(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023069957
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】位置・力制御システム、位置・力制御装置、位置・力制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
A61H 7/00 20060101AFI20230511BHJP
【FI】
A61H7/00 323S
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021182220
(22)【出願日】2021-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】899000079
【氏名又は名称】慶應義塾
(71)【出願人】
【識別番号】516331889
【氏名又は名称】モーションリブ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127384
【弁理士】
【氏名又は名称】坊野 康博
(72)【発明者】
【氏名】金田 浩二
(72)【発明者】
【氏名】大西 公平
(72)【発明者】
【氏名】溝口 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】國分 元樹
【テーマコード(参考)】
4C100
【Fターム(参考)】
4C100AD21
4C100BA01
4C100BA03
4C100BA05
4C100BB01
4C100BB02
4C100CA03
4C100CA13
4C100CA20
4C100DA04
4C100DA05
(57)【要約】
【課題】施術者がユーザに対して直接施術する場合のマッサージにより近い触覚を、マッサージを行う機器によって提示する。
【解決手段】位置・力制御システム1は、施術動作の入力を受け付ける1または複数のマスタ装置10と、施術動作を出力する1または複数のスレーブ装置20と、マスタ装置10及びスレーブ装置20を制御する制御装置30と、を含む。制御装置30は、マスタ装置10に入力された施術動作に対応する力触覚をスレーブ装置20に出力させるための制御パラメータをスレーブ装置20に送信し、スレーブ装置20が出力した施術動作に対する反力をマスタ装置10に出力させるための制御パラメータをマスタ装置10に送信する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
施術動作の入力を受け付ける1または複数のマスタ装置と、
施術動作を出力する1または複数のスレーブ装置と、
前記マスタ装置及び前記スレーブ装置を制御する制御部と、を含み、
前記制御部は、前記マスタ装置に入力された施術動作に対応する力触覚を前記スレーブ装置に出力させるための制御パラメータを前記スレーブ装置に送信し、前記スレーブ装置が出力した施術動作に対する反力を前記マスタ装置に出力させるための制御パラメータを前記マスタ装置に送信することを特徴とする位置・力制御システム。
【請求項2】
前記制御部は、前記スレーブ装置からのリクエストに応じて、1つの前記マスタ装置と、当該リクエストを行った前記スレーブ装置とにおける通信リンクを確立させ、前記マスタ装置に入力された施術動作に対応する力触覚を前記スレーブ装置に出力させることを特徴とする請求項1に記載の位置・力制御システム。
【請求項3】
前記制御部は、複数の前記スレーブ装置からのリクエストを受け付け、いずれか1つの前記マスタ装置と、当該リクエストを行った複数の前記スレーブ装置とにおける通信リンクを確立させることを特徴とする請求項1に記載の位置・力制御システム。
【請求項4】
前記制御部は、前記スレーブ装置からのリクエストに示された1つの前記マスタ装置と、当該リクエストを行った複数の前記スレーブ装置とにおける通信リンクを確立させることを特徴とする請求項3に記載の位置・力制御システム。
【請求項5】
前記制御部は、前記マスタ装置に入力された施術動作を正規化した制御パラメータとして、複数の前記スレーブ装置に送信することを特徴とする請求項3または4に記載の位置・力制御システム。
【請求項6】
前記スレーブ装置は、前記制御部から送信された前記正規化した制御パラメータに対し、当該スレーブ装置のユーザに応じた補正を行い、補正後の制御パラメータに基づいて、力触覚を出力することを特徴とする請求項5に記載の位置・力制御システム。
【請求項7】
前記スレーブ装置は、前記制御部から送信された制御パラメータが示す物理量が設定された上限を超えた場合、及び、前記制御部から前記制御パラメータを受信する通信状況が設定された状態より低下した場合の少なくともいずれかにおいて、ユーザへの作用を抑制するための予め設定された制御を実行することを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の位置・力制御システム。
【請求項8】
前記スレーブ装置は、記憶された前記制御パラメータを再生することにより、施術動作に対応する力触覚を出力することを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の位置・力制御システム。
【請求項9】
前記スレーブ装置は、施術されるユーザを押圧する押圧部材を備え、前記マスタ装置に入力された押圧動作の力触覚を、前記押圧部材を介して出力することを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の位置・力制御システム。
【請求項10】
前記スレーブ装置は、施術されるユーザを摩る摩り部材を備え、前記マスタ装置に入力された摩り動作のための操作に対応して、前記摩り部材を介して摩り動作を出力することを特徴とする請求項1から9のいずれか1項に記載の位置・力制御システム。
【請求項11】
施術動作の入力を受け付ける1または複数のマスタ装置と、
施術動作を出力する1または複数のスレーブ装置と、
前記マスタ装置及び前記スレーブ装置を制御する制御部と、を含む位置・力制御システムにおけるスレーブ装置として構成される位置・力制御装置であって、
施術動作の入力を受け付けるマスタ装置に入力された施術動作に対応する力触覚を表す制御パラメータに基づいて、前記施術動作に対応する力触覚を出力することを特徴とする位置・力制御装置。
【請求項12】
施術動作の入力を受け付ける1または複数のマスタ装置と、
施術動作を出力する1または複数のスレーブ装置と、
前記マスタ装置及び前記スレーブ装置を制御する制御部と、を含む位置・力制御システムが実行する位置・力制御方法であって、
前記制御部が、前記マスタ装置に入力された施術動作に対応する力触覚を前記スレーブ装置に出力させるための制御パラメータを前記スレーブ装置に送信し、前記スレーブ装置が出力した施術動作に対する反力を前記マスタ装置に出力させるための制御パラメータを前記マスタ装置に送信する制御ステップを含むことを特徴とする位置・力制御方法。
【請求項13】
施術動作の入力を受け付ける1または複数のマスタ装置と、
施術動作を出力する1または複数のスレーブ装置と、
前記マスタ装置及び前記スレーブ装置を制御する制御部と、を含む位置・力制御システムにおけるスレーブ装置が実行する位置・力制御方法であって、
施術動作の入力を受け付けるマスタ装置に入力された施術動作に対応する力触覚を表す制御パラメータに基づいて、前記施術動作に対応する力触覚を出力する力触覚出力ステップを含むことを特徴とする位置・力制御方法。
【請求項14】
施術動作の入力を受け付ける1または複数のマスタ装置と、
施術動作を出力する1または複数のスレーブ装置と、
前記マスタ装置及び前記スレーブ装置を制御する制御部と、を含む位置・力制御システムの制御部を構成するコンピュータに、
前記マスタ装置に入力された施術動作に対応する力触覚を前記スレーブ装置に出力させるための制御パラメータを前記スレーブ装置に送信し、前記スレーブ装置が出力した施術動作に対する反力を前記マスタ装置に出力させるための制御パラメータを前記マスタ装置に送信する制御機能を実現させることを特徴とするプログラム。
【請求項15】
施術動作の入力を受け付ける1または複数のマスタ装置と、
施術動作を出力する1または複数のスレーブ装置と、
前記マスタ装置及び前記スレーブ装置を制御する制御部と、を含む位置・力制御システムにおけるスレーブ装置を構成するコンピュータに、
施術動作の入力を受け付けるマスタ装置に入力された施術動作に対応する力触覚を表す制御パラメータに基づいて、前記施術動作に対応する力触覚を出力する力触覚制御機能を実現させることを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置・力制御システム、位置・力制御装置、位置・力制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ユーザの身体に対し、マッサージを施すマッサージチェアが知られている。
マッサージチェアは、例えば、背もたれに内蔵された押圧部材を移動させながら、ユーザの背中や肩等をマッサージする機能を備えており、マッサージ師等の施術者が行う施術に近いマッサージを行えるように種々の改良が重ねられている。
なお、特許文献1には、マッサージ動作に対する使用者の感覚を推定し、この推定された感覚に基づいて、マッサージ動作を使用者が好む方向に変更制御するマッサージ機に関する技術が記載されている。
特許文献1に記載された技術は、マッサージの進行に伴って変化する使用者の感覚に応じて効果的なマッサージを行うと共に、推定感覚の信頼性を向上させることを図るものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたマッサージ機は、生理信号を検出する生理信号検出手段、検出された生理信号に基づいて、マッサージ動作に対する使用者の感覚を推定する感覚推定手段、及び、マッサージ動作の少なくとも変更制御を、使用者毎に履歴情報として記憶する履歴情報記憶手段等を備え、ユーザにとって心地良いと推定される効果的なマッサージ(触覚の提示)の実現を図るものである。
そのため、特許文献1に記載された技術においては、マッサージ機の推定結果に基づき、ユーザによって心地良いと推定されるマッサージ動作を行うことから、有資格者のセラピストやマッサージ師等の施術者が、ユーザの身体に触れて判断した場合に実行する施術内容とは異なる可能性が高い。
即ち、従来の技術においては、マッサージを行う機器によって、施術者がユーザに対して直接施術する場合のマッサージに近い触覚を提示することが困難であった。
【0005】
本発明は、施術者がユーザに対して直接施術する場合のマッサージにより近い触覚を、マッサージを行う機器によって提示することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一態様の位置・力制御システムは、
施術動作の入力を受け付ける1または複数のマスタ装置と、
施術動作を出力する1または複数のスレーブ装置と、
前記マスタ装置及び前記スレーブ装置を制御する制御部と、を含み、
