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特開2023-70140糸案内要素ならびに糸案内要素を備えた、繊維機械の作業ユニット用の糸クリヤラ
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  • 特開-糸案内要素ならびに糸案内要素を備えた、繊維機械の作業ユニット用の糸クリヤラ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023070140
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】糸案内要素ならびに糸案内要素を備えた、繊維機械の作業ユニット用の糸クリヤラ
(51)【国際特許分類】
   D01H 13/26 20060101AFI20230511BHJP
【FI】
D01H13/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022176099
(22)【出願日】2022-11-02
(31)【優先権主張番号】21206581
(32)【優先日】2021-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】521553287
【氏名又は名称】ザウラー インテリジェント テクノロジー エイ・ジー
【氏名又は名称原語表記】Saurer Intelligent Technology AG
【住所又は居所原語表記】Textilstrasse 9, 9320 Arbon, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】カリダス サンソシュクマール
(72)【発明者】
【氏名】シャルル レオポルト エリザベト ドゥムリン
(72)【発明者】
【氏名】イリル アディリ
【テーマコード(参考)】
4L056
【Fターム(参考)】
4L056EA04
4L056EA39
4L056EC16
4L056EC19
4L056FB12
(57)【要約】      (修正有)
【課題】本発明は、糸監視および/または糸加工ユニット用の糸案内要素ならびに少なくとも1つの糸案内要素を備えた、繊維機械の作業ユニット用の糸クリヤラに関する。
【解決手段】糸監視および/または糸加工ユニットにおける材料除去を大幅に減らし、糸案内要素の領域での糸の品質の悪化を回避し、その際、糸監視および/または糸加工の改善ならびに巻取り時の糸速度の増加を可能にする糸案内要素を提供するためには、糸案内要素が、糸を糸走路に対して側方から案内するための糸案内開口と、糸を糸案内開口内にもたらすための糸受入れ開口と、糸案内要素の両側の静的な圧力を補償し、かつ/または少なくとも糸案内要素の一方の側で少なくとも糸の領域に層状の空気流を発生させるための空気流れ補償開口とを有することが特定されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸監視および/または糸加工ユニット用の糸案内要素(1)であって、
- 糸を糸走路に対して側方から案内するための糸案内開口(2)と、
- 前記糸を前記糸案内開口(2)内にもたらすための糸受入れ開口(19)と、
- 前記糸案内要素(1)の両側の静的な圧力を補償し、かつ/または前記糸案内要素(1)の一方の側で、少なくとも案内される前記糸の領域に層状の空気流を発生させるための空気流れ補償開口(3)と
を備える、糸案内要素(1)。
【請求項2】
前記糸案内開口(2)は、2つの糸案内部分(4)によってフォーク状に形成されており、前記2つの糸案内部分(4)の間で前記糸が案内され、かつ/または前記2つの糸案内部分(4)は、U字形またはV字形の糸案内領域(5)で合流していることを特徴とする、請求項1記載の糸案内要素(1)。
【請求項3】
前記空気流れ補償開口(3)は、前記糸案内要素(1)を糸延在方向で完全に貫通しており、かつ/または前記糸案内開口(2)から離間させられてかつ/または前記糸案内開口(2)に隣接して配置されていることを特徴とする、請求項1または2記載の糸案内要素(1)。
【請求項4】
