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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023069981
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】印刷物検査装置
(51)【国際特許分類】
   B41F 33/14 20060101AFI20230511BHJP
【FI】
B41F33/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021196197
(22)【出願日】2021-12-02
(31)【優先権主張番号】63/276,503
(32)【優先日】2021-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】000109200
【氏名又は名称】ダックエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177264
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 嘉秀
(74)【代理人】
【識別番号】100074561
【弁理士】
【氏名又は名称】柳野 隆生
(74)【代理人】
【識別番号】100124925
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 則夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141874
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 久由
(74)【代理人】
【識別番号】100163577
【弁理士】
【氏名又は名称】中川 正人
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕司
(72)【発明者】
【氏名】弥永 昌克
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 啓太
(72)【発明者】
【氏名】松井 真人
(72)【発明者】
【氏名】岡本 宏巳
(72)【発明者】
【氏名】氷上 好孝
【テーマコード(参考)】
2C250
【Fターム(参考)】
2C250EB22
2C250EB23
2C250EB26
2C250EB28
(57)【要約】
【課題】データ量を抑えつつ、見当マークを精度よく測定し、1色目も含めて、シートの左右での印刷見当のねじれも検出でき、また、印刷シート左右での色濃度の違いも検出できる印刷物検査装置を提供せんとする。
【解決手段】印刷シート9に、横方向に沿った2以上の位置にそれぞれ見当マーク91A~93Bを印刷し、該印刷された見当マークを撮像する撮像手段3A,3Bを、見当マークの2以上の位置に対応して、横方向に沿った2以上の位置にそれぞれ設け、2以上の位置に設けられた2以上の撮像手段で取得される各見当マークの見当、色濃度又はドット面積率を比較することで、2以上の位置相互の見当ずれ、インキの濃度変化又は印刷版のドットゲイン変化を検出する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送される印刷シートを検査する印刷物検査方法であって、
前記印刷シートに、搬送方向である縦方向に直交する横方向に沿った2以上の位置にそれぞれ見当マークを印刷し、
該印刷された見当マークを撮像する撮像手段を、前記見当マークの2以上の位置に対応して、横方向に沿った2以上の位置にそれぞれ設け、
前記2以上の位置に設けられた2以上の前記撮像手段で取得される各見当マークの見当、色濃度又はドット面積率を比較することで、前記2以上の位置相互の見当ずれ、インキの濃度変化又は印刷版のドットゲイン変化を検出することを特徴とする印刷物検査方法。
【請求項2】
前記見当マークとして、前記印刷シートの前記2以上の位置に、同じ縦方向の位置相互で色、形状、大きさが同じ同一マークを印刷し、
前記2以上の前記撮像手段で、前記各見当マークの情報を同時に取得し、
当該同時に取得された同一マークの見当、色濃度又はドット面積率を比較する、
請求項1記載の印刷物検査方法。
【請求項3】
前記撮像手段を、前記横方向に延びる一直線上の位置にそれぞれ設ける、請求項1又は2記載の印刷物検査方法。
