(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023070130
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】睡眠の質の改善剤
(51)【国際特許分類】
A23L 33/10 20160101AFI20230511BHJP
A23L 33/105 20160101ALI20230511BHJP
A61P 25/20 20060101ALI20230511BHJP
A61K 31/365 20060101ALI20230511BHJP
A61K 31/7048 20060101ALI20230511BHJP
A61K 36/28 20060101ALI20230511BHJP
A61K 36/634 20060101ALI20230511BHJP
A61K 135/00 20060101ALN20230511BHJP
A61K 131/00 20060101ALN20230511BHJP
A61K 125/00 20060101ALN20230511BHJP
A61K 127/00 20060101ALN20230511BHJP
【FI】
A23L33/10
A23L33/105
A61P25/20
A61K31/365
A61K31/7048
A61K36/28
A61K36/634
A61K135:00
A61K131:00
A61K125:00
A61K127:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022175950
(22)【出願日】2022-11-02
(31)【優先権主張番号】P 2021179883
(32)【優先日】2021-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】306018376
【氏名又は名称】クラシエホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100150142
【弁理士】
【氏名又は名称】相原 礼路
(74)【代理人】
【識別番号】100174849
【弁理士】
【氏名又は名称】森脇 理生
(72)【発明者】
【氏名】渡部 晋平
(72)【発明者】
【氏名】大野 晶子
(72)【発明者】
【氏名】稲益 悟志
(72)【発明者】
【氏名】与茂田 敏
【テーマコード(参考)】
4B018
4C086
4C088
【Fターム(参考)】
4B018LB10
4B018LE02
4B018MD36
4B018MD37
4B018MD53
4B018MD61
4B018ME14
4B018MF01
4B018MF06
4B018MF08
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA17
4C086EA08
4C086GA16
4C086GA17
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZA05
4C088AB26
4C088AB64
4C088AC04
4C088AC05
4C088AC11
4C088BA10
4C088BA11
4C088BA13
4C088MA52
4C088NA14
4C088ZA05
(57)【要約】
【課題】 より安全かつ効果的に睡眠の質を改善することが可能な新たな薬剤を提供することを目的とする。
【解決手段】 上記課題を解決するために、ゴボウやレンギョウに含まれるアルクチゲニンおよびアルクチインに着目した。本発明は、アルクチゲニンおよび/またはアルクチインを有効成分として含有する、睡眠の質の改善剤、睡眠の質を改善するための食品組成物および医薬組成物を提供する。本発明の剤または組成物を摂取または投与することにより、より安全かつ効果的に睡眠の質を改善することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルクチゲニンおよび/またはアルクチインを有効成分として含有する、睡眠の質の改善剤。
【請求項2】
前記アルクチゲニンおよび/またはアルクチインが、ゴボウ、ゴボウシ、ゴボウスプラウトもしくはレンギョウまたはこれらの抽出物として含有される、請求項1に記載の睡眠の質の改善剤。
【請求項3】
前記睡眠の質の改善が、起床時眠気、入眠と睡眠維持、夢み、疲労回復、睡眠時間、睡眠深度、中途覚醒度、熟眠感、起床時の爽快感、睡眠の満足感および早朝覚醒の有無からなる群より選択される少なくとも1つの項目の改善である、請求項1または2に記載の睡眠の質の改善剤。
【請求項4】
アルクチゲニンおよび/またはアルクチインを有効成分として含有する、睡眠の質を改善するための食品組成物。
【請求項5】
前記アルクチゲニンおよび/またはアルクチインが、ゴボウ、ゴボウシ、ゴボウスプラウトもしくはレンギョウまたはこれらの抽出物として含有される、請求項4に記載の食品組成物。
【請求項6】
前記睡眠の質の改善が、起床時眠気、入眠と睡眠維持、夢み、疲労回復、睡眠時間、睡眠深度、中途覚醒度、熟眠感、起床時の爽快感、睡眠の満足感および早朝覚醒の有無からなる群より選択される少なくとも1つの項目の改善である、請求項4または5に記載の食品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、睡眠の質を改善するための剤および組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、寝つきが悪い、眠りが浅くすぐ目が覚める、眠った気がしない、起床時に疲労感が残っている、不眠であるなど、睡眠に関する問題を抱える人が多く存在する。睡眠の質の低下は、疲労回復を阻害し、疲労による心身の活動能力の低下および作業能率の減退につながるおそれがある。したがって、睡眠の質の改善は、心身の健康維持を図るために重要である。
【0003】
睡眠の質の低下に対し、医薬品の睡眠薬が利用されることも多い。しかし、従来の睡眠薬には、依存性および副作用等が報告されており、気軽に服用することができない。そこで、より安全な睡眠の質の改善剤の開発が望まれている。
