IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ミツバの特許一覧

<>
  • 特開-モータ装置 図1
  • 特開-モータ装置 図2
  • 特開-モータ装置 図3
  • 特開-モータ装置 図4
  • 特開-モータ装置 図5
  • 特開-モータ装置 図6
  • 特開-モータ装置 図7
  • 特開-モータ装置 図8
  • 特開-モータ装置 図9
  • 特開-モータ装置 図10
  • 特開-モータ装置 図11
  • 特開-モータ装置 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023000700
(43)【公開日】2023-01-04
(54)【発明の名称】モータ装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 3/50 20060101AFI20221222BHJP
【FI】
H02K3/50 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021101674
(22)【出願日】2021-06-18
(71)【出願人】
【識別番号】000144027
【氏名又は名称】株式会社ミツバ
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】力石 真
(72)【発明者】
【氏名】荒居 雄作
(72)【発明者】
【氏名】安中 智彦
【テーマコード(参考)】
5H604
【Fターム(参考)】
5H604AA08
5H604BB01
5H604BB10
5H604BB14
5H604CC01
5H604CC05
5H604CC13
5H604DB01
5H604PB02
5H604QA08
5H604QB14
(57)【要約】
【課題】コイル引き出し部のコイルホルダに対する配策作業性を向上させることができるモータ装置を提供する。
【解決手段】コイルホルダ80に、複数の周方向延在部Cu,Cv,Cwをステータの軸方向一側から部分的に覆う第1,第2,第3庇部83a,84a,85aを設け、ステータの軸方向一側からコイルホルダ80を見たときに、複数の屈曲部Pu,Pv,Pwのうちの一部が目視可能となっている。したがって、複数の屈曲部Pu,Pv,Pwのうちの一部を容易に形成することができ、ひいては従前に比して、U相,V相,W相引き出し部70u1~70u8,70v1~70v8,70w1~70w8のコイルホルダ80に対する配策作業性を向上させることができ、ひいてはブラシレスモータの組み立て作業性を向上させることが可能となる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のコイルが巻装されたステータと、
前記ステータに対して回転するロータと、
を有するモータ装置であって、
複数の前記コイルに、前記ステータの軸方向一側に引き出されたコイル引き出し部がそれぞれ設けられ、
前記コイル引き出し部は、
前記ステータの軸方向に延びる軸方向延在部と、
前記ステータの周方向に延びる周方向延在部と、
前記軸方向延在部と前記周方向延在部との間に設けられる屈曲部と、
を備えており、
前記ステータの軸方向一側に、複数の前記コイル引き出し部をそれぞれ保持するコイルホルダが設けられ、
前記コイルホルダは、
前記コイルホルダの周方向に並んで設けられ、複数の前記軸方向延在部をそれぞれ支持する複数の第1支持部と、
前記コイルホルダの軸方向に並んで設けられ、複数の前記周方向延在部をそれぞれ支持する複数の第2支持部と、
前記コイルホルダの周方向に延びて設けられ、複数の前記周方向延在部を前記ステータの軸方向一側から部分的に覆う被覆壁と、
を有しており、
前記ステータの軸方向一側から前記コイルホルダを見たときに、複数の前記屈曲部のうちの一部が目視可能であることを特徴とする、
モータ装置。
【請求項2】
請求項1に記載のモータ装置において、
前記周方向延在部の長手方向における前記屈曲部側とは反対側に、前記ステータの径方向外側に突出され、かつ電源端子が電気的に接続される端子接続部が設けられ、
前記被覆壁が、前記ステータの軸方向一側から前記端子接続部の一部を覆っていることを特徴とする、
モータ装置。
【請求項3】
請求項2に記載のモータ装置において、
前記コイル引き出し部がU相,V相およびW相に対応して設けられ、これらの前記コイル引き出し部を前記ステータの軸方向一側から見たときに、それぞれの前記コイル引き出し部は、前記ステータの軸心を通りかつ前記ステータの周方向における前記端子接続部の中央部を通る基準線を中心に、鏡像対称形状となっていることを特徴とする、
モータ装置。
【請求項4】
前記ステータに巻装された複数の前記コイルが、デルタ結線されていることを特徴とする、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のモータ装置。
【請求項5】
前記コイルが、長手方向と交差する方向の断面形状が矩形の平角線により形成されていることを特徴とする、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のモータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のコイルが巻装されたステータと、前記ステータに対して回転するロータと、を有するモータ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のコイルが巻装されたステータと、ステータに対して回転するロータと、を有するモータ装置が、例えば、特許文献1に記載されている。特許文献1に記載された電動モータ(モータ装置)は、ステータおよびロータを備えており、ステータの径方向内側には複数のティース部が設けられている。また、複数のティース部には、インシュレータを介してコイルが集中巻きでそれぞれ巻装されている。
【0003】
そして、それぞれのティース部に巻装されたコイルの端部は、ある程度の長さを持ってステータの軸方向一側に引き出されており、これらのコイル引き出し部は、ホルダ部に設けられた複数の段差部に沿うようにして配策されている。また、ホルダ部に配策されたそれぞれのコイル引き出し部は、ホルダ部の近傍に設けられた端子ホルダにより結線されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-187797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の特許文献1に記載されたモータ装置では、ホルダ部(コイルホルダ)に複数の鍔部が設けられ、これらの鍔部はステータから引き出されたコイル引き出し部における全ての屈曲部を、ステータの軸方向から覆っている。したがって、ステータから引き出されたコイル引き出し部を、それぞれ折り曲げてホルダ部の段差部に沿うように配策する際に、ホルダ部の鍔部が邪魔となり、モータ装置の組み立て作業性を低下させる虞があった。
【0006】
