(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023070135
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】複数の蛍光体放出の部位を有するコンジュゲートに基づく細胞染色用の高輝度の放出可能な標識
(51)【国際特許分類】
C07K 16/00 20060101AFI20230511BHJP
C07K 14/74 20060101ALI20230511BHJP
C07K 14/705 20060101ALI20230511BHJP
C12Q 1/40 20060101ALI20230511BHJP
C12Q 1/34 20060101ALI20230511BHJP
C12Q 1/37 20060101ALI20230511BHJP
C12Q 1/44 20060101ALI20230511BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20230511BHJP
G01N 33/532 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
C07K16/00
C07K14/74
C07K14/705
C12Q1/40
C12Q1/34
C12Q1/37
C12Q1/44
C12Q1/02
G01N33/532 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022176077
(22)【出願日】2022-11-02
(31)【優先権主張番号】21206350
(32)【優先日】2021-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】520094891
【氏名又は名称】ミルテニー バイオテック ベー.フェー. ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Miltenyi Biotec B.V. & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Friedrich-Ebert-Strasse 68, 51429 Bergisch Gladbach, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ドミトロ ユシチェンコ
(72)【発明者】
【氏名】トルゲ ライバー
【テーマコード(参考)】
4B063
4H045
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QQ01
4B063QQ79
4B063QR10
4B063QR12
4B063QR14
4B063QR15
4B063QR16
4B063QR48
4B063QR58
4B063QS02
4B063QS33
4B063QX02
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA75
4H045EA50
4H045FA50
4H045FA74
(57)【要約】 (修正有)
【課題】2つの異なる酵素分解性スペーサーを介して連結された検出部分および抗原認識部分を有するコンジュゲートで標的細胞を標識することによる細胞検出のための方法を提供する。
【解決手段】本発明は、まれに発現されるエピトープの検出を可能にするような高輝度、および連続イメージングまたは細胞ソーティングなどの下流での適用を可能にするようなエピトープからの標識の放出を特徴とするコンジュゲートであって、一般式(I)Yn-P1(P2-Xm)oを有し、X:検出部分;P1:第1の酵素分解性スペーサー;P2:第2の酵素分解性スペーサー;Y:抗原認識部分であり、n、m、oは、1~100の整数であるが、ただし、第1のスペーサーP1および第2のスペーサーP2は、同じ酵素により分解できない、コンジュゲートである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)Yn-P1(P2-Xm)oを有するコンジュゲートであって、X:検出部分;P1:第1の酵素分解性スペーサー;P2:第2の酵素分解性スペーサー;Y:抗原認識部分であり、n、m、oは、1~100の整数であるが、ただし、第1のスペーサーP1および第2のスペーサーP2は、同じ酵素により分解できない、コンジュゲート。
【請求項2】
第1のスペーサーP1および第2のスペーサーP2が、多糖類、タンパク質、ペプチド、デプシペプチド、ポリエステル、核酸からなる群から選択されるが、ただし、第1のスペーサーP1および第2のスペーサーP2は、同じ群のメンバーから選択されないことを特徴とする、請求項1記載のコンジュゲート。
【請求項3】
抗原認識部分Yが、抗体、断片化抗体、断片化抗体誘導体、TCR分子を標的とするペプチド/MHC複合体、細胞接着受容体分子、共刺激分子に対する受容体または人工的に操作された結合分子であることを特徴とする、請求項1または2記載のコンジュゲート。
【請求項4】
前記検出部分が、発色団部分、蛍光部分、燐光部分、発光部分、光吸収部分、放射性部分、遷移金属および同位体質量タグ部分からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載のコンジュゲート。
【請求項5】
生物標本の試料中の標的部分を検出する方法であって、
a)一般式(I)Yn-P1(P2-Xm)o(式中、X:検出部分;P1:第1の酵素分解性スペーサー;P2:第2の酵素分解性スペーサー;およびY:抗原認識部分およびn、m、oは、1~100の整数である)を有する少なくとも1つのコンジュゲートを供給すること