【0004】
一方、睡眠の質の改善作用を有する食品由来の成分として、たとえばテアニン(特許文献1)およびグリシン(特許文献2)等が報告されている。しかしながら、これらの成分を含む睡眠改善用食品は、睡眠の質の改善に対し、必ずしも十分な効果を奏するとはいえない。そのため、睡眠の質の改善効果のより高い技術の開発が求められている。
【0005】
ところで、レンギョウはモクセイ科に属する落葉性低木広葉樹であり、抗酸化作用やエストロゲン様作用をはじめとした様々な生理・生物活性を有するリグナン類を多く含む植物として知られている(非特許文献1)。レンギョウの葉には、リグナン類の一種であるアルクチゲニンが、果実、花および茎などに比べて多く含まれていることが報告されている(非特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4961087号公報
【特許文献2】特開2006-333872号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】畑直樹, 小林昭雄, 村中俊哉, 岡澤敦司.,“アルクチン・アルクチゲニンの多機能性と高含有植物の利用” ,農業および園芸,2011年,第86巻,第1号,p.10-20
【非特許文献2】西部三省, 川村智子, 田中俊弘, Herman A.,“レンギョウおよびレンギョウ葉のリグナン含量について”,Natural Medicines,2001年,第55巻,第6号,p.300-3
【非特許文献3】山本由華吏, 田中秀樹, 高瀬美紀, 山崎勝男, 阿住一雄, 白川修一郎,“中高年・高齢者を対象としたOSA睡眠調査票(MA版)の開発と標準化”,脳と精神の医学,1999年,第10巻,p.401-409
【非特許文献4】Ellis B W, Johns M W, Lancaster R, Raptopoulos P, Angelopoulos N, Priest R G.,“The St. Mary’s Hospital sleep questionnaire: a study of reliability.”,Sleep,1981年,第4巻,第1号,p.93-7
【非特許文献5】“日本疲労学会「抗疲労臨床評価ガイドライン(日常生活により問題となる疲労に対する抗疲労製品の効果に関する臨床評価ガイドライン)」第5版”,2011年
【非特許文献6】Fukuda S, Takashima S, Iwase M, Yamaguti K, Kuratsune H, Watanabe Y.,“Development and validation of a new fatigue scale for fatigued subjects with and without chronic fatigue syndrome.”,Fatigue science for human health.,Springer,2008年,p.89-102
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、より安全かつ効果的に睡眠の質を改善することが可能な新たな薬剤の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために、ゴボウやレンギョウに含まれるアルクチゲニンおよびアルクチインに着目した。アルクチゲニンおよびアルクチインを含むレンギョウ葉のエキスを調製し、被験者に摂取させ、ランダム化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験を行った。OSA睡眠調査票MA版を用いて調査したところ、レンギョウ葉エキス配合食品の摂取によって起床時眠気、入眠と睡眠維持、夢み、疲労回復および睡眠時間のそれぞれが改善する傾向がみられた。
【0010】
また、セントマリー病院睡眠質問票を用いて調査したところ、レンギョウ葉エキス配合食品の摂取によって睡眠深度、中途覚醒度、熟眠感、起床時の爽快感、睡眠の満足感および早朝覚醒の有無のそれぞれが改善する傾向がみられた。これらの結果から、レンギョウ葉エキスに睡眠の質を改善する作用があることが確認された。
【0011】
さらに、本発明者らは、アルクチゲニンおよびアルクチインを含むゴボウスプラウトエキスを調製し、被験者に摂取させ、ランダム化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験を行った。OSA睡眠調査票MA版を用いて調査したところ、ゴボウスプラウトエキス配合食品の摂取によって起床時眠気、入眠と睡眠維持、夢み、疲労回復および睡眠時間のそれぞれが改善する傾向がみられた。
【0012】
また、セントマリー病院睡眠質問票を用いて調査したところ、ゴボウスプラウトエキス配合食品の摂取によって睡眠深度、中途覚醒度、熟眠感、起床時の爽快感、睡眠の満足感および早朝覚醒の有無のそれぞれが改善する傾向がみられた。これらの結果から、ゴボウスプラウトエキスに睡眠の質を改善する作用があることが確認された。
【0013】
以上の結果から、レンギョウ葉エキスおよびゴボウスプラウトエキスに共通して含まれるアルクチゲニンおよびアルクチインに、睡眠の質を改善する作用があることが強く示唆された。本発明は、これらの知見に基づきなされた。
【0014】
本発明は、アルクチゲニンおよび/またはアルクチインを有効成分として含有する、睡眠の質の改善剤を提供する。
【0015】
本発明はまた、上記アルクチゲニンおよび/またはアルクチインが、ゴボウ、ゴボウシ、ゴボウスプラウトもしくはレンギョウまたはこれらの抽出物として含有される、睡眠の質の改善剤を提供する。
【0016】
本発明はまた、上記睡眠の質の改善が、起床時眠気、入眠と睡眠維持、夢み、疲労回復、睡眠時間、睡眠深度、中途覚醒度、熟眠感、起床時の爽快感、睡眠の満足感および早朝覚醒の有無からなる群より選択される少なくとも1つの項目の改善である、睡眠の質の改善剤を提供する。
【0017】
本発明はまた、アルクチゲニンおよび/またはアルクチインを有効成分として含有する、睡眠の質を改善するための食品組成物を提供する。
【0018】