本発明の目的は、コイル引き出し部のコイルホルダに対する配策作業性を向上させることができるモータ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様では、複数のコイルが巻装されたステータと、前記ステータに対して回転するロータと、を有するモータ装置であって、複数の前記コイルに、前記ステータの軸方向一側に引き出されたコイル引き出し部がそれぞれ設けられ、前記コイル引き出し部は、前記ステータの軸方向に延びる軸方向延在部と、前記ステータの周方向に延びる周方向延在部と、前記軸方向延在部と前記周方向延在部との間に設けられる屈曲部と、を備えており、前記ステータの軸方向一側に、複数の前記コイル引き出し部をそれぞれ保持するコイルホルダが設けられ、前記コイルホルダは、前記コイルホルダの周方向に並んで設けられ、複数の前記軸方向延在部をそれぞれ支持する複数の第1支持部と、前記コイルホルダの軸方向に並んで設けられ、複数の前記周方向延在部をそれぞれ支持する複数の第2支持部と、前記コイルホルダの周方向に延びて設けられ、複数の前記周方向延在部を前記ステータの軸方向一側から部分的に覆う被覆壁と、を有しており、前記ステータの軸方向一側から前記コイルホルダを見たときに、複数の前記屈曲部のうちの一部が目視可能であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、コイルホルダに、複数の周方向延在部をステータの軸方向一側から部分的に覆う被覆壁を設け、ステータの軸方向一側からコイルホルダを見たときに、複数の屈曲部のうちの一部が目視可能となっている。したがって、複数の屈曲部のうちの一部を容易に形成することができ、ひいては従前に比して、コイル引き出し部のコイルホルダに対する配策作業性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】ブラシレスモータをカバー部材側から見た斜視図である。
図2】カバー部材の図示を省略した図である。
図3図2のA-A線に沿う断面図である。
図4】ステータおよびコイルホルダを示す分解斜視図である。
図5】(a),(b)は、U相,V相,W相引き出し部およびコイルホルダを示す斜視図である。
図6】(a),(b)は、図5(a),(b)からコイルホルダを省略したU相,V相,W相引き出し部の斜視図である。
図7】(a),(b),(c)は、U相,V相,W相引き出し部をステータの軸方向一側から見た図である。
図8】(a),(b)は、コイルホルダを単体で示す斜視図である。
図9】(a),(b)は、U相引き出し部(径方向一側の一部)のコイルホルダへの配策手順を説明する図である。
図10】(a),(b)は、U相引き出し部(径方向他側の一部)のコイルホルダへの配策手順を説明する図である。
図11】(a),(b)は、V相引き出し部(径方向一側の一部)のコイルホルダへの配策手順を説明する図である。
図12】(a),(b)は、W相引き出し部(径方向一側の一部)のコイルホルダへの配策手順を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0011】
図1はブラシレスモータをカバー部材側から見た斜視図を、図2はカバー部材の図示を省略した図を、図3図2のA-A線に沿う断面図を、図4はステータおよびコイルホルダを示す分解斜視図を、図5(a),(b)はU相,V相,W相引き出し部およびコイルホルダを示す斜視図を、図6(a),(b)は図5(a),(b)からコイルホルダを省略したU相,V相,W相引き出し部の斜視図を、図7(a),(b),(c)はU相,V相,W相引き出し部をステータの軸方向一側から見た図を、図8(a),(b)はコイルホルダを単体で示す斜視図をそれぞれ示している。
【0012】
図1ないし図3に示されるブラシレスモータ(モータ装置)10は、電動の自動二輪車等の駆動源に用いられるモータ装置である。具体的には、ブラシレスモータ10は、車体フレームに取り付けられ、チェーンやベルトを介して駆動輪の車軸を駆動する。なお、ブラシレスモータ10を、駆動輪の車軸に直接取り付けることもできる。
【0013】
ブラシレスモータ10は、当該ブラシレスモータ10の外郭を形成するハウジング20を備えている。ハウジング20は、略有底筒状に形成されたアルミニウム製のハウジング本体21と、略円板状に形成されたアルミニウム製のカバー部材22とを備えている。
【0014】
図3に示されるように、ハウジング20の内部には、モータユニット30が収容されている。モータユニット30は、ハウジング本体21の内側に固定されたステータ40と、ステータ40の径方向内側において微小隙間(エアギャップ)を介して回転されるロータ50と、を備えている。
【0015】
図4に示されるように、ステータ40は、複数の分割コア60を環状となるように連結することで略筒状に形成されている。ここで、本実施の形態におけるステータ40は、合計12個の分割コア60を連結して略筒状に形成されている。そして、分割コア60を形成するティース61(図3参照)には、インシュレータ62を介して、U相,V相およびW相に対応したコイル70が、それぞれ集中巻きにより巻装されている。
【0016】
そして、複数の分割コア60は、ステータ40の周方向において、U相,V相,W相,U相,V相,W相・・・と交互に並んで配置され、さらには複数の分割コア60に集中巻きにより巻装されたU相,V相およびW相のコイル70は、それぞれ「デルタ結線」されている。これにより、「スター結線」で必要となる中性点を形成するコイルあるいは導電部材が不要となり、ブラシレスモータ10の構造が簡素化可能となっている。ただし、ブラシレスモータ10に必要とされる仕様に応じて、中性点を形成するコイルあるいは導電部材を追加で設け、U相,V相およびW相のコイル70をそれぞれ「スター結線」することもできる。
【0017】
なお、コイル70は、例えば、アルミニウムにより形成され、その長手方向と交差する方向の断面形状が矩形(略長方形)の所謂「平角線」によって形成されている。これにより、コイル70をステータ40に整然と隙間なく巻装することができ、ひいては占積率の向上を実現している。また、コイル70の表面には、絶縁のためにエナメル塗料(図示せず)が塗布されている。
【0018】
そして、ステータ40の軸方向一側には、U相のコイル70を形成するU相引き出し部70u1~70u8,V相のコイル70を形成するV相引き出し部70v1~70v8およびW相のコイル70を形成するW相引き出し部70w1~70w8がそれぞれ引き出されている。具体的には、それぞれの引き出し部70u1~70u8,70v1~70v8,70w1~70w8(合計24本)は、図4に示されるように、ステータ40の軸方向一側に延ばされている。ここで、U相,V相,W相引き出し部70u1~70u8,70v1~70v8,70w1~70w8が、本発明におけるコイル引き出し部に相当する。
【0019】
さらに、ステータ40の軸方向一側(図3および図4の上側)には、環状のコイルホルダ80が設けられている。コイルホルダ80には、図5(a),(b)に示されるように、それぞれの引き出し部70u1~70u8,70v1~70v8,70w1~70w8がそれぞれ配策されている。つまり、コイルホルダ80は、U相,V相,W相引き出し部70u1~70u8,70v1~70v8,70w1~70w8をそれぞれ保持している。そして、これらの引き出し部70u1~70u8,70v1~70v8,70w1~70w8には、U相用電源ターミナルTu,V相用電源ターミナルTvおよびW相用電源ターミナルTw(図2参照)が、それぞれ電気的に接続されている。ここで、U相用,V相用,W相用電源ターミナルTu,Tv,Twが、本発明における電源端子に相当する。