b)生物標本の試料を少なくとも1つのコンジュゲートと接触させ、それによって抗原認識部分Yによって認識される標的部分を標識すること
c)コンジュゲートで標識された標的部分を検出部分Xで検出すること、および
d)第1のスペーサーP1を分解することができる第1の酵素および/または第2のスペーサー酵素P2を分解することができる第2の酵素を供給することによって、第1のスペーサーP1および/または第2のP2を酵素的に分解し、それによってコンジュゲートから検出部分Xを切断すること、その際、第1の酵素は、第2のスペーサーP2を分解することができず、かつ第2の酵素は、第1のスペーサーP1を分解することができないこと
を特徴とする、方法。
【請求項6】
第1および第2のスペーサーP1およびP2を酵素的に分解し、抗原認識部分Yを、標的部分から切断することを特徴とする、請求項5記載の方法。
【請求項7】
第1のスペーサーP1および第2のスペーサーP2を分解するために使用される酵素が、グリコシダーゼ、デキストラナーゼ、プルラナーゼ、アミラーゼ、イヌリナーゼ、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、ペクチナーゼ、キトサナーゼ、キチナーゼ、プロテイナーゼ、エステラーゼ、リパーゼ、レダクターゼ、およびヌクレアーゼからなる群から選択されるが、ただし、第1のスペーサーP1および第2のスペーサーP2を分解するために使用される酵素が、同一ではないか、またはアイソザイムではない、請求項5または6記載の方法。
【請求項8】
工程a)~d)を含む後続のシーケンスにおいて、生物標本の試料を、異なる検出部分Xおよび/または異なる酵素分解性スペーサーPおよび/または異なる抗原認識部分Yを有する少なくとも2つのコンジュゲートと接触させることを特徴とする、請求項5から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
工程b)において生物標本の試料を、異なる検出部分Xおよび/または異なる酵素分解性スペーサーPおよび/または異なる抗原認識部分Yを有する少なくとも2つのコンジュゲートと同時に接触させ、後続の工程c)およびd)において各コンジュゲートの検出および切断を行うことを特徴とする、請求項5から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
工程b)において生物標本の試料を、異なる検出部分Xおよび/または異なる酵素分解性スペーサーPおよび/または異なる抗原認識部分Yを有する少なくとも2つのコンジュゲートと同時に接触させ、工程c)およびd)において各コンジュゲートの検出および切断を同時に行うことを特徴とする、請求項5から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
生物標本の試料を、工程a)~c)を含む後続のシーケンスにおいて異なる検出部分Xおよび/または異なる酵素分解性スペーサーPおよび/または異なる抗原認識部分Yを有する少なくとも2つのコンジュゲートと接触させ、単一の工程d)においてコンジュゲートの切断を同時に行うことを特徴とする、請求項5から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
生物標本の試料を、工程a)~c)を含む後続のシーケンスにおいて異なる検出部分Xおよび/または異なる酵素分解性スペーサーPおよび/または異なる抗原認識部分Yを有する少なくとも2つのコンジュゲートと接触させ、後続の工程d)において各コンジュゲートの切断を行うことを特徴とする、請求項5から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
細胞の試料を、工程a)~d)を含む後続のシーケンスにおいて異なる検出部分Xおよび/または異なる酵素分解性スペーサーPおよび/または異なる抗原認識部分Yを有する少なくとも2つのコンジュゲートと接触させ、第1のコンジュゲートの工程d)および第2のコンジュゲートの工程b)を同時に行うことを特徴とする、請求項5から7までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景
本発明は、2つの異なる酵素分解性スペーサーを介して連結された検出部分および抗原認識部分を有するコンジュゲートで標的細胞を標識することによる細胞検出のための方法を開示する。
【0002】
蛍光顕微鏡、フローサイトメトリーおよびセルソーティングなどの細胞分析および細胞分離技術は、研究および臨床用途の両方において、詳細な分析および生物標本からの標的細胞の特異的単離のための重要な技術である。これらは、蛍光コンジュゲートによるエピトープの蛍光標識に依存している。
【0003】
細胞標識のための従来の蛍光コンジュゲートの使用に関して、とりわけ以下の複数の技術的限界がある:
- まれに発現するエピトープの検出を可能にするようなコンジュゲートの高い蛍光輝度の達成、
- 連続イメージングまたは細胞ソーティングなどの下流での適用を可能にするようなエピトープからの標識の放出。
【0004】
特に、例えば、タンパク質ネットワークをマッピングするための高い多重化可能性を有する標識-検出-除去の連続サイクルに基づく技術では、蛍光シグナルの除去は不可欠である。
【0005】
放出可能な標識の複数のアプローチは、近年開発された。例えば、欧州特許出願公開第3037821号明細書では、特定の細胞標識が可能であるが、実験後に蛍光体を切断して洗い流すことができ、その後の染色やイメージングを可能にするコンジュゲートが開示されている。
【0006】
国際公開第20080918100号には、酵素が蛍光色素の活性化剤として作用し、酵素の放射線による切断によって標的細胞から放出され得るコンジュゲートが開示されている。
【0007】
