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特開2023-70093難燃性非水電解液及びそれを用いた二次電池
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  • 特開-難燃性非水電解液及びそれを用いた二次電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023070093
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】難燃性非水電解液及びそれを用いた二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0569 20100101AFI20230511BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20230511BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20230511BHJP
   H01M 10/054 20100101ALI20230511BHJP
【FI】
H01M10/0569
H01M10/0568
H01M10/052
H01M10/054
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022168706
(22)【出願日】2022-10-20
(31)【優先権主張番号】P 2021181018
(32)【優先日】2021-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(71)【出願人】
【識別番号】000162847
【氏名又は名称】ステラケミファ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130580
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 靖
(72)【発明者】
【氏名】野平 俊之
(72)【発明者】
【氏名】福中 康博
(72)【発明者】
【氏名】峰 夏輝
(72)【発明者】
【氏名】河上 新大
(72)【発明者】
【氏名】大村 岬
(72)【発明者】
【氏名】江田 昌平
(72)【発明者】
【氏名】小島 豊
(72)【発明者】
【氏名】桂 静郁
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 良憲
(72)【発明者】
【氏名】坂口 紀敬
(72)【発明者】
【氏名】近 壮二郎
(72)【発明者】
【氏名】長谷部 類
(72)【発明者】
【氏名】二井 啓一
(72)【発明者】
【氏名】西田 哲郎
【テーマコード(参考)】
5H029
【Fターム(参考)】
5H029AJ05
5H029AJ06
5H029AJ12
5H029AK01
5H029AK02
5H029AK03
5H029AK05
5H029AK06
5H029AK08
5H029AK16
5H029AL02
5H029AL03
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL11
5H029AL12
5H029AL13
5H029AL16
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM05
5H029AM07
5H029HJ01
(57)【要約】      (修正有)
【課題】良好な難燃性を示すと共に、サイクル特性及び電気抵抗特性に優れた難燃性非水電解液及びそれを用いた二次電池を提供する。
【解決手段】非水溶媒と、前記非水溶媒に溶解した電解質とを少なくとも含む難燃性非水電解液であって、前記非水溶媒は、下記(1)~(3)の3グループのリン酸エステル;
(1)リン酸トリエチル、リン酸トリメチル、リン酸トリブチル等
(2)モノフルオロリン酸ジメチル、モノフルオロリン酸ジエチル等
(3)ジフルオロリン酸メチル、ジフルオロリン酸ジエチル等
の少なくとも何れか1種を含み、前記電解質は、ジフルオロリン酸塩及び硝酸塩の少なくとも何れか1種を含み、前記リン酸エステルの含有量は、前記難燃性非水電解液の全質量に対し20質量%以上である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非水溶媒と、前記非水溶媒に溶解した電解質とを少なくとも含む難燃性非水電解液であって、
前記非水溶媒は、以下の化学式(1)~(3)で表されるリン酸エステルの少なくとも何れか1種を含み、
前記電解質は、ジフルオロリン酸塩及び硝酸塩の少なくとも何れか1種を含み、
前記リン酸エステルの含有量は、前記難燃性非水電解液の全質量に対し20質量%以上である難燃性非水電解液。
【化1】
【化2】
【化3】
(式中、X~Xはそれぞれ独立して、炭素数が1~20の炭化水素基;炭素数が1~20のシリル基;炭素数が1~20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか1つを有する炭化水素基;又は、炭素数が1~20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子又は不飽和結合の少なくとも何れか1つを有するシリル基を表す。あるいは、X~Xは、前記炭素数が1~20の炭化水素基;前記炭素数が1~20のシリル基;前記炭素数が1~20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか1つを有する炭化水素基;又は、前記炭素数が1~20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子又は不飽和結合の少なくとも何れか1つを有するシリル基、の何れかであって、任意に選択される組合せが相互に結合して環状構造を形成する。Y及びYはそれぞれ独立してハロゲン原子を表す。)
【請求項2】
前記ジフルオロリン酸塩及び硝酸塩の少なくとも何れか1種のモル分率は、前記電解質の総モル数に対して0.1以上である請求項1に記載の難燃性非水電解液。
【請求項3】
前記ジフルオロリン酸塩及び前記硝酸塩の少なくとも何れかがアルカリ金属塩である請求項1に記載の難燃性非水電解液。
【請求項4】
前記ジフルオロリン酸塩及び硝酸塩の少なくとも何れかがリチウム塩である請求項1に記載の難燃性非水電解液。
【請求項5】
前記リン酸エステルは、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリブチル、リン酸トリフェニル、モノフルオロリン酸ジエチル、モノクロロリン酸ジエチル、ジフルオロリン酸エチル、ジクロロリン酸エチル、及びリン酸ジエチル(2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)エチル)である請求項1に記載の難燃性非水電解液。
【請求項6】
前記電解質として、BF 、PF 、N(CFSO 又はN(SOF) のアニオンを有する他の電解質の少なくとも1種をさらに含む請求項1に記載の難燃性非水電解液。
【請求項7】
前記非水溶媒として、環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル、環状エーテル、鎖状エーテル、ラクトン化合物、鎖状エステル、ニトリル化合物、アミド化合物、スルホン化合物及びスルホキシド化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種をさらに含む請求項1に記載の難燃性非水電解液。
【請求項8】
前記非水溶媒として、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド及びテトラエチレングリコールジメチルエーテルの少なくとも1種をさらに含む請求項1に記載の難燃性非水電解液。
【請求項9】
請求項1~8の何れか1項に記載の難燃性非水電解液と、正極及び負極とを少なくとも備える二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長期サイクルにわたって充放電を繰り返した後に於いても優れたサイクル特性を示す難燃性非水電解液及びそれを用いた二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のリチウムイオン二次電池では、可燃性を有する電解液が採用されている。そのため、充電状態では、いわば燃えやすい電解液の中にエネルギーが詰め込まれた不安定な状態にある。従って、万が一、内部で電気的短絡等の異常が発生した場合には、発火事故等を招来する。この様な点から、従来のリチウムイオン二次電池に於いては、エネルギー密度向上の前提として安全性の確保が必要となる。
【0003】
ここで、リチウムイオン二次電池の発火事故防止の観点からは、電池材料、特に電解液に難燃性や自己消火性を付与することが考えられる。例えば、特許文献1~3では、リン酸エステル類であるリン酸トリアルキル類を電解液の溶媒に用いたり、従来の電解液に添加して用いたりすることが開示されている。これらの特許文献に開示されている電解液であると、当該電解液に難燃性を付与することで二次電池の安全性を向上させることができるものの、用いるリン酸トリアルキル類の種類やその使用量によってはクーロン効率等の電池特性が満足できるものではなかった。
【0004】
二次電池の電池特性の低下は、用いる電解液が電気化学的に強い酸化還元雰囲気に曝されるために、リン酸エステル類が劣化してしまうことが要因の一つとして挙げられる。そのため、リン酸エステル類以外に他の化合物を併用し、この化合物により電極の表面に安定な被膜を形成させて電解液の劣化を抑制することが考えられる。
【0005】
例えば、特許文献4ではリン酸エステル類の他にカルボン酸エステルを電解液に添加する。また、特許文献5及び6では不飽和結合を有した炭酸エステルを、特許文献7ではハロゲン化アルコキシベンゼンを、特許文献8では環状リン酸エステルを、特許文献9ではハロゲン化アルキルリン酸エステルを電解液にそれぞれ添加する。
【0006】
しかし、これらの特許文献に開示されている電解液であると、電極の表面に安定な被膜を形成したことにより、充放電時の電気抵抗が大きくなるという別の問題を生じさせる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平4-184870号公報
【特許文献2】特開平7-114940号公報
【特許文献3】特開2001-307768号公報
【特許文献4】特開平8-88023号公報
【特許文献5】特開平11-260401号公報
【特許文献6】特開2002-203597号公報
【特許文献7】特開平11-40193号公報
【特許文献8】特開2002-184459号公報
【特許文献9】特開2007-141760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は前記問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、良好な難燃性を示すと共に、サイクル特性及び電気抵抗特性に優れた難燃性非水電解液及びそれを用いた二次電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、電解質としてジフルオロリン酸塩及び硝酸塩の少なくとも何れか一方を用い、非水溶媒として特定のリン酸エステルを用いた場合に、ジフルオロリン酸塩及び硝酸塩が特定のリン酸エステルに高濃度で溶解し、かつこの溶解液を電解液に用いた場合に、良好な難燃性を示すと共に、優れたサイクル特性及び電気抵抗特性を発揮することを見出して完成されたものである。
【0010】
即ち、本発明に係る難燃性非水電解液は、前記の課題を解決するために、非水溶媒と、前記非水溶媒に溶解した電解質とを少なくとも含む難燃性非水電解液であって、前記非水溶媒は、以下の化学式(1)~(3)で表されるリン酸エステルの少なくとも何れか1種を含み、前記電解質は、ジフルオロリン酸塩及び硝酸塩の少なくとも何れか1種を含み、前記リン酸エステルの含有量は、前記難燃性非水電解液の全質量に対し20質量%以上であることを特徴とする。
【0011】
【化1】
【0012】
【化2】
【0013】
【化3】
【0014】
(式中、X~Xはそれぞれ独立して、炭素数が1~20の炭化水素基;炭素数が1~20のシリル基;炭素数が1~20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか1つを有する炭化水素基;又は、炭素数が1~20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子又は不飽和結合の少なくとも何れか1つを有するシリル基を表す。あるいは、X~Xは、前記炭素数が1~20の炭化水素基;前記炭素数が1~20のシリル基;前記炭素数が1~20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか1つを有する炭化水素基;又は、前記炭素数が1~20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子又は不飽和結合の少なくとも何れか1つを有するシリル基、の何れかであって、任意に選択される組合せが相互に結合して環状構造を形成する。Y及びYはそれぞれ独立してハロゲン原子を表す。)
【0015】
前記の構成に於いて、前記ジフルオロリン酸塩及び硝酸塩の少なくとも何れか1種のモル分率は、前記電解質の総モル数に対して0.1以上であることが好ましい。
【0016】
また前記の構成に於いては、前記ジフルオロリン酸塩及び前記硝酸塩の少なくとも何れかがアルカリ金属塩であることが好ましい。
【0017】
さらに前記の構成に於いては、前記ジフルオロリン酸塩及び硝酸塩の少なくとも何れかがリチウム塩であることが好ましい。
【0018】
また前記の構成に於いて、前記リン酸エステルは、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリブチル、リン酸トリフェニル、モノフルオロリン酸ジエチル、モノクロロリン酸ジエチル、ジフルオロリン酸エチル、ジクロロリン酸エチル、及びリン酸ジエチル(2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)エチル)であることが好ましい。
【0019】
前記の構成に於いては、前記電解質として、BF 、PF 、N(CFSO 又はN(SOF) のアニオンを有する他の電解質の少なくとも1種をさらに含むことが好ましい。
【0020】
前記の構成に於いては、前記非水溶媒として、環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル、環状エーテル、鎖状エーテル、ラクトン化合物、鎖状エステル、ニトリル化合物、アミド化合物、スルホン化合物及びスルホキシド化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種をさらに含むことが好ましい。
【0021】
前記の構成に於いては、前記非水溶媒として、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド及びテトラエチレングリコールジメチルエーテルの少なくとも1種をさらに含むことが好ましい。
【0022】
本発明に係る二次電池は、前記の課題を解決するために、難燃性非水電解液と、正極及び負極とを少なくとも備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、非水溶媒として前記化学式(1)~(3)で表されるリン酸エステルの少なくとも何れか1種を含むものを用いることにより、難燃性電解液の難燃性の向上が図れる。また、前記リン酸エステルを含む非水溶媒に溶解するジフルオロリン酸塩及び硝酸塩の少なくとも何れか1種を電解質として含有させることにより、充放電を繰り返した後の電極(正極及び負極)に於ける電気抵抗の増大を抑制し、長期サイクルにわたり充放電を繰り返した後に於いても良好な容量維持率を維持し、サイクル特性に優れた難燃性非水電解液及びそれを用いた二次電池を提供することができる。
【0024】
サイクル特性及び電気抵抗特性が改善されるメカニズムについては明らかでないが、電解質として含有させるジフルオロリン酸塩及び硝酸塩の少なくとも何れか1種が電極(電極活物質層)表面に良質の被膜を形成することにより、電解液が電気化学的に強い酸化還元雰囲気に曝されるのを防止する。これにより、電解液中のリン酸エステルの劣化が抑制され、サイクル特性及び電気抵抗特性の低下が抑制又は改善されるものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施の一形態に係る非水系二次電池の概略を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
(難燃性非水電解液)
本実施の形態に係る難燃性非水電解液(以下、「非水電解液」という。)は、非水溶媒と、非水溶媒に溶解した電解質とを少なくとも含み、リチウムイオン二次電池等の二次電池の電解液に好適に用いることができる。
【0027】
非水溶媒としては、後述の化学式(1)~(3)で表されるリン酸エステル(以下、「リン酸エステル」と総称する場合がある。)の少なくとも何れか1種を含むものを用いる。また電解質としては、ジフルオロリン酸塩及び硝酸塩の少なくとも何れか1種を含むものを用いる。
【0028】
初期の充電の際に非水電解液の分解という不可逆反応が、電極と非水電解液の界面で生じる。電極活物質、非水電解液中の非水溶媒や電解質及び必要に応じて添加される添加剤の種類、充放電条件に応じて形成される皮膜の性質、例えば熱安定性やイオン伝導性、モフォロジー、緻密さ等の性質は大きく変化すると考えられる。本実施の形態では、非水溶媒としてリン酸エステル類を用い、電解質としてジフルオロリン酸塩及び硝酸塩の少なくとも何れか一方を用いることで、電極(電極活物質層)の表面に効果的な皮膜が形成され、この皮膜の性質に起因して、二次電池のサイクル特性及び電気抵抗特性の改善が図られると考えられる。また、リン酸エステル類を非水溶媒として用いることにより、十分な難燃性を非水電解液に付与することができる。
