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特開2023-70086光学フィルム及びその製造方法、並びにバックライトモジュール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023070086
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】光学フィルム及びその製造方法、並びにバックライトモジュール
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/20 20060101AFI20230511BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20230511BHJP
   F21V 3/00 20150101ALI20230511BHJP
   F21V 3/06 20180101ALI20230511BHJP
   F21Y 115/10 20160101ALN20230511BHJP
【FI】
G02B5/20
F21S2/00 418
F21V3/00 320
F21V3/00 530
F21V3/06 130
F21Y115:10
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022166357
(22)【出願日】2022-10-17
(31)【優先権主張番号】110141054
(32)【優先日】2021-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】501296612
【氏名又は名称】南亞塑膠工業股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】NAN YA PLASTICS CORPORATION
【住所又は居所原語表記】NO.201,TUNG HWA N.RD.,TAIPEI,TAIWAN
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】廖 ▲徳▼超
(72)【発明者】
【氏名】曹 俊哲
(72)【発明者】
【氏名】廖 仁▲ユ▼
【テーマコード(参考)】
2H148
3K244
【Fターム(参考)】
2H148AA00
2H148AA07
2H148AA09
2H148AA19
3K244BA08
3K244BA28
3K244BA48
3K244CA02
3K244DA01
3K244EA02
3K244EA16
3K244ED24
(57)【要約】
【課題】本発明は、光学フィルム及びその製造方法、並びにバックライトモジュールを提供する。
【解決手段】本発明に係る光学フィルムは、カドミウムフリー量子ドットゲル層及びポリエステル層を備える。カドミウムフリー量子ドットゲル層は、第1のポリマー及び第1のポリマーに分散するカドミウムフリー量子ドットを含む。第1のポリマーは、光開始剤1wt%~5wt%と、散乱粒子3wt%~30wt%と、チオール化合物10wt%~40wt%と、単官能アクリルモノマー5wt%~30wt%と、二官能アクリルモノマー5wt%~20wt%と、多官能アクリルモノマー10wt%~40wt%と、有機けい素グラフトオリゴマー5wt%~20wt%と、抑制剤100ppm~2000ppmと、を含む。本願のカドミウムフリー量子ドットゲル層の配合によって、カドミウムフリー光学フィルムを提供すると共に、高い水と酸素の耐候性を維持する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のポリマー及び前記第1のポリマーに分散するカドミウムフリー量子ドットを含むカドミウムフリー量子ドットゲル層と、
前記カドミウムフリー量子ドットゲル層に設置されたポリエステル層を備える、光学フィルムであって、
前記カドミウムフリー量子ドットゲル層の総重量を100重量%として、前記カドミウムフリー量子ドットの含有量は、0.1wt%~5wt%であり、前記第1のポリマーは、
光開始剤1wt%~5wt%と、
散乱粒子3wt%~30wt%と、
チオール化合物10wt%~40wt%と、
単官能アクリルモノマー5wt%~30wt%と、
二官能アクリルモノマー5wt%~20wt%と、
多官能アクリルモノマー10wt%~40wt%と、
有機けい素グラフトオリゴマー5wt%~20wt%と、
抑制剤100ppm~2000ppmとを含む、ことを特徴とする光学フィルム。
【請求項2】
前記ポリエステル層は化学処理表面を更に有すると共に、前記ポリエステル層は、前記化学処理表面を介して前記カドミウムフリー量子ドットゲル層に設置する、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項3】
前記チオール化合物は、2,2’-(エチレンジオキシ)ジエタンチオール、2,2’-チオジエタンチオール、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオナート)、ポリエチレングリコールジチオール、ペンタエリスリトールテトラ(3‐メルカプトプロピオナート)、エチレングリコールビス(メルカプトアセテート)、2-メルカプトプロピオン酸エチル、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチラート)、1,3,5-トリス[(3-メルカプトブタノイルオキシ)エチル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン及び1,4-ブタンジオールビス(3-メルカプトブチレート)からなる群から選択される、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項4】
前記単官能アクリルモノマーは、ジシクロペンタジエニルメタクリレート、トリエチレングリコールエチルエーテルメタクリレート、アルコキシル化アクリル酸ラウリル、イソボロニルメタクリレート、メタクリル酸ラウリル、ステアリルメタクリレート、アクリル酸ラウリル、イソボロニルアクリレート、アクリル酸トリデシル、カプロラクトンアクリレート、アクリル酸オクチルフェノール及びアルコキシル化アクリレートからなる群から選択される、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項5】