しかしながら、これらの試薬は、単一の酵素的に消化可能なスペーサーに依存している。すべての酵素反応には平衡があるので、色素の放出は決して完全ではなく、いくらかの残留蛍光が試料に残ることになる。
【0008】
概要
したがって、本発明の課題は、生物標本の試料中または試料上の標的を標識および検出し、続いて検出部分を除去して、可逆的標識を与え、かつ/またはより高度に放出され得る、すなわち、放出後の残留蛍光を減少させるために、さらに異なる標識および検出サイクルを可能にするための染色試薬を提供することであった。
【0009】
蛍光標識の放出に関する前述の問題を解決するために、放出可能なコンジュゲートを設計するための新しいアプローチが提案されている。これは、一般構造(I)Yn-P1(P2-Xm)o(式中、X:検出部分;P1:およびP2は、同じ酵素により分解できない酵素分解性スペーサーである)を有するコンジュゲートに依存している。
【0010】
本発明の対象は、一般式(I)Yn-P1(P2-Xm)o(式中、X:検出部分;P1:第1の酵素分解性スペーサー;P2:第2の酵素分解性スペーサー;Y:抗原認識部分であり、n、m、oは、1~100の整数であるが、ただし、第1のスペーサーP1および第2のスペーサーP2は、同じ酵素により分解できない)有するコンジュゲートである。
【0011】
一般式(I)は、P1がP2の1つ以上の(1~「o」個の)単位に結合することを要求している。明確にするために、一般式(I)は、以下において、Yn-P1-(P2-Xm)oと称することができる。
【0012】
このようなコンジュゲートの設計によって、以下のことが可能になる:
- それらの著しい自己消光を回避する蛍光体の高度の多量体化(1つのポリマー骨格を使用することによって達成するのは、困難であることが多い);
- バインダーと色素との間のスペーサーの二重消化による、バインダーからの色素の効率的な放出(1つの消化性スペーサーを使用する場合、困難であることが多い)。
【0013】
本発明の別の対象は、
a)一般式(I)Yn-P1(P2-Xm)o(式中、X:検出部分;P1:第1の酵素分解性スペーサー;P2:第2の酵素分解性スペーサー;およびY:抗原認識部分およびn、m、oは、1~100の整数である)を有する少なくとも1つのコンジュゲートを供給すること
b)生物標本の試料を少なくとも1つのコンジュゲートと接触させ、それによって抗原認識部分Yによって認識される標的部分を標識すること
c)コンジュゲートで標識された標的部分を検出部分Xで検出すること、および
d)第1のスペーサーP1を分解することができる第1の酵素および/または第2のスペーサー酵素P2を分解することができる第2の酵素を供給し、それによってコンジュゲートから検出部分Xを切断し、その際、第1の酵素は、第2のスペーサーP2を分解することができず、かつ第2の酵素は、第1のスペーサーP1を分解することができないこと
による、生物標本の試料中の標的部分を検出するための方法である。
【0014】
スペーサーP1とP2とのカップリングは、標準的なカップリング化学を用いて行われ得る。例えば、P2としてのオリゴヌクレオチドを、P1としてのデキストランにカップリングさせることは、チオール-マレイミド化学によって実現されることになる。同時に、抗原認識部分、例えば、抗体または抗体断片は、直交反応を用いてP1としてのデキストランに付着され得る。これらのコンジュゲートは、所望の修飾のためのテンプレートとして使用され得る。例えば、オリゴヌクレオチドのそれぞれの官能化は、検出部分Xとしての蛍光体による共有結合修飾を介して、または検出部分Xに連結された官能化された相補的オリゴヌクレオチドとのハイブリダイゼーションによって行われ得る。得られたコンジュゲートは、放出機構のための2つの部位、例えば、デキストランと、デキストラナーゼおよびDNアーゼそれぞれのためのオリゴヌクレオチドとを含み、標識された抗原からの染色の除去を確実に効率的に行う。
【0015】
本発明のコンジュゲートおよび方法を用いると、検出部分のより完全な「酵素的脱染」が達成され、したがって、残留染色、ひいては連続イメージングにおける残留バックグラウンドシグナルを低減することができる。
【0016】
詳細な説明
検出部分Xおよび抗原認識部分Yは、酵素分解性スペーサーP1およびP2に共有結合的または準共有結合的に結合され得る。「共有結合的または準共有結合的」という用語は、解離定数が10-9M以下である、XとP1の間;YとP2の間;P1とP2の間の結合を指す。
【0017】
「検出部分Xを切断する」という用語は、XとP2との間および/またはYとP1との間の結合が切断され、検出部分Xが、例えば洗浄によって標的から除去され得ることを意味する。
【0018】
図1は、抗原認識部分Y、酵素分解性スペーサーP1およびP2ならびに検出部分Xを有するコンジュゲートを用いた生物標本としての標的細胞の特異的標識による従来技術の方法を概略的に示す。
【0019】
本発明の方法は、標識および脱染の1つ以上のシーケンスにおいて実施され得る。各シーケンスの後、検出部分は、標的部分から放出(除去)される。特に、生物標本が、さらに処理されなければならない生細胞である場合、本発明の方法は、非標識細胞を提供するという利点を有する。
【0020】
標識および脱染の各工程の後、洗浄工程を実施して、非結合コンジュゲートまたは放出された検出部分のような不要な材料を試料から除去することができる。
【0021】
標的部分
