(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023069999
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】下半身衣類
(51)【国際特許分類】
A41B 9/02 20060101AFI20230511BHJP
A41B 9/04 20060101ALI20230511BHJP
A41D 1/06 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
A41B9/02 F
A41B9/04 C
A41B9/04 F
A41B9/04 E
A41B9/02 Q
A41B9/02 M
A41D1/06 501C
A41D1/06 501B
A41D1/06 502B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022061845
(22)【出願日】2022-04-01
(31)【優先権主張番号】P 2021179944
(32)【優先日】2021-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】521295365
【氏名又は名称】株式会社オーギュストケクレ
(74)【代理人】
【識別番号】110000464
【氏名又は名称】弁理士法人いしい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野 史恵
【テーマコード(参考)】
3B128
【Fターム(参考)】
3B128EA01
3B128EB17
3B128EB31
3B128EC02
3B128EC03
3B128EC12
(57)【要約】
【課題】例えばぽっちゃり体型やがっちり体型の人のように太ももが太い人や、X脚等で内股気味の人が前述の下着を着用する場合、左右太ももの内側や付け根等の肌同士が擦れ合って、股ずれを起こしやすいという問題を解消する。
【解決手段】本願発明の下半身衣類1は、股上部2と左右一対の脚部3A,3Bとが形成される。両脚部3A,3Bは、着用者の太ももを覆うように下方に延びている。両脚部3A,3Bの厚みは、股上部2の厚みよりも厚くなっている。このように構成すると、内ももや股下等の肌同士が直接擦れ合うおそれを確実に抑制でき、股ずれの発生を防止できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
股上部と左右一対の脚部とが形成されている下半身衣類であって、
前記両脚部は、着用者の太ももを覆うように下方に延びており、前記両脚部の厚みは、前記股上部の厚みよりも厚くなっている、
下半身衣類。
【請求項2】
前記両脚部の厚みは、複数枚重ねた構造にすることによって、前記股上部の厚みよりも厚くなっている、
請求項1に記載した下半身衣類。
【請求項3】
前記両脚部の厚みは、素材を異ならせることによって、前記股上部の厚みよりも厚くなっている、
請求項1に記載した下半身衣類。
【請求項4】
前記両脚部の厚みは、同一素材で厚みを異ならせることによって、前記股上部の厚みよりも厚くなっている、
請求項1に記載した下半身衣類。
【請求項5】
前記両脚部の厚みは、素材を異ならせて複数重ねた構造にすることによって、前記股上部の厚みよりも厚くなっている、
請求項1に記載した下半身衣類。
【請求項6】
前記両脚部の厚みは、同一素材で厚みを異ならせて複数重ねた構造にすることによって、前記股上部の厚みよりも厚くなっている、
請求項1に記載した下半身衣類。
【請求項7】
前記両脚部のうち少なくとも左右内股部分寄りの箇所の厚みが、前記股上部の厚みよりも厚くなっている、
請求項1~6のうちいずれかに記載した下半身衣類。
【請求項8】
前記股上部及び前記両脚部は、ホールガーメント(登録商標)製法によって一体的に編成されている、
請求項1に記載した下半身衣類。
【請求項9】
前記両脚部は、ホールガーメント(登録商標)製法で二重構造に編成されることによって、前記股上部の厚みよりも厚くなっている、
請求項8に記載した下半身衣類。
【請求項10】
前記両脚部は、ホールガーメント(登録商標)製法で複数の糸にて編成されて、前記両脚部に使われる糸量をその他の部分より増やすことによって、前記股上部の厚みよりも厚くなっている、
請求項8に記載した下半身衣類。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、下半身衣類に関する。下半身衣類としては、例えば下着のほか、ズボン下やステテコ、タイツ又はスパッツ等といったものも含まれ、性別や年齢等を問わずに適用される。
【背景技術】
【0002】
従来から、履き心地(フィット感)を向上させたり尿漏れ対策等を施したりした下半身衣類、例えば男性用のブリーフやトランクス、女性用のショーツといった下着は、種々提案されている(例えば特許文献1~3等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-114517号公報
【特許文献2】実用新案登録第3075890号公報
【特許文献3】実開昭62-60202号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えばぽっちゃり体型やがっちり体型の人のように太ももが太い人や、X脚等で内股気味の人が前述の下着を着用する場合、左右太ももの内側(内もも)や付け根(股下)等の肌同士が擦れ合って、股ずれを起こしやすい傾向にあることは知られている。
【0005】
この点、本願発明者が医療関係者にヒアリング調査をしたところ、内ももや股下は汗をかきやすく蒸れやすい箇所であり、これらの箇所が汗でベタつくと、肌同士等の摩擦が大きくなって、より股ずれしやすくなることも分かった。
【0006】
しかし、特許文献1~3に示すように、従来は、履き心地を向上させたり尿漏れ対策等を施したりした下半身衣類について種々の提案がなされていても、股ずれを効果的に防止できる下半身衣類が提案されていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明は、上記のような知見を基にしてなされたものであり、股ずれの発生を防止できる下半身衣類を提供することを技術的課題とするものである。
【0008】
本願発明は、股上部と左右一対の脚部とが形成されている下半身衣類であって、前記両脚部は、着用者の太ももを覆うように下方に延びており、前記両脚部の厚みは、前記股上部の厚みよりも厚くなっているというものである。
【0009】
本願発明の下半身衣類としては、前述の技術分野に記載した通り、例えば下着のほか、ズボン下やステテコ、タイツ又はスパッツ等といったものも含まれる。また、性別や年齢等を問わずに適用されるものである。