【請求項4】
前記撮像手段を、前記一直線上に沿って移動可能に設け、これにより前記見当マークの2以上の各位置に対応して横方向の位置を調整可能とした、請求項3記載の印刷物検査方法。
【請求項5】
前記見当マークとして、縦方向に沿って各印刷色で印刷された複数のマークを印刷し、
前記2以上の位置相互の見当ずれに加え、各位置でのマーク相互の見当ずれを検出し、
これら見当ずれの情報に基づき印刷ねじれを検出する、請求項1~4の何れか1項に記載の印刷物検査方法。
【請求項6】
前記2以上の前記撮像手段で取得される各見当マークの色濃度およびドット面積率の双方とも比較した結果に基づき、前記2以上の位置相互のインキの濃度変化、印刷版のドットゲイン変化、又は双方の変化を検出する、請求項1~5の何れか1項に記載の印刷物検査方法。
【請求項7】
前記見当マークの正常な色濃度とドット面積率の関係を印刷色ごとに準備しておき、
前記取得される各見当マークの色濃度およびドット面積率の比較結果を、前記関係と照らし合わせることにより、前記2以上の位置相互のインキの濃度変化、印刷版のドットゲイン変化、又は双方の変化のいずれかを判定する、請求項6記載の印刷物検査方法。
【請求項8】
印刷装置に、前記見当又はインキ濃度を調整する機構を設け、
前記検出した2以上の位置相互の見当ずれ又はインキの濃度変化の変化量に基づき前記機構をフィードバック制御する、
請求項1~7の何れか1項に記載の印刷物検査方法。
【請求項9】
搬送される印刷シートを検査する印刷物検査装置であって、
前記印刷シートが、搬送方向である縦方向に直交する横方向に沿った2以上の位置にそれぞれ見当マークが印刷されたものであり、
前記見当マークの2以上の位置に対応した、横方向に沿った2以上の位置にそれぞれ設けられ、前記見当マークを撮像する2以上の撮像手段と、
前記2以上の前記撮像手段で取得される各見当マークの見当、色濃度又はドット面積率を比較することで、前記2以上の位置相互の見当ずれ、インキの濃度変化又は印刷版のドットゲイン変化を検出する検出手段と、
を備えることを特徴とする印刷物検査装置。
【請求項10】
前記印刷シートが、前記見当マークとして、前記印刷シートの前記2以上の位置に、同じ縦方向の位置相互で色、形状、大きさが同じ同一マークが印刷されたものであり、
前記2以上の前記撮像手段が、前記各見当マークの情報を同時に取得し、
前記検出手段が、当該同時に取得された同一マークの見当、色濃度又はドット面積率を比較する、
請求項9記載の印刷物検査装置。
【請求項11】
前記撮像手段が、前記横方向に一直線状に延びる支持杆上の前記2以上の位置にそれぞれ設けられている、請求項9又は10記載の印刷物検査装置。
【請求項12】
前記撮像手段が、前記支持杆に沿って移動可能に設けられ、これにより前記見当マークの2以上の各位置に対応して横方向の位置を調整可能とされている、請求項11記載の印刷物検査装置。
【請求項13】
前記印刷物が、前記見当マークとして、縦方向に沿って各印刷色で印刷された複数のマークが印刷されたものであり、
前記検出手段が、前記2以上の位置相互の見当ずれに加え、各位置でのマーク相互の見当ずれを検出し、これら見当ずれの情報に基づき印刷ねじれを検出する、請求項9~12の何れか1項に記載の印刷物検査装置。
【請求項14】
前記検出手段が、前記2以上の前記撮像手段で取得される各見当マークの色濃度およびドット面積率の双方とも比較した結果に基づき、前記2以上の位置相互のインキの濃度変化、印刷版のドットゲイン変化、又は双方の変化を検出する、請求項9~13の何れか1項に記載の印刷物検査装置。
【請求項15】
前記見当マークの正常な色濃度とドット面積率の関係を印刷色ごとに記憶した記憶部を備え、
前記検出手段は、前記取得される各見当マークの色濃度およびドット面積率の比較結果を、前記記憶部の前記関係と照らし合わせることにより、前記2以上の位置相互のインキの濃度変化、印刷版のドットゲイン変化、又は双方の変化のいずれかを判定する、請求項14記載の印刷物検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送される印刷シートを検査する印刷物検査方法および印刷物検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
