(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023069968
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】浮上外壁ユニット
(51)【国際特許分類】
E04H 9/14 20060101AFI20230511BHJP
B63B 35/44 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
E04H9/14 Z
B63B35/44 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021193630
(22)【出願日】2021-11-04
(71)【出願人】
【識別番号】515125883
【氏名又は名称】峰原 政幸
(72)【発明者】
【氏名】峰原 政幸
【テーマコード(参考)】
2E139
【Fターム(参考)】
2E139AA07
2E139AC04
2E139AD03
2E139AD08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】水害時に浮上した建屋が降下する際に床下領域に流れ込む流木等の大型ゴミを防止することにより降下時に安定して所定の位置に戻すための浮上外壁ユニットを提供する。
【解決手段】建屋基礎部又は建屋を支える支柱部に連結された浮体物160と、前記浮体物には鉛直直下向きに突出するアンカーポール230と、前記アンカーポールを収容するために上部が開口した容器状のプールの底面700に鉛直方向に延びる筒状に形成された固定部材260から構成された水害時用の浮上建屋であって、前記浮体物の周辺を囲むように前記浮体物側面に固定された壁板450が備わったことを特徴とする浮上外壁ユニットである。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建屋基礎部又は建屋を支える支柱部に連結された浮体物と、
前記浮体物には鉛直直下向きに突出するアンカーポールと、
前記アンカーポールを収容するために穿孔されたアンカーポール孔又は敷地内に上部が開口した容器状のプールの底面に鉛直方向に延びる筒状に形成された固定部材からなる水害時用の浮上建屋であって、
前記浮体物の周辺を囲むように前記浮体物側面に固定された壁板、ネット、柵又はそれらの組み合わせたものが備わったことを特徴とする浮上外壁ユニット。
【請求項2】
建屋の基礎部又は建屋を支える支柱部に連結された浮体物と、
前記浮体物には鉛直直下向きに突出するアンカーポールと、
前記アンカーポールを収容するために穿孔されたアンカーポール孔又は敷地内に上部が開口した容器状のプールの底面に鉛直方向に延びる筒状に形成された固定部材からなる水害時用の浮上建屋であって、
前記浮体物の周辺を囲むように前記浮体物とは独立した浮上壁板、浮上ネット、浮上柵又はそれらの組み合わせたものが備わったことを特徴とする浮上外壁ユニット。
【請求項3】
前記独立した浮上壁板、浮上ネット、浮上柵が浮上した際に前記独立した浮上壁、浮上ネット又はそれらの組み合わせたものの上面高さが前記浮上建屋の浮体物の上面高さよりも高くなることを特徴とする請求項2記載の外壁ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水害時に浮上した建屋が降下する際に床下領域に流れ込む流木等の大型ゴミを防止することにより降下時に安定して所定の位置に戻すための浮上外壁ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
台風や長雨による河川氾濫及び地震による津波等の影響で浸水被害が生じるが、最近では地球温暖化の影響と思われるような異常気象が国内外で生じており、特にアジア圏に於いては長雨による家屋浸水にて甚大な被害が出ている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-219534号公報
【特許文献2】特許第5725464号公報
【特許文献3】特開2013-86648号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1は、地中に埋没され上面が開口し側壁および底面を備えた容器構造プール型基礎を備え、その基礎底面上に台船型浮体を乗せ置き、台船型浮体と一体で浮体底部から鉛直下方に伸びるアンカーポールを備え、基礎底部に基礎と一体に係止部材を備えてアンカーポールと係止部材が連結し一体となるように構成された浮上建屋である。
【0005】