【0010】
本願発明の下半身衣類において、前記両脚部の厚みは、複数枚重ねた構造にすることによって、前記股上部の厚みよりも厚くなっていてもよい。
【0011】
本願発明の下半身衣類において、前記両脚部の厚みは、素材を異ならせることによって、前記股上部の厚みよりも厚くなっていてもよい。
【0012】
本願発明の下半身衣類において、前記両脚部の厚みは、同一素材で厚みを異ならせることによって、前記股上部の厚みよりも厚くなっていてもよい。
【0013】
本願発明の下半身衣類において、前記両脚部の厚みは、素材を異ならせて複数重ねた構造にすることによって、前記股上部の厚みよりも厚くなっていてもよい。
【0014】
本願発明の下半身衣類において、前記両脚部の厚みは、同一素材で厚みを異ならせて複数重ねた構造にすることによって、前記股上部の厚みよりも厚くなっていてもよい。
【0015】
本願発明の下半身衣類において、前記両脚部のうち少なくとも左右内股部分寄りの箇所の厚みが、前記股上部の厚みよりも厚くなっていてもよい。
【0016】
本願発明の下半身衣類において、前記股上部及び前記両脚部は、ホールガーメント(登録商標)製法によって一体的に編成されていてもよい。
【0017】
本願発明の下半身衣類において、前記両脚部は、ホールガーメント(登録商標)製法で二重構造に編成されることによって、前記股上部の厚みよりも厚くなっていてもよい。
【0018】
本願発明の下半身衣類において、前記両脚部は、ホールガーメント(登録商標)製法で複数の糸にて編成されて、前記両脚部に使われる糸量をその他の部分より増やすことによって、前記股上部の厚みよりも厚くなっていてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本願発明によると、ぽっちゃり体型やがっちり体型の人のように太ももが太い人や、X脚等で内股気味の人が本願発明の下半身衣類を着用した場合であっても、内ももや股下等が厚みの厚い部分で覆われるから、内ももや股下等の肌同士が直接擦れ合うおそれを確実に抑制でき、股ずれの発生を防止できる。また、汗をかきやすく蒸れやすい箇所である内ももや股下等を厚みの厚い部分で覆うから、汗の吸収も速やかに行え、股ずれの発生をより効果的に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図3】股下部を下から見た状態を示す下着の底面図である。
【
図4】(a)は着用状態の下着を正面側から見た外観図、(b)は着用状態の下着を背面側から見た外観図である。
【
図7】異素材生地の伸縮性布を用いた裾部の構造の一例を示す縦断面図である。
【
図8】異素材生地の伸縮性布を用いた裾部の構造の一例を示す縦断面図である。
【
図9】同一素材だが別生地からなる伸縮性布を用いた裾部の構造の一例を示す縦断面図である。
【
図10】左右の脚部を股下部でつながない一例を示す下着の正面図である。
【
図11】腰バンド部に帯体を用いた一例を示す図であり、(a)は下着の正面図、(b)は帯体の拡大正面図、(c)は帯体の拡大平面図である。
【
図12】腰バンド部の前身頃側を下向き凸の湾曲状に形成した一例を示す下着の正面図である。
【
図13】
図11に示す下着の着用状態を説明する概略側面図である。
【
図14】(a)は左右側脇部の股上部箇所に股上部や左右脚部よりも伸縮性の高い伸縮性布を配置した構造の一例を示す下着の正面図、(b)は左右側脇部全体に股上部や左右脚部よりも伸縮性の高い伸縮性布を配置した構造の一例を示す下着の正面図である。
【
図15】第2実施形態における下着の正面図である。
【
図17】クロッチ部を下から見た状態を示す下着の底面図である。
【
図18】(a)は着用状態の下着を正面側から見た外観図、(b)は着用状態の下着を背面側から見た外観図である。
【
図19】クロッチ部の構造の一例を示す縦断面図である。
【
図20】クロッチ部の構造の一例を示す縦断面図である。
【
図21】クロッチ部の構造の一例を示す縦断面図である。
【
図22】異素材生地の伸縮性布を用いたクロッチ部の構造の一例を示す縦断面図である。
【
図23】異素材生地の伸縮性布を用いたクロッチ部の構造の一例を示す縦断面図である。
【
図24】異素材生地の伸縮性布を用いたクロッチ部の構造の一例を示す縦断面図である。
【
図25】同一素材だが別生地からなる伸縮性布を用いたクロッチ部の構造の一例を示す縦断面図である。
【
図26】(a)は当て布を設けたクロッチ部を示す内部平面図、(b)は(a)に示すクロッチ部の横断面図である。
【
図27】(a)は切り込みを設けたクロッチ部を示す内部平面図、(b)は(a)に示すクロッチ部の横断面図、(c)は一枚布にしたクロッチ部に切り込みを設けた場合の横断面図、(d)は(c)に示すクロッチ部の左右内股部分に伸縮性布を重ねて切り込みを設けた場合の横断面図である。
【
図28】(a)は最も内側の伸縮性布を左右幅狭にしたクロッチ部を示す内部平面図、(b)は(a)に示すクロッチ部の横断面図である。
【
図29】第3実施形態のホールガーメント製法による下着の正面図である。
【
図30】ホールガーメント製法による下着の背面図である。
【
図31】クロッチ部を下から見た状態を示すホールガーメント製法による下着の底面図である。
【
図32】(a)は左右側脇部の股上部箇所の伸縮性を向上させた構造の一例を示す下着の正面図、(b)は左右側脇部全体の伸縮性を向上させた構造の一例を示す下着の正面図である。
【
図33】第4実施形態のホールガーメント製法による下着の正面図である。
【
図34】ホールガーメント製法による下着の背面図である。
【
図35】クロッチ部を下から見た状態を示すホールガーメント製法による下着の底面図である。
【
図36】クロッチ部の左右内股部分に伸縮性布を重ねて設けた場合の横断面図である。
【
図37】左右脚部の全周を展開して示した概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本願発明を具体化した実施形態を図面に基づき説明する。以下に示す各実施形態では、本願発明に係る下半身衣類として、ボクサーパンツ型下着1(以下、下着1と略す)に具体化されている。以下の説明では方向を特定するために「前後」「左右」「上下」の用語を使用するが、これは、下着1を着用した着用者基準で設定している。
【0022】
図1~
図4に示す第1実施形態の下着1は、伸縮性を有する素材(伸縮性布)によって形成されているものであり、着用者の胴回りを覆う股上部2と、着用者の脚が挿入される左右一対の脚部3A,3Bとを備えている。股上部2と左右両脚部3A,3Bとは、前身