前記制御部は、前記マスタ装置に入力された施術動作に対応する力触覚を前記スレーブ装置に出力させるための制御パラメータを前記スレーブ装置に送信し、前記スレーブ装置が出力した施術動作に対する反力を前記マスタ装置に出力させるための制御パラメータを前記マスタ装置に送信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、施術者がユーザに対して直接施術する場合のマッサージにより近い触覚を、マッサージを行う機器によって提示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る位置・力制御システム1のシステム構成を示す模式図である。
【
図3】スレーブ装置20の構成を示す模式図である。
【
図4】位置・力制御システム1において制御を行う機能部を構成する情報処理装置800のハードウェア構成を示す図である。
【
図5】マスタ装置10の機能的構成を示すブロック図である。
【
図6】本実施形態において用いられる力触覚の伝達制御を実現するためのアルゴリズムを示すブロック図である。
【
図7】スレーブ装置20の機能的構成を示すブロック図である。
【
図8】制御装置30の機能的構成を示すブロック図である。
【
図9】位置・力制御システム1における個別施術モードの概念を示す模式図である。
【
図10】位置・力制御システム1における複数施術モードの概念を示す模式図である。
【
図11】位置・力制御システム1が実行する遠隔施術処理の流れを示すフローチャートである。
【
図12】個別施術処理の流れを示すフローチャートである。
【
図13】複数施術処理の流れを示すフローチャートである。
【
図14】ユーザの背中を摩る機能を備えたスレーブ装置20の構成を示す模式図である。
【
図16】
図15におけるスレーブ装置20のA-A’断面図である。
【
図17】
図15におけるスレーブ装置20のB-B’断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。
[構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る位置・力制御システム1のシステム構成を示す模式図である。
本実施形態に係る位置・力制御システム1は、施術者によって使用される複数のマスタ装置10と、ユーザによって使用される複数のスレーブ装置20とが遠隔的に設置されると共に、任意のマスタ装置10とスレーブ装置20とを組み合わせて通信リンクを確立することが可能となっている。マスタ装置10は、施術者が行う施術動作を受け付ける装置形態となっており、スレーブ装置20は、施術者が行った施術動作をユーザ(被施術者)に作用させることが可能な装置形態となっている。そして、マスタ装置10とスレーブ装置20とで、力触覚の伝達制御を実行することにより、施術者がマスタ装置10を介して行った施術動作が、スレーブ装置20を介してユーザに入力されると共に、ユーザからスレーブ装置20に入力した反力が、マスタ装置10を介して施術者に提示される。
したがって、施術者がユーザに対して直接施術する場合のマッサージにより近い触覚を、マッサージを行う機器によって提示することが可能となる。
【0010】
図1に示すように、本実施形態に係る位置・力制御システム1は、施術者が施術(マッサージ等)の動作を入力するマスタ装置10と、ユーザ(被施術者)に対して施術のための動作を出力するスレーブ装置20と、マスタ装置10とスレーブ装置20との間における力触覚の伝達を制御する制御装置30と、スレーブ装置20によって施術を受けるユーザを撮影する撮像装置Cと、撮像装置Cによって撮影されたユーザの画像を表示する表示装置Dと、を備えている。また、マスタ装置10、スレーブ装置20、制御装置30、撮像装置C及び表示装置Dは、インターネット等のネットワーク40を介して、互いに通信可能に構成されている。なお、本実施形態において、位置・力制御システム1には、マスタ装置10、スレーブ装置20、撮像装置C及び表示装置Dがそれぞれ複数含まれるものとする。
【0011】
マスタ装置10は、施術者が入力する施術の動作を受け付ける機構を備えており、施術者の押圧動作を受け付ける部材(後述する右受圧部材106R及び左受圧部材106L)が、上下方向(ユーザの背骨方向)、左右方向(ユーザの肩幅方向)及び前後方向(ユーザの身体に押圧を加える方向)に移動可能な構成を有している。本実施形態において、マスタ装置10は、人間の肩及び頸付近の形に沿った構造とされ、施術者が実際に被施術者に対して施術を行う際の動きを入力可能な構成となっている。
【0012】
図2は、マスタ装置10の構成を示す模式図である。
なお、
図2においては、マスタ装置10を介して施術が行われる被施術者の上半身の模式図を併せて示しており、丸数字及び矢印は、マスタ装置10及び被施術者の上半身における対応する動きを表している。
【0013】
図2に示すように、マスタ装置10は、マスタ装置10全体の基台となる基台部101と、基台部101に対して上下方向に移動可能に設置された受圧ユニット102と、受圧ユニット102において前後方向に延びる前後アーム103と、前後アーム103の先端に設置され、左右方向に延びる右アーム部104R及び左アーム104Lと、右アーム部104Rにおいて左右方向に移動可能に設置された右操作部105Rと、左アーム部104Lにおいて左右方向に移動可能に設置された左操作部105Lと、を備えている。また、右操作部105Rは、施術者の押圧動作を受ける右受圧部材106Rと、右受圧部材106Rを前後方向に移動可能に支持する右支持部材107Rと、を備えている。また、左操作部105Lは、施術者の押圧動作を受ける左受圧部材106Lと、左受圧部材106Lを前後方向に移動可能に支持する左支持部材107Lと、を備えている。
【0014】
さらに、受圧ユニット102の上下方向の移動は、アクチュエータ108によって制御可能となっており、右操作部105R及び左操作部105Lの左右方向の移動、右受圧部材106R及び左受圧部材106Lの前後方向の移動には、アクチュエータ109~112による反力が付与可能となっている。
また、マスタ装置10は、制御装置30の制御に従って、マスタ装置10を制御するマスタ制御部113を備えている。
【0015】
基台部101は、マスタ装置10全体の基台となる支持部材であり、受圧ユニット102を上下方向に移動可能に支持している。受圧ユニット102の上下方向の位置は、アクチュエータ108によって変化され、目的とする位置で固定することが可能となっている。
受圧ユニット102は、基台部101に対して上下方向に移動可能に設置され、前後アーム103、右アーム部104R及び左アーム104L、右操作部105R及び左操作部105Lが設置される。即ち、受圧ユニット102が上下方向に移動することにより、前後アーム103、右アーム部104R及び左アーム104L、右操作部105R及び左操作部105Lの上下方向の位置が変化する。
【0016】
前後アーム103は、前後方向に延びる部材として受圧ユニット102に設置され、先端に右アーム部104R及び左アーム104Lが固定されている。なお、右アーム部104R及び左アーム部104Lの水平方向に対する傾きを調整可能な構成としてもよい。
右アーム部104Rは、前後アーム103の先端に設置され、前後アーム103から右方向に延びている。また、右アーム部104Rは、右操作部105Rを左右方向に移動可能に支持している。右操作部105Rの左右方向の位置は、施術者の施術動作によって変化される。
左アーム部104Lは、前後アーム103の先端に設置され、前後アーム103から左方向に延びている。また、左アーム部104Lは、左操作部105Lを左右方向に移動可能に支持している。左操作部105Lの左右方向の位置は、施術者の施術動作によって変化される。
【0017】
右操作部105Rは、右アーム部104Rに対して左右方向に移動可能に設置され、右受圧部材106Rを前後方向に移動可能に支持する右支持部材107Rを備えている。また、右受圧部材106Rは、ユーザを施術する施術者の押圧動作を受ける部材であり、右支持部材107Rに対して前後方向に移動する。右受圧部材106Rの前後方向の位置は、施術者の押圧動作によって変化される。
左操作部105Lは、左アーム部104Lに対して左右方向に移動可能に設置され、左受圧部材106Lを前後方向に移動可能に支持する左支持部材107Lを備えている。また、左受圧部材106Lは、ユーザを施術する施術者の押圧動作を受ける部材であり、左支持部材107Lに対して前後方向に移動する。左受圧部材106Lの前後方向の位置は、施術者の押圧動作によって変化される。
【0018】
アクチュエータ108は、施術者の操作またはマスタ制御部113の指示に応じて、基台部101に対して受圧ユニット102を上下方向に移動させる。また、アクチュエータ108は、アクチュエータ108の回転子の回転角度を検出するロータリーエンコーダ108aを備えている。ロータリーエンコーダ108aが検出した回転角度は、マスタ制御部113に送信される。
【0019】
アクチュエータ109は、施術者の施術動作により右操作部105Rが左右方向に移動される際に、右操作部105Rの移動に対する反力を付与する。また、アクチュエータ109は、アクチュエータ109の回転子の回転角度を検出するロータリーエンコーダ109aを備えている。ロータリーエンコーダ109aが検出した回転角度は、マスタ制御部113に送信される。
【0020】
アクチュエータ110は、施術者の施術動作により左操作部105Lが左右方向に移動される際に、左操作部105Lの移動に対する反力を付与する。また、アクチュエータ110は、アクチュエータ110の回転子の回転角度を検出するロータリーエンコーダ110aを備えている。ロータリーエンコーダ110aが検出した回転角度は、マスタ制御部113に送信される。
【0021】
アクチュエータ111は、施術者の施術動作により右受圧部材106Rが前後方向に移動される際に、右受圧部材106Rの移動に対する反力を付与する。また、アクチュエータ111は、アクチュエータ111の回転子の回転角度を検出するロータリーエンコーダ111aを備えている。ロータリーエンコーダ111aが検出した回転角度は、マスタ制御部113に送信される。
【0022】
アクチュエータ112は、施術者の施術動作により左受圧部材106Lが前後方向の移動される際に、左受圧部材106Lの移動に対する反力を付与する。また、アクチュエータ112は、アクチュエータ112の回転子の回転角度を検出するロータリーエンコーダ112aを備えている。ロータリーエンコーダ112aが検出した回転角度は、マスタ制御部113に送信される。
【0023】
マスタ制御部113は、制御装置30の制御に従って、マスタ装置10のアクチュエータ108~112を制御したり、ロータリーエンコーダ108a~112aによって検出されたアクチュエータ108~112の回転角度を制御装置30に送信したりする。
【0024】
スレーブ装置20は、ユーザ(被施術者)に対して施術のための動作を出力する機構を備えており、ユーザに対して施術のための押圧動作を出力する部材(後述する右押圧部材206R及び左押圧部材206L)が上下方向(ユーザの背骨方向)、左右方向(ユーザの肩幅方向)及び前後方向(ユーザの身体に押圧を加える方向)に移動可能な構成を有している。