シートの片側に各社異なる見当マークを使用して、印刷見当を合わせる装置は、現在のグラビア印刷機では普通に使用させている。検査の際、このような見当マークを含めてラインセンサで全体を撮像し、絵柄の印刷品質を検査とともに、見当マークの位置に基づいて見当ずれを検出することが行われている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
しかし、データ量の問題もあり、見当マークを精度よく測定することには限界があったことに加え、シートの左右での印刷見当のねじれ(仮にシートの左側計測の場合は、左側は正確でも、右側は上下左右へのズレ)が判らないという問題もあった。また、印刷1色目(基準色)を基準として、2色目以降を相対的に見当合わせを行う為、1色目がシートに直角に設置されているかは生産中(インライン)では判らない。
【0004】
印刷ねじれがあると、後工程の製袋作成時等に、印刷の捻じれの影響によりシートが捻じれ、平行四辺形になり、製袋不良の発生原因にもなる。さらに、印刷シートが製袋になる場合、印刷シートの左右が貼り合わされる為、印刷シート左右で色濃度が異なると、製品として色違いが目立ち不良品となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】2012-240400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明が前述の状況に鑑み、解決しようとするところは、データ量を抑えつつ、見当マークを精度よく測定し、1色目も含めて、シートの左右での印刷見当のねじれも検出でき、また、印刷シート左右での色濃度の違いも検出できる印刷物検査装置を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、かかる現況に鑑み、鋭意検討した結果、たとえばシート左右両端に見当マークを印刷し、1本のフレーム上に、カメラを左右2台設置することで、データ量を抑えつつ、左右の見当マークを精度よく測定し、1色目も含めて、シートの左右での印刷見当のねじれや色濃度の違いを検出できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、以下の発明を包含する。
(1) 搬送される印刷シートを検査する印刷物検査方法であって、前記印刷シートに、搬送方向である縦方向に直交する横方向に沿った2以上の位置にそれぞれ見当マークを印刷し、該印刷された見当マークを撮像する撮像手段を、前記見当マークの2以上の位置に対応して、横方向に沿った2以上の位置にそれぞれ設け、前記2以上の位置に設けられた2以上の前記撮像手段で取得される各見当マークの見当、色濃度又はドット面積率を比較することで、前記2以上の位置相互の見当ずれ、インキの濃度変化又は印刷版のドットゲイン変化を検出することを特徴とする印刷物検査方法。
【0009】
(2) 前記見当マークとして、前記印刷シートの前記2以上の位置に、同じ縦方向の位置相互で色、形状、大きさが同じ同一マークを印刷し、前記2以上の前記撮像手段で、前記各見当マークの情報を同時に取得し、当該同時に取得された同一マークの見当、色濃度又はドット面積率を比較する、(1)記載の印刷物検査方法。
【0010】
(3) 前記撮像手段を、前記横方向に延びる一直線上の位置にそれぞれ設ける、(1)又は(2)記載の印刷物検査方法。
【0011】
(4) 前記撮像手段を、前記一直線上に沿って移動可能に設け、これにより前記見当マークの2以上の各位置に対応して横方向の位置を調整可能とした、(3)記載の印刷物検査方法。
【0012】
(5) 前記見当マークとして、縦方向に沿って各印刷色で印刷された複数のマークを印刷し、前記2以上の位置相互の見当ずれに加え、各位置でのマーク相互の見当ずれを検出し、これら見当ずれの情報に基づき印刷ねじれを検出する、(1)~(4)の何れかに記載の印刷物検査方法。
【0013】
(6) 前記2以上の前記撮像手段で取得される各見当マークの色濃度およびドット面積率の双方とも比較した結果に基づき、前記2以上の位置相互のインキの濃度変化、印刷版のドットゲイン変化、又は双方の変化を検出する、(1)~(5)の何れかに記載の印刷物検査方法。
【0014】
(7) 前記見当マークの正常な色濃度とドット面積率の関係を印刷色ごとに準備しておき、前記取得される各見当マークの色濃度およびドット面積率の比較結果を、前記関係と照らし合わせることにより、前記2以上の位置相互のインキの濃度変化、印刷版のドットゲイン変化、又は双方の変化のいずれかを判定する、(6)記載の印刷物検査方法。
