また、葉の乾燥物は、粉末化されずに収穫されたままの葉の形態で提供されてもよく、または粗粉砕のみが行われて提供されてもよい。葉の乾燥物は、水分が除去されたものであればその提供形態は任意である。
なお、マンジェリコンが葉の乾燥物として提供される場合でも、最終的に提供される前、たとえば製造工場から出荷さえる直前には後述するよう滅菌処理が適宜行われる。
【0024】
葉の抽出物とは、一般的な植物成分の抽出方法を用いて抽出されるものである。この抽出方法としては、熱水抽出法、煮沸抽出法、浸漬抽出法、振とう抽出法またはソックスレー抽出法、水蒸気蒸留法などが例示される。抽出溶媒としては、水、メタノール、エタノール等の低級アルコール類、プロピレングリコール、1,3‐ブチレングリコールなどの多価アルコール類、アセトン等のケトン類、ジエチルエーテル、アセトニトリル、酢酸エチル等のエステル類などが適宜用いることが可能である。これらの抽出溶媒は、加工工程での後工程、またはその抽出物の使用目的によって適宜選択される。抽出温度は、抽出溶媒のそれぞれの種類に応じて適宜決定される。
【0025】
なお、本実施形態の葉の抽出物を飲食物などへ適用するため有機溶媒の含有が好適でない場合、水またはエタノールを用いるとよい。エタノールは抽出後に除去しやすく、また水との任意の割合の混液として使用してもよい。特に本実施形態では、抽出溶媒として水がより好適である。また、抽出方法には、マンジェリコンの葉をそのまま用いてもよいし、その粉砕物を用いてもよい。また、抽出方法には、前述した溶媒抽出の他、マンジェリコンの葉またはその粉砕物の圧搾、粉砕、加熱、酵素分解、発酵および過熱分解などの方法も適宜用いることが可能である。
【0026】
また、本発明でいう「抽出物」の用語の意味には、溶媒を用いる各種抽出方法によって得られる抽出液の他、この抽出液を濃縮した濃縮液、この抽出液を適当な溶媒で希釈した希釈液、その抽出液またはその濃縮液もしくは希釈液から加熱乾燥、減圧乾燥、凍結乾燥などの種々の方法によって溶媒を除くことにより得られる固形の抽出物(粉末状または粒状のものなど)、ならびに固形化剤やゲル化剤の添加などによって得られる固形もしくは半固形の抽出物も合わせて含まれるものとして解釈される。
【0027】
本実施形態の組成物は、有効成分としてマンジェリコンの葉の加工物、具体的には前述した葉の乾燥物および/または葉の抽出物を含有するものであればよい。つまり、本実施形態の組成物は、これら葉の加工物を含有することで得られる糖化反応抑制効果、最終糖化産物の生成抑制効果または最終糖化産物の蓄積除去効果を阻害しない限り、賦形剤、安定剤、保存剤、緩衝剤、矯味剤、懸濁化剤、乳化剤、着香剤、溶解補助剤、着色剤、粘稠剤などの種々の成分をさらに加えられてもよい。
【0028】
本実施形態の組成物の具体例としては、飲食物、医薬品または化粧品が挙げられる。
【0029】
本実施形態の組成物を飲食品に適用する場合、たとえば葉の乾燥物および/または葉の抽出物を飲食品の食品添加物として用いることが可能である。つまり、本実施形態の葉の乾燥物および/または葉の抽出物を飲食品に配合または添加することにより、糖化反応抑制効果、最終糖化産物の生成抑制効果または最終糖化産物の蓄積除去効果を有する飲食品を提供することが可能となる。また、飲食品のうち健康食品において、本実施形態の葉の乾燥物および/または葉の抽出物そのまま成分として使用することにより、糖化反応抑制効果、最終糖化産物の生成抑制効果または最終糖化産物の蓄積除去効果を顕著に有するサプリメントを製造することが可能となる。
【0030】
なお、健康食品としてのサプリメントを製造する場合、その剤形に応じて賦形剤などが適宜配合されてもよい。また、その剤形についても、カプセル剤、錠剤または顆粒剤など各種のものを採用することが可能である。また、飲食品には、たとえば機能性表示食品、保健機能食品(特定保健用食品および栄養機能食品を含む。)、健康食品、栄養補助食品(バランス栄養食およびサプリメントを含む。)および加工食品などが含まれる。