【0025】
スレーブ装置20は、ユーザ(被施術者)に対して施術のための動作を出力する機構を備えており、ユーザに対して押圧動作を出力する部材(後述する右押圧部材206R及び左押圧部材206L)が、上下方向(ユーザの背骨方向)、左右方向(ユーザの肩幅方向)及び前後方向(ユーザの身体に押圧を加える方向)に移動可能な構成を有している。なお、スレーブ装置20は、椅子、ソファ、ベッド、自動車のシート等、ユーザにマッサージを施術可能な種々の器具に設置することができる。
【0026】
図3は、スレーブ装置20の構成を示す模式図である。
なお、
図3においては、スレーブ装置20の機械的構造が内部に実装される背もたれ部の外観を併せて示しており、丸数字及び矢印は、
図2に示すマスタ装置10の動きと同様の動きを表している。
【0027】
図3に示すように、スレーブ装置20は、スレーブ装置20全体を支持する支持部201と、支持部201に対して上下方向に移動可能に設置された施術ユニット202と、施術ユニット202を支持するベース部材となるベース部203と、ベース部203に設置され、左右方向に延びる右アーム部204R及び左アーム204Lと、右アーム部204Rにおいて左右方向に移動可能に設置された右作用部205Rと、左アーム部204Lにおいて左右方向に移動可能に設置された左作用部205Lと、を備えている。また、右作用部205Rは、ユーザに対して押圧作用を付与する右押圧部材206Rと、右押圧部材206Rを前後方向に移動可能に支持する右支持部材207Rと、を備えている。また、左作用部205Lは、ユーザに対して押圧作用を付与する左押圧部材206Lと、左押圧部材206Lを前後方向に移動可能に支持する左支持部材207Lと、を備えている。
【0028】
さらに、施術ユニット202の上下方向の移動は、アクチュエータ208によって制御可能となっており、右作用部205R及び左作用部205Lの左右方向の移動、右押圧部材206R及び左押圧部材206Lの前後方向の移動は、アクチュエータ209~212によって制御可能となっている。
また、スレーブ装置20は、制御装置30の制御に従って、スレーブ装置20を制御するスレーブ制御部213を備えている。
【0029】
支持部201は、スレーブ装置20全体を支持する支持部材であり、施術ユニット202を上下方向に移動可能に支持している。施術ユニット202の上下方向の位置は、アクチュエータ208によって変化され、目的とする位置で固定することが可能となっている。
施術ユニット202は、支持部201に対して上下方向に移動可能に設置され、ベース部203、右アーム部204R及び左アーム204L、右作用部205R及び左作用部205Lが設置される。即ち、施術ユニット202が上下方向に移動することにより、右アーム部204R及び左アーム204L、右作用部205R及び左作用部205Lの上下方向の位置が変化する。
【0030】
ベース部203は、施術ユニット202を支持するベース部材であり、施術ユニット202を上下方向に移動可能に支持している。施術ユニット202の上下方向の位置は、アクチュエータ208によって変化され、目的とする位置で固定することが可能となっている。
右アーム部204Rは、ベース部203に設置され、ベース部203から右方向(より具体的には、一般的な肩の傾斜に沿う右下方向)に延びている。また、右アーム部204Rは、右作用部205Rを左右方向に移動可能に支持している。右作用部205Rの左右方向の位置は、施術者の施術動作に応じて制御装置30から送信される位置及び力の基準値に従って変化される。
左アーム部204Lは、ベース部203に設置され、ベース部203から左方向(より具体的には、一般的な肩の傾斜に沿う左下方向)に延びている。また、左アーム部204Lは、左作用部205Lを左右方向に移動可能に支持している。左作用部205Lの左右方向の位置は、施術者の施術動作に応じて制御装置30から送信される位置及び力の基準値に従って変化される。
【0031】
右作用部205Rは、右アーム部204Rに対して左右方向に移動可能に設置され、右押圧部材206Rを前後方向に移動可能に支持する右支持部材207Rを備えている。また、右押圧部材206Rは、施術者の押圧動作に応じて制御装置30から送信される位置及び力の基準値に従って、ユーザに対する押圧作用を付与する部材であり、右支持部材207Rに対して前後方向に移動する。即ち、右押圧部材206Rの前後方向の位置は、施術者の押圧動作によって変化される。
左作用部205Lは、左アーム部204Lに対して左右方向に移動可能に設置され、左押圧部材206Lを前後方向に移動可能に支持する左支持部材207Lを備えている。また、左押圧部材206Lは、施術者の押圧動作に応じて制御装置30から送信される位置及び力の基準値に従って、ユーザに対する押圧作用を付与する部材であり、左支持部材207Lに対して前後方向に移動する。即ち、左押圧部材206Lの前後方向の位置は、施術者の押圧動作によって変化される。
【0032】
アクチュエータ208は、ユーザの操作またはスレーブ制御部213の指示に応じて、支持部201に対して施術ユニット202を上下方向に移動させる。スレーブ制御部213の指示に応じて施術ユニット202が上下方向に移動される場合、右作用部205R及び左作用部205Lに入力する反力等を検出することにより、ユーザの肩の位置に合わせて、施術ユニット202の固定位置を自動的に調整することができる。また、アクチュエータ208は、アクチュエータ208の回転子の回転角度を検出するロータリーエンコーダ208aを備えている。ロータリーエンコーダ208aが検出した回転角度は、スレーブ制御部213に送信される。
【0033】
アクチュエータ209は、施術者の施術動作に応じて制御装置30から送信される位置及び力の基準値に従って、右作用部205Rを左右方向に移動させる。また、アクチュエータ209は、アクチュエータ209の回転子の回転角度を検出するロータリーエンコーダ209aを備えている。ロータリーエンコーダ209aが検出した回転角度は、スレーブ制御部213に送信される。
【0034】
アクチュエータ210は、施術者の施術動作に応じて制御装置30から送信される位置及び力の基準値に従って、左作用部205Lを左右方向に移動させる。また、アクチュエータ210は、アクチュエータ210の回転子の回転角度を検出するロータリーエンコーダ210aを備えている。ロータリーエンコーダ210aが検出した回転角度は、スレーブ制御部213に送信される。
【0035】
アクチュエータ211は、施術者の施術動作に応じて制御装置30から送信される位置及び力の基準値に従って、右押圧部材206Rを前後方向に移動させる。これにより、施術者の施術動作に対応する位置及び力で右押圧部材206Rがユーザを押圧する。また、アクチュエータ211は、アクチュエータ211の回転子の回転角度を検出するロータリーエンコーダ211aを備えている。ロータリーエンコーダ211aが検出した回転角度は、スレーブ制御部213に送信される。
【0036】
アクチュエータ212は、施術者の施術動作に応じて制御装置30から送信される位置及び力の基準値に従って、左押圧部材206Lを前後方向に移動させる。これにより、施術者の施術動作に対応する位置及び力で左押圧部材206Lがユーザを押圧する。また、アクチュエータ212は、アクチュエータ212の回転子の回転角度を検出するロータリーエンコーダ212aを備えている。ロータリーエンコーダ212aが検出した回転角度は、スレーブ制御部213に送信される。
【0037】
スレーブ制御部213は、制御装置30の制御に従って、スレーブ装置20のアクチュエータ208~212を制御したり、ロータリーエンコーダ208a~212aによって検出されたアクチュエータ208~212の回転角度を制御装置30に送信したりする。
【0038】
制御装置30は、マスタ装置10とスレーブ装置20との間における力触覚の伝達を制御する。本実施形態においては、複数のマスタ装置10及び複数のスレーブ装置20のうち、制御装置30によって、任意のマスタ装置10とスレーブ装置20とを対応付けることにより、マスタ・スレーブシステムを動的に構成することが可能となっている。また、制御装置30は、マスタ装置10及びスレーブ装置20を介して、施術者がユーザに施術を行った際の力触覚の伝達のための制御パラメータを記憶する。さらに、制御装置30は、記憶している制御パラメータをスレーブ装置20に送信することにより、施術者によるユーザへの施術を再現することができる。このとき、制御装置30は、記憶している制御パラメータを編集することなくスレーブ装置20に送信する(即ち、記憶された通りの施術を再現する)ことの他、制御パラメータの一部を削除したり、一部を繰り返したり、力を変化させたりする等の編集を行って、スレーブ装置20に送信することが可能である。制御パラメータの編集を行うことで、ユーザの好みに合わせた施術内容に変更したり、異なるユーザに実施された施術内容を、施術を受けるユーザの体型や好みに合わせたものに変更したりすることができる。
【0039】
撮像装置Cは、スレーブ装置20によって施術を受けるユーザを撮影し、撮影した画像のデータを制御装置30に送信する。
表示装置Dは、撮像装置Cによって撮影されたユーザの画像を制御装置30から受信し、マスタ装置10を介して施術を行う施術者に向けて、ユーザ(被施術者)の画像を表示する。
【0040】
[ハードウェア構成]
次に、位置・力制御システム1において制御を行う機能部のハードウェア構成を説明する。
位置・力制御システム1において、制御装置30、マスタ制御部113及びスレーブ制御部213はPC(Personal Computer)、サーバコンピュータあるいはタブレット端末等の情報処理装置によって構成され、その基本的構成は同様である。
【0041】
図4は、位置・力制御システム1において制御を行う機能部を構成する情報処理装置800のハードウェア構成を示す図である。
図4に示すように、情報処理装置800は、CPU(Central Processing Unit)811と、ROM(Read Only Memory)812と、RAM(Random Access Memory)813と、バス814と、入力部815と、出力部816と、記憶部817と、通信部818と、ドライブ819と、撮像部820と、を備えている。
【0042】
CPU811は、ROM812に記録されているプログラム、または、記憶部817からRAM813にロードされたプログラムに従って各種の処理を実行する。
RAM813には、CPU811が各種の処理を実行する上において必要なデータ等も適宜記憶される。
【0043】
CPU811、ROM812及びRAM813は、バス814を介して相互に接続されている。バス814には、入力部815、出力部816、記憶部817、通信部818、ドライブ819及び撮像部820が接続されている。
【0044】
入力部815は、各種ボタン等で構成され、指示操作に応じて各種情報を入力する。
出力部816は、ディスプレイやスピーカ等で構成され、画像や音声を出力する。
なお、情報処理装置800がスマートフォンやタブレット端末として構成される場合には、入力部815と出力部816のディスプレイとを重ねて配置し、タッチパネルを構成することとしてもよい。