【0015】
(8) 印刷装置に、前記見当又はインキ濃度を調整する機構を設け、
前記検出した2以上の位置相互の見当ずれ又はインキの濃度変化の変化量に基づき前記機構をフィードバック制御する、(1)~(7)の何れかに記載の印刷物検査方法。
【0016】
(9) 搬送される印刷シートを検査する印刷物検査装置であって、前記印刷シートが、搬送方向である縦方向に直交する横方向に沿った2以上の位置にそれぞれ見当マークが印刷されたものであり、前記見当マークの2以上の位置に対応した、横方向に沿った2以上の位置にそれぞれ設けられ、前記見当マークを撮像する2以上の撮像手段と、前記2以上の前記撮像手段で取得される各見当マークの見当、色濃度又はドット面積率を比較することで、前記2以上の位置相互の見当ずれ、インキの濃度変化又は印刷版のドットゲイン変化を検出する検出手段と、
を備えることを特徴とする印刷物検査装置。
【0017】
(10) 前記印刷シートが、前記見当マークとして、前記印刷シートの前記2以上の位置に、同じ縦方向の位置相互で色、形状、大きさが同じ同一マークが印刷されたものであり、前記2以上の前記撮像手段が、前記各見当マークの情報を同時に取得し、前記検出手段が、当該同時に取得された同一マークの見当、色濃度又はドット面積率を比較する、(9)記載の印刷物検査装置。
【0018】
(11) 前記撮像手段が、前記横方向に一直線状に延びる支持杆上の前記2以上の位置にそれぞれ設けられている、(9)又は(10)記載の印刷物検査装置。
【0019】
(12) 前記撮像手段が、前記支持杆に沿って移動可能に設けられ、これにより前記見当マークの2以上の各位置に対応して横方向の位置を調整可能とされている、(11)記載の印刷物検査装置。
【0020】
(13) 前記印刷物が、前記見当マークとして、縦方向に沿って各印刷色で印刷された複数のマークが印刷されたものであり、前記検出手段が、前記2以上の位置相互の見当ずれに加え、各位置でのマーク相互の見当ずれを検出し、これら見当ずれの情報に基づき印刷ねじれを検出する、(9)~(12)の何れかに記載の印刷物検査装置。
【0021】
(14) 前記検出手段が、前記2以上の前記撮像手段で取得される各見当マークの色濃度およびドット面積率の双方とも比較した結果に基づき、前記2以上の位置相互のインキの濃度変化、印刷版のドットゲイン変化、又は双方の変化を検出する、(9)~(13)の何れかに記載の印刷物検査装置。
【0022】
(15) 前記見当マークの正常な色濃度とドット面積率の関係を印刷色ごとに記憶した記憶部を備え、前記検出手段は、前記取得される各見当マークの色濃度およびドット面積率の比較結果を、前記記憶部の前記関係と照らし合わせることにより、前記2以上の位置相互のインキの濃度変化、印刷版のドットゲイン変化、又は双方の変化のいずれかを判定する、(14)記載の印刷物検査装置。
【発明の効果】
【0023】
以上にしてなる本願発明によれば、2以上の位置に設けられた2以上の前記撮像手段で取得される各見当マークの見当、色濃度又はドット面積率を比較するので、データ量を抑えつつ、各見当マークを精度よく測定でき、前記2以上の位置相互の見当ずれ(印刷ねじれ)、インキの濃度変化又は印刷版のドットゲイン変化を検出できる。
【0024】
また、見当マークとして、前記印刷シートの前記2以上の位置に、同じ縦方向の位置相互で色、形状、大きさが同じ同一マークが印刷され、2以上の撮像手段で、各見当マークの情報を同時に取得し、当該同時に取得された同一マークの見当、色濃度又はドット面積率を比較するものでは、より精度良く、上記印刷ねじれ、インキの濃度変化又は印刷版のドットゲイン変化を検出できる。
【0025】
また、撮像手段を、横方向に延びる一直線上の位置にそれぞれ設けるものでは、とくに上記印刷ねじれをより精度良く検出できる。
【0026】
また、撮像手段を、一直線上に沿って移動可能に設け、これにより見当マークの2以上の各位置に対応して横方向の位置を調整可能としたものでは、シートの幅方向のサイズが異なることで見当マークの上記2以上の位置が変更されても、前記撮像手段の位置調整によって、精度を維持しつつ効率よく容易に対応できる。
【0027】
また、前記見当マークとして、縦方向に沿って各印刷色で印刷された複数のマークが印刷され、2以上の位置相互の見当ずれに加え、各位置でのマーク相互の見当ずれを検出し、これら見当ずれの情報に基づき印刷ねじれを検出するものでは、印刷ねじれをより精度よく確実に検出することができる。