頃4、後身頃5、前身頃4及び後身頃5の下部側に位置する裾部16、ならびに股上部2の上端全周にわたる腰バンド部7をそれぞれ縫い合わせて形成されている。
【0023】
第1実施形態において、腰バンド部7以外の各部を構成する伸縮性布は、同一の生地から裁断して得られている。腰バンド部7を同一生地から形成してもよい。生地(伸縮性布)としては、例えばフライス編み、天竺編み、スムース編み等の緯編地や、トリコット編み、ラッセル編み等の経編地など、従来公知の種々のものを採用してよい。また、生地(伸縮性布)を編成する原糸や縫い付け用の糸としても、綿、竹、麻等の植物繊維、ウール等の獣毛繊維、吸水加工されたポリエステル、ポリウレタン(スパンデックス等)、エラストマー系ポリマー等の合成繊維、キュプラ、レーヨン、アセテート等の再生繊維など、従来公知の種々のものを採用できる。特に伸縮性を要求される部分には、例えばウーリー糸を用いるのが好ましい。
【0024】
第1実施形態において前身頃4は、左前身頃4Aと右前身頃4Bとに分かれている。左前身頃4Aと後身頃5と右前身頃4Bとは一体に連続している。つまり、左右両方の前身頃4A,4Bと後身頃5とは一枚布からなっている。このため、股上部2の脇には、縫合線が現れない(設けられていない)。換言すると、股上部2の脇は、いわゆる「わ」で取られている。このように構成すると、着用者の臀部や腰回りに縫合線が接触しなくて肌当たりがよく、快適な履き心地が得られる。また、臀部等への局所的な締め付けも抑制される。なお、左右両前身頃4A,4Bと後身頃5とを別体に構成して、それぞれ左右の脇で縫い合わせるようにしてもよい。
【0025】
左右両前身頃4A,4Bの間(前側の中央部)には、縦長略矩形状の前マチ部4Cが設けられている。前マチ部4Cの左右両端は、それぞれ対応する左右の前身頃4A,4Bの側端に縫い合わされている。従って、股上部2は、一枚布状の左右両前身頃4A,4B及び後身頃5の上部側と前マチ部4Cとによって、筒状に形成されている。ここで、前身頃4の用語は、左右両前身頃4A,4Bだけでなく、前マチ部4Cも含む概念として用いている。股上部2の上端全周、すなわち、左前身頃4A、後身頃5及び右前身頃4Bから前マチ部4Cに至る上端全周にわたって、腰バンド部7が縫い合わされている。
【0026】
前マチ部4Cは、伸縮性布を折り返したり複数枚の伸縮性布を重ねたりして、複数枚重ねの状態で形成することが可能である。実施形態の前マチ部4Cは、別体である二枚の伸縮性布を重ね合わせて(二枚重ねにして)形成されている。なお、左右の前身頃4A,4Bの側端同士を縫い合わせて、前マチ部4Cをなくしてもよい。この場合は、左前身頃4A、後身頃5及び右前身頃4Bに至る上端全周にわたって、腰バンド部7が縫い合わされる。また、下着1が男性用である場合、前マチ部4Cにおける左右両端の一部を前身頃4A,4Bに縫い合わせず、男性の局部を出し入れする前開き部に構成することも可能である。
【0027】
第1実施形態において、腰バンド部7は、胴回り方向に伸縮性を有する平ゴムや伸縮性布(例えば同一生地でもよいし異素材の生地でもよく、例えばゴム等が縫い込まれているとより好適である)といった弾性体からなっている。しかし、これに限らず、逆V字に折り曲げた別体の伸縮性布(同一生地でも異素材生地でもよい)を股上部2の上端全周に縫い付けたり股上部2の上端全周を折り返したりして、股上部2の上端全周に筒状の部分を形成し、当該筒状部分に帯状のゴムやウレタン等を挿入して、腰バンド部7を構成したりしても差し支えない。また、股上部2の上端全周に形成した筒状部分に、帯状のゴムやウレタン等とともに非弾性糸の紐を通してもよい。
【0028】
図1、
図2及び
図4(a)(b)に示すように、左右の脚部3A,3Bは、着用者の太ももを覆うように下方に延びている。前身頃4(左右両前身頃4A,4B及び前マチ部4
C)と後身頃5との下部側には、左右の脚部3A,3Bを構成する裾部16が設けられている。第1実施形態の裾部16は、例えば別体である逆U字状の伸縮性布を重ね合わせて、これら伸縮性布同士の左右の脇と股下部17とを縫い合わせ、上向きの一つの開口と下向きの二つの開口と有する筒状に形成したりすれば足りる。下向きの二つの開口が左右一対の脚部3A,3Bの開口となり、着用者の脚が挿入される。
【0029】
裾部16の前部上端は、前身頃4(左右両前身頃4A,4B及び前マチ部4C)の下端に縫い合わされ、裾部16の後部上端は、後身頃5の下端に縫い合わされている。従って、左右の脚部3A,3Bは、裾部16によってそれぞれ筒状に形成されている。第1実施形態における左右の脚部3A,3Bは、股下部17を介して一体的につながっている。第1実施形態において、前身頃4と裾部16との前縫合線には符号Sfを付し、後身頃5と裾部16との後縫合線には符号Sbを付している。なお、左右一対の脚部3A,3Bの用語は、左右両方の脚部3A,3Bだけでなく、股下部17も含む概念として用いる場合がある。左右一対の脚部3A,3Bの用語は、裾部16と言い換えてもよい。
【0030】
前述の通り、股上部2は、一枚布状の左右両前身頃4A,4B及び後身頃5の上部側と前マチ部4Cとによって筒状に形成されている。左右の脚部3A,3Bは、裾部16によってそれぞれ筒状に形成されている。すなわち、第1実施形態の下着1では、前身頃4(左右両前身頃4A,4B及び前マチ部4C)と後身頃5と裾部16とによって、股上部2と左右一対の脚部3A,3Bとが形成されている。第1実施形態において、左右各脚部3A,3Bの裾端部分31A,31Bは、当該部分31A,31Bを折り返して端縁を縫い付けるほつれ止め処理が施されている。この場合、左右両裾端部分31A,31Bは筒縫いされている。左右両脚部3A,3Bの裾端部分31A,31Bにほつれ止め加工をしておけば、左右両脚部3A,3Bの裾端部分31A,31Bを切りっ放し処理できる。
【0031】
ほつれ止め処理としては、第1実施形態のものに限らず、左右各脚部3A,3Bの裾端部分31A,31Bを隠すように別体を縫い付ける態様でもよい。別体としては、例えば裾回り方向に伸縮性を有する平ゴム等の弾性体でもよいし、V字に折り曲げた別体の伸縮性布(例えば同一生地でもよいし異素材の生地でもよい)を左右各脚部3A,3Bの裾端部分31A,31B全周に縫い付けて構成したものでもよい。左右両脚部3A,3Bの裾端部分31A,31Bに伸縮性をもたせれば、着用者の太ももの様々なサイズに対して幅広く適用できる利点がある。
【0032】
