(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023069978
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】溶接用裏当金
(51)【国際特許分類】
B23K 37/06 20060101AFI20230511BHJP
【FI】
B23K37/06 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2021194919
(22)【出願日】2021-11-08
(71)【出願人】
【識別番号】509351454
【氏名又は名称】ハギワラタブ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】萩原 幸太郎
(57)【要約】
【課題】 本発明は、裏当金本体の両端部に傾斜面を設け、この傾斜面を重ね合わせることによって、裏当金繋ぎ目を挟んだ寸法の調整ができる、コラムへ組立精度の高い構造の裏当金を提供することである。
【解決手段】 本発明の裏当金1は、帯状の金属板を折り曲げて一対で矩形枠状を形成して使用されるものであって、長手方向両端部には長手方向に傾斜する繋ぎ目用傾斜面が形成されるように、帯状の金属板を幅方向かつ35度より強い鋭角に設定した切断機で角度切りの後に、別の切断機によって、それぞれ折り曲げてR形状の内側となる部分に厚み方向の溝3が長手方向へ連続して設けられている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状の金属板を折り曲げた一つ若しくは同形状の複数の部材からなる矩形枠状に形成され使用される本体の、前記それぞれの部材の長手方向両端に内側面より長手方向に傾斜する繋ぎ目用メス傾斜面と外側面より長手方向に傾斜する繋ぎ目用オス傾斜面とを有することと、前記内側面より長手方向に傾斜する繋ぎ目用メス傾斜面と外側面より長手方向に傾斜する繋ぎ目用オス傾斜面とが組み合わさると内側面と外側面が平行状態となる傾斜角度で重なって構成される繋ぎ目を成すことと、を特徴とするコラム用裏当金
【請求項2】
前記それぞれの部材の外側面より長手方向に傾斜する繋ぎ目用オス傾斜面側の端部が万力で締め付けて変形可能な30度より強い鋭角形状を特徴とする請求項1のコラム用裏当金
【請求項3】
前記それぞれの部材の長手方向に対して、垂直方向に傾斜する前記繋ぎ目用オス傾斜面と繋ぎ目用メス傾斜面とを有することを特徴とする請求項1のコラム用裏当金
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、構造物の骨組みに用いる鉄骨を溶接するときに使用する溶接用裏当金(以下単に裏当金とする。)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、コラムR形状部近傍の確実な溶接が求められるようになり、それに伴って裏当金の改良と確実な組立固定方法が要求され、特に機械で自動溶接するロボット溶接にも対応できる方法が注目されてきた。
これまでに、R形状となる部分に連続した複数の溝が群をなす構造の裏当金が開発されている。(例えば、特許文献1参照。)
【0003】
特許文献1の連続した複数の溝が群をなす構造の裏当金は、複数の溝の数や間隔、溝の幅や深さによって折り曲げて裏当金のR形状を形成させる際のR形状やR寸法の範囲を決定付けて、本体がコラム内側の寸法に対しても調整して組立できることを特徴としている。
【特許文献1】特開2003-154489号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図8に示す帯状の金属板のR形状となる部分に、あらかじめ連続した複数の溝23が群をなす構造の従来技術の裏当金20は切断機や切削機によって複数の溝23が形成されこの複数の溝23があって手で折り曲げてコラムR形状の寸法に合うように変形させることができる反面、裏当金20両端の繋ぎ目の少なくとも一方が、
図3に示すように端部が当たって裏当金20をコラムに収容できなくなったり、溶融金属の垂直下方向への抜け落ちで溶接欠陥の原因となる隙間となってしまったり、あるいは
図4に示すように、さらにこの隙間が5mm以上と大きすぎて新たな部材で補修する必要があったりと、コラム内側の形状のバラつきに応じて繋ぎ目近傍でこのような問題がしばしば起こっていた。
【0005】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決することを課題とする。具体的には、裏当金本体の両端部に傾斜面を設け、この傾斜面を重ね合わせることによって、裏当金繋ぎ目を挟んだ寸法の調整ができる、コラムへ組立精度の高い構造の裏当金を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、コラムの内側面に配設される裏当金において、帯状の金属板を折り曲げた一つ若しくは同形状の複数の部材からなる矩形枠状に形成され使用される本体の、前記それぞれの部材の長手方向両端に内側面より長手方向に傾斜する繋ぎ目用メス傾斜面と外側面より長手方向に傾斜する繋ぎ目用オス傾斜面とを有することと、前記内側面より長手方向に傾斜する繋ぎ目用メス傾斜面と外側面より長手方向に傾斜する繋ぎ目用オス傾斜面とが組み合わさると内側面と外側面が平行状態となる傾斜角度で重なって構成される繋ぎ目を成すことと、を特徴とし、裏当金繋ぎ目部分においても従来の組立方法で常に組立精度の高い裏当金を提供することである。