本発明の方法で検出される標的部分は、組織スライス、細胞凝集体、懸濁細胞、または付着性細胞のような任意の生物標本上にあり得る。細胞は生きていることも死んでいることもある。好ましい標的部分は、無脊椎動物(例えば、カエノラブディティス・エレガンス(Caenorhabditis elegans)、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster))、脊椎動物(例えば、ゼブラ・ダニオ(Danio rerio)、アフリカツメガエル(Xenopus laevis))および哺乳動物(例えば、ハツカネズミ(Mus musculus)、ホモ・サピエンス(Homo sapiens))の全動物、器官、組織切片、細胞凝集体または単一細胞のような生物標本上に細胞内または細胞外で発現された抗原である。
【0022】
検出部分
コンジュゲートの検出部分Xは、発色団部分、蛍光部分、燐光部分、発光部分、光吸収部分、放射性部分、および遷移金属同位体質量タグ部分からなる群から選択されるもののように、検出目的に使用され得る特性または機能を有する任意の部分であり得る。
【0023】
適切な蛍光部分は、蛍光技術、例えば、フローサイトメトリーまたは蛍光顕微鏡法の分野から公知のものである。本発明のこれらの実施形態では、コンジュゲートで標識される標的部分は、検出部分Xを励起し、得られる発光(光ルミネセンス)を検出することによって検出される。この実施形態では、検出部分Xは、好ましい蛍光部分である。
【0024】
有用な蛍光部分は、フィコビリタンパク質などのタンパク質ベース、ポリフルオレンなどのポリマー、フルオレセインのようなキサンテンなどの小有機分子色素、またはローダミン、シアニン、オキサジン、クマリン、アクリジン、オキサジアゾール、ピレン、ピロメテン、またはRu、Eu、Pt複合体などの金属有機複合体であり得る。単一分子実体の他に、蛍光タンパク質または小有機分子色素のクラスター、ならびに量子ドット、アップコンバージョン性ナノ粒子、金ナノ粒子、染色されたポリマーナノ粒子などのナノ粒子も蛍光部分として使用され得る。
【0025】
光ルミネセンス検出部分の別のグループは、励起後の時間遅延発光を有する燐光部分である。燐光部分には、Pd、Pt、Tb、Eu複合体などの金属有機複合体、またはランタニドドープSrAl2O4などの燐光顔料を組み込んだナノ粒子が含まれる。
【0026】
本発明の別の実施形態では、コンジュゲートで標識された標的は、照射により予め励起しないで検出される。この実施形態では、検出部分は、放射性標識であり得る。それらは、非放射性同位体をそれらの放射性対応物、例えばトリチウム、32P、35Sまたは14Cと交換するか、またはフルオロデオキシグルコース内のチロシン、18Fに結合している125Iなどの共有結合標識、または金属-有機複合体、すなわち99Tc-DTPAを導入することによる放射性同位体標識の形であり得る。
【0027】
別の実施形態では、検出部分は、ルミノールの存在下で化学ルミネセンス、すなわちワサビペルオキシダーゼ標識を引き起こすことができる。
【0028】
本発明の別の実施形態では、コンジュゲートで標識された標的は、放射線の放出によって検出されず、UV、可視光、またはNIR放射の吸収によって検出される。適切な光吸収検出部分は、N-アリールローダミン、アゾ色素、およびスチルベンのような小有機分子消光色素などの蛍光発光のない光吸収色素である。
【0029】
別の実施形態では、光吸収検出部分Xは、パルスレーザ光によって照射され、光音響シグナルを生成することができる。
【0030】
本発明の別の実施形態では、コンジュゲートで標識された標的は、遷移金属同位体の質量分析検出によって検出される。遷移金属同位体質量タグ標識は、共有結合した金属有機複合体またはナノ粒子成分として導入され得る。当該技術分野ではランタニドの同位体タグおよび隣接する後期遷移元素が知られている。
【0031】
検出部分Xは、スペーサーP2に共有結合的にまたは非共有結合的に結合され得る。共有結合的または非共有結合的な結合のための方法は、当業者により知られている。検出部分XとスペーサーP2との間で共有結合している場合、検出部分またはスペーサーP2上のいずれかの活性化された基と、スペーサーP2または検出部分X上のいずれかの官能基との直接反応、または最初に一方と反応し、次に他方の結合パートナーと反応するヘテロ二官能性リンカー分子を介した直接反応が可能である。
【0032】
例えば、多数のヘテロ二官能性化合物が、実体への連結に利用可能である。例示的な実体としては、アジドベンゾイルヒドラジド、N-[4-(p-アジドサリチルアミノ)ブチル]-3’-[2’-ピリジルジチオ]プロピオンアミド)、ビス-スルホスクシンイミジルスベレート、ジメチルアジピミデート、ジスクシンイミジルタルトラート、N-y-マレイミドブチリルオキシスクシンイミドエステル、N-ヒドロキシスルホスクシンイミジル-4-アジドベンゾエート、N-スクシンイミジル[4-アジドフェニル]-1,3’-ジチオプロピオネート、N-スクシンイミジル[4-ヨードアセチル]アミノベンゾエート、グルタルアルデヒド、スクシンイミジル-[(N-マレイミドプロピオンアミド)ポリエチレングリコール]エステル(NHS-PEG-MAL)およびスクシンイミジル4-[N-マレイミドメチル]シクロヘキサン-1-カルボキシレートが挙げられる。好ましい連結基は、検出部分に反応性スルフヒドリル基を、スペーサーに反応性アミノ基を有する、3-(2-ピリジルジチオ)プロピオン酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(SPDP)、または4-(N-マレイミドメチル)-シクロヘキサン-1-カルボン酸N-ヒドロキシスクシンイミドエステル(SMCC)である。
【0033】
検出部分Xのスペーサーへの準共有結合は、解離定数が10-9M以下、例えばビオチン-アビジン結合相互作用をもたらす結合系を用いて達成され得る。
【0034】
酵素分解性スペーサーP1およびP2