第1実施形態では、腰バンド部7のバンド縫合線Swが、ウーリー糸(ポリエステル糸)を用いて3本針の両振りで縫い付けられている。左前身頃4Aと前マチ部4cとの左縫合線Slは、ウーリー糸とポリウレタン(スパンデックス等)との混合糸を用いて3本針の両振りで縫い付けられ、右前身頃4Bと前マチ部4cとの右縫合線Srは、ウーリー糸とポリウレタンとの混合糸を用いて3本針の両振りで縫い付けられている。前縫合線Sfと後縫合線Sbとは、ウーリー糸とポリウレタンとの混合糸を用いて3本針の両振りで縫い付けられている。左右両裾端部分31A,31Bの左右両裾縫合線Shl,Shrは、ウーリー糸を用いて2本針のステッチで縫い付けられている。バンド縫合線Swと左右両裾縫合線Shl,Shrとにおいて、縫製でウーリー糸を用いるのはより高い伸縮性を要求されるためである。
【0033】
股下部17の中央から左右各脚部3A,3Bの裾端部分31A,31Bまでの長さである股下丈IS(
図1及び
図2参照)は、着用者の内ももの最大径部Dt(内ももの最も太い部位)を超えて下方に延びる長さに設定しておくのが好ましい(
図4(a)(b)参照)。このように構成すると、下着1非着用のとき左右内ももの肌同士が直接擦れ合う箇所を、下着1における左右両脚部3A,3Bの内股部分30A,30Bできっちりと覆い隠せるから、股ずれ防止機能が有効に発揮される。例えば成人用であれば股下丈ISを5c
m以上に設定したり、子供用であれば股下丈ISを3cm以上に設定したりするのが好適である。
【0034】
例えば下着1の左右両脚部3A,3Bを、裾端部分31A,31Bが膝上までくるように下方に延ばして、下着1をロングパンツ形状にしてもよい。もちろん、下着1の左右両脚部3A,3Bを、裾端部分31A,31Bが膝下までくるように下方に延ばして、下着1をタイツ(スパッツ)形状にしてもよい。
【0035】
図5~
図9に詳細に示すように、左右一対の脚部3A,3B(裾部16)の厚みT16は、前後身頃4,5(股上部2)の厚みT4,T5よりも厚くなるように設定されている。
図5に示す裾部16は、別体である二枚の伸縮性布16aを重ね合わせて(二枚重ねにして)形成されており、当該裾部16の厚みT16は、前後身頃4,5の厚みT4,T5の二倍になっている。別体の伸縮性布16aの重ね合わせは二枚に限らず、三枚以上の複数枚にしてもよい。また、
図6に示すように、伸縮性布16aを折り返して二枚以上の複数枚の重ね合わせ状態に形成してもよい。
【0036】
図7に示す裾部16は、前後身頃4,5とは異素材の生地からなる伸縮性布16bで形成されている。異素材生地の伸縮性布16bで形成された裾部16の厚みT16が、前後身頃4,5の厚みT4,T5よりも厚くなっている。
図8に示す裾部16は、異素材生地の伸縮性布16bを複数枚重ねて形成されていて、裾部16の厚みT16は結果的に、前後身頃4,5の厚みT4,T5よりも厚くなっている。図示は省略するが、異素材生地の伸縮性布16bを折り返して二枚以上の複数枚の重ね合わせ状態に形成してもよい。
【0037】
異素材生地の伸縮性布16bを重ね合わせる場合、単独での厚みは前後身頃4,5の厚みT4,T5より薄くてもよい。重ね合わせ状態の結果、裾部16の厚みT16が、前後身頃4,5の厚みT4,T5よりも厚くなっていれば足りる。
【0038】
図9に示す裾部16は、前後身頃4,5と同一素材であるが厚みの厚い別の生地からなる伸縮性布16cで構成されていて、同一素材だが別生地からなる伸縮性布16cで形成された裾部16の厚みT16が、前後身頃4,5の厚みT4,T5よりも厚くなっている。図示は省略するが、同一素材だが別生地からなる伸縮性布16cを複数枚重ねて裾部16を形成したり、伸縮性布16cを折り返して二枚以上の複数枚の重ね合わせ状態に形成したりしてもよい。なお、前後身頃4,5と同一の生地からなる伸縮性布16aと、異素材生地の伸縮性布16bと、同一素材だが別生地の伸縮性布16cとを適宜組み合わせて、裾部16を形成することも可能である。
【0039】
上記のように構成すると、ぽっちゃり体型やがっちり体型の人のように太ももが太い人や、X脚等で内股気味の人が下着1を着用した場合であっても、内ももや股下等(少なくとも内股部分30A,30B)が厚みT16の厚い裾部16(左右一対の脚部3A,3B)で覆われるから、内ももや股下等(少なくとも内股部分30A,30B)の肌同士が直接擦れ合うおそれを確実に抑制でき、股ずれの発生を防止できる。また、汗をかきやすく蒸れやすい箇所である内ももや股下等を、厚みT16の厚い裾部16(左右一対の脚部3A,3B)で覆うから、汗の吸収も速やかに行え、股ずれの発生をより効果的に防止できる。
【0040】
さらに、厚みT16の厚い裾部16(左右一対の脚部3A,3B)は、前後身頃4,5よりも高い強度を確保できるから、左右両脚部3A,3Bの内股部分30A,30Bの強度が高くなり、内股部分30A,30Bが摩擦で擦り切れたりするのを抑制できる。特に第1実施形態のように、股下丈IS(
図1及び
図2参照)を、着用者の内ももの最大径部Dt(内ももの最も太い部位)を超えて下方に延びる長さに設定しておくと(
図4(a)
(b)参照)、左右太ももの全周が厚みT16の厚い裾部16(左右一対の脚部3A,3B)で囲われるから、左右太ももにおいて股ずれを生ずる可能性のある部位を広範囲に保護でき、股ずれ防止機能をより確実に発揮できる。
【0041】
図10には、左右の脚部3A,3B(裾部16)を分離させた例(左右の脚部3A,3B(裾部16)を股下部17でつながない例)を示している。換言すると、左右の脚部3A,3Bだけを厚みT16の厚い構造にした例である。このように構成した場合も、
図1~
図9に示す第1実施形態と同様の作用効果を奏する。すなわち、内ももや股下等(少なくとも内股部分30A,30B)が厚みT16の厚い裾部16(左右一対の脚部3A,3B)で覆われるから、内ももや股下等(少なくとも内股部分30A,30B)の肌同士が直接擦れ合うおそれを確実に抑制でき、股ずれの発生を防止できる。
【0042】
図11(a)~(c)には、股上部2の上端全周に形成した筒状部分に、胴回り方向に伸縮性を有する帯体20を挿入して腰バンド部7を構成した例を示している。この例では、帯体20の裏面21が平坦に構成されており、帯体20の表面22には、複数の略矩形状の凸部23が帯体20長手方向に適宜間隔を隔てて複数個形成されている。各凸部23においては、一対の幅方向端辺24が互いに平行状に並んで形成されている。各凸部23は、厚み方向(表裏方向)に伸縮する(弾力性のある)伸縮性部材にて構成されている。
【0043】
帯体20は、縦糸と横糸との織物にて構成されている。横糸はウーリー糸を用いて、縦糸はゴム糸とウーリー糸とを組み合わせて用いて、それぞれ織られている。ゴム糸は、例えば中心のゴム部分がポリウレタン性ゴムにて形成され、当該中心ゴムにウーリー糸が巻かれ、さらにその外側にステープルファイバー(人絹、レーヨン)が巻かれて構成されている。ウーリー糸自体には撚りがほとんどないため、形成後の帯体20の撚りはほとんど生ずることなく、扱いに優れたものに構成できる。
