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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023070141
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】低剪断先端部を有するカテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/3207 20060101AFI20230511BHJP
【FI】
A61B17/3207
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022176107
(22)【出願日】2022-11-02
(31)【優先権主張番号】17/518,401
(32)【優先日】2021-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】515248931
【氏名又は名称】ニューラヴィ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100130384
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 孝文
(72)【発明者】
【氏名】デビッド・ベイル
(72)【発明者】
【氏名】ロナルド・ケリー
(72)【発明者】
【氏名】ブレンダン・ケーシー
(72)【発明者】
【氏名】カール・キーティング
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160EE21
4C160EE30
4C160MM33
(57)【要約】      (修正有)
【課題】拡張性先端セクションを有する改善された回収カテーテル、及び性能が改善されたそのようなカテーテルの使用方法を提供する。
【解決手段】大ボアシャフトと、拡張可能な遠位編組支持先端部とを有する血塊回収カテーテル100であって、編組支持先端部の遠位拡張性セクション213は、シャフトの内径にほぼ等しい送達内径を有することができる。先端部の編組は、遠位方向に小さくなる編組角度を有することができ、それにより、先端部が、取り込まれた血塊によって径方向に衝突されたときにより大きい拡張内径に拡張されて、血塊を管理し、血塊断片の剪断を防止することができる。先端部編組のワイヤは、遠位方向に一方の螺旋方向に従い、次いで、ワイヤ自体の上で近位方向に反転して、編組の他方の螺旋方向を形成することができる。このワイヤの反転は、編組の遠位終端において非外傷性の遠位フープをもたらす。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテルであって、
長手方向軸と、
近位端と、遠位端と、ルーメンと、内側ライナと、セルの外周リングを含む第1の複数のワイヤ編組セグメントとを備える近位細長シャフトと、
前記近位細長シャフトの前記遠位端に接続された遠位先端セクションであって、近位管状本体と、送達構成及び拡張血塊捕捉構成を備える遠位拡張性セクションと、セルの外周リングを含む第2の複数のワイヤ編組セグメントと、を備える、遠位先端セクションと、
を備え、
前記遠位拡張性セクションの前記遠位端が、前記第2の複数のワイヤ編組セグメントのワイヤが反転して、前記第2の複数のワイヤ編組セグメントを通って折り返す遠位フープを備え、
前記遠位拡張性セクションが、前記拡張血塊捕捉構成における、取り込まれた血塊によって径方向に衝突されたときのより大きい拡張内径と、前記送達構成におけるより小さい送達内径とを更に備える、カテーテル。
【請求項2】
前記第1の複数のワイヤ編組セグメントの少なくとも一部が、第1の材料組成を有するワイヤを備え、前記第2の複数のワイヤ編組セグメントの少なくとも一部が、前記第1の材料組成とは異なる第2の材料組成を有するワイヤを備える、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項3】
前記近位細長シャフトと前記先端セクションとの間の接続部が、前記近位細長シャフトの前記遠位端と前記先端セクションの前記近位端とに結合された近位マーカバンドを備える、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項4】
前記第1の複数のワイヤ編組セグメントの少なくとも一部と前記第2の複数のワイヤ編組セグメントの少なくとも一部とが、一体型編組として形成されている、請求項3に記載のカテーテル。
【請求項5】
前記第1の複数のワイヤ編組セグメントの各セルが、第1の編組セグメント編組角度を含む、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項6】
前記第2の複数のワイヤ編組セグメントが、少なくとも第1の編組角度及び最終編組角度を備え、前記最終編組角度が、前記第1の編組角度よりも小さい、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項7】
前記第2の複数のワイヤ編組セグメントの最遠位セルが、約40度~約120度の範囲の最終編組角度を含む、請求項5に記載のカテーテル。
【請求項8】
前記第2の複数のワイヤ編組セグメントの前記最遠位セルが、約85度~約95度の範囲の最終編組角度を含む、請求項5に記載のカテーテル。
【請求項9】