酵素分解性スペーサーは、特定の酵素、特にヒドロラーゼによって切断され得る任意の分子であり得る。酵素分解性スペーサーP1およびP2として適しているのは、例えば、多糖類、タンパク質、ペプチド、デプシペプチド、ポリエステル、核酸、およびそれらの誘導体である。
【0035】
適切な多糖類は、例えば、デキストラン、プルラン、イヌリン、アミロース、セルロース、ヘミセルロース、例えばキシランまたはグルコマンナン、ペクチン、キトサン、またはキチンであり、これらは、検出部分Xおよび抗原認識部分Yの共有結合または非共有結合のための官能基を与えるために誘導体化され得る。このような種々の修飾は、当該技術分野で公知であり、例えば、イミダゾリルカルバメート基は、多糖類をN,N’-カルボニルジイミダゾールと反応させることによって導入され得る。続いて、上記イミダゾリルカルバメート基をヘキサンジアミンと反応させることにより、アミノ基が導入され得る。また、多糖類は、過ヨウ素酸塩を用いて酸化されてアルデヒド基を与えるか、またはN,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミドおよびジメチルスルホキシドを用いて酸化されてケトン基を与えることができる。アルデヒドまたはケトン官能基は、続いて、好ましくは還元アミノ化条件下で、アミノ基を与えるためにジアミンと反応するか、またはタンパク質結合部分上のアミノ置換基と直接反応し得る。カルボキシメチル基は、多糖類をクロロ酢酸で処理することによって導入され得る。N-ヒドロキシスクシンイミドエステルまたはテトラフルオロフェニルエステルなどの活性化エステルを生成する当該技術分野で公知の方法でカルボキシ基を活性化すると、アミノ基を与えるためにジアミンのいずれかのアミノ基と反応するか、タンパク質結合部分のアミノ基と直接反応することが可能になる。概して、アルカリ条件下で多糖類をハロゲン化合物で処理することにより、アルキル基を有する官能基を導入することが可能である。例えば、アリル基は、臭化アリルを用いて導入することができる。アリル基はさらに、アミノ基を導入するためにシステアミンなどのチオール含有化合物とのチオール-エン反応において使用され得るか、ジスルフィド結合の還元によって遊離されるか、または例えば2-イミノチオランによるチオール化によって導入されるチオール基を有するタンパク質結合部分との直接反応において使用され得る。
【0036】
酵素分解性スペーサーとして使用されるタンパク質、ペプチド、およびデプシペプチドは、検出部分Xと抗原認識部分Yとを付着させるためにアミノ酸の側鎖官能基を介して官能化され得る。修飾に適した側鎖官能基は、例えば、リジンによって供給されるアミノ基またはジスルフィド橋の還元後にシステインによって供給されるチオール基である。
【0037】
酵素分解性スペーサーとして使用されるポリエステルおよびポリエステルアミドは、側鎖官能基を与えるコモノマーを用いて合成され得るか、またはその後に官能化され得る。分岐状ポリエステルの場合、官能化は、カルボキシルまたはヒドロキシル末端基を介して行われ得る。ポリマー鎖の重合後の官能化は、例えば、不飽和結合への付加、すなわちチオレン反応またはアジド-アルキン反応を介して、またはラジカル反応による官能基の導入を介して行われ得る。
【0038】
酵素分解性スペーサーとして使用される核酸は、好ましくは、検出部分Xおよび抗原認識部分Yの結合に適した3’および5’末端の官能基を用いて合成される。例えばアミノまたはチオール官能性を与える核酸合成のための適切なホスホルアミダイト構造ブロックは、当該技術分野において公知である。
【0039】
酵素分解性スペーサーは、同一または異なる酵素によって分解可能な複数の異なる酵素分解性単位で構成され得る。
【0040】
抗原認識部分Y
「抗原認識部分Y」という用語は、細胞上で細胞内または細胞外に発現する抗原のように、生物標本上に発現する標的部分に対して向けられる、あらゆる種類の抗体、ナノボディ、断片化抗体または断片化抗体誘導体を指す。この用語は、完全に無傷の抗体、断片化抗体または断片化抗体誘導体、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、sdAb、scFv、di-scFv、ナノボディに関する。このような断片化された抗体誘導体は、これらの種類の分子を含有する共有結合および非共有結合コンジュゲートを含む組換え手順によって合成され得る。抗原認識部分のさらなる例は、TCR分子を標的とするペプチド/MHC複合体、細胞接着受容体分子、共刺激分子に対する受容体、人工的に操作された結合分子、例えば、細胞表面分子を標的とするペプチドまたはアプタマーである。
【0041】
本発明の方法で使用されるコンジュゲートは、100までの、好ましくは1~10の抗原認識部分Yを含み得る。抗原認識部分と標的抗原との相互作用は、高親和性または低親和性であり得る。単一の低親和性抗原認識部分の結合相互作用は、抗原との安定な結合を与えるには低すぎる。低親和性抗原認識部分は、酵素分解性スペーサーへの結合により多量体化され、高い結合活性を与えることができる。スペーサーが工程d)で酵素的に切断されると、低親和性抗原認識部分は単量体化され、その結果、検出部分X、スペーサーおよび抗原認識部分Yが完全に除去される。高親和性抗原認識部分は、安定な結合を与え、その結果、工程d)の間に、検出部分Xおよびスペーサーは除去される。
【0042】
好ましくは、「抗原認識部分Y」という用語は、IL2、FoxP3、CD154のような細胞内で、またはCD3、CD4、CD8、CD14、CD25、CD34、CD56、CD133、およびEGFRのような細胞表面で、生物標本(標的細胞)によって発現される抗原に対して向けられる、任意の抗体を指す。
【0043】
抗原認識部分Y、特に抗体は、側鎖アミノ基またはスルフヒドリル基を介してスペーサーPに結合され得る。場合により、抗体のグリコシド側鎖は、過ヨウ素酸塩によって酸化され、アルデヒド官能基が生じ得る。
