(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023070138
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】繊維機械の切断装置用の電磁式の駆動装置、切断装置および糸クリヤラ
(51)【国際特許分類】
B65H 54/71 20060101AFI20230511BHJP
【FI】
B65H54/71 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022176094
(22)【出願日】2022-11-02
(31)【優先権主張番号】21206580
(32)【優先日】2021-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】521553287
【氏名又は名称】ザウラー インテリジェント テクノロジー エイ・ジー
【氏名又は名称原語表記】Saurer Intelligent Technology AG
【住所又は居所原語表記】Textilstrasse 9, 9320 Arbon, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】シャルル レオポルト エリザベト ドゥムリン
【テーマコード(参考)】
3F057
【Fターム(参考)】
3F057AA02
3F057AB01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】糸を切り離すための、繊維機械の切断装置用の電磁式の駆動装置であって、切断ナイフを備えた切断装置の特に効果的で、迅速で、かつ/または正確な運転を、高い切断力と共に可能にし、さらに好ましくは中断のないメンテナンスフリーの特に長い運転時間を可能にする。
【解決手段】ピストン3は部分的に、ソレノイド2によって取り囲まれたコア管9内でガイドされており、コア管は、ピストンに対して相対的に不動に配置された部材によって形成されており、軸線方向の空隙は、ピストンの端面と、コア管の、対応面によって形成された端面との間で延在しており、かつ/またはピストンは、少なくとも部分的に中空に形成され、かつ/またはピストンは、休止位置から移動させられたピストンを戻すための戻し要素に作用結合されていて、戻し要素は、累進的な、特に非線形のばね特性線を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ソレノイド(2)によって糸を切り離すための、繊維機械の切断装置用の電磁式の駆動装置(1)であって、
- 切断ナイフ支持体(13)を駆動するための、前記ソレノイド(2)内で線形移動可能にガイドされたピストン(3)であって、休止位置と作業位置との間で線形移動可能なピストン(3)と、
- 前記ピストン(3)を駆動する磁界を発生させるためのコイルと、
- 前記ピストン(3)の端面(7)と、前記ソレノイド(2)のうち前記ピストン(3)に対して相対的に不動に配置された部材の対応面と、の間のピストン移動に関連して可変の軸線方向の空隙(6)と
を備える、駆動装置(1)において、
- 前記ピストン(3)は、特に支持要素(11)によって、前記ソレノイド(2)によって取り囲まれたコア管(9)内で部分的にガイドされており、前記コア管(9)は、前記ピストン(3)に対して相対的に不動に配置された前記部材によって形成されており、前記軸線方向の空隙(6)は、前記ピストン(3)の、特に円錐状に形成された前記端面(7)と、前記コア管(9)の、前記対応面によって形成されていて、特に前記ピストン(3)の円錐状の前記端面(7)に対応するように形成された端面(8)との間で延在しており、かつ/または
- 前記ピストン(3)は、少なくとも部分的に中空に形成されており、かつ/または
- 前記ピストン(3)は、前記休止位置から移動させられた前記ピストン(3)を戻すための戻し要素(12)に作用結合されており、前記戻し要素(12)は、累進的な、特に非線形のばね特性線を有し、かつ/または
- 前記ピストン(3)は、前記ピストン(3)に対して相対的に不動に配置されたソレノイドコア(5)によって取り囲まれており、前記ソレノイドコア(5)は、粉末射出成形によって製造されていて、かつ/またはソフトフェライトから形成されているか、または電気金属薄板の複数の層、特にモータ金属薄板から形成されている
ことを特徴とする、電磁式の駆動装置(1)。
【請求項2】
前記ピストン(3)は、第1のピストンセグメント(3A)と第2のピストンセグメント(3B)とを有し、前記第1のピストンセグメント(3A)は、前記コア管(9)外に配置されており、前記第2のピストンセグメント(3B)は、前記第1のピストンセグメント(3A)に固定されていて、自由端部でもって前記ソレノイド(2)を越えて突出していて、特に前記第1のピストンセグメント(3A)から離れる方向で前記コア管(9)を貫いて延在しており、前記第2のピストンセグメント(3B)の前記自由端部は、前記切断ナイフ支持体(13)を支持するために形成されていることを特徴とする、請求項1記載の電磁式の駆動装置(1)。
【請求項3】
前記第1のピストンセグメント(3A)は、前記ソレノイド(2)の、前記第1のピストンセグメント(3A)に向かい合って位置している露出した面の単純な軸線方向長さに等しいまたは該軸線方向長さよりも大きい軸線方向長さを有し、前記ソレノイド(2)の前記露出した面の軸線方向長さは、前記ピストン(3)の前記休止位置における前記軸線方向の空隙(6)の軸線方向長さよりも大きいことを特徴とする、請求項2記載の電磁式の駆動装置(1)。
【請求項4】
前記第1のピストンセグメント(3A)および/または前記コア管(9)は、高温圧延された炭素鋼から形成されていて、かつ/または1%未満の、特に0.5%未満の、または0.1%~0.2%の範囲の炭素割合を有することを特徴とする、請求項2または3記載の電磁式の駆動装置(1)。
