(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023070100
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】電気分解耐性の空気側電極を有する固体酸化物電解槽セル
(51)【国際特許分類】
C25B 11/053 20210101AFI20230511BHJP
H01M 8/1213 20160101ALI20230511BHJP
H01M 4/86 20060101ALI20230511BHJP
H01M 8/1253 20160101ALI20230511BHJP
H01M 8/12 20160101ALI20230511BHJP
C25B 1/04 20210101ALI20230511BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20230511BHJP
C25B 9/23 20210101ALI20230511BHJP
C25B 13/04 20210101ALI20230511BHJP
C25B 13/07 20210101ALI20230511BHJP
C25B 9/65 20210101ALI20230511BHJP
C25B 11/067 20210101ALI20230511BHJP
C25B 11/077 20210101ALI20230511BHJP
C25B 11/091 20210101ALI20230511BHJP
【FI】
C25B11/053
H01M8/1213
H01M4/86 U
H01M4/86 T
H01M8/1253
H01M8/12 101
H01M8/12 102A
C25B1/04
C25B9/00 A
C25B9/23
C25B13/04 301
C25B13/07
C25B9/65
C25B11/067
C25B11/077
C25B11/091
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022169666
(22)【出願日】2022-10-24
(31)【優先権主張番号】17/519,996
(32)【優先日】2021-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】514116578
【氏名又は名称】ブルーム エネルギー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アームストロング,タッド
(72)【発明者】
【氏名】レイルズバック,ジャスティン
【テーマコード(参考)】
4K011
4K021
5H018
5H126
【Fターム(参考)】
4K011AA24
4K011AA25
4K011AA29
4K011DA01
4K011DA11
4K021AA01
4K021BA02
4K021BC09
4K021CA07
4K021DB36
4K021DB43
4K021DB53
4K021DC01
4K021DC03
5H018AA06
5H018EE04
5H018EE12
5H018EE13
5H018HH05
5H126AA02
5H126BB06
5H126EE03
5H126EE11
5H126EE22
5H126GG12
5H126JJ05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】電気分解耐性の空気側電極を有する固体酸化物電解槽セル(SOEC)を提供する。
【解決手段】固体酸化物電解槽セル(SOEC)は、固体酸化物電解質と、電解質の燃料側に配置される燃料側電極と、電解質の空気側に配置される空気側電極とを有する。空気側電極は、電解質の空気側に配置され、第1のドープセリア材料を含むバリア層と、バリア層上に配置され、導電性材料と、第2のドープセリア材料とを含む機能層とを有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体酸化物電解質と、
前記電解質の燃料側に配置される燃料側電極と、
前記電解質の空気側に配置される空気側電極と、
を有する固体酸化物電解槽セル(SOEC)であって、前記空気側電極が、