【0029】
<非水溶媒>
[リン酸エステル]
非水溶媒は、前述の通り、以下の化学式(1)~(3)で表されるリン酸エステルの少なくとも何れか1種を含む。
【0030】
【化4】
【0031】
【化5】
【0032】
【化6】
【0033】
化学式(1)~(3)に於いて、X~Xはそれぞれ独立して、炭化水素基;シリル基;ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか1つを有する炭化水素基(以下、「ハロゲン原子等を有する炭化水素基」という。);又は、ハロゲン原子、ヘテロ原子又は不飽和結合の少なくとも何れか1つを有するシリル基(以下、「ハロゲン原子等を有するシリル基」という。)の何れかを表す。あるいは、X~Xは、前記炭素数が1~20の炭化水素基;前記炭素数が1~20のシリル基;前記炭素数が1~20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか1つを有する炭化水素基;又は、前記炭素数が1~20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子又は不飽和結合の少なくとも何れか1つを有するシリル基、の何れかであって、任意に選択される組合せが相互に結合して環状構造を形成する。
【0034】
前記X~Xに於ける炭化水素基の炭素数は1~20であり、好ましくは1~10、より好ましくは1~4である。尚、本明細書に於いて炭素数の範囲を表す場合、その範囲は当該範囲に含まれる全ての整数の炭素数を含むことを意味する。従って、例えば「炭素数1~3」の炭化水素基とは、炭素数が1、2及び3の全ての炭化水素基を意味する。
【0035】
前記X~Xに於けるシリル基の炭素数は1~20であり、好ましくは1~10、より好ましくは1~4である。
【0036】
前記X~Xに於けるハロゲン原子を有する炭化水素基とは、当該炭化水素基中の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換された官能基を意味する。ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素の原子が挙げられる。前記炭素数が1~20のハロゲン原子を有する炭化水素基に於いては、炭素数が1~10のハロゲン原子を有する炭化水素基が好ましく、炭素数が1~4のハロゲン原子を有する炭化水素基がより好ましい。
【0037】
前記X~Xに於けるヘテロ原子を有する炭化水素基とは、当該炭化水素基中の水素原子及び炭素原子の一部又は全部がヘテロ原子で置換された官能基を意味する。前記ヘテロ原子は、酸素、窒素、及び硫黄等の原子を表す。炭素数が1~20のヘテロ原子を有する炭化水素基に於いては、炭素数が1~10のヘテロ原子を有する炭化水素基が好ましく、炭素数が1~4のヘテロ原子を有する炭化水素基がより好ましい。
【0038】
前記X~Xに於ける不飽和結合を有する炭化水素基とは、例えば、炭素-炭素間に於ける二重結合、又は三重結合を有する炭化水素基を意味する。不飽和結合の数は1~10の範囲が好ましく、1~5の範囲がより好ましく、1~3の範囲が特に好ましい。
【0039】
前記X~Xに於けるハロゲン原子を有するシリル基とは、当該シリル基中の水素原子の一部又は全部がハロゲン原子で置換された官能基を意味する。ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素の原子が挙げられる。前記炭素数が1~20のハロゲン原子を有するシリル基に於いては、炭素数が1~10のハロゲン原子を有するシリル基が好ましく、炭素数が1~4のハロゲン原子を有するシリル基がより好ましい。
【0040】
前記X~Xに於けるヘテロ原子を有するシリル基とは、当該シリル基中の水素原子及び炭素原子の一部又は全部がヘテロ原子で置換された官能基を意味する。前記ヘテロ原子は、酸素、窒素、及び硫黄等の原子を表す。炭素数が1~20のヘテロ原子を有するシリル基に於いては、炭素数が1~10のヘテロ原子を有するシリル基が好ましく、炭素数が1~4のヘテロ原子を有するシリル基がより好ましい。
【0041】
前記X~Xに於ける不飽和結合を有するシリル基とは、例えば、炭素-炭素間に於ける二重結合、又は三重結合を有するシリル基を意味する。不飽和結合の数は1~10の範囲が好ましく、1~5の範囲がより好ましく、1~3の範囲が特に好ましい。
【0042】
前記炭化水素基、及びハロゲン原子等を有する炭化水素基としては特に限定されず、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基及びオクチル基等の鎖状アルキル基、シクロペンチル基及びシクロヘキシル基等の環状アルキル基;2-ヨードエチル基、2-ブロモエチル基、2-クロロエチル基、2-フルオロエチル基、1,2-ジヨードエチル基、1,2-ジブロモエチル基、1,2-ジクロロエチル基、1,2-ジフルオロエチル基、2,2-ジヨードエチル基、2,2-ジブロモエチル基、2,2-ジクロロエチル基、2,2-ジフルオロエチル基、2,2,2-トリブロモエチル基、2,2,2-トリクロロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基及びヘキサフルオロ-2-プロピル基等の鎖状含ハロゲンアルキル基:2-ヨードシクロヘキシル基、2-ブロモシクロヘキシル基、2-クロロシクロヘキシル基及び2-フルオロシクロヘキシル基等の環状含ハロゲンアルキル基;2-プロペニル基、イソプロペニル基、2-ブテニル基及び3-ブテニル基等の鎖状アルケニル基;2-シクロペンテニル基、2-シクロヘキセニル基及び3-シクロヘキセニル基等の環状アルケニル基;2-プロピニル基、1-ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、1-ペンチニル基、2-ペンチニル基、3-ペンチニル基及び4-ペンチニル基等の鎖状アルキニル基;フェニル基等のアリール基;3-メトキシフェニル基、4-メトキシフェニル基、3,5-ジメトキシフェニル基及び4-フェノキシフェニル基等のアルコキシフェニル基;2-ヨードフェニル基、2-ブロモフェニル基、2-クロロフェニル基、2-フルオロフェニル基、3-ヨードフェニル基、3-ブロモフェニル基、3-クロロフェニル基、3-フルオロフェニル基、4-ヨードフェニル基、4-ブロモフェニル基、4-クロロフェニル基、4-フルオロフェニル基、3,5-ジヨードフェニル基、3,5-ジブロモフェニル基、3,5-ジクロロフェニル基及び3,5-ジフルオロフェニル基等の含ハロゲンフェニル基;1-ナフチル基、2-ナフチル基及び3-アミノ-2-ナフチル基等のナフチル基;2-メトキシエチル基、2-(2-メトキシエトキシ)エチル基、2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)エチル基及び2-(2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル基等が挙げられる。
【0043】
化学式(2)及び(3)に於いて、前記Y及びYはそれぞれ独立してハロゲン原子を表す。ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素の原子が挙げられる。
【0044】
化学式(1)で表されるリン酸エステルは、具体的には、例えば、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリプロピル、リン酸トリブチル、リン酸トリペンチル、リン酸トリヘキシル、リン酸トリフェニル、リン酸エチルジメチル、リン酸ジエチルメチル、リン酸メチルジプロピル、リン酸ジメチルプロピル、リン酸ブチルメチル、リン酸ジブチルメチル、リン酸ジメチルペンチル、リン酸メチルジペンチル、リン酸ヘキシルジメチル、リン酸ジヘキシルメチル、リン酸ジヘプチルメチル、リン酸ヘプチルジメチル、リン酸エチルジプロピル、リン酸ジエチルプロピル、リン酸ブチルジエチル、リン酸ジブチルエチル、リン酸エチルジペンチル、リン酸ジエチルペンチル、リン酸エチルジヘキシル、リン酸ジエチルヘキシル、リン酸エチルヘプチル、リン酸ジエチルヘプチル、リン酸ブチルジプロピル、リン酸ジブチルプロピル、リン酸ブチルジペンチル、リン酸ジブチルペンチル、リン酸ブチルジヘキシル、リン酸ジブチルヘキシル、リン酸ブチルジヘプチル、リン酸ジブチルヘプチル、リン酸ヘキシルペンチル、リン酸ジヘキシルペンチル、リン酸ヘプチルペンチル、リン酸ジヘプチルペンチル、リン酸ジヘプチルヘキシル、リン酸ヘプチルジヘキシル、リン酸エチルメチルプロピル、リン酸エチルメチルブチル、リン酸エチルメチルペンチル、リン酸エチルヘキシルメチル、リン酸エチルヘプチルメチル、リン酸トリス(2,2,2-トリフルオロエチル)、リン酸トリス(2,2,2-トリクロロエチル)、リン酸トリス(2,2,2-トリブロモエチル)、リン酸トリス(2,2,2-トリヨードエチル)、リン酸トリス(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピル)、リン酸トリス(1,1,1,3,3,3-ヘキサクロロイソプロピル)、リン酸トリス(1,1,1,3,3,3-ヘキサブロモイソプロピル)、リン酸トリス(1,1,1,3,3,3-ヘキサヨードイソプロピル)、リン酸(2,2,2-トリフルオロエチル)ジエチル、リン酸ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)エチル、リン酸(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピル)ジエチル、リン酸ビス(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピル)エチル、リン酸トリス(2-メトキシエチル)、リン酸トリス(2-(2-メトキシエトキシ)エチル)、リン酸、リン酸トリス(2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)エチル)、リン酸トリス、リン酸トリス(2-(2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル)、リン酸ジエチル(2-メトキシエチル)、リン酸ジエチル(2-(2-メトキシエトキシ)エチル)、リン酸ジエチル(2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)エチル)、リン酸ジエチル(2-(2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル)、リン酸エチルビス(2-メトキシエチル)、リン酸エチルビス(2-(2-メトキシエトキシ)エチル)、リン酸エチルビス(2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)エチル)、リン酸エチルビス(2-(2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル)、リン酸トリス(トリメチルシリル)、リン酸トリス(トリメチルブチル)リン酸トリス(トリフェニルシリル)、リン酸トリス(ジメチルフェニルシリル)、リン酸トリス(ジメチルビニルシリル)等が挙げられる。これらのリン酸エステルは一種単独で、又は二種以上を併用することができる。
【0045】
また、例示した化学式(1)で表されるリン酸エステルのうち、入手の容易性の観点からは、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリイソプロピル及びリン酸トリブチルが好ましく、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル及びリン酸トリブチルがより好ましく、リン酸トリエチル及びリン酸トリメチルがさらに好ましく、リン酸トリエチルが特に好ましい。
【0046】
化学式(2)で表されるリン酸エステルは、具体的には、例えば、モノフルオロリン酸ジメチル、モノフルオロリン酸ジエチル、モノフルオロリン酸ジプロピル、モノフルオロリン酸ジイソプロピル、モノフルオロリン酸ジブチル、モノフルオロリン酸ジペンチル、モノフルオロリン酸ジヘプチル、モノフルオロリン酸ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)、モノフルオロリン酸ビス(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピル)、モノフルオロリン酸ビス(2-メトキシエチル)、モノフルオロリン酸ビス(2-(2-メトキシエトキシ)エチル)、モノフルオロリン酸ビス(2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)エチル)、モノフルオロリン酸ビス(2-(2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル)、モノクロロリン酸ジメチル、モノクロロリン酸ジエチル、モノクロロリン酸ジプロピル、モノクロロリン酸ジイソプロピル、モノクロロリン酸ジブチル、モノクロロリン酸ジペンチル、モノクロロリン酸ジヘプチル、モノクロロリン酸ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)、モノクロロリン酸ビス(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピル)、モノクロロリン酸ビス(2-メトキシエチル)、モノクロロリン酸ビス(2-(2-メトキシエトキシ)エチル)、モノクロロリン酸ビス(2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)エチル)、モノクロロリン酸ビス(2-(2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル)、モノブロモリン酸ジメチル、モノブロモリン酸ジエチル、モノブロモリン酸ジプロピル、モノブロモリン酸ジイソプロピル、モノブロモリン酸ジブチル、モノブロモリン酸ジペンチル、モノブロモリン酸ジヘプチル、モノブロモリン酸ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)、モノブロモリン酸ビス(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピル)、モノブロモリン酸ビス(2-メトキシエチル)、モノブロモリン酸ビス(2-(2-メトキシエトキシ)エチル)、モノブロモリン酸ビス(2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)エチル)、モノブロモリン酸ビス(2-(2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル)、モノヨードリン酸ジメチル、モノヨードリン酸ジエチル、モノヨードリン酸ジプロピル、モノヨードリン酸ジイソプロピル、モノヨードリン酸ジブチル、モノヨードリン酸ジペンチル、モノヨードリン酸ジヘプチル、モノヨードリン酸ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)、モノヨードリン酸ビス(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピル)、モノヨードリン酸ビス(2-メトキシエチル)、モノヨードリン酸ビス(2-(2-メトキシエトキシ)エチル)、モノヨードリン酸ビス(2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)エチル)、モノヨードリン酸ビス(2-(2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル)、モノフルオロリン酸ビス(トリメチルシリル)、モノクロロリン酸ビス(トリメチルシリル)、モノブロモリン酸ビス(トリメチルシリル)、ヨードリン酸ビス(トリメチルシリル)、モノフルオロリン酸ビス(トリエチルシリル)、モノクロロリン酸ビス(トリエチルシリル)、モノブロモリン酸ビス(トリエチルシリル)、モノヨードリン酸ビス(トリエチルシリル)、モノフルオロリン酸ビス(ジメチルフェニルシリル)、モノクロロリン酸ビス(ジメチルフェニルシリル)、モノブロモリン酸ビス(ジメチルフェニルシリル)、モノヨードリン酸ビス(ジメチルフェニルシリル)、モノフルオロリン酸ビス(ジメチルビニルシリル)、モノクロロリン酸ビス(ジメチルビニルシリル)、モノブロモリン酸ビス(ジメチルビニルシリル)、モノヨードリン酸ビス(ジメチルビニルシリル)等が挙げられる。これらのリン酸エステルは一種単独で、又は二種以上を併用することができる。
【0047】
また、例示した化学式(2)で表されるリン酸エステルのうち、入手の容易性及び電気化学的安定性の観点からは、モノクロロリン酸ジメチル、モノクロロリン酸ジエチル、モノフルオロリン酸ジメチル、モノフルオロリン酸ジエチルが好ましく、モノフルオロリン酸ジメチル、モノフルオロリン酸ジエチルがより好ましい。
【0048】