特許文献2は、床構造の下に水圧で建築物を浮上させる浮体を取り付け、前記建築物の柱のうちの複数本を管形状でその内部に鉛直下方に伸張するアンカーポールを内蔵するアンカーポール内蔵柱とし、前記建造物の基礎は側壁と底面とを備えた容器形状として前記浮体を収納し、前記建築物の土台を構成する土台梁と前記アンカーポールを前記基礎の側壁に固定し、前記建築物が浮上した時、水面からの高さを計測できる水位計と水平度を調整できる浮力調整装置を有し、前記建築物は水位が所定以上に上昇した時に浮上し、前記建築物の水流により流動をアンカーポールで阻止するようにした浮上建屋である。
【0006】
特許文献3は、避難者を収容する板体状の避難台と、該避難台に取り付けられた鉛直方向に延びる複数の柱体部材と、地中に埋設され、内部にこれら柱体部材を昇降自在に各々収容する鉛直方向に延びる筒状に形成された複数の固定部材とを備え、上記各柱体部材は、いずれも内部が中空状に形成されていて、これらの全柱体部材によって上記避難台を水面に浮かせることが可能な浮力を有し、上記固定部材は上端側の開口から水害時の水を内部に流入可能であると共に、内部に上記柱体部材を収容した状態で水が流入可能な流入空間を備えていて、該内部に水を流入させることにより各柱体部材を上方にガイドしながら浮上させる構成である浮上建屋である。
【0007】
上述の如く、いずれの特許文献に於いても水害時に水の上昇による建築物の水没を防止する技術であって、実際には水だけでなく大型漂流物等が流れ込み浮上した建築物の床下に流れ込んだ状態で停留した際には水位の低下と共に建築部が下降し始め当該建築物を定位置に戻すことができなくなる。そうなれば、後の復旧に相当の作業時間と費用を要することになる。
【0008】
上記課題に鑑み、発明者は誠意工夫の結果、水害時に浮上した建屋が降下する際に安定して所定の位置に戻すための浮上外壁ユニットを提案する。
【0009】
第一の実施形態は、建屋基礎部又は建屋を支える支柱部に連結された浮体物と、浮体物には鉛直直下向きに突出するアンカーポールと、アンカーポールを収容するために穿孔されたアンカーポール孔又は敷地内に上部が開口した容器状のプールの底面に鉛直方向に延びる筒状に形成された固定部材からなる水害時用の浮上建屋であって、浮体物の周辺を囲むように浮体物側面に鉛直下方に固定された壁板、ネット又は柵が備わったことを特徴とする浮上外壁ユニットである。
【0010】
建屋基礎部又は建屋を支える支柱部に連結された浮体物については、浮き桟橋などに使用されている低密度ポリエチレン内にスチロールが充填されたものを高強度な枠体又は箱内に収納したものや中空構造とした繊維強化プラスティック(FRP)のような構造体を使用すればよい。該浮体物については上面に建造する建屋等の重量を勘案して浮体物が浮上するような浮力を与える厚みとする。
【0011】
アンカーポールを収容するために穿孔されたアンカーポール孔の場合には建屋基礎部又は建屋を支える支柱部に連結された浮体物側面側を囲むように鉛直下方に壁板、ネット、柵又はそれらを組み合わせたものを収容するために前記浮体物側面全体に別途収容溝が必要となる。一方、敷地内に上部が開口した容器状のプールの底面に鉛直方向に延びる筒状に形成された固定部材の場合には前記容器状のプール内に設置できる。
【0012】
上述したように浮体物側面全体を囲むように鉛直下方に壁板、ネット、柵又はそれらを組み合わせたものを設置することで水害時に流れ出した漂流物の流入を防止することが可能となる。一例として、壁板を固定した場合には浮上建屋の浮体物が浮上した際に上昇するアンカーポールの上昇した高さと同等若しくはそれ以上となるように壁板高さを設置すればよい。また、アンカーポールが伸縮自在の場合には該壁板も複数枚の壁板がスライド式方式として伸張する構造とする。
【0013】
壁板については、浮遊物の流入を防止するだけの強度が必要であり金属板や硬質プラスティック板、カーボンネット又は合成ゴムを枠体に貼り付けた板などを使用し、前記壁板にはパンチ穴など備えてもよい。また、ネットや柵の場合にも浮遊物の流入を防止するだけの強度を必要とする金属網や金属棒など使用すればよい。
【0014】
第二の実施形態は、建屋の基礎部又は建屋を支える支柱部に連結された浮体物と、前記浮体物には鉛直直下向きに突出するアンカーポールと、アンカーポールを収容するために穿孔されたアンカーポール孔又は敷地内に上部が開口した容器状のプールの底面に鉛直方向に延びる筒状に形成された固定部材からなる水害時用の浮上建屋であって、前記浮体物の周辺を囲むように前記浮体物とは独立した浮上壁、浮上ネット又は浮上柵が備わったことを特徴とする浮上外壁ユニットである。
【0015】