【0031】
また、本発明の抽出物を飲食品に適用する場合、単独または他の果実ジュースなどと混合して液体状の組成物としたり、パンまたはクッキーなどと混合して固形状の組成物としたり、あるいはヨーグルトまたはジャムなどと混合してクリーム状の組成物としてもよい。
【0032】
本実施形態の組成物を医薬品に適用する場合、マンジェリコンはハーブ調味利用としても一般的に食用されているものであるため安全であり、またその投与方法は経口投与または経皮でもよいが、経口投与がより好適である。
【0033】
経口投与の場合、投与時期については、特に限定されず、食前、食中、食後、食間のいずれかでよい。また、その投与量およびその頻度は、症状の程度、年齢、性別または体重などに応じてたとえば医師の判断によって適宜選択され、またその有効量は臨床試験などの周知の方法によって適宜決定される。また、医薬品としての剤形としては、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、経口液剤、シロップ剤、経口ゼリー剤、口腔用錠剤、口腔用スプレー剤、口腔用半固形剤などが好適である。特に生体内で吸収容易とするため、錠剤、カプセル剤、顆粒剤がより好適である。
【0034】
本実施形態の組成物を化粧品に適用する場合、ローションまたは乳液などの液剤、クリームまたはゲルなどの半固形製剤として皮膚に塗布されて経皮的に体内に吸収可能に設けてもよい。具体例としては、前述の他、化粧水、オイル、パックなどの基礎化粧品、そして洗顔料、ファンデーション、おしろい、口紅、70紅、アイシャドー、アイライナー、マスカラ、眉墨、まつ毛などのメークアップ化粧品などが挙げられる。
【0035】
以上説明したように、本発明の組成物は、天然植物であるマンジェリコンの葉の加工品として葉の乾燥物または抽出物を有効成分として含有する。この有効成分として用いるマンジェリコンの葉は、日常的にたとえばお茶などの飲料品または料理用ハーブとして食用に一般的に利用されるものであり、安全性の高いものである。
【0036】
このため、生体への悪影響は非常に少なく(またはなく)、かつメイラード反応(グリケーション)によるAGEsの生成を抑制することができる。すなわち、本発明の組成物は、糖化反応抑制効果、最終糖化産物の生成抑制効果または最終糖化産物の蓄積除去効果を有しており、AGEsに関連する各種の組織障害または症状の予防などへの利用が期待できる。そして、組成物としてたとえば飲食品(錠剤またはサプリメントなど)、医薬品または化粧品へ適用することもできる。
【0037】
次に実施例を挙げて本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明の内容はこの実施例の説明によって特許請求の範囲に記載の主題が限定されることは意図されない。
【実施例0038】
本実施例では、本発明に係る組成物として飲食品、より具体的には健康食品としてのサプリメントに対し本発明を適用している。
【0039】
[マンジェリコンの葉のサプリメントの製造方法について]
図1を参照して、本発明に係るサプリメントの製造方法について説明する。
図1は、本発明に係るサプリメントの製造方法を例示する工程図である。
【0040】
図1に示すように、本発明に係るサプリメントの製造工程は、洗浄工程S1と、乾燥工程S2(第1工程の一例)と、粗粉砕工程S3(第2工程の一例)と、微粉砕工程S4(第2工程の一例)と、造粒工程S5と、滅菌工程S6と、打剤工程S7(第3工程の一例)と、充填工程S8と、を少なくとも含み、これら工程はこの記載の順で実行される。
【0041】