前記電解質の前記空気側に配置され、第1のドープセリア材料を含むバリア層と、
前記バリア層上に配置され、導電性材料と、第2のドープセリア材料とを含む機能層と、
を有する、前記固体酸化物電解槽セル(SOEC)。
【請求項2】
前記第1のドープセリア材料及び前記第2のドープセリア材料が、独立して、サマリウムドープセリア(SDC)材料及びガドリニウムドープセリア(GDC)材料から選択される、請求項1に記載のSOEC。
【請求項3】
前記バリア層が前記SDC材料を含み、
前記SDC材料が、式Ce1-xSmxO2-d(式中、xは0.1~0.3の範囲であり、dは0~0.2の範囲である)で表される、
請求項2に記載のSOEC。
【請求項4】
前記機能層が前記SDC材料を含む、請求項3に記載のSOEC。
【請求項5】
前記機能層が前記GDC材料を含み、
前記GDC材料が、式Ce1-yGdyO2-d(式中、yは0.1~0.3の範囲であり、dは0~0.2の範囲である)で表される、
請求項3に記載のSOEC。
【請求項6】
前記SDC材料が、Ce0.8Sm0.2O2-d、Ce0.9Sm0.1O2-d又はCe0.7Sm0.3O2-d(式中、dは0~0.1の範囲である)を含む、請求項3に記載のSOEC。
【請求項7】
前記バリア層が前記GDC材料を含み、
前記GDC材料が、式Ce1-yGdyO2-d(式中、yは0.1~0.3の範囲であり、dは0~0.2の範囲である)で表される、
請求項2に記載のSOEC。
【請求項8】
前記機能層が前記GDC材料を含む、請求項7に記載のSOEC。
【請求項9】
前記機能層が前記SDC材料を含み、
前記SDC材料が、式Ce1-xSmxO2-d(式中、xは0.1~0.3の範囲であり、dは0~0.2の範囲である)で表される、
請求項7に記載のSOEC。
【請求項10】
前記GDC材料が、Ce0.9Gd0.1O2-d、Ce0.8Gd0.2O2-d又はCe0.7Gd0.3O2-d(式中、dは0~0.1の範囲である)を含む、請求項7に記載のSOEC。
【請求項11】
前記導電性材料が、式(La1-zSrz)qMnO3-d(式中、zは0.1~0.4の範囲であり、qは0.94~1の範囲であり、dは0~0.2の範囲である)で表されるランタンストロンチウムマンガナイト(LSM)を含む、請求項2に記載のSOEC。
【請求項12】
前記LSMが、La0.8Sr0.2MnO3-d又は(La0.8Sr0.2)0.98MnO3-d(式中、dは0~0.1の範囲である)を含む、請求項11に記載のSOEC。
【請求項13】
前記導電性材料が、式(LaxSr1-x)yCozFe1-zO3-δ(式中、xは0.4~0.8の範囲であり、yは0.94~1.0の範囲であり、zは0.01~0.99の範囲であり、δは0~0.1の範囲の平衡酸素欠損である)で表されるランタンストロンチウムコバルトフェライト(LSCF)を含む、請求項2に記載のSOEC。
【請求項14】
前記LSCFがLa0.58Sr0.4Co0.2Fe0.8O3-δを含む、請求項13に記載のSOEC。
【請求項15】
前記LSCFが(La0.6Sr0.4)0.98Co0.2Fe0.8O3-δを含む、請求項13に記載のSOEC。
【請求項16】
前記LSCFが(La0.6Sr0.4)0.95Co0.2Fe0.8O3-δを含む、請求項13に記載のSOEC。
【請求項17】
前記機能層が、少なくとも10重量パーセント(重量%)の前記導電性材料と、少なくとも10重量%の前記第2のドープセリア材料とを含み、
前記バリア層が、前記SDC材料又は前記GDC材料のうち少なくとも1つを少なくとも95原子パーセント含む、
請求項2に記載のSOEC。
【請求項18】
前記空気側電極が、前記機能層上に位置する導電性接触層を更に有し、
前記SOECが、燃料電池モード及び電気分解モードで交互に動作するように構成される固体酸化物再生燃料電池を有する、
請求項1に記載のSOEC。
【請求項19】
前記固体酸化物電解質が安定化ジルコニア材料を含み、
前記燃料側電極が、ニッケル含有相とドープセリア含有相とを含むサーメットを有する、
請求項1に記載のSOEC。
【請求項20】
インターコネクトと、
前記インターコネクトによって分離される、複数の請求項1に記載のSOECと、
を有し、