アンカーポールを収容するために穿孔されたアンカーポール孔の場合には建屋基礎部又は建屋を支える支柱部に連結された浮体物側面全体を囲むように鉛直下方に浮上壁板、浮上ネット、浮上柵又はそれらを組み合わせたものを収容するために収容溝が必要となる。一方、敷地内に上部が開口した容器状のプールの底面に鉛直方向に延びる筒状に形成された固定部材の場合には前記容器状のプール内に設置、又は該浮体物側面全体を囲むように鉛直下方に浮上壁板、浮上ネット、浮上柵又はそれらを組み合わせたものを収容するために収容溝を備えることも可能である。
【0016】
第二の実施形態に於いては、前記独立した浮上壁板、浮上ネット、浮上柵又はそれらの組み合わせたものの上面高さは浮上した際に浮上建屋の浮体物の上面高さよりも高くなることを特徴とする外壁ユニットである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の外壁ユニットによれば、水害の際に従来の水害時用の浮上建屋の浮体物の下側に流れ込んだ浮遊物により該浮上建屋の浮体物を所定の位置に戻せなくなる課題を解決することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】浮上建屋に於ける浮体物の底面に鉛直直下向きに固定されたアンカーポールを上部が開口したプールに載置した場合の断面簡略図
【
図2】浮上建屋に於ける浮体物の底面に鉛直直下向きに固定されたアンカーポールを地中に穿孔されたアンカーポール孔に設置した場合の断面簡略図
【
図4】本発明の第一実施形態である外壁ユニットの断面図
【
図5】本発明の第二実施形態である外壁ユニットの断面図
【
図6】本発明の第二実施形態である外壁ユニットが浮上した際の断面図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る実施の形態を図面により説明する。尚、実施例に挙げたものは一実施例に過ぎず、本発明を逸脱しない範囲での変更は可能である。
【実施例0021】
一般的な浮上建屋の構造として、
図1に浮上建屋に於ける浮体物100の底面に鉛直直下向きに固定されたアンカーポール200を上部が開口したプール底面700に載置した場合の断面簡略図と、
図2に浮上建屋に於ける浮体物120の底面に鉛直直下向きに固定されたアンカーポール210を地中に穿孔されたアンカーポール孔250に載置した場合の断面簡略図を示す。
【0022】
本発明の浮上建屋に於ける浮体物の斜視図を
図3に示すが、FRP材にて製作された上部が開口した収容容器300にスチロールが充填された低密度ポリエチレン製の浮体150を嵌め込んだ浮体物の外側底面に鉛直下向きにアンカーポール220として複数の金属製の角柱を取り付けた浮上建屋に於いて、該収容枠の側面を囲うように金属製の壁板400を固定させている。壁板の長さについてはアンカーポールが最も浮上した際に該壁板の下端部がプール表面と同等若しくプール内部に位置するように設計する。
【0023】
本発明の第一実施形態である外壁ユニットの断面図を
図4に示す。外壁ユニットの基本構成は、FRP材にて製作された上面にフランジのある上部が開口した収容容器350にスチロールが充填された低密度ポリエチレン製の浮体160を嵌め込んだ浮体物の外側底面に鉛直下向きにアンカーポール230として複数の金属製の円柱を取り付けた浮上建屋に於ける浮体物と、該収容容器の側面を囲うようにステンレス製の壁板450を固定させている。前記浮上建屋は水位の変位と共に上下方向に昇降させるために該アンカーポールはプール底面に固定され鉛直方向に延びる筒状に形成された固定部材260に挿入されている。
【0024】
上部が開口した収容箱350のフランジ領域と前記プールの上面との間に防水プレート500が介在しているため雨水などによる水が該プール内に浸水することを防止している。
【0025】
本発明の第二実施形態である外壁ユニットの断面図を
図5に示す。外壁ユニットの基本構成は、
図4の外壁ユニットと、該プールの周辺を囲うように独立した浮上壁板から成る。前記独立した浮上壁板を収容するために該プールの周りには側溝1400が掘ってあり浮体1000は水位の変位と共に上下方向に昇降させるために該浮体の底面にアンカーポール1100が取り付けられており、前記アンカーポールは側溝1400の底面に固定され鉛直方向に延びる筒状に形成された金属製の固定部材1200に挿入されている。また、該浮体については側面を囲うように金属製のネットを貼り付けた枠体が固定されている。
【0026】
図6は、本発明の第二実施形態である外壁ユニットが浮上した際の断面図を示すが水害時に浮体物の収容容器350の下方領域の漂流物の流入を阻止するだけでなくステンレス製の壁板450のダメージをなくすために独立した浮上壁板の上面高さが浮体物の収容容器350の上面高さよりも高くなるように設計している。
本発明は、水害時の家屋の浸水を防ぐだけでなくアンカーポールと鉛直方向に延びる筒状に形成された環状部材との間に空間があるために地震発生による横揺れを低減することも可能である。