化学式(3)で表されるリン酸エステルは、具体的には、例えば、ジフルオロリン酸メチル、ジフルオロリン酸エチル、ジフルオロリン酸プロピル、ジフルオロリン酸イソプロピル、ジフルオロリン酸ブチル、ジフルオロリン酸ペンチル、ジフルオロリン酸ヘキシル、ジフルオロリン酸ヘプチル、ジフルオロリン酸(2,2,2-トリフルオロエチル)、ジフルオロリン酸(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピル)、ジフルオロリン酸(2-メトキシエチル)、ジフルオロリン酸(2-(2-メトキシエトキシ)エチル)、ジフルオロリン酸(2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)エチル)、ジフルオロリン酸(2-(2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル)、ジクロロリン酸メチル、ジクロロリン酸エチル、ジクロロリン酸プロピル、ジクロロリン酸イソプロピル、ジクロロリン酸ブチル、ジクロロリン酸ペンチル、ジクロロリン酸ヘキシル、ジクロロリン酸ヘプチル、ジクロロリン酸(2,2,2-トリフルオロエチル)、ジクロロリン酸(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピル)、ジフルオロリン酸(2-メトキシエチル)、ジクロロリン酸(2-(2-メトキシエトキシ)エチル)、ジクロロリン酸(2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)エチル)、ジクロロリン酸(2-(2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル)、ジブロモリン酸メチル、ジブロモリン酸エチル、ジブロモリン酸プロピル、ジブロモリン酸イソプロビル、ジブロモリン酸ブチル、ジブロモリン酸ペンチル、ジブロモリン酸ヘキシル、ジブロモリン酸ヘプチル、ジブロモリン酸(2,2,2-トリフルオロエチル)、ジブロモリン酸(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピル)、ジブロモリン酸(2-メトキシエチル)、ジブロモリン酸(2-(2-メトキシエトキシ)エチル)、ジブロモリン酸(2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)エチル)、ジブロモリン酸(2-(2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル)、ジヨードリン酸メチル、ジヨードリン酸エチル、ジヨードリン酸プロピル、ジヨードリン酸イソプロピル、ジヨードリン酸ブチル、ジヨードリン酸ペンチル、ジヨードリン酸ヘキシル、ジヨードリン酸ヘプチル、ジヨードリン酸(2,2,2-トリフルオロエチル)、ジヨードリン酸(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピル)、ジヨードリン酸(2-メトキシエチル)、ジヨードリン酸(2-(2-メトキシエトキシ)エチル)、ジヨードリン酸(2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)エチル)、ジヨードリン酸(2-(2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル)、クロロフルオロリン酸メチル、クロロフルオロリン酸エチル、クロロフルオロリン酸プロピル、クロロフルオロリン酸イソプロピル、クロロフルオロリン酸ペンチル、クロロフルオロリン酸ヘキシル、クロロフルオロリン酸ヘプチル、クロロフルオロリン酸(2,2,2-トリフルオロエチル)、クロロフルオロリン酸(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピル)、クロロフルオロリン酸(2-メトキシエチル)、クロロフルオロリン酸(2-(2-メトキシエトキシ)エチル)、クロロフルオロリン酸(2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)エチル)、クロロフルオロリン酸(2-(2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル)、ブロモクロロリン酸メチル、ブロモフルオロリン酸エチル、ブロモフルオロリン酸プロピル、ブロモフルオロリン酸イソプロピル、ブロモフルオロリン酸ペンチル、ブロモフルオロリン酸ヘキシル、ブロモフルオロリン酸ヘプチル、ブロモフルオロリン酸(2,2,2-トリフルオロエチル)、ブロモフルオロリン酸(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピル)、ブロモフルオロリン酸(2-メトキシエチル)、ブロモフルオロリン酸(2-(2-メトキシエトキシ)エチル)、ブロモフルオロリン酸(2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)エチル)、ブロモフルオロリン酸(2-(2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル)、フルオロヨードリン酸メチル、フルオロヨードリン酸エチル、フルオロヨードリン酸プロピル、フルオロヨードリン酸イソプロピル、フルオロヨードリン酸ペンチル、フルオロヨードリン酸ヘキシル、フルオロヨードリン酸ヘプチル、フルオロヨードリン酸(2,2,2-トリフルオロエチル)、フルオロヨードリン酸(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピル)、フルオロヨードリン酸(2-メトキシエチル)、クロロフルオロリン酸(2-(2-メトキシエトキシ)エチル)、フルオロヨードリン酸(2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)エチル)、フルオロヨードリン酸(2-(2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル)、ブロモクロロリン酸メチル、ブロモクロロリン酸エチル、ブロモクロロリン酸プロピル、ブロモクロロリン酸イソプロピル、ブロモクロロリン酸ペンチル、ブロモクロロリン酸ヘキシル、ブロモクロロリン酸ヘプチル、ブロモクロロリン酸(2,2,2-トリフルオロエチル)、ブロモクロロリン酸(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピル)、ブロモクロロリン酸(2-メトキシエチル)、ブロモクロロリン酸(2-(2-メトキシエトキシ)エチル)、ブロモクロロリン酸(2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)エチル)、ブロモクロロリン酸(2-(2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル)、クロロヨードリン酸メチル、クロロヨードリン酸エチル、クロロヨードリン酸プロピル、クロロヨードリン酸イソプロピル、クロロヨードリン酸ペンチル、クロロヨードリン酸ヘキシル、クロロヨードリン酸ヘプチル、クロロヨードリン酸(2,2,2-トリフルオロエチル)、クロロヨードリン酸(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピル)、クロロヨードリン酸(2-メトキシエチル)、クロロフルオロリン酸(2-(2-メトキシエトキシ)エチル)、クロロヨードリン酸(2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)エチル)、クロロヨードリン酸(2-(2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)エトキシ)エチル、ジフルオロリン酸トリメチルシリル、ジクロロリン酸トリメチルシリル、ジブロモリン酸トリメチルシリル、ジヨードリン酸トリメチルシリル、ジフルオロリン酸トリエチルシリル、ジクロロリン酸トリエチルシリル、ジブロモリン酸トリエチルシリル、ジヨードリン酸トリエチルシリル、ジフルオロリン酸ジメチルフェニルシリル、ジクロロリン酸ジメチルフェニルシリル、ジブロモリン酸ジメチルフェニルシリル、ジヨードリン酸ジメチルフェニルシリル、ジフルオロリン酸ジメチルビニルシリル、ジクロロリン酸ジメチルビニルシリル、ジブロモリン酸ジメチルビニルシリル、ジヨードリン酸ジメチルビニルシリル、フルオロクロロリン酸トリメチルシリル、フルオロブロモリン酸トリメチルシリル、フルオロヨードリン酸トリメチルシリル、フルオロクロロリン酸トリエチルシリル、フルオロブロモリン酸トリエチルシリル、フルオロヨードリン酸トリエチルシリル、が挙げられる。これらのリン酸エステルは一種単独で、又は二種以上を併用することができる。
【0049】
また、例示した化学式(3)で表されるリン酸エステルのうち、入手の容易性及び電気化学的安定性の観点からは、ジクロロリン酸メチル、ジクロロリン酸エチル、ジフルオロリン酸メチル、ジフルオロリン酸ジエチルが好ましく、ジフルオロリン酸メチル、ジフルオロリン酸ジエチルがより好ましい。
【0050】
前記リン酸エステルの含有量は、非水電解液の全質量に対し20質量%以上であり、好ましくは20質量%以上、95質量%以下、より好ましくは30質量%以上、80質量%以下、さらに好ましくは40質量%以上、70質量%以下である。リン酸エステルの含有量をこれらの範囲にすることにより、非水電解液に対し良好な難燃性を付与することができる。
【0051】
[他の非水溶媒]
非水溶媒には、リン酸エステル以外に他の非水溶媒が含まれていてもよい。他の非水溶媒としては特に限定されず、例えば、環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル、環状エーテル、鎖状エーテル、ラクトン化合物、鎖状エステル、ニトリル化合物、アミド化合物、スルホン化合物、スルホキシド化合物等が挙げられる。これらの他の非水溶媒は、一種単独で、又は二種以上を併用することができる。また、これらの他の非水溶媒のうち、二次電池用非水溶媒として一般的な使用を可能にするとの観点からは、炭酸エステルが好ましい。
【0052】
前記環状炭酸エステルとしては特に限定されず、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等が挙げられる。これらの環状炭酸エステルは、一種単独で、又は二種以上を混合して用いることができる。
【0053】
前記鎖状炭酸エステルとしては特に限定されず、例えば、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等が挙げられる。これらの鎖状炭酸エステルは、一種単独で、又は二種以上を混合して用いることができる。
【0054】
前記環状エーテルとしては特に限定されず、例えば、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン等が挙げられる。これらの環状エーテルは、一種単独で、又は二種以上を混合して用いることができる。
【0055】
前記鎖状エーテルとしては特に限定されず、例えば、ジメトキシエタン、トリエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。これらの鎖状エーテルは、一種単独で、又は二種以上を混合して用いることができる。
【0056】
前記ラクトン化合物としては特に限定されず、例えば、γ-ブチロラクトン等が挙げられる。
【0057】
前記鎖状エステルとしては特に限定されず、例えば、メチルプロピオネート、メチルアセテート、エチルアセテート、メチルホルメート等が挙げられる。これらの鎖状エステルは、一種単独で、又は二種以上を混合して用いることができる。
【0058】
前記ニトリル化合物としては特に限定されず、例えば、アセトニトリル等が挙げられる。
【0059】
前記アミド化合物としては特に限定されず、例えば、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
【0060】
前記スルホン化合物としては特に限定されず、例えば、スルホラン、メチルスルホラン等が挙げられる。これらのスルホン化合物は、一種単独で、又は二種以上を混合して用いることができる。
【0061】
また、他の非水溶媒に於いては、分子中に含まれる炭化水素基の水素原子の少なくとも一部がフッ素原子で置換されたものも好適に用いることができる。
【0062】
例示した他の非水溶媒のうち、入手の容易さ及び二次電池の性能の向上の観点からは、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、γ-ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、テトラエチレングリコールジメチルエーテルが好ましい。また、二次電池の充電効率を向上させるとの観点からは、エチレンカーボネート及びプロピレンカーボネート等の環状カーボネートや、ジメチルカーボネート及びエチルメチルカーボネート等の鎖状炭酸エステルが好ましい。
【0063】
<電解質>
[ジフルオロリン酸塩及び硝酸塩]
電解質は、前述の通り、ジフルオロリン酸塩及び硝酸塩の少なくとも何れか1種を含む。ジフルオロリン酸塩及び硝酸塩は、リン酸エステルに対し溶解性を示すものが好ましい。ここで、本明細書に於いて「溶解性」とは、ジフルオロリン酸塩及び/又は硝酸塩が、例えば、25℃の非水溶媒100gに対し、0.05g以上溶解することを意味する。
【0064】
非水溶媒に対する溶解性及び二次電池の特性の観点からは、アルカリ金属イオンをカチオンとするジフルオロリン酸塩及び硝酸塩が好ましい。アルカリ金属イオンとしては、例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオンが挙げられる。これらのアルカリ金属イオンのうち、二次電池の特性及び資源的な観点からは、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオンが好ましい。
【0065】
前記電解質の前記非水溶媒に対する濃度は、0.1M~4Mの範囲が好ましく、0.2M~1.5Mの範囲がより好ましく、0.5M~1.2Mの範囲がさらに好ましい。電解質の濃度を0.1M以上にすることにより、非水電解液の電気伝導率が不十分となり、電気抵抗特性が低下するのを防止することができる。その一方、電解質の濃度を4M以下にすることにより、電解質が非水溶媒に対し飽和溶解度に達することにより非水電解液の粘度が上昇し、非水電解液の取扱性や二次電池の電気抵抗特性が低下するのを防止することができる。
【0066】
ジフルオロリン酸塩及び/又は硝酸塩のモル分率は、電解質の総モル数に対して0.1以上が好ましく、0.1以上、1.0以下がより好ましく、0.2以上、0.8以下がさらに好ましく、0.3以上、0.5以下が特に好ましい。ジフルオロリン酸塩及び/又は硝酸塩のモル分率を0.1以上にすることにより、二次電池のサイクル特性及び電気抵抗特性を一層改善することができる。
【0067】
[他の電解質]
前述の通り、電解質に於いてはジフルオロリン酸塩及び硝酸塩以外の他の電解質を併用することができる。他の電解質としては特に限定されず、例えば、PF 、CFSO 、CSO 、CSO 、CSO3-、N(SOF) 、N(CFSO 、N(CSO 、N(CFSO)(CFCO)、N(CFSO)(CSO、又はC(CFSO 等のアニオンを有するものや、ホウ素錯体塩、リン錯体塩、ルイス酸錯体塩、リン酸エステル塩等が挙げられる。これらの他の電解質は、一種単独で、又は二種以上を併用することができる。他の電解質については、以下にさらに詳述する。他の電解質のモル分率は、電解質の総モル数に対して、0.1以上、0.9以下の範囲が好ましく、0.2以上、0.8以下の範囲がより好ましく、0.3以上、0.5以下の範囲がさらに好ましい。これらの範囲にすることにより、二次電池のサイクル特性及び電気抵抗特性を一層改善することができる。
【0068】
1.ホウ素錯体塩
前記ホウ素錯体塩は、具体的には、以下の化学式(4)で表される。
【0069】
【化7】
【0070】
前記化学式(4)に於いて、Mn+は、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アルミニウムイオン、遷移金属イオン及びオニウムイオンからなる群より選ばれる何れか1種を表す。
【0071】
化学式(4)に於ける前記アルカリ金属イオンとしては特に限定されず、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、ルビジウムイオン、セシウムイオン等が挙げられる。これらは一種単独で、又は二種以上を併用することができる。
【0072】
化学式(4)に於ける前記アルカリ土類金属イオンとしては、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、ストロンチウムイオン、バリウムイオン等が挙げられる。これらは一種単独で、又は二種以上を併用することができる。
【0073】
化学式(4)に於ける前記遷移金属イオンとしては特に限定されず、例えば、マンガンイオン、コバルトイオン、ニッケルイオン、クロムイオン、銅イオン、銀イオン、モリブデンイオン、タングステンイオン、バナジウムイオン等が挙げられる。これらは一種単独で、又は二種以上を併用することができる。
【0074】
化学式(4)に於ける前記オニウムイオンとしては、アンモニウムイオン(NH4+)、第1級アンモニウムイオン、第2級アンモニウムイオン、第3級アンモニウムイオン、第4級アンモニウムイオン、第4級ホスホニウムイオン、スルホニウムイオン等が挙げられる。
【0075】
前記第1級アンモニウムイオンとしては特に限定されず、例えば、メチルアンモニウムイオン、エチルアンモニウムイオン、プロピルアンモニウムイオン、イソプロピルアンモニウムイオン等が挙げられる。これらは一種単独で、又は二種以上を併用することができる。
【0076】
前記第2級アンモニウムイオンとしては特に限定されず、例えば、ジメチルアンモニウムイオン、ジエチルアンモニウムイオン、ジプロピルアンモニウムイオン、ジブチルアンモニウムイオン、エチルメチルアンモニウムイオン、メチルプロピルアンモニウムイオン、メチルブチルアンモニウムイオン、プロピルブチルアンモニウムイオン、ジイソプロピルアンモニウムイオン等が挙げられる。これらは一種単独で、又は二種以上を併用することができる。
【0077】