燃料電池モード及び電気分解モードで交互に動作するように構成される、固体酸化物電解槽セル(SOEC)スタック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して固体酸化物電解槽セル、より詳細には電気分解耐性の空気側電極を有する電解槽セルを対象とする。
【背景技術】
【0002】
固体酸化物可逆燃料電池(SORFC)システムは、燃料電池モードで動作して、燃料を酸化することによって電気を生成することができる。SORFCシステムは、電気分解モードで動作して、水を電気分解することによって水素を生成することもできる。しかしながら、従来技術のSORFCは、電気分解過程中に起こり得るセル電圧の上昇のために、空気側電極の劣化を被る可能性がある。
【発明の概要】
【0003】
様々な実施形態によれば、固体酸化物電解槽セル(SOEC)は、固体酸化物電解質と、電解質の燃料側に配置される燃料側電極と、電解質の空気側に配置される空気側電極とを有する。空気側電極は、電解質の空気側に配置され、第1のドープセリア材料を含むバリア層と、バリア層上に配置され、導電性材料と、第2のドープセリア材料とを含む機能層とを有する。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【
図1A】
図1Aは、本開示の様々な実施形態によるSOECスタックの斜視図である。
【
図2A】
図2Aは、本開示の様々な実施形態によるインターコネクトの空気側の平面図である。
【
図3A】
図3Aは、本開示の様々な実施形態によるSOECセルの空気側の平面図である。
【
図4】
図4は、空気電極の層間剥離を示す写真である。
【
図5】
図5は、本開示の様々な実施形態による電気分解耐性のSOECセルを有するSOECスタックの断面図である。
【
図6A】
図6Aは、本開示の様々な実施形態によるSOECセルの空気電極の劣化率を示すチャートである。
【
図6B】
図6Bは、比較SOECセルの劣化率を示すチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0005】
添付図面を参照して、種々の実施形態を詳細に説明する。可能な限り、同じ参照符号は、図面全体を通して同じ又は同様の部分を指すのに使用する。特定の例及び実施態様に対する参照は、例示目的でなされ、本発明又は特許請求の範囲の範囲を制限することは意図していない。
【0006】
或る要素又は層が、別の要素若しくは層「の上にある」又は別の要素若しくは層「に接続される」と言及される場合、その要素又は層が、別の要素若しくは層の直接上にあり得るか又は別の要素若しくは層に直接接続され得るか、或いは介在する要素又は層が存在し得ると理解されよう。対照的に、或る要素が、別の要素若しくは層「の直接上にある」又は別の要素若しくは層「に直接接続される」と言及される場合、介在する要素又は層は存在しない。本開示の目的のために、「X、Y及びZの少なくとも1つ」は、Xのみ、Yのみ、Zのみ、又はX、Y及びZの2つ以上のアイテムの任意の組合せ(例えば、XYZ、XYY、YZ、ZZ)と解釈され得ることが理解されよう。
【0007】
値の範囲が提示されている場合、文脈上、明らかにそうでない場合を除き、下限の単位の小数点第一位までの、その範囲の上限と下限との間にある各値、及びその記載された範囲内の任意の別の記載された値又は介在する値は、本発明に包含されると理解される。これらのより小さい範囲の上限及び下限は、このより小さい範囲内に独立して含まれてもよく、記載された範囲内で具体的に除外される任意の限界値に応じて、本発明に含まれる。記載された範囲が限界値の一方又は両方を含む場合、これらの含まれる限界値のいずれか又は両方を除外する範囲も本発明に含まれる。また、「約」という用語は、例えば5%~10%の軽微な測定誤差を指す場合があることも理解されよう。また、本明細書において使用される重量パーセント(重量%)及び原子パーセント(原子%)は、それぞれ、対応する組成物の総重量に対するパーセント又は総原子数に対するパーセントを指す。
【0008】