洗浄工程S1では、畑から収穫されたマンジェリコンの葉を洗浄して、葉の表面に付着した土などの汚れを除去する。乾燥工程S2では、洗浄工程S1により洗浄されたマンジェリコンの葉を所定のトレイのそれぞれに載置した上で、乾燥処理が実行される。この乾燥処理により、マンジェリコンの葉の水分が除去される。乾燥処理は通常、半日程度の時間をかけて行われる。粗粉砕工程S3では、乾燥工程S2で乾燥されたマンジェリコンの葉を、たとえば50~80程度のメッシュで1ミリ以下のオーダの大きさに粉砕して粒状に形成する。
なお、マンジェリコンは、茎の部分を残すように葉のみが摘(つ)まれ収穫される。マンジェリコンの葉は扁平状で葉脈が張り巡らされており、この葉脈を含めて収穫される。
【0042】
粗粉砕工程S3の後に微粉砕工程S4が実行され、微粉砕工程S4では粗粉砕されたマンジェリコンの葉に対したとえば200程度のメッシュで数ミクロンオーダの大きさに粉砕してパウダー状に形成する。造粒工程S5では、このパウダー状のマンジェリコンの葉に対し水蒸気を用いて顆粒状に形成する。滅菌工程S6では、この造粒されたマンジェリコンの葉を所定の空間内に収納し、たとえばその収納空間で温度を200度(品温130度)、気圧が1.1気圧程度となるように設定した上で10分間、滅菌処理を行う。
【0043】
滅菌工程S6の後、打剤工程S7が実行される。打剤工程S7では、マンジェリコンの葉の顆粒をそのまま原料として使用してその原料を所定の型に入れ圧縮成型(打剤)またはカプセル充填化する。この打剤処理により、マンジェリコンの葉のサプリメントが錠剤またはカプセルの剤形で製造されることになる。次の充填工程S8では、このように製造された錠剤を所定の袋のそれぞれに所定の分量で充填して製品として出荷する。
【0044】
[マンジェリコンの葉の有効性確認試験について]
また、本実施例では前述したように製造したマンジェリコンの葉のサプリメント(組成物の一例)を用いて有効性確認試験を行った。
なお、本有効性確認試験で使用されたマンジェリコンの葉のサプリメントのそれぞれは、粉砕された葉の乾燥物が200mgの用量でカプセル充填化されたものである。
【0045】
有効性確認試験では、本発明に係るサプリメントの糖化反応抑制効果、最終糖化産物の生成抑制効果または最終糖化産物の蓄積除去効果を確認するために、本試験の参加者として25人の成人(男性:17人、女性:8人、平均年齢:57.8歳)に対し本発明に係るサプリメントの摂取を依頼した。摂取は、参加者のそれぞれに対し有効性確認試験の内容を説明し同意を得た上で行われた。また、摂取方法は経口であり、参加者のそれぞれにはそのサプリメント1カプセルを朝、昼および晩の食事の際に摂取して一日あたり合計3カプセル摂取するように依頼した。この摂取を6箇月間継続するように依頼した。
【0046】
そして、その摂取の効果を検証するため、摂取前、3箇月間継続摂取および6箇月間継続摂取での参加者のそれぞれのAGEsを測定した。このAGEsの測定は、AGEs測定装置「AGEリーダーmu」(オランダDiagnoptics社)を用いた。AGEsの多くは自家蛍光を発する性質を有する。そのため、このAGEs測定装置は人間の前腕部を測定部位としてこの部位における表皮および真皮層1mm程度に沈着(蓄積)しているAGEsの自家蛍光量(AF:autofluorescence)を測定してAGEsの蓄積量を算出し、この算出の結果に基づいてAGEsの測定値を出力する。
なお、「AGEリーダーmu」は、クラスIの一般医療機器として届出されており(届出番号:13B1X10172D0T001)、一人あたりの1回の測定時間は12秒である。
【0047】
検証は、以下の条件(群)での平均値の差を用いて解析した。
摂取前群 : サプリメントを摂取する前に測定
3箇月間継続群 : サプリメントを3箇月間継続して摂取した時点で測定