前記空気流れ補償開口(3)は、前記糸案内開口(2)の、前記糸受入れ開口(19)と反対の側で、特に前記糸案内開口(2)に対して中央に配置されていることを特徴とする、請求項1から3までの少なくとも1項記載の糸案内要素(1)。
【請求項5】
前記空気流れ補償開口(3)は、その開口平面において円形または楕円形に形成されていることを特徴とする、請求項1から4までの少なくとも1項記載の糸案内要素(1)。
【請求項6】
前記糸走路に沿った前記糸案内開口(2)の長さは、少なくとも1mm~3mmであり、かつ/または前記糸走路に沿った前記糸案内開口(2)の長さは、前記糸案内開口(2)が幅広であるよりも少なくとも2.0倍だけ長いことを特徴とする、請求項1から5までの少なくとも1項記載の糸案内要素(1)。
【請求項7】
糸延在方向に沿って延在する糸案内部分(7)と、前記糸延在方向に沿って延在していて、前記糸案内部分(7)に隣り合った、糸案内が行われない流れ静定部分(6)とを備えることを特徴とする、請求項1から6までの少なくとも1項記載の糸案内要素(1)。
【請求項8】
前記流れ静定部分(6)および/または前記流れ静定部分(6)に隣接した領域に層状の空気流を発生させるべく、前記空気流れ補償開口(3)は、前記糸案内部分(7)の、前記糸受入れ開口(19)と反対の側に形成されていて、少なくとも前記糸案内部分(7)の延在領域に前記糸延在方向に沿って、特に数値流体力学の計算により最適化された流れ静定表面(8)を有することを特徴とする、請求項7記載の糸案内要素(1)。
【請求項9】
前記空気流れ補償開口(3)は、前記糸案内部分(7)にわたって延在する、前記糸延在方向に対して40°~50°の角度だけ傾けられた流れ静定表面(8)を有することを特徴とする、請求項7または8記載の糸案内要素(1)。
【請求項10】
前記空気流れ補償開口(3)は、前記糸走路と所定の角度を成して前記糸受入れ開口(19)から離れる方向に向けられた法線ベクトルを有する空気流れ流出平面を備えることを特徴とする、請求項1から9までの少なくとも1項記載の糸案内要素(1)。
【請求項11】
前記糸案内要素(1)を糸監視または糸加工ユニットに位置決めするための位置決め補助手段(17)が、前記糸案内要素(1)の、前記糸受入れ開口(19)および/または前記空気流れ補償開口(3)と反対の側に設けられていることを特徴とする、請求項1から10までの少なくとも1項記載の糸案内要素(1)。
【請求項12】
繊維機械の作業ユニット用の糸クリヤラ(9)であって、
- 糸を供給するための糸入口と、糸を導出するための糸出口とを有する糸案内通路と、
- 請求項1から11までの少なくとも1項記載の少なくとも1つの糸案内要素(1)と
を備える、繊維機械の作業ユニット用の糸クリヤラ(9)。
【請求項13】
前記糸案内通路の入口および/または出口に、それぞれ1つの糸案内要素(1)が配置されていることを特徴とする、請求項12記載の、繊維機械の作業ユニット用の糸クリヤラ(9)。
【請求項14】
前記糸案内通路は、前記糸案内通路を通走する前記糸の規定のパラメータを検出するための、前記糸クリヤラ(9)により取り囲まれたセンサの少なくとも1つのセンサ領域(10)を画定しており、前記空気流れ補償開口(3)の空気流れ流出平面の法線ベクトルが、前記センサ領域(10)の、前記糸受入れ開口(19)と反対側の縁領域の方向に向けられていることを特徴とする、請求項12または13記載の、繊維機械の作業ユニット用の糸クリヤラ(9)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸監視および/または糸加工ユニット用の糸案内要素ならびに少なくとも1つの糸案内要素を備えた、繊維機械の作業ユニット用の糸クリヤラに関する。
【0002】
糸の巻取りは、典型的には、極めて高い糸走行速度で行われる。これによって、繊維機械の、糸に隣接して配置されたかつ/または糸に接触する表面の領域において、望ましくない高い材料除去が生じる。このことは、例えば、テークアップパッケージを製造する繊維機械に設けられた糸監視および/または糸加工ユニット、特に糸クリヤラの糸案内通路に該当する。
【0003】