「その後」、「次いで」、「次に」等の単語は、必ずしも工程の順序を限定することを意図したものではなく、これらの単語は、方法の説明を通して読み手をガイドするために使用され得る。さらに、例えば、冠詞「a」、「an」又は「the」を使用した、クレーム要素への単数形でのあらゆる言及は、その要素を単数形に限定すると解釈されるべきではない。
【0009】
本明細書において使用される「電解槽セルスタック」という用語は、共通の水入口及び排気通路又はライザーを任意で共有することのできる、積み重ねられた複数の電解槽セルを意味する。本明細書において使用される「電解槽セルスタック」は、スタックの電力調整装置及び電力(すなわち、電気)入力に直接接続される2つのエンドプレートを有する別個の電気エンティティを備えるか、又は電気入力を提供する端子板を有する電解槽セルカラムの一部を構成する。
【0010】
図1Aは、本開示の様々な実施形態による電解槽セルスタック100の斜視図であり、
図1Bは、本開示の様々な実施形態によるスタック100の一部の断面図である。
図1A及び
図1Bを参照すると、スタック100は、インターコネクト10によって分離された固体酸化物電解槽セル1を有する固体酸化物電解槽セル(SOEC)スタックとすることができる。
図1Bを参照すると、各電解槽セル1は、空気側電極3と、固体酸化物電解質5と、燃料側電極7とを有する。
【0011】
電解槽セルスタックは、平面状要素、管又はその他の形状の非常に多数の電解槽セル1から組み立てられることが多い。
図1Aの電解槽セルスタック100は垂直に配置されているが、電解槽セルスタックは水平に又は他の任意の方向に配置することもできる。例えば、それぞれのインターコネクト10及び電解槽セル1に形成された導水路22(例えば、水ライザー開口部)を介して水を供給することができ、インターコネクト10の空気側リブ間のスタックの側面から酸素を供給することができる。
【0012】
各インターコネクト10は、スタック100内の隣接する電解槽セル1同士を電気的に接続する。特に、インターコネクト10は、1つの電解槽セル1の燃料側電極7と、隣接する電解槽セル1の空気側電極3とを電気的に接続することができる。
図1Bは、下側の電解槽セル1が2つのインターコネクト10の間に位置することを示す。Niメッシュ(図示せず)を使用して、インターコネクト10を隣接する電解槽セル1の燃料側電極7に電気的に接続することができる。
【0013】
各インターコネクト10は、燃料チャネル8Aを少なくとも部分的に画定する燃料側リブ12Aと、酸化剤(例えば、空気)チャネル8Bを少なくとも部分的に画定する空気側リブ12Bとを有する。インターコネクト10は、スタック内の1つのセル1の燃料側電極へ流れる水を、スタック内の隣接するセル1の空気側電極から流れる酸素から分離するセパレータとして機能することができる。スタック100のいずれかの端部に、空気エンドプレート又は燃料エンドプレート(図示せず)を存在させることができる。
【0014】
各インターコネクト10は、セル内の固体酸化物電解質の熱膨張係数と同様の熱膨張係数(例えば、差が0%~10%)を有する、金属合金(例えば、クロム-鉄合金)等の導電性材料から形成することができるか、又はそれを含有することができる。例えば、インターコネクト10は、金属(例えば、4重量パーセント~6重量パーセントの鉄(例えば、5重量%の鉄)と、任意で1重量パーセント以下のイットリウムとを含み、残部がクロムの合金等のクロム-鉄合金)を含むことができ、1つの電解槽セル1の燃料側電極7と、隣接する電解槽セル1の空気側電極3とを電気的に接続することができる。
【0015】
図2Aは、本開示の様々な実施形態によるインターコネクト10の空気側の上面図であり、
図2Bは、本開示の様々な実施形態によるインターコネクト10の燃料側の上面図である。
図1B及び
図2Aを参照すると、空気側は、インターコネクト10の対向する第1の縁部及び第2の縁部から延びる空気チャネル8Bを備える。酸素は、隣接する電解槽セル1の空気側電極3から空気チャネル8Bを通って流れる。リングシール20によりインターコネクト10の燃料孔22A、22Bを取り囲んで、水が空気側電極3に接触するのを防ぐことができる。インターコネクト10の空気側の周辺部分には、帯状の周辺シール24が位置する。シール20、24は、ガラス又はガラスセラミック材料で形成することができる。周辺部分は、リブ又はチャネルを含まない隆起した高台状であってもよい。周辺領域の表面は、リブ12Bの頂部と同一平面上にあってもよい。