【0020】
なお、U相,V相,W相引き出し部70u1~70u8,70v1~70v8,70w1~70w8およびコイルホルダ80の詳細構造については、後で詳述する。また、図5ないし図7および図9では、U相,V相,W相引き出し部70u1~70u8,70v1~70v8,70w1~70w8を分かり易くするために、それぞれ濃さの異なる網掛けを施している。
【0021】
図3に示されるように、ロータ50は、複数の鋼板(磁性体)を積層して略筒状に形成されたロータ本体51を備えている。ロータ本体51の回転中心には、回転軸52が固定され、回転軸52は、ロータ本体51とともに回転される。ロータ本体51の内部には、略板状に形成された複数のマグネット53が埋設されている。そして、複数のマグネット53は、ロータ本体51の周方向に対して、N極およびS極が交互に現れるように配置されている。
【0022】
ただし、上述のようにロータ本体51の内部に複数のマグネット53を埋め込んだ所謂「IPM(Interior Permanent Magnet)構造」に限らず、ロータ本体51の表面にマグネット(図示せず)を装着した所謂「SPM(Surface Permanent Magnet)構造」を採用することもできる。
【0023】
回転軸52の軸方向一側には、略円板状に形成されたセンサマグネット54が固定されている。センサマグネット54は、ロータ50(回転軸52)の回転状態を検出するために用いられる。センサマグネット54は、ロータ50の軸方向において、センサ基板55に設けられた回転センサ56と対向している。
【0024】
また、回転軸52の軸方向一側は、ベアリングホルダ57に装着された第1ボールベアリングBB1により回転自在に支持されている。これに対し、回転軸52の軸方向他側(図3の下側)は、ハウジング本体21に装着された第2ボールベアリングBB2により回転自在に支持されている。
【0025】
ハウジング本体21は、略円板状に形成された底壁部21aを備えている。底壁部21aの中心部分には、略筒状に形成された軸受装着部21bおよびシール装着部21cが一体に設けられている。軸受装着部21bの径方向内側には第2ボールベアリングBB2の外輪が装着され、シール装着部21cの径方向内側にはゴム製のリップシールLSが装着されている。なお、第2ボールベアリングBB2の内輪は、回転軸52の軸方向他側に装着され、リップシールLSは、回転軸52の外周に接触されている。これにより、ハウジング20の内部への雨水や埃等の進入が阻止される。
【0026】
ハウジング本体21は、略筒状に形成された筒状壁部21dを備えている。筒状壁部21dの軸方向他側は、底壁部21aの径方向外側に一体に設けられている。そして、筒状壁部21dの径方向内側には、ステータ40が圧入されて接着剤等により強固に固定されている。また、筒状壁部21dの径方向外側には、ブラシレスモータ10の駆動により発生した熱を、ハウジング本体21の外部に放熱する複数の冷却フィン21eが一体に設けられている。
【0027】
さらに、ハウジング本体21は、多角形壁部23を備えている。多角形壁部23は、筒状壁部21dの軸方向一側(図3の上側)に、筒状壁部21dと同軸となるように一体に設けられている。図2に示されるように、多角形壁部23は、ハウジング本体21を軸方向一側から見ると、略正六角形となっている。多角形壁部23は、第1辺部23a,第2辺部23b,第3辺部23c,第4辺部23d,第5辺部23eおよび第6辺部23fを備えている。そして、多角形壁部23の開口部分からハウジング本体21の内部に、ステータ40やロータ50が組み付けられる。
【0028】
第1辺部23aには、駆動用コネクタ24が装着され、駆動用コネクタ24は、ハウジング20の軸方向一側に設けられている。駆動用コネクタ24は、プラスチック等の樹脂材料からなるコネクタブロック24aを有し、コネクタブロック24aは、固定ねじ等(図示せず)により、第1辺部23aに固定されている。
【0029】
コネクタブロック24aは、ハウジング20の外部に配置され、具体的には多角形壁部23の径方向外側に突出されている。コネクタブロック24aの内部には、U相用電源ターミナルTu,V相用電源ターミナルTvおよびW相用電源ターミナルTwが露出して設けられている。
【0030】
U相用電源ターミナルTuには、一端側がコントローラCUに電気的に接続されたU相用電線Euの他端側が電気的に接続されている。V相用電源ターミナルTvには、一端側がコントローラCUに電気的に接続されたV相用電線Evの他端側が電気的に接続されている。W相用電源ターミナルTwには、一端側がコントローラCUに電気的に接続されたW相用電線Ewの他端側が電気的に接続されている。これにより、ステータ40に巻装され、かつU相,V相およびW相に対応したそれぞれのコイル70に対して、駆動電流が供給される。
【0031】
図2に示されるように、多角形壁部23には、ハウジング20の径方向外側に突出された凸部25が一体に設けられている。具体的には、凸部25は、第1辺部23aの隣に設けられた第2辺部23bからハウジング20の径方向外側に突出されている。凸部25は、略三角形の底壁25aを備えている。また、凸部25は、第1側壁25bおよび第2側壁25cを有している。このように、凸部25は、底壁25a,第1側壁25b,第2側壁25cおよび第2辺部23bにより囲まれて形成され、その内側には、接続用スペースSPが形成されている。なお、凸部25の開口部分もカバー部材22により閉塞される。
【0032】
接続用スペースSPは、基板用ワイヤーハーネス42のコントローラ側コネクタ部43側が入り込む部分となっている。接続用スペースSPは、コントローラ側コネクタ部43を基板用コネクタ26に接続する際に、コントローラ側コネクタ部43を基板用コネクタ26に案内する機能を有する。よって、ブラシレスモータ10の組み立ての際に、コントローラ側コネクタ部43を基板用コネクタ26に容易に接続可能となっている。
【0033】
図1および図3に示されるように、カバー部材22は、多角形壁部23の開口部分を閉塞するメインカバー部22aと、凸部25の開口部分を閉塞するサブカバー部22bとを備えている。メインカバー部22aおよびサブカバー部22bは一体となっており、メインカバー部22aは略円板状に形成され、サブカバー部22bは略三角形の板状に形成されている。カバー部材22は、その周方向に分散配置された合計7個の固定ボルトBTにより、ハウジング本体21に強固に固定されている。
【0034】
凸部25の第1側壁25bには、ハウジング20の径方向外側に突出するようにして、コネクタ固定部25dが一体に設けられている。コネクタ固定部25dには、基板用コネクタ26が装着されている。基板用コネクタ26は、プラスチック等の樹脂材料からなり、略平板状に形成された固定板部26aを備えている。固定板部26aは、一対の第1ねじS1によりコネクタ固定部25dに固定されている。
【0035】