前記近位細長シャフトの前記近位端から遠位方向に延在し、前記第2の複数のワイヤ編組セグメントのセルの開口部を通ってループ点で反転する軸方向スパインを更に備える、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項10】
前記1つ以上のポリマー先端ジャケットが、約20ショアA~約72ショアAの範囲の硬度を有する最遠位先端ジャケットを含む、請求項9に記載のカテーテル。
【請求項11】
前記内側ライナの前記遠位端と前記遠位先端セクションの前記遠位端との間に軸方向長を更に有し、前記軸方向長が約1mm~約10mmである、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項12】
前記遠位先端セクションが、約100mm~約400mmの範囲の長手方向長を更に備える、請求項1に記載のカテーテル。
【請求項13】
スパインループ点が、前記内側ライナの前記遠位端に軸方向に近接して位置する、請求項9に記載のカテーテル。
【請求項14】
前記軸方向スパインが、前記第1の複数のワイヤ編組セグメントのセル及び前記第2の複数のワイヤ編組セグメントのセルと織り合わされている、請求項9に記載のカテーテル。
【請求項15】
前記第2の複数のワイヤ編組セグメントの少なくとも一部が、ニチノールワイヤを含む、請求項2に記載のカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、脈管内医療処置中に血管から急性閉塞を除去するための装置及び方法に関する。より具体的には、本発明は、物体又は複数の物体を回収することができる拡張可能な先端部を有する回収カテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
血塊回収吸引カテーテル及び装置は、しばしば患者が急性虚血性脳卒中(acute ischemic stroke、AIS)、心筋梗塞(myocardial infarction、MI)、及び肺塞栓症(pulmonary embolism、PE)などの状態を患う場合に、血管内介入を行うための機械的血栓除去術に使用される。従来の技術では、特に神経血管床へのアクセスは、標的血管の直径が小さく、挿入部位に対して遠くにあり、かつ非常に曲がりくねっているために困難であった。これらのカテーテルは、長尺であることが多く、全ての分岐部及び屈曲部で血管の構造に従わなければならない。従来の装置は、多くの場合、プロファイルが大きすぎるか、特に曲がりくねった血管をナビゲートするために必要な送達性及び可撓性に欠けるか、又は標的部位に送達されたときに血塊を除去するのに有効ではないかのいずれかである。
【0003】
吸引回収カテーテルのための多くの既存の設計は、例えば、6Fr、すなわちおよそ0.068~0.074インチの内径に制限されることが多い。より大きなサイズには、更により大きなガイド又はシースを使用する必要があり、次いで、より大きな大腿骨アクセス穴を閉じる必要がある。ほとんどの医師は、8Frガイド/6Frシースの組み合わせを使用することを好み、9Frガイド/7Frシースを超える組み合わせをよく思う医師は少ないであろう。これは、標的部位に達したら、血塊のサイズが、しばしば、吸引カテーテルの内径よりも大きい場合があり、別のやり方でカテーテル口に入るように血塊を直ちに圧縮しなければならないことを意味する。この圧縮は、回収中に凝固(bunching up)を引き起こし、その後、血塊の剪断につながる可能性がある。堅いフィブリンに富む血塊はまた、これらのカテーテルの固定口の先端部に詰まる場合もあり、それらを抽出することがより困難になる。この詰まりはまた、血塊のより軟い部分が血塊の堅い領域からちぎれる剪断をもたらす可能性がある。
【0004】
したがって、大ボアの中間及び吸引カテーテル及び/又は拡張可能な先端部を有するカテーテルは、少ない抵抗で血塊を受容するために大きなルーメン及び遠位口を提供するため、望ましい。これらのカテーテルのボアルーメンは、それらが内部を通して送達されるガイド及び/又はシースとほぼ同じ大きさであり得、拡張可能な先端部は、依然としてより大きくなるように拡張することができる。血塊が捕捉され、拡張可能な先端部内に近位に引き込まれると、血塊は、回収中に徐々に圧縮及び保護することができるため、血塊は、カテーテルを通してシリンジ又はキャニスタ内に完全に吸引され得る。
【0005】
多くの例では、固定口カテーテル及び拡張可能な先端部を有するカテーテルは、主支持骨格として下地編組を有することができる。カテーテル本体での編組の使用は、新規な概念ではなく、典型的な例は、当技術分野で容易に見出すことができる。この編組は、大抵の場合、カテーテル長に対して一方向に螺旋状に巻き付けられたバンドが、反対方向に螺旋状に巻かれたバンドの上及び下を交差するように単純であり得る。バンドは、本体のより軟質な外側材料を補強するために効果的なフープ強度を提供する金属、ガラス繊維、又は他の材料とすることができる。しかしながら、支持編組は、多くの場合、層の効果的な結合機構を欠くか、又は多くの手順の可撓性基準を満たさない高い断面剛性点を有する可能性がある。更に、これらの装置の多くは、実質的な外傷を引き起こすことなく、脆弱な血管で使用するのに十分な程度まで柔らかくすることができない構造又はプロファイルを有する。更に、多くのカテーテル編組は、径方向に拡張することができず、それにより、血塊が先端部の口内で凝固して詰まり、ルーメンを閉塞させる。これは、患者からカテーテル全体を取り外し、その後の工程を行う前に、そのカテーテル及びその他の装置を消毒することを必要とし、関与する時間及びリスクを増大させる。