前記二官能アクリルモノマーは、エトキシル化ビスフェノールAジメタクリレート、1,3-ブタンジオールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジメタアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート及びエトキシル化ビスフェノールAジメタクリレートからなる群から選択される、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項6】
前記多官能アクリルモノマーは、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート及びエトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレートからなる群から選択される、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項7】
前記有機けい素グラフトオリゴマーは、ポリオクタヘドラルシルセスキオキサンである、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項8】
前記カドミウムフリー量子ドットは、コアシェル構造を有する量子ドットであり、前記コアシェル構造のコアは、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、セレン(Se)、亜鉛(Zn)、テルル(Te)、ホウ素(B)、窒素(N)、リン(P)、ヒ素(As)、硫化亜鉛(ZnS)、セレン化亜鉛(ZnSe)、テルル化亜鉛(ZnTe)、硫化水銀(HgS)、セレン化水銀(HgSe)、テルル化水銀(HgTe)、窒化アルミニウム(AlN)、リン化アルミニウム(AlP)、ヒ化アルミニウム(AlAs)、アンチモン化アルミニウム(AlSb)、窒化ガリウム(GaN)、リン化ガリウム(GaP)、ヒ化ガリウム(GaAs)、アンチモン化ガリウム(GaSb)、セレン化ガリウム(GaSe)、窒化インジウム(InN)、リン化インジウム(InP)、ヒ化インジウム(InAs)、アンチモン化インジウム(InSb)、窒化タリウム(TlN)、リン化タリウム(TlP)、ヒ化タリウム(TlAs)、アンチモン化タリウム(TlSb)、硫化鉛(PbS)、セレン化鉛(PbSe)及びテルル化鉛(PbTe)からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1に記載の光学フィルム。
【請求項9】
前記コアシェル構造のシェルは、酸化亜鉛(ZnO)、硫化亜鉛(ZnS)、セレン化亜鉛(ZnSe)、テルル化亜鉛(ZnTe)、酸化マグネシウム(MgO)、硫化マグネシウム(MgS)、セレン化マグネシウム(MgSe)、テルル化マグネシウム(MgTe)、酸化水銀(HgO)、硫化水銀(HgS)、セレン化水銀(HgSe)、テルル化水銀(HgTe)、窒化アルミニウム(AlN)、リン化アルミニウム(AlP)、ヒ化アルミニウム(AlAs)、アンチモン化アルミニウム(AlSb)、窒化ガリウム(GaN)、リン化ガリウム(GaP)、ヒ化ガリウム(GaAs)、アンチモン化ガリウム(GaSb)、窒化インジウム(InN)、リン化インジウム(InP)、ヒ化インジウム(InAs)、アンチモン化インジウム(InSb)、窒化タリウム(TlN)、リン化タリウム(TlP)、ヒ化タリウム(TlAs)、アンチモン化タリウム(TlSb)、硫化鉛(PbS)、セレン化鉛(PbSe)、テルル化鉛(PbTe)、リン化インジウムガリウム(InGa1-xP)、硫化銅インジウム(CuInS)、セレン化銅インジウム(CuInSe)、硫化セレン化銅インジウム(CuInSSe2-x)、硫化銅インジウムガリウム(CuInGa1-x)、セレン化銅インジウムガリウム(CuInGa1-xSe)、二硫化銅ガリウム(CuGaS)、セレン化銅インジウムアルミニウム(CuInAl1-xSe)、セレン化銅ガリウムアルミニウム(CuGaAl1-xSe)、硫化銅インジウム硫化亜鉛(CuInS2xZnS1-x)及びセレン化銅インジウムセレン化亜鉛(CuInSe2xZnSe1-x)からなる群から選択される少なくとも1つである、請求項8に記載の光学フィルム。
【請求項10】
カドミウムフリー量子ドットを第1のポリマーに分散させて、量子ドット複合材を得る、工程(a)と、
前記量子ドット複合材をポリエステル層に設置させ、離型基材を前記量子ドット複合材に貼り合わせることで、前記量子ドット複合材を前記ポリエステル層と前記離型基材との間に挟持される、工程(b)と、
紫外線で前記量子ドット複合材を硬化する、工程(c)と、
前記離型基材を除去して、光学フィルムを得る工程(d)とを含み、
前記量子ドット複合材の総重量を100重量%として、前記カドミウムフリー量子ドットの含有量は、0.1wt%~5wt%であり、
前記第1のポリマーは、光開始剤1wt%~5wt%と、散乱粒子3wt%~30wt%と、チオール化合物10wt%~40wt%と、単官能アクリルモノマー5wt%~30wt%と、二官能アクリルモノマー5wt%~20wt%と、多官能アクリルモノマー10wt%~40wt%と、有機けい素グラフトオリゴマー5wt%~20wt%と、抑制剤100ppm~2000ppmとを含む、ことを特徴とする光学フィルムの製造方法。
【請求項11】
入光側を有するライトガイドユニットと、
前記入光側に対応する少なくとも1つの発光ユニットと、
前記ライトガイドユニットの入光側に対応し且つ前記ライトガイドユニットと少なくとも1つの前記発光ユニットとの間にある光学フィルムと、を備える、バックライトモジュールであって、
前記光学フィルムは、第1のポリマー及び前記第1のポリマーに分散するカドミウムフリー量子ドットを含むカドミウムフリー量子ドットゲル層、及び前記カドミウムフリー量子ドットゲル層に設置されたポリエステル層、を含み、
前記カドミウムフリー量子ドットゲル層の総重量を100重量%として、前記カドミウムフリー量子ドットの含有量は、0.1wt%~5wt%であり、
前記第1のポリマーは、
光開始剤1wt%~5wt%と、
散乱粒子3wt%~30wt%と、
チオール化合物10wt%~40wt%と、
単官能アクリルモノマー5wt%~30wt%と、
二官能アクリルモノマー5wt%~20wt%と、
多官能アクリルモノマー10wt%~40wt%と、
有機けい素グラフトオリゴマー5wt%~20wt%と、