【請求項5】
前記第2のピストンセグメント(3B)は、非磁性の金属および/または磁化不能な金属から、特にアルミニウムまたは特殊鋼から形成されていることを特徴とする、請求項2から4までのいずれか1項記載の電磁式の駆動装置(1)。
【請求項6】
前記ピストン(3)の軸線方向の運動軸線に対する、前記ピストン(3)の前記円錐状の端面(7)の角度、および/または前記コア管(9)の対応する前記端面(8)の角度が、15°~40°であることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の電磁式の駆動装置(1)。
【請求項7】
前記ピストン(3)と、前記コア管(9)を取り囲むソレノイドコア(5)との間で延在している第2の直交する空隙(10)を可能な限り小さく保つために、前記ピストン(3)は、前記コア管(9)内で最小の直交する間隔を伴ってガイドされて配置されていることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の電磁式の駆動装置(1)。
【請求項8】
前記ピストン(3)を支持するための、前記コア管(9)内に配置されたただ1つの支持要素(11)を備え、前記支持要素(11)は、特にポリエーテルエーテルケトンから形成されていることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の電磁式の駆動装置(1)。
【請求項9】
前記ピストン(3)の質量重心は、休止位置と切断位置との間の前記ピストン(3)の移動中に、前記コア管(9)内に、特に前記コア管(9)内に配置された前記支持要素(11)内に留まっていることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の電磁式の駆動装置(1)。
【請求項10】
前記ソレノイド(2)の前記ソレノイドコア(5)と、前記ピストン(3)と、の間の直交する空隙(10)における磁気的に露出した面が、前記軸線方向の空隙(6)における磁気的に露出した面に等しいまたは該面よりも大きく、前記直交する空隙(10)の前記磁気的に露出した面は、好ましくは、前記軸線方向の空隙(6)における前記磁気的に露出した面よりも係数3~5だけ大きいことを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の電磁式の駆動装置(1)。
【請求項11】
前記ピストン(3)および/または前記コア管(9)は、1.9Tよりも高い磁気飽和度および/または1300A/m未満の保磁力を有する材料から形成されていることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の電磁式の駆動装置(1)。
【請求項12】
糸を切り離すための、繊維機械用の切断装置であって、
- 請求項1から11までのいずれか1項記載の電磁式の駆動装置(1)と、
- 前記電磁式の駆動装置(1)によって休止位置と切断位置との間で運動可能な、切断ナイフ(14)を備えた切断ナイフ支持体(13)と
を備える、切断装置。
【請求項13】
繊維機械の作業ユニット用の糸クリヤラであって、
- 請求項1から11までのいずれか1項記載の電磁式の駆動装置(1)と、
- 少なくとも糸の有無を検出しかつ/または糸欠陥を検出するための少なくとも1つのセンサ装置と
を備える、糸クリヤラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸を切り離すための、繊維機械の切断装置用の電磁式の駆動装置、このような電磁式の駆動装置を備える切断装置およびこのような切断装置を備える糸クリヤラに関する。
【0002】
繊維機械用の、電磁式の駆動装置を備えた切断装置と、繊維機械の作業ユニットのための相応の切断装置を備えた糸クリヤラとは、様々な構成のものが従来技術に基づいて公知であり、通常、例えば糸欠陥もしくは糸不良の認識時に糸を切断するために使用される。
【0003】
高い糸走行速度を有する繊維機械では、糸を極めて迅速に切り離すことが必要である。休止位置から切断位置にかつ再び休止位置に切断ナイフを移動させるための切断装置もしくは電磁式の駆動装置の典型的なサイクルは、好ましくは15ms未満で行われる。切断ナイフに要求される高い速度と切断工程の短い時間とに加えて、さらに、切断ナイフが糸を適正に切り離すのに十分に大きな切断力を有していて、切断工程を綺麗にかつ的確に行うことが必要である。
【0004】
例えばロータ紡績機、空気紡績機および巻取り機のような、巻取りパッケージを製造する繊維機械は、様々な太さおよび材料の多数の糸を巻き取ることができる。切断装置は、例えば直径0.05mmの細い糸材料や直径1mmの太い糸材料を綺麗に切り離すことができなくてはならない。処理可能な材料の多彩さは、天然繊維から人工繊維まで多種多様である。特に人工繊維は、極めて強靱で、ひいては切り離しにくいことがある。
【0005】
従来技術に基づく公知の切断装置は、特に人工繊維から成る糸用の中程度の切断出力の場合でも、部分的に400W~500Wを超える高い電気エネルギ消費を有している。このことは、特に、太い箇所を切断する必要がある場合に処理に問題を生じさせる。
【0006】