【0044】
抗原認識部分Yは、スペーサーPに共有結合的または非共有結合的に連結され得る。共有結合性または非共有結合性結合のための方法は、当業者によって知られており、検出部分Xの結合について記載されているものと同じである。
【0045】
本発明の方法は、複雑な混合物から特定の細胞型を検出および/または単離するために特に有用であり、染色および脱染の2つ以上の連続または並列シーケンスを含み得る。この方法は、コンジュゲートの種々の組み合わせを使用することができる。例えば、コンジュゲートは、2つの異なる抗CD34抗体のような、2つの異なるエピトープに特異的な抗体を含み得る。異なる抗原は、異なる抗体、例えば、2つの異なるT細胞集団間の分化のための抗CD4および抗CD8、または調節性T細胞のような異なる細胞亜集団の決定のための抗CD4および抗CD25を含む異なるコンジュゲートでアドレスされ得る。
【0046】
酵素
放出剤としての酵素の選択は、酵素分解性スペーサーP1およびP2の化学的性質によって決定され、1つの酵素または異なる酵素の混合物であり得る。酵素は、好ましくはヒドロラーゼであるが、リアーゼまたはレダクターゼもまた可能である。例えば、スペーサーP1またはP2が多糖類である場合、放出剤としてはグリコシダーゼ(EC3.2.1)が最も適している。特定のグリコシド構造を認識するグリコシダーゼ、例えばデキストランの(1->6)結合で切断するデキストラナーゼ(EC3.2.1.11)、プルランの(1->6)結合(EC3.2.1.142)または(1->6)および(1->4)結合(EC3.2.1.41)のいずれかを切断するプルラナーゼ、プルランの(1->4)結合を切断するネオプルラナーゼ(EC3.2.1.135)およびイソプルラナーゼ(EC3.2.1.57)が好ましい。アミロースの(1->4)結合を切断するアミラーゼ(EC3.2.1.1)およびマルトース産生アミラーゼ(EC3.2.1.133)、イヌリンのβ(2->1)フルクトシド結合を切断するイヌリナーゼ(EC3.2.1.7)、セルロースの(1->4)結合で切断するセルラーゼ(EC3.2.1.4)、キシランの(1->4)結合を切断するキシラナーゼ(EC3.2.1.8)、ペクチナーゼ、例えば(1->4)D-ガラクツロナンメチルエステル結合を脱離的に切断する、エンド-ペクチンリアーゼ(EC4.2.2.10)、またはペクチンの(1->4)D-ガラクトシデュロン結合で切断するポリガラクツロナーゼ(EC3.2.1.15)、キトサンの(1->4)結合で切断するキトサナーゼ(EC3.2.1.132)およびキチンを切断するためのエンド-キチナーゼ(EC3.2.1.14)。
【0047】
タンパク質およびペプチドは、細胞上の標的構造の分解を避けるためにシーケンス特異的である必要があるプロテイナーゼによって切断され得る。シーケンス特異的プロテアーゼは、例えば、シーケンスENLYFQ\Sで切断するシステインプロテアーゼであるTEVプロテアーゼ(EC3.4.22.44)、シーケンスDDDDKの後で切断するセリンプロテアーゼであるエンテロペプチダーゼ(EC3.4.21.9)、シーケンスIEGRまたはIDGRの後で切断するセリンエンドペプチダーゼである第Xa因子(EC3.4.21.6)、またはシーケンスLEVLFQ\GPで切断するシステインプロテアーゼであるHRV3Cプロテアーゼ(EC3.4.22.28)である。
【0048】
ペプチド骨格にエステル結合を含有するペプチドであるデプシペプチド、またはポリエステルは、ブタ肝臓エステラーゼ(EC3.1.1.1)またはブタ膵臓リパーゼ(EC3.1.1.3)などのエステラーゼによって切断され得る。核酸は、EcoRI、HindIIまたはBamHIなどの制限酵素(EC3.1.21.3、EC3.1.21.4、EC3.1.21.5)などのシーケンス特異的であり得るエンドヌクレアーゼ、またはピリミジンに隣接するホスホジエステル結合を切断するDNアーゼI(EC3.1.21.1)などのより一般的であり得るエンドヌクレアーゼによって切断され得る。
【0049】
添加される酵素の量は、所望の時間内にスペーサーを実質的に分解するのに十分である必要がある。通常、検出シグナルは、少なくとも約80%、より一般的には少なくとも約95%、好ましくは少なくとも約99%低減される。放出のための条件は、温度、pH、金属補因子の存在、還元剤等に関して経験的に最適化され得る。分解は、通常、少なくとも約15分、より一般的には少なくとも約10分で完了し、通常、約30分より長くならない。
【0050】
細胞検出方法
本発明のコンジュゲートで標識された標的を検出するための方法および装置は、検出部分Xによって決定される。
【0051】
本発明の1つのバリアントでは、検出部分Xは、蛍光部分である。蛍光部分Xを励起し、得られた蛍光シグナルを分析することによって、蛍光色素コンジュゲートで標識された標的を検出する。励起の波長は、通常、蛍光部分Xの吸収極大に従って選択され、当該技術分野で公知のレーザーまたはLED光源によって供給される。複数の異なる検出部分Xが多色/パラメータ検出のために使用される場合、吸収スペクトルが重複していない蛍光部分、少なくとも吸収極大が重複していない蛍光部分を選択するように注意すべきである。検出部分としての蛍光部分の場合、標的は、例えば、蛍光顕微鏡下で、フローサイトメーター、分光蛍光計、または蛍光スキャナー内で検出され得る。化学ルミネセンスによって放出された光は、励起を省略した同様の装置によって検出され得る。
【0052】
本発明の別のバリアントでは、検出部分は、光吸収部分であり、照射光強度と透過または反射光強度との差によって検出される。光吸収部分は、超音波シグナルのような音響を発生させるためにパルスレーザビームの吸収を使用する光音響イメージングによっても検出され得る。