【0016】
図1B及び
図2Bを参照すると、インターコネクト10の燃料側は、燃料チャネル8Aと、燃料マニホールド28とを有することができる。水は、燃料孔22Aの1つ(例えば、燃料入口ライザーの一部を形成する入口燃料孔)から、隣接するマニホールド28へと流れ込み、燃料チャネル8Aを通って、隣接する電解槽セル1の燃料側電極7へと流れる。過剰な水は、他方の燃料マニホールド28に流れ込み、次いで、出口燃料孔22Bに流れ込むことができる。インターコネクト10の燃料側の周辺領域には、フレームシール26が配置される。周辺領域は、リブ又はチャネルを含まない隆起した高台状であってもよい。周辺領域の表面は、リブ12Aの頂部と同一平面上にあってもよい。
【0017】
図3Aは、本開示の様々な実施形態による電解槽セル1の空気側の平面図であり、
図3Bは、本開示の様々な実施形態による電解槽セル1の燃料側の平面図である。
図1A、
図2A、
図3A及び
図3Bを参照すると、電解槽セル1は、入口燃料孔22Aと、出口燃料孔22Bと、電解質5と、空気側電極3とを有することができる。空気側電極3は、電解質5の空気側に配置することができる。燃料側電極7は、電解質5の反対側の燃料(例えば、水)側に配置することができる。
【0018】
燃料孔22A、22Bは、電解質5を通って延在することができ、電解槽セルスタック100に組み立てられた時に、インターコネクト10の燃料孔22A、22Bと重なるように配置することができる。空気側電極3は、電解槽セルスタック100に組み立てられた時に、リングシール20及び周辺シール24と重ならないように、電解質5上にプリントすることができる。燃料側電極7は、空気側電極3と同様の形状を有することができる。燃料側電極7は、スタック100に組み立てられた時に、フレームシール26と重ならないように配置することができる。言い換えると、電極3及び電極7は、電解質5の対応する縁領域が対応するシール20、24、26に直接接触することができるように、電解質5の縁部から後退させることができる。
【0019】
一実施形態においては、電解槽セルスタック100は、電気分解モードでのみ動作することができる。よって、電解槽セルスタック100は、燃料電池モードで動作して、燃料側電極及び空気側電極のそれぞれに供給される燃料及び空気から電力を生成することはない。或いは、電解槽セルスタック100は、固体酸化物再生(すなわち、可逆)燃料電池(SORFC)スタックを有することができる。SORFCは、燃料側電極及び空気側電極のそれぞれに供給される燃料及び空気から電気を生成するために、燃料電池(FC)モード(例えば、発電モード)で動作することができ、燃料側電極7に供給された水から水素及び酸素を製造するために、電解槽セル(EC)モード(例えば、電気分解モード)で動作することができる。FCモードでは、酸素イオンが、SORFCの空気側(例えば、カソード)電極3から燃料側(例えば、アノード)電極7へと運ばれて、燃料(例えば、水素及び/又は天然ガス等の炭化水素燃料)が酸化され、電気を生成する。ECモードでは、セルの空気側に正の電位が印加され、酸素イオンが燃料側電極7の水から電解質5を通って空気側電極3に運ばれる。よって、水は、燃料側電極7で水素と、空気側電極3で酸素とに電気分解される。
【0020】
SORFCの空気側電極3及び燃料側電極7は、FCモード中はそれぞれカソード及びアノードとして動作し、ECモード中はそれぞれアノード及びカソードとして動作する(すなわち、FCモードでのカソードはECモードでのアノードであり、FCモードでのアノードはECモードでのカソードである)。したがって、本明細書に記載のSORFCは、空気側電極及び燃料側電極を有すると言うことができる。
【0021】