【0028】
また、2以上の撮像手段で取得される各見当マークの色濃度およびドット面積率の双方とも比較した結果に基づき、前記2以上の位置相互のインキの濃度変化、印刷版のドットゲイン変化、又は双方の変化を検出するものでは、色濃度の原因であるドットゲイン変化、インキ濃度変化を、的確に把握することができる。
【0029】
また、見当マークの正常な色濃度とドット面積率の関係を印刷色ごとに準備しておき、取得される各見当マークの色濃度およびドット面積率の比較結果を、前記関係と照らし合わせることにより、前記2以上の位置相互のインキの濃度変化、印刷版のドットゲイン変化、又は双方の変化のいずれかを判定するものでは、色濃度の原因であるドットゲイン変化、インキ濃度変化を、より的確に効率よく正確に把握することができる。
【0030】
また、印刷装置に、前記見当又はインキ濃度を調整する機構を設け、検出した2以上の位置相互の見当ずれ又はインキの濃度変化の変化量に基づき前記機構をフィードバック制御する方法によれば、見当合わせ作業の削減になり、インキ濃度を的確にコントロールできる。また、たとえば刷り出し時の印刷ロス削減や、ストロボスコープでの目視確認による人への負担軽減、オペレータへの負担軽減にもなる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の代表的実施形態にかかる印刷物検査装置を含む印刷システムの例を示す説明図。
図2】同じく印刷物検査装置の構成を示す説明図。
図3】同じく印刷物検査装置で検査する印刷シートに印刷された見当マークの例を示す説明図。
図4】同じく印刷物検査装置の構成を示すブロック図。
図5】同じく印刷物検査装置により見当ずれを検出する方法を説明する説明図。
図6】同じく印刷物検査装置により印刷ねじれを検出する方法を説明する説明図。
図7】同じく印刷物検査装置により左右のドットゲイン変化を検出する方法を説明する説明図。
図8】同じく印刷物検査装置により左右のインキ濃度変化を検出する方法を説明する説明図。
図9】各印刷色ごとに用意されるドット面積率とインキ濃度の関係を示すテーブルの例を示す説明図。
図10】本発明の印刷システムの変形例を示す説明図。
図11】同じく変形例における印刷物検査装置の構成を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
次に、本発明の実施形態を添付図面に基づき詳細に説明する。
【0033】
本発明の印刷物検査装置2は、図1および図2に示すように、印刷システム1において搬送される印刷シート9の見当やインキ濃度、版欠け等を検査する装置である。符号「11」,「12」,「13」は、それぞれ異なる色のインキを印刷する印刷装置を示している。符号「15」は版、「16」はインキ皿内のインキ、「17」は圧胴、「18」は乾燥機を示している。
【0034】
印刷装置の数は限定されない。印刷装置11,12,13は、本例ではグラビア印刷機とした例を示しているが、本発明の印刷物検査装置は、その他、フレキソ印刷機やオフセット印刷機など、種々の印刷装置に適用できる。
【0035】
以下の実施形態では、輪転印刷物(グラビア印刷、フレキソ印刷、オフセット輪転等)において、インライン(印刷機上)にて生産しながら、印刷後の巻取り直前にある検反ボード19上部にエリアカメラ2台を使用して印刷シートの左右にある各印刷色で印刷されたマーク(見当マーク)を撮像し画像処理することで、見当、色濃度、ドットゲイン(網点の太り)を計測し、変化量をモニタ等へ表示(場合によっては機械側へのフィードバック)するシステムを例示する。
【0036】
印刷物検査装置2は、印刷後巻取り直前の目視検反ボード19上部へ設置する事で、本装置を1か所設置することで全印刷色の確認をすることが可能となる点で好ましい。また目視検反ボード19の周辺は、各印刷装置11~13間に比べてスペースも広く、後付けでも設置可能な可能性が高い。
【0037】
印刷シート9の印刷面には、図2および図3に示すように、搬送方向である縦方向に直交する横方向に沿った2以上の位置、本例では左右両端の2箇所の位置にそれぞれ見当マーク(91A,92A,93A)/(91B,92B,93B)が印刷される。見当マーク91A~93Bは、縦方向に沿って各印刷色で印刷された複数のマークが印刷されたものであり、印刷装置の印刷色の数の分だけ見当マークの数は必要である。そして、印刷シートの前記2以上の位置(本例では左右両端の2箇所の位置)に、同じ縦方向の位置相互で色、形状、大きさが同じ同一マークが印刷されている。