本発明の課題は、切断装置によって切断することができる、直径および材料の可能な範囲を持続的に拡大することである。好ましくは、このような切断装置では、製造コストのみならず、ランニングコストをも低減することによって得ることができる経済的な利益が考慮されるべきである。さらに、ランニングコストの更なる低減のために、切断装置の保守インターバルおよびサービスインターバルの延長を達成することが好ましい。さらに、ランニングコストを低減すると同時に切断出力を上昇させるために、電気エネルギから切断エネルギへのエネルギ変換の効率を高めることが好ましい。付加的には、取付け容積の幾何学的な条件を改良された形で満たすことができるようにするために、好ましくは、構成スペースを減じる切断装置を提供できることが求められる。これらの課題をまとめると、好ましくは、ランニングコストおよび製造コストならびに構成スペースを低減すると共に、持続的で優れた切断出力を提供できることが、本発明の更なる課題であると考えることができる。
【0007】
本発明の課題は、請求項1記載の、糸を切り離すための、繊維機械の切断装置用の電磁式の駆動装置、請求項12記載の、電磁式の駆動装置を備える切断装置、および請求項13記載の、切断装置を備える糸クリヤラによって解決される。本発明の有利な改良形態は、従属請求項に記載してある。
【0008】
糸を切り離すための、繊維機械の切断装置用の本発明に係る電磁式の駆動装置は、ソレノイドを有しており、ソレノイドは、切断ナイフ支持体を駆動するための、ソレノイド内で線形移動可能なピストンを備えており、ピストンは、休止位置と、休止位置とは異なる作業位置との間で線形移動可能である。ソレノイドは、さらに、ピストンを駆動する磁界を発生させるためのコイルを備えている。ピストンの端面と、ソレノイドのうちピストンに対して相対的に不動に配置された部材の対応面と、の間には、ピストン移動に関連して可変の軸線方向の空隙が存在している。言い換えると、ピストンの休止位置では、ピストンの端面は対応面に対して離間させられて配置されており、移動方向に沿って存在するこの軸線方向の間隔は、対応面の方向、つまり、軸線方向へのピストンの移動によって可変である。
【0009】
ソレノイド、ソレノイドの電磁石、および特にソレノイドのコイルには、基本的に任意の形式で電力を供給することができるが、充電されたコンデンサを用いた直接的な電力供給が好適である。コンデンサは、好ましくは電磁式の駆動装置を含む切断装置および/または切断装置の制御ユニットの領域に配置されている。
【0010】
本発明は、第1の態様によれば、ピストンが、ソレノイドによって取り囲まれたコア管内で部分的にガイドされており、コア管が、ピストンに対して相対的に不動に配置された部材によって形成されていることを特徴としている。軸線方向の空隙は、ピストンの端面と、コア管の、対応面によって形成された端面との間で延在している。少なくともピストンの端面またはコア管の端面は、円錐状に形成されている。さらに好ましくは、ピストンの端面とコア管の端面とは、互いに対応するように形成されている。特に好ましくは、ピストンの端面は円錐状に形成されていて、コア管の端面は、それに対応するように形成されている。対応する形成というのは、互いに対応する面の構成であって、互いに重ねた場合に合同である面の構成を意味している。言い換えると、好ましくは、一方の端面は他方の端面のネガを形成している。
【0011】
ピストンの端面と、対応面、特にコア管の端面との間には、結果として休止位置で中空室が形成されていて、この中空室は、休止位置から、特に切断位置であってよい作業位置へのピストンの移動と共に小さくなる。この中空室は軸線方向の空隙と呼ばれ、この空隙は、ピストンの軸線方向で延在していて、軸線方向におけるピストンの運動と共に相応に可変である。この空隙の大きさ、特に軸線方向で空隙を画定する面の大きさ、つまり端面および対応面の大きさは、電磁式の駆動装置の作用形式および効果にとって重要であることが判明している。ピストンへの力作用は、特にこの空隙にわたる磁束によって行われる。したがって、存在している幾何学形状で力作用を高めるためには、磁束密度を高め、発生する損失を最小にすることが必要であり、このことは、好ましくは円錐形の構成の過程で空隙を増大させることによって達成される。これによって、ピストンに対する、磁界によって発生させられる力を高めることができる。
【0012】
特に好ましくは、空隙の領域における部材の、空隙を軸線方向で画定する表面を増大させると同時に電磁式の駆動装置もしくは切断装置の良好な機能を保証するために、電磁式の駆動装置の好適な構成では、ピストンの運動軸線に対する、ピストンの円錐状の端面の角度および/または対応面の角度、特にコア管の対応する端面の角度は、0°よりも大きな角度~50°(50°を含む)、好ましくは10°~45°(45°を含む)、特に好ましくは15°~40°(40°を含む)、極めて特に好ましくは25°~35°(35°を含む)、特に好ましくは30°であることが特定されている。
【0013】
ピストンの端面の角度は、好ましくは、ピストンの中心長手方向軸線に対する、ピストンの材料内のかつ/または端面の表面の傾きもしくは角度に関連している。対応面の角度、特にコア管の端面の角度は、好ましくは、ピストンの中心長手方向軸線もしくはコア管の中心長手方向軸線に対する、空隙内のかつ/または対応面もしくは端面の表面の傾きもしくは角度に関連している。相応して、対応面の角度、特にコア管の材料における角度は、材料内におけるピストンの角度を差し引いて、好ましくは180°である。さらに好ましくは、ピストンの円錐状の部分は、端面全体にわたって等しいままの角度を有しているが、しかしながら、基本的には、端面に沿って変化する角度を有する構成、および/またはピストンおよび/または不動の部材の、複数の異なる区分に分けられた端面も考えられる。
【0014】
ピストンの端面と対応面とは、好ましくはピストンの端面とコア管の端面とは、好ましくは互いに対応するように形成されており、かつ/または角度付けられており、特に、軸線方向の空隙の閉鎖時に両端面が互いに完全に接触できるようになっている。さらに好ましくは、ピストンの該当する端面および/または対応面は、平滑にもしくは平坦に形成されている。
【0015】