6箇月間継続群 : サプリメントを6箇月間継続して摂取した時点で測定
【0048】
[1]摂取前群および3箇月間継続群でデータが揃った集団での解析
まず摂取前群および3箇月間継続群の間で一対の標本による平均の検定を行った。表1に、摂取前群および3箇月間継続群のそれぞれの測定値の平均値と標準偏差を示す。
なお、本解析での平均値および標準偏差の算出においては、対応があるデータ解析とするため、参加者のうち途中脱落者のデータ(未測定値または欠落データなど)は除去した。本解析での最終的な参加者(サンプル数)は16サンプルであった。
【0049】
【0050】
そして
図2に示すように、摂取前群および3箇月間継続群の平均値の差を確かめるために対応のあるt検定をした。この検定の結果、t(15)=2.49、p<.05で有意差(有意水準5%)が認められた。
【0051】
[2]摂取前群および6箇月間継続群でデータが揃った集団での解析
次に摂取前群および6箇月間継続群の間で一対の標本による平均の検定を行った。表2に、摂取前群および6箇月間継続群のそれぞれの測定値の平均値と標準偏差を示す。
なお、本解析での平均値および標準偏差の算出においても同様に対応があるデータ解析とするため、参加者のうち途中脱落者のデータ(未測定値、欠落データ)は除去した。また、本解析での最終的な参加者(サンプル数)は18サンプルであった。
【0052】
【0053】
そして
図3に示すように、摂取前群および6箇月間継続群の平均値の差を確かめるために対応のあるt検定をした。この検定の結果、t(17)=4.72、p<.01で有意差(有意水準1%)が認められた。
【0054】
[3]3箇月間継続群および6箇月間継続群でデータが揃った集団での解析
さらに次に3箇月間継続群および6箇月間継続群の間で一対の標本による平均の検定を行った。表3に、3箇月間継続群および6箇月間継続群のそれぞれの測定値の平均値と標準偏差を示す。
なお、本解析での平均値および標準偏差の算出においても同様に対応があるデータ解析とするため、参加者のうち途中脱落者のデータ(未測定値、欠落データ)は除去した。また、本解析での最終的な参加者(サンプル数)は18サンプルであった。
【0055】
【0056】
そして
図4に示すように、3箇月間継続群および6箇月間継続群の平均値の差を確かめるために対応のあるt検定をした。この検定の結果、t(12)=2.23、p<.05で有意差(有意水準5%)が認められた。
【0057】
[4]解析結果のまとめ
前述の[1]および[2]の解析によれば、マンジェリコン(Ocimum gratissimum)の葉の加工物(本実施例では葉の乾燥物)を有効成分として含有するサプリメント(飲食品の一例)を継続して摂取することで、参加者の体内でAGEs(最終糖化産物)の蓄積が除去されることが確認された。このAGEsの蓄積除去効果に伴って体内のAGEsの生成抑制効果についても当然に示唆され、結果的にマンジェリコンの葉の加工物(本実施例では葉の乾燥物)を含有する、飲食品、医薬品または化粧品は糖化反応抑制効果を有するといえる。
【0058】
また、前述の[3]の解析によれば、6箇月間継続群の平均値は、3箇月間継続群のAGEsの測定値よりも小さく、かつその差の検定は5%有意であった。これにより、摂取の継続期間が長いほど体内のAGEsの蓄積量が少なくなることも確認された。
【0059】
このように有効性確認試験を通じて、本発明に係るマンジェリコンの葉のサプリメントを継続して摂取することにより、糖化反応抑制効果、最終糖化産物の生成抑制効果または最終糖化産物の蓄積除去効果をよりたしかに得ることができることが確認された。
本発明は、マンジェリコンの葉の加工物として葉の乾燥物および/または葉の抽出物を有効成分として含有し、糖化反応抑制効果、最終糖化産物の生成抑制効果または最終糖化産物の蓄積除去効果を有する組成物として有用である。