【0038】
見当マーク(91A,92A,93A)/(91B,92B,93B)は、より詳しくは、図3に示すように、外周の円印刷部910(920、930)と、内部の丸印刷部911(921、931)とで構成されている。外側の円印刷部910、920、930は、いずれも基準となる1色目の色で印刷されている。内部の円印刷部911(921、931)は、各印刷色で印刷されている。
【0039】
すなわち、1色目の見当マーク91A,91Bは、基準となる1色目の色で印刷された外周の円印刷部910と、同じく1色目の色で印刷された内部の丸印刷部911とで構成される。2色目の見当マーク92A,92Bは、1色目の色で印刷された外周の円印刷部920と、2色目の色で印刷された内部の丸印刷部921とで構成される。3色目の見当マーク93A,93Bは、1色目の色で印刷された外周の円印刷部930と、3色目の色で印刷された内部の丸印刷部931とで構成される。マークのサイズや線の太さは、要求される精度により必要なサイズを設定することができる。
【0040】
印刷物検査装置2は、図2に示すように、印刷シート9の前記見当マークの横方向に沿った2以上の位置(本例では左右両端の2箇所の位置)に対応して、横方向に沿った2以上の位置(本例では2箇所)にそれぞれ設けられ、前記見当マークを撮像する撮像手段3A、3Bと、撮像手段3A、3Bで取得される各見当マーク(91A,92A,93A)/(91B,92B,93B)の見当、色濃度又はドット面積率を比較することで、前記2以上の位置(本例では左右両端の2箇所の位置)相互の見当ずれ、インキの濃度変化又は印刷版のドットゲイン変化を検出する検出手段41bとを備えている。
【0041】
撮像手段3A,3Bは、横方向に一直線状に延びる支持杆30上の前記2以上の位置(本例では上記2箇所)にそれぞれ設けられる。印刷シートのサイズ等により印刷される見当マークの前記2以上の位置も変動する場合があるが、それに合わせて撮像手段3A,3Bも横方向の位置を調整できるように、上記支持杆30に沿って移動させることができるように設けられている。
【0042】
撮像手段3A,3Bとして、照明装置31も上記2以上の位置に対応する適宜な位置に設けられている。照明装置31は通常の検査装置に用いられる一般的な照明でよい。これら照明装置31も撮像手段3A,3Bを構成するカメラと共に、支持杆30に沿って移動可能に設けられることが好ましい。
【0043】
検出手段41bは、コンピュータを構成する処理装置41に設けられている。符号42は処理装置41に接続された記憶手段である。処理装置41は、マイクロプロセッサなどのCPUを主体に構成され、入出力部、バスラインを通じて撮像手段3A、3B,記憶手段42、表示部43および印刷装置11~13の調整機構14との間でそれぞれ各種情報を送受信する。記憶手段42は、処理装置41内外のRAM、ROMなどの記憶メモリやハードディスク等より構成され、処理装置41における各種処理動作の手順を規定するプログラムや処理データが記憶される。
【0044】
処理装置41は、図4に示すように、機能的に、撮像手段3A,3Bから各見当マークの情報を左右同時に取得し、マーク画像記憶部42aに記憶するマーク画像取得処理部41aと、マーク画像記憶部42aに記憶された前記各見当マークの情報に基づき、見当、色濃度又はドット面積率を比較して見当ずれ、インキ濃度変化、ドットゲイン変換などを検出し、2以上の位置相互の見当ずれやインキの濃度変化の変化量などの検出結果を、記憶手段42に記憶する検出手段41bと、検出結果を表示部43に表示する表示処理部41cと、前記検出結果に基づき前記調整機構14をフィードバック制御するための制御信号を生成し、調整機構14に送信する制御処理部41dとを少なくとも備えている。
【0045】
これら機能は上記プログラムにより実現される。このように処理装置41の各機能は、コンピュータによるソフトウエア処理で構成できるが、一部又は全部をハードウエア処理回路で構成することもできる。
【0046】
検出手段41bは、見当ずれや印刷ねじれを検出する処理部として、前記2以上の位置(本例では上記左右両端の位置)相互の見当ずれに加え、各位置でのマーク相互(縦方向に沿った各印刷色ごとのマーク相互)の見当ずれを検出し、記憶手段42の見当ずれ量記憶部42bに記憶する見当ずれ検出部410と、これら各見当ずれの検出結果に基づき印刷ねじれを検出し、検出結果を印刷ねじれ記憶部42cに記憶する印刷ねじれ検出部411とを有している。
