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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023069994
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】廃プラスチックの異物除去装置
(51)【国際特許分類】
   B07C 5/12 20060101AFI20230511BHJP
   G01N 23/04 20180101ALI20230511BHJP
   G01N 23/087 20180101ALI20230511BHJP
   G01N 23/18 20180101ALI20230511BHJP
   B29B 17/02 20060101ALI20230511BHJP
   B09B 3/30 20220101ALI20230511BHJP
   C08J 11/08 20060101ALN20230511BHJP
   B09B 101/75 20220101ALN20230511BHJP
【FI】
B07C5/12
G01N23/04
G01N23/087
G01N23/18
B29B17/02
B09B3/30
C08J11/08
B09B101:75
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022030338
(22)【出願日】2022-02-28
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-02-03
(31)【優先権主張番号】P 2021181639
(32)【優先日】2021-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】521082008
【氏名又は名称】株式会社日本選別化工
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】尾野 彰則
【テーマコード(参考)】
2G001
3F079
4D004
4F401
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001AA10
2G001BA11
2G001CA01
2G001DA06
2G001DA08
2G001JA09
2G001KA05
2G001LA09
2G001NA06
2G001NA17
2G001PA03
2G001PA11
3F079AB01
3F079CA38
3F079CA44
3F079CC05
3F079CC07
3F079DA12
4D004AA10
4D004AA46
4D004AB03
4D004AC04
4D004BA07
4D004CA07
4D004CA41
4D004CB46
4D004CC04
4D004DA01
4D004DA20
4F401AC10
4F401AD03
4F401BA13
4F401CA42
4F401CA54
4F401CB32
4F401CB33
4F401FA20X
(57)【要約】
【課題】廃プラスチックに混入しているステンレスの異物及び弱磁性体の異物を確実に除去でき、アルミ蒸着やアルミ箔コーティングの袋は除去することなく一般のプラスチック袋と一緒に再利用工程に供給できる廃プラスチックの異物除去装置を提供する。
【解決手段】アルミ蒸着またはアルミ箔コーティングされたプラスチック袋を含む廃プラスチックに混入した異物を廃プラスチックの再利用工程の前段階で除去する廃プラスチックの異物除去装置であって、廃プラスチックを搬送する搬送路と、搬送路上を搬送中の廃プラスチックにX線を照射するX線源と、照射されたX線を受けるラインセンサーとからなるX線装置と、ラインセンサーの撮像データに基づいてステンレスの異物及び弱磁性体の異物を検出する異物検出部と、異物検出部が検出したステンレスの異物及び弱磁性体の異物を搬送路から除く異物除去部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミ蒸着またはアルミ箔コーティングされたプラスチック袋を含む廃プラスチックに混入した異物を前記廃プラスチックの再利用工程の前段階で除去する廃プラスチックの異物除去装置であって、