【0053】
放射性検出部分は、放射性同位元素によって放射された放射線によって検出される。放射性放射線の検出のための適切な装置には、例えば、シンチレーションカウンタが含まれる。また、ベータ線発光の場合、電子顕微鏡が検出に使用され得る。
【0054】
遷移金属同位体質量タグ部分は、ICP-MSなどの質量分析方法によって検出され、これは、マスサイトメトリー装置に組み込まれる。
【0055】
方法の使用
本発明の方法は、研究、診断および細胞療法における様々な用途に使用され得る。
【0056】
本発明の第1のバリアントでは、細胞のような生物標本は、計数目的のために、すなわち、コンジュゲートの抗原認識部分によって認識される特定の抗原セットを有する試料からの細胞の量を確定するために検出される。
【0057】
第2のバリアントでは、生物標本の1つ以上の集団が、試料から検出され、標的細胞として分離される。このバリアントは、例えば、臨床研究、診断および免疫療法において、標的細胞の精製のために使用され得る。このバリアントでは、染色および脱染工程のいずれかの後、任意に洗浄工程の後に、1つ以上の仕分け工程が実施され得る。
【0058】
このような分離に適しているのは、特にフローソータ、例えばFACSまたはMEMSベースのセルソータシステム、例えば欧州特許第14187215.0号明細書または欧州特許第14187214.3号明細書に開示されているようなシステムである。
【0059】
本発明の別のバリアントでは、コンジュゲートの抗原認識部分によって認識される生物標本上の抗原のような標的部分の位置が決定される。このような技術は、「マルチエピトープリガンド地図作成」、「チップベースのサイトメトリー」または「Multioymx」として知られており、例えば、欧州特許第0810428号明細書、欧州特許第1181525号明細書、欧州特許第1136822号明細書または欧州特許第1224472号明細書に記載されている。この技術では、細胞を固定化し、蛍光部分に結合した抗体と接触させる。抗体は、生物標本上(例えば、細胞表面上)のそれぞれの抗原によって認識され、非結合マーカーを除去し、蛍光部分を励起した後、抗原の位置が、蛍光部分の蛍光発光によって検出される。特定のバリアントでは、蛍光部分に結合した抗体の代わりに、MALDI-イメージングまたはCyTOFについて検出可能な部分に結合した抗体が、使用され得る。当業者は、蛍光部分に基づく技術を改変して、これらの検出部分を用いる方法を知っている。
【0060】
標的部分の位置は、蛍光放射の波長に対して十分な解像度および感度を有するデジタルイメージングデバイスによって達成される。デジタルイメージングデバイスは、例えば蛍光顕微鏡を用いた光学拡大の有無にかかわらず使用され得る。生成された画像は、ハードドライブ、例えば、RAW、TIF、JPEG、またはHDF5形式のような適切な保存デバイスに保存される。
【0061】
異なる抗原を検出するために、同じまたは異なる蛍光部分または抗原認識部分Yを有する異なる抗体コンジュゲートが供給され得る。異なる波長を有する蛍光発光の並列検出には限界があるため、抗体-蛍光色素コンジュゲートは、連続的に個別に、または小グループ(2~10)で順次に利用される。
【0062】
本発明による方法のさらに別のバリアントでは、試料の生物標本-特に懸濁細胞-は、微小空洞内にトラップすることによって、または付着によって固定化される。
【0063】
さらに、本発明のコンジュゲートに続いて、一般式(II)Xn-P’-Ym(式中、X、Y、n、mは、式(I)と同じ意味し、ここで、XおよびYは、P’に共有結合的または非共有結合的に結合しているが、P’はPEGスペーサーのように酵素的に分解されないスペーサーであり得る)を有する追加のコンジュゲートを提供することが可能である。別のバリアントでは、一般式(III)Xn-Ym(式中、X、Y、n、mは、式(I)におけるのと同じ意味を有する)を有する少なくとも1つの非酵素分解性コンジュゲートが供給され得る。一般式(II)および(III)を有する非酵素分解性コンジュゲートは、切断工程を経て存在し続け、さらなる検出のために使用され得る。非酵素分解性コンジュゲートは、蛍光部分の酸化的または放射線による破壊によって消光し得る。
【0064】
概して、本発明の方法は、いくつかのバリアントにおいて実施され得る。例えば、標的部分によって認識されないコンジュゲートは、コンジュゲートで標識された標的部分が検出される前に、例えば緩衝液で洗浄することによって除去され得る。
【0065】
本発明のバリアントでは、少なくとも2つのコンジュゲートが、同時にまたはその後の染色シーケンスにおいて供給され、その際、各抗原認識部分Yは、異なる抗原を認識する。ここで、標識された標的部分は、同時にまたは連続的に検出され得る。順次的検出は、スペーサー分子P1/P2の同時酵素的分解、またはその後のスペーサー分子P1/P2の酵素的分解を含み、任意選択的に非結合部分の中間除去(洗浄)が行われる。
【0066】
本発明の別のバリアントは、酵素分解および酸化的漂白の組み合わせによる蛍光発光の除去を含む。漂白に必要な化学物質は、「マルチエピトープリガンド地図作成」、「チップベースサイトメトリー」または「Multioymx」技術に関する上記の刊行物から知られている。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【
図1】検出部分放出の1つの部位を有するコンジュゲートによる染色および脱染、ならびにこのアプローチの限界を示す図である。
【
図2】2つの方法で異なる酵素によって分解され得る、特許請求の範囲による例示的コンジュゲートを示す図である。第1の酵素は、スペーサーP1を切断し、もう一方の酵素は、スペーサーP2を切断する。