前記第3級アンモニウムイオンとしては特に限定されず、例えば、トリメチルアンモニウムイオン、トリエチルアンモニウムイオン、トリプロピルアンモニウムイオン、トリブチルアンモニウムイオン、エチルジメチルアンモニウムイオン、ジエチルメチルアンモニウムイオン、トリイソプロピルアンモニウムイオン、ジメチルイソプロピルアンモニウムイオン、ジエチルイソプロピルアンモニウムイオン、ジメチルプロピルアンモニウムイオン、ブチルジメチルアンモニウムイオン、1-メチルピロリジニウムイオン、1-エチルピロリジニウムイオン、1-プロピルピロリジニウムイオン、1-ブチルプロピルピロリジニウムイオン、1-メチルイミダゾリウムイオン、1-エチルイミダゾリウムイオン、1-プロピルイミダゾリウムイオン、1-ブチルイミダゾリウムイオン、ピラゾリウムイオン、1-メチルピラゾリウムイオン、1-エチルピラゾリウムイオン、1-プロピルピラゾリウムイオン、1-ブチルピラゾリウムイオン、ピリジニウムイオン等が挙げられる。これらは一種単独で、又は二種以上を併用することができる。
【0078】
前記第4級アンモニウムイオンをなす第4級アンモニウムとしては特に限定されず、例えば、脂肪族4級アンモニウム類、イミダゾリウム類、ピリジニウム類、ピラゾリウム類、ピリダジニウム類等が挙げられる。これらは一種単独で、又は二種以上を併用することができる。
【0079】
さらに、前記脂肪族4級アンモニウム類としては特に限定されず、例えば、テトラエチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、テトライソプロピルアンモニウム、トリメチルエチルアンモニウム、ジメチルジエチルアンモニウム、メチルトリエチルアンモニウム、トリメチルプロピルアンモニウム、トリメチルイソプロピルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、トリメチルブチルアンモニウム、トリメチルペンチルアンモニウム、トリメチルヘキシルアンモニウム、1-エチル-1-メチル-ピロリジニウム、1-ブチル-1-メチルピロリジニウム、1-エチル-1-メチル-ピペリジニウム、1-ブチル-1-メチルピペリジニウム等が挙げられる。これらは一種単独で、又は二種以上を併用することができる。
【0080】
前記イミダゾリウム類としては特に限定されず、例えば、1.3ジメチル-イミダゾリウム、1-エチル-3-メチルイミダゾリウム、1-n-プロピル-3-メチルイミダゾリウム、1-n-ブチル-3-メチルイミダゾリウム、1-n-ヘキシル-3-メチルイミダゾリウム等が挙げられる。これらは一種単独で、又は二種以上を併用することができる。
【0081】
前記ピリジニウム類としては特に限定されず、例えば、1-メチルピリジニウム、1-エチルピリジニウム、1-n-プロピルピリジニウム等が挙げられる。これらは一種単独で、又は二種以上を併用することができる。
【0082】
前記ピラゾリウム類としては特に限定されず、例えば、1,2-ジメチルピラゾリウム、1-メチル-2-エチルピラゾリウム、1-プロピル-2-メチルピラゾリウム、1-メチル-2-ブチルピラゾリウム、1-メチルピラゾリウム、3-メチルピラゾリウム、4-メチルピラゾリウム、4-ヨードピラゾリウム、4-ブロモピラゾリウム、4-ヨード-3-メチルピラゾリウム、4-ブロモ-3-メチルピラゾリウム、3-トリフルオロメチルピラゾリウムが挙げられる。これらは一種単独で、又は二種以上を併用することができる。
【0083】
前記ピリダジニウム類としては特に限定されず、例えば、1-メチルピリダジニウム、1-エチルピリダジニウム、1-プロピルピリダジニウム、1-ブチルピリダジニウム、3-メチルピリダジニウム、4-メチルピリダジニウム、3-メトキシピリダジニウム、3,6-ジクロロピリダジニウム、3,6-ジクロ-4-メチルピリダジニウム、3-クロロ-6-メチルピリダジニウム、3-クロロ-6-メトキシピリダジニウムが挙げられる。これらは一種単独で、又は二種以上を併用することができる。
【0084】
前記第4級ホスホニウムイオンをなす第4級ホスホニウムとしては特に限定されず、例えば、ベンジルトリフェニルホスホニウム、テトラエチルホスホニウム、テトラフェニルホスホニウム等が挙げられる。これらは一種単独で、又は二種以上を併用することができる。
【0085】
前記スルホニウムイオンをなすスルホニウムとしては特に限定されず、例えば、トリメチルスルホニウム、トリフェニルスルホニウム、トリエチルスルホニウム等が挙げられる。これらは一種単独で、又は二種以上を併用することができる。
【0086】
前記Mn+の例示として列挙したもののうち、入手容易性の観点からは、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、カルシウムイオン、テトラアルキルアンモニウムイオン、アルキルイミダゾリウムイオン、アルキルピロリジニウムイオン、アルキルピリジニウムイオンが好ましい。
【0087】
前記化学式(4)に於けるL~Lはそれぞれ独立しており、任意に選択される1又は2つの組合せが、-OOC-COO-、-OOC-O-、-OOC-α-COO-、-O-α-O-又は-OOC-α-O-の環状構造を形成したものを表す。αは、炭素数が1~20、好ましくは1~10、より好ましくは1~5の炭化水素基;又は炭素数が1~20、好ましくは1~10、より好ましくは1~5の範囲であって、ヘテロ原子、不飽和結合若しくは環状構造を有する炭化水素基を表す。L~Lが-OOC-α-COO-、-O-α-O-又は-OOC-α-O-の環状構造の何れか1つを2組有する場合、それぞれのαは異なっていてもよい。ここで、ヘテロ原子とは、酸素原子、窒素原子又は硫黄原子を意味する。
【0088】
前記αとしては特に限定されず、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基等の直鎖アルキレン基;ヨードメチレン基、ジヨードメチレン基、ブロモメチレン基、ジブロモメチレン基、フルオロメチレン基、ジフルオロメチレン基、ヨードエチレン基、1,1-ジヨードエチレン基、1,2-ジヨードエチレン基、トリヨードエチレン基、テトラヨードエチレン基、クロロエチレン基、1,1-ジクロロエチレン基、1,2-ジクロロエチレン基、トリクロロエチレン基、テトラクロロエチレン基、フルオロエチレン基、1,1-ジフルオロエチレン基、1,2-ジフルオロエチレン基、トリフルオロエチレン基、テトラフルオロエチレン基等の含ハロゲン直鎖アルキレン基;シクロヘキシレン基、フェニレン基、ベンジレン基、ナフチレン基、アントラシレン基、ナフタシレン基、ペンタシレン基のような環状炭化水素基;及びその一部又は全部をハロゲンに置き換えたもの等が挙げられる。
【0089】
さらに、前記αが1,2-フェニレン基である場合、-O-α-O-はベンゼンジオラート基を表し、-O-α-COO-はサリチラート基を表す。
【0090】
また前記化学式(4)に於けるL~Lは、それぞれ独立して、ハロゲン原子、炭素数1~20、好ましくは1~10、より好ましくは1~5のアルキル基;炭素数1~20、好ましくは1~10、より好ましくは1~5のアルコキシ基;炭素数が1~20、好ましくは1~10、より好ましくは1~5の範囲内であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子、不飽和結合若しくは環状構造の少なくとも何れか1つを有するアルキル基;又は炭素数が1~20、好ましくは1~10、より好ましくは1~5の範囲内であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子、不飽和結合若しくは環状構造の少なくとも何れか1つを有するアルコキシ基であってもよい。ここで、前記ハロゲン原子とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を意味する。また、ヘテロ原子とは、酸素原子、窒素原子又は硫黄原子を意味する。
【0091】
前記L~Lは、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等の鎖状アルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基;ヨードメチル基、ブロモメチル基、クロロメチル基、フルオロメチル基、ジヨードメチル基、ジブロモメチル基、ジクロロメチル基、ジフルオロメチル基、トリヨードメチル基、トリブロモメチル基、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基、2-ヨードエチル基、2-ブロモエチル基、2-クロロエチル基、2-フルオロエチル基、1,2-ジヨードエチル基、1,2-ジブロモエチル基、1,2-ジクロロエチル基、1,2-ジフルオロエチル基、2,2-ジヨードエチル基、2,2-ジブロモエチル基、2,2-ジクロロエチル基、2,2-ジフルオロエチル基、2,2,2-トリブロモエチル基、2,2,2-トリクロロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロピル基等の鎖状含ハロゲンアルキル基;2-ヨードシクロヘキシル基、2-ブロモシクロヘキシル基、2-クロロシクロヘキシル基、2-フルオロシクロヘキシル基等の環状含ハロゲンアルキル基;2-プロペニル基、イソプロペニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基等の鎖状アルケニル基;2-シクロペンテニル基、2-シクロヘキセニル基、3-シクロヘキセニル基等の環状アルケニル基;2-プロピニル基、1-ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、1-ペンチニル基、2-ペンチニル基、3-ペンチニル基、4-ペンチニル基等の鎖状アルキニル基;フェニル基、3-メトキシフェニル基、4-メトキシフェニル基、3,5-ジメトキシフェニル基、4-フェノキシフェニル基等のアリール基;2-ヨードフェニル基、2-ブロモフェニル基、2-クロロフェニル基、2-フルオロフェニル基、3-ヨードフェニル基、3-ブロモフェニル基、3-クロロフェニル基、3-フルオロフェニル基、4-ヨードフェニル基、4-ブロモフェニル基、4-クロロフェニル基、4-フルオロフェニル基、3,5-ジヨードフェニル基、3,5-ジブロモフェニル基、3,5-ジクロロフェニル基、3,5-ジフルオロフェニル基等の含ハロゲンフェニル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基、ヘキソキシ基等の鎖状アルコキシ基;シクロペントキシ基、シクロヘキソキシ基等の環状アルコキシ基;2-ヨードエトキシ基、2-ブロモエトキシ基、2-クロロエトキシ基、2-フルオロエトキシ基、1,2-ジヨードエトキシ基、1,2-ジブロモエトキシ基、1,2-ジクロロトキシ基、1,2-ジフルオロエトキシ基、2,2-ジヨードエトキシ基、2,2-ジブロモエトキシ基、2,2-ジクロロエトキシ基、2,2-ジフルオロエトキシ基、2,2,2-トリブロモエトキシ基、2,2,2-トリクロロエトキシ基、2,2,2-トリフルオロエトキシ基、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロポキシ基等の鎖状含ハロゲンアルキル基;2-ヨードシクロヘキソキシ基、2-ブロモシクロヘキソキシ基、2-クロロシクロヘキソキシ基、2-フルオロシクロヘキソキシ基等の環状含ハロゲンアルキル基;2-プロペノキシ基、イソプロペノキシ基、2-ブテノキシ基、3-ブテノキシ基等の鎖状アルケニルアルコキシ基;2-シクロペンテノキシ基、2-シクロヘキセノキシ基、3-シクロヘキセノキシ基等の環状アルケニルアルコキシ基;2-プロピノキシ基、1-ブチノキシ基、2-ブチノキシ基、3-ブチノキシ基、1-ペンチノキシ基、2-ペンチノキシ基、3-ペンチノキシ基、4-ペンチノキシ基等の鎖状アルキニルアルコキシ基;フェノキシ基、3-メチルフェノキシ基、4-メチルフェノキシ基、3,5-ジメチルフェノキシ基等のアリールオキシ基;2-ヨードフェノキシ基、2-ブロモフェノキシ基、2-クロロフェノキシ基、2-フルオロフェノキシ基、3-ヨードフェノキシ基、3-ブロモフェノキシ基、3-クロロフェノキシ基、3-フルオロフェノキシ基、4-ヨードフェノキシ基、4-ブロモフェノキシ基、4-クロロフェノキシ基、4-フルオロフェノキシ基、3,5-ジヨードフェノキシ基、3,5-ジブロフェノキシ基、3,5-ジクロロフェノキシ基、3,5-ジフルオロフェノキシ基等の含ハロゲンフェノキシ基等が挙げられる。
【0092】
前記L~Lは、相互に独立しており、同種でもよく異種であってもよい。また前記に例示した官能基群は単なる例示に過ぎず、これらに限定されるものではない。
【0093】
尚、前記化学式(4)に於いて、前記nは価数を表す。例えば、前記Mが1価のカチオンである場合はn=1であり、2価のカチオンである場合はn=2であり、3価のカチオンである場合はn=3である。
【0094】
前記化学式(4)で表されるホウ素錯体塩の具体例としては、例えば、ビスオキサラトボレート、ビスマロナトボレート、ビスサリチラートボレート、ビス[1,2’-ベンジオラート(2)-O,O’]ボレート、オキサラトマロナトボレート、オキサラトサリチラートボレート、オキサラト[1,2’-ベンジオラート(2)-O,O’]ボレート、ジヨードオキサラトボレート、ジブロモオキサラトボレート、ジクロロオキサラトボレート、ジフルオロオキサラトボレート、ヨードクロロオキサラトボレート、ヨードブロモオキサラトボレート、ヨードフルオロオキサラトボレート、ブロモクロロオキサラトボレート、ブロモフルオロオキサラトボレート、クロロフルオロオキサラトボレート、ジヨードマロナトボレート、ジブロモマロナトボレート、ジクロロマロナトボレート、ジフルオロマロナトボレート、ヨードクロロマロナトボレート、ヨードブロモマロナトボレート、ヨードフルオロマロナトボレート、ブロモクロロマロナトボレート、ブロモフルオロマロナトボレート、クロロフルオロマロナトボレート、ジヨードサリチラートボレート、ジブロモサリチラートボレート、ジクロロサリチラートボレート、ジフルオロサリチラートボレート、ヨードクロロサリチラートボレート、ヨードブロモサリチラートボレート、ヨードフルオロサリチラートボレート、ブロモクロロサリチラートボレート、ブロモフルオロサリチラートボレート、クロロフルオロサリチラートボレート、ジヨード[1,2’-ベンジオラート(2)-O,O’]ボレート、ジブロモ[1,2’-ベンジオラート(2)-O,O’]ボレート、ジクロロ[1,2’-ベンジオラート(2)-O,O’]ボレート、ジフルオロ[1,2’-ベンジオラート(2)-O,O’]ボレート、ヨードクロロ[1,2’-ベンジオラート(2)-O,O’]ボレート、ヨードブロモ[1,2’-ベンジオラート(2)-O,O’]ボレート、ヨードフルオロ[1,2’-ベンジオラート(2)-O,O’]ボレート、ブロモクロロ[1,2’-ベンジオラート(2)-O,O’]ボレート、ブロモフルオロ[1,2’-ベンジオラート(2)-O,O’]ボレート、クロロフルオロ[1,2’-ベンジオラート(2)-O,O’]ボレート、テトラヨードボレート、テトラブロモボレート、テトラクロロボレート、テトラフルオロボレート、ヨードトリブロモボレート、ヨードトリクロロボレート、ヨードトリフルオロボレート、ジヨードジブロモボレート、ジヨードジクロロボレート、ジヨードジフルオロボレート、トリヨードブロモボレート、トリヨードクロロボレート、トリヨードフルオロボレート、ブロモトリクロロボレート、ブロモトリフルオロボレート、ジブロモジクロロボレート、ジブロモジフルオロボレート、トリブロモクロロボレート、トリブロモフルオロボレート、クロロトリフルオロボレート、ジクロロジフルオロボレート、ヨードブロモクロロフルオロボレート、テトラメチルボレート、テトラエチルボレート、テトラフェニルボレート、テトラメトキシボレート、テトラエトキシボレート、テトラフェノキシボレート、エチルジメチルフェニルボレート、ブチルエチルメチルフェニルボレート、エトキシジメトキシフェノキシボレート、ジメチルオキサラトボレート、ジメチルマロナトボレート、ジメチルサリチラートボレート、ジメチル[1,2’-ベンジオラート(2)-O,O’]ボレート、エチルメチルオキサラトボレート、フェニルメチルオキサラトボレート、ヨードメチルオキサラトボレート、ブロモメチルオキサラトボレート、クロロメチルオキサラトボレート、フルオロメチルオキサラトボレート、ヨードエチルオキサラトボレート、ブロモエチルオキサラトボレート、クロロエチルオキサラトボレート、フルオロエチルオキサラトボレート、エトキシメトキシオキサラトボレート、ヨードメトキシオキサラトボレート、ブロモメトキシオキサラトボレート、クロロメトキシオキサラトボレート又はフルオロメトキシオキサラトボレート等のホウ素錯体アニオンを備えたものが挙げられる。
【0095】
例示したホウ素錯体塩のうち、入手の容易さの観点からは、ビスオキサラトボレート、ビスサリチラートボレート又はビス[1,2’-ベンジオラート(2)-O,O’]ボレートのホウ素錯体アニオンを備えたホウ素錯体塩が好ましい。
【0096】
尚、前記に示した化学式(4)で表されるホウ素錯体塩の具体例は単なる例示であり、本実施の形態はこれらに限定されるものではない。
【0097】
2.リン錯体塩
前記リン錯体塩は、具体的には、以下の化学式(5)で表される。
【0098】
【化8】
【0099】
前記化学式(5)に於けるMn+及び価数nは、前記化学式(4)で述べたのと同様である。従って、その詳細な説明は省略する。
【0100】
前記化学式(5)に於けるL~L10はそれぞれ独立しており、任意に選択される少なくとも1つの組合せが、-OOC-COO-、-OOC-O-、-OOC-β-COO-、-O-β-O-又は-OOC-β-O-の環状構造を形成したものを表す。その場合の前記βは、炭素数が1~20、好ましくは1~10、より好ましくは1~5の炭化水素基;又は炭素数が1~20、好ましくは1~10、より好ましくは1~5の範囲であって、ヘテロ原子、不飽和結合若しくは環状構造を有する炭化水素基を表す。前記L~L10が前記-OOC-β-COO-、-O-β-O-又は-OOC-β-O-の環状構造の何れか1つを2組以上有する場合、それぞれのβは異なっていてもよい。ここで、ヘテロ原子とは、酸素原子、窒素原子又は硫黄原子を意味する。
【0101】