抑制剤100ppm~2000ppmとを含むことを特徴とするバックライトモジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カドミウムフリー光学フィルム及びその製造方法、並びにバックライトモジュールに関し、特に、バックライトモジュール、LEDパッケージに適用するカドミウムフリー光学フィルム及びその製造方法、並びにバックライトモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ディスプレイ技術の継続的な進歩に伴い、人々はディスプレイの品質に対する要求をますます高めている。量子ドット(Quantum Dots)は、その特有の量子閉じ込め効果により、研究者の注目を集めている。従来の有機発光材料と比較して、量子ドットの発光効率には、ハーフピーク幅が狭く、粒子サイズが小さく、散乱損失がなく、サイズに応じてスペクトルを調整でき、安定した光化学特性があるという利点がある。さらに、量子ドットの光学的、電気的、及び輸送特性は、合成プロセスを通じて調整することができ、これらの利点により、量子ドットは非常に重要な役割を果たせる。近年、量子ドットを用いた高分子複合材がバックライトやディスプレイの分野で使用されている。
【0003】
代表的な量子ドットとして、セレン化カドミウム(CdSe)、テルル化カドミウム(CdTe)、硫化カドミウム(CdS)などのカドミウム系量子ドットを有し、カドミウム系量子ドットは、より広いエネルギー帯域を有する利点を有するが、カドミウムは、重金属の毒性と高い環境負荷を有するため、ディスプレイの生産側、ディスプレイの淘汰、廃棄物の処理はいずれも、環境中の重金属汚染のリスクが発生する。なお、従来の技術の製造工程において、酸加水分解が量子ドットの耐用年数に影響する。
【0004】
カドミウムを含まないカドミウムフリー量子ドット(例えば、CuInS又はAgInSなどの黄銅鉱型量子ドット、リン化インジウム(InP)型量子ドット、又はペロブスカイト(Perovskite)量子ドット)を用いると、耐水性及び耐酸素性が悪い欠点を有すると共に、前記量子ドットで量子ドットフィルムを製造する場合、光学フィルムの水・酸素バリア性を向上させ、量子ドットの耐用年数を向上させるために、水・酸素バリアフィルム及びポリエステル層を他に貼り合わせる必要がある。
【0005】
故に、量子ドットフィルム層の配合を改良することにより、カドミウムフリー量子ドットフィルムの水・酸素バリア性を強化して、水・酸素バリアフィルムを略して、上述した欠点を克服することは、本事業の解決しようとする重要な課題となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする技術の課題は、従来技術の不足に対し、バックライトモジュール、LEDパッケージに適用するカドミウムフリー光学フィルム及びその製造方法、並びにバックライトモジュールを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る上記の技術的課題を解決するために、本発明が採用する一つの技術的手段は、カドミウムフリー量子ドットゲル層及びポリエステル層を備える光学フィルムを提供する。前記カドミウムフリー量子ドットゲル層は、第1のポリマー及び前記第1のポリマーに分散するカドミウムフリー量子ドットを含む。詳しく説明すると、前記カドミウムフリー量子ドットゲル層の総重量を100重量%として、前記カドミウムフリー量子ドットの含有量は、0.1wt%~5wt%であり、前記第1のポリマーは、光開始剤1wt%~5wt%と、散乱粒子3wt%~30wt%と、チオール化合物10wt%~40wt%と、単官能アクリルモノマー5wt%~30wt%と、二官能アクリルモノマー5wt%~20wt%と、多官能アクリルモノマー10wt%~40wt%と、有機けい素グラフトオリゴマー5wt%~20wt%と、抑制剤100ppm~2000ppmとを含む。
【0008】
本発明の一つの実施形態において、前記ポリエステル層は化学処理表面を更に有すると共に、前記ポリエステル層は、前記化学処理表面を介して前記カドミウムフリー量子ドットゲル層に設置する。
【0009】
本発明の一つの実施形態において、前記チオール化合物は、一級チオール化合物及び二級チオール化合物からなる群から選択され、一級チオールは、2,2’-(エチレンジオキシ)ジエタンチオール、2,2’-チオジエタンチオール、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオナート)、ポリエチレングリコールジチオール、ペンタエリスリトールテトラ(3‐メルカプトプロピオナート)及びエチレングリコールビス(メルカプトアセテート)からなる群から選択される。二級チオールは、2-メルカプトプロピオン酸エチル、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチラート)、1,3,5-トリス[(3-メルカプトブタノイルオキシ)エチル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン及び1,4-ブタンジオールビス(3-メルカプトブチレート)からなる群から選択される。
【0010】
一つの実施形態において、前記単官能アクリルモノマーは、ジシクロペンタジエニルメタクリレート、トリエチレングリコールエチルエーテルメタクリレート、アルコキシル化アクリル酸ラウリル、イソボロニルメタクリレート、メタクリル酸ラウリル、ステアリルメタクリレート、アクリル酸ラウリル、イソボロニルアクリレート、アクリル酸トリデシル、カプロラクトンアクリレート、アクリル酸オクチルフェノール及びアルコキシル化アクリレートからなる群から選択される。
【0011】
一つの実施形態において、前記二官能アクリルモノマーは、エトキシル化ビスフェノールAジメタクリレート、1,3-ブタンジオールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジメタアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール(400)ジアクリレート及びエトキシル化(2)ビスフェノールAジメタクリレートからなる群から選択される。
【0012】
一つの実施形態において、前記多官能アクリルモノマーは、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化(20)トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート及びエトキシ化(4)ペンタエリスリトールテトラアクリレートからなる群から選択される。
【0013】
一つの実施形態において、前記有機けい素グラフトオリゴマーは、ポリオクタヘドラルシルセスキオキサンである。
【0014】