【
図3】二重放出可能なコンジュゲートを用いたSUP-T1細胞染色のフローサイトメトリードットプロットを示す図である。それらは、通常の細胞染色装置で使用されるそれらの対応物と比較してより明るい染色(MFIで測定)を示す。
【
図4】二重放出可能なコンジュゲートで染色したSUP-T1細胞の共焦点レーザー走査顕微鏡画像を示す図である。それらは、通常の細胞染色コンジュゲートと比較してより明るい染色を示すことが示されている。
【
図5】二重放出可能なコンジュゲートを用いたSUP-T1細胞染色のフローサイトメトリードットプロットを示す図である。P1とP2との同時切断が、それ自身の各々の切断より効率的であることが示されている。また、切断は直交的に行うことができることも示されている。
【0068】
実施例
コンジュゲートの調製:
工程A:反応性オリゴヌクレオチド(オリゴ-スルフヒドリル)の調製
C6-S-S-オリゴヌクレオチドを、2μMの濃度で水に溶解し、100倍モル過剰の100mg/mLの水中のトリス-(2-カルボキシエチル)-ホスフィン(TCEP)溶液を用いて室温(RT)で2時間還元した。その後、これを残留TCEPおよびC6-S保護基からサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により正常条件下で精製した。
【0069】
工程B:反応性アミノデキストラン(Dex-マレイミド)の調製
20mg/mLの濃度を有するpH7.4のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中のアミノデキストランの溶液を、ジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解した50倍モル過剰のスクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)を用いてインキュベートし、RTで1時間インキュベートした。その後、これを、通常の条件下でSECを介して残留リンカーから精製した。得られた化合物は、コンジュゲーションに利用可能な28.7のマレイミドを有していた。
【0070】
工程C:オリゴヌクレオチド-デキストラン(Dex-オリゴ)の調製
工程Bで得られたDex-マレイミド(4.5mg/mL)を、工程Aで得られたオリゴ-スルフヒドリル(PBS中2.4mg/mL)を用いて40倍モル過剰でRTにて1時間インキュベートし、通常の条件下でSECを介して非抱合化合物から精製した。
【0071】
工程C:反応性抗体(Ab-DBCO)の調製
PBS中の抗体の溶液(5.2mg/mL)を、DMSO中のジベンゾシクロオクチン-N-ヒドロキシスクシンイミジルエステル(NHS-DBCO、20mg/mL)の溶液を用いて5倍モル過剰でRTにて1時間処理した。その後、これを、通常の条件下でSECを介して残留リンカーから精製した。
【0072】
工程D:反応性オリゴヌクレオチド-デキストラン(N3-Dex-オリゴ)の調製
工程Cで得られたDex-オリゴ(1mg/mL)を、DMSO中のNHSアジド酢酸(2mg/mL)の溶液を用いて200倍モル過剰でPBS中でRTにて1時間インキュベートした。その後、これを、通常の条件下でSECを介して残留リンカーから精製した。
【0073】
工程E:抗体-デキストラン-オリゴコンジュゲート(Ab-Dex-オリゴ)の調製
工程Dで得られたN3-Dex-オリゴ(0.3mg/mL)を、工程Cで得られたAb-DBCO(PBS中10.3mg/mL)を用いて50倍モル過剰でRTにて2時間インキュベートし、通常の条件下でSECを介して非抱合化合物から精製した。得られた化合物は、デキストラン当たり1.6の抗体および21.4のオリゴヌクレオチドで構成されていた。
【0074】
工程F:ビオチン官能化抗体-デキストラン-オリゴコンジュゲート(Ab-Dex-dsオリゴ-バイオ)の調製
相補的ビオチン化オリゴヌクレオチド(水中84μM)を、PBS中で43倍過剰でAb-Dex-オリゴ(250nM)に添加し、60℃で10分間インキュベートし、そして一定の振盪下で1時間以内にRTに冷却した。粗生成物は、さらなる精製を行うことなく、次の工程で使用した。
【0075】
工程G:染色試薬(Ab-Dex-dsオリゴ-バイオ-aビオチン-色素)の調製
粗Ab-Dex-dsオリゴ-バイオを、PBS中のビオチン抗体色素コンジュゲートを用いて、4倍モル過剰で30分間インキュベートしてから、暗所で細胞を染色した。
【0076】
工程H:細胞染色
PBS/EDTA/BSA-緩衝液中のPBMCsを、工程Gで得られた染色試薬を用いて4℃で10分間染色した。細胞を冷PBS/EDTA-BSA-緩衝液で洗浄し、フローサイトメトリーによって分析した。デキストランを介した蛍光標識の可逆性のために、細胞を、デキストラナーゼを用いてRTで10分間インキュベートし、PBS/EDTA-BSA-緩衝液で洗浄し、フローサイトメトリーによって分析した。DNAによる蛍光標識の可逆性のために、細胞を、DNアーゼIを用いて、150mMのNaCl、5mMのKCl、1mMのMgCl2、1.8mMのCaCl2を含むpH7.4の10mMのHepes緩衝液中で、RTにて5分間インキュベートし、続いてPBS/EDTA-BSA-緩衝液で洗浄し、フローサイトメトリーで分析した。DNAおよびデキストランによる蛍光標識の可逆性のために、細胞を、DNアーゼIおよびデキストラナーゼを用いて、150mMのNaCl、5mMのKCl、1mMのMgCl2、1.8mMのCaCl2を含むpH7.4の10mMのHepes緩衝液中でRTにて5分間インキュベートし、続いてPBS/EDTA-BSA-緩衝液で洗浄し、フローサイトメトリーで分析した。
【外国語明細書】