(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023070059
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】BHET材料の脱色及び精製方法
(51)【国際特許分類】
C07C 67/56 20060101AFI20230511BHJP
C07C 69/80 20060101ALI20230511BHJP
C07C 67/52 20060101ALI20230511BHJP
C07C 67/60 20060101ALI20230511BHJP
C07C 67/03 20060101ALN20230511BHJP
【FI】
C07C67/56
C07C69/80 B
C07C67/52
C07C67/60
C07C67/03
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022141819
(22)【出願日】2022-09-07
(31)【優先権主張番号】110141568
(32)【優先日】2021-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】501296612
【氏名又は名称】南亞塑膠工業股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】NAN YA PLASTICS CORPORATION
【住所又は居所原語表記】NO.201,TUNG HWA N.RD.,TAIPEI,TAIWAN
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100195017
【弁理士】
【氏名又は名称】水間 章子
(72)【発明者】
【氏名】廖 ▲テ▼超
(72)【発明者】
【氏名】莊 榮仁
(72)【発明者】
【氏名】曾 郁迪
(72)【発明者】
【氏名】黄 章鑑
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AC91
4H006AD15
4H006AD17
4H006AD30
4H006BC51
4H006BE05
4H006BE32
4H006BJ50
4H006BN10
4H006KA03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】最終製品の色相が改善されたBHET材料の脱色及び精製方法を提供する。
【解決手段】BHET材料を予備処理するために活性炭の第1の投与量を添加する。予備処理後、BHET結晶を得るために、第1の冷却結晶化プロセス及び濾過を実施する。その後、酸化剤を使用してBHET結晶と化学反応させて染料又は不純物を破壊し、それから化学反応した酸化物を吸着させるために活性炭の第2の投与量を添加する。次に、BHETの最終製品を得るために、第2の冷却結晶化プロセス、濾過及び乾燥を実施する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
BHET(ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート)材料の脱色及び精製方法であって、
前記BHET材料を予備処理するために、活性炭の第1の投与量を添加することと、
前記予備処理後、BHET結晶を得るために、第1の冷却結晶化プロセス及び濾過を実施することと、
前記BHET結晶と化学反応させて染料又は不純物を破壊するために酸化剤を使用すること、それから化学反応した酸化物を吸着させるために活性炭の第2の投与量を添加することと、
BHETの最終製品を得るために、第2の冷却結晶化プロセス、濾過及び乾燥を実施することとを含む、BHET材料の脱色及び精製方法。
【請求項2】
前記BHETの最終製品のCIELAB色は、L値が95以上であり、a値が-1.0から1.0であり、b値が4.0以下であると定義される、請求項1に記載のBHET材料の脱色及び精製方法。
【請求項3】
前記BHET材料の全重量に基づくと、前記第1の投与量は0.5重量%から8重量%である、請求項1に記載のBHET材料の脱色及び精製方法。
【請求項4】
前記予備処理の処理温度は80℃から90℃である、請求項1に記載のBHET材料の脱色及び精製方法。
【請求項5】
前記酸化剤は、過酸化水素、次亜塩素酸カルシウム又は次亜硫酸ナトリウムを含む、請求項1に記載のBHET材料の脱色及び精製方法。
【請求項6】
前記BHET材料の全重量に基づくと、前記酸化剤の添加量は0.1重量%から1重量%である、請求項1に記載のBHET材料の脱色及び精製方法。
【請求項7】