【0044】
ちなみに、ここで示した糸以外の他の糸でも同様に形成可能ではあるが、耐久性、コスト性、生産性、並びに使用感(撚り、手触り)等を考慮すると、上記に示したようなポリエステル糸及びゴム糸を用いるのが適当であると解される。なお、帯体20自体を股上部2の上端全周に直接縫い合わせたりしてもよい。
【0045】
図12及び
図13には、前身頃4(前マチ部4C)の上下寸法を浅く設定し、腰バンド部7が、後身頃5側では着用者の腰骨相当付近に位置し、前身頃4側では左右両側脇部から前身頃中央(前マチ部4C中央)に向けて、下向き凸の湾曲状(V字状、U字状と言ってもよい)に形成されている例を示している。この場合、腰バンド部7の前身頃4側が着用者の腹部の頂上よりも下側の位置にくるため、お腹の出た人でも、腰バンド部7による腹部への圧迫感がなくソフトな着用感が得られる。また、お腹の出た人でも、腰バンド部7の前身頃4側がズレ落ちにくく、着用時の美しいシルエットも確保できる。
【0046】
図14には、下着1の左右側脇部11A,11Bに、股上部2や左右脚部3A,3Bよりも伸縮性の高い伸縮性布を配置した例を示している。
図14(a)に示すように、左右側脇部11A,11Bのうち股上部2に対応する箇所に、伸縮性の高い伸縮性布を縫い合わせてもよい。この場合、左右前身頃4A,4Bと後身頃5とは、左右側脇部11A,11Bを介してつながっている。また、
図14(b)に示すように、左右側脇部11A,11B全体に(股上部2から左右脚部3A,3Bに跨って)、伸縮性の高い伸縮性布を縫い合わせてもよい。このように構成すると、着用者の腰回り(臀部回り)の様々なサイズに対して幅広く適用できる利点がある。
【0047】
図15~
図18等は、厚みの厚い部分の構造の別例である第2実施形態の下着1を示している。第2実施形態において、構成及び作用が第1実施形態と同様なものには、同じ符
号を付してその詳細な説明を省略する。
【0048】
第2実施形態の下着1は、伸縮性を有する素材(伸縮性布)によって形成されているものであり、着用者の胴回りを覆う股上部2と、着用者の脚が挿入される左右一対の脚部3A,3Bとを備えている。股上部2及び左右両脚部3A,3Bは、前身頃4、後身頃5、前身頃4と後身頃5との間に位置するクロッチ部6、ならびに股上部2の上端全周にわたる腰バンド部7をそれぞれ縫い合わせて形成されている。
【0049】
第2実施形態の前身頃4は、左前身頃4Aと右前身頃4Bとに分けられている。左前身頃4Aと後身頃5と右前身頃4Bとは一体に連続している。つまり、左右両前身頃4A,4Bと後身頃5とは一枚布からなっている。このため、股上部2及び左右両脚部3A,3Bの脇には、縫合線が現れない(設けられていない)。換言すると、股上部2及び左右両脚部3A,3Bの脇は、いわゆる「わ」で取られている。このように構成すると、着用者の臀部や左右太ももの外側部に縫合線が接触しなくて肌当たりがよく、快適な履き心地が得られる。臀部や左右太ももの外側部への局所的な締め付けも抑制される。なお、左右両前身頃4A,4Bと後身頃5とを別体に構成して、それぞれ左右の脇で縫い合わせるようにしてもよい。
【0050】
左右両前身頃4A,4Bの間(前側の中央部)には、縦長略矩形状の前マチ部4Cが設けられている。前マチ部4Cの左右両端は、それぞれ対応する左右の前身頃4A,4Bの側端に縫い合わされている。従って、股上部2は、一枚布状の左右両前身頃4A,4B及び後身頃5の上部側と前マチ部4Cとによって、筒状に形成されている。股上部2の上端全周、すなわち、左前身頃4A、後身頃5及び右前身頃4Bから前マチ部4Cに至る上端全周にわたって、腰バンド部7が縫い合わされている。
【0051】
前マチ部4Cは、伸縮性布を折り返したり複数枚の伸縮性布を重ねたりして、複数枚重ねの状態で形成することが可能である。実施形態の前マチ部4Cは、別体である二枚の伸縮性布を重ね合わせて(二枚重ねにして)形成されている。第2実施形態において、腰バンド部7は、胴回り方向に伸縮性を有する平ゴムや伸縮性布(例えば同一生地でもよいし異素材の生地でもよく、例えばゴム等が縫い込まれているとより好適である)といった弾性体からなっている。
【0052】
図15及び
図16に示すように、左右の脚部3A,3Bは、着用者の太ももを覆うように下方に延びている。前身頃4(左右両前身頃4A,4B及び前マチ部4C)と後身頃5との下部側の間には、横長略矩形状のクロッチ部6が設けられている。クロッチ部6は、左右両脚部3A,3Bの下向き延出部分に対応するように、左右両脚部3A,3Bの内股部分30A,30Bまで延びている。クロッチ部6の前端は、前身頃4(左右両前身頃4A,4B及び前マチ部4C)の下端に縫い合わされている。クロッチ部6の後端は、後身頃5の下端に縫い合わされている。従って、左右の脚部3A,3Bは、一枚布状の左右両前身頃4A,4B及び後身頃5の下部側とクロッチ部6とによって、それぞれ筒状に形成されている。
【0053】
前述の通り、股上部2は、一枚布状の左右両前身頃4A,4B及び後身頃5の上部側と前マチ部4Cとによって、筒状に形成され、左右の脚部3A,3Bは、一枚布状の左右両前身頃4A,4B及び後身頃5の下部側とクロッチ部6とによって、それぞれ筒状に形成されている。すなわち、実施形態の下着1においては、前身頃4(第2実施形態では左右両前身頃4A,4B及び前マチ部4C)と後身頃5とクロッチ部6とによって、股上部2と左右一対の脚部3A,3Bとが形成されている。
【0054】
第2実施形態において、左右各脚部3A,3Bの裾端部分31A,31Bは、当該部分
31A,31Bを折り返して端縁を縫い付けるほつれ止め処理が施されている。この場合、前マチ部4Cの左右両端を、それぞれ対応する左右の前身頃4A,4Bの側端に直線縫いで縫い合わせ、左右両前身頃4A,4B及び前マチ部4Cの下端に、クロッチ部6の前端を直線縫いで縫い合わせてから、左右各脚部3A,3Bの裾端部分31A,31Bを折り返して端縁を縫い付けるほつれ止め処理が直線縫いでなされる。その後、後身頃5の下端にクロッチ部6の後端が左右各脚部3A,3Bの裾端部分31A,31Bも含めて直線縫いで縫い合わされる。
【0055】
このため、前身頃4とクロッチ部6との前縫合線Sfの左右両端は、ほつれ止め処理がされた左右両裾端部分31A,31Bに隠される。そして、後身頃5とクロッチ部6との後縫合線Sbの左右両端は、ほつれ止め処理がされた左右両裾端部分31A,31B上に露出するのである。前縫合線Sfと後縫合線Sbとの縫製の順序を入れ替えても構わないことは言うまでもない。このように構成すると、左右両脚部3A,3Bの裾端部分31A,31Bを折り返してほつれ止め処理をするに際して、直線縫いすればよく筒縫いする必要がないから、縫製作業の手間を少なくできて好適である。