【0006】
これらのカテーテルの臨床的ニーズを大きな妥協なしに組み合わせることは、困難であり得る。上述の設計課題を克服しようとするカテーテル設計は、大ボアを有する必要があるが、曲がりくねった血管をナビゲートする際に加えられる深刻な機械的歪みに耐えるための柔軟性及び弾性を有する、遠位標的に到達するのに十分な小さい外径も有する必要がある。この設計は、臨界位相中の血塊のより良好な保持のため血塊が取り込まれる際に弾性的な径方向拡張を可能にする拡張可能な先端部を有することができ、それにより、その初期形状を迅速に回復し、外径を維持して、吸引用の通路を維持しながら、より遠位の血管への先端部の通過及び装置内の通過を容易にすることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
その結果、上述の設計課題を克服しようとする改善されたカテーテル設計が、依然として必要とされている。本設計は、拡張性先端セクションを有する改善された回収カテーテル、及び性能が改善されたそのようなカテーテルの使用方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の必要性を満たす装置及び方法を提供することが、本設計の目的である。本設計は、AISを患う患者の大脳動脈から、MIを患う患者の自然の冠状血管又は移植血管から、PEを患う患者の肺動脈から、並びに血塊が閉塞を引き起こしている他の末梢動脈及び末梢静脈から、血塊を除去することができる血塊回収カテーテルに対するものであり得る。本発明は、1)血塊とカテーテルとの間の摩擦、及び2)カテーテル先端部内へと吸引される際にこれらの強固な血塊を変形させるのに必要なエネルギー/負荷、という主要な問題に対処することによって、フィブリンに富む血塊物質をカテーテル内へ吸引するという課題を解決する。
【0009】
いくつかの例では、カテーテルは、近位端、遠位端、内部ルーメン、及びそれを通って延在する長手方向軸を備えた近位細長シャフトを有する低剪断先端部を有する大ボアのカテーテルであり得る。細長シャフトは、低摩擦内側ライナと、ライナの周りに配置された第1の複数のワイヤ編組セグメントとを有することができる。編組セグメントは、カテーテルシャフトの骨格及び支持体として機能することができる。編組の交差織りは、細長シャフトの軸の周りにセルの外周リングを形成することができる。
【0010】
いくつかの例では、カテーテルは、細長シャフトの遠位端から延在する細長シャフトと同じ公称内径を有する遠位先端セクションを有することができる。先端セクションは、いくつかの領域と、近位管状本体と、送達構成及び拡張血塊捕捉構成を有する遠位拡張性セクションとに分割することができる。先端部の遠位拡張性セクションは、拡張血塊捕捉構成における、取り込まれた血塊によって径方向に衝突されたときのより大きい拡張内径と、送達構成におけるより小さい送達内径とを有することができる。これらの能力は、血塊を管理し、血塊断片の剪断を防止する。
【0011】
必要に応じて、血塊を使用して低剪断先端セクションを拡張させるこの新機軸は、従来の設計よりも大幅に改善された血塊管理を可能にすることができる。公称の非拡張外径は、標的領域への遠位アクセスを最大化する。いったん血塊が取り込まれると、追加の径方向拡張を通じて血塊の堅いフィブリンに富む部分に対応することにより、この能力を欠くカテーテルよりも血塊をより漸進的に圧縮し、血塊の剪断を大幅に低減することができる。
【0012】
先端セクションの支持体は、第2の複数のワイヤ編組セグメントであってもよく、重なり合うワイヤがセルの外周リングを形成する。いくつかの例では、第2の複数のワイヤ編組セグメントは、シャフトの第1の複数のワイヤ編組セグメントと一体的に形成することができる。第2の複数のワイヤ編組セグメントのワイヤは、先端セクションの近位端から遠位方向に一方の螺旋方向に従い、次いで、先端セクションの遠位端でワイヤ自体の上で近位方向に反転して、編組の他方の螺旋方向を形成することができる。このワイヤの反転は、先端編組セグメントの遠位終端において非外傷性の遠位フープをもたらす。
【0013】
カテーテルはまた、細長シャフトの第1の複数のワイヤ編組セグメントの近位端から長手方向軸に沿って延在する1つ以上の軸方向スパイン部材を有することができる。スパインは、処置中にカテーテルシャフトの引張荷重の伸長に抵抗することができる。スパインは、編組の内面に沿って、編組の外面に沿って、又はその両方に沿って延びることができる。一例では、スパインは、編組のセルを介して織り合わされる。別の例では、スパインは、軸の周りに螺旋状又は弦巻状パターンを形成し得る。
【0014】
いくつかの例では、スパインは、第2の複数のワイヤ編組セグメントのセルの開口部を通ってループ点で近位方向に反転することができる。スパインループ点は、先端セクションの遠位端の近位の距離に配置することができる。一例では、この位置は、内側ライナの遠位端に近い。別の例では、その距離は、先端セクションの遠位端の近位約4~5mmとして指定され得る。ループ点で反転した後、スパインは、固定された長手方向距離にわたって近位方向に延在し、細長シャフトの近位端までずっと固定される又は延在することができる。
【0015】