ECモードの間、燃料流中の水が還元されて(H2O+2e→O2-+H2)、H2ガス及びO2-イオンが形成され、このO2-イオンが固体電解質を通って運ばれ、次いで空気側電極で酸化されて(O2-がO2に酸化されて)酸素分子が生成する。空気及び湿った燃料(例えば、水素及び/又は改質天然ガス)で動作するSORFCの開回路電圧は約0.9V~1.0V(水分含有量に依存する)であり得るため、ECモードで空気側電極に印加される正の電圧は、セル電圧を通常の動作電圧である約1.1V~1.3Vに上昇させる。定電流モードでは、セルの劣化がある場合、セル電圧は時間の経過とともに上昇する可能性があり、セルの劣化はオーミックソース(ohmic sources)及び電極分極の両方に起因する可能性がある。
【0022】
現行の技術水準の固体酸化物電解槽セル及びSORFCが直面する主要なハードルの1つは、高電流密度での空気電極の層間剥離である。層間剥離の程度は、電流密度及び酸化物イオンの輸送フラックスとともに増加する。特定の理論に拘束されることを望まないが、層間剥離は、電解質/カソード界面での酸素の析出によって引き起こされる可能性があり、これが高圧力につながって空気電極の層間剥離をもたらす可能性があると考えられる。
【0023】
図4は、固体酸化物電解槽セルを高電流密度で長時間、電気分解モードで動作させた後の空気電極3の層間剥離を示す写真である。
図4に示されるように、空気側電極3は、その間の黒い領域によって示されるように、下にある電解質5から分離する可能性がある。
【0024】
図5は、本開示の様々な実施形態による電気分解耐性の固体酸化物電解槽セル502を有する電解槽セルスタック500の断面図である。電解槽セルスタック500は、
図1A~
図3Bのスタック100と同様であるため、スタック100との相違点についてのみ詳細に説明する。
【0025】
図5を参照すると、電解槽セルスタック500は、インターコネクト10の間に配置された少なくとも1つの電解槽セル502を有することができる。電解槽セル502は、電気分解モードでのみ動作することができる(例えば、セルは固体酸化物電解槽セル(SOEC)を有するすることができる)か、又は燃料電池モード及び電気分解モードの両方で動作することができる(例えば、電解槽セル502は、SORFCを有することができる)。電解槽セル502は、固体酸化物電解質5と、電解質5の空気側に配置される空気側電極3と、電解質5の燃料側に配置される燃料側電極7とを有する。燃料電池モードでは、空気を空気チャネル8Bによって空気側電極3に供給することができ、燃料電池モードでは、燃料を燃料チャネル8Aによって燃料側電極7に供給することができる。一方、電気分解モードでは、水を燃料チャネル8Aによって燃料側電極7に供給することができる。
【0026】
固体酸化物電解質5、燃料側電極7及び空気側電極3には、様々な材料を使用することができる。様々な実施形態においては、電解質5は、イオン伝導性材料又はイオン伝導性相、例えば安定化ジルコニア、例えば、スカンジア安定化ジルコニア(SSZ)、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)、スカンジア・セリア安定化ジルコニア(SCSZ)、スカンジア・セリア・イットリア安定化ジルコニア(SCYSZ)、スカンジア・セリア・イッテルビア安定化ジルコニア(SCYbSZ)等を含むことができる。或いは、電解質5は、別のイオン伝導性材料、例えばドープセリア、例えばサマリアドープセリア(SDC)、ガドリニアドープセリア(GDC)又はイットリアドープセリア(YDC)等を含むことができる。幾つかの実施形態においては、電解質5は、式:(ZrO2)1-w-x-z(Sc2O3)w(CeO2)x(Y2O3)a(Yb2O3)b(式中、0.09≦w≦0.11、0<x≦0.0125、a+b=z、0.0025≦z≦0.0125)で表される材料を含むことができる。幾つかの実施形態においては、電解質5は、(ZrO2)0.88(Sc2O3)0.1(CeO2)0.01(Yb2O3)0.01又は(ZrO2)0.88(Sc2O3)0.1(CeO2)0.01(Y2O3)0.01を含むことができる。或いは、電解質5は、(ZrO2)0.89(Sc2O3)0.1(CeO2)0.01を含むことができる。
【0027】