前記廃プラスチックを搬送する搬送路と、
前記搬送路上を搬送中の廃プラスチックにX線を照射するX線源と、照射されたX線を受けるラインセンサーとからなるX線装置と、
前記ラインセンサーの撮像データに基づいてステンレスの異物及び弱磁性体の異物を検出する異物検出部と、
前記異物検出部が検出したステンレスの異物及び弱磁性体の異物を前記搬送路から除く異物除去部と、を備え、
前記アルミ蒸着またはアルミ箔コーティングされたプラスチック袋を含む廃プラスチックを前記再利用工程に供給することを特徴とする廃プラスチックの異物除去装置。
【請求項2】
前記廃プラスチックが搬送ベルトで供給され、該搬送ベルトの一端にマグネットロールが設けられおり、前記マグネットロールの磁力によって磁性体の異物を除去する磁性体異物除去手段が、前記搬送路の上流側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の廃プラスチックの異物除去装置。
【請求項3】
前記ラインセンサーは、高エネルギーのX線を受ける第1のラインセンサーと、低エネルギーのX線を受ける第2のラインセンサーからなるデュアルラインセンサーであることを特徴とする請求項1または2に記載の廃プラスチックの異物除去装置。
【請求項4】
前記X線装置は、前記X線源及び前記ラインセンサーを覆って周囲から隔離する箱体に収容され、前記箱体は、既設の搬送路に差し込み可能な開口部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の廃プラスチックの異物除去装置。
【請求項5】
前記箱体には、前記搬送路に対する前記ラインセンサーの高さ位置を調整するラインセンサー高さ調整部材が設けられていることを特徴とする請求項4記載の廃プラスチックの異物除去装置。
【請求項6】
前記箱体には、前記搬送路が前記ラインセンサーとの干渉を回避して走行を行なうための迂回ローラが備えられ、前記迂回ローラの高さ位置を調整する迂回ローラ高さ調整部材が設けられていることを特徴とする請求項4記載の廃プラスチックの異物除去装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回収された使用済みプラスチック袋等の廃プラスチックから金属粉等の異物を除去するために用いられる廃プラスチックの異物除去装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食品等の包装に使用されたプラスチックは、廃棄後に廃プラスチックとして回収され、燃料やプラスチック製品の原料として再利用される。このような再利用では、廃プラスチックを裁断・粉砕した後に造粒装置でペレット状に成形し、燃料やプラスチック製品の原料として使用される。廃プラスチックの中には、アルミ蒸着またはアルミ箔をコーティングした菓子袋がある。アルミ蒸着またはアルミ箔コーティングされた袋は、そのままプラスチックの再利用工程に流せるが、金属探知機を通すと金属として分離除去されるため、再利用することができなくなる。
【0003】
一方、再利用される前の分別回収では、鉄、ステンレス等の金属屑や小石などの異物が廃プラスチックの内部、外部にかかわりなく混入する。この異物が混入した状態のままで、再利用工程に流すと、粉砕機や造粒装置が損傷するばかりでなく、ペレットの燃焼効率が低下することや燃焼装置が故障する等の不都合が生じるため、鉄やステンレスの異物を除去する必要がある。この場合、アルミ蒸着やアルミ箔コーティングの廃プラスチック袋は一般の廃プラスチック袋と共に再利用の工程に流すことが資源活用の点から良好である。
【0004】
特許文献1及び2には、製品としてのアルミ蒸着のプラスチック袋に混入した金属等の異物を検出する異物検査装置が開示されている。この異物検査装置は、コイルが形成した磁界の乱れによって異物を検出する金属検出機と、X線を照射し、照射したX線データによって異物を検出するX線検出機とからなり、プラスチック袋に混入した異物を検出する。
【0005】
