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特開2023-70058高溶融強度ポリエステル樹脂組成物及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023070058
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】高溶融強度ポリエステル樹脂組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/00 20060101AFI20230511BHJP
   C08L 23/00 20060101ALI20230511BHJP
   C08K 5/13 20060101ALI20230511BHJP
   C08K 5/524 20060101ALI20230511BHJP
   C08K 5/09 20060101ALI20230511BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
C08L67/00
C08L23/00
C08K5/13
C08K5/524
C08K5/09
C08L63/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022141817
(22)【出願日】2022-09-07
(31)【優先権主張番号】110141471
(32)【優先日】2021-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】501296612
【氏名又は名称】南亞塑膠工業股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】NAN YA PLASTICS CORPORATION
【住所又は居所原語表記】NO.201,TUNG HWA N.RD.,TAIPEI,TAIWAN
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100195017
【弁理士】
【氏名又は名称】水間 章子
(72)【発明者】
【氏名】廖 ▲テ▼超
(72)【発明者】
【氏名】袁 敬堯
(72)【発明者】
【氏名】廖 偉棠
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BB00X
4J002CD003
4J002CF00W
4J002CF06W
4J002EJ017
4J002EL136
4J002EW067
4J002FD067
4J002FD077
4J002FD203
4J002FD206
4J002GT00
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本開示は高溶融強度ポリエステル樹脂組成物及びその製造方法を提供する。
【解決手段】高溶融強度ポリエステル樹脂組成物は、ポリエステル樹脂と、ポリオレフィン樹脂と、鎖延長剤と、抗酸化剤と、リン酸化合物安定剤とを含む。ポリエステル樹脂の融点は150℃から200℃である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル樹脂組成物であって、
150℃から200℃の融点を有するポリエステル樹脂と、
ポリオレフィン樹脂と、
鎖延長剤と、
抗酸化剤と、
リン化合物安定剤とを含む、ポリエステル樹脂組成物。
【請求項2】
前記鎖延長剤が、テトラカルボン酸芳香族炭化水素、ポリカルボン酸芳香族炭化水素又は脂肪酸の二無水物及びポリエポキシドを含む、請求項1に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項3】
前記抗酸化剤が、ヒンダードフェノール抗酸化剤又は亜リン酸抗酸化剤を含む、請求項1に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項4】
100重量%として計算される前記ポリエステル樹脂組成物の含有量の全重量に基づくと、前記ポリエステル樹脂の含有量は30重量%から93.8重量%であり、前記ポリオレフィン樹脂の含有量は5重量%から68.8重量%であり、前記鎖延長剤の含有量は1重量%から20重量%であり、前記抗酸化剤の含有量は0.1重量%から3重量%であり、前記リン化合物安定剤の含有量は0.1重量%から1重量%である、請求項1に記載のポリエステル樹脂組成物。
【請求項5】
ポリエステル樹脂組成物の製造方法であって、
ニーダーによってマスターバッチに加工されるように、ポリエステル樹脂と、ポリオレフィン樹脂と、鎖延長剤と、抗酸化剤と、リン化合物安定剤とを均一に混合することを含み、
前記ポリエステル樹脂の融点が150℃から200℃である、ポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【請求項6】
前記ニーダーの加工温度が150℃から200℃である、請求項5に記載のポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【請求項7】
前記鎖延長剤が、テトラカルボン酸芳香族炭化水素、ポリカルボン酸芳香族炭化水素又は脂肪酸の二無水物及びポリエポキシドを含む、請求項5に記載のポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【請求項8】