燃料側電極7は、金属含有相とセラミック相とを含むサーメット層を有することができる。金属含有相は、金属触媒、例えば、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、銅(Cu)、これらの合金等を含むことができ、電子伝導体として働く。金属触媒は、金属状態であっても又は酸化物状態であってもよい。例えば、金属触媒は、酸化状態にある場合は金属酸化物を形成する。よって、燃料側電極7は、電解槽セル1の動作前に還元雰囲気中でアニールして、酸化された金属触媒を金属状態に還元することができる。
【0028】
金属含有相は、還元状態のニッケルのみからなることができる。このニッケル含有相は、酸化状態にある場合、酸化ニッケルを形成することができる。よって、燃料側電極7は、動作前に還元雰囲気中でアニールして、酸化ニッケルをニッケルに還元することが好ましい。
【0029】
燃料側電極7のセラミック相は、ガドリニアドープセリア(GDC)、サマリアドープセリア(SDC)、イッテルビアドープセリア(YDC)、スカンジア安定化ジルコニア(SSZ)、イッテルビア・セリア・スカンジア安定化ジルコニア(YbCSSZ)等を含むことができるが、これらに限定されない。参照により本明細書に組み込まれる米国特許第8,580,456号に開示されるように、YbCSSZにおいて、スカンジアは、9モル%~11モル%に相当する量、例えば10モル%で存在することができ、セリアは、0モル%超(例えば、少なくとも0.5モル%)、2.5モル%以下の量、例えば1モル%で存在することができ、イットリア及びイッテルビアの少なくとも1つは、0モル%超、2.5モル%以下の量、例えば1モル%で存在することができる。
【0030】
さらに、必要に応じて、追加の接触層又は集電体層を、燃料側電極7上に配置することができる。例えば、Ni又は酸化ニッケルアノード接触層を、燃料側電極7上に形成することができる。
【0031】
空気側電極3は、電解質5の空気側に直接配置されるバリア層30と、バリア層30上に配置される機能層32と、機能層32上に配置される任意の集電体層34とを有することができる。よって、機能層32は、バリア層30と、集電体層34との間に位置する。
【0032】
バリア層30は、電解質5の空気側に焼結させることができる。バリア層30は、ドープセリア材料を含むか、本質的にドープセリア材料からなるか、又はドープセリア材料からなることができる。例えば、バリア層は、バリア層30の総重量に対して、約95重量パーセント(重量%)~約100重量%のドープセリア材料を含むことができる。ドープセリア材料は、サマリウムドープセリア(SDC)及び/又はガドリニウムドープセリア(GDC)を含むことができる。
【0033】
SDCは、式:Ce1-xSmxO2-d(式中、xは0.1~0.3の範囲である)で表すことができる。例えば、特定のSDC材料は、式:Ce0.8Sm0.2O2-d、Ce0.9Sm0.1O2-d及びCe0.7Sm0.3O2-d(式中、dは0~0.2、例えば0~0.1の範囲である)で表すことができる。
【0034】
GDCは、式Ce1-xGdxO2-d(式中、xは0.1~0.3の範囲であり、dは0~0.2、例えば0~0.1の範囲である)で表すことができる。例えば、特定のGDC材料は、式:Ce0.9Gd0.1O2-d、Ce0.8Gd0.2O2-d及びCe0.7Gd0.3O2-d(式中、dは0~0.2、例えば0~0.1の範囲である)で表すことができる。
【0035】
機能層32は、導電性材料とドープセリア材料との混合物を含むことができる。導電性材料は、導電性ペロブスカイト材料、例えば、ランタン・ストロンチウム・マンガナイト(LSM)、ランタン・ストロンチウム・コバルト・フェライト(LSCF)、ランタン・ストロンチウム・コバルタイト(LSC)、ランタン・ストロンチウム・コバルト・マンガナイト(LSCM)、ランタン・ストロンチウム・フェライト(LSF)、La0.85Sr0.15Cr0.9Ni0.1O3(LSCN)、これらの組合せ等を含むことができる。幾つかの実施形態においては、導電性材料は、好ましくは、LSM及び/又はLSCFを含むことができる。或いは、導電性材料は、白金等の金属を含むことができる。例えば、機能層32は、約10重量%~約90重量%の上述の導電性材料と、約10重量%~約90重量%のドープセリア材料とを含むことができる。
【0036】