いくつかの例では、スパイン(複数可)は、ポリマー若しくは金属材料の堅い固体部材であってもよく、又はコア及び複数の材料を使用した複合構造であってもよい。他の例では、スパインは、引張荷重を支持するが圧縮荷重を支持することができないねじ又は他の構造であり得る。一例では、スパインは、引張伸長に抵抗するが圧縮短縮を可能にする液晶ポリマー(LCP)などのポリマー糸であり得る。このスパインねじ構造は、カテーテルシャフトの横方向可撓性にほとんど寄与しない一方で、引張役を果たすことができる。
【0016】
別の例では、アセンブリの引張強度は、大幅に増加した引張強度を提供しながら、ルーメンの横方向可撓性及び摩擦特性を維持する新規のライナを使用することによって向上させることができる。そのようなライナは、Junkoshaから市販されており、ラップePTFE構造からなる。
【0017】
カテーテルは、処置中に装置の様々な移行点及び終端を識別するために、1つ以上の放射線不透過性マーカバンドを有することができる。マーカバンドは、白金、金、及び/又は別の金属カラーであってもよく、又は代替的に、実質的な放射線不透過性を付与する化合物でコーティングされてもよい。例えば、遠位バンドは、拡張可能な先端部の遠位端から約10mmの距離だけカテーテルシャフト上に圧着させることができる。内側ライナの遠位端と先端セクションの遠位端との間の軸方向長はまた、約1mm~約10mmの間とすることができる。より具体的な例では、内側ライナの遠位端と先端セクションの遠位端との間の長さは、約2mm~約3mmの間とすることができる。
【0018】
いくつかの例では、第1及び第2の複数のワイヤ編組セグメントは、単一の一体型構造として形成することができる。代替的に、マーカバンドのうちの1つ以上を、カテーテルシャフト内の構造接合部として使用することもできる。一例では、カテーテルシャフトの中間長の近位マーカバンドは、第1の複数のワイヤ編組セグメントの遠位端及び第2の複数のワイヤ編組セグメントの近位端と軸方向に重なり合うことができる。次いで、接合部の結合は、溶接、接着剤、又は他の好適な機械的連結によって形成することができる。カテーテル長がいくつかの設計で典型的な1250mm~1320mmである場合、第2の複数のワイヤ編組セグメントは、約100~約400mmの範囲の長手方向全長を有し、それによって、近位マーカバンドでの接合部を、カテーテルの遠位端からこの範囲内の近似距離に位置付けることができる。したがって、先端セクションの長手方向全長は、約100~約400mmであり得る。
【0019】
第1の複数のワイヤ編組セグメント及び第2の複数のワイヤ編組セグメントのセルは、カテーテルの異なる部分に異なる機械的特性を付与する特定のパターンで編組することができる。例えば、セル内のワイヤの交差によって形成される角度、及びプログラム可能なインチ毎ピック(PPI)の密度は、近位でカテーテルシャフトのフープ強度がより高くなるように調整することができる。角度及びPPIは、より低いフープ強度を有する遠位先端部での構成へと移行して、送達能力を促進し、血塊が取り込まれる際の先端部の追加の径方向拡張を可能にすることができる。更に、応力の集中する望ましくない捩れ点の形成を回避するために、異なるPPIとセル角度との間の移行を段階的に行うことができる。
【0020】
いくつかの例では、近位細長シャフトの第1の複数のワイヤ編組セグメントの各セルは、第1の編組セグメント編組角度を有することができる。第1の複数のワイヤ編組セグメントはまた、約120~約170の範囲の比較的高密度なインチ毎ピックを有することができる。大きなセル角度を有する高密度の編組は、良好な押し込み性、耐捩れ性、及び曲げ剛性を付与することができる。代替的に、より低くより柔軟な50~80のPPIを補強ワイヤコイルと共に利用して、より低い曲げ剛性で耐捩れ性を更に向上させることができる。
【0021】
拡張可能な低剪断遠位先端セクションの第2の複数のワイヤ編組セグメントの少なくとも一部は、径方向拡張が可能であり、したがって、径方向力で許容可能な拡張のバランスをとる可変PPI及びセル角度を有することができる。第2の複数のワイヤ編組セグメントは、少なくとも第1の近位編組角度と、第1の編組角度よりも小さい最終遠位編組角度とを有することができる。いくつかの例では、第1及び最終編組角度は、約65度~約160度の範囲を有することができる。
【0022】
1つの設計では、これらの編組は、約140の初期近位PPIと、約154度の初期近位編組角度とを有することができる。第2の複数のワイヤ編組セグメントの最遠位セルの最終編組角度は、約40度~約125度の範囲であり得る。別の例では、最遠位セルの最終編組角度は、約85度~約95度の範囲であり得る。
【0023】
より具体的な例では、先端部の第2の複数のワイヤ編組セグメントの最遠位セルを含むセルの遠位リングは、約20~45の範囲のPPIを有し得る。別の特定の例では、初期近位PPI及び編組角度は、それぞれ約21及び65度の最終遠位PPI及び最終編組角度に移行することができる。別の例では、最終PPI及び最終編組角度は、それぞれ約36及び95度であり得る。最終編組密度及び角度の他のバランスも同様に企図することができる。
【0024】
ワイヤ編組セグメントの他の特性もまた、特定の特性に合わせて調整することができる。いくつかの例では、第1の複数のワイヤ編組セグメントの一部のワイヤ直径は、第2の複数の編組のワイヤ直径の少なくとも一部と異ならせることができる。一例では、第1の複数の編組は、約0.0015インチの厚さ又は何らかの他の直径を有するワイヤを有することができる。第2の複数の編組は、約0.0020インチの厚さ又は何らかの他の直径を有するワイヤを有することができる。