本発明の一つ実施形態において、前記カドミウムフリー量子ドットは、コアシェル構造を有する量子ドットであり、前記コアシェル構造のコアは、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、セレン(Se)、亜鉛(Zn)、テルル(Te)、ホウ素(B)、窒素(N)、リン(P)、ヒ素(As)、硫化亜鉛(ZnS)、セレン化亜鉛(ZnSe)、テルル化亜鉛(ZnTe)、硫化水銀(HgS)、セレン化水銀(HgSe)、テルル化水銀(HgTe)、窒化アルミニウム(AlN)、リン化アルミニウム(AlP)、ヒ化アルミニウム(AlAs)、アンチモン化アルミニウム(AlSb)、窒化ガリウム(GaN)、リン化ガリウム(GaP)、ヒ化ガリウム(GaAs)、アンチモン化ガリウム(GaSb)、セレン化ガリウム(GaSe)、窒化インジウム(InN)、リン化インジウム(InP)、ヒ化インジウム(InAs)、アンチモン化インジウム(InSb)、窒化タリウム(TlN)、リン化タリウム(TlP)、ヒ化タリウム(TlAs)、アンチモン化タリウム(TlSb)、硫化鉛(PbS)、セレン化鉛(PbSe)及びテルル化鉛(PbTe)からなる群から選択される少なくとも1つである。
【0015】
本発明の一つ実施形態において、前記コアシェル構造のシェルは、酸化亜鉛(ZnO)、硫化亜鉛(ZnS)、セレン化亜鉛(ZnSe)、テルル化亜鉛(ZnTe)、酸化マグネシウム(MgO)、硫化マグネシウム(MgS)、セレン化マグネシウム(MgSe)、テルル化マグネシウム(MgTe)、酸化水銀(HgO)、硫化水銀(HgS)、セレン化水銀(HgSe)、テルル化水銀(HgTe)、窒化アルミニウム(AlN)、リン化アルミニウム(AlP)、ヒ化アルミニウム(AlAs)、アンチモン化アルミニウム(AlSb)、窒化ガリウム(GaN)、リン化ガリウム(GaP)、ヒ化ガリウム(GaAs)、アンチモン化ガリウム(GaSb)、窒化インジウム(InN)、リン化インジウム(InP)、ヒ化インジウム(InAs)、アンチモン化インジウム(InSb)、窒化タリウム(TlN)、リン化タリウム(TlP)、ヒ化タリウム(TlAs)、アンチモン化タリウム(TlSb)、硫化鉛(PbS)、セレン化鉛(PbSe)、テルル化鉛(PbTe)、リン化インジウムガリウム(InGa1-xP)、硫化銅インジウム(CuInS)、セレン化銅インジウム(CuInSe)、硫化セレン化銅インジウム(CuInSSe2-x)、硫化銅インジウムガリウム(CuInGa1-x)、セレン化銅インジウムガリウム(CuInGa1-xSe)、二硫化銅ガリウム(CuGaS)、セレン化銅インジウムアルミニウム(CuInAl1-xSe)、セレン化銅ガリウムアルミニウム(CuGaAl1-xSe)、硫化銅インジウム硫化亜鉛(CuInS2xZnS1-x)及びセレン化銅インジウムセレン化亜鉛(CuInSe2xZnSe1-x)からなる群から選択される少なくとも1つである。
【0016】
本発明に係る上記の技術的課題を解決するために、本発明が採用するもう一つの技術的手段は、光学フィルムの製造方法を提供する。前記光学フィルムの製造方法は、カドミウムフリー量子ドットを第1のポリマーに分散させて、量子ドット複合材を得る、工程(a)と、前記量子ドット複合材をポリエステル層に設置させ、離型基材を前記量子ドット複合材に貼り合わせることで、前記量子ドット複合材をポリエステル層と離型基材との間に挟持される、工程(b)と、紫外線で前記量子ドット複合材を硬化する、工程(c)と、前記離型基材を除去して、光学フィルムを得る工程(d)とを含む。詳しく説明すると、前記量子ドット複合材の総重量を100重量%として、前記カドミウムフリー量子ドットの含有量は、0.1wt%~5wt%であり、前記第1のポリマーは、光開始剤1wt%~5wt%と、散乱粒子3wt%~30wt%と、チオール化合物10wt%~40wt%と、単官能アクリルモノマー5wt%~30wt%と、二官能アクリルモノマー5wt%~20wt%と、多官能アクリルモノマー10wt%~40wt%と、有機けい素グラフトオリゴマー5wt%~20wt%と、抑制剤100ppm~2000ppmとを含む。
【0017】
上記の技術的課題を解決するために、本発明が採用するもう一つの技術的手段は、入光側を有するライトガイドユニットと、前記入光側に対応する1つの発光ユニットと、前記ライトガイドユニットの入光側に対応し且つ前記ライトガイドユニットと少なくとも1つの前記発光ユニットとの間にある光学フィルムと、を備える、バックライトモジュールを提供する。前記光学フィルムは、第1のポリマー及び前記第1のポリマーに分散するカドミウムフリー量子ドットを含むカドミウムフリー量子ドットゲル層、及びポリエステル層、を含む。前記カドミウムフリー量子ドットゲル層の総重量を100重量%として、前記カドミウムフリー量子ドットの含有量は、0.1wt%~5wt%であり、前記第1のポリマーは、光開始剤1wt%~5wt%と、散乱粒子3wt%~30wt%と、チオール化合物10wt%~40wt%と、単官能アクリルモノマー5wt%~30wt%と、二官能アクリルモノマー5wt%~20wt%と、多官能アクリルモノマー10wt%~40wt%と、有機けい素グラフトオリゴマー5wt%~20wt%と、抑制剤100ppm~2000ppmとを含む。
【発明の効果】
【0018】
本発明の有利な効果として、本発明に係る光学フィルム及びその製造方法、並びにバックライトモジュールは、「チオール化合物10wt%~40wt%と、単官能アクリルモノマー5wt%~30wt%と、二官能アクリルモノマー5wt%~20wt%と、多官能アクリルモノマー10wt%~40wt%と、有機けい素グラフトオリゴマー5wt%~20wt%とを含む」といった技術特徴により、カドミウムフリー量子ドットゲル層の耐水性と耐酸素性を向上し、水・酸素バリア層を備えたサンドイッチ構造を略して、フィルムの厚みを効果的に低減させた上で、水・酸素バリア層を備えたサンドイッチ構造の優れた耐水性と耐酸素性を果たせる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一つの実施形態に係る光学フィルムの断面図である。
図2】本発明のもう一つの実施形態に係る光学フィルムの断面図である。
図3】本発明の一つの実施形態に係る光学フィルムの製造方法のフローチャートである。
図4】本発明の一つの実施形態に係るパワーモジュールの断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の特徴及び技術内容がより一層分かるように、以下の本発明に関する詳細な説明と添付図面を参照されたい。しかし、提供される添付図面は参考と説明のために提供するものに過ぎず、本発明の請求の範囲を制限するためのものではない。
【0021】