高い移動速度ならびに構造および糸表面から飛び出ている繊維端に基づき、糸が、伴流(Sog)と、これに伴って、糸の移動方向に沿った、ベルヌーイの法則に当てはまる空気流とを発生させる。相応して、移動する糸に対する表面の距離の小さな変化、特に糸案内通路の幅の変化によって、すでに圧力差が生じ、その結果、望ましくない乱流が生じる。この乱流によって、材料除去が経時的に増大させられる。この現象は、とりわけ糸案内通路の入口および/または出口の領域において特に極めて顕著である。
【0004】
さらに、この現象は、糸案内通路が狭幅であるほど強くなる。これによって、好適には、特に幅広の糸案内通路が求められる。しかしながら、数多くの用途、例えば、少なくとも1つの糸パラメータの監視および/または糸の効率のよい加工のためには、特に狭幅の糸案内通路が好適であり、これによって、糸監視および/または糸加工ユニット、特に糸クリヤラの良好な機能を確保するために、狭幅の糸案内通路が必要となり、ひいては、先行技術の装置における望ましくない乱流形成に起因した材料除去の増大を回避することができない。
【0005】
さらに、このような乱流が生じることによって、糸監視および/または糸加工ユニットにおける材料除去のほかに、糸自体の品質の悪化も生じ、この糸の表面に乱流が直接作用し、その際に糸から別の繊維端が引き出されてしまう。さらに、乱流に基づき、迅速に移動する糸に半径方向で力が作用する。これによって、糸延在が変化してしまう。これによって、1つには、糸監視が著しく困難となり、もう1つには、糸が糸監視および/または糸加工ユニット、特に糸クリヤラの表面に接触してしまう。これによって、重ねて、糸の品質悪化または損傷すら生じてしまう。
【0006】
このマイナスの現象は、典型的には、糸監視および/または糸加工ユニット、特に糸クリヤラの糸案内通路の入口および/または出口に配置された糸案内要素の領域において特に大きい。
【0007】
したがって、本発明の根底にある課題は、糸監視および/または糸加工ユニット、特に糸クリヤラにおける材料除去を大幅に減らし、糸案内要素の領域での糸もしくはヤーンの品質の悪化を回避し、その際、糸監視および/または糸加工の改善ならびに巻上げ時の糸速度の増加を可能にする糸案内要素を提供することである。
【0008】
この課題は、本発明によれば、請求項1記載の、糸監視および/または糸加工ユニット用、特に糸クリヤラ用の糸案内要素ならびに請求項10記載の、繊維機械の作業ユニット用の糸クリヤラによって解決される。有利な改良形態は従属請求項に記載してある。
【0009】
糸監視および/または糸加工ユニット用、特に糸クリヤラ用の本発明に係る糸案内要素は、糸を糸走路に対して側方からもしくは直交方向に案内するための糸案内開口と、糸を糸案内開口内にもたらすための糸受入れ開口と、糸案内要素の両側および特に糸案内通路の内部の静的な圧力を補償し、かつ/または少なくとも糸案内要素の一方の側で、少なくとも案内される糸の領域に層状の空気流を発生させるための空気流れ補償開口とを有している。
【0010】
さらに、本発明は、繊維機械の作業ユニット用の糸クリヤラであって、糸を供給するための糸入口と、糸を導出するための糸出口とを有する糸案内通路と、少なくとも1つの糸案内要素、この場合、好適には少なくとも1つの本発明に係る糸案内要素とを備えた、繊維機械の作業ユニット用の糸クリヤラにも関する。
【0011】
発明者らは、糸案内要素の両側の静的な圧力を補償し、かつ/または少なくとも糸案内要素の一方の側で少なくとも糸の領域に層状の空気流を発生させるための空気流れ補償開口によって、糸監視および/または糸加工ユニット、特に糸クリヤラの材料除去の大幅な低減と同時に、糸品質の著しい向上を簡単に達成することができることを認識した。さらに、糸が、特に一定の糸走路に従動し、これによって、糸監視および/または糸加工の顕著な改善と、糸速度の増加とが可能となる。
【0012】
糸案内要素とは、「アイレット」とも呼ばれ、糸、特にその中心長手方向軸線に沿って迅速に移動する糸を少なくとも一空間方向に案内する、つまり、糸の位置を少なくとも一方向に制限し、好適には一定に保つ構成部材または構成ユニットを意味している。好適には、糸の案内は、特に糸案内開口によって少なくとも2つの側、特に好適には少なくとも3つの側、全く特に好適には正確に3つの側で、特に糸延在方向に対して半径方向もしくは糸走路に対して直交方向に行われる。さらに好適には、糸の案内は、糸案内要素の一部、この場合、特に好適には糸案内開口の一部に直接接触して、特に平滑な表面によって行われる。