これらの異物検出装置では、アルミ蒸着したプラスチック袋を異物として検出することなく、袋内の異物を検出する必要があり、そのための制御が必要となっている。このため、例えば、特許文献1においては、金属検出がなされる場合には、検出金属が袋に含まれるか否かを判断し、袋に含まれる金属と判断される場合には、濃度領域を金属検出に適した領域に設定し、袋に含まれない金属であると判断される場合には、濃度領域を金属以外の異物検出に適した領域に設定している。このため、金属検出機及びX線検出器を併用した構造では、異物検出のための制御が複雑であり、しかも構造が複雑となる問題がある。
【0006】
特許文献1及び2の異物検出装置は、食品製造ラインで流れるアルミ蒸着のプラスチック袋の内部の異物を検出する装置であり、分別回収された廃プラスチック袋を検査対象とするものとは異なっている。製造ラインで流れるアルミ蒸着のプラスチック袋は形状や大きさ、重さ等の状態がある程度整っており、一定範囲の検査データによって異物の検出が可能である。一方、分別回収された廃プラスチック袋では、種々の形状や大きさ、重量がまちまちであり、異物の種類も多種となっており、検査データに大きなばらつきを生じる。従って、特許文献1及び2の異物検出装置を分別回収された廃プラスチックの異物検出に用いることはできない。
【0007】
特許文献3には、磁力選別装置と風力選別装置からなる廃プラスチックの選別装置が示される。磁力選別装置で鉄などの異物を除去した後、風力で高比重のプラスチックとアルミ蒸着した菓子袋の軽量プラスチックに分けている。アルミ蒸着した菓子袋は、磁力選別装置の磁力には反応しないので、除去されることなく後工程である再利用工程に流すことができる。しかしながら、石などの非磁性体やステンレスなどは磁力に反応しないため磁力選別装置では分離されない。このため、これらの硬質材料が廃プラスチックの中に混入しており、再利用に供すると、粉砕機や造粒装置などが損傷するおそれがある。これを防止するためには、人手による選別工程を必要としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2008-268035号公報
【特許文献2】特開2018-40640号公報
【特許文献3】特開2007-105582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記の問題点を考慮してなされたものであり、ステンレスの異物及び弱磁性体を含む異物は、磁力選別機では除去できないので、廃プラスチックに混入しているこれらの異物を簡単且つ確実に除去でき、アルミ蒸着やアルミ箔コーティングの廃プラスチック袋は除去することなく一般のプラスチック袋と共に再利用工程に供給する処理が可能な廃プラスチックの異物除去装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明による廃プラスチックの異物除去装置は、アルミ蒸着またはアルミ箔コーティングされたプラスチック袋を含む廃プラスチックに混入した異物を前記廃プラスチックの再利用工程の前段階で除去する廃プラスチックの異物除去装置であって、前記廃プラスチックを搬送する搬送路と、前記搬送路上を搬送中の廃プラスチックにX線を照射するX線源と、照射されたX線を受けるラインセンサーとからなるX線装置と、前記ラインセンサーの撮像データに基づいてステンレスの異物及び弱磁性体の異物を検出する異物検出部と、前記異物検出部が検出したステンレスの異物及び弱磁性体の異物を前記搬送路から除く異物除去部と、を備え、前記アルミ蒸着またはアルミ箔コーティングされたプラスチック袋を含む廃プラスチックを前記再利用工程に供給することを特徴とする。
【0011】
前記廃プラスチックが搬送ベルトで供給され、該搬送ベルトの一端にマグネットロールが設けられおり、前記マグネットロールの磁力によって磁性体の異物を除去する磁性体異物除去手段が、前記搬送路の上流側に配置されていることを特徴とする。
【0012】
前記ラインセンサーは、高エネルギーのX線を受ける第1のラインセンサーと、低エネルギーのX線を受ける第2のラインセンサーからなるデュアルラインセンサーであることを特徴とする。
【0013】
前記X線装置は、前記X線源及び前記ラインセンサーを覆って周囲から隔離する箱体に収容され、前記箱体は、既設の前記搬送路に差し込み可能な開口部が設けられることを特徴とする。