以下、所定の具体的な実施態様によって「光学フィルム及びその製造方法、並びにバックライトモジュール」を説明し、当業者は、本明細書に開示された内容に基づいて本発明の利点と効果を理解することができる。本発明は、他の異なる具体的な実施態様によって実行または適用でき、本明細書における各細部についても、異なる観点と用途に基づいて、本発明の構想から逸脱しない限り、各種の修正と変更を行うことができる。また、事前に説明するように、本発明の添付図面は、簡単な模式的説明であり、実際のサイズに基づいて描かれたものではない。以下の実施形態に基づいて本発明に係る技術内容を更に詳細に説明するが、開示される内容によって本発明の保護範囲を制限することはない。また、本明細書において使用される「または」という用語は、実際の状況に応じて、関連して挙げられる項目におけるいずれか1つまたは複数の組み合わせを含むことがある。
【0022】
図1に示すように、本発明に係る第一実施形態において、カドミウムフリー量子ドットゲル層10と、ポリエステル層20とを備える光学フィルムMを提供する。詳しく説明すると、カドミウムフリー量子ドットゲル層10は、第1のポリマー101及び第1のポリマー101に分散するカドミウムフリー量子ドット102を含む。更に説明すると、カドミウムフリー量子ドットゲル層10は、第1の表面10A及び第2の表面10Bを有する。ポリエステル層20は第1の表面10Aに設置され、第2の表面10Bは、覆われていないように露出されている。詳しく説明すると、光学フィルムMの厚みは、約25μm~125μmである。説明すべきことは、本発明に係る光学フィルムMを持つ良好な水・酸素バリア性は、カドミウムフリー量子ドットゲル層10及びポリエステル層20の材質で達成されるものであり、光学フィルムの厚みの影響が低い。
【0023】
図2に示すように、本発明の光学フィルムMは、ポリエステル層20に設置された化学処理表面201を更に含む。また、化学処理表面201は、ポリエステル層20とカドミウムフリー量子ドットゲル層10との間に位置される。化学処理表面201は、カドミウムフリー量子ドットゲル層10とポリエステル層20との密着性を向上することができる。化学処理表面201の形成方法について、後述する通りである。
【0024】
カドミウムフリー量子ドットゲル層の組成比について更に説明すると、カドミウムフリー量子ドットゲル層は、第1のポリマー及び第1のポリマーに分散するカドミウムフリー量子ドットを含む。詳しく説明すると、前記カドミウムフリー量子ドットゲル層の総重を100重量%として、前記カドミウムフリー量子ドット含有量は、0.1wt%~5wt%であり、前記第1のポリマーは、光開始剤1wt%~5wt%と、散乱粒子3wt%~30wt%と、チオール化合物10wt%~40wt%と、単官能アクリルモノマー5wt%~30wt%と、二官能アクリルモノマー5wt%~20wt%と、多官能アクリルモノマー10wt%~40wt%と、有機けい素グラフトオリゴマー5wt%~20wt%と、抑制剤100ppm~2000ppmとを含む。
【0025】
光開始剤として、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾイルイソプロパノール、トリブロモメチルフェニルスルホン、及びジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドからなる群から選択されてもよい。しかし、光開始剤の含有量が1wt%未満であると、硬化しにくい。光開始剤の含有量が5wt%を超えると、ゲル材のボラティリティに影響する。
【0026】
散乱粒子は、粒子径が0.5μm~20μmであり且つ表面処理された微粒子であってもよいと共に、微粒子の材料は、アクリル、二酸化ケイ素、二酸化ゲルマニウム、二酸化チタン、二酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム(III)またはポリスチレンであってもよい。好ましくは、散乱粒子は、表面処理されたアクリル微粒子、二酸化ケイ素微粒子またはポリスチレン微粒子であり、散乱粒子の粒子径は、0.5μm~10μmである。本発明において、散乱粒子の粒子径は、周知の測定機器で測定されることができ、例えば、Anton-paar社製のLitesizer 500で測定されることができる。散乱粒子の屈折率は、約1.39~1.45である。散乱粒子は、より優れた量子ドットによる光の屈折を提供して、カドミウムフリー量子ドットゲル層で生成された光がより均一にさせる。散乱粒子の含有量が3wt%未満であると、ヘイズ値が不足となる。散乱粒子の含有量が30wt%を超えると、多すぎて材料全体の樹脂含有量が不足となって、分散性に影響すると共に加工の困難さを増加する。一つの実施形態において、散乱粒子の含有量は、5wt%、10wt%、15wt%、20wt%、25wt%または30wt%であってもよい。
【0027】
具体的に、チオール化合物は、2,2’-(エチレンジオキシ)ジエタンチオール、2,2’-チオジエタンチオール、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオナート)、ポリエチレングリコールジチオール、ペンタエリスリトールテトラ(3‐メルカプトプロピオナート)、エチレングリコールビス(メルカプトアセテート)、2-メルカプトプロピオン酸エチル、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチラート)、1,3,5-トリス[(3-メルカプトブタノイルオキシ)エチル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン及び1,4-ブタンジオールビス(3-メルカプトブチレート)からなる群から選択される。
【0028】
チオール化合物は、メルカプト官能基(-SH)を含有する非芳香族化合物であり、量子ドットとの結合特性がより優れた官能基を提供することによって、量子ドット粒子に優れた分散性を与え、光学フィルムMの水・酸素バリア性を更に向上させる。従来の技術に比べて、チオール化合物の含有量が比較的に高いことによって、重合度を高くさせる。チオール化合物の含有量が10wt%未満であると、効果を発揮することができない。チオール化合物の含有量が40wt%を超えると、ゲル材が柔過ぎて、曲げやすく、且つ水・酸素バリアが低下となる。一つの実施形態において、チオール化合物の含有量は、10wt%、15wt%、20wt%、25wt%、30wt%、35wt%または40wt%であってもよい。
【0029】