記憶部817は、ハードディスクあるいはDRAM(Dynamic Random Access Memory)等で構成され、各サーバで管理される各種データを記憶する。
通信部818は、ネットワークを介して他の装置との間で行う通信を制御する。
【0045】
ドライブ819には、磁気ディスク、光ディスク、光磁気ディスク、あるいは半導体メモリ等よりなる、リムーバブルメディア831が適宜装着される。ドライブ819によってリムーバブルメディア831から読み出されたプログラムは、必要に応じて記憶部817にインストールされる。
撮像部820は、レンズ及び撮像素子等を備えた撮像装置によって構成され、被写体のデジタル画像を撮像する。
なお、情報処理装置800がサーバとして構成される場合には、撮像部820を省略した構成とすることも可能である。また、情報処理装置800がタブレット端末として構成される場合には、入力部815をタッチセンサによって構成し、出力部816のディスプレイに重ねて配置することにより、タッチパネルを備える構成とすることも可能である。
【0046】
[制御系統の機能的構成]
次に、位置・力制御システム1の各装置における制御系統の機能的構成について説明する。
[マスタ装置10の機能的構成]
図5は、マスタ装置10の機能的構成を示すブロック図である。
図5に示すように、マスタ装置10(マスタ制御部113)のCPU811においては、ユーザインターフェース制御部(UI制御部)151と、モード設定部152と、センサ情報取得部153と、力触覚制御部154と、施術データ管理部155と、が機能する。また、マスタ装置10の記憶部817には、施術データ記憶部171が形成される。
【0047】
施術データ記憶部171には、マスタ装置10を介して、施術者が施術を行ったユーザに関する情報及び施術における制御パラメータが記憶される。施術者が施術を行ったユーザに関する情報には、ユーザの氏名、年齢、性別、連絡先及び施術内容の嗜好等の属性情報が含まれる。また、施術における制御パラメータとして、施術者が施術を行った際の力触覚伝達に関する時系列の制御パラメータが記憶される。
【0048】
UI制御部151は、位置・力制御システム1によって施術者がユーザに施術を行うための処理(後述する遠隔施術処理)における各種入出力画面の表示を制御する。例えば、UI制御部151は、遠隔施術処理において、施術者とユーザとが1対1で施術を行う個別施術モード、及び、施術者1人が複数のユーザに施術を行う複数施術モードのいずれを実行するかの設定等を受け付ける。また、UI制御部151は、制御装置30から送信されたユーザの画像を表示装置Dまたはマスタ装置10が備える出力部816のディスプレイ等に表示させる。
【0049】
モード設定部152は、遠隔施術処理において実行されるモードを設定する。本実施形態においては、施術者とユーザとが1対1で施術を行う個別施術モード、及び、施術者1人が複数のユーザに施術を行う複数施術モードのいずれかを設定可能となっており、モード設定部152は、施術者の入力または制御装置30からの指示に従って、いずれかのモードを設定する。
【0050】
センサ情報取得部153は、アクチュエータ108~112のロータリーエンコーダ108a~112aによって検出される位置情報(回転子の回転角度)を取得する。本実施形態において、力触覚の伝達に関与するマスタ装置10のアクチュエータは、アクチュエータ109~112であるため、センサ情報取得部153は、例えば、100[ms]毎等、遠隔施術処理における施術動作が連続的で滑らかな動きとなるレートで、ロータリーエンコーダ109a~112aから位置情報(回転子の回転角度)を取得するものとする。ロータリーエンコーダ109a~112aから取得される位置情報(回転子の回転角度)は、施術者による施術動作の入力、及び、各アクチュエータの出力(即ち、スレーブ装置20に対するユーザの身体からの入力)に応じて変化する。
【0051】
力触覚制御部154は、センサ情報取得部153によって取得された位置情報(回転子の回転角度)と、制御装置30から送信されるスレーブ装置20のアクチュエータにおける位置情報(回転子の回転角度)とに基づいて、力触覚の伝達制御を行う。即ち、力触覚制御部154は、スレーブ装置20のアクチュエータにおける位置情報(回転子の回転角度)を基準値とし、この基準値とセンサ情報取得部153によって取得された位置情報(回転子の回転角度)とを入力データとして、マスタ装置10において対象とするアクチュエータを、スレーブ装置20において対応付けられたアクチュエータの動作(位置及び力の出力)に追従させる。
【0052】
図6は、本実施形態において用いられる力触覚の伝達制御を実現するためのアルゴリズムを示すブロック図である。
図6に示すように、力触覚の伝達制御を実現するためのアルゴリズムは、アクチュエータ109~112(制御対象システム)と、力・速度割当変換ブロック410と、理想力源ブロック420あるいは理想速度(位置)源ブロック430の少なくとも一つと、逆変換ブロック440とを含む制御則として表される。本実施形態において、マスタ装置10のアクチュエータ109~112と、スレーブ装置20のアクチュエータ209~212とは、遠隔施術処理が実行される場合、1対1に対応付けられる。そのため、以下の説明は、マスタ装置10の1つのアクチュエータと、これに対応するスレーブ装置20のアクチュエータとの間で実現される力触覚の伝達制御に関するアルゴリズムを示している。
【0053】
なお、位置と速度(または加速度)あるいは角度と角速度(または角加速度)は、微積分演算により置換可能なパラメータであるため、位置あるいは角度に関する処理を行う場合、適宜、速度あるいは角速度等に置換することが可能である。また、本実施形態において、アクチュエータにおける位置情報として、回転子の回転角度を用いているが、アクチュエータの回転子と連動する部材の位置等、相互に関連する物理量であれば、他の情報を用いることとしてもよい。
【0054】
力・速度割当変換ブロック410は、アクチュエータ109~112の動作の基準となる値(基準値)と、アクチュエータ109~112の回転軸の現在位置とを入力とする座標変換を定義している。この座標変換は、基準値及び現在速度(または位置)を要素とする入力ベクトルを速度(または位置)の制御目標値を算出するための速度(または位置)からなる出力ベクトルに変換すると共に、基準値及び現在の力を要素とする入力ベクトルを力の制御目標値を算出するための力からなる出力ベクトルに変換するものである。具体的には、力・速度割当変換ブロック410における座標変換は、次式(1)及び(2)のように表される。
【0055】
dX2=[H]・dX1 (1)
F2=[H]・F1 (2)
【0056】
ただし、式(1)において、dは一階微分を表す演算子、dX2は速度の状態値を導出するための速度ベクトル、dX1は、基準値及びアクチュエータ109~112の作用に基づく速度(アクチュエータ109~112の回転軸の速度、または、アクチュエータ109~112の回転軸と連動する部分の速度)を要素とするベクトル、Hはバイラテラル機能を表す変換行列である。また、式(2)において、d2F2(ただし、d2は二階微分を表す演算子)は力の状態値を導出するための力ベクトル、d2F1は基準値及びアクチュエータ109~112の作用に基づく力(アクチュエータ109~112の回転軸の回転トルク、または、アクチュエータ109~112の回転軸と連動する部分の力)を要素とするベクトルである。
力・速度割当変換ブロック410では、互いに関連する実世界の位置(速度)及び力を要素とする入力データを、位置(速度)と力とが互いに独立する仮想空間に座標変換(即ち、斜交座標系から直交座標系に変換)し、位置(速度)に関する演算と、力に関する演算とを独立に処理することを可能としている。
【0057】
理想力源ブロック420は、力・速度割当変換ブロック410によって定義された座標変換に従って、力の領域における演算を行うブロックである。理想力源ブロック420においては、機能別力・速度割当変換ブロック410によって定義された座標変換に基づく演算を行う際の力に関する目標値が設定されている。この目標値は、マスタ装置10及びスレーブ装置20で実行される力触覚の伝達機能(バイラテラル機能)に対応して、固定値または可変値として設定される。なお、力のスケーリングを行う場合、力・速度割当変換ブロック410における座標変換に力のスケーリングの係数を適用したり、力・速度割当変換ブロック410の座標変換において、力に関しては等倍の変換を維持し、理想力源ブロック420において、スケーリングを適用した力の目標値を設定したりすることができる。
【0058】
理想速度(位置)源ブロック430は、力・速度割当変換ブロック410によって定義された座標変換に従って、速度(位置)の領域における演算を行うブロックである。理想速度(位置)源ブロック430においては、力・速度割当変換ブロック410によって定義された座標変換に基づく演算を行う際の速度(位置)に関する目標値が設定されている。この目標値は、マスタ装置10及びスレーブ装置20で実行される力触覚の伝達機能(バイラテラル機能)に対応して、固定値または可変値として設定される。なお、位置のスケーリングを行う場合、力・速度割当変換ブロック410における座標変換に位置のスケーリングの係数を適用したり、力・速度割当変換ブロック410の座標変換において、位置に関しては等倍の変換を維持し、理想速度(位置)源ブロック430において、スケーリングを適用した位置の目標値を設定したりすることができる。
【0059】
逆変換ブロック440は、速度(位置)及び力の領域の値をアクチュエータへの入力の領域の値(例えば電圧値または電流値等)に変換するブロックである。
これにより、アクチュエータにおける位置情報(回転子の回転角度)が力・速度割当変換ブロック410に入力されると、位置情報に基づいて得られる速度(位置)及び力の情報を用いて、力・速度割当変換ブロック410において、力触覚の伝達機能(バイラテラル機能)に応じた速度(位置)及び力の領域それぞれの制御則が適用される。そして、理想力源ブロック120において、力触覚の伝達機能に応じた力の演算が行われると共に、理想速度(位置)源ブロック130において、力触覚の伝達機能に応じた速度(位置)の演算が行われ、力及び速度(位置)それぞれに制御エネルギーが分配される。
【0060】
理想力源ブロック420及び理想速度(位置)源ブロック430における演算結果は、アクチュエータの制御目標を示す情報となり、これらの演算結果が逆変換ブロック440においてアクチュエータの入力値とされる。
その結果、各アクチュエータは、力・速度割当変換ブロック410によって定義された力触覚の伝達機能(バイラテラル機能)に従う動作を実行し、マスタ装置10とスレーブ装置20との間で力触覚を伝達する施術動作が実現される。
【0061】