【0056】
ほつれ止め処理としては、第2実施形態のものに限らず、左右各脚部3A,3Bの裾端部分31A,31Bを隠すように別体を縫い付ける態様であってもよい。別体としては、例えば裾回り方向に伸縮性を有する平ゴム等の弾性体であってもよいし、V字に折り曲げた別体の伸縮性布(例えば同一生地でもよいし異素材の生地でもよい)を左右各脚部3A,3Bの裾端31A,31B全周に縫い付けて構成したものであってもよい。
【0057】
左右各脚部3A,3Bの裾端部分31A,31Bに別体を縫い付ける場合でも、前縫合線Sfと後縫合線Sbとの縫製上の関係を構成できる。つまり、前縫合線Sf及び後縫合線Sbのうち一方の左右両端を左右両裾端部分31A,31Bに隠し他方の左右両端を露出させるように、縫製することが可能である。縫製手順は、実施形態のものに準ずる。この場合も、ほつれ止め処理をするに際して、直線縫いすればよく筒縫いする必要がないから、縫製作業の手間を少なくできて好適なのである。特に、左右両脚部3A,3Bの裾端部分31A,31Bに伸縮性をもたせれば、着用者の太ももの様々なサイズに対して幅広く適用できる利点がある。
【0058】
なお、前縫合線Sfの左右両端と後縫合線Sbの左右両端との両方が、ほつれ止め処理された左右両裾端部分31A,31Bに隠されるように縫製することも可能であるし、前縫合線Sfの左右両端と後縫合線Sbの左右両端との両方が、ほつれ止め処理された左右両裾端部分31A,31Bに上に露出するように縫製することも可能である。前後縫合線Sf,Sbの左右両端を左右両裾端部分31A,31Bに隠す場合は、左右両裾端部分31A,31Bを筒縫いすればよいだけである。また、左右両脚部3A,3Bの裾端部分31A,31Bにほつれ止め加工をしておけば、左右両脚部3A,3Bの裾端部分31A,31Bを切りっ放し処理できる。
【0059】
第2実施形態では、股上部2の上端全周にわたる腰バンド部7のバンド縫合線Swが、ウーリー糸を用いて3本針の両振りで縫い付けられている。左前身頃4Aと前マチ部6との左縫合線Slは、ウーリー糸とポリウレタン(スパンデックス等)との混合糸を用いて3本針の両振りで縫い付けられ、右前身頃4Bと前マチ部6との右縫合線Srは、ウーリー糸とポリウレタンとの混合糸を用いて3本針の両振りで縫い付けられている。前縫合線Sfと後縫合線Sbとは、ウーリー糸とポリウレタンとの混合糸を用いて3本針の両振りで縫い付けられている。左右両裾端部分31A,31Bの左右両裾縫合線Shl,Shrは、ウーリー糸を用いて2本針のステッチで縫い付けられている。バンド縫合線Swと左右両裾縫合線Shl,Shrとにおいて、縫製でウーリー糸を用いるのはより高い伸縮性を要求されるためである。
【0060】
クロッチ部6の中央から左右各脚部3A,3Bの裾端部分31A,31Bまでの長さである股下丈IS(
図15及び
図16参照)は、着用者の内ももの最大径部Dt(内ももの最も太い部位、
図18(a)(b)参照)を超えて下方に延びる長さに設定されるのが好ましい。このように構成すると、下着1非着用の場合に、左右内ももの肌同士が直接擦れ合う箇所を、下着1における左右両脚部3A,3Bの内股部分30A,30B(クロッチ部6)できっちりと覆えるから、股ずれ防止機能が有効に発揮される。
【0061】
例えば下着1の左右両脚部3A,3Bを、裾端部分31A,31Bが膝上までくるように下方に延ばして、下着1をロングパンツ形状にしてもよい。もちろん、下着1の左右両脚部3A,3Bを、裾端部分31A,31Bが膝下までくるように下方に延ばして、下着1をタイツ(スパッツ)形状にしてもよい。ロングパンツ形状やタイツ(スパッツ)形状の場合、クロッチ部6は少なくとも左右両脚部3A,3Bの内股部分30A,30Bまで延びていればよい。
【0062】
図19~
図25に詳細に示すように、クロッチ部6の厚みT6は、左右両脚部3A,3Bのその他の部分(左右両前身頃4A,4B及び後身頃5の下部側)の厚みT3よりも厚くなるように設定されている。
図19に示すクロッチ部6は、別体である二枚の伸縮性布6aを重ね合わせて(二枚重ねにして)形成されており、当該クロッチ部6の厚みT6は、その他の部分の厚みT3の二倍になっている。別体の伸縮性布6aの重ね合わせは二枚に限らず、三枚以上の複数枚にしてもよい。
【0063】
また、
図20に示すように、伸縮性布6aを折り返して二枚以上の複数枚の重ね合わせ状態に形成することも可能である。さらに、
図21に示すように、例えばクロッチ部6における最も外側(又は内側)の伸縮性布6aを後身頃5(前身頃4の場合もあり得る)と一体に連続させ、内側(又は外側)に伸縮性布6aを重ねて縫い付けることによって、クロッチ部6における複数枚の重ね合わせ状態を形成してもよい。
【0064】
図22に示すクロッチ部6は、左右両脚部3A,3Bのその他の部分とは異素材の生地からなる伸縮性布6bで形成されている。異素材生地の伸縮性布6bで形成されたクロッチ部6の厚みT6が、左右両脚部3A,3Bのその他の部分の厚みT3よりも厚くなっている。
図23に示すクロッチ部6は、異素材生地の伸縮性布6bを複数枚重ねて形成されていて、当該クロッチ部6の厚みT6は結果的に、左右両脚部3A,3Bのその他の部分の厚みT3よりも厚くなっている。図示は省略するが、異素材生地の伸縮性布6bを折り返して二枚以上の複数枚の重ね合わせ状態に形成することも可能である。
【0065】
なお、
図24に示すように、例えばクロッチ部6における最も外側(又は内側)の伸縮性布6aを、左右両脚部3A,3Bのその他の部分と同一の生地からなるものとし、後身頃5(前身頃4の場合もあり得る)と一体に連続させ、内側(又は外側)に異素材生地の伸縮性布6bを重ねて縫い付けることによって、クロッチ部6における複数枚の重ね合わせ状態を形成することも可能である。
【0066】
異素材生地の伸縮性布6bを重ね合わせる場合、単独での厚みは左右両脚部3A,3Bのその他の部分の厚みT3より薄くてもよい。重ね合わせ状態の結果、クロッチ部6の厚みT6が、左右両脚部3A,3Bのその他の部分の厚みT3よりも厚くなっていれば足りる。
【0067】
図25に示すクロッチ部6は、左右両脚部3A,3Bのその他の部分と同一素材であるが厚みの厚い別の生地からなる伸縮性布6cで構成されていて、同一素材だが別生地からなる伸縮性布6cで形成されたクロッチ部6の厚みT6が、左右両脚部3A,3Bのその
他の部分の厚みT3よりも厚くなっている。
【0068】