【0025】
ワイヤはまた、非円形断面形状をとるか、又はカテーテルの局所的な特性に影響を及ぼすカスタム若しくは不規則な編組パターンを有することができる。一例では、第1の複数の編組は、2本取りヘリンボンパターンの下に1ワイヤを有する少なくとも1つのセクションを有し、遠位端で近位マーカバンドにレーザー溶接することができる。第2の複数のワイヤ編組セグメントは、遠位先端セクションの少なくとも一部に1本取りの半ダイヤモンドパターンを有し、近位端で近位マーカバンドに溶接することができる。
【0026】
いくつかの例では、第1の複数のワイヤ編組セグメントの少なくとも一部は、第2の複数のワイヤ編組セグメントの少なくとも一部の第2の材料組成物とは異なる第1の材料組成物のワイヤを有することができる。一例では、近位の第1の複数のワイヤ編組セグメントは、ステンレス鋼組成物とすることができる。別の例では、第2の複数のワイヤ編組セグメントの遠位ワイヤは、より高い可撓性を可能にし、塑性変形に対する耐性を向上させるニチノール又は別の超弾性合金組成物であってもよい。
【0027】
細長シャフトの支持編組構造と拡張可能な低剪断先端部とは、複数の外側ポリマージャケットで覆うことができる。いくつかの例では、1つ以上のポリマー本体ジャケットを細長シャフトの周りに配設することができ、1つ以上のポリマー先端ジャケットを先端セクションの周りに配設することができる。先端部及びシャフト外側ジャケットは、ポリマーリフロー、射出成形、又はその他の好適なプロセスを使用して、一緒に又は別々に形成することができる。
【0028】
外側ジャケットは、様々なデュロメータ硬度を有して、より大きいカラム剛性を有する近位部を作り出し、より大きい横方向可撓性を有する遠位部に移行することができる。いくつかの例では、本体ジャケットは、約25~約72ショアDの範囲の硬度を有することができる。先端ジャケットは、一般に、より低い硬度を有することができ、最遠位先端ジャケットは、最も非外傷性である血管横断プロファイルのために最も軟らかいジャケットである。一例では、最遠位先端ジャケットは、約40ショアA~約80ショアAの範囲の硬度を有することができる。
【0029】
異なるジャケット厚も使用することができる。一例では、複数の本体ジャケットの少なくとも一部は、複数の先端ジャケットの少なくとも一部の壁厚よりも小さい第1の壁厚を有することができる。一例では、本体ジャケットは、0.003~0.004インチの壁厚を有し、理想的には、編組ワイヤの上に存在する0.0005インチのジャケット壁厚よりも大きい。別の例では、先端ジャケットは、0.006インチのより大きい壁厚を有することができる。厚さの増加は、血塊を圧縮し、吸引力に抵抗するのを助けることができる。
【0030】
最遠位先端ジャケットは、先端部の所望の輪郭に従うようにトリミングすることができる、又は第2の複数のワイヤ編組セグメントのフープの遠位端を越えて張り出すように長手方向の距離だけ遠位方向に延在することができる。いくつかの例では、張り出しの長手方向距離は、約0.1mm~約1.0mmの範囲であり得る。より具体的な例では、この長手方向距離は、0.4mm~約0.6mmの範囲であり得る。
【0031】
本明細書の設計のカテーテルを使用して、標的血管内の閉塞性血塊を治療するための方法も開示することができる。この方法は、最内吸引カテーテルと複数の外側吸引カテーテルとを備えるカテーテルシステムを、標的血塊に向かって前進させることを含むことができる。システム内の最内カテーテルは、公称内径を有するワイヤ編組構造を有することができ、血塊を取り込むことによる、又はカテーテルを通じてステントリーバを引っ張ることによる受動的な力により、より大きい拡張内径まで径方向に拡張させるように構成することができる。最内カテーテルは、安全に拡張して、標的血管との小さな間隙を封止する、又はその間隙を残すことができる。システム内の各カテーテルは、捕捉された血塊に力をより良好に及ぼすために更に拡張し、複合血塊の部分の剪断リスクを低減する能力を有することが望ましい場合がある。
【0032】
システム内の外側吸引カテーテルのうちの少なくとも1つは、大きな内部ルーメンと、捕捉された血塊を回収する際の吸引効率と保護が改善された径方向自己拡張型遠位先端部とを有する漏斗スーパーボアカテーテルであってもよい。次いで、この方法は、連続する最外吸引カテーテルの各々の外径が横断されている血管の内径と一致する、複数の外側吸引カテーテルの各々の位置を維持することを含むことができる。この伸縮式システムは、カテーテル間の工程が最小限であることを確保するのに役立ち得、吸引の増強及び血塊の剪断リスクの低下のために、可能な限り最大の外径を有するカテーテルを使用して血塊を取り込むことができる。漏斗カテーテルが先行する外側カテーテルから展開されて自己拡張型先端部を径方向に拡張させると、先端部の外径が横断されている血管の内径と一致するまで、又は先端部の適合性が完全に拡張されたサイズよりも小さい血管内への前進を可能にする場合に先端部がそのより小さな血管サイズ範囲まで進んだときに、拡張構成の先端部と共にカテーテルを前進させることができる。多くの場合、先端部は、先端部の近位位置から流体の流れを防止するように血管を封止することができる。
【0033】