前記抗酸化剤が、ヒンダードフェノール抗酸化剤又は亜リン酸抗酸化剤を含む、請求項5に記載のポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【請求項9】
100重量%として計算される各成分の全使用量の全重量に基づくと、前記ポリエステル樹脂の添加量は30重量%から93.8重量%であり、前記ポリオレフィン樹脂の添加量は5重量%から68.8重量%であり、前記鎖延長剤の添加量は1重量%から20重量%であり、前記抗酸化剤の添加量は0.1重量%から3重量%であり、前記リン化合物安定剤の添加量は0.1重量%から1重量%である、請求項5に記載のポリエステル樹脂組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリエステル樹脂組成物及びその製造方法に関し、より詳細には、高溶融強度ポリエステル樹脂組成物及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレンテレフタレート(PETと称する)は、熱可塑性ポリエステルの中で生産量が最大であり価格が最低の材料であり、優れた物理的、化学的及び機械的特性、並びに有機溶媒に対する良好な耐性及び耐候性を有し、繊維織物、フィルム及び容器の製造などの分野において広く適用されている。近年では、PETは発泡材料の分野においても幅広い応用展望を示している。PET発泡材料は、軽量、高比強度、高剛性、良好な電気絶縁特性、並びに良好な遮音性及び断熱性の利点があり、食品包装、マイクロ波容器、建築材料、スポーツ用品、自動車、航空及び航空宇宙などの分野において応用され得る。しかしながら、PETは線状分子鎖を有する半結晶性ポリマーである。加工中、PETはその融点よりも高い温度でのみ流動し得る。現時点では、PETの溶融強度及び溶融粘度は非常に小さい。さらに、高温でPETは容易に分解し、その結果、分子量が低下し、溶融レオロジーがさらに低下するため、PETマトリックス内のセルの成長及び形成を支持することができない。したがって、一般に、従来型のPETは、発泡プロセス中に良好なセル材料を得られない。
【0003】
PETの溶融強度をいかに改善するかが重要な研究である。PETの溶融強度に影響を与える主な要因は、PETの分子量、分子量分布及び長鎖分岐度である。したがって、PETは、PETの分子量が増加し、分子量分布が広がり、長鎖分岐度が増加するように修飾されなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、PETの溶融強度の問題を効果的に解決し得る、高溶融強度ポリエステル樹脂組成物及びその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示における高溶融強度ポリエステル樹脂組成物は、ポリエステル樹脂と、ポリオレフィン樹脂と、鎖延長剤と、抗酸化剤と、リン化合物安定剤とを含む。ポリエステル樹脂の融点は150℃から200℃である。
【0006】
本開示の一実施形態において、鎖延長剤は、テトラカルボン酸芳香族炭化水素、ポリカルボン酸芳香族炭化水素又は脂肪酸の二無水物及びポリエポキシドを含む。
【0007】
本開示の一実施形態において、抗酸化剤は、ヒンダードフェノール抗酸化剤又は亜リン酸抗酸化剤を含む。
【0008】
本開示の一実施形態において、100重量%として計算されるポリエステル樹脂組成物の含有量の全重量に基づくと、ポリエステル樹脂の含有量は30重量%から93.8重量%であり、ポリオレフィン樹脂の含有量は5重量%から68.8重量%であり、鎖延長剤の含有量は1重量%から20重量%であり、抗酸化剤の含有量は0.1重量%から3重量%であり、リン化合物安定剤の含有量は0.1重量%から1重量%である。
【0009】
本開示におけるポリエステル樹脂組成物の製造方法は、以下の工程を含む。ポリエステル樹脂と、ポリオレフィン樹脂と、鎖延長剤と、抗酸化剤と、リン化合物安定剤とを均一に混合し、それから、ニーダーで混合して造粒する。ポリエステル樹脂の融点は150℃から200℃である。
【0010】
本開示の一実施形態において、ニーダーの加工温度は150℃から200℃である。
【0011】
本開示の一実施形態において、鎖延長剤は、テトラカルボン酸芳香族炭化水素、ポリカルボン酸芳香族炭化水素又は脂肪酸の二無水物及びポリエポキシドを含む。
【0012】
本開示の一実施形態において、抗酸化剤は、ヒンダードフェノール抗酸化剤又は亜リン酸抗酸化剤を含む。
【0013】
本開示の一実施形態において、100重量%として計算される各成分の全使用量の全重量に基づくと、ポリエステル樹脂の添加量は30重量%から93.8重量%であり、ポリオレフィン樹脂の添加量は5重量%から68.8重量%であり、鎖延長剤の添加量は1重量%から20重量%であり、抗酸化剤の添加量は0.1重量%から3重量%であり、リン化合物安定剤の添加量は0.1重量%から1重量%である。
【発明の効果】
【0014】
上記に基づき、本開示における高溶融強度ポリエステル樹脂組成物は、ポリオレフィン樹脂を含む。したがって、鎖伸張剤の分散を促進するために不連続相がマスターバッチ中に形成され得、さらに後続の発泡プロセスに寄与する。その一方で、本開示におけるポリエステル樹脂組成物の製造方法は、加工温度(150℃から200℃)を低下させるため、鎖延長剤が昇華することなく加工され得る。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示の実施形態について詳細に説明する。ただし、これらの実施形態は例示的なものであり、本開示はそれに限定されない。