【0013】
糸案内要素は、基本的に、糸を搬送するための任意のあらゆる装置に配置されてよいにもかかわらず、本発明に係る糸案内要素は、糸監視および/または糸加工ユニット、特に糸クリヤラ用に設けられており、これによって、例えば、糸の有および/または無を確認することができる。付加的に、糸監視および/または糸加工ユニット、特に糸クリヤラは、好適には少なくとも1つの糸パラメータを検出することができ、かつ/または好適には、糸不備を確認するように形成されている。
【0014】
糸案内要素による糸の案内は、本発明によれば、基本的に任意に、例えば開口、片側で開放した通路、間隙、スリットまたはこれに類するものとして形成されていてよい糸案内開口によって行われる。この糸案内開口は、糸を複数の側で取り囲んでいてもよいし、糸の全周のうちの一部にわたってしか取り囲んでいなくてもよい。好適には、糸案内開口は、開かれた形状を有しており、これによって、糸を側方から糸受入れ開口を介して、糸の分断なしにかつ/または中間領域でもって糸案内開口内にもたらすことができる。好適には、糸案内開口は糸案内要素に配置されている。特に好適には、糸案内開口は狭幅の通過路もしくは間隙である。糸案内開口の幅は、好適には5mm未満、特に好適には3mm未満、全く特に好適には2mm未満である。
【0015】
糸走路は、移動する糸の経路であり、好適には実質的に不変に糸延在方向にかつ/または一定の軌道に沿って延在しており、かつ/または糸案内要素、特に糸案内開口によって設定される。特に好適には、糸走路は、特に糸クリヤラの2つの糸案内要素の間で線状である。全く特に好適には、糸走路は、糸クリヤラの糸入口と糸出口との間で1つの直線に沿って延在している。
【0016】
糸クリヤラは、基本的に任意に形成されていてよく、通過する糸および/またはそのパラメータを監視しかつ/または糸を加工する、特に欠陥のある部分を切断除去するために設けられていてよい。相応して、糸クリヤラは、好適には、糸入口と糸出口との間で、特に糸案内通路に、糸を監視しかつ/または加工するための少なくとも1つのユニットを有している。特に、糸クリヤラは、検知された糸不備および/または糸欠陥を完全除去する、つまり、欠陥のある部分を切り離すために、切断装置を有していてよい。糸クリヤラは、好適には、繊維機械、特に好適には、テークアップパッケージを製造する繊維機械および/または巻返しのために設けられた繊維機械に配置するために形成されている。
【0017】
空気流れ補償開口とは、この空気流れ補償開口の両側に配置された2つの領域の圧力補償を可能にしかつ/またはこれら2つの領域の間でガス流もしくは体積流を許容する少なくとも1つまたは正確に1つの開口、少なくとも1つまたは正確に1つの通過路もしくは少なくとも1つまたは正確に1つの通路を意味している。空気流れ補償開口は、ただ1つの構成部材によって形成されていてもよいし、複数の構成部材の表面もしくは部分によって形成されていてもよい。好適には、空気流れ補償開口は、完全に1つの構成部材の内部に配置されており、かつ/または完全に1つの構成部材を貫いて形成されている。この構成部分は、特に好適には同じく糸案内開口を有している。全く特に好適には、空気流れ補償開口は、糸案内開口に隣接して配置されている。
【0018】
空気流れ補償開口の複数の機能のうちの1つは、本発明によれば、糸案内要素の一方の側、特に糸監視および/または糸加工ユニットの内部に層状の空気流を発生させることであってよい。層状の空気流を発生させるとは、そもそも、乱流状の空気流を減少させることしか意味していない。ただし、発生させられる空気流は、好適には主に層状である。しかしながら、この場合、層状の空気流が低い乱流割合を相変わらず有していてよい。この乱流割合は、特に好適には、技術的に可能な限り低い。好適には、乱流割合は、50%未満、特に好適には30%未満、全く特に好適には20%未満、とりわけ好適には10%未満である。糸案内要素の、層状の空気流が発生させられる側は、糸監視および/または糸加工ユニットの糸入口に配置された糸案内要素の場合には、好適には、この糸案内要素の下流側に配置されており、かつ/または糸出口に配置された糸案内要素の場合には、好適には、この糸案内要素の上流側に配置されている。概して、層状の空気流は、好適には、糸監視および/または糸加工ユニットのセンサ領域を画定する測定通路内、特に好適には、糸案内通路の内部に発生させられる。空気流は、基本的に、任意のガス流であってよい。このガス流は、周辺空気から形成されていてもよいし、別のガス組成を有していてもよい。