【0047】
各位置でのマーク相互の見当ずれは、縦方向に並んだマーク相互(たとえば見当マーク91A,92A,93A相互)の位置ずれを検出することもできるが、本例のマークでは、たとえば図5に示すように、2色目、3色目については、マーク自体の形状から見当ずれを算出できる。すなわち、基準となる1色目の色で印刷された外周の円印刷部920(930)と、2色目又は3色目の色で印刷された内部の丸印刷部921(931)との中心(又は重心)のずれを検出することで、2色目または3色目が1色目に比べてずれた量が検出できる。
【0048】
前記2以上の位置相互の見当ずれは、図6に示すように、同時に撮像された左右の見当マーク(本例では2色目の見当マーク92A,92Bを例示している)を比較し、位置ずれ量を検出することができる。本例では、2色目の丸印刷部921が左右でずれており、2色目でねじれが生じたことが分かる。
【0049】
また、検出手段41bは、ドットゲイン変化やインキ濃度変化を検出する処理部として、上記各位置でのマーク相互のドット面積率を検出するドット面積検出部412と、同じく各位置でのマーク相互の色濃度変化を検出する色濃度検出部413と、前記ドット面積率からドットゲイン変化(ドットの太り)を検出し、検出結果をドットゲイン記憶部42fに記憶するドットゲイン検出部414と、同じくドットゲイン変化と前記色濃度変化の双方に基づき、インキ濃度変化を検出し、インキ濃度変化記憶部42gに記憶するインキ濃度変化検出部415とを有している。
【0050】
ドット面積検出部412は、マーク画像記憶部42aの見当マークの画像の丸印刷部911、921、931の領域のドット面積率を公知の画像解析手段を用いて計測し、平均化したものを数値化し、ドット面積記憶部42dに記憶する。そして、ドットゲイン検出部414は、記憶されるドット面積率からドットゲイン変化を検出する。たとえば図7(a)(b)に示すように、2色目の前記領域のドット面積率が50から70に高くなるように変化すると、印刷版に起因するドットゲインであると判定する。
【0051】
色濃度検出部413は、マーク画像記憶部42aの見当マークの画像の丸印刷部911、921、931の領域のRGBデータを取得し、色濃度記憶部42eに記憶する。ここで、インキが載っていないシート下地領域のRGBデータを取得する下地濃度検出部を備え、シート下地の色で補正された後の濃度情報を算出することも好ましい例である。たとえば図8(a)(b)に示すように、2色目のインキ濃度が濃くなるように変化すると、暗くなってRGBの値は小さくなる。
【0052】
ただし、色濃度検出部413で取得されるRGBデータが変化しても、これがインキ濃度の変化であるとは限らない。たとえば図7で示したように、ドットゲインの変化によっても、RGBデータが変化するためである。したがって、インキ濃度変化検出部415は、ドットゲイン変化と前記色濃度変化の双方に基づき、インキ濃度変化を検出する。
【0053】
より詳しくは、インキ濃度変化検出部415は、あらかじめ記憶手段42に記憶されている各見当マークの正常な色濃度とドット面積率の関係を印刷色ごとに記憶した色濃度-ドット関係テーブル420を参照する。図9は2色目の色濃度-ドット関係テーブルの例を示している。そして、前記取得された各見当マークの色濃度およびドット面積率の比較結果を、色濃度-ドット関係テーブル420と照らし合わせることにより、前記2以上の位置相互のインキの濃度変化があるのか、印刷版のドットゲイン変化が原因でありインキの濃度変化はないのか、又は双方が変化したのか、判定する。
【0054】
たとえば、図9に示したテーブルの関係を有する2色目の見当マークについて説明する。図9から、ドット面積率50の場合の色濃度は、R:200、G:100、B:100、ドット面積率70の場合の色濃度は、R:190、G:90、B:90である。したがって、図7の色濃度(RGB)の変化は、ドットゲイン変化のみによるものであり、インキ濃度は変化していないと判定される。
【0055】