本発明はまた、上記アルクチゲニンおよび/またはアルクチインが、ゴボウ、ゴボウシ、ゴボウスプラウトもしくはレンギョウまたはこれらの抽出物として含有される、睡眠の質を改善するための食品組成物を提供する。
【0019】
本発明はまた、上記睡眠の質の改善が、起床時眠気、入眠と睡眠維持、夢み、疲労回復、睡眠時間、睡眠深度、中途覚醒度、熟眠感、起床時の爽快感、睡眠の満足感および早朝覚醒の有無からなる群より選択される少なくとも1つの項目の改善である、食品組成物を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の剤または組成物を摂取または投与することにより、より安全かつ効果的に睡眠の質を改善することができる。本発明の剤または組成物の摂取または投与により、起床時眠気の抑制、入眠と睡眠維持の向上、夢みの改善、疲労回復の促進、睡眠時間の増加、睡眠深度の向上、中途覚醒の抑制、熟眠感の向上、起床時の爽快感の向上、睡眠の満足感の向上および早朝覚醒の抑制などの効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施例であるレンギョウ葉エキスを配合した被験食品群およびプラセボ群におけるOSA睡眠調査票MA版の因子I(起床時眠気)に関するスコアの実測値を示すグラフ。
【
図2】本発明の一実施例であるレンギョウ葉エキスを配合した被験食品群およびプラセボ群におけるOSA睡眠調査票MA版の因子I(起床時眠気)に関するスコアの変化量を示すグラフ。
【
図3】本発明の一実施例であるレンギョウ葉エキスを配合した被験食品群およびプラセボ群におけるOSA睡眠調査票MA版の因子II(入眠と睡眠維持)に関するスコアの実測値を示すグラフ。
【
図4】本発明の一実施例であるレンギョウ葉エキスを配合した被験食品群およびプラセボ群におけるOSA睡眠調査票MA版の因子II(入眠と睡眠維持)に関するスコアの変化量を示すグラフ。
【
図5】本発明の一実施例であるレンギョウ葉エキスを配合した被験食品群およびプラセボ群におけるOSA睡眠調査票MA版の因子III(夢み)に関するスコアの実測値を示すグラフ。
【
図6】本発明の一実施例であるレンギョウ葉エキスを配合した被験食品群およびプラセボ群におけるOSA睡眠調査票MA版の因子III(夢み)に関するスコアの変化量を示すグラフ。
【
図7】本発明の一実施例であるレンギョウ葉エキスを配合した被験食品群およびプラセボ群におけるOSA睡眠調査票MA版の因子IV(疲労回復)に関するスコアの実測値を示すグラフ。
【
図8】本発明の一実施例であるレンギョウ葉エキスを配合した被験食品群およびプラセボ群におけるOSA睡眠調査票MA版の因子IV(疲労回復)に関するスコアの変化量を示すグラフ。
【
図9】本発明の一実施例であるレンギョウ葉エキスを配合した被験食品群およびプラセボ群におけるOSA睡眠調査票MA版の因子V(睡眠時間)に関するスコアの実測値を示すグラフ。
【
図10】本発明の一実施例であるレンギョウ葉エキスを配合した被験食品群およびプラセボ群におけるOSA睡眠調査票MA版の因子V(睡眠時間)に関するスコアの変化量を示すグラフ。
【
図11】本発明の一実施例であるレンギョウ葉エキスを配合した被験食品群およびプラセボ群におけるセントマリー病院睡眠質問票の睡眠深度に関するスコアの実測値を示すグラフ。
【
図12】本発明の一実施例であるレンギョウ葉エキスを配合した被験食品群およびプラセボ群におけるセントマリー病院睡眠質問票の睡眠深度に関するスコアの変化量を示すグラフ。
【
図13】本発明の一実施例であるレンギョウ葉エキスを配合した被験食品群およびプラセボ群におけるセントマリー病院睡眠質問票の中途覚醒度に関するスコアの実測値を示すグラフ。
【
図14】本発明の一実施例であるレンギョウ葉エキスを配合した被験食品群およびプラセボ群におけるセントマリー病院睡眠質問票の中途覚醒度に関するスコアの変化量を示すグラフ。
【
図15】本発明の一実施例であるレンギョウ葉エキスを配合した被験食品群およびプラセボ群におけるセントマリー病院睡眠質問票の熟眠感に関するスコアの実測値を示すグラフ。
【
図16】本発明の一実施例であるレンギョウ葉エキスを配合した被験食品群およびプラセボ群におけるセントマリー病院睡眠質問票の熟眠感に関するスコアの変化量を示すグラフ。
【
図17】本発明の一実施例であるレンギョウ葉エキスを配合した被験食品群およびプラセボ群におけるセントマリー病院睡眠質問票の起床時の爽快感に関するスコアの実測値を示すグラフ。
【
図18】本発明の一実施例であるレンギョウ葉エキスを配合した被験食品群およびプラセボ群におけるセントマリー病院睡眠質問票の起床時の爽快感に関するスコアの変化量を示すグラフ。
【
図19】本発明の一実施例であるレンギョウ葉エキスを配合した被験食品群およびプラセボ群におけるVAS(疲労感)の変化量を示すグラフ。
【
図20】本発明の一実施例であるレンギョウ葉エキスを配合した被験食品群およびプラセボ群におけるChalder疲労質問票の各スコアの変化量を示すグラフ。
【
図21】本発明の一実施例であるゴボウスプラウトエキスを配合した被験食品群およびプラセボ群におけるOSA睡眠調査票MA版の因子I(起床時眠気)に関するスコアの実測値および変化量を示すグラフ。
【
図22】本発明の一実施例であるゴボウスプラウトエキスを配合した被験食品群およびプラセボ群におけるOSA睡眠調査票MA版の因子II(入眠と睡眠維持)に関するスコアの実測値および変化量を示すグラフ。
【
図23】本発明の一実施例であるゴボウスプラウトエキスを配合した被験食品群およびプラセボ群におけるOSA睡眠調査票MA版の因子III(夢み)に関するスコアの実測値および変化量を示すグラフ。
【
図24】本発明の一実施例であるゴボウスプラウトエキスを配合した被験食品群およびプラセボ群におけるOSA睡眠調査票MA版の因子IV(疲労回復)に関するスコアの実測値および変化量を示すグラフ。
【
図25】本発明の一実施例であるゴボウスプラウトエキスを配合した被験食品群およびプラセボ群におけるOSA睡眠調査票MA版の因子V(睡眠時間)に関するスコアの実測値および変化量を示すグラフ。
【