【0019】
糸案内通路は、糸を糸クリヤラの内部で部分的に複数の側で取り囲んでいてもよいし、完全に全ての側で取り囲んでいてもよいし、糸をその全周の一部だけでしか取り囲まず、残りの部分では開放して形成されていてもよい。好適には、糸案内通路は、少なくとも1つの側、特に好適には正確に1つの側で糸延在に沿って開放しており、これによって、例えば、糸の容易な導入が可能となる。
【0020】
糸案内要素の好適な構成は、糸案内開口が、2つの糸案内部分によってフォーク状に形成されており、2つの糸案内部分の間で糸が案内され、かつ/または2つの糸案内部分が、U字形、C字形またはV字形の糸案内領域で合流していることを特定している。好適には、糸案内部分は、少なくとも部分的に互いに平行に延在しており、かつ/または互いに不変の間隔を有している。さらに好適には、両方の糸案内部分は、互いに鏡像対称に形成されており、かつ/または互いに鏡像対称に糸案内要素に配置されている。好適には、糸走路は、専ら糸案内領域に延在していて、この場合、特に好適には、U字形、C字形またはV字形の領域の一部に延在している。この部分では、糸がその全周の実質的に少なくとも90°、特に好適には少なくとも135°、全く特に好適には180°に対して案内される。
【0021】
糸案内要素の有利な構成では、空気流れ補償開口が、糸案内要素を糸延在方向で完全に貫通しており、かつ/または糸案内開口から離間させられてかつ/または糸案内開口に隣接して配置されている。これによって、特に効率のよい圧力補償を発生させることができ、かつ/または糸走路の領域に特に容易に層状の空気流を発生させることができる。好適には、糸案内開口と空気流れ補償開口とは、少なくとも糸案内要素の一方の側の領域で、特に好適には互いに完全に分離されて延在している。特に好適には、空気流れ補償開口は、糸が空気流れ補償開口内に到達することがあり得ないように形成かつ/または配置されている。特に、空気流れ補償開口が、糸案内開口の、糸受入れ開口と反対の側で、好ましくは糸案内要素の正面図で見て、両方の糸案内部分が合流するU字形またはV字形の糸案内領域の下方にかつ/または糸案内開口に対して中央に配置されている糸案内要素の構成が好適である。
【0022】
空気流れ補償開口、特に糸監視および/または糸加工ユニットの外側に向けられた空気流れ補償開口は、基本的に任意に形成されていてよく、任意の形状を有していてよい。しかしながら、空気流れ補償開口が、糸監視および/または糸加工ユニットへの入口側で、特に構造的に可能な限り大きな開口を有して円形または楕円形に形成されている糸案内要素の構成が好適である。代替的または付加的には、空気流れ補償開口が、糸監視および/または糸加工ユニットからの糸の出口側で、前述したような形態で円形または楕円形に形成されていてもよい。好適な円形または楕円形の構成によって、流れ抵抗の低減が可能となる。
【0023】
糸案内要素の糸出口側における、特に糸監視および/または糸加工ユニットの糸案内通路における空気流の特性を制御することができるようにするためには、糸案内要素が糸走路に沿って、単なる糸案内のために必要である部分よりも長い部分にわたって延在していると好適である。この場合、糸案内要素の有利な改良形態では、糸延在方向でのもしくは糸走路に沿った糸案内開口の長さが、少なくとも0.75mm~5mm、好適には少なくとも1mm~3mm、特に好適には少なくとも1mm~2mmである。代替的または付加的には、糸延在方向でのもしくは糸走路に沿った糸案内開口の長さが、糸案内開口が幅広であるよりも少なくとも1.5倍、好適には少なくとも2.0倍、特に好適には少なくとも2.5倍、全く特に好適には少なくとも3.0倍だけ長い。なお、糸案内開口の幅とは、特に互いに平行に配置されている領域および/または糸を案内する領域での両方の糸案内部分の間隔を意味している。相応して、糸案内開口の長さは、糸走路に沿ったもしくは糸走路に対して平行な延在長さである。