【0014】
前記箱体には、前記搬送路に対する前記ラインセンサーの高さ位置を調整するラインセンサー高さ調整部材が設けられていることを特徴とする。
【0015】
前記箱体には、前記搬送路が前記ラインセンサーとの干渉を回避して走行を行なうための迂回ローラが備えられ、前記迂回ローラの高さ位置を調整する迂回ローラ高さ調整部材が設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明の廃プラスチックの異物除去装置によれば、ラインセンサーの撮像データに基づいて異物検出部がステンレスの異物及び弱磁性体の異物を検出し、該検出結果に基づいて異物除去部がステンレスの異物及び弱磁性体の異物を搬送路から除くため、粉砕機が損傷することを防止できる。一方、アルミ蒸着やアルミ箔コーティングされたプラスチック袋等を含んだ廃プラスチックは搬送路から除かれないので、一般のプラスチック袋等の廃プラスチックと共に再利用に供することができ、資源の有効活用が可能となる。
【0017】
マグネットロールを備えた搬送ベルトで廃プラスチックを供給し、マグネットロールの磁力によって磁性体の異物を除去する磁性体異物除去手段を、X線装置の搬送路の上流側に配置したので、X線装置の金属異物を除去する負荷を減らすことができる。
【0018】
ラインセンサーは、高エネルギーのX線を受ける第1のラインセンサーと、低エネルギーのX線を受ける第2のラインセンサーからなるデュアルラインセンサーであるので、2つの画像の差分をとることによりステンレスであることが特定でき、材質がわかるので、単一のラインセンサーでの画像の濃淡で判定するよりも確実な除去ができる。
【0019】
X線装置を箱体に収容し、箱体に既設の搬送路に差し込み可能な開口部を設けたので、搬送路に向かって箱体を移動し、X線装置を容易に既設の搬送路に差し込むことができる。
【0020】
箱体にラインセンサーの高さ位置を調整するラインセンサー高さ調整部材を設けたので、ラインセンサーが搬送路のベルトにぶつからないようにでき、X線装置を容易に既設の搬送路に差し込むことができる。
【0021】
箱体に、搬送路がラインセンサーとの干渉を回避して走行を行なうための迂回ローラを設けると共に、迂回ローラの高さ位置を調整する迂回ローラ高さ調整部材を設けたので、搬送路のベルトの走行高さを部分的に変更し、ベルト間隔を広げて、X線装置のラインセンサーを容易に既設の搬送路に差し込むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明による廃プラスチックの異物除去装置の構造図である。
図2】廃プラスチックの例を示す図である。
図3】デュアルラインセンサーを備えた異物検出部の処理の流れである。
図4】X線装置の正面図である。
図5】X線装置の右側面図である。
図6】X線装置を既設の搬送路に差し込んだ状態の正面図である。実施例1
図7】X線装置を既設の搬送路に差し込んだ状態の正面図である。実施例2
図8】X線装置を既設の搬送路に差し込んだ状態の正面図である。実施例3
図9】X線装置を既設の搬送路に差し込んだ状態の正面図である。実施例4
図10】X線装置を既設の搬送路に差し込んだ状態の正面図である。実施例5
図11】ラインセンサー及び迂回ローラの高さ調節部材の説明図である。
図12】コンベア渡りする箇所にX線装置を設けた例である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、一般生活で廃棄され、その後に分別回収された廃プラスチックから異物を除去するものであり、分別回収された廃プラスチックの再利用工程の前段階で異物を除去するために用いられる。特に、本発明は、廃プラスチックに混入している非磁性ステンレスの異物及び弱磁性体の異物を検出して除去すると共に、アルミ蒸着またはアルミ箔コーティングされた廃プラスチック袋は除去されることなく、一般のプラスチック袋と共に再利用工程に供給することができる装置である。
【0024】