図26】本発明の一実施例であるゴボウスプラウトエキスを配合した被験食品群およびプラセボ群におけるセントマリー病院睡眠質問票の睡眠深度に関するスコアの実測値および変化量を示すグラフ。
【
図27】本発明の一実施例であるゴボウスプラウトエキスを配合した被験食品群およびプラセボ群におけるセントマリー病院睡眠質問票の中途覚醒度に関するスコアの実測値および変化量を示すグラフ。
【
図28】本発明の一実施例であるゴボウスプラウトエキスを配合した被験食品群およびプラセボ群におけるセントマリー病院睡眠質問票の熟眠感に関するスコアの実測値および変化量を示すグラフ。
【
図29】本発明の一実施例であるゴボウスプラウトエキスを配合した被験食品群およびプラセボ群におけるセントマリー病院睡眠質問票の起床時の爽快感に関するスコアの実測値および変化量を示すグラフ。
【
図30】本発明の一実施例であるゴボウスプラウトエキスを配合した被験食品群およびプラセボ群におけるセントマリー病院睡眠質問票の睡眠の満足感に関するスコアの実測値および変化量を示すグラフ。
【
図31】本発明の一実施例であるゴボウスプラウトエキスを配合した被験食品群およびプラセボ群におけるセントマリー病院睡眠質問票の就眠困難度に関するスコアの実測値および変化量を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、アルクチゲニンおよび/またはアルクチインを有効成分として含有する、睡眠の質の改善剤を提供する。
【0023】
本発明における「睡眠の質」は、主観的または客観的な指標によって一般的に評価することができる。睡眠の質は、たとえば起床時眠気の有無、入眠までの時間、睡眠が維持されるか、夢み(たとえば悪夢の有無および夢みの回数)、疲労回復、睡眠時間、睡眠深度、中途覚醒の有無および回数、熟眠感、起床時の爽快感、睡眠の満足感および早朝覚醒の有無などの指標によって評価することができる。
【0024】
本明細書において「睡眠の質の改善」は、起床時眠気、入眠と睡眠維持、夢み、疲労回復、睡眠時間、睡眠深度、中途覚醒度、熟眠感、起床時の爽快感、睡眠の満足感および早朝覚醒の有無からなる群より選択される少なくとも1つの項目の改善であることができる。
すなわち、本発明における「睡眠の質の改善」には、たとえば起床時眠気の抑制、入眠と睡眠維持の向上、夢みの改善、疲労回復の促進、睡眠時間の増加、睡眠深度の向上、中途覚醒度の抑制、熟眠感の向上、起床時の爽快感の向上、睡眠の満足感の向上および早朝覚醒の抑制などが含まれる。
【0025】
「起床時眠気」、「入眠と睡眠維持」、「夢み」、「疲労回復」および「睡眠時間」の各項目は、OSA睡眠調査票MA版によって評価されることができる(非特許文献3)。OSA睡眠調査票MA版は、標準化が行われており、信頼性および再現性の十分高い調査票である。OSA睡眠調査票MA版は、16項目の睡眠に関する質問について4段階で回答させ起床時の睡眠感を評価するものであり、因子I(起床時眠気)、因子II(入眠と睡眠維持)、因子III(夢み)、因子IV(疲労回復)、因子V(睡眠時間)の5つの因子で構成される。本発明において、「起床時眠気」、「入眠と睡眠維持」、「夢み」、「疲労回復」および/または「睡眠時間」の項目の改善は、たとえばOSA睡眠調査票MA版を用いた調査において、これらの項目のスコアが改善することにより評価してもよい。
【0026】
「睡眠深度」、「中途覚醒度」、「熟眠感」、「起床時の爽快感」、「睡眠の満足感」および「早朝覚醒の有無」の各項目は、セントマリー病院睡眠質問票によって評価されることができる(非特許文献4)。セントマリー病院睡眠質問票もまた、信頼性および再現性の十分高い調査票である。セントマリー病院睡眠質問票は、直前の24時間の睡眠について評価する自己式質問票であり、睡眠の質を評価するものである。セントマリー病院睡眠質問票は、睡眠深度、中途覚醒度、熟眠感、起床時の爽快感、睡眠の満足感、早朝覚醒の有無、および就眠困難度の7項目で構成される。本発明において、「睡眠深度」、「中途覚醒度」、「熟眠感」、「起床時の爽快感」、「睡眠の満足感」および/または「早朝覚醒の有無」の項目の改善は、たとえばセントマリー病院睡眠質問票を用いた調査において、これらの項目のスコアが改善することにより評価してもよい。
【0027】
また、「睡眠の質の改善」は、上記項目の少なくとも1つが改善していると対象者が主観的に感じることによって評価してもよい。「睡眠の質の改善」は、たとえば被験食品の摂取前と比較して、摂取後において上記項目の少なくとも1つが改善することによって評価することができる。また、「睡眠の質の改善」は、プラセボ群と比較して、被験食品摂取群において上記項目の少なくとも1つが改善することによっても評価することができる。
【0028】
アルクチゲニンおよびアルクチインは、ゴボウ等の植物に含まれるジフェニルプロパノイド(リグナン類)の1つである。アルクチインは、アルクチゲニンの前駆体であり、生体内で代謝されてアルクチゲニンになることが知られている。アルクチゲニンおよび/またはアルクチインとして、化学的に合成したアルクチゲニンおよび/またはアルクチインを用いてもよいし、植物から単離したアルクチゲニンおよび/またはアルクチインを用いてもよい。また、アルクチゲニンおよび/またはアルクチインとして、アルクチゲニンおよび/またはアルクチインを含む植物そのものまたはこの植物の抽出物を用いてもよい。
【0029】
アルクチゲニンおよび/またはアルクチインを含む植物には、たとえばゴボウ(スプラウト・葉・根茎・ゴボウシ)、アイノコレンギョウ(花・葉・果実・根茎)、チョウセンレンギョウ(花・葉・果実・根茎)、レンギョウ(花・葉・果実・根茎)、シナレンギョウ(花・葉・果実・根茎)、ベニバナ、ヤグルマギク、アメリカオニアザミ、サントリソウ(ギバナアザミ)、カルドン、ゴロツキアザミ、アニウロコアザミ、ゴマ、モミジヒルガオ、シンチクヒメハギ、チョウセンテイカカズラ、テイカカズラ、ムニンテイカカズラ、ヒメテイカカズラ、トウキョウチクトウ、ケテイカカズラ、リョウカオウ、オオケタデ、ヤマザクラ、シロイヌナズナ、アマランス、クルミ、エンバク、スペルタコムギ、軟質コムギ、メキシコイトスギおよびカヤが含まれる。なかでも、ゴボウ(特にゴボウシおよびゴボウスプラウト)およびレンギョウ(特に葉)は、アルクチゲニンおよび/またはアルクチインの含有量が高いため好ましい。植物そのものを用いる場合、生または乾燥して刻んだもの、或いは乾燥して粉末としたものを用いることができる。