また、基板用コネクタ26は、略箱形状に形成された内側接続部(図示せず)および外側接続部26bを備えている。内側接続部は、ハウジング20の内部に配置され、外側接続部26bは、ハウジング20の外部に配置されている。
【0036】
基板用コネクタ26の内側接続部には、凸部25の内側の接続用スペースSPにおいて、基板用ワイヤーハーネス42のコントローラ側コネクタ部43が接続される。基板用コネクタ26の外側接続部26bには、一端側がコントローラCUに電気的に接続された基板用電線SE(図2参照)の他端側が接続される。
【0037】
図1および図2に示されるように、ハウジング20の外部に配置されたコネクタブロック24aおよび外側接続部26bは、それぞれ同じ方向(図2の上方)を向いている。また、駆動用コネクタ24および基板用コネクタ26は、互いに横一列で並んで近接配置されている。よって、U相用,V相用,W相用電線Eu,Ev,Ewおよび基板用電線SEを、駆動用コネクタ24および基板用コネクタ26に対して、それぞれ容易に接続可能となっている。
【0038】
図2および図3に示されるように、ハウジング本体21の軸方向一側(図3の上側)には、略正六角形の板状に形成されたアルミニウム製のベアリングホルダ57が設けられている。ベアリングホルダ57は、多角形壁部23の径方向内側に配置され、第1ボールベアリングBB1を保持している。具体的には、第1ボールベアリングBB1は、ベアリングホルダ57の中央部分に形成された保持筒57aに装着されている。ベアリングホルダ57は、ハウジング本体21の軸方向一側に、合計6つの第1固定ボルトB1により強固に固定されている。
【0039】
また、ベアリングホルダ57のロータ50側とは反対側で、かつ中央部分には、第1ボールベアリングBB1が保持筒57aから脱落するのを防止する環状の支持プレート57bが設けられている。支持プレート57bは、第1ボールベアリングBB1の外輪を押さえている。これにより、第1ボールベアリングBB1のスムーズな動作が確保される。支持プレート57bは、合計4つの第2固定ボルトB2(図2では3つのみ示す)により、ベアリングホルダ57に固定されている。
【0040】
さらに、ベアリングホルダ57のロータ50側とは反対側で、かつ第1ボールベアリングBB1の周囲には、合計4つの支持柱57cが設けられている。これらの支持柱57cの先端部分には、センサ基板55が固定されている。具体的には、対角線上に配置された一対の支持柱57cに、一対の第2ねじS2によりセンサ基板55が固定されている。
【0041】
ここで、センサ基板55は、略正方形に形成されたプリント基板(PCB)となっている。センサ基板55の中央部分には、磁気抵抗素子からなる回転センサ56が設けられている。回転センサ56は、回転軸52の軸方向一側に固定されたセンサマグネット54に対して、微小隙間を介して対向している(図3参照)。これにより、回転センサ56は、回転軸52の回転状態(回転方向や回転速度等)を検出する。
【0042】
また、センサ基板55には、基板用ワイヤーハーネス42の基板側コネクタ部44が接続される基板側接続部58が設けられている。基板側接続部58は、図2に示されるように、凸部25の接続用スペースSPに向けられている。これにより、基板側コネクタ部44を基板側接続部58に容易に接続可能となっている。
【0043】
ここで、基板用ワイヤーハーネス42は、センサ基板55と基板用コネクタ26との間に設けられ、基板用ワイヤーハーネス42は、ハウジング20の内部において、コントローラCU(図2参照)とセンサ基板55とを電気的に接続する機能を有する。よって、回転センサ56の検出信号は、基板用ワイヤーハーネス42および基板用電線SEを介して、コントローラCUに送出される。
【0044】
U相,V相,W相に対応したコイル70をそれぞれ形成するU相,V相,W相引き出し部70u1~70u8,70v1~70v8,70w1~70w8は、図5(a),(b)に示されるように、コイルホルダ80にそれぞれ配策されている。なお、それぞれの引き出し部70u1~70u8,70v1~70v8,70w1~70w8(合計24本)は、異なる相同士が互いに短絡しないように、コイルホルダ80に配策されている。
【0045】
以下、U相,V相,W相引き出し部70u1~70u8,70v1~70v8,70w1~70w8およびコイルホルダ80の構造について、図面を用いて詳細に説明する。
【0046】
図6(a),(b)および図7(a)に示されるように、U相引き出し部70u1~70u8(合計8本)は、ステータ40(図4参照)の軸方向に延びる軸方向延在部Auと、ステータ40の周方向に延びる周方向延在部Cuと、軸方向延在部Auと周方向延在部Cuとの間に設けられる屈曲部Puと、をそれぞれ備えている。また、周方向延在部Cuの長手方向における屈曲部Pu側とは反対側には、ステータ40の径方向に突出され、かつU相用電源ターミナルTu(図2参照)が電気的に接続される端子接続部Nuが設けられている。端子接続部Nuは、U相引き出し部70u1~70u8の合計8本を接着剤等で纏めることで、図7(a)に示されるように、ステータ40の軸方向視で略長方形に形成されている。ただし、端子接続部Nuを纏める方法は、接着剤等に限らず、熱カシメ(溶着)等であっても良い。
【0047】
図7(a)に示されるように、U相引き出し部70u1~70u8をステータ40の軸方向一側から見たときに、これらのU相引き出し部70u1~70u8は、ステータ40の軸心Cnを通り、かつステータ40の周方向における端子接続部Nuの中央部を通る第1基準線(基準線)BP1を中心に、ステータ40の径方向一側(図中左側)および径方向他側(図中右側)で、鏡像対称形状となっている。
【0048】
具体的には、U相引き出し部70u1と70u7とが第1基準線BP1を中心に同じ形状に形成され、U相引き出し部70u2と70u8とが第1基準線BP1を中心に同じ形状に形成され、U相引き出し部70u3と70u5とが第1基準線BP1を中心に同じ形状に形成され、U相引き出し部70u4と70u6とが第1基準線BP1を中心に同じ形状に形成されている。
【0049】
これにより、U相引き出し部70u1~70u8の長さ寸法を、それぞれ対で可能な限り揃えることができ、ひいては、それぞれのU相用のコイル70に流れる電流の大きさのバランスを良好にすることが可能となり、回転ブレの少ないブラシレスモータ10を実現できる。なお、U相引き出し部70u1~70u8の内径寸法d1は、コイルホルダ80に設けられたU相用周溝83(図5(a)および図8(a)参照)の外径寸法と略同じ寸法となっている。
【0050】
図6(a),(b)および図7(b)に示されるように、V相引き出し部70v1~70v8(合計8本)においても、U相引き出し部70u1~70u8と同様に、ステータ40の軸方向に延びる軸方向延在部Avと、ステータ40の周方向に延びる周方向延在部Cvと、軸方向延在部Avと周方向延在部Cvとの間に設けられる屈曲部Pvと、を備えている。さらには、周方向延在部Cvの長手方向における屈曲部Pv側とは反対側に、ステータ40の径方向に突出された端子接続部Nvが設けられている。なお、V相引き出し部70v1~70v8の端子接続部Nvには、V相用電源ターミナルTv(図2参照)が電気的に接続される。