より詳しく説明すると、単官能アクリルモノマーは、ジシクロペンタジエニルメタクリレート、トリエチレングリコールエチルエーテルメタクリレート、アルコキシル化アクリル酸ラウリル、イソボロニルメタクリレート、メタクリル酸ラウリル、ステアリルメタクリレート、アクリル酸ラウリル、イソボロニルアクリレート、アクリル酸トリデシル、カプロラクトンアクリレート、アクリル酸オクチルフェノール及びアルコキシル化アクリレートからなる群から選択される。単官能アクリルモノマーが少なすぎると、量子ドットの分散性にとって不良となり、単官能アクリルモノマーが多すぎると、重合効率が低下すると共に、耐候性が不良となる。一つの実施形態において、単官能アクリルモノマーの含有量は、5wt%、10wt%、15wt%、20wt%、25wt%または30wt%であってもよい。
【0030】
二官能アクリルモノマーは、エトキシル化ビスフェノールAジメタクリレート、1,3-ブタンジオールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジメタアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコール(400)ジアクリレート及びエトキシル化(2)ビスフェノールAジメタクリレートからなる群から選択される。具体的に説明すると、二官能アクリルモノマーと量子ドット表面リガンドとの相溶性が良好であり、且つ、その特性は単官能アクリルモノマーと多官能アクリルモノマーとの間にあるため、バランスを取れる。一つの実施形態において、二官能アクリルモノマーの含有量は、5wt%、10wt%、15wt%または20wt%であってもよい。
【0031】
多官能アクリルモノマーは、トリメチロールプロパントリアクリレート、エトキシ化(20)トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート及びエトキシ化(4)ペンタエリスリトールテトラアクリレートからなる群から選択される。多官能アクリルモノマーの含有量の添加量が多すぎると、ゲル材が脆くなり、破損しやすくなる。補充に説明すると、多官能アクリルモノマーは、前記二官能アクリルモノマーを含まない。一つの実施形態において、多官能アクリルモノマーの含有量は、10wt%、15wt%、20wt%、25wt%、30wt%、35wt%または40wt%であってもよい。
【0032】
有機けい素グラフトオリゴマーは、ポリオクタヘドラルシルセスキオキサン(polyhedral oligomeric silsesquioxane)である。有機けい素グラフトオリゴマーは、ポリマーの耐候性を向上し、ポリマーの機械的強度を向上することができる。好ましくは、ポリオクタヘドラルシルセスキオキサンの構造は大分子であり(Mw>3000)、それによって、保護性が向上する。具体的に説明すると、ポリオクタヘドラルシルセスキオキサンの重量平均分子量は、3000g/mol~10000g/molであり、好ましくは、4000g/mol、5000g/mol、6000g/mol、7000g/mol、8000g/molまたは9000g/molであってもよい。詳しく説明すると、従来技術である光学フィルムは、ポリエステル層を略すると、耐水・酸素性を低減するだけでなく、機械的強度が不足となる欠点を起こす。有機けい素グラフトオリゴマーの含有量が5wt%~20wt%であると、カドミウムフリー量子ドットゲル層の機械的強度を向上することができる。その含有量を超えると、分散性、加工性を提供すると共に、コストを向上する。
【0033】
抑制剤は、ピロガロール(pyrogallol,PYR)、ハイドロキノン、ピロカテコール、ヨウ化カリウムとヨウ素との混合物、ヒンダードフェノール系抗酸化剤(Hindered phenol antioxidants)、アルミニウム試薬又は鉄試薬(N-ニトロソフェニルヒドロキシルアミンアンモニウム塩,N-nitrosophenyl hydroxylamine ammonium salt)、N-ニトロソ-N-フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩、(N-nitroso-N-phenyl hydroxylamine aluminum salt)、3-アリルフェノール、トリアリールホスフィン及び亜リン酸エステル(triaryl phosphines and phosphites)、ホスホン酸(phosphonic acid)、アルケニルフェノールとカプフェロンとの組合物(combination of an alkenyl-phenol and cupferronate salt)からなる群から選択される。
【0034】
抑制剤は、反応速度を効果的に低減させ、成分に含まれた組成がお互いに影響することを回避し、例えば、チオール化合物及び多官能アクリルモノマーは、室温で自己反応を起しやすく、製造する際に抑制剤を添加すると、優れた加工性を提供すると共に、安定的な保存性を有する。しかしながら、添加量が100ppm未満であると、抑制結果を果たさなく、2000ppmを超えると、光硬化効率に影響する。説明すべきことは、抑制剤の添加量が低いものの、チオール化合物及び多官能アクリルモノマーが同時に存在する高分子系において、有効量の抑制剤を添加する必要がある。
【0035】
更に説明すると、カドミウムフリー量子ドットはカドミウムを含まない量子ドットである。カドミウムフリー量子ドットは、均一な(homogeneous)単一の構造、コアシェル構造(core-shell)の量子ドット、複数のシェル層(複数層のシェル層)の量子ドット、又は勾配(gradient)構造を有する量子ドットからなる群から選択されてもよい。より具体的に、勾配構造を有する量子ドットのコアシェル構造におけるコア層の元素の含有量は、コアからシェルにだんだん低減し、シェア層の元素の含有量は、コアからシェアにだんだん増加する。
【0036】
好ましくは、前記カドミウムフリー量子ドットは、コアシェル構造を有する量子ドットであり、前記コアシェル構造のコアは、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、セレン(Se)、亜鉛(Zn)、テルル(Te)、ホウ素(B)、窒素(N)、リン(P)、ヒ素(As)、硫化亜鉛(ZnS)、セレン化亜鉛(ZnSe)、テルル化亜鉛(ZnTe)、硫化水銀(HgS)、セレン化水銀(HgSe)、テルル化水銀(HgTe)、窒化アルミニウム(AlN)、リン化アルミニウム(AlP)、ヒ化アルミニウム(AlAs)、アンチモン化アルミニウム(AlSb)、窒化ガリウム(GaN)、リン化ガリウム(GaP)、ヒ化ガリウム(GaAs)、アンチモン化ガリウム(GaSb)、セレン化ガリウム(GaSe)、窒化インジウム(InN)、リン化インジウム(InP)、ヒ化インジウム(InAs)、アンチモン化インジウム(InSb)、窒化タリウム(TlN)、リン化タリウム(TlP)、ヒ化タリウム(TlAs)、アンチモン化タリウム(TlSb)、硫化鉛(PbS)、セレン化鉛(PbSe)及びテルル化鉛(PbTe)からなる群から選択される少なくとも1つであり、リン化インジウム(InP)であることが好ましい。