本発明の除去対象となる非磁性ステンレスの異物としては、SUS304、SUS316、SUS316Lに代表されるオーステナイト系ステンレスであり、ボルト・ナット、ねじ、容器蓋等の部品として廃棄されたものが対象である。弱磁性体を含む異物としては、軽石、錆混入塗料カス、針や釘などの小部品が埋設されたペレットやチップなどの部品が対象である。これ以外の異物として石、ガラス、ボルトや釘等の鉄屑を除去する。SUS304、SUS316、SUS316Lのステンレスは、新品状態では磁性はない。しかし擦ったりすると弱い磁性が出る。弱い磁性があっても、磁力選別機では完全に除去できないので、X線を備えた選別機で選別する。
【0025】
以下、図面を参照して、本発明による廃プラスチックの異物除去装置を説明する。
【実施例0026】
図1は、本発明による廃プラスチックの異物除去装置100の構造図である。廃プラスチックの異物除去装置100は、ベルトコンベアの搬送路1と、X線源5とラインセンサー9を備えてX線の画像を撮像するX線装置2と、X線の撮像データから異物かどうかを判定する異物検出部3と、振分け板からなる異物除去部4と、を備える。異物検出部3が異物と判定した対象物が異物回収箱11に回収される。図1に示すように、廃プラスチック6は、搬送路1に投入され、左から右の方向に搬送され、X線装置2で撮像され、異物検出部3が異物と判定した対象物は、異物除去部4が回動し、異物回収箱11に回収する。本発明において、廃プラスチックとしてはアルミ蒸着またはアルミ箔コーティングされたプラスチック袋を含むものであり、アルミ蒸着またはアルミ箔コーティングされたプラスチック袋は、後述するように、異物回収箱11に回収されることなく、他のプラスチックと共に搬送路1によって再利用工程に供給される。
【0027】
X線源5は、フィラメント(陰極)7と、ターゲット(陽極)8からなり、高エネルギーのX線と低エネルギーのX線が同時に発生される。廃プラスチック6の対象物は、ラインセンサー9で撮像される。ラインセンサー9は、単一のラインセンサー又はデュアルラインセンサー9aが使用できる。単一のラインセンサーにした場合、廃プラスチック6が軽量の廃プラスチックなので、透過して影が薄いものとなり、ステンレスや石は影が濃いので、異物と判定できる。デュアルラインセンサー9aは、高エネルギーのX線の画像(m)を得る第1のラインセンサーと、低エネルギーのX線の画像(h)を得る第2のラインセンサーの2つからなる。2つの画像の差分(h-m)は、対象物によって異なるので、この値から材質を特定することができる。画像の濃淡のみで対象物を判定する場合より確実な分別ができる。異物検出部3は、撮像した画像の濃淡から対象物が異物かどうかを判定する部位である。X線装置2として特に異物として除去したいのは、非磁性のステンレスの異物12と弱磁性体の異物13である。弱磁性体の異物13の例としては軽石がある。これらの異物に注目するのは、鉄の異物は磁力選別機で事前に除去できるが、非磁性のステンレスの異物12と弱磁性体の異物13は磁力選別機での除去ができないからで、混入される例も多い。一般に、X線装置2で除去できる対象物には、鉄、ステンレス、銅、アルミニウム、石、それにガラスなどがある。
【0028】
図2は、廃プラスチック6の例を示す図である。異物にはステンレスの異物12や、弱磁性体の異物13がある。ステンレスの異物12には、非磁性のSUS303、SUS304、SUS316Lなどを使用した金属物がある。弱磁性体の異物13には軽石がある。廃プラスチック6の例としては、ラップシート14、菓子袋(アルミ蒸着又はアルミ箔あり)15、菓子袋(アルミ蒸着又はアルミ箔なし)16、プラスチックトレイ17などがある。アルミ蒸着又はアルミ箔を符号15aで示す。図2では、菓子袋(アルミ蒸着又はアルミ箔なし)16の中にステンレスの異物12がある場合を示す。このような場合、菓子袋の外から中が見えないとしてもX線で撮像するので、ステンレスの異物12が撮像できる。すなわち、ステンレスの異物12は、菓子袋(アルミ蒸着又はアルミ箔あり)15の外側にあっても、内側にあっても検出する。
【0029】