図示は省略するが、同一素材だが別生地からなる伸縮性布6cを複数枚重ねてクロッチ部6を形成したり、伸縮性布6cを折り返して二枚以上の複数枚の重ね合わせ状態に形成したりしてもよい。さらに、例えばクロッチ部6における最も外側(又は内側)の伸縮性布6aを、左右両脚部3A,3Bのその他の部分と同一の生地からなるものとし、後身頃5(前身頃4の場合もあり得る)と一体に連続させ、内側(又は外側)に同一素材だが別生地からなる伸縮性布6cを重ねて縫い付けることによって、クロッチ部6における複数枚の重ね合わせ状態を形成してもよい。
【0069】
なお、左右両脚部3A,3Bのその他の部分と同一の生地からなる伸縮性布6aと、異素材生地の伸縮性布6bと、同一素材だが別生地の伸縮性布6cとを適宜組み合わせて、クロッチ部6を形成することも可能である。
【0070】
上記のように構成すると、ぽっちゃり体型やがっちり体型の人のように太ももが太い人や、X脚等で内股気味の人が下着1を着用した場合であっても、内ももや股下等が厚みT6の厚いクロッチ部6で覆われるから、内ももや股下等の肌同士が直接擦れ合うおそれを確実に抑制でき、股ずれの発生を防止できる。また、汗をかきやすく蒸れやすい箇所である内ももや股下等を厚みT6の厚いクロッチ部6で覆うから、汗の吸収も速やかに行え、股ずれの発生をより効果的に防止できる。
【0071】
さらに、厚みT6の厚いクロッチ部6は、左右両脚部3A,3Bのその他の部分よりも高い強度を確保できるから、左右両脚部3A,3Bの内股部分30A,30Bの強度が高くなり、当該部分30A,30Bが摩擦で擦り切れたりするのを抑制できる。
【0072】
第2実施形態において、クロッチ部6のうち最も内側の部分に、通水性を有する当て布8(
図26(a)(b)参照)を設けるようにしてもよい。当て布8は、クロッチ部6と一緒に縫い付ければよい。当て布8としては、ポリエステル、ポリウレタン(スパンデックス等)、エラストマー系ポリマー等の合成繊維、キュプラ、レーヨン、アセテート等の再生繊維などから構成すれば足りる。このように構成すると、内ももや股下等でかいた汗が当て布8を通過してクロッチ部6の伸縮性布に吸収されることになり、クロッチ部6の肌触りがよく、快適な着用感が得られる。股ずれ防止機能をさらに高められる。
【0073】
図19~
図21、
図23及び
図24に示すクロッチ部6のように複数枚重ねた構造の場合において、クロッチ部6のうち最も内側の伸縮性布6dに、前後方向に延びる左右一対の切り込み9,9が形成されるようにしてもよい(
図27(a)(b)参照)。切り込み9,9間の左右幅Wは、例えば市販の生理用ナプキン等のような吸収性物品(図示省略)と同程度に設定される。このように構成すると、前述の吸収性物品の左右両側に設けられたウイング(フラップ)を折り曲げて、それぞれ対応する左右の切り込み9内に差し込み、ウイングに設けた粘着部を介して、左右両ウイングひいては吸収性物品をクロッチ部6に安定的に固定できる。実施形態の下着1を着用するに際して、吸収性物品の装着を問題なく行える。
【0074】
なお、吸収性物品の装着容易性を主眼におけば、クロッチ部6を一枚布(一枚の伸縮性布6dだけ)にして、当該伸縮性布6dに左右の切り込み9,9を形成してもよい(
図27(c)参照)。この場合、装着された吸収性物品の左右ウイングは、下着1の外に露出することになる。
【0075】
さらに、吸収性物品の装着容易性を主眼におきつつ股ずれ防止機能の観点も考慮するならば、クロッチ部6における左右切り込み9,9付きの一枚の伸縮性布6dに対して、左
右両脚部3A,3Bの内股部分30A,30Bに、さらに伸縮性布6eを折り返したり重ねたりして、左右内股部分30A,30Bだけを複数枚重ねの状態に形成してもよい(
図27(d)参照)。
図27(d)では、伸縮性布6dと伸縮性布6eとの縫合線の図示を省略している。
【0076】
また、
図19~
図21、
図23及び
図24に示すクロッチ部6のように複数枚重ねた構造の場合においては、クロッチ部6のうち最も内側の伸縮性布6fを、クロッチ部6のその他の部分よりも左右幅狭に形成するようにしてもよい(
図28(a)(b)参照)。この場合、クロッチ部6のうち最も内側の部分の左右幅Wが、例えば市販の生理用ナプキン等のような吸収性物品(図示省略)と同程度に設定される。クロッチ部6での重ね合わせ状態は、左右幅狭の伸縮性布6fを含めて三枚以上にするのが好ましい。このように構成した場合も、前述の切り込み9と同様の作用効果を奏するのである。
【0077】
次に、
図29~
図35を参照しながら、株式会社島精機製作所が開発したホールガーメント(登録商標)と呼ばれる製法によって編成した下半身衣類としてのボクサーパンツ型下着51(以下、下着51と略す)について説明する。以下の説明では、第1又は第2実施形態と同じ部位については、第1又は第2実施形態の符号に50を足したものを付してその詳細な説明を省略する(例えば下着51、股上部52、前身頃54等)。
【0078】
ホールガーメント製法とは、通常のニット製品であれば複数のパーツ(例えば、前身頃54(前マチ部を含む)、後身頃55、裾部66(又はクロッチ部56)等)を縫製で一体化させるところ、複数のパーツを無縫製で一体的且つ立体的に編成する技術である。当該技術を適用すれば、少なくとも前身頃54(前マチ部を含む)、後身頃55及び裾部66(又はクロッチ部56)を同時に編成することが可能である。腰バンド部57は、ホールガーメント製法で編成してもよいし、別途縫い合わせても構わない。
【0079】
図29~
図31に示す第3実施形態の下着51は、第1実施形態の下着をホールガーメント製法で編成した例である。この場合、前後身頃54,55の少なくとも一部と裾部66の少なくとも一部とは、連続する糸によって編成され、前後身頃54,55と裾部66との境目には縫合線が形成されない。このため、前後身頃54,55と裾部66との境目においても、ニット製品としての伸縮性が保持され、着用者の臀部や左右太ももに縫合線が接触しなくて肌当たりがよく、快適な履き心地が得られる。なお、
図29~
図31では、説明の便宜上、前後身頃54,55と裾部66との境目を二点鎖線で示している。
【0080】
第3実施形態の下着51は、同社製のホールガーメント(登録商標)編機によって、例えば次のような手順で編成できる。なお、以下に説明する各部の編成においては、ゴム編や畦編など複数の編成方法を適宜組み合わせて行っても構わない。まず、股上部52の履き口(腰バンド部57)側から編成を開始し、股上部52を筒状に編む。続いて、厚みを厚くした構造の裾部66を編成する。すなわち、二重構造の左右一方の脚部53A(53B)を編成してから休止し、二重構造の左右他方の脚部53B(53A)を編成する。その後、左右他方の脚部53B(53A)から続けて、二重構造の股下部67を編成して、裾部66をポケット状にし、左右一対の脚部3A,3B(裾部16)の厚みを、前後身頃4,5の厚みよりも厚くする。