基本的に、ピストンおよびコア管は任意の材料から形成されていてよい。ピストンの往復運動に基づいて、ピストンは、好ましくは高い透磁性、高い飽和磁化、さらに、低い保磁力を有する材料から形成されており、これによって、ヒステリシス損失および高められた復元力を回避することができる。電磁式の駆動装置の好適な構成では、ピストンおよび/またはコア管は、好ましくは1.9Tよりも高い、特に好ましくは2.0Tよりも高い磁気飽和度を有し、かつ/または好ましくは1300A/m未満の、特に好ましくは1200A/m未満の、極めて特に好ましくは800A/m未満の、特に好ましくは700A/m未満の低い保磁力を有する材料から形成されていることが特定されている。このように構成されていると、有利には、材料内で発生する消磁損失を可能な限り小さく保つことができる。さらに、低減された保磁力によって、出発位置を再形成するかもしくは休止位置をとるための十分に閉鎖された磁気回路の必要な戻し力を低減することができる。
【0016】
別の好適な実施形態によれば、ピストンは、第1のピストンセグメントと第2のピストンセグメントとを有しており、第1のピストンセグメントは、コア管外に配置されており、第2のピストンセグメントは、第1のピストンセグメントに固定されていて、自由端部でもってソレノイドを越えて突出していて、特に第1のピストンセグメントから離れる方向でコア管を貫いて延在しており、第2のピストンセグメントの自由端部は、切断ナイフ支持体を支持するために形成されている。
【0017】
好ましくは、第1のピストンセグメントは、金属から、高い飽和磁化のために好ましくは炭素鋼から、特に好ましくは高温圧延された炭素鋼から形成されており、かつ/または1%未満の、好ましくは0.5%未満の、特に好ましくは0.05%~0.3%(0.3%を含む)の範囲の、極めて特に好ましくは0.1%~0.2%(0.2%を含む)の範囲の炭素割合を有している。炭素割合が僅かになればなるほど、保磁力の低減をさらに大きくすることができ、最適な保磁力は、特に好ましい0.1%~最大0.2%の炭素割合で得られることが判明している。
【0018】
コア管自体は高い力にはさらされない。しかしながら、横断面の減少によって、ひいては、ソレノイドからコア管への磁束の圧縮によって、高い飽和磁化が必要になる。電磁式の駆動装置の消磁損失を可能な限り低減するために、特に好ましくは、第1のピストンセグメントとコア管とは共に同じ材料から形成されている。別の利点として、これによって両コンポーネントのコストを低減することができる。
【0019】
さらに好ましくは、第1のピストンセグメントの軸線方向長さは、この軸線方向長さが、ソレノイドの、第1のピストンセグメントに向かい合って位置している露出した面の単純な軸線方向長さに等しいまたはこの軸線方向長さよりも大きいように選択されており、ソレノイドの露出した面の軸線方向長さは、ピストンの休止位置における軸線方向の空隙の軸線方向長さよりも大きい。このように構成されていると、第1のピストンセグメントの僅かな質量と相俟って、第1のピストンセグメントに第2のピストンセグメントを固定するための十分な材料強度を提供することができる。さらに好ましくは、第1のピストンセグメントの軸線方向長さは、ソレノイドの、第1のピストンセグメントに向かい合って位置している露出した面の単純な軸線方向長さと、ピストンの休止位置における軸線方向の空隙の軸線方向長さとの和に等しいかまたはこの和よりも大きい。このように構成されていると、ソレノイドとピストンとの間の直交する空隙において作用する磁界密度を、ピストンの全運動行程にわたって一定に保つことができる。好ましくは、コスト上の理由から、第2のピストンセグメントの一方の端部は、第1のピストンセグメントの特に軸線方向の受容部内に、例えば特に軸線方向の圧入によって固定されている。第1のピストンセグメントと第2のピストンセグメントとが軸線方向で一緒に可動であり、さらに好ましくは、切断工程に基づく衝撃力に耐えるもしくはこの衝撃力に抵抗することができることが保証されている限り、代替的なまたは付加的な固定形態を選択することが可能である。
【0020】
好適な実施形態によれば、第2のピストンセグメントは、非磁性の金属および/または磁化不能な金属から、特にアルミニウムまたは特殊鋼から形成されている。これによって、磁気の短絡のおそれを効果的に阻止することができる。アルミニウムまたは特殊鋼から成る好適な構成は、ピストンの重量および安定性にさらに好適に相応の影響を及ぼす。
【0021】
上に記載した課題は、代替的にまたは付加的に、ピストンが、少なくとも部分的に中空に形成されていることによって解決される。ピストンの少なくとも部分的に中空の構成は、効果的な重量低減のみならず、渦電流の伝搬を含む消磁損失の低減をも可能にする。電磁式の駆動装置、特にピストンは、好ましくは上に記載した複数の好適な実施形態のうちの1つの実施形態に従って構成されていてよい。例えば特に第1のピストンセグメントおよび/または第2のピストンセグメントは、中空に形成されていてもよいし、中空異形材として形成されていてもよい。さらに好ましくは、ピストンもしくは第1のピストンセグメントは、切断ナイフ支持体とは反対の背側でくり抜かれていてよい。くり抜き部の寸法は、好ましくは、ピストンもしくは第1のピストンセグメントの、くり抜き部を取り囲む材料が、電磁式の駆動装置の最大に発生させられた切断力でも磁化飽和外にあるように、くり抜き部の直径が構成されているように選択されていてよい。
【0022】
さらに本発明の根底にある課題は、代替的にまたは付加的に、本発明によれば、ピストンが、休止位置から移動させられたピストンを戻すための戻し要素に作用結合されており、戻し要素が、累進的な、特に非線形のばね特性線を有していることによって解決される。電磁式の駆動装置は、好ましくは上に記載した好適な実施形態のうちの1つの実施形態に従って構成されていてよい。