【0037】
コアシェル構造におけるシェルは、単層又は複数層であってもよい。前記コアシェル構造におけるシェルは、酸化亜鉛(ZnO)、硫化亜鉛(ZnS)、セレン化亜鉛(ZnSe)、テルル化亜鉛(ZnTe)、酸化マグネシウム(MgO)、硫化マグネシウム(MgS)、セレン化マグネシウム(MgSe)、テルル化マグネシウム(MgTe)、酸化水銀(HgO)、硫化水銀(HgS)、セレン化水銀(HgSe)、テルル化水銀(HgTe)、窒化アルミニウム(AlN)、リン化アルミニウム(AlP)、ヒ化アルミニウム(AlAs)、アンチモン化アルミニウム(AlSb)、窒化ガリウム(GaN)、リン化ガリウム(GaP)、ヒ化ガリウム(GaAs)、アンチモン化ガリウム(GaSb)、窒化インジウム(InN)、リン化インジウム(InP)、ヒ化インジウム(InAs)、アンチモン化インジウム(InSb)、窒化タリウム(TlN)、リン化タリウム(TlP)、ヒ化タリウム(TlAs)、アンチモン化タリウム(TlSb)、硫化鉛(PbS)、セレン化鉛(PbSe)、テルル化鉛(PbTe)、リン化インジウムガリウム(InGa1-xP)、硫化銅インジウム(CuInS)、セレン化銅インジウム(CuInSe)、硫化セレン化銅インジウム(CuInSSe2-x)、硫化銅インジウムガリウム(CuInGa1-x)、セレン化銅インジウムガリウム(CuInGa1-xSe)、二硫化銅ガリウム(CuGaS)、セレン化銅インジウムアルミニウム(CuInAl1-xSe)、セレン化銅ガリウムアルミニウム(CuGaAl1-xSe)、硫化銅インジウム硫化亜鉛(CuInS2xZnS1-x)及びセレン化銅インジウムセレン化亜鉛(CuInSe2xZnSe1-x)からなる群から選択される少なくとも1つである。
【0038】
本発明に係るポリエステル層は、ポリエステルフィルムで構成されてもよい。ポリエステル層は、良好な光透過性を有し、光透過性は90%以上を達成することができる。また、ポリエステル層の延長率を70kg/cm~130kg/cmにすることにより、光学フィルムは物理的特性を有する。また、ポリエステル層の化学処理表面の表面張力は、45ダイン(Dyne)以上である。好ましくは、ポリエステル層の材料は、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate,PET)などの熱可塑性樹脂であり、ポリエステル層の厚みは、25μm~125μmである。好ましくは、ポリエステル層は、誘電特性を有した上で、絶縁効果を提供する。
【0039】
化学処理表面は、カドミウムフリー量子ドットゲル層及びポリエステル層により優れた密着性を与える。ポリエステル層の表面に水性塗料を塗布してもよい。水性塗料は、溶剤30wt%~70wt%と、イソプロパノール(IPA)5wt%~15wt%と、重炭酸ナトリウム5wt%~15wt%と、有機酸5wt%~20wt%と、アクリルモノマー10wt%~30wt%と、を含む。好ましくは、化学処理表面のpHは、5.0~6.7である弱酸性を呈する。好ましくは、化学処理表面の厚みは、約0.01μm~0.1μmである。
【0040】
化学処理表面のアクリルモノマーとして、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル(tetrahydrofurfuryl methacrylate)、ステアリルアクリレート(stearyl acrylate)、メタクリル酸ラウリル(lauryl methacrylate)、アクリル酸ラウリル(lauryl acrylate)、イソボロニルメタクリレート(isobornyl methacrylate)、アクリル酸トリデシル(tridecyl acrylate)、アルコキシ化ノニルフェノールアクリレート(alkoxylated nonylphenol acrylate)、テトラエチレングリコールジメタクリラート(tetraethylene glycol dimethacrylate)、ポリエチレングリコール(600)ジメタクリレート(polyethylene glycol(600)dimethacrylate)、トリプロピレングリコールジアクリレート(tripropylene glycol diacrylate)、エトキシル化(10)ビスフェノールAジメタクリレート(ethoxylated(10)bisphenol A dimethacrylate)、トリメチロールプロパントリアクリレート(trimethylolpropane triacrylate)、トリメチロールプロパントリメタクリレート(trimethylolpropane trimethacrylate)、エトキシル化(20)トリメチロールプロパントリアクリレート(ethoxylated (20) trimethylolpropane triacrylate)、及びペンタエリスリトールトリアクリレート(pentaerythritol triacrylate)が挙げられる。
【0041】
図3に示すように、本発明は、もう一つの光学フィルムの製造方法を更に提供する。光学フィルムの製造方法は、複数個のカドミウムフリー量子ドットを第1のポリマーに分散させて、カドミウムフリー量子ドット複合材を得る、工程S100と、前記カドミウムフリー量子ドット複合材をポリエステル層に設置させ、離型基材を前記カドミウムフリー量子ドット複合材に貼り合わせることで、前記カドミウムフリー量子ドット複合材がポリエステル層と前記離型基材との間に挟持される、工程S200と、紫外線で前記カドミウムフリー量子ドット複合材を硬化する、工程S300と、前記離型基材を除去して、光学フィルムを得る、工程S400と、を含む。
【0042】
第1のポリマー及びカドミウムフリー量子ドットの組成は上述の通りである。好ましくは、工程S100は、複数個の量子ドットを単官能アクリルモノマーに分散させた後に、抑制剤を添加して、次にチオール化合物を添加して、次に二官能アクリルモノマー及び多官能アクリルモノマーを添加・混合し、最後に光開始剤、散乱粒子及び有機けい素グラフトオリゴマーを添加する。
【0043】