図5に戻り、施術データ管理部155は、マスタ装置10を介して、施術者が施術を行ったユーザに関する情報及び施術における制御パラメータを取得し、施術データ記憶部171に記憶する。施術者は、施術データ記憶部171に記憶されたユーザに関する情報を読み出すことで、同一のユーザに対して2回目以降の施術を行う際に、ユーザにより適した施術を行うことができる。また、施術者が施術を行う場合、施術データ記憶部171に記憶された制御パラメータの一部または全部を制御装置30に送信することで、施術者が行った施術動作を自動的に繰り返すことが可能となる。例えば、右肩の押圧動作を行った後に左肩の押圧動作を行い、再度、同様の右肩の施術及び左肩の施術を行う場合、施術データ記憶部171に記憶された制御パラメータを制御装置30に送信することで、施術者が同様の施術動作を行う作業負担を軽減することができる。
【0062】
[スレーブ装置20の機能的構成]
図7は、スレーブ装置20の機能的構成を示すブロック図である。
図7に示すように、スレーブ装置20(スレーブ制御部213)のCPU811においては、ユーザインターフェース制御部(UI制御部)251と、モード設定部252と、センサ情報取得部253と、力触覚制御部254と、施術データ管理部255と、が機能する。また、スレーブ装置20の記憶部817には、施術データ記憶部271が形成される。
【0063】
施術データ記憶部271には、スレーブ装置20を介して、ユーザに施術を行った施術者に関する情報及び施術における制御パラメータが記憶される。ユーザに施術を行った施術者に関する情報には、施術者の氏名、年齢、性別、連絡先及び施術技術の評価等の属性情報が含まれる。また、施術における制御パラメータとして、施術者が施術を行った際の力触覚伝達に関する時系列の制御パラメータが記憶される。
【0064】
UI制御部251は、位置・力制御システム1によって施術者がユーザに施術を行うための処理(遠隔施術処理)における各種入出力画面の表示を制御する。例えば、UI制御部251は、遠隔施術処理において、施術者とユーザとが1対1で施術を行う個別施術モード、及び、施術者1人が複数のユーザに施術を行う複数施術モードのいずれを実行するかの設定等を受け付ける。また、UI制御部251は、ユーザが個別施術モードを実行する設定を行った場合、ユーザが希望する施術者の選択を受け付ける。さらに、UI制御部251は、ユーザからの施術動作を繰り返す指示を受け付ける。なお、UI制御部251が、ユーザに対して施術を行う施術者の画像(予め撮影された顔の画像あるいはリアルタイムの撮像画像等)を出力部816のディスプレイに表示することとしてもよい。
【0065】
モード設定部252は、遠隔施術処理において実行されるモード(個別施術モードあるいは複数施術モード)を設定する。モード設定部152は、ユーザの入力に指示に従って、個別施術モードあるいは複数施術モードのいずれかを設定する。
センサ情報取得部253は、アクチュエータ208~212のロータリーエンコーダ208a~212aによって検出される位置情報(回転子の回転角度)を取得する。本実施形態において、力触覚の伝達に関与するスレーブ装置20のアクチュエータは、アクチュエータ209~212であるため、センサ情報取得部253は、例えば、100[ms]毎等、遠隔施術処理における施術動作が連続的で滑らかな動きとなるレートで、ロータリーエンコーダ209a~212aから位置情報(回転子の回転角度)を取得するものとする。ロータリーエンコーダ209a~212aから取得される位置情報(回転子の回転角度)は、各アクチュエータの出力(即ち、マスタ装置10に対する施術者の入力)、及び、右押圧部材206R及び左押圧部材206Lがユーザの身体に作用したことに対する反作用に応じて変化する。
【0066】
力触覚制御部254は、センサ情報取得部253によって取得された位置情報(回転子の回転角度)と、制御装置30から送信されるマスタ装置10のアクチュエータにおける位置情報(回転子の回転角度)とに基づいて、力触覚の伝達制御を行う。即ち、力触覚制御部254は、マスタ装置10のアクチュエータにおける位置情報(回転子の回転角度)を基準値とし、この基準値とセンサ情報取得部253によって取得された位置情報(回転子の回転角度)とを入力データとして、スレーブ装置20において対象とするアクチュエータを、マスタ装置10において対応付けられたアクチュエータの動作(位置及び力の出力)に追従させる。力触覚制御部254において、力触覚の伝達制御を実現するためのアルゴリズムは、
図6に示すアルゴリズムと同様である。
【0067】
また、力触覚制御部254は、スレーブ装置20におけるフェールセーフ機能を備えており、各種物理量の上限として設定された値(例えば、力の上限値、速度の上限値、変位の上限値等)を超える力触覚の制御パラメータを検出した場合、マスタ装置10との力触覚の伝達制御を中止し、施術ユニット202を緊急停止させる制御(ユーザへの作用を抑制する制御)を自律的に実行する。施術ユニット202を緊急停止させる制御については、制御内容を予め設定しておくことが可能であり、例えば、施術ユニット202を直ちに停止させる制御や、施術ユニット202の動作にコンプライアンス制御を適用しながら、所定の退避位置(例えば、ニュートラルポジション)に低速で移動させる制御等を用いることができる。
【0068】
施術データ管理部255は、スレーブ装置20を介して、ユーザに施術を行った施術者に関する情報及び施術における制御パラメータを取得し、施術データ記憶部271に記憶する。ユーザは、施術データ記憶部271に記憶された施術者に関する情報を読み出すことで、過去に施術を受けた施術者を再度選択して施術を受けることができる。また、ユーザが施術を受ける場合、施術データ記憶部271に記憶された制御パラメータの一部または全部を読み出して実行することで、施術者から受けた施術動作を再現することが可能となる。
【0069】
[制御装置30の機能的構成]
図8は、制御装置30の機能的構成を示すブロック図である。
図8に示すように、制御装置30のCPU811においては、リクエスト受付部351と、リンク構築部352と、力触覚伝達管理部353と、履歴データ管理部354と、が機能する。また、制御装置30の記憶部817には、履歴データベース(履歴DB)371が形成される。
【0070】
履歴DB371には、位置・力制御システム1において実行された力触覚の伝達制御に関する各種データが記憶される。例えば、履歴DB371には、位置・力制御システム1によって、施術を受けたユーザに関する情報、施術を行う施術者に関する情報、遠隔施術処理によって生成された制御パラメータ、ユーザがスレーブ装置20に入力した情報(制御パラメータを再生した履歴、力加減を調整した履歴等)及び施術者がマスタ装置10に入力した情報(施術動作を自動的に繰り返した履歴、施術を行ったユーザの特徴(疲労の傾向や施術上の注意点等)をメモした履歴等)が記憶される。
【0071】
リクエスト受付部351は、遠隔施術処理によって施術を受けることを希望するユーザからのリクエストを受け付ける。リクエスト受付部351は、ユーザからのリクエストに応じて、または、所定の選択基準に基づいて、遠隔施術処理によって施術を行うことが可能な施術者を選択する。所定の選択基準としては、例えば、ユーザの属性と施術者の属性とに基づく基準(性別や、ユーザが希望する施術内容と施術者が得意とする施術内容とをマッチングする等)としたり、施術者の作業負担の平準化に基づく基準(施術者の合計施術時間を均等化する等)としたり、施術の履歴に基づく基準(過去に施術を行った施術者とユーザの組み合わせを優先する等)としたりすることができる。
【0072】
リンク構築部352は、スレーブ装置20のユーザによって設定されたモードに応じて、遠隔施術処理を行うマスタ装置10及びスレーブ装置20の通信リンクを確立する。即ち、リンク構築部352は、個別施術モードに設定されたスレーブ装置20の1つと、いずれか1つのマスタ装置10とのリンクを1対1で確立する。また、リンク構築部352は、複数施術モードに設定された複数のスレーブ装置20と、いずれか1つのマスタ装置10とのリンクを1対n(nは2以上の自然数)で確立する。
【0073】
力触覚伝達管理部353は、個別施術モードで遠隔施術処理を実行する場合、個別施術モードに設定されたスレーブ装置20の1つと、いずれか1つのマスタ装置10とで、力触覚の伝達制御(バイラテラル制御)を実行する。このとき、力触覚伝達管理部353は、スレーブ装置20のユーザの要求に応じて、スレーブ装置20から出力する力のスケーリングを実行することも可能である。
【0074】
また、力触覚伝達管理部353は、複数施術モードで遠隔施術処理を実行する場合、マスタ装置10から送信される制御パラメータを正規化して、施術を受けるユーザのスレーブ装置20に送信する。例えば、力触覚伝達管理部353は、マスタ装置10から送信される制御パラメータを標準の体型として設定された仮想的なユーザに施術が行われる場合の施術動作に変換(正規化)して、施術を受ける各ユーザのスレーブ装置20に送信する。これにより、複数のユーザが共通して利用可能な制御パラメータをスレーブ装置20に送信することができる。なお、スレーブ装置20では、正規化された制御パラメータに対し、施術を受けるユーザに適合させる補正を加えて、力触覚制御部254が力触覚の伝達制御を行うことができる。例えば、ユーザの肩幅、筋肉の厚み等をスレーブ装置20に設定しておき、標準の体型とユーザの体型との差分に基づく補正量を制御パラメータに加えて、押圧動作を出力することができる。ただし、力触覚伝達管理部353が、標準の体型とユーザの体型との差分に基づく補正量を制御パラメータに加えて、それぞれのスレーブ装置20に対して、補正後の制御パラメータを送信することとしてもよい。また、正規化された制御パラメータに補正を加えることに代えて、スレーブ装置20における力触覚の出力において、位置の制御に対する力の制御の重みを高めたり、力の制御のみを行ったりすることとしてもよい。力の制御の重みを高めることで、正規化された制御パラメータにおける力の加減に近い力触覚が出力されるため、体型が異なるユーザに対しても、正規化された制御パラメータで標準の体型に施術を行った場合と同様の力の加減で施術を行うことができる。
【0075】
履歴データ管理部354は、位置・力制御システム1において実行された力触覚の伝達制御に関する各種データを履歴DB371に記憶する。履歴データ管理部354は、履歴DB371に記憶された履歴のデータをマスタ装置10あるいはスレーブ装置20に送信したり、データの分析を行って、ユーザの嗜好を判別したり、施術者の技術を評価したりすることができる。
【0076】
[施術のモード]
次に、位置・力制御システム1で実行される遠隔施術処理のモードについて説明する。
[個別施術モード]
図9は、位置・力制御システム1における個別施術モードの概念を示す模式図である。
位置・力制御システム1においては、複数のマスタ装置10と、複数のスレーブ装置20とが含まれており、
図9に示すように、スレーブ装置20のユーザは、施術者とユーザとが1対1で施術を行う個別施術モードを設定することができる。
【0077】
個別施術モードでは、任意の一のスレーブ装置20と、任意の一のマスタ装置10とで通信リンクを確立して、遠隔施術処理を実行することができる。例えば、スレーブ装置20のユーザが特定の施術者を選択したり、現在施術可能な施術者の中から制御装置30が施術者を選択したりすることにより、マスタ装置10とスレーブ装置20とが1対1で力触覚の伝達制御を行う状態となる。
【0078】