【0030】
アルクチゲニンおよび/またはアルクチインを含む植物は、1種類のみ用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。本発明の剤および組成物は、アルクチゲニンおよび/またはアルクチインとして、上述した植物を単独で、または2種類以上を組み合わせて含有してもよい。たとえば、本発明の剤および組成物は、アルクチゲニンおよび/またはアルクチインとして、ゴボウ、ゴボウシ、ゴボウスプラウトもしくはレンギョウまたはこれらの抽出物を単独で含有してもよいし、2種類以上を組み合わせて含有してもよい。
【0031】
アルクチゲニンおよび/またはアルクチインとして植物の抽出物を用いる場合、抽出物は、たとえば以下の方法によって植物から調製してもよい。本発明において使用される抽出物は、たとえばアルクチゲニンおよび/またはアルクチインを含む植物から、酵素変換工程および有機溶媒による抽出工程の2段階により抽出してもよい。
【0032】
酵素変換工程は、植物に内在する酵素であるβ-グルコシダーゼにより、該植物に含まれているアルクチインをアルクチゲニンに酵素変換する工程である。具体的には、植物を乾燥し切栽したものを適切な温度に保持することにより内在のβ-グルコシダーゼを作用させて、アルクチインからアルクチゲニンへの反応を進行させる。たとえば、切裁した植物に水などの任意の溶液を加えて、30℃付近の温度(20~50℃)の間にて攪拌することなどにより、植物を任意の温度に保持することができる。
【0033】
有機溶媒による抽出工程は、任意の適切な有機溶媒を使用して、植物からアルクチゲニンおよびアルクチインを抽出する工程である。すなわち、上記の酵素変換工程によりアルクチゲニンが高含量となった状態で、適切な溶媒を添加して、植物から抽出物(エキス)を抽出する工程である。たとえば、植物に適切な溶媒を添加して、適切な時間加熱攪拌して抽出物を抽出する。また、加熱攪拌以外にも、加熱還流、ドリップ式抽出、浸漬式抽出または加圧式抽出法などの当業者に公知の任意の抽出法を使用して、抽出物を抽出することができる。
【0034】
アルクチゲニンは水難溶性であることから、有機溶媒を添加することにより、アルクチゲニンの収率を向上させることができる。有機溶媒は、任意の有機溶媒を使用することができる。たとえば、メタノール、エタノールおよびプロパノールなどのアルコール、並びにアセトンを使用することができる。安全性の面を考慮すると、有機溶媒として30%量のエタノールを使用することが好ましい。抽出物から溶媒を留去するとペースト状の濃縮物が得られ、この濃縮物をさらに乾燥すると乾燥物を得ることができる。
【0035】
本発明の睡眠の質の改善剤は、アルクチゲニンおよび/またはアルクチインとして、上述した植物そのものもしくはこの植物の抽出物、上述した植物を乾燥して刻んだもの、または上述した植物を乾燥して粉末としたものを含有してもよい。これらを含有することにより、アルクチゲニンおよび/またはアルクチインを単独で含有するよりも優れた効果を得ることができる。
【0036】
本発明の剤は、任意の形態の製剤であることができる。本発明の剤は、経口投与製剤として、たとえば糖衣錠、バッカル錠、コーティング錠およびチュアブル錠等の錠剤;トローチ剤;丸剤;散剤;硬カプセル剤および軟カプセル剤を含むカプセル剤;顆粒剤;ならびに懸濁剤、乳剤、シロップ剤およびエリキシル剤等の液剤などであることができる。
【0037】
また、本発明の剤は、静脈注射、皮下注射、腹腔内注射、筋肉内注射、経皮投与、経鼻投与、経肺投与、経腸投与、口腔内投与および経粘膜投与などの非経口投与製剤であることができる。本発明の剤は、たとえば、注射剤、経皮吸収テープ、エアゾール剤および坐剤などであることができる。
【0038】
また、本発明の剤は、外用剤として提供されることができる。本発明の外用剤は、医薬品および化粧品などであることができる。本発明の外用剤は、皮膚、頭皮、毛髪、粘膜および爪などに適用するための外用剤であることができる。外用剤には、たとえばクリーム剤、軟膏剤、液剤、ゲル剤、ローション剤、乳液剤、エアゾール剤、スティック剤、シートマスク剤、固形剤、泡沫剤、オイル剤およびチック剤等の塗布剤;パップ剤、プラスター剤、テープ剤およびパッチ剤等の貼付剤;並びにスプレー剤などが含まれる。
【0039】
本発明はまた、アルクチゲニンおよび/またはアルクチインを有効成分として含有する、睡眠の質を改善するための組成物を提供する。本発明の組成物は、上述した剤と同様に構成することができる。本発明の組成物は、食用に適した形態であることができ、たとえば固形状、液状、顆粒状、粒状、粉末状、カプセル状、クリーム状およびペースト状などであってもよい。
【0040】
本発明の組成物は、医薬品、化粧品および食品などに用いるための組成物であることができる。本発明の組成物は、医薬品、化粧品および食品に通常用いられる任意の成分をさらに含むことができる。たとえば、本発明の組成物は、薬学的に許容される基剤、担体、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤および着色剤などをさらに含んでもよい。
【0041】
本発明の組成物に使用する担体および賦形剤の例には、乳糖、ブドウ糖、白糖、マンニトール、デキストリン、馬鈴薯デンプン、トウモロコシデンプン、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウムおよび結晶セルロースなどを含む。
【0042】
結合剤の例には、デンプン、ゼラチン、シロップ、トラガントゴム、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースなどを含む。
【0043】