【0023】
好ましくは、ピストンには、ピストンを休止位置の方向にかつ/またはコイルの磁界の作用方向とは逆方向に休止位置からピストンを加速させて戻すばね要素が係合している。このばね要素は、好ましくは累進的なばねであり、特に好ましくは、ばね力をばねの圧縮もしくは変形の増大と共に非線形に高める。さらに好ましくは、ばね要素は、コイルばねであり、かつ/またはピストン区分、特に第2のピストンセグメントの1つの区分を取り囲むように配置されている。さらに好ましくは、ばね要素はコア管内に少なくとも部分的に配置されていてよく、もしくはコア管内に少なくとも部分的に進入していてよい。代替的に、好適には、第2のコア管が設けられていてよく、この第2のコア管は、さらに好ましくはソレノイド内にまたはソレノイドのソレノイドコア内に、コア管を貫いているピストン区分をガイドするために配置されている。別の好適な実施形態では、ソレノイド、特にソレノイドコア、コア管または第2のコア管は、ばねのためのストッパを有しているかまたは形成していてよく、このように構成されていると、圧縮作用を可能にすることができる。ばねストッパは、コア内もしくは第2のコア管内に設けられていてもよいし、コア管外もしくは第2のコア管外に設けられていてもよい。
【0024】
さらに本発明の根底にある課題は、代替的にまたは付加的に、ピストンは、ピストンに対して相対的に不動に配置されたソレノイドコアによって取り囲まれており、ソレノイドコアは、粉末射出成形によって製造されていて、かつ/またはソフトフェライトから形成されているか、または電気金属薄板の複数の層、特にモータ金属薄板から形成されていることによって解決される。電磁式の駆動装置は、好ましくは、上に記載した好適な実施形態のうちの1つの実施形態に従って構成されていてよい。
【0025】
ソレノイドコアは、ソレノイド内における改善された磁束を可能にする。ソレノイドコアは、好ましくは、磁束をピストン、さらに好適な実施形態によれば、付加的にコア管に到達させることができる十分に大きな面を有している。好ましくは、ソレノイドコアは、コイル外に配置されていて、軸線方向でコイルを越えて突出している区分を有しており、この区分は、直交する空隙を形成しながら、ピストン区分、さらに好ましくは、第1のピストンセグメントの1つの区分およびコア管の1つの区分に向かい合って位置している。これによって、磁界強度を比較的小さく保つことができる。特に、ソレノイドコアとピストンとの間、さらに好ましくは、ソレノイドコアと第1のピストンセグメントとの間、およびソレノイドコアとコア管との間の移行部の領域で、低い磁界強度を得ることができる。ピストン、特にコア管も、ソレノイドコアの内部に同軸に配置されている。
【0026】
ソレノイドコアは、好適な構成によれば、高い衝突力にさらされない。好ましくは、ソレノイドコアは、磁束を導くことができる大きな横断面を備えて提供される。特に、好ましくは、ソレノイドコアとピストンとの間の移行部、さらに好ましくは、ソレノイドコアと第1のピストンセグメントとの間およびソレノイドコアとコア管との間の移行部も、これらの移行部の領域で磁気飽和が排除されるように面状に構成されている。特に好ましくは、ソレノイドコアはソフトフェライト材料から形成されている。ソフトフェライトは、電磁式の駆動装置の作用形式を最適化するために役立つ。特にMn-Znフェライト、Ni-Znフェライト、Y-Feガーネットまたはこれに類したものの使用が有利である。粉末射出成形による製造も有利であり、電磁式の駆動装置の特に有利な磁気特性および特に高い効率を可能にする。粉末射出成形による構成の代わりにまたはこのような構成に加えて、特にそれに続いて、硬化のために焼結プロセスを行うことが可能であり、このようにすると、構成が、さらに好ましくは、次いで焼結される粉末射出成形品において得られる。特に焼結された粉末射出成形品としての構成によって、さらに製造コストを大幅に低減することができる。
【0027】
ソレノイドコアの代替的に有利な構成では、ソレノイドコアは、電気金属薄板の複数の層から、特に好ましくはモータ金属薄板から、特別に好ましくはSi鋼薄板3.2%またはSi鋼薄板6.5%から形成されている。このようにすると、特に高い透磁性と磁気飽和とを得ることができる。さらに渦電流を層状の配置形態によって十分に抑制することができる。好ましくは、すべての材料層は同一の厚さを有していて、かつ/または互いに同一の材料から形成されている。さらに好ましくは、ソレノイドコアは、少なくとも3つの、特に有利には少なくとも5つの、極めて特に好ましくは少なくとも10の、特に好ましくは少なくとも15の材料層を有している。
【0028】
本発明の好適な実施形態によれば、ソレノイドコアとピストンとの間の直交する空隙における磁気的に露出した面、特にソレノイドコアと第1のピストンセグメントとの間およびソレノイドコアとコア管との間のそれぞれの磁気的に露出した面が、軸線方向の空隙における、特に端面もしくは対応面の磁気的に露出した面よりも、好ましくは大きいかまたはこの面に等しく、ソレノイドコアとピストンとの間の直交する空隙の磁気的に露出した面、特にソレノイドコアと第1のピストンセグメントとの間の磁気的に露出した面、およびソレノイドコアとコア管との間の磁気的に露出した面が、好ましくは、少なくとも係数2だけ、好ましくは特に係数2~6だけ、極めて特に好ましくは係数3~5だけ、特に好ましくは係数約4だけ、ピストンの端面または軸線方向の空隙における対応面よりも大きい。磁気的に露出した面というのは、特に、ソレノイドの磁界が作用し、特に直接作用する面であって、これによって、軸線方向におけるピストンの運動を実現することができる面を意味している。
【0029】