いくつかの例では、次いで、本方法は、標的血管の内径として公称外径を有するようにサイズ決定された最内吸引カテーテルを、伸縮自在にカテーテルシステムを通して血塊のすぐ近位の位置まで遠位方向に前進させることを含むことができる。吸引は、少なくとも最内吸引カテーテルを通して方向付けられて、血塊を取り込むことができる。吸引は、システム内の他のカテーテルを通しても方向付けることができる。凝固した血塊の場合、本方法における追加の工程は、次いで、最内吸引カテーテルのルーメンを通して、又は最内カテーテルのルーメンを介して前進したマイクロカテーテルを通して血塊回収装置を前進させて、血塊を捕捉するのを助けることを含むことができる。
【0034】
この方法は、血塊が最内吸引カテーテルの先端セクションを通して近位方向に取り込まれるときに生成される局所的な径方向力を利用して、ワイヤ編組構造を、構造の公称外径よりも大きい外径まで径方向に拡張することを伴うことができる。この局所的効果は、他のセクションの低いプロファイルを維持しながら、血塊を更に圧縮する。
【0035】
いくつかの例では、血塊によって引き起こされるカテーテル先端部の限定されたセクションの拡張は、カテーテルが外側カテーテルを通して引き込まれるときに、システム内の最内吸引カテーテルの外壁と先行するカテーテルの内壁との間でプランジャ型効果を生じさせることができる。次いで、本方法は、この効果を使用して、径方向に拡張された拡張可能なセクションを有する最内吸引カテーテルと血塊とを、次の外側カテーテル/漏斗カテーテルのルーメンを通じて近位方向に引き込むことによって吸引力を発生させて、任意の残りの血塊断片を吸引することを含むことができる。吸引は、このプロセスを支援するために、複数の外側吸引カテーテルのうちの1つ以上を通して方向付けられ続けることができる。
【0036】
可能な限り、システム内の少なくとも最外カテーテルは、血塊が引き抜かれている間、所定位置に残されて、標的部位へのアクセスを維持することができる。造影剤を注入して、血管開存性の程度を判定し、必要に応じて、内部カテーテル(複数可)を用いて更に通過させることができる。
【0037】
本開示の他の態様は、以下の詳細な説明を添付の図と併せて考察することで明らかになるであろう。追加の特徴又は製造及び使用ステップは、当業者によって認識され理解されるように含めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
本発明の上記及び更なる態様は、添付の図面と併せて以下の説明を参照して更に考察され、様々な図面において、同様の数字は、同様の構造要素及び特徴を示す。図面は、必ずしも縮尺どおりではなく、代わりに、本発明の原理を例示することに主眼が置かれている。図は、限定としてではなく単なる例解として、本発明のデバイスの1つ又は2つ以上の実装形態を描写している。当業者は、ユーザの要望により良く合うように、複数の図面から要素を着想し、組み合わせ得ることが期待される。
図1】本発明の態様による、血管系を通って前進する拡張可能な先端部を有する吸引型血塊回収カテーテルの図である。
図2】本発明の態様による、拡張可能な先端部を有する吸引型血塊回収カテーテルの分割図である。
図3】本発明の態様による、図2の吸引型血塊回収カテーテルの遠位部を示す図である。
図4A】本発明の態様による、血塊の取り込み直前の拡張可能な先端部を有する吸引型血塊回収カテーテルの図である。
図4B】本発明の態様による、血塊の取り込み直後の拡張可能な先端部を有する吸引型血塊回収カテーテルを示す図である。
図5】本発明の態様による、吸引型血塊回収カテーテルの破断図である。
図6】本発明の態様による、図5の大ボアの血塊回収カテーテルの近位端を示す図である。
図7】本発明の態様による、図5の大ボアの血塊回収カテーテルの近位端を示す図である。
図8A】本発明の態様による、遠位先端セクションの例示的な編組構成を示す図である。
図8B】本発明の態様による、遠位先端セクションの別の例示的な編組構成を示す図である。
図9A】本発明の態様による、カテーテルの構築方法の工程を示す図である。
図9B】本発明の態様による、カテーテルの構築方法の工程を示す図である。
図9C】本発明の態様による、カテーテルの構築方法の工程を示す図である。
図9D】本発明の態様による、カテーテルの構築方法の工程を示す図である。
図9E】本発明の態様による、カテーテルの構築方法の工程を示す図である。
図9F】本発明の態様による、カテーテルの構築方法の工程を示す図である。
図9G】本発明の態様による、カテーテルの構築方法の工程を示す図である。
図9H】本発明の態様による、カテーテルの構築方法の工程を示す図である。
図10A】本発明の態様による、カテーテル先端部の遠位端での編組反転の断面図である。
図10B】本発明の態様による、カテーテル先端部の遠位端での編組反転の断面図である。
図11】本発明の態様による、拡張可能な先端部を有する複数の吸引型血塊回収カテーテルを利用する伸縮方法を示す図である。
図12】本発明の態様による、血管系での使用における図11の伸縮式カテーテルを示す図である。
図13】本発明の態様による、自己拡張型先端部を有する漏斗カテーテルと組み合わせて拡張可能な吸引型血塊回収カテーテルを利用する伸縮方法を示す図である。
図14】本発明の態様による、吸引型血塊回収カテーテルの使用方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