前記化学反応の反応温度は80℃から90℃である、請求項1に記載のBHET材料の脱色及び精製方法。
【請求項8】
前記BHET材料の全重量に基づくと、前記第2の投与量は0.1重量%から3重量%である、請求項1に記載のBHET材料の脱色及び精製方法。
【請求項9】
前記活性炭の第2の投与量の添加の処理温度は80℃から90℃である、請求項1に記載のBHET材料の脱色及び精製方法。
【請求項10】
前記第1の冷却結晶化プロセス及び前記第2の冷却結晶化プロセスのプロセス温度は20℃である、請求項1に記載のBHET材料の脱色及び精製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は脱色及び精製方法に関し、より詳細には、BHET材料の脱色及び精製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
廃PET(ポリエチレンテレフタレート)生地の化学的リサイクル方法に関して、エチレングリコール(EG)は通常、PETを粗BHET(ビス(2-ヒドロキシエチル)テレフタレート)に解重合するために使用され、それから、BHETの純粋な白色の最終製品を得るために、粗BHETが脱色され精製される。しかしながら、廃PET生地は、繊維助剤及び染料などの不純物を含むことが多い。特に、PETの解重合後、染料は通常BHETと相溶性があり分離することが困難なため、その結果、BHETの最終製品の色相は比較的悪くなる。
【0003】
上記に基づいて、BHETの最終製品の色相を改善するために、BHET材料の脱色及び精製方法を開発することは、現在の研究にとって重要な課題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、BHETの純粋な白色の最終製品を得るために、様々な廃PET生地の解重合によって形成されたBHETを脱色及び精製し得る、BHET材料の脱色及び精製方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示におけるBHET材料の脱色及び精製方法は、以下の工程を含む。BHET材料を予備処理するために、活性炭の第1の投与量を添加する。予備処理後、BHET結晶を得るために、第1の冷却結晶化プロセス及び濾過を実施する。その後、染料又は不純物を破壊するために、酸化剤を使用してBHETと化学反応させて、それから、化学反応した酸化物を吸着させるために、活性炭の第2の投与量を添加する。次に、BHETの最終製品を得るために、第2の冷却結晶化プロセス、濾過及び乾燥を実施する。
【0006】
本開示の一実施形態において、BHETの最終製品のCIELAB色は、L値が95以上であり、a値が-1.0から1.0であり、b値が4.0以下であると定義される。
【0007】
本開示の一実施形態において、BHET材料の全重量に基づくと、第1の投与量は0.5重量%から8重量%である。
【0008】
本開示の一実施形態において、予備処理の処理温度は80℃から90℃である。
【0009】
本開示の一実施形態において、酸化剤は、過酸化水素、次亜塩素酸カルシウム又は次亜硫酸ナトリウムを含む。
【0010】
本開示の一実施形態において、BHET材料の全重量に基づくと、酸化剤の添加量は0.1重量%から1重量%である。
【0011】
本開示の一実施形態において、化学反応の反応温度は80℃から90℃である。
【0012】
本開示の一実施形態において、BHET材料の全重量に基づくと、第2の投与量は0.1重量%から3重量%である。
【0013】
本開示の一実施形態において、活性炭の第2の投与量の添加の処理温度は80℃から90℃である。
【0014】
本開示の一実施形態において、第1の冷却結晶化プロセス及び第2の冷却結晶化プロセスのプロセス温度は20℃である。
【発明の効果】
【0015】
上記に基づいて、本開示におけるBHET材料の脱色及び精製方法は、工程の特定の順序で最適化される。合計で4つの手順の工程を順番に含んでおり、それらは、純粋な白色のBHETを得るために、様々な廃PET生地の解重合によって形成されたBHETを脱色及び精製し得る。特に、繊維助剤及び染料などの不純物を有する暗色のBHET材料について、BHETの最終製品の色相を効果的に改善するために、除去することが難しい染料及び不純物は、完全に破壊及び除去される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示の実施形態を詳細に説明する。ただし、これらの実施形態は例示的なものであり、本開示はそれに限定されない。
【0017】