【0024】
糸走路の方向に連続する2つの部分で形成された糸案内要素の構成が特に好適である。特に好適には、糸案内のための第1の部分と、空気流を変化させるための第2の部分とが形成されている。相応して、糸案内要素は、好適には、糸延在方向もしくは糸走路に沿って延在する糸案内部分と、この糸案内部分に隣り合った流れ静定部分とを有している。特に好適には、この流れ静定部分では更なる糸案内は行われない。相応して、糸は、流れ静定部分で、好適には糸案内部分に接触せず、特に好適には、糸は、流れ静定部分で糸案内要素の表面に接触しない。流れ静定表面が、基本的に、空気流れ補償開口を糸案内要素内の糸の領域から切り離していてもよいし、代替的には、糸が、少なくとも部分的に1つ以上の流れ静定表面によって取り囲まれた領域を通して案内されていてもよい。
【0025】
特に効果的に層状の空気流を発生させるために、糸案内要素の好適な構成は、流れ静定部分および/または流れ静定部分に隣接したかもしくは隣り合った領域に層状の空気流を発生させるべく、空気流れ補償開口、好適には空気流れ補償開口全体が、糸案内部分の、糸受入れ開口と反対の側に形成されていて、少なくとも糸案内部分の延在領域に糸延在方向に沿って、数値流体力学(CDF - computational fluid dynamics)の計算により最適化された流れ静定表面を有していることを特定している。特に、エッジおよび/または90°以上の角度なしの糸案内開口の表面が好適である。
【0026】
相応して、糸案内要素の同じく好適な改良形態は、空気流れ補償開口が、糸案内部分の領域に、好適には糸案内部分全体にわたって延在して、糸延在方向に対して25°~60°、好適には35°~55°、特に好適には40°~50°、全く特に好適には45°の角度だけ傾けられた表面を有していることを特定している。この場合、傾きは、センサの互いに隣り合ったセンサ領域の基部の近くで静的な補償を行うことができる傾けられた通気通路を形成するために役立つ。これによって、センサに割り当てられた測定通路によって好適に画定されたセンサ領域の内部の圧力勾配を可能な限り小さく保つことができる。
【0027】
好適な実施形態によれば、空気流れ補償開口は、糸走路と0°以上の角度を成して糸受入れ開口から離れる方向に向けられた法線ベクトルを有する空気流れ流出平面を備えている。これによって、発生させるべき層状の流れをセンサ基部の領域において改善した形で確保することができる。
【0028】
さらに好適には、一実施形態によれば、糸案内要素が、糸案内要素を糸監視または糸加工ユニットに位置決めするための位置決め補助手段が、糸案内要素の、糸受入れ開口および/または空気流れ補償開口と反対の側に設けられている。したがって、糸案内要素を、特に糸監視または糸加工ユニットのセンサ領域の入口および/または出口により容易にかつ正確に位置決めすることができる。例えば、位置決め補助手段は、対応するように形成された突出部、例えばフランジを収容するための切欠きとして形成されていてよい。これによって、糸監視または糸加工ユニットの糸案内通路の入口もしくは出口への正確な配置が可能となる。さらに好適には、位置決め補助手段は、糸案内要素を緊締、係止またはねじ締結によって糸案内通路の入口もしくは出口に固定するように構成されていてよい。
【0029】
繊維機械の作業ユニット用の糸クリヤラの有利な改良形態では、糸案内通路の入口および出口に、それぞれ1つの本発明に係る糸案内要素が配置されている。好適には、糸クリヤラの両方の糸案内要素もしくは全ての糸案内要素は、互いに同一にかつ/または鏡像対称に形成されている。互いに同一の糸案内要素では、両方の糸案内要素が、それぞれ互いに同一の側で互いに向かい合って糸クリヤラに配置されている。
【0030】
本発明に係る糸案内要素の一実施例を以下に図面を参照しながら詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】糸のための入口側を有する糸案内要素の概略的な正面図である。