前記βとしては特に限定されず、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基等の直鎖アルキレン基;ヨードメチレン基、ジヨードメチレン基、ブロモメチレン基、ジブロモメチレン基、フルオロメチレン基、ジフルオロメチレン基、ヨードエチレン基、1,1-ジヨードエチレン基、1,2-ジヨードエチレン基、トリヨードエチレン基、テトラヨードエチレン基、クロロエチレン基、1,1-ジクロロエチレン基、1,2-ジクロロエチレン基、トリクロロエチレン基、テトラクロロエチレン基、フルオロエチレン基、1,1-ジフルオロエチレン基、1,2-ジフルオロエチレン基、トリフルオロエチレン基、テトラフルオロエチレン基等の含ハロゲン直鎖アルキレン基;シクロヘキシレン基、フェニレン基、ベンジレン基、ナフチレン基、アントラシレン基、ナフタシレン基、ペンタシレン基のような環状炭化水素基;及びその一部又は全部をハロゲンに置き換えたもの等が挙げられる。
【0102】
さらに、前記βが1,2-フェニレン基である場合、-O-β-O-はベンゼンジオラート基を表し、-O-β-COO-はサリチラート基を表す。
【0103】
また、前記化学式(5)に於けるL~L10は、それぞれ独立して、ハロゲン原子;アルキル基;アルコキシ基;アルキルチオ基;ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか一つを有するアルキル基(以下、「ハロゲン原子等を有するアルキル基」という。);ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか一つを有するアルコキシ基(以下、「ハロゲン原子等を有するアルコキシ基」という。);又はハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか一つを有するアルキルチオ基(以下、「ハロゲン原子等を有するアルキルチオ基」という。)を表すものであってもよい。前記アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ハロゲン原子等を有するアルキル基、ハロゲン原子等を有するアルコキシ基及びハロゲン原子等を有するアルキルチオ基の炭素数は1~20の範囲であり、好ましくは1~10、より好ましくは1~4である。また、不飽和結合の数は1~10の範囲が好ましく、1~5の範囲がより好ましく、1~3の範囲が特に好ましい。
【0104】
前記ハロゲン原子及びヘテロ原子は、前記化学式(4)で述べたのと同様である。また、前記ハロゲン原子等を有するアルキル基、ハロゲン原子等を有するアルコキシ基及びハロゲン原子等を有するアルキルチオ基に於いて、前記ハロゲン原子及びヘテロ原子は、これらの官能基中の水素の一部又は全部がこれらのハロゲン原子及び/又はヘテロ原子の何れかで置換されていてもよい。
【0105】
前記L~L10は、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等の鎖状アルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基;ヨードメチル基、ブロモメチル基、クロロメチル基、フルオロメチル基、ジヨードメチル基、ジブロモメチル基、ジクロロメチル基、ジフルオロメチル基、トリヨードメチル基、トリブロモメチル基、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基、2-ヨードエチル基、2-ブロモエチル基、2-クロロエチル基、2-フルオロエチル基、1,2-ジヨードエチル基、1,2-ジブロモエチル基、1,2-ジクロロエチル基、1,2-ジフルオロエチル基、2,2-ジヨードエチル基、2,2-ジブロモエチル基、2,2-ジクロロエチル基、2,2-ジフルオロエチル基、2,2,2-トリブロモエチル基、2,2,2-トリクロロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、ヘキサフルオロ-2-プロピル基等の鎖状含ハロゲンアルキル基;2-ヨードシクロヘキシル基、2-ブロモシクロヘキシル基、2-クロロシクロヘキシル基、2-フルオロシクロヘキシル基等の環状含ハロゲンアルキル基;2-プロペニル基、イソプロペニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基等の鎖状アルケニル基;2-シクロペンテニル基、2-シクロヘキセニル基、3-シクロヘキセニル基等の環状アルケニル基;2-プロピニル基、1-ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、1-ペンチニル基、2-ペンチニル基、3-ペンチニル基、4-ペンチニル基等の鎖状アルキニル基;フェニル基、3-メトキシフェニル基、4-メトキシフェニル基、3,5-ジメトキシフェニル基、4-フェノキシフェニル基等のアリール基;2-ヨードフェニル基、2-ブロモフェニル基、2-クロロフェニル基、2-フルオロフェニル基、3-ヨードフェニル基、3-ブロモフェニル基、3-クロロフェニル基、3-フルオロフェニル基、4-ヨードフェニル基、4-ブロモフェニル基、4-クロロフェニル基、4-フルオロフェニル基、3,5-ジヨードフェニル基、3,5-ジブロモフェニル基、3,5-ジクロロフェニル基、3,5-ジフルオロフェニル基等の含ハロゲンフェニル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基、ヘキソキシ基等の鎖状アルコキシ基;シクロペントキシ基、シクロヘキソキシ基等の環状アルコキシ基;2-ヨードエトキシ基、2-ブロモエトキシ基、2-クロロエトキシ基、2-フルオロエトキシ基、1,2-ジヨードエトキシ基、1,2-ジブロモエトキシ基、1,2-ジクロロエトキシ基、1,2-ジフルオロエトキシ基、2,2-ジヨードエトキシ基、2,2-ジブロモエトキシ基、2,2-ジクロロエトキシ基、2,2-ジフルオロエトキシ基、2,2,2-トリブロモエトキシ基、2,2,2-トリクロロエトキシ基、2,2,2-トリフルオロエトキシ基、ヘキサフルオロ-2-プロポキシ基等の鎖状含ハロゲンアルコキシ基;2-ヨードシクロヘキソキシ基、2-ブロモシクロヘキソキシ基、2-クロロシクロヘキソキシ基、2-フルオロシクロヘキソキシ基等の環状含ハロゲンアルコキシ基;2-プロペノキシ基、イソプロペノキシ基、2-ブテノキシ基、3-ブテノキシ基等の鎖状アルケニルアルコキシ基;2-シクロペンテノキシ基、2-シクロヘキセノキシ基、3-シクロヘキセノキシ基等の環状アルケニルアルコキシ基;2-プロピノキシ基、1-ブチノキシ基、2-ブチノキシ基、3-ブチノキシ基、1-ペンチノキシ基、2-ペンチノキシ基、3-ペンチノキシ基、4-ペンチノキシ基等の鎖状アルキニルアルコキシ基;フェノキシ基、3-メチルフェノキシ基、4-メチルフェノキシ基、3,5-ジメチルフェノキシ基等のアリールオキシ基;2-ヨードフェノキシ基、2-ブロモフェノキシ基、2-クロロフェノキシ基、2-フルオロフェノキシ基、3-ヨードフェノキシ基、3-ブロモフェノキシ基、3-クロロフェノキシ基、3-フルオロフェノキシ基、4-ヨードフェノキシ基、4-ブロモフェノキシ基、4-クロロフェノキシ基、4-フルオロフェノキシ基、3,5-ジヨードフェノキシ基、3,5-ジブロフェノキシ基、3,5-ジクロロフェノキシ基、3,5-ジフルオロフェノキシ基等の含ハロゲンフェノキシ基;メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、イオプロピルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基等のアルキルチオ基等が挙げられる。
【0106】
尚、前記化学式(5)で表されるリン化合物としては、例えば、入手が容易なリチウムジフルオロビスオキサレートホスフェート、ナトリウムジフルオロビスオキサレートホスフェート、リチウムテトラフルオロオキサレートホスフェート、ナトリウムテトラフルオロオキサレートホスフェート等が挙げられる。
【0107】
3.ルイス酸錯体塩
前記ルイス酸錯体塩に於けるルイス酸錯体アニオンは、無機アニオン又は有機アニオンと、BF、PF、AlF等のルイス酸とからなる。
【0108】
前記無機アニオンとしては特に限定されず、例えば、炭酸アニオン、硫酸アニオン、フルオロ硫酸アニオン、クロロ硫酸アニオン、ブロモ硫酸アニオン、ヨード硫酸アニオン、リン酸アニオン、モノフルオロリン酸アニオン、モノクロロリン酸アニオン、モノブロモリン酸アニオン、モノヨードリン酸アニオン、ジフルオロリン酸アニオン、ジクロロリン酸アニオン、ジブロモリン酸アニオン、ジヨードリン酸アニオン等が挙げられる。
【0109】
前記有機アニオンとしては特に限定されず、例えば、有機カルボン酸アニオン、有機スルホン酸アニオン、有機リン酸アニオンが挙げられる。さらに、有機カルボン酸アニオンとしては特に限定されず、例えば、ギ酸アニオン、酢酸アニオン、プロピオン酸アニオン、酪酸アニオン、吉草酸アニオン、トリフルオロ酢酸アニオン、ペンタフルオロプロピオン酸アニオン、ヘプタフルオロ酪酸アニオン、ノナフルオロ吉草酸アニオン等が挙げられる。また、有機スルホン酸アニオンとしては特に限定されず、例えば、メタンスルホン酸アニオン、エタンスルホン酸アニオン、プロパンスルホン酸、ブタンスルホン酸アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、ペンタフルオロエタンスルホン酸アニオン、ヘプタフルオロプロパンスルホン酸アニオン、ノナフルオロブタンスルホン酸アニオン等が挙げられる。有機リン酸アニオンとしては特に限定されず、例えば、オクチルリン酸アニオン、ドデシルリン酸アニオン、オクタデシルリン酸アニオン、フェニルリン酸アニオン、ノニルフェニルリン酸アニオン等が挙げられる。
【0110】
ルイス酸錯体塩を形成するルイス酸としては特に限定されず、例えば、以下の化学式(6)~(8)で表されるものが挙げられる。
【0111】
【化9】
【0112】
【化10】
【0113】
【化11】
【0114】
前記化学式(6)に於いて、A~Aはそれぞれ独立して、水素原子;ハロゲン原子;アルキル基:アルコキシ基;アルキルチオ基;ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか一つを有するアルキル基(以下、「ハロゲン原子等を有するアルキル基」という。);ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか一つを有するアルコキシ基(以下、「ハロゲン原子等を有するアルコキシ基」という。);又はハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか一つを有するアルキルチオ基(以下、「ハロゲン原子等を有するアルキルチオ基」という。)を表す。前記アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ハロゲン原子等を有するアルキル基、ハロゲン原子等を有するアルコキシ基及びハロゲン原子等を有するアルキルチオ基の炭素数は1~20の範囲であり、好ましくは1~10、より好ましくは1~4である。また、不飽和結合の数は1~10の範囲が好ましく、1~5の範囲がより好ましく、1~3の範囲が特に好ましい。
【0115】
前記A~Aは、より具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等の鎖状アルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基;ヨードメチル基、ブロモメチル基、クロロメチル基、フルオロメチル基、ジヨードメチル基、ジブロモメチル基、ジクロロメチル基、ジフルオロメチル基、トリヨードメチル基、トリブロモメチル基、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基、2-ヨードエチル基、2-ブロモエチル基、2-クロロエチル基、2-フルオロエチル基、1,2-ジヨードエチル基、1,2-ジブロモエチル基、1,2-ジクロロエチル基、1,2-ジフルオロエチル基、2,2-ジヨードエチル基、2,2-ジブロモエチル基、2,2-ジクロロエチル基、2,2-ジフルオロエチル基、2,2,2-トリブロモエチル基、2,2,2-トリクロロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、ヘキサフルオロ-2-プロピル基等の鎖状含ハロゲンアルキル基;2-ヨードシクロヘキシル基、2-ブロモシクロヘキシル基、2-クロロシクロヘキシル基、2-フルオロシクロヘキシル基等の環状含ハロゲンアルキル基;2-プロペニル基、イソプロペニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基等の鎖状アルケニル基;2-シクロペンテニル基、2-シクロヘキセニル基、3-シクロヘキセニル基等の環状アルケニル基;2-プロピニル基、1-ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、1-ペンチニル基、2-ペンチニル基、3-ペンチニル基、4-ペンチニル基等の鎖状アルキニル基;フェニル基、3-メトキシフェニル基、4-メトキシフェニル基、3,5-ジメトキシフェニル基、4-フェノキシフェニル基等のアリール基;2-ヨードフェニル基、2-ブロモフェニル基、2-クロロフェニル基、2-フルオロフェニル基、3-ヨードフェニル基、3-ブロモフェニル基、3-クロロフェニル基、3-フルオロフェニル基、4-ヨードフェニル基、4-ブロモフェニル基、4-クロロフェニル基、4-フルオロフェニル基、3,5-ジヨードフェニル基、3,5-ジブロモフェニル基、3,5-ジクロロフェニル基、3,5-ジフルオロフェニル基等の含ハロゲンフェニル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基、ヘキソキシ基等の鎖状アルコキシ基;シクロペントキシ基、シクロヘキソキシ基等の環状アルコキシ基;2-ヨードエトキシ基、2-ブロモエトキシ基、2-クロロエトキシ基、2-フルオロエトキシ基、1,2-ジヨードエトキシ基、1,2-ジブロモエトキシ基、1,2-ジクロロエトキシ基、1,2-ジフルオロエトキシ基、2,2-ジヨードエトキシ基、2,2-ジブロモエトキシ基、2,2-ジクロロエトキシ基、2,2-ジフルオロエトキシ基、2,2,2-トリブロモエトキシ基、2,2,2-トリクロロエトキシ基、2,2,2-トリフルオロエトキシ基、ヘキサフルオロ-2-プロポキシ基等の鎖状含ハロゲンアルコキシ基;2-ヨードシクロヘキソキシ基、2-ブロモシクロヘキソキシ基、2-クロロシクロヘキソキシ基、2-フルオロシクロヘキソキシ基等の環状含ハロゲンアルコキシ基;2-プロペノキシ基、イソプロペノキシ基、2-ブテノキシ基、3-ブテノキシ基等の鎖状アルケニルアルコキシ基;2-シクロペンテノキシ基、2-シクロヘキセノキシ基、3-シクロヘキセノキシ基等の環状アルケニルアルコキシ基;2-プロピノキシ基、1-ブチノキシ基、2-ブチノキシ基、3-ブチノキシ基、1-ペンチノキシ基、2-ペンチノキシ基、3-ペンチノキシ基、4-ペンチノキシ基等の鎖状アルキニルアルコキシ基;フェノキシ基、3-メチルフェノキシ基、4-メチルフェノキシ基、3,5-ジメチルフェノキシ基等のアリールオキシ基;2-ヨードフェノキシ基、2-ブロモフェノキシ基、2-クロロフェノキシ基、2-フルオロフェノキシ基、3-ヨードフェノキシ基、3-ブロモフェノキシ基、3-クロロフェノキシ基、3-フルオロフェノキシ基、4-ヨードフェノキシ基、4-ブロモフェノキシ基、4-クロロフェノキシ基、4-フルオロフェノキシ基、3,5-ジヨードフェノキシ基、3,5-ジブロフェノキシ基、3,5-ジクロロフェノキシ基、3,5-ジフルオロフェノキシ基等の含ハロゲンフェノキシ基;メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、イオプロピルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基等のアルキルチオ基等が挙げられる。
【0116】
前記化学式(7)に於いて、前記A~Aはそれぞれ独立して、水素原子;ハロゲン原子;アルキル基;アルコキシ基;アルキルチオ基;ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか一つを有するアルキル基(以下、「ハロゲン原子等を有するアルキル基」という。);ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか一つを有するアルコキシ基(以下、「ハロゲン原子等を有するアルコキシ基」という。);又はハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか一つを有するアルキルチオ基(以下、「ハロゲン原子等を有するアルキルチオ基」という。)を表す。前記アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ハロゲン原子等を有するアルキル基、ハロゲン原子等を有するアルコキシ基及びハロゲン原子等を有するアルキルチオ基の炭素数は1~20の範囲であり、好ましくは1~10、より好ましくは1~4である。また、不飽和結合の数は1~10の範囲が好ましく、1~5の範囲がより好ましく、1~3の範囲が特に好ましい。
【0117】