崩壊剤の例には、デンプン、寒天、ゼラチン末、結晶セルロース、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよびカルボキシメチルセルロースカルシウムなどを含む。
【0044】
滑沢剤の例には、ステアリン酸マグネシウム、水素添加植物油、タルクおよびマクロゴールなどを含む。着色剤は、医薬品、医薬部外品および食品に添加することが許容されている任意の着色剤を使用することができる。
【0045】
また、本発明の組成物は、必要に応じて、白糖、ゼラチン、精製セラック、ゼラチン、グリセリン、ソルビトール、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、フタル酸セルロースアセテート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メチルメタクリレートおよびメタアクリル酸重合体などで一層以上の層で被膜してもよい。
【0046】
また、本発明の組成物は、必要に応じて、pH調節剤、緩衝剤、安定化剤、保存剤、防腐剤、希釈剤、コーティング剤、甘味剤、香料および可溶化剤などを添加してもよい。
【0047】
本発明はまた、アルクチゲニンおよび/またはアルクチインを有効成分として含有する、睡眠の質を改善するための食品組成物を提供する。本発明の食品組成物は、上述した剤および組成物と同様に構成することができる。
【0048】
本明細書において「食品組成物」には、一般的な飲食品だけでなく、病者用食品、健康食品、機能性表示食品、特定保健用食品、栄養補助食品およびサプリメントなどが含まれる。一般的な飲食品には、たとえば各種飲料、各種食品、加工食品、液状食品(スープ等)、調味料、栄養ドリンクおよび菓子類などが含まれる。本明細書において「加工食品」とは、天然の食材(動物および植物など)に対し加工および/または調理を施したものをいい、たとえば肉加工品、野菜加工品、果実加工品、冷凍食品、レトルト食品、缶詰食品、瓶詰食品およびインスタント食品などが含まれる。本発明の食品組成物は、睡眠の質の改善、起床時眠気の抑制、入眠と睡眠維持の向上、夢みの改善、疲労回復の促進、睡眠時間の増加、睡眠深度の向上、中途覚醒の抑制、熟眠感の向上、起床時の爽快感の向上、睡眠の満足感の向上および/または早朝覚醒の抑制などの効果の表示を付した食品であってもよい。また、本発明の食品組成物は、袋および容器等に封入された形態で提供されてもよい。本発明において使用する袋および容器は、食品に通常使用される任意の袋および容器であることができる。
【0049】
本発明の剤および組成物におけるアルクチゲニンおよび/またはアルクチインの含有量は、睡眠の質を改善する効果を発揮できる量であればよく、適用する対象、目的および摂取方法(投与方法)に応じて適宜設定することができる。たとえばヒトに経口摂取させる場合、好ましくはアルクチゲニンおよび/またはアルクチインを1日あたりの摂取量(投与量)がアルクチゲニン相当量として10mg以上、好ましくは20mg以上、より好ましくは40mg以上となるように含むことができる。また、アルクチゲニンおよび/またはアルクチインの1日あたりの摂取量(投与量)の上限は、特に限定されないが、たとえばアルクチゲニン相当量として2000mg以下とすることができる。なお、「アルクチゲニン相当量」とは、アルクチインが生体内で代謝されてアルクチゲニンとなることを考慮し、剤および組成物に含まれる全てのアルクチインがアルクチゲニンに代謝された場合のアルクチゲニンの量と、剤および組成物に含まれるアルクチゲニンの量との総量を意味する。
【0050】
本発明の剤および組成物は、連続して摂取(投与)することができ、たとえば2日間、3日間、5日間、1週間、2週間または3週間以上連続して摂取(投与)してもよい。また、本発明の剤および組成物の摂取(投与)のタイミングは、特に限定されないが、好ましくは空腹時、より好ましくは食前または食後2~3時間以降、さらに好ましくは朝食前または朝食後2~3時間後であることができる。
【0051】
本発明の剤および組成物は、特に限定されず、任意の対象に適用することができる。本発明の剤および組成物を適用する対象には、たとえばヒト、マウス、ラット、ウサギ、ネコ、イヌ、ウシ、ウマおよびサルなどの哺乳動物が含まれる。本発明の剤および組成物はまた、特に限定されないが、睡眠の質の改善が望まれる対象、たとえば眠りが浅い、寝つきが悪い、寝た気がしない、夜中に起きてしまう、目覚めがすっきりしない、および/または日中に眠たくなるなどの睡眠に関する不調を感じている対象に適用することができる。
【実施例0052】
〔実施例1〕
(レンギョウ葉エキス)
本発明の一実施例として、レンギョウ葉エキスを調製した。原料としてシナレンギョウを用い、葉95 kgに含水エタノールを2000kgを加えて50±5℃に加温し2時間攪拌し、80メッシュのフィルターでろ過してレンギョウ葉抽出液を得た。この溶液の抽出物固形分に対してアラビアガムおよびデキストリンを各11.2%量添加後、減圧濃縮し、噴霧乾燥した。アルクチゲニン相当量が8.60%のレンギョウ葉抽出物粉末を32.6 kg得た。
【0053】
(被験者)
被験者は、Body Mass Index(BMI)が25.0 kg/m2以上30.0 kg/m2未満であり、日常的に疲労感を自覚している20歳以上65歳以下の男女を対象とした。
【0054】
(試験食品)
試験食品として、レンギョウ葉エキス配合食品(被験食品;1粒あたりアルクチゲニン相当量として10mg含む)を用いた。また、プラセボとして、レンギョウ葉エキスを配合しない食品(プラセボ)を用いた。試験期間中、被験者には被験食品あるいはプラセボを毎朝1回8粒(アルクチゲニン相当量として1日80mg)、水またはぬるま湯とともに摂取させた。摂取のタイミングは、空腹時または朝食前30分、もしくは朝食後2~3時間とした。
【0055】
(試験方法)
睡眠の質に対する効果について、ランダム化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験を行い検証した。
【0056】