【0051】
図7(b)に示されるように、V相引き出し部70v1~70v8をステータ40の軸方向一側から見たときに、これらのV相引き出し部70v1~70v8は、ステータ40の軸心Cnを通り、かつステータ40の周方向における端子接続部Nvの中央部を通る第2基準線(基準線)BP2を中心に、ステータ40の径方向一側および径方向他側で、鏡像対称形状となっている。なお、第2基準線BP2は、第1基準線BP1に対して30度ずれている。
【0052】
そして、V相引き出し部70v1と70v7とが第2基準線BP2を中心に同じ形状に形成され、V相引き出し部70v2と70v8とが第2基準線BP2を中心に同じ形状に形成され、V相引き出し部70v3と70v5とが第2基準線BP2を中心に同じ形状に形成され、V相引き出し部70v4と70v6とが第2基準線BP2を中心に同じ形状に形成されている。
【0053】
これにより、V相引き出し部70v1~70v8の長さ寸法を、それぞれ対で可能な限り揃えることができ、ひいては、それぞれのV相用のコイル70に流れる電流の大きさのバランスを良好にすることが可能となり、回転ブレの少ないブラシレスモータ10を実現できる。なお、V相引き出し部70v1~70v8の内径寸法d2は、コイルホルダ80に設けられたV相用周溝84(図5(a)および図8(a)参照)の外径寸法と略同じ寸法となっている。また、内径寸法d2は内径寸法d1(図7(a)参照)よりも大きくなっている(d2>d1)。
【0054】
図6(a),(b)および図7(c)に示されるように、W相引き出し部70w1~70w8(合計8本)においても、U相引き出し部70u1~70u8と同様に、ステータ40の軸方向に延びる軸方向延在部Awと、ステータ40の周方向に延びる周方向延在部Cwと、軸方向延在部Awと周方向延在部Cwとの間に設けられる屈曲部Pwと、を備えている。さらには、周方向延在部Cwの長手方向における屈曲部Pw側とは反対側に、ステータ40の径方向に突出された端子接続部Nwが設けられている。なお、W相引き出し部70w1~70w8の端子接続部Nwには、W相用電源ターミナルTw(図2参照)が電気的に接続される。
【0055】
図7(c)に示されるように、W相引き出し部70w1~70w8をステータ40の軸方向一側から見たときに、これらのW相引き出し部70w1~70w8は、ステータ40の軸心Cnを通り、かつステータ40の周方向における端子接続部Nwの中央部を通る第3基準線(基準線)BP3を中心に、ステータ40の径方向一側および径方向他側で、鏡像対称形状となっている。なお、第3基準線BP3は、第1基準線BP1に対して60度ずれている。
【0056】
そして、W相引き出し部70w1と70w7とが第3基準線BP3を中心に同じ形状に形成され、W相引き出し部70w2と70w8とが第3基準線BP3を中心に同じ形状に形成され、W相引き出し部70w3と70w5とが第3基準線BP3を中心に同じ形状に形成され、W相引き出し部70w4と70w6とが第3基準線BP3を中心に同じ形状に形成されている。
【0057】
これにより、W相引き出し部70w1~70w8の長さ寸法を、それぞれ対で可能な限り揃えることができ、ひいては、それぞれのW相用のコイル70に流れる電流の大きさのバランスを良好にすることが可能となり、回転ブレの少ないブラシレスモータ10を実現できる。なお、W相引き出し部70w1~70w8の内径寸法d3は、コイルホルダ80に設けられたW相用周溝85(図5(a)および図8(a)参照)の外径寸法と略同じ寸法となっている。また、内径寸法d3は内径寸法d1およびd2(図7(a),(b)参照)よりも大きくなっている(d3>d2>d1)。
【0058】
コイルホルダ80は、図4図5および図8に示されるように、プラスチック等の樹脂材料(絶縁材料)により略環状に形成されている。コイルホルダ80は、略筒状に形成された筒状本体部81を備えており、当該筒状本体部81の軸方向他側(図中下側)には、複数の係合凸部81aが一体に設けられている。これらの係合凸部81aは、筒状本体部81の周方向に等間隔で配置され、ステータ40に設けられた複数の係合凹部45(図4参照)にそれぞれ係合するようになっている。これにより、コイルホルダ80は、ステータ40の軸方向に位置決めされ、かつステータ40の周方向に相対回転不能に固定される。
【0059】
また、筒状本体部81の径方向外側には、複数の第1凹部82が設けられている。これらの第1凹部82は、コイルホルダ80の径方向内側に窪むようにして設けられ、かつコイルホルダ80の周方向に並んで設けられている。第1凹部82は、本発明における第1支持部に相当し、それぞれの第1凹部82は、引き出し部70u1~70u8,70v1~70v8,70w1~70w8における軸方向延在部Au,Av,Aw(図6(a)参照)を、それぞれ支持する(図5(a)参照)。このように、それぞれの軸方向延在部Au,Av,Awを、それぞれ個別に第1凹部82に支持させることで、軸方向延在部Au,Av,Awを、それぞれコイルホルダ80の周方向に並ぶように整然と配策可能となっている。
【0060】
さらに、それぞれの第1凹部82には、引き出し部70u1~70u8,70v1~70v8,70w1~70w8をコイルホルダ80に配策する際に、屈曲部Pu,Pv,Pw(図6(a),(b)参照)を形成する円弧状角部82aが設けられている。そして、引き出し部70u1~70u8,70v1~70v8,70w1~70w8を、それぞれの円弧状角部82aに沿わせて折り曲げることで、それぞれの屈曲部Pu,Pv,Pwが形成される。
【0061】
このように、屈曲部Pu,Pv,Pwを円弧状に折り曲げることで、引き出し部70u1~70u8,70v1~70v8,70w1~70w8に無理な力が掛かることが抑制される。よって、引き出し部70u1~70u8,70v1~70v8,70w1~70w8の表面に塗布されたエナメル塗料が剥がれたりすること等が未然に防げる。なお、それぞれの引き出し部70u1~70u8,70v1~70v8,70w1~70w8のコイルホルダ80への配策手順については、後で詳述する。
【0062】
また、筒状本体部81の径方向外側には、U相用周溝83,V相用周溝84およびW相用周溝85がそれぞれ設けられている。これらのU相用周溝83,V相用周溝84およびW相用周溝85は、本発明における第2支持部に相当し、コイルホルダ80の軸方向に並んで設けられている。それぞれのU相用周溝83,V相用周溝84およびW相用周溝85は、引き出し部70u1~70u8,70v1~70v8,70w1~70w8における周方向延在部Cu,Cv,Cw(図6(a),(b)参照)を、それぞれ支持する(図5(a)参照)。
【0063】
このように、それぞれの周方向延在部Cu,Cv,Cwを、それぞれ個別にU相用周溝83,V相用周溝84およびW相用周溝85に支持させることで、周方向延在部Cu,Cv,Cwを、それぞれ異相間で互いに短絡させること無く、コイルホルダ80に対して整然と配策可能となっている。
【0064】