前記A~Aは限定されず、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等の鎖状アルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基;ヨードメチル基、ブロモメチル基、クロロメチル基、フルオロメチル基、ジヨードメチル基、ジブロモメチル基、ジクロロメチル基、ジフルオロメチル基、トリヨードメチル基、トリブロモメチル基、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基、2-ヨードエチル基、2-ブロモエチル基、2-クロロエチル基、2-フルオロエチル基、1,2-ジヨードエチル基、1,2-ジブロモエチル基、1,2-ジクロロエチル基、1,2-ジフルオロエチル基、2,2-ジヨードエチル基、2,2-ジブロモエチル基、2,2-ジクロロエチル基、2,2-ジフルオロエチル基、2,2,2-トリブロモエチル基、2,2,2-トリクロロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、ヘキサフルオロ-2-プロピル基等の鎖状含ハロゲンアルキル基;2-ヨードシクロヘキシル基、2-ブロモシクロヘキシル基、2-クロロシクロヘキシル基、2-フルオロシクロヘキシル基等の環状含ハロゲンアルキル基;2-プロペニル基、イソプロペニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基等の鎖状アルケニル基;2-シクロペンテニル基、2-シクロヘキセニル基、3-シクロヘキセニル基等の環状アルケニル基;2-プロピニル基、1-ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、1-ペンチニル基、2-ペンチニル基、3-ペンチニル基、4-ペンチニル基等の鎖状アルキニル基;フェニル基、3-メトキシフェニル基、4-メトキシフェニル基、3,5-ジメトキシフェニル基、4-フェノキシフェニル基等のアリール基;2-ヨードフェニル基、2-ブロモフェニル基、2-クロロフェニル基、2-フルオロフェニル基、3-ヨードフェニル基、3-ブロモフェニル基、3-クロロフェニル基、3-フルオロフェニル基、4-ヨードフェニル基、4-ブロモフェニル基、4-クロロフェニル基、4-フルオロフェニル基、3,5-ジヨードフェニル基、3,5-ジブロモフェニル基、3,5-ジクロロフェニル基、3,5-ジフルオロフェニル基等の含ハロゲンフェニル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基、ヘキソキシ基等の鎖状アルコキシ基;シクロペントキシ基、シクロヘキソキシ基等の環状アルコキシ基;2-ヨードエトキシ基、2-ブロモエトキシ基、2-クロロエトキシ基、2-フルオロエトキシ基、1,2-ジヨードエトキシ基、1,2-ジブロモエトキシ基、1,2-ジクロロエトキシ基、1,2-ジフルオロエトキシ基、2,2-ジヨードエトキシ基、2,2-ジブロモエトキシ基、2,2-ジクロロエトキシ基、2,2-ジフルオロエトキシ基、2,2,2-トリブロモエトキシ基、2,2,2-トリクロロエトキシ基、2,2,2-トリフルオロエトキシ基、ヘキサフルオロ-2-プロポキシ基等の鎖状含ハロゲンアルコキシ基;2-ヨードシクロヘキソキシ基、2-ブロモシクロヘキソキシ基、2-クロロシクロヘキソキシ基、2-フルオロシクロヘキソキシ基等の環状含ハロゲンアルコキシ基;2-プロペノキシ基、イソプロペノキシ基、2-ブテノキシ基、3-ブテノキシ基等の鎖状アルケニルアルコキシ基;2-シクロペンテノキシ基、2-シクロヘキセノキシ基、3-シクロヘキセノキシ基等の環状アルケニルアルコキシ基;2-プロピノキシ基、1-ブチノキシ基、2-ブチノキシ基、3-ブチノキシ基、1-ペンチノキシ基、2-ペンチノキシ基、3-ペンチノキシ基、4-ペンチノキシ基等の鎖状アルキニルアルコキシ基;フェノキシ基、3-メチルフェノキシ基、4-メチルフェノキシ基、3,5-ジメチルフェノキシ基等のアリールオキシ基;2-ヨードフェノキシ基、2-ブロモフェノキシ基、2-クロロフェノキシ基、2-フルオロフェノキシ基、3-ヨードフェノキシ基、3-ブロモフェノキシ基、3-クロロフェノキシ基、3-フルオロフェノキシ基、4-ヨードフェノキシ基、4-ブロモフェノキシ基、4-クロロフェノキシ基、4-フルオロフェノキシ基、3,5-ジヨードフェノキシ基、3,5-ジブロフェノキシ基、3,5-ジクロロフェノキシ基、3,5-ジフルオロフェノキシ基等の含ハロゲンフェノキシ基;メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、イオプロピルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基等のアルキルチオ基等が挙げられる。
【0118】
前記化学式(8)に於いて、前記A~A11はそれぞれ独立して、水素原子;ハロゲン原子;アルキル基;アルコキシ基;アルキルチオ基;ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか一つを有するアルキル基(以下、「ハロゲン原子等を有するアルキル基」という。);ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか一つを有するアルコキシ基(以下、「ハロゲン原子等を有するアルコキシ基」という。);又はハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか一つを有するアルキルチオ基(以下、「ハロゲン原子等を有するアルキルチオ基」という。)を表す。前記アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、ハロゲン原子等を有するアルキル基、ハロゲン原子等を有するアルコキシ基及びハロゲン原子等を有するアルキルチオ基の炭素数は1~20の範囲であり、好ましくは1~10、より好ましくは1~4である。また、不飽和結合の数は1~10の範囲が好ましく、1~5の範囲がより好ましく、1~3の範囲が特に好ましい。
【0119】
前記A~A11は限定されず、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等の鎖状アルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基;ヨードメチル基、ブロモメチル基、クロロメチル基、フルオロメチル基、ジヨードメチル基、ジブロモメチル基、ジクロロメチル基、ジフルオロメチル基、トリヨードメチル基、トリブロモメチル基、トリクロロメチル基、トリフルオロメチル基、2-ヨードエチル基、2-ブロモエチル基、2-クロロエチル基、2-フルオロエチル基、1,2-ジヨードエチル基、1,2-ジブロモエチル基、1,2-ジクロロエチル基、1,2-ジフルオロエチル基、2,2-ジヨードエチル基、2,2-ジブロモエチル基、2,2-ジクロロエチル基、2,2-ジフルオロエチル基、2,2,2-トリブロモエチル基、2,2,2-トリクロロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、ヘキサフルオロ-2-プロピル基等の鎖状含ハロゲンアルキル基;2-ヨードシクロヘキシル基、2-ブロモシクロヘキシル基、2-クロロシクロヘキシル基、2-フルオロシクロヘキシル基等の環状含ハロゲンアルキル基;2-プロペニル基、イソプロペニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基等の鎖状アルケニル基;2-シクロペンテニル基、2-シクロヘキセニル基、3-シクロヘキセニル基等の環状アルケニル基;2-プロピニル基、1-ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、1-ペンチニル基、2-ペンチニル基、3-ペンチニル基、4-ペンチニル基等の鎖状アルキニル基;フェニル基、3-メトキシフェニル基、4-メトキシフェニル基、3,5-ジメトキシフェニル基、4-フェノキシフェニル基等のアリール基;2-ヨードフェニル基、2-ブロモフェニル基、2-クロロフェニル基、2-フルオロフェニル基、3-ヨードフェニル基、3-ブロモフェニル基、3-クロロフェニル基、3-フルオロフェニル基、4-ヨードフェニル基、4-ブロモフェニル基、4-クロロフェニル基、4-フルオロフェニル基、3,5-ジヨードフェニル基、3,5-ジブロモフェニル基、3,5-ジクロロフェニル基、3,5-ジフルオロフェニル基等の含ハロゲンフェニル基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基、ヘキソキシ基等の鎖状アルコキシ基;シクロペントキシ基、シクロヘキソキシ基等の環状アルコキシ基;2-ヨードエトキシ基、2-ブロモエトキシ基、2-クロロエトキシ基、2-フルオロエトキシ基、1,2-ジヨードエトキシ基、1,2-ジブロモエトキシ基、1,2-ジクロロエトキシ基、1,2-ジフルオロエトキシ基、2,2-ジヨードエトキシ基、2,2-ジブロモエトキシ基、2,2-ジクロロエトキシ基、2,2-ジフルオロエトキシ基、2,2,2-トリブロモエトキシ基、2,2,2-トリクロロエトキシ基、2,2,2-トリフルオロエトキシ基、ヘキサフルオロ-2-プロポキシ基等の鎖状含ハロゲンアルコキシ基;2-ヨードシクロヘキソキシ基、2-ブロモシクロヘキソキシ基、2-クロロシクロヘキソキシ基、2-フルオロシクロヘキソキシ基等の環状含ハロゲンアルコキシ基;2-プロペノキシ基、イソプロペノキシ基、2-ブテノキシ基、3-ブテノキシ基等の鎖状アルケニルアルコキシ基;2-シクロペンテノキシ基、2-シクロヘキセノキシ基、3-シクロヘキセノキシ基等の環状アルケニルアルコキシ基;2-プロピノキシ基、1-ブチノキシ基、2-ブチノキシ基、3-ブチノキシ基、1-ペンチノキシ基、2-ペンチノキシ基、3-ペンチノキシ基、4-ペンチノキシ基等の鎖状アルキニルアルコキシ基;フェノキシ基、3-メチルフェノキシ基、4-メチルフェノキシ基、3,5-ジメチルフェノキシ基等のアリールオキシ基;2-ヨードフェノキシ基、2-ブロモフェノキシ基、2-クロロフェノキシ基、2-フルオロフェノキシ基、3-ヨードフェノキシ基、3-ブロモフェノキシ基、3-クロロフェノキシ基、3-フルオロフェノキシ基、4-ヨードフェノキシ基、4-ブロモフェノキシ基、4-クロロフェノキシ基、4-フルオロフェノキシ基、3,5-ジヨードフェノキシ基、3,5-ジブロフェノキシ基、3,5-ジクロロフェノキシ基、3,5-ジフルオロフェノキシ基等の含ハロゲンフェノキシ基;メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ブチルチオ基、イオプロピルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基等のアルキルチオ基等が挙げられる。
【0120】
化学式(6)~化学式(8)で表されるルイス酸の具体例としては、例えば、BF、PF、AlF3、AlCl等が挙げられる。また、化学式(6)~化学式(8)で表されるルイス酸に於いて、ルイス酸性をさらに強く発現させるとの観点からは、化学構造中にハロゲン元素が含まれるものが好ましい。その様なルイス酸としては、具体的には、例えば、BF、PF、AlCl等が挙げられる。
【0121】
ルイス酸錯体塩に於けるカチオンとしては、前記ホウ素錯体塩と同様、アルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、アルミニウムイオン、遷移金属イオン及びオニウムイオンからなる群より選ばれる何れか1種が表される。従って、その詳細な説明は省略する。
【0122】
4.リン酸エステル塩
前記リン酸エステル塩は、具体的には、以下の化学式(9)で表される。
【0123】
【化12】
【0124】
前記化学式(9)に於けるMn+及び価数nは、前記化学式(4)で述べたのと同様である。従って、その詳細な説明は省略する。
【0125】
前記化学式(9)に於いて、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数が1~20の炭化水素基;又は炭素数が1~20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか1つを有する炭化水素基を表す。あるいは、RとRは、炭素数が1~20の炭化水素基、又は炭素数が1~20の範囲であって、ハロゲン原子、ヘテロ原子若しくは不飽和結合の少なくとも何れか1つを有する炭化水素基の何れかであって、相互に結合して環状構造を形成するものを表す。
【0126】
前記炭化水素基又はハロゲン原子等を有する炭化水素基としては、具体的には、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等の鎖状アルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の環状アルキル基;2-ヨードエチル基、2-ブロモエチル基、2-クロロエチル基、2-フルオロエチル基、1,2-ジヨードエチル基、1,2-ジブロモエチル基、1,2-ジクロロエチル基、1,2-ジフルオロエチル基、2,2-ジヨードエチル基、2,2-ジブロモエチル基、2,2-ジクロロエチル基、2,2-ジフルオロエチル基、2,2,2-トリブロモエチル基、2,2,2-トリクロロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、ヘキサフルオロ-2-プロピル基等の鎖状含ハロゲンアルキル基;2-ヨードシクロヘキシル基、2-ブロモシクロヘキシル基、2-クロロシクロヘキシル基、2-フルオロシクロヘキシル基等の環状含ハロゲンアルキル基;2-プロペニル基、イソプロペニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基等の鎖状アルケニル基;2-シクロペンテニル基、2-シクロヘキセニル基、3-シクロヘキセニル基等の環状アルケニル基;2-プロピニル基、1-ブチニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、1-ペンチニル基、2-ペンチニル基、3-ペンチニル基、4-ペンチニル基等の鎖状アルキニル基;フェニル基、3-メトキシフェニル基、4-メトキシフェニル基、3,5-ジメトキシフェニル基、4-フェノキシフェニル基等のアリール基;2-ヨードフェニル基、2-ブロモフェニル基、2-クロロフェニル基、2-フルオロフェニル基、3-ヨードフェニル基、3-ブロモフェニル基、3-クロロフェニル基、3-フルオロフェニル基、4-ヨードフェニル基、4-ブロモフェニル基、4-クロロフェニル基、4-フルオロフェニル基、3,5-ジヨードフェニル基、3,5-ジブロモフェニル基、3,5-ジクロロフェニル基、3,5-ジフルオロフェニル基等の含ハロゲンフェニル基;1-ナフチル基、2-ナフチル基、3-アミノ-2-ナフチル基等のナフチル基等が挙げられる。
【0127】
尚、前記ハロゲン原子とは、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素の原子を意味し、前記炭化水素基中の水素の一部又は全部がこれらのハロゲン原子の何れかで置換されていてもよい。また、ヘテロ原子とは、酸素、窒素又は硫黄等の原子を意味する。さらに、不飽和結合の数は1~10の範囲が好ましく、1~5の範囲がより好ましく、1~3の範囲が特に好ましい。
【0128】
さらに、前記RとRは、前記炭化水素基、又は前記ハロゲン原子等を有する炭化水素基の何れかであって、相互に結合して環状構造を形成していてもよい。この場合、前記炭化水素基又はハロゲン原子等を有する炭化水素基としては、具体的には、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基等の直鎖アルキレン基;ヨードメチレン基、ジヨードメチレン基、ブロモメチレン基、ジブロモメチレン基、フルオロメチレン基、ジフルオロメチレン基、ヨードエチレン基、1,1-ジヨードエチレン基、1,2-ジヨードエチレン基、トリヨードエチレン基、テトラヨードエチレン基、クロロエチレン基、1,1-ジクロロエチレン基、1,2-ジクロロエチレン基、トリクロロエチレン基、テトラクロロエチレン基、フルオロエチレン基、1,1-ジフルオロエチレン基、1,2-ジフルオロエチレン基、トリフルオロエチレン基、テトラフルオロエチレン基等の含ハロゲン直鎖アルキレン基;シクロヘキシレン基、フェニレン基、ベンジレン基、ナフチレン基、アントラシレン基、ナフタシレン基、ペンタシレン基のような環状炭化水素基;及びその一部又は全部をハロゲン原子等に置き換えたもの等が挙げられる。
【0129】
前記RとRは、前記に例示した官能基群に於いて、同種でもよく相互に異なっていてもよい。また前記に例示した官能基群は単なる例示に過ぎず、これらに限定されるものではない。
【0130】
前記化学式(9)で表されるリン酸エステル塩に於けるアニオンの具体例としては、ジメチルリン酸アニオン、ジエチルリン酸アニオン、ジプロピルリン酸アニオン、ビス(2,2,2-トリフルオロエチル)リン酸アニオン、ビス(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピル)リン酸アニオン等が挙げられる。
【0131】
以上の通り例示したホウ素錯体塩等の他の電解質に於いては、入手の容易性の観点から、BF 、PF 、N(CFSO 、又はN(SOF) のカチオンを有するものが好ましく、BF 、PF 又はN(SOF) のカチオンを有するものがより好ましい。また、電池特性の向上の観点からは、PF 又はN(SOF) のカチオンを有するものが好ましい。
【0132】
<添加剤>
本実施の形態の非水電解液に於いては、非水溶媒及び電解質とは別に、添加剤を含有させてもよい。
添加剤としては特に限定されず、例えば、ホウ酸エステル、酸無水物、不飽和結合を有する環状カーボネート、ハロゲン原子を有する環状カーボネート、環状スルホン酸エステル、アセトアセチル基を有するアミン類及びリン化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物が挙げられる。
【0133】
1.ホウ酸エステル
前記ホウ酸エステルとしては、本実施の形態の非水電解液及びそれを用いた二次電池の特性を損なうものでなければ、その種類に特に制限はなく、種々のものを選択することができる。具体的には、例えば、ホウ酸トリメチル、ホウ酸トリエチル、ホウ酸トリイソプロピル、ホウ酸トリブチル、ホウ酸トリペンチル、ホウ酸トリヘキシル、ホウ酸トリへプチル、ホウ酸トリフェニル、2ホウ酸トリス(2,2,2-ヨードエチル)、ホウ酸トリス(2,2,2-トリブロモエチル)、ホウ酸トリス(2,2,2-トリクロロエチル)ホウ酸トリス(2,2,2-トリフルオロエチル)ホウ酸トリス(4-ヨードフェニル)、ホウ酸トリス(4-ブロモフェニル)、ホウ酸トリス(4-クロロフェニル)、ホウ酸トリス(4-フルオロフェニル)、ホウ酸ジエチルメチル、ホウ酸エチルジメチル等が挙げられる。