【発明の効果】
【0007】
本発明の裏当金は、それぞれの部材の両端部に傾斜面を有し、この両端部の傾斜面を組み合わせて重ねることによって、垂直方向の繋ぎ目を回避することと繋ぎ目を小さく塞ぐことができる利点がある。
その結果、コラムへ収容しやすくしたり、本発明の裏当金を間に挟んだコラムとダイヤフラムの本溶接時に、他の部材で塞ぐことなく裏当金繋ぎ目近傍で溶融金属の抜け落ちを発生しにくくしたりすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図面を使って、本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明の裏当金1で、帯状の金属板を折り曲げて一対で矩形枠状を形成して使用される一方の本体2を表したものであって、長手方向両端部には長手方向に傾斜する繋ぎ目用傾斜面が形成されるように、帯状の金属板を幅方向かつ35度より強い鋭角に設定した切断機で角度切りの後に、別の切断機によって、それぞれ折り曲げてR形状の内側となる部分に厚み方向の溝3が長手方向へ連続して設けられている。このとき
図5に示す繋ぎ目用傾斜面がさらに本体と垂直方向に傾斜する構造の場合は、帯状の金属板を傾けて設置するなど加工方法が複雑になるものの、繋ぎ目用オス傾斜面58と繋ぎ目用メス傾斜面59との密着度が高まるという利点がある。
また、裏当金1の本体2の連続する溝3の群はR形状を構成する部分と平面部分を構成する部分から成り
図2に示すように、折り曲げてコラムR形状部分17に隙間の無いよう沿って変形させると端部側平面部分10の長手方向の寸法が決まり、この寸法のバラつきに応じて、一対の長手方向両端に内側面より長手方向に傾斜する繋ぎ目用メス傾斜面9と外側面より長手方向に傾斜する繋ぎ目用オス傾斜面8とが重なりながら位置がずれて調整されるだけであって、従来技術の裏当金のように、
図4に示すようなこの繋ぎ目に大きな隙間ができることがなく、
図3に示すような端部が当接することなく、万力で締め付けると傾斜面近傍がしなる様に変形してコラムに固定される。
例えば
図6に示すように、繋ぎ目用傾斜面が30度で形成されている場合、繋ぎ目が6mm開いても間隔が実際の半分の3mmに軽減され、新たな部材で補修することなく繋ぎ目用傾斜面に簡単に溶着金で盛る手直しができる。
したがって、従来技術の裏当金端部における垂直方向の開いた状態の隙間や当接して裏当金本体をコラムに収容できないなどの不具合が避けられ、それぞれ裏当金本体はコラム15に組立溶接される。特にロボット溶接の場合は溶接進行方向及びトーチ角度を考慮して繋ぎ目と平行状態となるのを避け、本体の繋ぎ目用オス傾斜面側から繋ぎ目用メス傾斜面側方向へ本溶接されるよう組立溶接される。
その結果、裏当金1を間に挟んだコラム15とダイヤフラムの本溶接中も裏当金繋ぎ目付近で溶融金属の抜け落ちが起こらない。
【0009】
さらに、本発明の裏当金は、繋ぎ目付近で寸法調整が可能なことによって本来、従来技術では不良品扱いとなっていた類のものであっても製品扱いできるため、製造面で大きなコスト削減の利点がある。よって、その観点から当然、従来技術の機械加工でR形状を形成させた裏当金にも本発明の技術を繋ぎ目に採用できる。
【0010】
なお、これまで従来技術の機械加工でR形状を形成させた裏当金についての繋ぎ目を工夫する今課題の技術開発に関しては、製造上の不利益を感じることがあっても、あらかじめ製造工場で本体の寸法計測の確認が可能であって製品流通前に不具合を未然に防いでいるので、繋ぎ目近傍がユーザーにとってもともと大きな問題となっていないため進んでいない。
また、R形状となる部分に連続した複数の溝が群をなす構造の裏当金の繋ぎ目を工夫する今課題の技術開発に関しては、一連の製造方法が、通常、裏当金端部の切断と複数の溝加工を同一の機械で自動的に連続して行われる都合上、製造者にとって端部を切断する際にわざわざ工程数を増やして材料の設置方向と切断面の角度を変える概念はそもそも生じない。そのため、本発明においても長手方向に傾斜する繋ぎ目用傾斜面の角度の範囲はあえて限定していない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の第1実施例の溶接用裏当金を示した一部斜視図である。
【
図2】本発明の第1実施例の溶接用裏当金を示した作用説明図である。
【
図3】従来例の連続した複数の溝を形成する構造の溶接用裏当金を示した作用説明図である。
【
図4】他の従来例の連続した複数の溝を形成する構造の溶接用裏当金を示した作用説明図である。
【
図5】本発明の第2実施例の溶接用裏当金を示した一部斜視図である。
【
図6】本発明の第3実施例の溶接用裏当金を示した一部作用説明図である。
【
図7】本発明の第1実施例の溶接用裏当金をコラムに取り付けた状態を示した斜視図である。
【
図8】従来例の連続した複数の溝を形成する構造の溶接用裏当金を示した一部正面図である。
【符号の説明】
【0012】
1、溶接用裏当金
2、本体
3、溝
4、裏当金外側面
5、裏当金内側面
6、裏当金側面
7、裏当金R形状部分
8、繋ぎ目用オス面
9、繋ぎ目用メス面
10、端部側平面部分
11、繋ぎ目
15、コラム
17、コラムR形状部分
20、従来技術の裏当金
23、溝
50、裏当金
58、本発明の第2実施例の繋ぎ目用オス面
59、本発明の第2実施例の繋ぎ目用メス面
60、裏当金
68、本発明の第3実施例の繋ぎ目用オス面
69、本発明の第3実施例の繋ぎ目用メス面