個別施術モードによれば、表示装置D等に映し出された映像で施術者がユーザの様子を確認しながら、きめ細やかな施術を行うことができる。なお、個別施術モードで遠隔施術処理を実行する場合、マスタ装置10及びスレーブ装置20のマイク及びスピーカを使用して、ユーザと施術者とが対話を行いながら施術を行うことも可能である。
【0079】
[複数施術モード]
図10は、位置・力制御システム1における複数施術モードの概念を示す模式図である。
位置・力制御システム1においては、複数のマスタ装置10と、複数のスレーブ装置20とが含まれており、
図10に示すように、スレーブ装置20のユーザは、施術者1人が複数のユーザに施術を行う複数施術モードを設定することができる。
【0080】
複数施術モードでは、複数のスレーブ装置20と、特定の1つのマスタ装置10とで通信リンクを確立して、遠隔施術処理を実行することができる。例えば、施術技術の評価が高い施術者が施術を行う時間に、その施術者による施術を希望する複数のユーザが複数施術モードで施術に参加したり、混雑等により、手が空いている施術者が存在しない場合に、複数施術モードで施術を行っている施術者の施術にユーザが参加したりすることにより、特定の1つのマスタ装置10と複数のスレーブ装置20とが力触覚の伝達制御を行う状態となる。
【0081】
複数施術モードによれば、人気が高い施術者の施術を同時に多くのユーザに提供したり、施術を受ける時間帯を優先するユーザが混雑状況に影響されずに施術を受けたりすることが可能となる。
なお、複数施術モードで遠隔施術処理を実行する場合、マスタ装置10から送信される制御パラメータを正規化して、施術を受けるユーザのスレーブ装置20に送信し、スレーブ装置20では、正規化された制御パラメータに対し、施術を受けるユーザに適合させる補正を加えて、力触覚制御部254が力触覚の伝達制御を行うことができる。
そのため、複数施術モードにおいても、各ユーザの体型に合わせて、適切な施術を行うことができる。
【0082】
[動作]
次に、位置・力制御システム1の動作を説明する。
図11は、位置・力制御システム1が実行する遠隔施術処理の流れを示すフローチャートである。
遠隔施術処理は、制御装置30において、遠隔施術処理の実行が指示入力されることに対応して開始される。
【0083】
遠隔施術処理が開始されると、ステップS1において、制御装置30のリクエスト受付部351は、現在施術が可能な施術者を確認する。例えば、リクエスト受付部351は、位置・力制御システム1に登録されているマスタ装置10をポーリングすることにより、各マスタ装置10が起動しているか否かを確認し、起動しているマスタ装置10の施術者を現在施術可能な施術者に設定することができる。ただし、施術者がマスタ装置10から制御装置30に施術可能であることを示すメッセージ等を送信することにより、現在施術可能な施術者を確認することとしてもよい。
【0084】
ステップS2において、リクエスト受付部351は、遠隔施術処理によって施術を受けることを希望するユーザからのリクエストを受け付ける。このとき、リクエスト受付部351が、現在施術可能な施術者のリスト等をスレーブ装置20に送信し、ユーザがこのリストを参照して送信したリクエストを受け付けることとしてもよい。
ステップS3において、リクエスト受付部351は、スレーブ装置20からのリクエストにおけるモードの判定を行う。
個別施術モードがリクエストされている場合、処理はステップS4に移行する。
一方、複数施術モードがリクエストされている場合、処理はステップS5に移行する。
【0085】
なお、複数のスレーブ装置20から個別施術モード及び複数施術モードの両方がリクエストされている場合、ステップS4及びステップS5の処理は並列的に実行される。
ステップS4において、リクエスト受付部351は、個別施術処理(
図12参照)を実行する。
ステップS4の後、遠隔施術処理が繰り返される。
ステップS5において、リクエスト受付部351は、複数施術処理(
図13参照)を実行する。
ステップS5の後、遠隔施術処理が繰り返される。
【0086】
[個別施術処理]
次に、遠隔施術処理のステップS4で実行される個別施術処理について説明する。
図12は、個別施術処理の流れを示すフローチャートである。
個別施術処理は、遠隔施術処理のステップS4において、サブフローとして実行される。
【0087】
個別施術処理が開始されると、ステップS11において、リクエスト受付部351は、スレーブ装置20から受け付けたリクエストに基づいて、ユーザによる施術者の選択を確認する。具体的には、リクエストのデータにおいて、ユーザが特定の施術者を選択する情報が含まれているか、任意の施術者を選択する情報が含まれているか(即ち、施術者を選択しない情報が含まれているか)等が判定される。
ステップS12において、リクエスト受付部351は、現在施術可能な施術者の中から、各ユーザに施術を行う施術者を決定する。
【0088】
ステップS13において、リンク構築部352は、マスタ装置10とスレーブ装置20との通信リンクを構築する。これにより、ステップS12で決定された施術者のマスタ装置10と、ユーザのスレーブ装置20とで、力触覚の伝達制御を行うことが可能な状態となる。
ステップS14において、力触覚伝達管理部353は、マスタ装置10及びスレーブ装置20共に、ニュートラルポジションから基準位置(ユーザの体型に応じた初期位置)への移動を開始させる。即ち、マスタ装置10の受圧ユニット102及びスレーブ装置20の施術ユニット202がニュートラルポジション(例えば、上下方向の上端の位置)から下降を開始する。
【0089】
ステップS15において、力触覚伝達管理部353は、施術ユニット202がユーザの身体に接触したか否かの判定を行う。即ち、スレーブ装置20のスレーブ制御部213によって、設定された反力が施術ユニット202に発生したことが検出されているか否かが判定される。
施術ユニット202がユーザの身体に接触してない場合、ステップS15においてNOと判定されて、ステップS15の処理が繰り返される。
一方、施術ユニット202がユーザの身体に接触した場合、ステップS15においてYESと判定されて、処理はステップS16に移行する。
【0090】
ステップS16において、力触覚伝達管理部353は、マスタ装置10及びスレーブ装置20のニュートラルポジションからの移動を停止する。即ち、マスタ装置10の受圧ユニット102及びスレーブ装置20の施術ユニット202の移動が停止される。ステップS16で停止された位置が、マスタ装置10の受圧ユニット102及びスレーブ装置20の施術ユニット202の初期位置に設定される。
なお、ステップS14からステップS16の処理は、スレーブ装置20においてのみ実行することとしてもよい。また、マスタ装置10のアクチュエータ108とスレーブ装置20のアクチュエータ208とで力触覚の伝達制御を行い、施術者が手動でマスタ装置10の受圧ユニット102を移動させ、スレーブ装置20の施術ユニット202がユーザに接触したと感じた位置で停止させることとしてもよい。
【0091】
ステップS17において、力触覚伝達管理部353は、マスタ装置10において、施術者がマスタ装置10の受圧ユニット102及びスレーブ装置20の施術ユニット202に対し、上下方向の移動制限(例えば、押圧による押下距離を設定値以内とする等)を設定したか否かの判定を行う。即ち、施術者が施術を行う際に、受圧ユニット102の右受圧部材106R及び左受圧部材106Lと、施術ユニット202の右押圧部材206R及び左押圧部材206Lとに対して、上下方向の移動の制限を設定したか否かが判定される。マスタ装置10の受圧ユニット102及びスレーブ装置20の施術ユニット202に対し、上下方向の移動制限を設定することで、施術者は、ユーザに対して過度に強い押圧が行われること等をより確実に回避できる。
施術者がマスタ装置10の受圧ユニット102及びスレーブ装置20の施術ユニット202に対し、上下方向の移動制限を設定していない場合、ステップS17においてNOと判定されて、処理はステップS18に移行する。
一方、施術者がマスタ装置10の受圧ユニット102及びスレーブ装置20の施術ユニット202に対し、上下方向の移動制限を設定した場合、ステップS17においてYESと判定されて、処理はステップS19に移行する。
【0092】
ステップS18において、力触覚伝達管理部353は、マスタ装置10の受圧ユニット102及びスレーブ装置20の施術ユニット202に対し、上下方向の移動制限がない設定とする。
ステップS19において、力触覚伝達管理部353は、マスタ装置10の受圧ユニット102及びスレーブ装置20の施術ユニット202に対し、上下方向の移動制限を設定する。
【0093】
ステップS20において、力触覚伝達管理部353は、力触覚の伝達制御(バイラテラル制御)を開始する。これに伴い、履歴データ管理部354は、力触覚の伝達制御に関する制御パラメータの記録を開始(履歴DB371に逐次記憶)する。また、スレーブ装置20の施術データ記憶部271に力触覚の伝達制御に関する制御パラメータを記憶することとしてもよい。ただし、スレーブ装置20の施術データ記憶部271には、有効期限(例えば、当日限り等)を設定して、力触覚の伝達制御に関する制御パラメータの記憶を許可することとしてもよい。
【0094】
ステップS21において、力触覚伝達管理部353は、施術者によって入力されたマスタ装置10への施術動作の入力をスレーブ装置20に伝達すると共に、スレーブ装置20においてユーザの身体から入力された反力を伝達する制御(力触覚の伝達制御)を実行する。本実施形態において、ユーザがスレーブ装置20を介して施術を受ける場合、当日の最初の施術は、施術者がマスタ装置10を介して施術を行うものとし、当日の2回目以降の施術は、記憶された制御パラメータを再生して施術を受けることが可能となっている。
【0095】
ここで、ステップS21の処理が実行される場合、スレーブ装置20の力触覚制御部254は、制御装置30から送信される制御パラメータ及びスレーブ装置20において生成される制御パラメータを監視する。そして、力触覚制御部254は、各種物理量の上限として設定された値(例えば、力の上限値、速度の上限値、変位の上限値等)を超える力触覚の制御パラメータを検出した場合、マスタ装置10との力触覚の伝達制御を中止し、施術ユニット202を緊急停止させる制御(ユーザへの作用を抑制する制御)を自律的に実行する。
【0096】
ステップS22において、力触覚伝達管理部353は、マスタ装置10から施術動作の入力が終了したことの通知(施術動作の終了通知)を受信する。施術動作の終了通知は、例えば、施術者がマスタ装置10に対して、施術を終了する旨の操作を行うことにより送信される。
ステップS23において、スレーブ装置20のUI制御部251は、ユーザからの施術動作を繰り返す指示が入力されたか否かの判定を行う。
ユーザからの施術動作を繰り返す指示が入力されていない場合、ステップS23においてNOと判定されて、個別施術処理は終了し、処理は遠隔施術処理に戻る。
一方、ユーザからの施術動作を繰り返す指示が入力された場合、ステップS23においてYESと判定されて、処理はステップS24に移行する。
【0097】