【0134】
2.酸無水物
前記酸無水物としては、本実施の形態の非水電解液及びそれを用いた二次電池の特性を損なうものでなければ、その種類に特に制限はなく、種々のものを選択することができる。具体的には、例えば、酢酸無水物、プロピオン酸無水物、酪酸無水物、吉草酸無水物、ヘキサン酸無水物、へプタン酸無水物、オクタン酸無水物、ノナン酸無水物、デカン酸無水物、エイコサン酸無水物、ドコサン酸無水物、安息香酸無水物、4-メトキシ安息香酸無水物、ジフェニル酢酸無水物、クロトン酸無水物、シクロヘキサンカルボン酸無水物、エライジン酸無水物、イソ酪酸無水物、イソ吉草酸無水物、ラウリン酸無水物、リノール酸無水物、ミリスチン酸無水物、アンゲリカ酸無水物、クロロジフルオロ酢酸無水物、トリクロロ酢酸無水物、ジフルオロ酢酸無水物、トリフルオロ酢酸無水物、4-トリフルオロメチル安息香酸無水物等の直鎖カルボン酸無水物、フタル酸無水物、3-アセトアミドフタル酸無水物、4,4’-カルボニルジフタル酸無水物、4,4’-ビフタル酸無水物、3-ヨードフタル酸無水物、3-ブロモフタル酸無水物、3-クロロフタル酸無水物、3-フルオロフタル酸無水物、4-ヨードフタル酸無水物、4-ブロモフタル酸無水物、4-クロロフタル酸無水物、4-フルオロフタル酸無水物、4,5-ジヨードフタル酸無水物、4,5-ジブロモフタル酸無水物、4,5-ジクロロフタル酸無水物、4,5-ジフルオロフタル酸無水物、4,4’-スルホニルジフタル酸無水物、3-ニトロフタル酸無水物、4-ニトロフタル酸無水物、exo-3,6-エポキシヘキサヒドロフタル酸無水物、exo-3,6-エポキシ-1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸無水物、テトラヨードフタル酸無水物、テトラクロロフタル酸無水物、テトラフルオロフタル酸無水物、4-tert-ブチルフタル酸無水物、4-エチニルフタル酸無水物、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、コハク酸無水物、(R)-(+)-2-アセトキシコハク酸無水物、(S)-(-)-2-アセトキシコハク酸無水物、2-ブテン-1-イルコハク酸無水物、ブチルコハク酸無水物、デシルコハク酸無水物、2,3-ジメチルコハク酸無水物、2-ドデセン-1-イルコハク酸無水物、ドデシルコハク酸無水物、オクタデセニコハク酸無水物、(2,7-オクタジエン-1-イル)コハク酸無水物、n-オクチルコハク酸無水物、ヘキサデシルコハク酸無水物、マレイン酸無水物、2,3-ビス(2,4,5-トリメチル-3-チエニル)マレイン酸無水物、2-(-2-カルボキシエチル)-3-メチル-マレイン酸無水物、2,3-ジメチルマレイン酸無水物、2,3-ジフェニルマレイン酸無水物、フェニルマレイン酸無水物、4-ペンテン-1,2-ジカルボン酸無水物、2,3-アントラセンジカルボン酸無水物、ビシクロ[2,2,2]オクト-5-エン-2,3-ジカルボン酸無水物、4-ブロモ-1,8-ナフタレンジカルボン酸無水物、(±)-trans-1,2-シクロヘキサンジカルボン酸無水物、cis-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、2,5-ジブロモ-3,4-チオフェンジカルボン酸無水物、5,6-ジヒドロ-1,4-ジチイン-2,3-ジカルボン酸無水物、2,2’-ビフェニルジカルボン酸無水物、4-メチルシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸無水物、3-メチル-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、4-メチル-4-シクロヘキセン-1,2-ジカルボン酸無水物、2,3-ナフタレンジカルボン酸無水物、3,4-チオフェンジカルボン酸無水物、1,8-ナフタレンジカルボン酸無水物、5-ノルボネン-2,3-ジカルボン酸無水物、1,2-シクロプロパンジカルボン酸無水物、グルタル酸無水物、3,3-ペンタメチレングルタル酸無水物、2,2-ジメチルグルタル酸無水物、3,3-ジメチルグルタル酸無水物、3-メチルグルタル酸無水物、2-フタルイミドグルタル酸無水物、3,3-テトラメチレングルタル酸無水物、N-メチルイサト酸無水物、4-ヨードイサト酸無水物、4-ブロモイサト酸無水物、4-クロロイサト酸無水物、4-フルオロイサト酸無水物、5-ヨードイサト酸無水物、5-ブロモイサト酸無水物、5-クロロイサト酸無水物、5-フルオロイサト酸無水物、イタコン酸無水物、カロン酸無水物、シトラコン酸無水物、ジグリコール酸無水物、1,2-ナフタル酸無水物、ピロメリット酸無水物、ヘット酸無水物、2,2,3,3,4,4-ヘキサフルオロペンタン二酸無水物等の環状カルボンサン無水物、トリフルオロメタンスルホン酸無水物、p-トルエンスルホン酸無水物等の直鎖スルホン酸無水物、2-スルホ安息香酸無水物、テトラヨード-O-スルホ安息香酸無水物、テトラブロモ-O-スルホ安息香酸無水物、テトラクロロ-O-スルホ安息香酸無水物、テトラフルオロ-O-スルホ安息香酸無水物等の環状スルホン酸無水物、ジフェニルホスフィン酸等の鎖状ホスフィン酸無水物、1-プロパンホスホン酸無水物等の環状ホスホン酸無水物、3,4-ジヨードフェニルボロン酸無水物、3,4-ジブロモフェニルボロン酸無水物、3,4-ジクロロフェニルボロン酸無水物、3,4-ジフルオロフェニルボロン酸無水物、4-ヨードフェニルボロン酸無水物、4-ブロモフェニルボロン酸無水物、4-クロロフェニルボロン酸無水物、4-フルオロフェニルボロン酸無水物、(m-ターフェニルボロン酸無水物、3,4,5-トリヨードフェニルボロン酸無水物、3,4,5-トリブロモフェニルボロン酸無水物、3,4,5-トリクロロフェニルボロン酸無水物、3,4,5-トリフルオロフェニルボロン酸無水物等が挙げられる。これらの酸無水物のうち、本実施の形態に於いては環状構造を有しているものが好ましく、さらに分子内に不飽和結合を有しているものが好ましい。尚、酸無水物は、入手しやすさの観点と、環状構造及び分子内に不飽和結合を有しているとの観点からは、無水マレイン酸が特に好ましい。
【0135】
3.不飽和結合を有する環状カーボネート
前記不飽和結合を有する環状カーボネートとしては、本実施の形態の非水電解液及びそれを用いた二次電池の特性を損なうものでなければ、その種類に特に制限はなく、種々のものを選択することができる。前記不飽和結合の数は1~10が好ましく、1~5がより好ましく、1~3が特に好ましい。不飽和結合を有する環状カーボネートとしては、具体的には、例えば、ビニレンカーボネート、ヨードビニレンカーボネート、ブロモビニレンカーボネート、クロロビニレンカーボネート、フルオロビニレンカーボネート、1,2-ジヨードビニレンカーボネート、1,2-ジブロモビニレンカーボネート、1,2-ジクロロビニレンカーボネート、1,2-ジフルオロビニレンカーボネート、メチルビニレンカーボネート、ヨードメチルビニレンカーボネート、ブロモメチルビニレンカーボネート、クロロメチルビニレンカーボネート、フルオロメチルビニレンカーボネート、ジクロロメチルビニレンカーボネート、ジブロモメチルビニレンカーボネート、ジクロロメチルビニレンカーボネート、ジフルオロメチルビニレンカーボネート、トリヨードメチルビニレンカーボネート、トリブロモメチルビニレンカーボネート、トリクロロメチルビニレンカーボネート、トリフルオロメチルビニレンカーボネート、エチルビニレンカーボネート、プロピルビニレンカーボネート、ブチルビニレンカーボネート、ジメチルビニレンカーボネート、ジエチルビニレンカーボネート、ジプロピルビニレンカーボネート、ビニルエチレンカーボネート等が挙げられる。尚、前記不飽和結合を有する環状カーボネートとしては、入手しやすさの観点から、ビニレンカーボネートが好ましい。
【0136】
4.ハロゲン原子を有する環状カーボネート
前記載のハロゲン原子を有する環状カーボネートとしては、本実施の形態の非水電解液及びそれを用いた二次電池の特性を損なうものでなければ、その種類に特に制限はなく、種々のものを選択することができる。ここで、ハロゲン原子とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を意味する。ハロゲン原子を有する環状カーボネートとしては、具体的には、例えば、ヨードエチレンカーボネート、ブロモエチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、1,2-ジヨードエチレンカーボネート、1,2-ジブロモエチレンカーボネート、1,2-ジクロロエチレンカーボネート、1,2-ジフルオロエチレンカーボネート等が挙げられる。尚、前記不飽和結合を有する環状カーボネートとしては、入手しやすさの観点から、クロロエチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネートが好ましい。
【0137】
5.環状スルホン酸エステル
前記環状スルホン酸エステルとしては、本実施の形態の非水電解液及びそれを用いた二次電池の特性を損なうものでなければ、その種類に特に制限はなく、種々のものを選択することができる。環状スルホン酸エステルとしては、具体的には、例えば、1,3-プロパンスルトン、2,4-ブタンスルトン、1,4-ブタンスルトン、エチレンサルファイト等が挙げられる。尚、前記環状スルホン酸エステルとしては、入手しやすさの観点から、1,3-プロパンスルトン、エチレンサルファイトが好ましい。
【0138】
6.アセトアセチル基を有するアミン類
前記アセトアセチル基を有するアミン類としては、本実施の形態の非水電解液及びそれを用いた二次電池の特性を損なうものでなければ、その種類に特に制限はなく、種々のものを選択することができる。アセトアセチル基を有するアミン類の具体例としては、例えば、N,N-ジメチルアセトアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアセトアミド、N,N-ジプロピルアセトアセトアミド、N,N-ジブチルアセトアセトアミド、N,N-エチルメチルアセトアセトアミド、N,N-メチルプルピルアセトアセトアミド、N,N-ブチルメチルアセトアセトアミド等が挙げられる。但し、これらの化合物の具体例は単なる例示に過ぎず、本実施の形態はこれらに限定されるものではない。
【0139】
7.リン化合物
前記リン化合物としては、本実施の形態の非水電解液及びそれを用いた二次電池の特性を損なうものでなければ特に限定されず、例えば、ホスフィン類、ホスホン酸類等が挙げられる。ホスフィン類の具体例としては、例えば、トリメリルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリフェニルホスフィン等が挙げられる。また、ホスホン酸類の具体例としては、例えば、ジメチルホスファイト、ジエチルホスファイト、ジブチルホスファイト、ジフェニルホスファイト、ビス(2,2,2,―トリフルオロエチル)ホスファイト等が挙げられる。
【0140】
添加剤の含有量は、非水電解液の全質量に対し0.05質量%~50質量%の範囲内であることが好ましく、0.1質量%~30質量%の範囲内であることがより好ましく、0.5質量%~20質量%の範囲内であることが特に好ましい。前記含有量を0.05質量%以上にすることにより、添加剤としての効果、即ち、電極表面に一層安定した皮膜を形成することができる。その一方、前記添加量を20質量%以下にすることにより、非水電解液中の電解質の非水溶媒に対する溶解性が過度に低下するのを抑制することができる。
【0141】
<非水電解液の製造>
本実施の形態の非水電解液は、例えば、化学式(1)~(3)で表されるリン酸エステルの少なくとも何れか1種を含む非水溶媒に、ジフルオロリン酸塩及び/又は硝酸塩を所定量加えることで製造することができる。この際、ジフルオロリン酸塩及び硝酸塩が過飽和となり不溶分が析出するのは好ましくない。また、非水溶媒、並びにジフルオロリン酸塩及び硝酸塩は、製造効率を低下させない範囲内で予め精製等して、不純物が極力少ないものを用いることが好ましい。電解質としてジフルオロリン酸塩及び硝酸塩の両方を用いる場合、非水溶媒に添加する順序は特に限定されず任意である。また、非水電解液に添加剤をさらに含有させる場合、添加剤の順序は特に限定されず任意である。
【0142】
<その他>
本実施の形態に係る非水電解液には、従来公知の他の添加剤が添加されていてもよい。この場合、他の添加剤の含有量は、適宜必要に応じて設定することができる。
【0143】
(非水系二次電池)
次に、本実施の形態に係る非水系二次電池(以下、「二次電池」という。)について、図1に基づき以下に説明する。図1は、本実施の形態に係る二次電池の概略を示す断面模式図である。
【0144】
本実施の形態の二次電池は、リチウムイオン二次電池、ナトリウムイオン二次電池、カリウムイオン二次電池、マグネシウムイオン二次電池、カルシウムイオン二次電池等に適用可能である。
【0145】
二次電池は、図1に示す様に、正極缶4と負極缶5とで形成される内部空間に、正極缶4側から正極1、セパレータ3、負極2、スペーサー7の順に積層された積層体が収納された構造を有している。負極缶5とスペーサー7との間にスプリング8を介在させることによって、正極1と負極2を適度に圧着固定している。非水電解液は、正極1、セパレータ3及び負極2の間に含浸されている。正極缶4及び負極缶5の間にガスケット6を介在させた状態で、正極缶4及び負極缶5を挟持させることによって両者を結合し、前記積層体を密閉状態にしている。
【0146】
正極1に於ける正極活物質層の材料としては特に限定されず、例えば、リチウムイオンが拡散可能な構造を持つ遷移金属化合物、又はその遷移金属化合物とリチウムの酸化物が挙げられる。具体的には、LiCoO;LiNiO;LiMn;LiMnOとLiMeO(MeはMn、Co又はNiの何れかの金属元素を表す。)との固溶体;LiFePO;LiCoPO;LiMnPO;LiFePOF;LiNiCoMn(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、x+y+z=1);LiNiCoAl(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、x+y+z=1);LiFeF;TiO、V、MoO等の酸化物;TiS、FeS等の硫化物;硫黄;ポリアセチレン、ポリパラフェニレン、ポリアニリン、ポリピロール等の導電性高分子;活性炭;ラジカルを発生するポリマー;カーボン材料等が挙げられる。
【0147】
正極1は、前述の正極活物質を、公知の導電助剤や結着剤と共に加圧成型することにより、又は正極活物質を公知の導電助剤や結着剤と共にピロリドン等の有機溶剤に混合し、ペースト状にしたものをアルミニウム箔等の集電体に塗工後、乾燥することにより得ることができる。
【0148】
前記負極2に於ける負極活物質層の材料としては、金属イオンを吸蔵(析出)、放出(溶解)することが可能な材料であれば特に限定されず、例えば、金属複合酸化物、リチウム金属、リチウム合金、ナトリウム金属、ナトリウム合金、カリウム金属、カリウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、カルシウム金属、カルシウム合金、アルミニウム、アルミニウム合金、ケイ素、ケイ素系合金、スズ系合金、金属酸化物、ポリアセチレン等の導電性重合体、Li-Co-Ni系材料、炭素材料等が挙げられる。
【0149】
また、負極にアルカリ金属やアルカリ土類金属を用いる場合には、電解液中に二次電池の種類に対応した金属イオンを電解質として溶解しておき、充電過程で集電体に析出した金属を負極活物質として利用することもできる。この場合、負極側には集電体のみを設けておけばよく、電池構成を簡素化できるメリットがある。
【0150】
前記金属複合酸化物としては特に限定されず、例えば、LiFe(0≦x≦1)、LiWO(0≦x≦1)、SnMe 1-xMe (Me=Mn、Fe、Pb、Geであり、Me=Al、B、P、Si、周期律表の第1~3族の元素、ハロゲンであり、0<x≦1、1≦y≦3、1≦z≦8)等が挙げられる。
【0151】
前記金属酸化物としては特に限定されず、例えばSnO、SnO、SiO(0<x<)、PbO、PbO、Pb、Pb、Sb、Sb、Sb、GeO、GeO、Bi、Bi、Bi等が挙げられる。
【0152】
前記炭素材料としては特に限定されず、例えば天然黒鉛、人造黒鉛、ホウ素化黒鉛、フッ化黒鉛、メソカーボンマイクロビーズ、ピッチ系炭素繊維黒鉛化物、カーボンナノチューブ、ハードカーボン、フラーレン、グラフェン等が挙げられる。
【0153】
負極2は、前記電極材料の箔状のものや粉末状のものを使用できる。粉末状の場合は、公知の導電助剤及び結着剤と共に加圧成型することにより、又は公知の導電助剤及び結着剤と共にピロリドン等の有機溶剤に混合し、ペースト状にしたものを銅箔等の集電体に塗工後、乾燥することにより得ることができる。
【0154】
本実施の形態に係るリチウムイオン二次電池には、正極1と負極2の短絡を防止するために、両者の間に通常、セパレータ3が介在される。セパレータ3の材質や形状は特に制限されないが、上述の非水電解液が通過しやすく、絶縁体で、化学的に安定な材質であるものが好ましい。例えば、各種の高分子材料からなる微多孔性のフィルム、シート、不織布、それらの表面をガラスコーティングしたもの、ガラス繊維の不織布等が挙げられる。高分子材料の具体例としては、ナイロン(登録商標)、ニトロセルロース、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系高分子が用いられる。電気化学的な安定性・化学的安定性の観点からは、ポリオレフィン系高分子が好ましい。
【0155】
本実施の形態のリチウムイオン二次電池の最適な使用電圧は、正極1と負極2の組み合わせによって異なり、通常は、2.4~4.6Vの範囲内で使用可能である。
【0156】
本実施の形態のリチウムイオン二次電池の形状については特に制限はないが、図1に示すコイン型セルの他に、例えば、円筒型、角型、ラミネート型等が挙げられる。