図2図1に示した糸案内要素の2つの概略的な断面図である。
図3】糸クリヤラの概略的な斜視図である。
【0032】
図1に概略的に示した、繊維機械の作業ユニットの糸クリヤラ9用の糸案内要素1は、一体形に形成されていて、互いにフォーク状に配置された2つの糸案内部分4を有している。これら2つの糸案内部分4は、糸受入れ開口19の方向からV字形を成して糸案内領域5で合流している。両方の糸案内部分4は間隙を形成している。この間隙は、片側で開放された糸案内開口2として使用される。この糸案内開口2の糸案内領域5では、糸を高い速度で案内することができ、側方への糸走路の逸脱に対して防護することができる。
【0033】
糸案内開口2は、糸走路方向に向けられた平滑な表面を有しており、これによって、糸を高い速度で付着を可能な限り少なくして案内することができる。しかしながら、糸走路の方向に迅速に移動する糸の表面から飛び出ている繊維によって伴流が生じる。この伴流によって、糸案内要素1内にかつ糸案内要素1の下流側に空気流が生じ、また、糸案内要素1の上流側と下流側とで圧力差が生じる。
【0034】
この静的な圧力差を補償するために、糸案内要素1は、糸案内開口2の下方に楕円形の開口を有する空気流れ補償開口3を有している。この空気流れ補償開口3は、糸案内要素1を糸走路の方向で完全に貫通している。
【0035】
これに関連して、図2には、2つの糸案内要素1が概略的な断面図で示してある。一方の糸案内要素1は、糸クリヤラ9の、両方の糸案内要素1の間に延在するセンサ領域(図示せず)の入口側に配置されており、他方の糸案内要素1は出口側に配置されている。
【0036】
いま、糸案内要素1の糸出口側における乱流状の空気流を回避し、その代わりに、層状の空気流を発生させるために、各々の糸案内要素1は、糸走路に沿って糸案内部分7に隣り合いかつ糸案内部分7に直接隣接した流れ静定部分6を有している。糸案内要素1は、糸案内部分7と流れ静定部分6とを備えて一体形に形成されている。
【0037】
流れ静定部分6は少なくとも1つの流れ静定表面8を有している。この流れ静定表面8は、数値流体力学の計算によって最適化されており、これによって、特に層状の空気流が、糸案内要素1内にかつ糸案内要素1の下流側に発生させられる。この糸案内要素1は、糸案内部分7に流れ静定表面8を有している。この流れ静定表面8は、糸もしくは糸走路に対して約45°の角度を成して延在していて、発生した空気流を変向させる。
【0038】
図3には、前述したような糸案内要素1を備えた糸クリヤラ9の実施例が概略的な斜視図で示してある。糸案内要素1は、糸走路に沿って糸クリヤラ9のセンサ領域10への入口側に配置されている。これに対して代替的にまたは付加的に、別の実施例によれば、このような糸案内要素1は、糸走路に沿ってセンサ領域10の出口側に配置されていてよい。
【0039】
図示の実施例による糸クリヤラ9は、糸案内要素1により入口側で画定されたセンサ領域10を横切る糸を監視するセンサ機構をそれぞれ収容するための第1および第2のハウジング部分12,13を備えた3部分式に形成されたハウジングボディ11を備えている。例えば、第1および第2のハウジング部分12,13のうちの一方のハウジング部分は、容量式のセンサ機構を有していてよく、他方のハウジング部分は、種々異なる糸パラメータを監視するための光学式のセンサ機構を有していてよい。ハウジングボディ11の第3のハウジング部分14は、糸走路に沿って第2のハウジング部分13に隣り合って配置されている。第3のハウジング部分14は、糸クリヤラ9の糸走路に交差する切断ナイフ15を備えた切断装置を部分的に取り囲んでいて、相互間に延在する糸(図示せず)を分断するための切断ナイフ15用のストッパ16を備えている。
【符号の説明】
【0040】
1 糸案内要素
2 糸案内開口
3 空気流れ補償開口
4 糸案内部分
5 V字形の糸案内領域
6 流れ静定部分
7 糸案内部分
8 流れ静定表面
9 糸クリヤラ
10 センサ領域
11 ハウジングボディ
12 第1のハウジング部分
13 第2のハウジング部分
14 第3のハウジング部分
15 切断ナイフ
16 ストッパ
17 切欠き/位置決め補助手段
18 フランジ
19 糸受入れ開口
図1
図2
図3
【外国語明細書】