U相用周溝83,V相用周溝84およびW相用周溝85は、筒状本体部81の周方向に延び、かつ全周に亘って設けられている。U相用周溝83は、筒状本体部81の軸方向一側(図中上側)に配置され、V相用周溝84は、筒状本体部81の軸方向中央部に配置され、W相用周溝85は、筒状本体部81の軸方向他側(図中下側)に配置されている。また、U相用周溝83は、コイルホルダ80の径方向において最も内側に配置され、V相用周溝84は、コイルホルダ80の径方向において中央部に配置され、W相用周溝85は、コイルホルダ80の径方向において最も外側に配置されている(図4図5および図8参照)。
【0065】
このように、U相用周溝83,V相用周溝84およびW相用周溝85は、それぞれコイルホルダ80(筒状本体部81)の軸方向および径方向にずれて設けられている。これにより、周方向延在部Cu,Cv,Cwが、互いに短絡することが確実に抑えられる。
【0066】
また、U相用周溝83の軸方向一側(図8(a)の上側)には、第1庇部83aが設けられている。第1庇部83aは、コイルホルダ80の周方向に延びて設けられ、周方向延在部Cu(図6(a),(b)参照)を、ステータ40(図4参照)の軸方向一側から部分的に覆っている。
【0067】
具体的には、第1庇部83aは、図5(b)に示されるように、U相引き出し部70u1~70u8の端子接続部Nuの一部を、ステータ40の軸方向一側から覆っている。その一方で、第1庇部83aは、U相引き出し部70u1,70u2,70u7,70u8における屈曲部Pu(合計4箇所)の部分には設けられていない。
【0068】
これにより、図5(b)に示されるように、ステータ40の軸方向一側からコイルホルダ80を見たときに、複数の屈曲部PuのうちのU相引き出し部70u1,70u2,70u7,70u8における屈曲部Pu(合計4箇所)が、目視可能となっている。
【0069】
さらに、V相用周溝84の軸方向一側(図8(a)の上側)には、第2庇部84aが設けられている。第2庇部84aは、コイルホルダ80の周方向に延びて設けられ、周方向延在部Cv(図6(a),(b)参照)を、ステータ40(図4参照)の軸方向一側から部分的に覆っている。
【0070】
具体的には、第2庇部84aは、図5(b)に示されるように、V相引き出し部70v1~70v8の端子接続部Nvの一部を、ステータ40の軸方向一側から覆っている。その一方で、第2庇部84aは、V相引き出し部70v1,70v2における屈曲部Pv(合計2箇所)の部分には設けられていない。
【0071】
これにより、図5(b)に示されるように、ステータ40の軸方向一側からコイルホルダ80を見たときに、複数の屈曲部PvのうちのV相引き出し部70v1,70v2における屈曲部Pv(合計2箇所)が、目視可能となっている。
【0072】
また、W相用周溝85の軸方向一側(図8(a)の上側)には、第3庇部85aが設けられている。第3庇部85aは、コイルホルダ80の周方向に延びて設けられ、周方向延在部Cw(図6(a),(b)参照)を、ステータ40(図4参照)の軸方向一側から部分的に覆っている。
【0073】
具体的には、第3庇部85aは、図5(b)に示されるように、W相引き出し部70w1~70w8の端子接続部Nwの一部を、ステータ40の軸方向一側から覆っている。その一方で、第3庇部85aは、W相引き出し部70w1,70w2における屈曲部Pw(合計2箇所)の部分には設けられていない。
【0074】
これにより、図5(b)に示されるように、ステータ40の軸方向一側からコイルホルダ80を見たときに、複数の屈曲部PwのうちのW相引き出し部70w1,70w2における屈曲部Pw(合計2箇所)が、目視可能となっている。
【0075】
ここで、第1,第2,第3庇部83a,84a,85aが本発明における被覆壁に相当する。特に、端子接続部Nu,Nv,Nwの部分にそれぞれ第1,第2,第3庇部83a,84a,85aを設けることで、端子接続部Nu,Nv,Nw同士が短絡することを確実に防止している。これにより、それぞれの端子接続部Nu,Nv,Nwに対するU相用,V相用,W相用電源ターミナルTu,Tv,Twの接続作業を、異相間で互いに短絡させること無く確実に行うことが可能となっている。
【0076】
なお、異相間での短絡を確実に防止するためには、第1,第2,第3庇部83a,84a,85aをそれぞれコイルホルダ80の全周に延ばせば良い。しかしながらこの場合には、全ての引き出し部70u1~70u8,70v1~70v8,70w1~70w8において、コイルホルダ80への配策作業(屈曲部Pu,Pv,Pwを形成する作業等)が困難になってしまう。そこで、本実施の形態においては、上述のように合計8箇所の屈曲部Pu(4箇所),Pv(2箇所),Pw(2箇所)を、ステータ40の軸方向一側からコイルホルダ80を見たときに目視可能としている。
【0077】
また、図5(b)に示されるように、それぞれの端子接続部Nu,Nv,Nwのうちの端子接続部Nuが、第1庇部83aにより最も多くの部分が隠されている。すなわち、ステータ40の軸方向視において、端子接続部Nuの露出が最も少なくなっている。これにより、端子接続部Nuが、その上方(図3中上側)にあるベアリングホルダ57に短絡(接触)することが確実に防止される。
【0078】
次に、以上のように形成されたブラシレスモータ10の組み立て手順、特に、U相,V相,W相引き出し部70u1~70u8,70v1~70v8,70w1~70w8の一部のコイルホルダ80への配策手順について、図面を用いて詳細に説明する。
【0079】
図9(a),(b)はU相引き出し部(径方向一側の一部)のコイルホルダへの配策手順を説明する図を、図10(a),(b)はU相引き出し部(径方向他側の一部)のコイルホルダへの配策手順を説明する図を、図11(a),(b)はV相引き出し部(径方向一側の一部)のコイルホルダへの配策手順を説明する図を、図12(a),(b)はW相引き出し部(径方向一側の一部)のコイルホルダへの配策手順を説明する図をそれぞれ示している。
【0080】
まず、図9(a),(b)に示されるように、ステータ40の径方向一側(図5(b)の左側)に設けられるU相引き出し部70u1,70u2(U相引き出し部の一部)のコイルホルダ80への配策手順について説明する。
【0081】
図9(a)の矢印M1に示されるように、ステータ40の軸方向に引き出されたU相引き出し部70u1(図4参照)を、所定の第1凹部82に通す。具体的には、第1庇部83aの長手方向一側(図5(b)の左側)の近傍の第1凹部82に、U相引き出し部70u1を通す。
【0082】
次いで、図9(b)の矢印M2に示されるように、所定の第1凹部82に通されたU相引き出し部70u1を、U相用周溝83に向けて折り曲げる。このとき、U相引き出し部70u1は、ステータ40の軸方向一側から目視可能となっており、第1庇部83aに邪魔されることが無い。よって、U相引き出し部70u1は、円弧状角部82aに沿わせて容易に折り曲げることが可能となっている。そして、U相引き出し部70u1の先端側(端子接続部Nu側)を、U相用周溝83に沿わせるように配策する。
【0083】
これにより、U相引き出し部70u1のU相用周溝83への配策が完了し、U相用周溝83に沿うようにして周方向延在部Cuが形成され、円弧状角部82aに対応した部分に屈曲部Puが形成され、さらには、第1凹部82に沿うようにして軸方向延在部Auが形成される。
【0084】