好ましくは、ソレノイドコアは、ピストンに、特に第1のピストンセグメントに、さらに好ましくはコア管に、直交する第2の空隙を形成しながら直接向かい合って位置するよう配置されている。ここで、直接というのは、コア管にもピストンにも割り当てられていないかまたはそれ自体が1つの部材である何らかの別の物理的な部材または要素が介在していないことを意味している。
【0030】
電磁式の駆動装置の好適な改良形態によれば、ピストンと、コア管を取り囲むソレノイドコアとの間で延在している第2の直交する空隙を可能な限り小さく保つために、ピストン、特に第2のピストンセグメントは、コア管内で最小の直交する間隔を伴ってガイドされて配置されている。このように構成されていると、軸線方向の空隙における磁界強度を好適に増大させることができ、これによって、電磁式の駆動装置の効率ひいては切断装置の切断作用が明らかに改善される。コア管は、好ましくは一体の部材として、かつ/またはソレノイドの残りの部材から独立した部材として形成されている。
【0031】
さらに好ましくは、コア管は、中空円筒状の区分を有していて、特に好ましくはピストンの外径、もしくはピストン、特に第2のピストンセグメントの、コア管を貫通しているガイドされている区分の外径に適合させられた等しいままの内径を備えた中空円筒状の区分を有している。
【0032】
電磁式の駆動装置のさらに好適な構成では、ソレノイドは、ピストンを支持するための支持要素、特にただ1つの支持要素を有しており、この支持要素は、特に好ましくはポリエーテルエーテルケトン(PEEK)から形成されている。このように構成されていると、僅かな滑り摩擦しか有していない特に良好な線形のガイドを得ることができる。さらに、ピストンに対するコイルの磁気作用の影響を確実に回避することができる。
【0033】
好ましくは、支持要素の材料は、好ましくは低摩擦係数を有している。支持要素は、好ましくは支持スリーブおよび/または線形支持要素である。同様に好ましくは、支持要素は、ピストン、特に第2のピストンセグメントの1つの区分を、特にコア管内で、特に有利には全面的にかつ/または密着して位置するように取り囲んでいる。支持要素は、さらに好ましくはコア管内に圧入されている。
【0034】
支持要素は、代替的に好適な形式では、例えば青銅、特に軸受青銅、ケイ素青銅、またはリン青銅、真鍮、銅、または他の金属、特に他の非鉄金属のような他の材料から構成されていることが考えられる。
【0035】
電磁式の駆動装置の別の好適な構成によれば、ピストンは、ピストンの質量重心、好ましくは切断ナイフ支持体を含むピストンの質量重心が、休止位置と、切断位置または相互間に位置している位置のような終端位置であってよい作業位置との間のピストンの最大に可能な移動中に、コア管内に、特に支持要素内に留まっているように構成されている。このように構成されていると、特に安定的で傾きのない支持を簡単に達成することができる。これにより、1つには、切断ナイフの衝突の規定の角度によって、切断結果を直接改善することができ、もう1つには、休止位置と作業位置との間でのピストンの全運動中における半径方向のもしくは直交する空隙が、一定にかつ可能な限り小さく保たれる。これによって、ピストンの駆動のために重要な軸線方向の空隙において、磁界強度を可能な限り大きく保つことができる。
【0036】
本発明の他の態様によれば、糸を切り離すための、繊維機械用の切断装置であって、上に記載した好適な実施形態のうちの少なくとも1つの実施形態に従った電磁式の駆動装置と、電磁式の駆動装置によって休止位置と、切断位置のような作業位置との間で運動可能な、切断ナイフを備えた切断ナイフ支持体とを備えている、切断装置が提供される。
【0037】
本発明の意味における切断装置は、電磁式の駆動装置によって切断ナイフを、切断装置内にまたは切断装置に接して配置された、特に高い速度で通過走行する糸を切り離すことができるように運動させることができる装置である。切断装置および/またはこのような切断装置を備えた糸クリヤラは、好ましくは自律的なまたは独立した構造ユニットであり、かつ/または繊維機械に配置するために設けられている。
【0038】
切断装置の切断力は、運動質量の衝撃もしくはパルスに正比例して生じる。運動質量は、好適な実施形態によれば、ピストンと、切断ナイフ支持体と、切断ナイフ支持体によって支持された切断ナイフとの総質量である。静止状態からの加速時に、運動質量に供給されるパルスは、運動質量に依存しておらず、単に、運動質量において生じる力作用の時間積分に関連している。ゆえに、パルスを高めるために、好ましくは速度を高める必要がある。このことは、好ましくは、運動系の質量を低減することによって達成することができる。さらに、ピストンに対する力作用は、ソレノイドの特性および効率に直接関係しているので、ソレノイドの効果および作用形式を改善することによって、切断力ひいては切断結果が改善される。相応に、高いエネルギ効果が望まれている。切断ナイフを含むピストンに対する力作用を高めるために、好ましくは、ピストンとソレノイドコアとの間の軸線方向の空隙における磁束を高め、運動系および静止系において発生する損失を最小にし、さらに、運動系を行われた切断後に戻すのに必要な戻し力を同様に最小にすることが望ましい。
【0039】
ピストン、コイルおよびソレノイドコアは、好ましくはソレノイドの部材である。ピストンは、これらの3つの部材のうち、ただ1つの可動の、特に線形移動可能な部材である。相応にピストンは、切断装置内で、特にソレノイド内で、場合によっては切断ナイフ支持体と並んで、最大の衝突力に耐えねばならない部材であり、この部材は、運転中に高い速度で運動させられるので、この部材には強い力が作用する。切断ナイフ支持体もしくは切断ナイフの駆動は、ソレノイドによってピストンを休止位置と切断位置との間で線形の、特に真っ直ぐな運動軌道に沿って移動させることによって行われ、この運動軌道は、ピストンもしくはピストンの運動によって設定される。好ましくは、ピストンは、ソレノイド内に配置された全区分、極めて特に好ましくは全体が、回転対称形状を有している。