摂取開始1週間前から摂取3週間後まで、週に一度、起床時に睡眠に関する質問票を用いて睡眠の質を評価した。睡眠に関する質問票には、OSA睡眠調査票MA版(非特許文献3)およびセントマリー病院睡眠質問票(非特許文献4)を用いた。
【0057】
また、睡眠の質の改善による二次的な効果として、疲労感の軽減効果についても調査した。摂取開始1週間前から摂取3週間後まで、週に一度、起床時にVAS(疲労感)およびChalder疲労質問票を用いて疲労感の評価を行った。
【0058】
VASは、項目を疲労感とし日本疲労学会で推奨されている方法に従って実施した(非特許文献5)。VASの評価では、線分の右端を最良の感覚(100)、左端を最悪の感覚(0)と定義し、今の状態のレベルがどこに位置するか、その線分上に印を記入させ、左端からの長さを計測しスコアとした。
【0059】
Chalder疲労質問票は国際的に用いられている質問票の一つで、14項目の疲労に関する質問で構成されており、数週間程度の中期的な疲労状態を評価することができる(非特許文献6)。14項目の質問について4段階で回答させ、身体的疲労スコア(8項目)、精神的疲労スコア(6項目)、それらのスコアを合計した総スコアで評価した。
【0060】
〔1.OSA睡眠調査票MA版による評価〕
被験食品群およびプラセボ群において、OSA睡眠調査票MA版を用いて、睡眠感に対する効果を評価した。OSA睡眠調査票MA版の因子I~Vのスコアにおける実測値を表1に、摂取開始1週間前からの変化量を表2に示す。また、
図1は被験食品群およびプラセボ群における因子I(起床時眠気)の実測値、
図2は因子I(起床時眠気)の変化量、
図3は因子II(入眠と睡眠維持)の実測値、
図4は因子II(入眠と睡眠維持)の変化量、
図5は因子III(夢み)の実測値、
図6は因子III(夢み)の変化量、
図7は因子IV(疲労回復)の実測値、
図8は因子IV(疲労回復)の変化量、
図9は因子V(睡眠時間)の実測値、
図10は因子V(睡眠時間)の変化量を示すグラフである。
【0061】
表および図に示すように、因子I(起床時眠気)、因子II(入眠と睡眠維持)、因子III(夢み)、因子IV(疲労回復)および因子V(睡眠時間)は、被験食品群において、摂取前と比較して摂取後に高くなる傾向が示された。特に、因子I(起床時眠気)、因子II(入眠と睡眠維持)、因子IV(疲労回復)および因子V(睡眠時間)については、摂取前と比較して摂取後に有意に上昇することが示された。
【0062】
また、因子I~Vの変化量は、被験食品群がプラセボ群と比較して、全体的に高い傾向が示された。特に、因子IV(疲労回復)の変化量は、被験食品群がプラセボ群と比較して、摂取2週間目に有意に高かった。
【0063】
OSA睡眠調査票MA版は、睡眠の心理的な側面(睡眠感)を評価することができ、スコアが高いほど睡眠感が良いことを示す(非特許文献3)。これらの結果から、レンギョウ葉エキス配合食品の摂取によって睡眠感(特に、起床時眠気、入眠と睡眠維持、睡眠時間および疲労回復)が改善されることが確認された。
【0064】
【0065】
【0066】
〔2.セントマリー病院睡眠質問票による評価〕
被験食品群およびプラセボ群において、セントマリー病院睡眠質問票を用いて、睡眠の質に対する効果を評価した。セントマリー病院睡眠質問票の睡眠深度、中途覚醒度、熟眠感、起床時の爽快感、睡眠の満足感および就眠困難度のスコアの実測値、ならびに早朝覚醒の有無を表3に示す。また、摂取開始1週間前からの各スコアの変化量を表4に示す。
図11は被験食品群およびプラセボ群における睡眠深度の実測値、
図12は睡眠深度の変化量、
図13は中途覚醒度の実測値、
図14は中途覚醒度の変化量、
図15は熟眠感の実測値、
図16は熟眠感の変化量、
図17は起床時の爽快感の実測値、
図18は起床時の爽快感の変化量を示すグラフである。
【0067】
表および図に示すように、睡眠深度、中途覚醒度、熟眠感、起床時の爽快感および睡眠の満足感は、被験食品群において、摂取前と比較して摂取後にスコアが改善する傾向が示された。特に、睡眠深度については摂取2、3週間目に、熟眠感および睡眠の満足感については摂取3週間目に、起床時の爽快感については摂取1~3週間目に有意に高かった。さらに、早朝覚醒の有無は、プラセボ群と比較して摂取1、3週間目に有意な改善がみられた。
【0068】
また、睡眠深度、熟眠感および起床時の爽快感の変化量は、被験食品群がプラセボ群と比較して、全体的に高く、改善している傾向が示された。特に、睡眠深度は摂取2週間目に、熟眠感は摂取3週間目に有意に高かった。また、中途覚醒度の変化量は、被験食品群がプラセボ群と比較して全体的に低く、改善している傾向が示された。
【0069】
セントマリー病院睡眠質問票は、睡眠の質について主観的に評価することができ、睡眠深度、熟眠感、起床時の爽快感および睡眠の満足感についてはスコアが高いほど、中途覚醒度についてはスコアが低いほど睡眠の質が高いことを示す(非特許文献4)。これらの結果から、レンギョウ葉エキス配合食品の摂取によって睡眠深度、熟眠感、起床時の爽快感および早朝覚醒などといった睡眠の質が改善されることが確認された。
【0070】
【0071】
【0072】
〔3.VAS(疲労感)による評価〕
被験食品群およびプラセボ群におけるVAS(疲労感)の摂取開始1週間前からの変化量を表5に示す。
図19は被験食品群およびプラセボ群におけるVAS(疲労感)の変化量を示すグラフである。
【0073】
VAS(疲労感)の変化量において、被験食品群はプラセボ群と比較して、摂取1週間目および3週間目でスコアの有意な低下がみられた。
【0074】
【0075】
〔4.Chalder疲労質問票による評価〕
被験食品群およびプラセボ群におけるChalder疲労質問票の摂取開始1週間前からの各スコアの変化量を表6に示す。
図20は被験食品群およびプラセボ群におけるChalder疲労質問票の各スコアの変化量を示すグラフである。
【0076】
Chalder疲労質問票の各スコアの変化量は、被験食品群がプラセボ群と比較して、総スコアにおいては摂取1週間目および摂取3週間目で、身体的疲労スコアにおいては摂取2、3週間目で、精神的疲労スコアにおいては3週間目で、有意に低値を示した。