【0157】
本実施の形態に係る二次電池は十分な難燃性を有し、優れたサイクル特性と抵抗特性を示すことができ、本実施の形態の非水電解液は、例えばリチウムイオン二次電池に好適に用いることができる。但し、図1に示すリチウムイオン二次電池は、本発明の二次電池の一態様を例示的に示したものであり、本発明の二次電池はこれに限定されるものではない。
【実施例0158】
以下に、この発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但し、この実施例に記載されている材料や配合量等は、特に限定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定するものではない。
【0159】
(実施例1)
<非水電解液の作製>
露点が-70℃以下のアルゴン雰囲気ドライボックス内で、エチレンカーボネート(EC、キシダ化学(株)製、リチウムバッテリーグレード)と、リン酸トリエチル(TEP、東京化成(株)製)とを混合して非水溶媒を調製した。非水溶媒に於けるECとTEPの混合比は、体積比率でEC:TEP=5:5とした。
【0160】
次に、非水溶媒に、電解質として、LiPO及びLiPFを混合した。このとき、LiPOの濃度は0.5モル/リットル、LiPFの濃度は0.5モル/リットルとなる様にした。これにより、本実施例に係る非水電解液を調製した。
(実施例2)
本実施例に於いては、非水溶媒に於けるECとTEPの混合比を、体積比率でEC:TEP=7:3に変更した。それ以外は、実施例1と同様にして本実施例に係る非水電解液を調製した。
【0161】
(実施例3)
本実施例に於いては、電解質としてLiPOのみを用い、かつ、その濃度を1.0モル/リットルに変更した。それ以外は、実施例1と同様にして本実施例に係る非水電解液を調製した。
【0162】
(実施例4)
本実施例に於いては、非水溶媒に於けるECとTEPの混合比を、体積比率でEC:TEP=2:8に変更した。また、電解質としてLiPOのみを用い、かつ、その濃度を1.0モル/リットルに変更した。それら以外は、実施例1と同様にして本実施例に係る非水電解液を調製した。
【0163】
(実施例5)
本実施例に於いては、非水溶媒に於けるECとTEPの混合比を、体積比率でEC:TEP=2:8に変更した。それ以外は、実施例1と同様にして本実施例に係る非水電解液を調製した。
【0164】
(実施例6)
本実施例に於いては、非水溶媒に於けるECとTEPの混合比を、体積比率でEC:TEP=2:8に変更した。また、電解質であるLiPOの濃度を0.8モル/リットル、LiPFの濃度を0.2モル/リットルにそれぞれ変更した。それら以外は、実施例1と同様にして本実施例に係る非水電解液を調製した。
【0165】
(実施例7)
本実施例に於いては、非水溶媒に於けるECとTEPの混合比を、体積比率でEC:TEP=2:8に変更した。また、電解質であるLiPOの濃度を0.2モル/リットル、LiPFの濃度を0.8モル/リットルにそれぞれ変更した。それら以外は、実施例1と同様にして本実施例に係る非水電解液を調製した。
【0166】
(実施例8)
本実施例に於いては、非水溶媒に於けるECとTEPの混合比を、体積比率でEC:TEP=2:8に変更した。また、電解質であるLiPOの濃度を0.1モル/リットル、LiPFの濃度を0.9モル/リットルにそれぞれ変更した。それら以外は、実施例1と同様にして本実施例に係る非水電解液を調製した。
【0167】
(実施例9)
本実施例に於いては、非水溶媒に於けるECとTEPの混合比を、体積比率でEC:TEP=2:8に変更した。また電解質として、LiPFをLiTFSI(Li(CFSON)に変更した。それら以外は、実施例1と同様にして本実施例に係る非水電解液を調製した。
【0168】
(実施例10)
本実施例に於いては、非水溶媒として、エチレンカーボネートとモノフルオロリン酸ジエチルからなる混合溶媒を用い、エチレンカーボネートとモノフルオロリン酸ジエチルの体積比率を2:8に変更した。さらに、電解質としてLiPOのみを用い、かつ、その濃度を1.0モル/リットルに変更した。それら以外は、実施例1と同様にして本実施例に係る非水電解液を調製した。
【0169】
(実施例11)
本実施例に於いては、非水溶媒に於けるECとTEPの混合比を、体積比率でEC:TEP=2:8に変更した。また電解質としてLiNOのみを用い、かつその濃度を1.0モル/リットルとした。それら以外は、実施例1と同様にして本実施例に係る非水電解液を調製した。
【0170】
(実施例12)
本実施例に於いては、非水溶媒として、エチレンカーボネートとリン酸ジエチル(2-(2-(2-メトキシエトキシ)エトキシ)エチル)からなる混合溶媒を用い、エチレンカーボネートとモノフルオロリン酸ジエチルの体積比率を2:8に変更した。また、電解質として、LiNOのみを用い、かつ、その濃度を1.0モル/リットルとした。それら以外は、実施例1と同様にして本実施例に係る非水電解液を調製した。
【0171】
(実施例13)
本実施例に於いては、非水溶媒に於けるECとTEPの混合比を、体積比率でEC:TEP=2:8に変更した。また電解質としてLiNO及びLiTFSIを用い、かつ、それぞれの濃度を0.5モル/リットルとした。それら以外は、実施例1と同様にして本実施例に係る非水電解液を調製した。
【0172】
(実施例14)
本実施例に於いては、非水溶媒に於けるECとTEPの混合比を、体積比率でEC:TEP=2:8に変更した。また電解質として、LiPOをLiNOに変更した。それら以外は、実施例1と同様にして本実施例に係る非水電解液を調製した。
【0173】
(実施例15)
本実施例に於いては、非水溶媒に於けるECとTEPの混合比を、体積比率でEC:TEP=2:8に変更した。また電解質として、LiPFをLiNOに変更した。それら以外は、実施例1と同様にして本実施例に係る非水電解液を調製した。
【0174】
(実施例16)
本実施例に於いては、非水溶媒に於けるECとTEPの混合比を、体積比率でEC:TEP=2:8に変更した。また、電解質として、LiNOを濃度が0.33モル/リットル、LiPOを濃度が0.33モル/リットル、LiPFを濃度が0.33モル/リットルとなる様に非水溶媒に混合した。それら以外は、実施例1と同様にして本実施例に係る非水電解液を調製した。
【0175】
(実施例17)
本実施例に於いては、非水溶媒として、エチレンカーボネートと、リン酸トリエチル及びモノフルオロリン酸ジエチルからなる混合溶媒を用い、エチレンカーボネートとリン酸トリエチルとモノフルオロリン酸ジエチルの体積比率を2:4:4に変更した。さらに、電解質としてLiPOのみを用い、かつ、その濃度を1.0モル/リットルに変更した。それら以外は、実施例1と同様にして本実施例に係る非水電解液を調製した。
【0176】
(実施例18)
本実施例に於いては、非水溶媒としてリン酸トリメチル(TMP)のみからなる溶媒に変更した。また、電解質としてLiNO、LiPO及びLiPFを用い、それらの濃度をそれぞれ、LiNOが0.33モル/リットル、LiPOが0.33モル/リットル、LiPFが0.33モル/リットルとなる様に非水溶媒に混合した。それら以外は、実施例1と同様にして本実施例に係る非水電解液を調製した。
【0177】
(実施例19)
本実施例に於いては、非水溶媒として、プロピレンカーボネートとリン酸トリエチルからなる混合溶媒を用い、プロピレンカーボネートとリン酸トリエチルの体積比率を2:8に変更した。さらに、電解質としてLiNO、LiPO及びLiPFを用い、それらの濃度をそれぞれ、LiNOが0.33モル/リットル、LiPOが0.33モル/リットル、LiPFが0.33モル/リットルとなる様に非水溶媒に混合した。それら以外は、実施例1と同様にして本実施例に係る非水電解液を調製した。
【0178】
(実施例20)
本実施例に於いては、非水溶媒として、γ-ブチロラクトンとリン酸トリエチルからなる混合溶媒を用い、γ-ブチロラクトンとリン酸トリエチルの体積比率を5:5に変更した。さらに、電解質としてLiNO、LiPO及びLiPFを用い、それらの濃度をそれぞれ、LiNOが0.33モル/リットル、LiPOが0.33モル/リットル、LiPFが0.33モル/リットルとなる様に非水溶媒に混合した。それら以外は、実施例1と同様にして本実施例に係る非水電解液を調製した。
【0179】
(実施例21)
本実施例に於いては、非水溶媒として、ジメチルスルホキシド(DMSO)とリン酸トリエチルからなる混合溶媒を用い、ジメチルスルホキシドとリン酸トリエチルの体積比率を2:8に変更した。さらに、電解質としてLiNO、LiPO及びLiPFを用い、それらの濃度をそれぞれ、LiNOが0.1モル/リットル、LiPOが0.1モル/リットル、LiPFが0.8モル/リットルとなる様に非水溶媒に混合した。それら以外は、実施例1と同様にして本実施例に係る非水電解液を調製した。
【0180】
(比較例1)
露点が-70℃以下のアルゴン雰囲気ドライボックス内で、エチレンカーボネート(EC、キシダ化学(株)製、リチウムバッテリーグレード)と、ジメチルカーボネート(DMC、キシダ化学(株)製)とを混合して非水溶媒を調製した。非水溶媒に於けるECとDMCの混合比は、体積比率でEC:DMC=1:1とした。
【0181】
次に、非水溶媒に電解質としてLiPFを混合した。このとき、LiPFの濃度は1.0モル/リットルとなる様にした。これにより、本比較例に係る非水電解液を調製した。
【0182】
(比較例2)
本比較例に於いては、非水溶媒をEC単独の溶媒に変更した。それ以外は、比較例1と同様にして本比較例に係る非水電解液を調製した。
【0183】
(比較例3)
本比較例に於いては、非水溶媒として、ECとDMCの混合溶媒に代えて、ECとTEPの混合溶媒を用いた。また、ECとTEPの混合比を、体積比率でEC:TEP=9:1とした。それら以外は、比較例1と同様にして本比較例に係る非水電解液を調製した。
【0184】
(比較例4)
本比較例に於いては、非水溶媒として、ECとDMCの混合溶媒に代えて、ECとTEPの混合溶媒を用いた。また、ECとTEPの混合比を、体積比率でEC:TEP=8:2とした。それら以外は、比較例1と同様にして本比較例に係る非水電解液を調製した。
【0185】
(比較例5)
本比較例に於いては、非水溶媒として、ECとDMCの混合溶媒に代えて、ECとTEPの混合溶媒を用いた。また、ECとTEPの混合比を、体積比率でEC:TEP=7:3とした。それら以外は、比較例1と同様にして本比較例に係る非水電解液を調製した。
【0186】
(比較例6)
本比較例に於いては、非水溶媒として、ECとDMCの混合溶媒に代えて、ECとTEPの混合溶媒を用いた。また、ECとTEPの混合比を、体積比率でEC:TEP=5:5とした。それら以外は、比較例1と同様にして本比較例に係る非水電解液を調製した。
【0187】
(比較例7)
本比較例に於いては、非水溶媒に於けるECとTEPの混合比を、体積比率でEC:TEP=9:1に変更した。それ以外は、実施例1と同様にして本比較例に係る非水電解液を調製した。
【0188】
(比較例8)
本比較例に於いては、非水溶媒に於けるECとTEPの混合比を、体積比率でEC:TEP=8:2に変更した。それ以外は、実施例1と同様にして本比較例に係る非水電解液を調製した。
【0189】
(比較例9)
本比較例に於いては、非水溶媒として、ECとDMCの混合溶媒に代えて、ECとTEPの混合溶媒を用いた。また、ECとTEPの混合比を、体積比率でEC:TEP=2:8とした。それら以外は、比較例1と同様にして本比較例に係る非水電解液を調製した。
【0190】
(比較例10)
本比較例に於いては、非水溶媒として、ECとDMCの混合溶媒に代えて、ECとTEPの混合溶媒を用いた。また、ECとTEPの混合比を、体積比率でEC:TEP=2:8とした。また、電解質として、LiPFをLiTFSIに変更した。それら以外は、比較例1と同様にして本比較例に係る非水電解液を調製した。
【0191】
(比較例11)
本比較例に於いては、非水溶媒として、ECとDMCの混合溶媒に代えて、DMSOとTEPの混合溶媒を用いた。また、DMSOとTEPの混合比を、体積比率でDMSO:TEP=2:8とした。それら以外は、比較例1と同様にして本比較例に係る非水電解液を調製した。
【0192】
【表1】
【0193】
【表2】
【0194】
【表3】
【0195】
(非水電解液の燃焼試験)
先ず、ガラス濾紙(商品名:GC-50、アドバンテック東洋(株)製)に実施例1、2、17及び比較例1~8の非水電解液をそれぞれ染み込ませて試料を作製した。次に、各試料に対しガスバーナーの炎を1秒間当てて試料の観察を行い、燃焼試験を行った。燃焼試験は2回行った。さらに、2回の燃焼試験の結果に基づき、非水電解液が難燃性か可燃性かの判定を行った。判定基準としては、ガスバーナーの炎を離した瞬間に消火した場合を○、炎を離した後も燃焼し続けた場合を×とし、2回続けて消化した場合は難燃性、その他の場合は可燃性として判定した。結果を表4に示す。
【0196】
【表4】
【0197】
表4から分かる通り、エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとからなる混合溶媒を用いた比較例1や、エチレンカーボネートのみからなる溶媒を用いた比較例2では、非水電解液は可燃性を示した。これらのことから、環状カーボネートと鎖状カーボネートとからなる混合溶媒や、環状カーボネートのみからなる溶媒を非水溶媒に用いた場合には、非水電解液は可燃性を示すことが推察される。また、エチレンカーボネートとリン酸トリエチルとからなる混合溶媒を用いた比較例3、4、7及び8でも、非水電解液は可燃性を示した。
【0198】
その一方、エチレンカーボネートとリン酸トリエチルとからなる混合溶媒を用いた場合でも、リン酸トリエチルの含有量を非水電解液の全質量に対し20質量%以上にすることにより、非水電解液に難燃性を付与することができた。
【0199】
(サイクル特性の評価)
<コインセルの作製>
実施例1~20、並びに比較例5、6、9及び10のそれぞれで作製した非水電解液を用いて、図1に示す様なコイン型のリチウムイオン二次電池(コインセル)をそれぞれ作製し電気化学特性を評価した。
【0200】
即ち、正極に、直径11.3mmφに切り出したLiNi1/3Co1/3Mn1/3(パイオトレック(株)製)を用い、セパレータにガラス濾紙(GC-50、アドバンテック東洋(株)製)を用いた。また、負極に、直径13mmφに切り出したリチウム箔(本城金属(株)製)を用いた。さらに、正極、セパレータ及び負極の順に積層して積層体とし、実施例1~20、並びに比較例5、6、9及び10で調製した非水電解液をそれぞれ含浸させた後、当該積層体を密閉して、コインセルをそれぞれ作製した。コインセルの組み立ては、全て露点-70℃以下のアルゴングローブボックス内で行った。
【0201】
<コインセルのサイクル特性と抵抗特性>
作製した各コインセルを、25℃の恒温槽内で充電電流0.5mA/cmにて、終止電圧4.3Vまで充電し、充電電流が0.15mA/cm以下になるまで、4.3Vで定電位保持した後、放電電流0.5mA/cmにて終止電圧3.0Vまで放電した。本条件の電流定電圧法にて100サイクル充放電した。100サイクル後の放電容量と直流抵抗を比較評価した。尚、直流抵抗は、充電終止電圧と放電開始3秒後の電圧を差し引いた電圧損失を放電電流で除して求めた。表5に、比較例9を100としたときの、各実施例及び比較例の放電容量及び直流抵抗の比率を示す。
【0202】
【表5】
【0203】
表5から明らかな様に、難燃性を付与するリン酸エステルを含んだ各実施例の非水電解液を用いたコインセルでは、各比較例に比べ、100サイクル後の放電容量が高く、直流抵抗が低減できていることが確認された。これにより、各実施例の非水電解液及びそれを用いたリチウムイオン二次電池は、実用性に優れていることが確認された。
【0204】
(クーロン効率特性の評価)
<コインセルの作製>
実施例21及び比較例11の各非水電解液は、酸化耐性に乏しく、正極にLiNi1/3Co1/3Mn1/3の様な高電圧に印加する電極を用いることが困難な場合がある。そのため、これらの非水電解液については、以下に述べる様な図1に示すコイン型のリチウムイオン二次電池(コインセル)をそれぞれ作製して電気化学特性を評価した。
【0205】
即ち、正極に、直径11.3mmφに切り出した銅箔(ニラコ(株)製)を用い、セパレータにガラス濾紙(GC-50、アドバンテック東洋(株)製)を用いた。また、負極に、直径13mmφに切り出したリチウム箔(本城金属(株)製)を用いた。さらに、正極、セパレータ及び負極の順に積層して積層体とし、実施例21又は比較例11の非水電解液をそれぞれ含浸させた後、当該積層体を密閉して、コインセルをそれぞれ作製した。コインセルの組み立ては、全て露点-70℃以下のアルゴングローブボックス内で行った。
【0206】
<コインセルのクーロン効率>
作製した各コインセルを、25℃の恒温槽内で充電電流0.5mA/cmにて、2時間充電して金属リチウムを析出させた後、放電電流0.5mA/cmにて終止電圧1.0Vまで放電して金属リチウムを溶解させた。本条件の電流定電圧法にて10サイクル充放電した。10サイクル後のクーロン効率を比較評価した。表6に、実施例21及び比較例11のクーロン効率の比率を示す。
【0207】
【表6】
【0208】
表6から分かる通り、電解質としてLiPFのみからなる非水電解液を用いた比較例11では10サイクル後のクーロン効率は16%であった。これに対し、LiNOとLiPOを含む非水電解液を用いた実施例21ではクーロン効率が79%であり、比較例11と比べ、充放電効率(サイクル特性)が良好であることが確認された。その結果、非水溶媒としてDMSO及びTEPからなる混合溶媒を用いた非水電解液、並びに当該非水電解液を用いたリチウムイオン二次電池でも、実用性に優れていることが確認された。
【符号の説明】
【0209】
1 正極
2 負極
3 セパレータ
4 正極缶
5 負極缶
6 ガスケット
7 スペーサー
図1