【0040】
切断ナイフを、ピストンによって運動させることができるようにするために、好ましくは、ソレノイドの外に位置する、ピストンの端部にかつ/またはピストンの領域に、切断ナイフ支持体が配置されている。切断ナイフ支持体は、ピストンに固定された部材であり、この部材の質量は、少なくとも部分的に中空異形材としての有利な構成によって、さらに低減させることができる。
【0041】
切断ナイフ支持体は、基本的に切断ナイフを収容するために形成されている。切断ナイフ支持体は、好ましくは切断ナイフを交換可能に収容するために設けられている。さらに好ましくは、切断ナイフ支持体は、切断ナイフが、ピストンおよび切断ナイフ支持体の運動時に軸線方向および/または半径方向で移動することを防止し、かつ/または切断ナイフが、ピストン運動の軸線方向に対して相対的に傾くことを防止する。切断ナイフ支持体は、好ましくは、切断ナイフが線形に軸線方向でまたはピストンの運動方向に対して同軸に休止位置と切断位置との間に移動させられるように形成されている。
【0042】
切断ナイフは、基本的に任意に構成されていてよく、1つまたは複数の切刃を有していてよい。切断ナイフは、線形移動可能なピストンに間接的にまたは直接的に、特に好ましくは切断ナイフ支持体に直接的に配置されていて、ピストンの軸線方向における切断運動によって切断を行う。さらに好ましくは、切断ナイフは、糸を切り離すために、対応面、特に好ましくは固定のもしくは不動の対応面、極めて特に好ましくは公知のようにアンビルと協働する。
【0043】
好適な実施形態によれば、切断装置は、電磁式の駆動装置の、互いに向かい合って位置している端面と対応面とが、上に記載した好適な実施形態のうちの1つの実施形態に従って、切断位置で互いに接触しないもしくは触れ合わないように構成されている。このように構成されていると、これらの面をより低い硬さで形成することができ、特にこれらの面に硬化処理を施す必要がなくなる。さらに、ピストンが対応面に固着するおそれを回避することができ、これによって、ピストンの戻りが遅れること、またはピストンが戻らなくなることを回避することができる。好適な実施形態によれば、相互の接触は、切断装置の行程を軸線方向の空隙の軸線方向長さよりも小さく設定することによって阻止することができる。
【0044】
最後に、本発明は、上に記載した好適な実施形態のうちの少なくとも1つ実施形態に従った電磁式の駆動装置および/または切断装置と、少なくとも糸の有無を検出しかつ/または糸欠陥を検出するための少なくとも1つのセンサ装置とを備えた、繊維機械の作業ユニット用の糸クリヤラに関する。
【0045】
繊維機械は、基本的に、少なくとも1つの糸を形成するまたは処理する任意の装置であってよく、繊維機械は、好ましくは多数の作業ユニット、特に互いに並んで配列された作業ユニットを有している。特に好ましくは、繊維機械は、紡績機であってもよいし、特にロータ紡績機、空気紡績機または巻取り機のような、巻取りパッケージを形成するもしくは巻成する繊維機械であってもよい。
【0046】
糸クリヤラは、基本的に任意に形成されていてよく、通過する糸を監視しかつ/または処理するために、特に欠陥を含む区分を切り取るために設けられていてよい。相応に、糸クリヤラは、好ましくは糸入口と糸出口との間、特に糸ガイド通路内に、糸を監視しかつ/または処理するための少なくとも1つのユニットを有している。特に糸クリヤラは、検出された糸不良および/または糸欠陥をクリアリング除去するために、つまり、欠陥を含む区分を切り離すために、好適な実施形態のうちの1つの実施形態に従った切断装置を有している。
【0047】
適切な材料選択と組み合わせられた本発明の好適な実施形態のうちの1つの実施形態に従った、コンポーネントの上に記載した特に幾何学的な構成によって、供給された電気エネルギを運動エネルギに動的に変換する際に発生する渦電流損失および消磁損失が十分に回避される。さらに、飽和および残留磁気(保磁力)のような磁気的な制限を、使用される材料および幾何学形状の選択によって改善することができる。ピストンの改善された加速は、質量の低減によって達成することができ、これによって、最終的に切断出力を高めることができる。さらに、保磁力の低減によって、特に切断工程の終了時にピストンを戻すために必要な戻し力を低減させることができる。さらに、運動質量の低減によって、必要な戻し力をさらに低減させることができる。駆動装置をさらに最適化するために、戻し要素として使用されるばね要素は、好ましくは、加速段階中に、加速に抗して作用するばね力が最小になるように構成されている。
【0048】
本発明は、上に記載した個々の実施形態に制限されるものではない。個々のまたは複数の実施形態を互いに組み合わせることが十分に可能であり、これによって1つの別の好ましい実施形態を得ることができる。
【0049】
次に繊維機械の切断装置用の電磁式の駆動装置の1つの実施例について、図面を参照しながら詳説する。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】繊維機械の切断装置用の電磁式の駆動装置の上側を概略的に示す図である。
【
図2】
図1に示した電磁式の駆動装置の断面図である。
【0051】
図1に示した電磁式の駆動装置1は、糸パッケージを製造する繊維機械の切断装置のために設けられていて、糸クリヤラに切断装置を収容するための切断ナイフ収容部4を有している。切断ナイフ支持体13に組み込まれた切断ナイフ14によって、中心長手方向軸線に沿って高速で運動する糸を、例えば欠陥の認識時に、切断するもしくは切り離すことができる。高い糸走行速度に基づいて、切断工程は数ミリ秒内で行われなければならないので、切断ナイフ14の特に速い駆動が必要になる。さらに、糸を綺麗に切り離すために、ある程度の切断力と同時に高い精度とが必要である。