即ち、複数個のカドミウムフリー量子ドットを第1のポリマーに分散させることには、複数個のカドミウムフリー量子ドットを完全に混合した第1のポリマーに分散することでなく、カドミウムフリー量子ドットを先に特定の組成に分散させた後に、他の成分を更に添加して、十分に混合・混練を行う。
【0044】
工程S200におけるポリエステル層は、二軸延伸処理を行うことで、良好な伸び性を与えられる。ポリエステル層に化学処理表面を更に形成してもよく、次に、硬化工程(例えば、熱硬化又は光硬化)により、化学処理表面を有するポリエステル層を形成し、次に、量子ドット複合材を化学処理表面に設置させる。換言すると、ポリエステル層は外面及び内面を含んでもよい。化学処理表面は、内面に設置される。
【0045】
なお、工程S200において、量子ドット複合材をポリエステル層に設置した後に、離型基材を更に貼り合わせることによって、量子ドット複合材は、ポリエステル層と離型基材との間に挟持される。
【0046】
前記工程以外に、本発明に係る光学フィルムの製造方法は、光学フィルムから、少なく1つの所望のサイズを有する光学フィルムになるように切断するカット工程と、使用及び収容しやすくなるために、残る光学フィルムをロールに巻き上げる巻取り工程と、を含む。しかしながら、上述した例はあくまでも一つの実施形態に過ぎなく、本発明はこれに制限されるものではない。
【0047】
図4に示すように、本発明は、バックライトモジュールSを更に提供する。前記バックライトモジュールSは、入光側30Aを有するライトガイドユニット30と、少なくとも1つの発光ユニット40と、光学フィルムMと、を備える。少なくとも1つの発光ユニット40は、入光側30Aに対すると共に、複数個の発光素子を含む。光学フィルムMは、入光側30Aに対すると共に、ライトガイドユニット30と少なくとも1つの発光ユニット40との間にある。詳しく説明すると、ライトガイドユニット30は、入光側30A及び反対側の出光側30Bを有し、光学フィルムMは、入光側30Aに設置される。より詳しく説明すると、光学フィルムMは、前述の本発明に係る光学フィルムである。しかしながら、上述した例はあくまでも一つの実施形態に過ぎなく、本発明はこれに制限されるものではない。
【実施例0048】
表1に示すように、実施例1~実施例3及び比較例1~比較例2は、配合及び配合比に基づいて、カドミウムフリー量子ドット層を製造すると共に、製品の特性を測定した。詳しく説明すると、以下の配合比は、カドミウムフリー量子ドット層の総重量を100重量%としたものである。
【0049】
前記カドミウムフリー量子ドット複合材を化学処理表面を有するポリエステル層に設置すると共に、1つの離型基材を貼り合わせた後に、紫外線(UV)で硬化処理を行って、最後に離型基材を除去して、本発明に係るカドミウムフリー量子ドットゲル層を得た。
【0050】
【表1】
【0051】
表1において、水と酸素の耐候性の測定は、バックライトモジュールを65℃、相対湿度95%の環境で、ブルーバックライトで続いて照射して、色座標オフセットが0.01になるまでにかかる時間を記録する。
【0052】
密着性:テンションメータで光学フィルムの密着性を測定する。
【0053】
収縮性:85℃のオーブンで光学フィルムを半時間焼いた後に、その収縮の状態を観察する。光学フィルムの反り度は、0.2cm以上である時に、「反り有り」で表示する。光学フィルムの反り度は、0.2cm未満である時に、「反りなし」で表示する。
【0054】
輝度:輝度計(品番:SR-3ARである分光光度計)を用いてブルー光源(12W)、色座標(x=0.155, y=0.026)、主波長450nm、及び半値全幅20nmなどの条件で励起・生成された混合光束の輝度を測定する。
【0055】
比較例1の結果によれば、本発明においてチオール化合物を添加すると、第1のポリマーの重合度を向上して、カドミウムフリー量子ドットゲル層に良好な水・酸素バリア性を与えられる(酸素の耐候性の測定においていずれも、400時間を超える)。
【0056】
比較例2の結果によれば、過量のチオール化合物を添加すると、カドミウムフリー量子ドットゲル層に良好な水・酸素バリア性を与えられないだけでなく、密着性が不要となる問題を起こす。
【0057】
比較例3の結果によれば、本発明において有機けい素グラフトオリゴマーを添加すると、カドミウムフリー量子ドットゲル層に水・酸素バリア性を更に向上させることができる(酸素の耐候性の測定においていずれも、400時間を超える)。
【0058】
[実施形態による有利な効果]
本発明の有利な効果として、本発明に係る光学フィルム及びその製造方法、並びにバックライトモジュールは、「チオール化合物10wt%~40wt%と、単官能アクリルモノマー5wt%~30wt%と、二官能アクリルモノマー5wt%~20wt%と、多官能アクリルモノマー10wt%~40wt%と、有機けい素グラフトオリゴマー5wt%~20wt%とを含む」といった技術特徴により、カドミウムフリー量子ドットゲル層の耐水性と耐酸素性を向上し、水・酸素バリア層を備えたサンドイッチ構造を略して、フィルムの厚みを効果的に低減させた上で、水・酸素バリア層を備えたサンドイッチ構造の優れた耐水性と耐酸素性を果たせる。
【0059】
更に説明すると、チオール化合物は、メルカプト官能基(-SH)を含有する非芳香族化合物であり、量子ドットとより優れた接合性を提供することによって、量子ドット粒子に優れた分散性を与える。従来の技術に比べて、チオール化合物の含有量が比較的に高いことによって、重合度を高くさせる。
【0060】
なお、本発明に係る配合は、混合する際にお互いに影響する問題を注意すべきである。よって、いろいろな実験を経って、本発明では、特定の抑制剤を用いることによって、反応速度を効果的に低減させ、チオール化合物及び多官能アクリルモノマーは、室温で自己反応することを回避する。それによって、より優れた加工性優れた加工性を提供すると共に、安定的な保存性を有する。
【0061】
以上に開示された内容は、ただ本発明の好ましい実行可能な実施態様であり、本発明の請求の範囲はこれに制限されない。そのため、本発明の明細書及び図面内容を利用して成される全ての等価な技術変更は、いずれも本発明の請求の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0062】
M…光学フィルム
S…バックライトモジュール
10…カドミウムフリー量子ドットゲル層
10A…第1の表面
10B…第2の表面
101…第1のポリマー
102…量子ドット
20…ポリエステル層
201…化学処理表面
30…ライトガイドユニット
30A…入光側
30B…出光側
40…発光ユニット
401…発光素子
図1
図2
図3
図4