ここで、図面を参照して本発明の具体的な実施例を詳細に記載するが、同一の参照番号は、機能的に類似又は同一の要素を示す。実施例は、標的部位への不十分な又は不正確な展開及び効果のない血塊除去など、従来の血塊回収吸引カテーテルに関連付けられた欠陥の多くに対処する。
【0040】
本明細書の設計は、取り込まれた血塊又はステントリーバと相互作用するときに公称直径よりも大きい直径まで拡張することができる遠位低剪断先端部を有する、大ボアルーメンの血塊回収カテーテル用であり得る。設計は、カテーテルのシャフトのための近位細長本体と、拡張式編組支持構造及び先端部に非外傷性を付与するための外側ポリマージャケットを有する遠位先端部とを有することができる。先端セクションの部分は、送達のために容易かつ反復可能に潰れ、血塊からの負荷下で局所的に拡張することができる編組セルを使用して、血塊を取り込むときに公称直径を超えて更に拡張することができるように設計され得る。この取り込み中の血塊の管理は、血塊の剪断を大幅に低減することができる。カテーテルの設計は、解剖学的構造の非常に曲がりくねったエリアをナビゲートし、血管内で変位したときにルーメンの内径の形状を回復し、維持することができるように十分に可撓性であり得る。
【0041】
必要に応じて、血塊自体を利用して先端セクションを拡張するこの新機軸により、従来の設計に対して、血塊の取り扱いが大きく改善され剪断が少なくなる。公称の非拡張外径は、標準的な固定口カテーテルのように遠位アクセス範囲を最大化する。その後、いったん血塊が取り込まれると、追加の径方向拡張を通じて血塊の堅いフィブリンに富む部分に対応することにより、この能力を欠くカテーテルよりも、血塊を漸進的に圧縮して、血塊の剪断を大幅に低減することができる。更に、先端部の適合性のため、プラーク材料を除去することなく、石灰化病変を超えて非外傷的に先端部を前進させることができる。
【0042】
冠血管、肺血管、又は脳血管に関わらず、血管内の種々の脈管にアクセスすることは、周知の手順工程及び多数の従来の市販アクセサリ製品の使用を伴う。血管造影材料、機械的血栓除去装置、マイクロカテーテル、及びガイドワイヤなどのこれらの製品は、研究室及び医療処置において広く使用されている。これらの製品が、以下の説明において本発明の装置及び方法と共に使用される場合、それらの機能及び正確な構成は、詳細には記載されない。また、これらの説明は、多くの場合、頭蓋内動脈における血栓除去治療に関連しているが、本開示は、他の処置及び他の身体通路にも同様に適応させることができる。
【0043】
図に目を向けると、図1は、本明細書に開示される設計の大ボアの吸引型血塊回収カテーテル100を使用して閉塞性血塊40に接近するための可能なシーケンスを示す。血塊40は、ガイドシース30又は別の外側カテーテル内に潰れたカテーテル100と接近することができる。ガイドシース30を用いた更なる遠位ナビゲーションのために、血管系10が狭すぎる、及び/又は曲がりくねっているとき、カテーテル100は、遠位に更に独立して移動するために展開され得る。カテーテル100は、神経血管のM1又は他の曲がりくねった領域をナビゲートして閉塞性血塊に到達することができるように、非常に可撓性であり得る。
【0044】
血塊回収カテーテル100は、大きな内ボア(いくつかの場合では、0.090インチ以上であり得る)を有するシャフトとして機能する可撓性の細長本体110と、支持編組構造を備えた遠位先端セクション210とを有することができる。大きなボアは、カテーテルを様々な方法によって標的部位に送達するのに役立つ。これらは、拡張器/アクセスツールを使用して、又はそれ自体によって、マイクロカテーテルにわたって、ガイドワイヤにわたって含むことができる。
【0045】
多くの場合、シャフト及び先端部の設計は、カテーテル100が共通の外部シース及びガイドを通じて送達され得る(かつそれらを通じて回収され得る)ように構成することができる。例えば、標準的な6Frシース/8Frガイドは、典型的には、0.090インチ未満の内側ルーメンを有する。次いで、カテーテルは、約0.086インチの公称外径で設計され得る。支持編組設計はシャフトの設計と異ならせることができるが、先端セクション210は、吸引力による潰れに抵抗することができるように設計され、拡張状態及び圧潰状態の両方において優れた横方向可撓性、及び血管内の分岐部に引っ掛かるのを防止する非外傷性プロファイルを有しなければならない。
【0046】
本開示のカテーテル100の重要な部分を図2に示す。細長シャフト110は、軸方向の一連の外部本体ジャケットによって囲まれた第1の複数の編組セクション120からなる骨格を有することができる。本明細書で使用される場合、「編組セクション」は、異なる物理的特性及び/又は構成を有する単一の一体型編組内のセグメントを指すことができ、必ずしも一緒に結合された2つの別個の構造を意味するものではない。
【0047】
同様に、先端セクション210は、1つ以上のポリマー先端ジャケットによって囲まれた別の一連の編組セクション220を有することができる。いくつかの設計では、先端セクション210の編組セクション220は、シャフトの編組セクション120と一体的に形成することができる。先端部及びシャフト編組の異なる編組セクションは、カテーテルのそのセグメントの所望の特性を達成するために、異なる幾何学的形状及び織りパターンを有することができると理解され得る。
【0048】