【0052】
このことを可能にするために、電磁式の駆動装置1はソレノイド2を有している。ソレノイドコア5内には、ピストン3が線形移動可能に配置されている。ピストン3は、第1のピストンセグメント3Aと第2のピストンセグメント3Bとから形成されており、第2のピストンセグメント3Bの自由端部は、第1のピストンセグメント3Aの収容部内に圧入されて固定されている。
【0053】
ピストン3は、図には示していないコイルによって部分的に取り囲まれている。コイルが活性化されると、磁界が形成され、ピストン3は、切断位置の方向に移動させられる。ソレノイドコア5にピストン3を正確にかつ同時に可能な限り低摩擦で支持するために、ピストン3はコア管9内に配置されており、このコア管9内にはさらに、ポリエーテルエーテルケトン製の支持要素11が圧入されていて、コア管9は、ピストン3を線形にガイドし、傾くことを阻止する。
【0054】
ピストン3、特に第2のピストンセグメント3Bの別の自由端部には、切断ナイフ支持体13が解離可能に結合されている。
【0055】
不動のコア管9とピストン3との間の特に良好な磁気相互作用を得るために、ピストン3もしくは第1のピストンセグメント3Aの端面7とコア管9の端面8とは共に円錐状に形成されている。不動のコア管9とピストン3との間の磁気相互作用は、大部分、軸線方向の空隙6内で行われ、この空隙6は、ピストン3の、ピストン3の中心長手方向軸線に対して傾けられた端面7と、コア管9の、端面7に対応する同様に傾けられた端面8との間で延在している。軸線方向の空隙6は、その容積および長さを、ピストン3の中心長手方向軸線もしくは運動方向に沿って、休止位置から、糸が切り離される切断位置へのピストン3の移動と共に変化させる。
【0056】
両端面7,8は、ピストン3の中心長手方向軸線に対して約30°傾けられた平坦な表面を有しており、これによって、これらの表面は、90°の角度での配置形態に対して明らかに増大させられる。このようにして、磁気相互作用を明らかに最適化することができる。この相互作用をさらに最適化するために、支持要素11、ピストン3およびソレノイドコア5は、ピストン3とソレノイドコア5との間の直交する空隙10であって、ピストン3を全周にわたって取り囲んでいて、その容積をピストン3の移動と共に実質的に変化させない空隙10が、可能な限り小さくなるように形成されている。
【0057】
上に記載したように、第2のピストンセグメント3Bは、第1のピストンセグメント3A内に固く把持されていて、特に圧入されている。第2のピストンセグメント3Bは、支持要素11によって軸線方向でガイドされる。さらに、第2のピストンセグメント3Bは部分的に中空に形成されているか、または少なくとも部分的に中空異形材として形成されており、このような構成は、運動質量をさらに低減するために役立ち、これによって、運動質量をより良好に加速させることができ、これによって、さらにより大きな切断力が生じる。磁気の短絡を回避するために、第2のピストンセグメント3Bは非磁性の材料および/または磁化不能な材料、特にアルミニウムまたは非磁性の特殊鋼から製造されている。同時にまた、ピストン3の、第2のピストンセグメント3Bとは反対の側で、第1のピストンセグメント3Aがくり抜かれていることによって、そこに発生する渦電流および消磁損失が低減される。
【0058】
切断位置から休止位置へのピストン3の確実かつ迅速な戻りを可能にするために、累進的なコイルばね12が第2のピストンセグメント3Bを取り囲むように配置されており、このコイルばね12は、切断位置へのピストン3の移動時にその応力を増大させる。コイルが不活性になると、コイルばね12はピストン3を休止位置に押し戻し、このとき、休止位置から切断位置へのピストン3の電磁気による移動と、休止位置へのピストン3の、ばね力によって駆動される戻り移動とから成る運動サイクルは、好ましくは10ms~最大で15ms内で行われる。コイルばね12は、ピストン3の端面7と、コア管9に設けられたばねストッパとの間に配置されており、このばねストッパには、少なくとも休止位置から切断位置へのピストン3の移動の途中で、ピストン3がその都度接触するようになっている。別の好適な配置形態では、コイルばね12はピストン3の端面7と支持要素11の端面との間で把持されている。
【0059】
磁気相互作用をさらに最適化するために、第1のピストンセグメント3Aおよびコア管9は、1.9Tを上回る高い磁気飽和度と、800A/mよりも小さい低い保磁力とを有する材料から形成されている。第1のピストンセグメント3Aおよびコア管9の材料として、電磁式の駆動装置1のこの構成では、0.1%~0.2%の低炭素割合を有する高温圧延された炭素鋼が使用される。
【0060】
ソレノイドコア5はさらに、電気金属薄板製の互いに結合された複数の層から、特にモータ金属薄板から形成されている。更なる好適な配置形態では、ソレノイドコア5は、ソフトフェライト、特にMn-Znフェライト、Ni-Znフェライト、Y-Feガーネットまたはこれに類したものから成っており、このとき、粉末射出成形による製造が特に有利である。これらの手段は、特に渦電流と、ピストン3の迅速な加速に対する渦電流の不都合な影響とを、もはや重大な影響が存在しない程度に低減するために役立つ。
【符号の説明】
【0061】
1 電磁式の駆動装置
2 ソレノイド
3 ピストン
3A 第1のピストンセグメント
3B 第2のピストンセグメント
4 切断ナイフ収容部
5 ソレノイドコア
6 軸線方向の空隙
7 ピストンの端面
8 コア管の対応面もしくは端面
9 コア管
10 直交する空隙
11 支持要素
12 戻し要素/コイルばね
13 切断ナイフ支持体
14 切断ナイフ
【外国語明細書】