これに対し、図8の色濃度の変化は、ドットゲイン変化が無いので、インキ濃度の変化のみによるものと判定される。図示しないが、もしドット面積率が50から60に変化し、且つ色濃度がR:200、G:100、B:100からR:190、G:90、B:90に変化した場合は、図9から、ドットゲイン変化のみでは色濃度がR:195、G:95、B:95になるところ、インキ濃度が変化したことで、さらに低下したことが判明し、双方が変化したと判定される。
【0056】
これらドットゲイン検出部414やインキ濃度変化検出部415は、同じ位置の見当マークについて検出することで、印刷初めからのドットゲイン変化やインキ濃度変化がわかるし、また、シート左右での各見当マーク間で検出することにより、左右での同変化を検知できる。
【0057】
左右でインキ濃度が変化している場合は、グラビア印刷の場合、インキの撹拌装置を制御したり、問題が無いか等の原因箇所の特定に役立つ。ドットゲインが変化している場合は、グラビア印刷の場合は、印刷版が削れて版が浅くなっていないか等の原因箇所の特定に役立つ。
【0058】
表示処理部41cは、たとえば検出された見当、色濃度、ドットゲイン変化、インキ濃度変化等の変化量をグラフ化して表示部43に表示する。これにより、シートの個体差(シートの偏肉による、シート巻き芯時の変化量増大等)による問題が発見できる可能性がある。その他、電光掲示板や音声、メール等にてオペレータへ注意又は確認場所の指摘を促すこと等も好ましい。
【0059】
また、本実施形態の印刷物検査装置2は、図示しないが、見当マーク以外の図柄の印刷欠陥や汚れ、シートの汚れ等を検出する品質検査装置を兼ねることもできる。この場合、当該検出を可能とするラインセンサ等の撮像手段、その他の公知の品質検査装置の構成を備えることができる。
【0060】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施例に何ら限定されるものではない。たとえば本実施形態では、印刷物検査装置を印刷システムの目視検反ボード19上部に設置した例を示したが、その他の位置や、オフラインで設置してもよく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる形態で実施し得ることは勿論である。たとえば、図10に示すように、印刷物検査装置2を構成する撮像手段(3A,3B)及びその支持杆(30)を、各印刷装置(11~13)の内部又は直後の位置にそれぞれ設け、図11(a)に示すように一色目の印刷装置(11)の内部又は直後に設けた撮像手段(3A,3B)で、印刷された一色目の見当マーク91A、91Bの画像を取得することで、上述のような見当ずれや印刷ねじれ、ドットゲイン変化、インキ濃度変化などを検出でき、図11(b)、図11(c)に示すように、二色目以降の印刷装置(12/13)の内部又は直後に設けた撮像手段(3A,3B)で、一色目の見当マーク91A,91Bに加え、印刷された二色目以降の見当マーク92A、92B(及び93A,93B)の画像を取得することで、上記見当ずれの検出に加えて2色目または3色目が1色目に比べてずれた量も検出できる。そしてこの場合、検出のタイミングが印刷直後の近い位置でなされる為、代表的実施形態のように目視検反ボード19上部に設置した例に比べ、上述した各印刷装置の調整機構のフィードバック制御を、より的確に行うことができるメリットがある。
【符号の説明】
【0061】
1 印刷システム
2 印刷物検査装置
3A、3B 撮像手段
9 印刷シート
11,12,13 印刷装置
14 調整機構
15 版
16 インキ
17 圧胴
18 乾燥機
19 目視検反ボード
30 支持杆
31 照明装置
41 処理装置
41a マーク画像取得処理部
41b 検出手段
41c 表示処理部
41d 制御処理部
42 記憶手段
42a マーク画像記憶部
42b 見当ずれ量記憶部
42c 印刷ねじれ記憶部
42d ドット面積記憶部
42e 色濃度記憶部
42f ドットゲイン記憶部
42g インキ濃度変化記憶部
43 表示部
91A,92A,93A 見当マーク
91B,92B,93B 見当マーク
410 見当ずれ検出部
411 印刷ねじれ検出部
412 ドット面積検出部
413 色濃度検出部
414 ドットゲイン検出部
415 インキ濃度変化検出部
420 色濃度-ドット関係テーブル
910、920、930 円印刷部
911、921、931 丸印刷部
図1
図2
図3
図4
図5
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図7
図8
図9
図10
図11