【0016】
本明細書において、「ある数値から別の数値」で表される範囲は、明細書における範囲内の数値の全てを記載することを避けるための簡略化した表現である。したがって、特定の数値範囲の記述は、明細書における任意の数値及びそのより小さい数値範囲の記述と同様に、数値範囲内の任意の数値と、その数値範囲内の任意の数値によって定義されるより小さい数値範囲とをカバーするものである。
【0017】
本開示は、ポリエステル樹脂と、ポリオレフィン樹脂と、鎖延長剤と、抗酸化剤と、リン化合物安定剤とを含む、高溶融強度ポリエステル樹脂組成物を提供する。この実施形態において、ポリエステル樹脂の融点は、例えば、150℃から200℃である。したがって、本開示において使用されるポリエステル樹脂は、好ましくは、例えば、低融点を有するポリエステル樹脂である。鎖延長剤は、テトラカルボン酸芳香族炭化水素、ポリカルボン酸芳香族炭化水素又は脂肪酸の二無水物及びポリエポキシドを含み得る。抗酸化剤は、ヒンダードフェノール抗酸化剤又は亜リン酸抗酸化剤を含み得る。リン化合物安定剤は、トリフェニルホスファイト又はトリエチレンホスホロチオエートを含み得る。
【0018】
この実施形態において、例えば100重量%として計算されるポリエステル樹脂組成物の含有量の全重量に基づくと、ポリエステル樹脂の含有量は、例えば、30重量%から93.8重量%であり、ポリオレフィン樹脂の含有量は、例えば、5重量%から68.8重量%であり、鎖延長剤の含有量は、例えば、1重量%から20重量%であり、抗酸化剤の含有量は、例えば、0.1重量%から3重量%であり、リン化合物安定剤の含有量は、例えば、0.1重量%から1重量%である。
【0019】
本開示はまた、以下の工程を含む、ポリエステル樹脂組成物の製造方法を提供する。ポリエステル樹脂と、ポリオレフィン樹脂と、鎖延長剤と、抗酸化剤と、リン化合物安定剤とを均一に混合し、それから、ニーダーによって、発泡した鎖延長剤のマスターバッチに加工する。この実施形態において、ニーダーの加工温度は、好ましくは、例えば、150℃から200℃である。
【0020】
この実施形態において、例えば100重量%として計算される各成分の全使用量の全重量に基づくと、ポリエステル樹脂の添加量は、例えば、30重量%から93.8重量%であり、ポリオレフィン樹脂の添加量は、例えば、5重量%から68.8重量%であり、鎖延長剤の添加量は、例えば、1重量%から20重量%であり、抗酸化剤の添加量は、例えば、0.1重量%から3重量%であり、リン化合物安定剤の添加量は、例えば、0.1重量%から1重量%である。
【0021】
以下、本開示による高溶融強度ポリエステル樹脂組成物及びその製造方法について、実施例によって以下に詳細に説明する。ただし、以下の実施例は、本開示を限定することを意図するものではない。
【実施例0022】
本開示による高溶融強度のポリエステル樹脂組成物及びその製造方法が後続の発泡プロセスに有用であることを確認するために、以下の実施例を提供する。
【0023】
実施例1
ポリエステル樹脂78.5重量%と、ポリオレフィン樹脂10重量%と、鎖延長剤10重量%と、抗酸化剤1重量%と、リン化合物安定剤0.5重量%との混合物をミキサーで均一に混合し、それから、ニーダーで加工して造粒する。
【0024】
ニーダーの加工条件:
ローター速度:60rpm
加工温度:
ゾーン1:150℃
ゾーン2:170℃
ゾーン3:170℃
加工時間:10分
【0025】
実施例2
実施例1と同じ方法で加工を実施する。ただし、鎖延長剤の割合を20重量%に増加させ、ポリエステル樹脂の割合を68.5重量%に減少させる。
【0026】
実施例3
実施例1と同じ方法で加工を実施する。ただし、ポリオレフィン樹脂の割合を30重量%に増加させる。
【0027】
比較例1
実施例1と同じ方法で加工を実施する。ただし、ポリオレフィン樹脂は使用せず、ポリエステル樹脂を78.5重量%とする。
【0028】
実施例1から実施例3及び比較例1の組成比、並びに、後続の発泡プロセスに適用された発泡後の密度及び平均セルサイズを以下の表1に示す。表1を参照すると、本開示による高溶融強度ポリエステル樹脂組成物は、実施例1から実施例3で使用され、これは、後続の発泡プロセスに有用である。対照的に、比較例1ではポリオレフィン樹脂は使用されていない。したがって、マスターバッチ中に不連続相が形成されず、そのため鎖分散剤の分散に有用な本開示の技術的効果が得られず、後続の発泡の発泡プロセスに有用ではない。
【表1】
【0029】
上記に基づいて、本開示における高溶融強度ポリエステル樹脂組成物は、ポリオレフィン樹脂を含む。したがって、鎖延長剤の分散を促進するために、マスターバッチ内に不連続相が形成され得、さらに後続の発泡プロセスに寄与する。その一方で、本開示におけるポリエステル樹脂組成物の製造方法は、加工温度(150℃から200℃)を低下させるため、鎖延長剤は昇華することなく加工され得る。このように、本開示における高溶融強度ポリエステル樹脂組成物及びその製造方法は、PETの溶融強度の問題を効果的に解決することができる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本開示の高溶融強度ポリエステル樹脂組成物及びその製造方法は、PETの溶融強度を改善するために適用され得る。
【外国語明細書】