【0081】
この場合、裾部66の編み目の数を徐々に増やすと共に、増やした部分を裾部66周囲の部分に編み込むのが好ましい。このようにすると、裾部66を立体的に形成することが可能である。また、裾部66の厚みを設けるために、裾部66を複数の糸にて編成し、裾部66に実質使用する糸量をその他の部分より複数倍にするようにしてもよい。なお、裾部66は三重構造以上に編成してもよい。
【0082】
それから、二重構造の股下部67の端部を左右一方の脚部53A(53B)に編み込みながら編成し、端部を閉じる。その結果、ホールガーメント製法による下着51が完成するのである。なお、上記においては、下着51を股上部52の履き口(腰バンド部57)側から編み始める場合を説明したが、当然ながら、左右いずれか一方の脚部53A(53B)側から編み始めてもよい。上記のように構成した場合も、第1及び第2実施形態と同様に、股ずれの発生を防止できるという作用効果を奏するのである。
【0083】
図32には、第3実施形態の下着51の左右側脇部61A,61Bにおいて、編成方法を変更して股上部52や左右脚部53A,53Bよりも伸縮性を向上させた例を示している。
図32(a)に示すように、左右側脇部61A,61Bのうち股上部52に対応する箇所で、編成方法を変えて当該箇所の伸縮性を高めるようにしてもよい。また、
図32(b)に示すように、左右側脇部61A,61B全体で(股上部52から左右脚部53A,53Bに跨って)、編成方法を変更して当該箇所の伸縮性を高めるようにしてもよい。このように構成すると、着用者の腰回り(臀部回り)の様々なサイズに対して幅広く適用できる利点がある。
【0084】
図33~
図35に示す第4実施形態の下着51は、第2実施形態の下着をホールガーメント製法で編成した例である。この場合、前後身頃54,55の少なくとも一部とクロッチ部56の少なくとも一部とは、連続する糸によって編成され、前後身頃54,55とクロッチ部56との境目には縫合線が形成されない。このため、前後身頃54,55とクロッチ部56との境目においても、ニット製品としての伸縮性が保持され、着用者の臀部や左右太ももに縫合線が接触しなくて肌当たりがよく、快適な履き心地が得られる。なお、
図33~
図35では、説明の便宜上、前後身頃54,55とクロッチ部56との境目を二点鎖線で示している。
【0085】
第4実施形態の下着51は、同社製のホールガーメント(登録商標)編機によって、例えば次のような手順で編成できる。まず、股上部52の履き口(腰バンド部57)側から編成を開始し、股上部52を筒状に編む。続いて、左右一方の脚部53A(53B)を編成してから休止し、左右他方の脚部53B(53A)を編成する。その後、左右他方の脚部53B(53A)から続けて、二重構造のクロッチ部56を編成して、クロッチ部56をポケット状にし、クロッチ部56の厚みを、前後身頃4,5や左右両脚部53A,53Bのその他の部分の厚みよりも厚くする。
【0086】
この場合、クロッチ部56の編み目の数を徐々に増やすと共に、増やした部分をクロッチ部56周囲の部分に編み込むのが好ましい。このようにすると、クロッチ部56を立体的に形成することが可能である。また、クロッチ部56の厚みを設けるために、クロッチ部56を複数の糸にて編成し、クロッチ部56に実質使用する糸量をその他の部分より複数倍にするようにしてもよい。なお、クロッチ部56は三重構造以上に編成してもよい。
【0087】
それから、二重構造のクロッチ部56の端部を左右一方の脚部53A(53B)に編み込みながら編成し、端部を閉じる。その結果、ホールガーメント製法による下着51が完成するのである。上記のように構成した場合も、第1及び第2実施形態と同様に、股ずれの発生を防止できるという作用効果を奏するのである。
【0088】
なお、本願発明における各部の構成は図示の実施形態に限定されるものではなく、本願発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば各実施形態の種々の構成例を適宜組み合わせた構成にすることも可能である。
【0089】
股ずれを防止するために厚くすべき部分は、少なくとも左右両脚部3A,3B(53A,53B)、より詳しくは左右両内股部分であると解される。この点は一例として、
図3
6に示すクロッチ部6の横断面構造に図示している。
図36では、クロッチ部6における一枚の伸縮性布6dに対して、左右両脚部3A,3Bの内股部分30A,30Bに、さらに伸縮性布6eを折り返したり重ねたりして、左右内股部分30A,30Bだけを複数枚重ねの状態に形成している。換言すると、
図27(d)に示すクロッチ部6で切り込み9,9をなくした状態である。このような観点から、
図10に示すような、左右の脚部3A,3Bだけを厚みT16の厚い構造にした下着1を開発し、股ずれの発生を防止できる知見が得られている。
【0090】
図37は、各実施形態における左右脚部3A,3B(53A,53B)の全周を展開して示した図である。前述の通り、股ずれ防止のために厚くすべき部分(裾部16(66)又はクロッチ部6(56))として、左右脚部3A,3B(53A,53B)全周としてもよい(
図37(a)参照)。なお、図のハッチング部分が股ずれ防止のために厚くすべき部分(裾部16(66)又はクロッチ部6(56))に相当する。股ずれ防止のために厚くすべき部分(裾部16(66)又はクロッチ部6(56))は、左右脚部3A,3B(53A,53B)全周のうち左右内股部分寄りの50%以下でもよい(
図37(b)参照)。もちろん、左右内股部分寄りの50%以上になっていても差し支えない。少なくとも左右脚部3A,3B(53A,53B)全周のうち左右内股部分寄りの5%以上あれば足りる(
図37(c)参照)。また、股ずれ防止のために厚くすべき部分(裾部16(66)又はクロッチ部6(56))は、左右内股部分の中央よりも一方にずれて位置していてもよいし(
図37(d)参照)、他方にずれて位置していてもよいし(
図37(e)参照)、左右内股部分の中央に跨って位置していてもよい(
図37(f)参照)。着用者において股ずれしやすい部分に、厚くすべき部分(裾部16(66)又はクロッチ部6(56))が重なる設定になっていれば足りる。
【符号の説明】
【0091】
1,51 下着(下半身衣類)
2,52 股上部
3A,53A 左脚部
3B,53B 右脚部
4,54 前身頃
5,55 後身頃
6,56 クロッチ部
6a~6f 伸縮性布
7 腰バンド部
11A,61A 左側脇部
11B,61B 右側脇部
16,66 裾部
17,67 股下部
20 帯体
21 裏面
22 表面
23 凸部