様々な実施形態においては、機能層は、導電性材料としてLSMを含むことができる。LSMは、式:(La1-zSrz)qMnO3-d(式中、zは0.1~0.4の範囲であり、qは0.94~1、例えば0.96~1の範囲であり、dは0~0.2の範囲である)で表すことができる。例えば、LSMは、La0.8Sr0.2MnO3-d、又は(La0.8Sr0.2)0.98MnO3-d(式中、dは0~0.1の範囲である)等のAサイト欠損型LSMを含むことができる。
【0037】
幾つかの実施形態においては、機能層は、導電性材料としてLSCFを含むことができる。LSCFは、式:(LaxSr1-x)yCozFe1-zO3-δ(式中、xは0.4~0.8の範囲であり、yは0.94~1.0の範囲であり、zは0.01~0.99の範囲であり、δは0~0.1の範囲の平衡酸素欠損である)で表すことができる。例えば、LSCFは、La0.58Sr0.4Co0.2Fe0.8O3-δ、(La0.6Sr0.4)0.98Co0.2Fe0.8O3-δ又は(La0.6Sr0.4)0.95Co0.2Fe0.8O3-δ(式中、δは平衡酸素欠損である)を含むことができる。
【0038】
バリア層30及び機能層32は、同じドープセリア材料を含んでもよいし、又は異なるドープセリア材料を含んでもよい。例えば、バリア層30はGDCを含むことができ、機能層32はLSM及びGDC、又はLSM及びSDCを含むことができる。別の実施形態においては、バリア層30はSDCを含むことができ、機能層32はLSM及びSDC、又はLSM及びGDCを含むことができる。別の実施形態においては、バリア層はSDCを含むことができ、機能層はLSCF及びSDC、又はLSCF及びGDCを含むことができる。
【0039】
特定の理論に拘束されることを望まないが、バリア層30のセリア相の混合酸化物イオン及び電子伝導によって、バリア層30と機能層32との界面での過電位が低下すると考えられる。過電位の低下により、電解質5からの空気側電極3の層間剥離を抑制することができる。
【0040】
集電体層34は、LSM等の導電性金属酸化物等の導電性材料を含むことができる。しかしながら、別の導電性ペロブスカイト、例えば、LSC、LSCM、LSCF、LSF、LSCN等、又はPt等の金属も使用することができる。
【0041】
図6Aは、或る実施形態のSOECスタックにおける、寿命開始と17回の電流サイクルの動作との間での、第1の実施形態のSOECセル及び第2の実施形態のSOECセルの電圧変化を示すチャートである。
図6Bは、同様の条件下での比較SOECスタックにおける、寿命開始と17回の電流サイクルの動作との間での比較SOECセルの電圧変化を示すチャートである。両図において、y軸はボルトでの電圧変化であり、x軸は、それぞれのスタックにおけるSOECセルの数である。
【0042】
図6A及び
図6Bを参照すると、第1の実施形態のSOECセルが、SDCバリア層30と、GDC/LSMカソード機能層32とを有する一方で、第2の実施形態のSOECセルが、SDCバリア層30と、SDC/LSMカソード機能層32とを有することを除いて、第1の実施形態のSOECセルと第2の実施形態のSOECセルとは同様の構成を有している。比較SOECセルは、バリア層30を備えず、YSZ/LSMを含むカソード機能層を備える。
【0043】
図6A及び
図6Bを参照すると、より大きいセル電圧差は、より高いセル過電位、ひいてはカソードのより大きな劣化を示す。チャートから分かるように、比較SOECセルは、より大きなセル電圧差(よって、セル過電位の増加)を示すが、本実施形態のセルは、実質的に小さいセル電圧差を示す。したがって、ドープセリア系バリア層及びカソード機能層材料が、セル過電位に対して予想外に改善された保護を提供し、これにより、層間剥離及び/又は一般的なカソードの劣化が低減されることが期待される。
【0044】
上述の内容は特に好ましい実施形態を表しているが、本発明はそれに限定されないことが理解されるだろう。開示された実施形態に対して様々な修正を行うことができること、及びかかる修正が本発明の範囲内のものであることが意図されることに当業者は気付くであろう。本明細書中で引用された刊行物、特許出願及び特許の全てについて、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【外国語明細書】