鉄の異物22、例えばボルトやナットはX線で検知できるが、X線装置2の負荷を減らすため、図1に示すように、X線装置2の搬送路1の上流に磁性体異物除去手段10を配置した。磁性体異物除去手段10は、廃プラスチック6が一端にマグネットロール21を備えた搬送ベルト22で供給され、マグネットロール21の磁力によって磁性体の異物を除去する。マグネットロール21は永久磁石で構成され、吸着したボルトやナットを搬送ベルト22の下方に落下させることで除去する。なお、弱磁性体の異物は、強力なマグネットロール21を用意しても除去が難しい。
【0030】
図3は、デュアルラインセンサー9aを備えた異物検出部3の処理の流れである。m1~m5は、図2の対象物を低エネルギーのX線で撮像した画像である。h1~h5は、図2の対象物を高エネルギーのX線で撮像した画像である。低エネルギーのX線は、透過する力が弱いので、例えばプラスチックに照射すると、影の濃い画像が得られ、高エネルギーのX線では透過する力が強いので、影の薄い画像が得られる。2つの画像の濃淡すなわち透過光量の差を計算し、その差が事前に把握している材料と一致するか調べる。一致すれば、材質が特定される。
【0031】
図3に示すように、異物検出部3が対象物をステンレスの異物12と判定する場合は、異物除去部4の振分け板が作動して、異物を異物回収箱11に回収する。菓子袋(アルミ蒸着又はアルミ箔なし)16の中にステンレスの異物12があると、異物除去部4が作動して、菓子袋16とステンレスの異物12を一緒に異物回収箱11に回収する。ステンレスの異物12が菓子袋16の外部にあっても、菓子袋16とステンレスの異物12が異物回収箱11に回収される。ステンレスの異物12としてニッカド電池やリチウム電池がある。ケースがステンレス製で廃プラスチック6に混入していると、後工程で発火することにもなり、異物として除去すべき対象となる。
【0032】
図3に示すように、菓子袋(アルミ蒸着又はアルミ箔あり)15は、厚さがないが金属なので透過光量がやや少なく影があるが、異物除去部4は取り除くべき異物ではないとして通過させる処理を行う。つまりアルミ蒸着又はアルミ箔は、粉砕機を損傷しないとの基準で異物ではないと判定する。そのため、菓子袋15は後段の再利用の搬送路1に投入される。菓子袋15は、後の再利用工程で粉砕され、溶剤で溶かされ、アルミニウムが分離され、プラスチックが回収される。ラップシート14や、プラスチックトレイ17も後段の再利用の搬送路1に投入される。アルミニウム缶のプルタブなどは、菓子袋(アルミ蒸着又はアルミ箔あり)15の影とは、濃度が異なるので、異物と判定する。
【0033】
図4は、X線装置2の正面図である。X線装置2は箱体23からなる。X線装置2は、既設の搬送路(ベルトコンベア)1に差し込み可能に構成される。箱体23の正面には、タッチディスプレィ24と操作パネル25が設けられ、屋根部には装置の異常状態を知らせるパトランプ26とブザー(図示は省略)が設けられる。底部には、箱体2の移動を容易にするキャスター27と、キャスター27を浮かすレベルフット28が設けられる。搬送路(ベルトコンベア)1の左端には、図示していないが異物除去部4と異物回収箱11があるとする。
【0034】
図5は、X線装置2の右側面図である。図5は、後方を覆う背面カバーと、左右側面を覆う保護カバーを開けた状態で示す。この状態では、箱体23の開口部29が開口する。内部のラインセンサー9は、開口部29の中央付近に位置する。ラインセンサー9は、シングルのラインセンサーで示す。これによれば、箱体23を後方に移動しX線装置2を搬送路(ベルトコンベア)1に差し込む又は入れ込むことができる。差し込んだ状態での既設の搬送路(ベルトコンベア)1を図4の一点鎖線で示す。図5に示すように、X線源5は、箱体23の上部にあって、下方に向かった照射される。搬送路(ベルトコンベア)1の幅をカバーするように照射される。箱体23の下部に設置された画像処理PC30で、X線撮像画像の解析を行う。画像処理PC30は、図1の異物検出部3に相当する。
【0035】
図6は、実施例1でX線装置2を既設の搬送路(ベルトコンベア)1に差し込んだ状態の正面図である。搬送路(ベルトコンベア)1は箱体23の中にあるが見えるものとして示す。図6は、ラインセンサー9が既設の搬送路(ベルトコンベア)1の上ベルト1aと下ベルト1bの間に差し込まれる例である。箱体23の下部に設置された画像処理PC30で、X線撮像画像の解析を行う。
【0036】