次に、図9(a)の矢印M3に示されるように、ステータ40の軸方向に引き出されたU相引き出し部70u2を、所定の第1凹部82に通す。具体的には、U相引き出し部70u1が通る第1凹部82に対して図中右隣りの第1凹部82に、U相引き出し部70u2を通す。
【0085】
そして、図9(b)の矢印M4に示されるように、所定の第1凹部82に通されたU相引き出し部70u2を、U相用周溝83に向けて折り曲げる。このとき、U相引き出し部70u2においても、ステータ40の軸方向一側から目視可能となっており、第1庇部83aに邪魔されることが無い。よって、U相引き出し部70u2においても、対応する円弧状角部82aに沿わせて容易に折り曲げることが可能となっている。そして、U相引き出し部70u2の先端側(端子接続部Nu側)を、U相用周溝83に沿わせるように配策する。このとき、ステータ40の径方向において、U相引き出し部70u1にU相引き出し部70u2を重ねるようにする(図7(a)参照)。
【0086】
これにより、U相引き出し部70u2のU相用周溝83への配策が完了し、U相用周溝83に沿うようにして周方向延在部Cuが形成され、円弧状角部82aに対応した部分に屈曲部Puが形成され、さらには、第1凹部82に沿うようにして軸方向延在部Auが形成される。
【0087】
次に、図10(a),(b)に示されるように、ステータ40の径方向他側(図5(b)の右側)に設けられるU相引き出し部70u7,70u8(U相引き出し部の一部)のコイルホルダ80への配策手順について説明する。
【0088】
図10(a)の矢印M5に示されるように、ステータ40の軸方向に引き出されたU相引き出し部70u7(図4参照)を、所定の第1凹部82に通す。具体的には、第1庇部83aの長手方向他側(図5(b)の右側)の近傍の第1凹部82に、U相引き出し部70u7を通す。
【0089】
次いで、図10(b)の矢印M6に示されるように、所定の第1凹部82に通されたU相引き出し部70u7を、U相用周溝83に向けて折り曲げる。このとき、U相引き出し部70u7は、ステータ40の軸方向一側から目視可能となっており、第1庇部83aに邪魔されることが無い。よって、U相引き出し部70u7は、円弧状角部82aに沿わせて容易に折り曲げることが可能となっている。そして、U相引き出し部70u7の先端側(端子接続部Nu側)を、U相用周溝83に沿わせるように配策する。
【0090】
これにより、U相引き出し部70u7のU相用周溝83への配策が完了し、U相用周溝83に沿うようにして周方向延在部Cuが形成され、円弧状角部82aに対応した部分に屈曲部Puが形成され、さらには、第1凹部82に沿うようにして軸方向延在部Auが形成される。
【0091】
次に、図10(a)の矢印M7に示されるように、ステータ40の軸方向に引き出されたU相引き出し部70u8を、所定の第1凹部82に通す。具体的には、U相引き出し部70u7が通る第1凹部82に対して図中左隣りの第1凹部82に、U相引き出し部70u8を通す。
【0092】
そして、図10(b)の矢印M8に示されるように、所定の第1凹部82に通されたU相引き出し部70u8を、U相用周溝83に向けて折り曲げる。このとき、U相引き出し部70u8においても、ステータ40の軸方向一側から目視可能となっており、第1庇部83aに邪魔されることが無い。よって、U相引き出し部70u8においても、対応する円弧状角部82aに沿わせて容易に折り曲げることが可能となっている。そして、U相引き出し部70u8の先端側(端子接続部Nu側)を、U相用周溝83に沿わせるように配策する。このとき、ステータ40の径方向において、U相引き出し部70u7にU相引き出し部70u8を重ねるようにする(図7(a)参照)。
【0093】
これにより、U相引き出し部70u8のU相用周溝83への配策が完了し、U相用周溝83に沿うようにして周方向延在部Cuが形成され、円弧状角部82aに対応した部分に屈曲部Puが形成され、さらには、第1凹部82に沿うようにして軸方向延在部Auが形成される。
【0094】
図11(a),(b)に示されるように、ステータ40の径方向一側(図5(b)の左側)に設けられるV相引き出し部70v1,70v2(V相引き出し部の一部)のコイルホルダ80への配策手順についても、図9(a),(b)に示されるU相引き出し部70u1,70u2のコイルホルダ80への配策手順と同様である。具体的には、V相引き出し部70v1は、図中矢印M9およびM10に示される手順で配策し、V相引き出し部70v2は、図中矢印M11およびM12に示される手順で配策する。
【0095】
なお、先行してU相用周溝83に配策されたU相引き出し部70u1,70u2に対して、後でV相用周溝84に配策されるV相引き出し部70v1,70v2は、ステータ40の径方向外側にずれて配置される。よって、V相引き出し部70v1,70v2をコイルホルダ80に配策する際に、これらのV相引き出し部70v1,70v2が、U相引き出し部70u1,70u2に対して干渉することが無い。よって、互いの干渉によりそれぞれが損傷すること等が確実に抑制される。
【0096】
さらに、図12(a),(b)に示されるように、ステータ40の径方向一側(図5(b)の左側)に設けられるW相引き出し部70w1,70w2(W相引き出し部の一部)のコイルホルダ80への配策手順についても、図9(a),(b)に示されるU相引き出し部70u1,70u2のコイルホルダ80への配策手順と同様である。具体的には、W相引き出し部70w1は、図中矢印M13およびM14に示される手順で配策し、W相引き出し部70w2は、図中矢印M15およびM16に示される手順で配策する。
【0097】
なお、先行してV相用周溝84に配策されたV相引き出し部70v1,70v2に対して、後でW相用周溝85に配策されるW相引き出し部70w1,70w2は、ステータ40の径方向外側にずれて配置される。よって、W相引き出し部70w1,70w2をコイルホルダ80に配策する際に、これらのW相引き出し部70w1,70w2が、V相引き出し部70v1,70v2に対して干渉することが無い。よって、互いの干渉によりそれぞれが損傷すること等が確実に抑制される。
【0098】
ここで、U相,V相,W相引き出し部70u1~70u8,70v1~70v8,70w1~70w8を、それぞれU相,V相,W相の順番でコイルホルダ80に配策しなくても良い。例えば、ステータ40の径方向一側に設けられるU相,V相,W相引き出し部70u1~70u4,70v1~70v4,70w1~70w4を先行して配策してから、ステータ40の径方向他側に設けられるU相,V相,W相引き出し部70u5~70u8,70v5~70v8,70w5~70w8を配策することもできる。
【0099】
以上詳述したように、本実施の形態によれば、U相用,V相用,W相用のコイル70が巻装されたステータ40と、ステータ40に対して回転するロータ50と、を有するブラシレスモータ10であって、U相用,V相用,W相用のコイル70に、ステータ40の軸方向一側に引き出されたU相,V相,W相引き出し部70u1~70u8,70v1~70v8,70w1~70w8がそれぞれ設けられ、U相,V相,W相引き出し部70u1~70u8,70v1~70v8,70w1~70w8は、ステータ40の軸方向に延びる軸方向延在部Au,Av,Awと、ステータ40の周方向に延びる周方向延在部Cu,Cv,Cwと、軸方向延在部Au,Av,Awと周方向延在部Cu,Cv,Cwとの間に設けられる屈曲部Pu,Pv,Pwと、を備えている。