本明細書において、「ある数値から別の数値」で表される範囲は、明細書における範囲内の数値の全てを記載することを避けるための簡略化した表現である。したがって、特定の数値範囲の記載は、明細書における任意の数値及びそのより小さい数値範囲の記述と同様に、数値範囲内の任意の数値と、その数値範囲内の任意の数値によって定義されるより小さい数値範囲とをカバーするものである。
【0018】
本開示は、以下の4つの手順上の工程を順番に含むBHET材料の脱色及び精製方法を提供する。第1の手順上の工程は、BHET材料を予備処理するために、活性炭の第1の投与量を添加することである。第2の手順上の工程は、予備処理後、BHET結晶を得るために、第1の冷却結晶化プロセス及び濾過を実施することである。第3の手順上の工程は、染料又は不純物を破壊するために、酸化剤を使用してBHET結晶と化学反応させることであり、それから、化学反応した酸化物を吸着させるために、活性炭の第2の投与量を添加することである。第4の手順上の工程は、BHETの最終製品を得るために、第2の冷却結晶化プロセス、濾過及び乾燥を実施することである。
【0019】
第1の手順上の工程において、溶媒抽出を使用して、BHET材料中の不純物の含有量を特定し、これに基づいて、予備処理用の活性炭の添加量(活性炭の第1の投与量)を決定する。この実施形態において、BHET材料は、例えば、暗色のBHET材料であり、CIELAB色は、例えば、L値が30から45であり、a値が-1から-3であり、b値が-2から-4であると定義される。溶媒抽出は、例えば、アルコールエーテル溶媒でPET生地を抽出することである。アルコールエーテル溶媒とPET生地の重量比は、例えば20:1であり、反応条件は、例えば、140℃の温度で2時間である。PET生地の全重量に基づくと、抽出された不純物の最小含有量は、例えば、0.2重量%から1重量%である。この実施形態において、BHET材料の全重量に基づくと、活性炭の第1の投与量は、例えば0.5重量%から8重量%であり、予備処理の処理温度及び時間は、例えば80℃から90℃で3時間である。例えば、活性炭の予備処理は、水を添加後に実施する。その後、活性炭を除去するために、濾過を実施する。
【0020】
第2の手順上の工程において、第1の冷却結晶化プロセスのプロセス温度は、例えば20℃であり、BHET結晶を得るために、第1の冷却結晶化プロセス及び濾過を6時間実施し、その間に微量な不純物を水相に移動させる。
【0021】
第3の手順上の工程において、酸化剤は、過酸化水素、次亜塩素酸カルシウム又は次亜硫酸ナトリウムを含み得る。BHET材料の全重量に基づくと、酸化剤の添加量は、例えば0.1重量%から1重量%であり、酸化剤を使用したBHET結晶の化学反応の反応温度及び時間は、例えば80℃から90℃で1時間である。例えば、酸化剤は、水の添加後に化学反応させて、除去することが難しい染料又は不純物を破壊するために使用する。この実施形態において、BHET材料の全重量に基づくと、活性炭の第2の投与量は、例えば0.1重量%から3重量%であり、化学反応した酸化物を吸着させるための活性炭の第2の投与量の添加の処理温度及び時間は、例えば80℃から90℃で3時間であり、それから、不純物を完全に除去する。その後、濾過を実施して活性炭を除去する。
【0022】
第4の手順上の工程において、第2の冷却結晶化プロセスのプロセス温度は、例えば20℃であり、BHET結晶を得るために、第2の冷却結晶化プロセス、濾過及び乾燥を6時間実施し、その間に微量の不純物を水相に移動させる。得られるBHETの最終製品について、CIELAB色は、例えば、L値が95以上であり、a値が-1.0から1.0であり、b値が4.0以下であると定義される。したがって、本開示におけるBHET材料の脱色及び精製方法によれば、純粋な白色のBHETを得るために、暗色のBHET材料を脱色及び精製し得る。
【0023】
上記に基づいて、本開示におけるBHET材料の脱色及び精製方法は、工程の特定の順序で最適化される。合計で4つの手順の工程を順番に含み、これらは、純粋な白色のBHETを得るために、様々な廃PET生地の解重合によって形成されたBHETを脱色及び精製し得る。特に、繊維助剤及び染料などの不純物を有する暗色のBHET材料について、除去することが難しい染料及び不純物は完全に破壊及び除去されるため、BHETの最終製品の色相は効果的に改善する。BHETの最終製品のCIELAB色は、L値が95以上であり、a値が-1.0から1.0であり、b値が4.0以下であると定義される。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本開示のBHET材料の脱色及び精製方法は、BHET材料に適用することができる。
【外国語明細書】