ステップS24において、スレーブ装置20の施術データ管理部255は、繰り返される施術動作の制御パラメータを所定のファイルとして施術データ記憶部271に保存する。なお、このとき保存される所定のファイルには、ユーザが施術動作の繰り返しを希望する施術の制御パラメータが含まれており、施術者によって行われた施術動作全体の制御パラメータを含めることや、施術者によって行われた施術動作のうち、ユーザが選択した一部の制御パラメータを含めること等が可能である。
【0098】
ステップS25において、力触覚伝達管理部353は、ステップS24において保存されたファイルに含まれる制御パラメータを再生する。これにより、ユーザが繰り返しを希望する施術動作が再生され、施術者が施術動作を行うことなく、ユーザに施術を行うことが可能となる。
ステップS25の後、スレーブ装置20における施術動作の再生は終了(即ち、個別制御処理は終了)し、処理は遠隔施術処理に戻る。
【0099】
[複数施術処理]
次に、遠隔施術処理のステップS5で実行される複数施術処理について説明する。
図13は、複数施術処理の流れを示すフローチャートである。
複数施術処理は、遠隔施術処理のステップS5において、サブフローとして実行される。
【0100】
複数施術処理が開始されると、ステップS31において、リクエスト受付部351は、スレーブ装置20から受け付けたリクエストに基づいて、ユーザによる施術者の選択を確認する。具体的には、リクエストのデータにおいて、ユーザが特定の施術者を選択する情報が含まれているか、任意の施術者を選択する情報が含まれているか(即ち、施術者を選択しない情報が含まれているか)等が判定される。
【0101】
ステップS32において、リクエスト受付部351は、現在施術可能な施術者の中から、複数のユーザに施術を行う施術者を決定する。即ち、ユーザが選択した特定の施術者が現在施術可能である場合、特定の施術者が複数のユーザに対して施術を行う施術者として決定される。また、任意の施術者を選択したユーザに対しては、現在施術可能である施術者のうち、リクエスト受付部351が所定の選択基準で選択した施術者が、施術を行う施術者として決定される。
【0102】
ステップS33において、リンク構築部352は、マスタ装置10と複数のスレーブ装置20との通信リンクを構築する。これにより、ステップS32で決定された施術者のマスタ装置10と、複数のユーザのスレーブ装置20とで、力触覚の伝達制御を行うことが可能な状態となる。
ステップS34において、力触覚伝達管理部353は、マスタ装置10及び複数のスレーブ装置20共に、ニュートラルポジションから基準位置(ユーザの体型に応じた初期位置)への移動を開始させる。即ち、マスタ装置10の受圧ユニット102及び複数のスレーブ装置20の施術ユニット202がニュートラルポジション(例えば、上下方向の上端の位置)から下降を開始する。
【0103】
ステップS35において、力触覚伝達管理部353は、各スレーブ装置20の施術ユニット202がユーザの身体に接触したか否かの判定を行う。即ち、各スレーブ装置20のスレーブ制御部213によって、設定された反力が施術ユニット202に発生したことが検出されているか否かが判定される。
施術ユニット202がユーザの身体に接触してない場合、ステップS35においてNOと判定されて、ステップS35の処理が繰り返される。
一方、施術ユニット202がユーザの身体に接触した場合、ステップS35においてYESと判定されて、処理はステップS36に移行する。
【0104】
ステップS36において、力触覚伝達管理部353は、マスタ装置10及びスレーブ装置20のニュートラルポジションからの移動を停止する。即ち、マスタ装置10の受圧ユニット102及びスレーブ装置20の施術ユニット202の移動が停止される。ステップS36で停止された位置が、マスタ装置10の受圧ユニット102及びスレーブ装置20の施術ユニット202の初期位置に設定される。
なお、ステップS34からステップS36の処理は、通信リンクが確立された各スレーブ装置20に対して、並列的な処理として実行することができる。また、ステップS34からステップS36の処理は、各スレーブ装置20においてのみ実行することとしてもよい。
【0105】
ステップS37において、力触覚伝達管理部353は、力触覚の伝達制御(マスタ装置10からスレーブ装置20に対する力触覚の伝達制御)を開始する。これに伴い、履歴データ管理部354は、力触覚の伝達制御に関する制御パラメータの記録を開始(履歴DB371に逐次記憶)する。また、スレーブ装置20の施術データ記憶部271に力触覚の伝達制御に関する制御パラメータを記憶することとしてもよい。ただし、スレーブ装置20の施術データ記憶部271には、有効期限(例えば、当日限り等)を設定して、力触覚の伝達制御に関する制御パラメータの記憶を許可することとしてもよい。
【0106】
ステップS38において、力触覚伝達管理部353は、施術者によって入力されたマスタ装置10への施術動作の入力をスレーブ装置20に伝達する力触覚の伝達制御を実行する。このとき、力触覚伝達管理部353は、マスタ装置10から送信される制御パラメータを正規化して、施術を受けるユーザのスレーブ装置20に送信する。また、スレーブ装置20では、正規化された制御パラメータに対し、施術を受けるユーザに適合させる補正を加えて、力触覚制御部254が力触覚の伝達制御を行うことができる。
【0107】
ステップS39において、力触覚伝達管理部353は、マスタ装置10から施術動作の入力が終了したことを示す施術動作の終了通知を受信する。施術動作の終了通知は、例えば、施術者がマスタ装置10に対して、施術を終了する旨の操作を行うことにより送信される。
ステップS40において、スレーブ装置20のUI制御部251は、ユーザからの施術動作を繰り返す指示が入力されたか否かの判定を行う。
ユーザからの施術動作を繰り返す指示が入力されていない場合、ステップS40においてNOと判定されて、そのスレーブ装置20における複数施術処理は終了し、処理は遠隔施術処理に戻る。
ユーザからの施術動作を繰り返す指示が入力された場合、ステップS40においてYESと判定されて、処理はステップS41に移行する。
【0108】
ステップS41において、スレーブ装置20の施術データ管理部255は、繰り返される施術動作の制御パラメータを所定のファイルとして施術データ記憶部271に保存する。なお、このとき保存される所定のファイルには、ユーザが施術動作の繰り返しを希望する施術の制御パラメータが含まれており、施術者によって行われた施術動作全体の制御パラメータを含めることや、施術者によって行われた施術動作のうち、ユーザが選択した一部の制御パラメータを含めること等が可能である。また、このとき保存される制御パラメータは、マスタ装置10から送信された正規化された制御パラメータとすることや、スレーブ装置20において、正規化された制御パラメータに対し、施術を受けるユーザに適合させる補正を加えた制御パラメータとすることが可能である。
【0109】
ステップS42において、力触覚伝達管理部353は、ステップS41において保存されたファイルに含まれる制御パラメータを再生する。これにより、ユーザが繰り返しを希望する施術動作が再生され、施術者が施術動作を行うことなく、ユーザに施術を行うことが可能となる。
ステップS42の後、そのスレーブ装置20における施術動作の再生は終了(即ち、複数制御処理は終了)し、処理は遠隔施術処理に戻る。
【0110】
以上のように、本実施形態における位置・力制御システム1によれば、複数のマスタ装置10と、複数のスレーブ装置20とが遠隔的に設置されると共に、任意のマスタ装置10とスレーブ装置20とを組み合わせて通信リンクを確立することが可能である。そして、マスタ装置10とスレーブ装置20とで、力触覚の伝達制御を実行することにより、施術者がマスタ装置10を介して行った施術動作が、スレーブ装置20を介してユーザに入力されると共に、ユーザからスレーブ装置20に入力した反力が、マスタ装置10を介して施術者に提示される。
したがって、施術者がユーザに対して直接施術する場合のマッサージにより近い触覚を、マッサージを行う機器によって提示することが可能となる。
【0111】
また、施術が行われることにより、仕事、運転、学習あるいは趣味等の作業において、ユーザの自律神経を整え、リラックス効果を期待することができる。
また、本実施形態における位置・力制御システム1によれば、位置・力制御システム1を介して、施術者がユーザに対して行った施術動作の制御パラメータを記憶し、施術動作の一部または全部を自動的に再生することが可能である。
そのため、ユーザにおいては、希望する施術動作を簡単に繰り返し受けることができると共に、施術者においては、同様の施術動作を繰り返す必要がないため、作業負担を軽減することができる。
【0112】
また、位置・力制御システム1においては、施術者とユーザとが1対1で施術を行う個別施術モード、及び、施術者1人が複数のユーザに施術を行う複数施術モードで遠隔施術処理を実行可能である。
そのため、個別施術モードでは、ユーザが選択した特定の施術者または位置・力制御システム1が選択した施術者がユーザに対して1対1で施術を行うことができるため、ユーザの様子を確認しながら、きめ細やかな施術を行うことが可能となる。
【0113】
また、複数施術モードでは、ユーザが選択した特定の施術者または位置・力制御システム1が選択した施術者が複数のユーザに対して同時に施術を行うことができるため、人気が高い施術者の施術を同時に多くのユーザに提供したり、施術を受ける時間帯を優先するユーザが混雑状況に影響されずに施術を受けたりすることが可能となる。
【0114】
[変形例1]
上述の実施形態において、マスタ装置10及びスレーブ装置20に備えられる機械的な構成は、位置・力制御システム1によって提供される施術内容に応じて、種々異なるものとすることができる。
図14は、ユーザの背中を摩る機能を備えたスレーブ装置20の構成を示す模式図である。また、
図15は、
図14に示すスレーブ装置20の正面図、
図16は、
図15におけるスレーブ装置20のA-A’断面図、
図17は、
図15におけるスレーブ装置20のB-B’断面図である。
【0115】
図14~
図17に示すスレーブ装置20の構成は、
図3に示すスレーブ装置20の構成に対し、前後及び左右に移動可能な右摩り部214R及び左摩り部214Lを備える点が異なっている。
【0116】
右摩り部214Rは、右アーム部204Rに対して左右方向に移動可能に設置され、右摩り部材215Rを前後方向に移動可能に支持する右支持部材216Rを備えている。また、右摩り部214Rは、施術者の摩り動作に応じて制御装置30から送信される位置及び力の基準値に従って、ユーザに対する摩り作用を付与する部材であり、右支持部材216Rに対して前後方向に移動する。即ち、右摩り部214Rの前後方向の位置は、施術者の摩り動作によって変化される。
また、右摩り部214Rの左右方向の移動は、アクチュエータ217によって制御可能となっており、右摩り部214Rの前後方向の移動は、アクチュエータ218によって制御可能となっている。なお、アクチュエータ217,218は、回転子の回転角度を検出するロータリーエンコーダ217a,218aをそれぞれ備えている。
【0117】