【0100】
また、ステータ40の軸方向一側に、U相,V相,W相引き出し部70u1~70u8,70v1~70v8,70w1~70w8をそれぞれ保持するコイルホルダ80が設けられ、コイルホルダ80は、コイルホルダ80の周方向に並んで設けられ、軸方向延在部Au,Av,Awをそれぞれ支持する複数の第1凹部82と、コイルホルダ80の軸方向に並んで設けられ、周方向延在部Cu,Cv,Cwをそれぞれ支持するU相用,V相用,W相用周溝83,84,85と、コイルホルダ80の周方向に延びて設けられ、周方向延在部Cu,Cv,Cwをステータ40の軸方向一側から部分的に覆う第1,第2,第3庇部83a,84a,85aと、を有している。
【0101】
さらに、ステータ40の軸方向一側からコイルホルダ80を見たときに、複数の屈曲部Pu,Pv,Pwのうちの一部が目視可能となっている。
【0102】
これにより、目視可能な屈曲部Pu,Pv,Pwを形成するU相,V相,W相引き出し部70u1~70u8,70v1~70v8,70w1~70w8のうちの一部を、容易に折り曲げることが可能となり、U相,V相,W相引き出し部70u1~70u8,70v1~70v8,70w1~70w8のうちの一部のコイルホルダ80への配策作業性を向上させることができる。よって、ブラシレスモータ10の組み立て作業性を向上させることが可能となる。
【0103】
また、本実施の形態によれば、周方向延在部Cu,Cv,Cwの長手方向における屈曲部Pu,Pv,Pw側とは反対側に、ステータ40の径方向外側に突出され、かつU相用,V相用,W相用電源ターミナルTu,Tv,Twが電気的に接続される端子接続部Nu,Nv,Nwが設けられ、第1,第2,第3庇部83a,84a,85aが、ステータ40の軸方向一側から端子接続部Nu,Nv,Nwの一部を覆っている。
【0104】
これにより、端子接続部Nu,Nv,Nw同士が短絡することを確実に防止することができる。
【0105】
さらに、本実施の形態によれば、U相,V相,W相引き出し部70u1~70u8,70v1~70v8,70w1~70w8をステータ40の軸方向一側から見たときに、それぞれのU相,V相,W相引き出し部70u1~70u8,70v1~70v8,70w1~70w8は、ステータ40の軸心Cn(図7参照)を通りかつステータ40の周方向における端子接続部Nu,Nv,Nwの中央部を通る第1,第2,第3基準線BP1,BP2,BP3を中心に、鏡像対称形状となっている。
【0106】
これにより、U相,V相,W相引き出し部70u1~70u8,70v1~70v8,70w1~70w8の長さ寸法を、それぞれ対で可能な限り揃えることができ、ひいては、それぞれのU相用,V相用,W相用のコイル70に流れる電流の大きさのバランスを良好にすることが可能となり、回転ブレの少ないブラシレスモータ10を実現できる。
【0107】
また、本実施の形態によれば、ステータ40に巻装されたU相用,V相用,W相用のコイル70が、デルタ結線されているので、スター結線で必要となる中性点を形成するコイルあるいは導電部材が不要となり、ひいてはブラシレスモータ10の構造を簡素化して小型軽量化が図れ、かつブラシレスモータ10の組み立て作業性を向上させることが可能となる。
【0108】
さらに、本実施の形態によれば、コイル70が、その長手方向と交差する方向の断面形状が矩形の平角線により形成されているので、コイル70をステータ40に整然と隙間なく巻装することが可能となり、ひいては占積率を向上させることができる。よって、小型で有りながら大きな出力が可能なブラシレスモータ10を実現することが可能となる。
【0109】
本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。上述の実施の形態では、モータ装置としてのブラシレスモータ10を、電動の自動二輪車等の駆動源に適用したものを示したが、本発明はこれに限らない。例えば、電動の車椅子や電動の手押し車等の小型のモビリティの駆動源や、アームロボットの関節等の駆動源、さらにはパワーステアリング装置の駆動源にも適用することができる。
【0110】
また、上述の実施の形態では、コイル70を、アルミニウム製としたものを示したが、本発明はこれに限らず、例えば、より安価な黄銅等からなる汎用のコイルを採用することもできる。
【0111】
その他、上述の実施の形態における各構成要素の材質,形状,寸法,数,設置箇所等は、本発明を達成できるものであれば任意であり、上述の実施の形態に限定されない。
【符号の説明】
【0112】
10:ブラシレスモータ(モータ装置),20:ハウジング,21:ハウジング本体,21a:底壁部,21b:軸受装着部,21c:シール装着部,21d:筒状壁部,21e:冷却フィン,22:カバー部材,22a:メインカバー部,22b:サブカバー部,23:多角形壁部,23a:第1辺部,23b:第2辺部,23c:第3辺部,23d:第4辺部,23e:第5辺部,23f:第6辺部,24:駆動用コネクタ,24a:コネクタブロック,25:凸部,25a:底壁,25b:第1側壁,25c:第2側壁,25d:コネクタ固定部,26:基板用コネクタ,26a:固定板部,26b:外側接続部,30:モータユニット,40:ステータ,42:基板用ワイヤーハーネス,43:コントローラ側コネクタ部,44:基板側コネクタ部,45:係合凹部,50:ロータ,51:ロータ本体,52:回転軸,53:マグネット,54:センサマグネット,55:センサ基板,56:回転センサ,57:ベアリングホルダ,57a:保持筒,57b:支持プレート,57c:支持柱,58:基板側接続部,60:分割コア,61:ティース,62:インシュレータ,70:コイル,70u1~70u8:U相引き出し部(コイル引き出し部),70v1~70v8:V相引き出し部(コイル引き出し部),70w1~70w8:W相引き出し部(コイル引き出し部),80:コイルホルダ,81:筒状本体部,81a:係合凸部,82:第1凹部(第1支持部),82a:円弧状角部,83:U相用周溝(第2支持部),83a:第1庇部(被覆壁),84:V相用周溝(第2支持部),84a:第2庇部(被覆壁),85:W相用周溝(第2支持部),85a:第3庇部(被覆壁),Au~Aw:軸方向延在部,B1:第1固定ボルト,B2:第2固定ボルト,BB1:第1ボールベアリング,BB2:第2ボールベアリング,BP1:第1基準線(基準線),BP2:第2基準線(基準線),BP3:第3基準線(基準線),BT:固定ボルト,CU:コントローラ,Cn:軸心,Cu~Cw:周方向延在部,Eu:U相用電線,Eu:W相用電線,Ev:V相用電線,Ew:W相用電線,LS:リップシール,Nu~Nw:端子接続部,Pu~Pw:屈曲部,S1:第1ねじ,S2:第2ねじ,SE:基板用電線,SP:接続用スペース,Tu:U相用電源ターミナル(電源端子),Tv:V相用電源ターミナル(電源端子),Tw:W相用電源ターミナル(電源端子)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12