図7は、実施例2でX線装置2を既設の搬送路(ベルトコンベア)1に差し込んだ状態の正面図である。搬送路(ベルトコンベア)1は箱体23の中にあるが見えるものとして示す。図7は、ラインセンサー9が、迂回ローラ31で拡げられた搬送路(ベルトコンベア)1のスペースに差し込まれる。迂回ローラ31で下ベルト1bを押し下げて上ベルト1aとの間の空間を拡張したので、箱体23を移動してのラインセンサー9の搬送路(ベルトコンベア)1への差し込みが容易にできる。
【0037】
図8は、実施例3でX線装置2を既設の搬送路(ベルトコンベア)1に差し込んだ状態の正面図である。迂回ローラ31で上ベルト1aを押し上げて下ベルト1bとの間の空間を拡張したので、箱体23を移動してのラインセンサー9の搬送路(ベルトコンベア)1への差し込みが容易にできる。すなわちX線装置2の搬送路(ベルトコンベア)1への差し込みが容易にできる。
【0038】
図9は、実施例4でX線装置2を既設の搬送路(ベルトコンベア)1に差し込んだ状態の正面図である。ラインセンサー9は、搬送路(ベルトコンベア)1の上ベルト1aの上側に位置させ、かつラインセンサー9の上側に乗り移りプレート32を配置した。すなわちラインセンサー9は、乗り移りプレート32の内側に配置される。乗り移りプレート32に載った廃プラスチック6は搬送されないので、送風機33を設けて吹き飛ばして進行させる。送風機33で進行が困難な重い金属片などはセンサーで検知してパトランプ26を点灯させ、ブザーを鳴動させる。
【0039】
図10は、実施例5でX線装置2を既設の搬送路(ベルトコンベア)1に差し込んだ状態の正面図である。ラインセンサー9は、搬送路(ベルトコンベア)1の上ベルト1aの上側に位置させ、上ベルト1aは迂回ローラ31で上ベルト1aを押し下げた。ラインセンサー9の上側には略水平な乗り移りプレート32を配置した。乗り移りプレート32に載った廃プラスチック6は搬送されないので、送風機33を設けて吹き飛ばして進行させる。送風機33で進行が困難な重い金属片などは、センサーで検知してパトランプ26を点灯させ、ブザーを鳴動させる。
【0040】
図11は、ラインセンサー9の高さ調節部材40、及び迂回ローラ31の高さ調節部材41の説明図である。高さ調節部材40と高さ調節部材41は、いずれもL字形支柱にスリット35を設け、ラインセンサー9及び迂回ローラ31の一端もしくは両端を上下移動可能にスリット35に通し、高さ調整ネジ34で固定したものである。迂回ローラ31は、回転可能であることが好ましい。このような構成に限らず、ボールねじを用いて、正確な高さ調整ができるようにしてもよい。
【0041】
図12は、コンベア渡りする箇所にX線装置2を設けた例である。X線装置2を第1搬送路と第2搬送路のコンベア渡りする箇所に設置することができる。搬送路の水平な箇所にX線装置2を設置する場合に比較して、高さ方向のスペースが少ないので、床には段差が必要となる。異物を検出してから振り分け板を動かすまでには時間を要するので、この時間に見合った高さが必要である。X線装置2は、横向きで設置される。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本実施例によれば、磁力選別機では除去が難しい廃プラスチックに混入した非磁性のステンレスの異物(例えばスプーン、ナイフ、釘など)を確実に除去でき、アルミ蒸着またはアルミ箔のプラスチック袋は除去せずに再利用工程に流すことができる廃プラスチックの異物除去装置として好適である。
【符号の説明】
【0043】
1 搬送路(ベルトコンベア)
2 X線装置
3 異物検出部
4 異物除去部(振分け板)
5 X線源
6 廃プラスチック(対象物)
7 フィラメント(陰極)
8 ターゲット(陽極)
9 ラインセンサー
9a デュアルセンサー
10 磁性体異物除去手段
11 異物回収箱
12 ステンレスの異物
13 弱磁性体の異物
14 ラップシート
15 菓子袋(アルミ蒸着又はアルミ箔あり)
15a アルミ蒸着又はアルミ箔
16 菓子袋(アルミ蒸着又はアルミ箔なし)
17 プラスチックトレイ
20 搬送ベルト
21 マグネットロール
22 鉄の異物(ボルト、ナットなど)
23 箱体
24 タッチディスプレィ