左摩り部214Lは、左アーム部204Lに対して左右方向に移動可能に設置され、左摩り部材215Lを前後方向に移動可能に支持する左支持部材216Lを備えている。また、左摩り部214Lは、施術者の摩り動作に応じて制御装置30から送信される位置及び力の基準値に従って、ユーザに対する摩り作用を付与する部材であり、左支持部材216Lに対して前後方向に移動する。即ち、左摩り部214Lの前後方向の位置は、施術者の摩り動作によって変化される。
また、左摩り部214Lの左右方向の移動は、アクチュエータ219によって制御可能となっており、右摩り部214Rの前後方向の移動は、アクチュエータ220によって制御可能となっている。なお、アクチュエータ219,220は、回転子の回転角度を検出するロータリーエンコーダ219a,220aをそれぞれ備えている。
【0118】
なお、マスタ装置10においては、右作用部205R及び左作用部205Lに対する右操作部105R及び左操作部105Lと同様に、右摩り部214R及び左摩り部214Lに対応する摩り動作用の構成を備え、施術者が摩り動作用の構成を介して入力した摩り動作を、力触覚の伝達制御を行って、スレーブ装置20の右摩り部214R及び左摩り部214Lによってユーザに伝達することができる。また、マスタ装置10において、設定を切り替えることにより、右操作部105R及び左操作部105Lを摩り動作用の構成として機能させることや、右摩り部214R及び左摩り部214Lの摩り動作を遠隔的に行うための操作部(レバーにより右摩り部214R及び左摩り部214Lを上下方向及び左右方向に移動させるコントローラ等)を別途備えることとしてもよい。
このような構成により、ユーザに対する施術動作として、右押圧部材206R及び左押圧部材206Lによる押圧動作に加え、右摩り部214R及び左摩り部214Lによる摩り動作を実行することが可能となる。
【0119】
なお、
図14~
図17に示すスレーブ装置20の構成例では、右摩り部214R及び左摩り部214Lを1つずつ備えるものとしたが、右摩り部214R及び左摩り部214Lをそれぞれ複数備える構成としてもよい。
【0120】
以上のように、本実施形態における位置・力制御システム1は、施術動作の入力を受け付ける1または複数のマスタ装置10と、施術動作を出力する1または複数のスレーブ装置20と、マスタ装置10及びスレーブ装置20を制御する制御装置30と、を含む。
制御装置30は、マスタ装置10に入力された施術動作に対応する力触覚をスレーブ装置20に出力させるための制御パラメータをスレーブ装置20に送信し、スレーブ装置20が出力した施術動作に対する反力をマスタ装置10に出力させるための制御パラメータをマスタ装置10に送信する。
これにより、施術者がマスタ装置を介して行った施術動作が、スレーブ装置を介してユーザに入力されると共に、ユーザからスレーブ装置に入力した反力が、マスタ装置を介して施術者に提示される。
したがって、施術者がユーザに対して直接施術する場合のマッサージにより近い触覚を、マッサージを行う機器によって提示することが可能となる。
【0121】
制御装置30は、スレーブ装置20からのリクエストに応じて、1つのマスタ装置10と、当該リクエストを行ったスレーブ装置20とにおける通信リンクを確立させ、マスタ装置10に入力された施術動作に対応する力触覚をスレーブ装置20に出力させる。
これにより、施術者がユーザの様子を確認しながら1対1の施術を行うことができるため、きめ細やかな施術を行うことが可能となる。
【0122】
制御装置30は、複数のスレーブ装置20からのリクエストを受け付け、いずれか1つのマスタ装置10と、当該リクエストを行った複数のスレーブ装置20とにおける通信リンクを確立させる。
これにより、特定の施術者の施術を同時に多くのユーザに提供したり、ユーザが施術者側の混雑状況に影響されずに施術を受けたりすることが可能となる。
【0123】
制御装置30は、スレーブ装置20からのリクエストに示された1つのマスタ装置10と、当該リクエストを行った複数のスレーブ装置20とにおける通信リンクを確立させる。
これにより、複数のユーザに対し、これらのユーザが希望する施術者の施術を提供することができる。
【0124】
制御装置30は、マスタ装置10に入力された施術動作を正規化した制御パラメータとして、複数のスレーブ装置20に送信する。
これにより、複数のユーザが共通して利用可能な制御パラメータをスレーブ装置20に送信することができる。
【0125】
スレーブ装置20は、制御装置30から送信された正規化した制御パラメータに対し、当該スレーブ装置20のユーザに応じた補正を行い、補正後の制御パラメータに基づいて、力触覚を出力する。
これにより、1人の施術者が複数のユーザに施術を行う場合においても、各ユーザの体型に合わせて、適切な施術を行うことができる。
【0126】
スレーブ装置20は、制御装置30から送信された制御パラメータが示す物理量が設定された上限を超えた場合、及び、制御装置30から制御パラメータを受信する通信状況が設定された状態より低下した場合の少なくともいずれかにおいて、ユーザへの作用を抑制するための予め設定された制御を実行する。
これにより、適切な力触覚がユーザに提示されない可能性がある状況において、ユーザに不適切な作用が入力されることを抑制できる。
【0127】
スレーブ装置20は、記憶された制御パラメータを再生することにより、施術動作に対応する力触覚を出力する。
これにより、過去に行われた施術動作をスレーブ装置20において再現することができる。
【0128】
スレーブ装置20は、施術されるユーザを押圧する押圧部材(右押圧部材206R及び左押圧部材206L)を備え、マスタ装置10に入力された押圧動作の力触覚を、押圧部材を介して出力する。
これにより、位置・力制御システム1において、ユーザに対して押圧を行う施術を、力触覚を伝達しながら実行することができる。
【0129】
スレーブ装置20は、施術されるユーザを摩る摩り部材(右摩り部214R及び左摩り部214L)を備え、マスタ装置10に入力された摩り動作のための操作に対応して、摩り部材を介して摩り動作を出力する。
これにより、位置・力制御システム1において、ユーザに対して摩りを行う施術を、力触覚を伝達しながら実行することができる。
【0130】
また、本実施形態におけるスレーブ装置20(位置・力制御装置)は、施術動作の入力を受け付ける1または複数のマスタ装置10と、施術動作を出力する1または複数のスレーブ装置20と、マスタ装置10及びスレーブ装置20を制御する制御装置30と、を含む位置・力制御システム1におけるスレーブ装置20として構成される位置・力制御装置である。
スレーブ装置20は、施術動作の入力を受け付けるマスタ装置10に入力された施術動作に対応する力触覚を表す制御パラメータに基づいて、施術動作に対応する力触覚を出力する。
これにより、リアルタイムにマスタ装置10に入力された施術動作または過去に行われた施術動作をスレーブ装置20において出力することができる。
【0131】
なお、上述の実施形態においては、制御装置30をマスタ装置10及びスレーブ装置20とは別体の装置として構成する例について説明したが、これに限られない。即ち、制御装置30、マスタ制御部113及びスレーブ制御部213に備えられた機能的構成が位置・力制御システム1全体として備えられていればよく、制御装置30の機能の一部または全部をマスタ制御部113またはスレーブ制御部213に備えることとしてもよい。また、マスタ制御部113及びスレーブ制御部213の機能を制御装置30に備え、マスタ装置10及びスレーブ装置20の構成をより簡単なものとしてもよい。
【0132】
また、上述の実施形態において、スレーブ装置20において、各種物理量の上限として設定された値(例えば、力の上限値、速度の上限値、変位の上限値等)を超える力触覚の制御パラメータを検出した場合に、フェールセーフのための制御を実行することとしたが、これに限られない。即ち、通信状況が設定された状態より低下した場合(途絶、速度低下、速度変動が大きい等)、スレーブ装置20がフェールセーフのための制御を実行することとしてもよい。
【0133】
また、上述の実施形態及び変形例を適宜組み合わせて、本発明を実施することが可能である。
上述の実施形態における制御のための処理は、ハードウェア及びソフトウェアのいずれにより実行させることも可能である。
換言すると、上述の処理を実行できる機能が位置・力制御システム1に備えられていればよく、この機能を実現するためにどのような機能構成及びハードウェア構成とするかは上述の例に限定されない。
上述の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、コンピュータにネットワークや記憶媒体からインストールされる。
【0134】
プログラムを記憶する記憶媒体は、装置本体とは別に配布されるリムーバブルメディア、あるいは、装置本体に予め組み込まれた記憶媒体等で構成される。リムーバブルメディアは、例えば、USB(Universal Serial Bus)メモリ、SDカード、磁気ディスク、光ディスク、または光磁気ディスク等により構成される。光ディスクは、例えば、CD-ROM(Compact Disk-Read Only Memory),DVD(Digital Versatile Disk),Blu-ray Disc(登録商標)等により構成される。光磁気ディスクは、MD(Mini-Disk)等により構成される。また、装置本体に予め組み込まれた記憶媒体は、例えば、プログラムが記憶されているROMやハードディスク等で構成される。
【符号の説明】
【0135】
1 位置・力制御システム、10 マスタ装置、101 基台部、102 受圧ユニット、103 前後アーム、104R,204R 右アーム部、104L,204L 左アーム部、105R 右操作部、105L 左操作部、106R 右受圧部材、106L 左受圧部材、107R,207R 右支持部材、107L,207L 左支持部材、108~112,208~212,217~220 アクチュエータ、108a~112a,208a~212a,217a~220a ロータリーエンコーダ、113 マスタ制御部、151,251 ユーザインターフェース制御部(UI制御部)、152,252 モード設定部、153,253 センサ情報取得部、154,254 力触覚制御部、155,255 施術データ管理部、171,271 施術データ記憶部、20 スレーブ装置、201 支持部、202 施術ユニット、203 ベース部、205R 右作用部、205L 左作用部、206R 右押圧部材、206L 左押圧部材、213 スレーブ制御部、30 制御装置、351 リクエスト受付部、352 リンク構築部、353 力触覚伝達管理部、354 履歴データ管理部、371 履歴データベース(履歴DB)、40 ネットワーク、C 撮像装置、D 表示装置、410 力・速度割当変換ブロック、420 理想力源ブロック、430 理想速度(位置)源ブロック、440 逆変換ブロック、800 情報処理装置、811 CPU、812 ROM、813 RAM、814 バス、815 入力部、816 出力部、817 記憶部、818 通信部、819 ドライブ、820 撮像部、831 リムーバブルメディア