【0077】
VAS(疲労感)およびChalder疲労質問票の結果から、レンギョウ葉エキスは、生理的疲労に対して身体的疲労および精神的疲労の両面から軽減効果を有するものと考えられた。この疲労軽減効果には、レンギョウ葉エキス配合食品の摂取により睡眠の質が改善したことが関与している可能性が示唆された。
【0078】
【0079】
〔実施例2〕
(ゴボウスプラウトエキス)
本発明の一実施例として、ゴボウスプラウトエキス末を調製した。乾燥させたゴボウスプラウト125 kgに水1680 kgを加えて35±5℃に加温し60分間攪拌した。次いで、エタノール720 kgを加えて昇温し、さらに2時間攪拌し、80メッシュのフィルターでろ過しゴボウスプラウト抽出液を得た。これを70℃で1時間殺菌し、抽出物固形分に対してデキストリンを約30%量加えて、減圧濃縮し、噴霧乾燥した。アルクチゲニンおよびアルクチイン含量は、それぞれ13.7%および0.4%であり、アルクチゲニン相当量として13.9%のゴボウスプラウトエキス粉末が得られた。
【0080】
(被験者)
被験者は、BMIが23.0 kg/m2以上30.0 kg/m2未満であり、日常的に疲労感を自覚している20歳以上65歳以下の男女を対象とした。
【0081】
(試験食品)
試験食品として、ゴボウスプラウトエキス配合食品(被験食品;1粒あたりアルクチゲニン相当量として10mg含む)を用いた。また、プラセボとして、ゴボウスプラウトエキスを配合しない食品(プラセボ)を用いた。試験期間中、被験者には被験食品あるいはプラセボを毎朝1回4粒(アルクチゲニン相当量として1日40mg)、水またはぬるま湯とともに摂取させた。摂取のタイミングは、空腹時または朝食前30分、もしくは朝食後2~3時間とした。
【0082】
(試験方法)
睡眠の質に対する効果について、ランダム化二重盲検プラセボ対照並行群間比較試験を行い検証した。
【0083】
摂取開始1週間前から摂取3週間後まで、週に一度、起床時に睡眠に関する質問票を用いて睡眠の質を評価した。睡眠に関する質問票には、OSA睡眠調査票MA版(非特許文献3)およびセントマリー病院睡眠質問票(非特許文献4)を用いた。
【0084】
〔1.OSA睡眠調査票MA版による評価〕
被験食品群およびプラセボ群において、OSA睡眠調査票MA版を用いて、睡眠感に対する効果を評価した。OSA睡眠調査票MA版の因子I~Vのスコアにおける実測値を表7に、摂取開始1週間前からの変化量を表8に示す。また、
図21は被験食品群およびプラセボ群における因子I(起床時眠気)の実測値および変化量、
図22は因子II(入眠と睡眠維持)の実測値および変化量、
図23は因子III(夢み)の実測値および変化量、
図24は因子IV(疲労回復)の実測値および変化量、
図25は因子V(睡眠時間)の実測値および変化量を示すグラフである。
【0085】
表および図に示すように、因子I(起床時眠気)、因子II(入眠と睡眠維持)、因子III(夢み)、因子IV(疲労回復)および因子V(睡眠時間)は、被験食品群において、摂取前と比較して摂取後に高くなる傾向が示された。特に、因子I(起床時眠気)、因子II(入眠と睡眠維持)、因子IV(疲労回復)および因子V(睡眠時間)については、摂取前と比較して摂取後に有意に上昇することが示された。
【0086】
また、因子I~Vの変化量は、被験食品群がプラセボ群と比較して、全体的に高い傾向が示された。特に、因子I(起床時眠気)、因子II(入眠と睡眠維持)の変化量は、被験食品群がプラセボ群と比較して、摂取3週間目に有意に高かった。
【0087】
OSA睡眠調査票MA版は、睡眠の心理的な側面(睡眠感)を評価することができ、スコアが高いほど睡眠感が良いことを示す(非特許文献3)。これらの結果から、ゴボウスプラウトエキス配合食品の摂取によって睡眠感(特に、起床時眠気、入眠と睡眠維持、睡眠時間および疲労回復)が改善されることが確認された。
【0088】
【0089】
【0090】
〔2.セントマリー病院睡眠質問票による評価〕
被験食品群およびプラセボ群において、セントマリー病院睡眠質問票を用いて、睡眠の質に対する効果を評価した。セントマリー病院睡眠質問票の睡眠深度、中途覚醒度、熟眠感、起床時の爽快感、睡眠の満足感および就眠困難度のスコアの実測値、ならびに早朝覚醒の有無を表9に示す。また、摂取開始1週間前からの各スコアの変化量を表10に示す。
図26は被験食品群およびプラセボ群における睡眠深度の実測値および変化量、
図27は中途覚醒度の実測値および変化量、
図28は熟眠感の実測値および変化量、
図29は起床時の爽快感の実測値および変化量、
図30は睡眠の満足感の実測値および変化量、
図31は就眠困難度の実測値および変化量を示すグラフである。
【0091】
表および図に示すように、睡眠深度、中途覚醒度、熟眠感、起床時の爽快感、睡眠の満足感および就眠困難度は、被験食品群においてのみ、摂取前と比較して摂取3週間目にスコアが有意に改善した。
【0092】
また、睡眠深度、熟眠感、起床時の爽快感および睡眠の満足感の変化量は、被験食品群がプラセボ群と比較して、全体的に高く、改善している傾向が示された。特に、熟眠感は摂取3週間目に有意に高かった。また、中途覚醒度および就眠困難度の変化量は、被験食品群がプラセボ群と比較して全体的に低く、改善している傾向が示された。特に、就眠困難度は摂取3週間目に有意に低かった。
【0093】
セントマリー病院睡眠質問票は、睡眠の質について主観的に評価することができ、睡眠深度、熟眠感、起床時の爽快感および睡眠の満足感についてはスコアが高いほど、中途覚醒度および就眠困難度についてはスコアが低いほど睡眠の質が高いことを示す(非特許文献4)。これらの結果から、ゴボウスプラウトエキス配合食品の摂取によって睡眠深度、中途覚醒度、熟眠感、起床時の爽快感、睡眠の満足感および就眠困難度といった睡眠の質が改善されることが確認された。
【0094】
【0095】
【0096】
以上の結果から、実施例1のレンギョウ葉エキスおよび実施例2のゴボウスプラウトエキスに共通して含まれるアルクチゲニンおよびアルクチインに、睡眠の質を改善する作用があることが強く示唆された。