25 操作パネル
26 パトランプ
27 キャスター
28 レベルフット
29 開口部
30 画像処理PC
31 迂回ローラ
32 乗り移りプレート
33 送風機
34 高さ調整ネジ
35 スリット
40 ラインセンサー高さ調整部材
41 迂回ローラ高さ調整部材
100 廃プラスチックの異物除去装置
m1~m5 低エネルギーのX線の画像
h1~h5 高エネルギーのX線の画像
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【手続補正書】
【提出日】2022-09-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミ蒸着またはアルミ箔コーティングされたプラスチック袋を含む廃プラスチックに混入した異物を前記廃プラスチックの再利用工程の前段階で除去する廃プラスチックの異物除去装置であって、
前記廃プラスチックを搬送する搬送路と、
前記搬送路上を搬送中の廃プラスチックにX線を照射するX線源と、照射されたX線を受けるラインセンサーとからなるX線装置と、
前記ラインセンサーの撮像データに基づいてステンレスの異物及び弱磁性体の異物を検出する異物検出部と、
前記異物検出部が検出したステンレスの異物及び弱磁性体の異物を前記搬送路から除く異物除去部と、を備え、
前記X線装置は、前記X線源及び前記ラインセンサーを覆って周囲から隔離する箱体に収容され、前記箱体は、既設の搬送路に差し込み可能な開口部が設けられており、
前記アルミ蒸着またはアルミ箔コーティングされたプラスチック袋を含む廃プラスチックを前記再利用工程に供給することを特徴とする廃プラスチックの異物除去装置。
【請求項2】
前記廃プラスチックが搬送ベルトで供給され、該搬送ベルトの一端にマグネットロールが設けられおり、前記マグネットロールの磁力によって磁性体の異物を除去する磁性体異物除去手段が、前記搬送路の上流側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の廃プラスチックの異物除去装置。
【請求項3】
前記ラインセンサーは、高エネルギーのX線を受ける第1のラインセンサーと、低エネルギーのX線を受ける第2のラインセンサーからなるデュアルラインセンサーであることを特徴とする請求項1または2に記載の廃プラスチックの異物除去装置。
【請求項4】
前記箱体には、前記搬送路に対する前記ラインセンサーの高さ位置を調整するラインセンサー高さ調整部材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の廃プラスチックの異物除去装置。
【請求項5】
前記箱体には、前記搬送路が前記ラインセンサーとの干渉を回避して走行を行なうための迂回ローラが備えられ、前記迂回ローラの高さ位置を調整する迂回ローラ高さ調整部材が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の廃プラスチックの異物除去装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
本発明による廃プラスチックの異物除去装置は、アルミ蒸着またはアルミ箔コーティングされたプラスチック袋を含む廃プラスチックに混入した異物を前記廃プラスチックの再利用工程の前段階で除去する廃プラスチックの異物除去装置であって、前記廃プラスチックを搬送する搬送路と、前記搬送路上を搬送中の廃プラスチックにX線を照射するX線源と、照射されたX線を受けるラインセンサーとからなるX線装置と、前記ラインセンサーの撮像データに基づいてステンレスの異物及び弱磁性体の異物を検出する異物検出部と、前記異物検出部が検出したステンレスの異物及び弱磁性体の異物を前記搬送路から除く異物除去部と、を備え、前記X線装置は、前記X線源及び前記ラインセンサーを覆って周囲から隔離する箱体に収容され、前記箱体は、既設の搬送路に差し込み可能な開口部が設けられており、前記アルミ蒸着またはアルミ箔コーティングされたプラスチック袋を含む廃プラスチックを前記再利用工程に供給することを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】削除
【補正の内容】