処置中の蛍光透視下での視認性のために、放射線不透過性マーカバンドを、カテーテル100の長さに沿って異なる軸方向点に含めることができる。図示の例では、近位マーカバンド118は、シャフト110と先端セクション210との間の接合部を照らして、カテーテルのより柔軟な拡張能力が始まる場所の表示を担当医師に与えることができる。図示されるバンド118は、カテーテルの可撓性及び外径への影響を最小限に抑えるために、約0.025~0.030インチの比較的短い長さ及び薄い壁厚(約0.0005インチ)を有する白金ストリップ又は他の貴金属であり得る。同様に、より遠位のマーカバンド121を下流に配置して、使用中にカテーテルの末端をマークすることができる。
【0049】
先端セクション210を有するカテーテルの遠位部のより接近した図を図3に示す。先端セクション210は、第1の実質的に管状の近位部211と第2の遠位拡張性セクション213とを有することができる。遠位拡張性セクション213は、名目上管状であり得るが、編組特性の変化がより顕著であり得、大きくて堅い血塊が先端の遠位口に飲み込まれるときの径方向拡張を可能にすることができる。この拡張は、剪断を低減し、最初の通過の成功可能性を高めることができる。
【0050】
外側先端ジャケット180は、拡張性セクション213を拡張することによって加えられる径方向力がジャケットを拡大状態に延伸させるのに十分であるように高弾性材料から形成することができる。一例は、延性エラストマーを使用することであり得、これは、軟質かつ可撓性であり、高い破損歪みによる引き裂き及び穿孔に対する耐性があるという利点を有する。代替的に、ジャケットは、編組が拡張され潰れたときにより自由に動くことができるように、ゆったりして弛みがあり、支持フレーム縁部の上に折り畳むことができる。
【0051】
1つ以上の軸方向スパイン117を、シャフト本体と先端セクション210との間の追加の連結部として使用することができる。スパイン(複数可)117は、引張伸長に対抗し、シャフトの押し特性に寄与することができる。このことは、大きくて堅い血塊がカテーテルの遠位端で詰まり、血管から除去するためにより大きな外側シース内へカテーテルを引き込むときに大きな引張力を受ける可能性があるため、拡張可能な先端部にとって特に有益であり得る。スパインは、編組の下に位置決めされる、編組の網目間にねじ込まれる、編組の外径上に配置される、又はこれらの何らかの組み合わせが可能である。スパインは、金属、ポリマー、又はケブラーなどの複合繊維で構成することができる。いくつかの好ましい例では、加工が容易であり、横方向の可撓性を犠牲にすることなく高い引張強度を提供するテクノ-ラなどの液晶ポリマー(LCP)を利用することができる。
【0052】
カテーテルと血塊との起こり得る相互作用のシーケンスを図4A及び図4Bに示す。細長シャフト110と低剪断先端セクション210は、比較的低プロファイルのアクセスシース及びカテーテルと適合するようにサイズ決めすることができ、それにより患者の鼠径部(大腿骨アクセスの場合)の刺創を容易かつ確実に閉鎖することができる。例えば、カテーテル100は、0.110インチ未満、好ましくは0.090インチ未満、いくつかの場合には0.087インチ未満、最も好ましくは0.085インチ未満の内径を有するシース又はガイドのルーメンを通過させるように要求され得る。したがって、標準的な6Frカテーテルシャフト及び先端セクションは、遠隔標的に対して可能な限り遠位のアクセス及び到達範囲を得るために、約0.070~0.072インチ(0.084インチ又は2mm外径)の公称の非拡張内径113を有する全体の送達プロファイルを有することができる。
【0053】
図4Aでは、カテーテルは、外側ガイド又はシース(図示せず)から展開され、血管系10内の血塊40の位置とは関係なく前進させることができる。先端セクション210の骨格を形成する複数の編組220は、遠位端214に至るセル228内に、近位領域よりも低密度のPPI織りとより鋭角の編組角度227とを有し、拡張性セクション213に拡張能力を与えることができる。例えば、遠位編組角度227は、約60度とすることができ、遠位端214から5~10mmの距離で110度以上まで増加させることができる。これは、容易に圧縮することができない大きなフィブリンに富む部分を有する血塊にとって特に有益であり、圧縮されない場合、より伝統的な固定口カテーテルの先端部において剪断され得るか、又はそこに留まり得る。代替的に又は追加的に、先端セクションはまた、十分な径方向力により、ステントリーバなどの血塊回収装置によって拡張させることができる。
【0054】
図4Bに示されるように、血塊40は吸引下で先端部に取り込まれると、先端部に衝突し、先端部を局所的に拡張して、血塊を保護し守ることができる。先端セクションは、遠位セル角度236が拡張するにつれて拡張される拡張血塊捕捉構成をとるため、遠位拡張性セクション213は、血塊を局所的に囲む拡張内径215を有し、この内径は、血塊がどのくらい圧縮され得るかの関数である。このことは、血塊がカテーテルのルーメンに適合するために変形する必要があり、高い摩擦係数を有する堅固な血塊は、容易に変形及び再成形する傾向になく、したがって、カテーテル先端部の受動的な形状に容易に適合しないために重要である。先端セクションの反応性拡張は、カテーテル先端部が封止に影響を与えることを可能にし、結果として、血塊への吸引把持力を増加させ、その結果、血塊を安全に引き込むことができる。血塊がカテーテルのルーメン内へ完全に変形することができない場合であっても、先端セクション内に血塊を取り込むことにより、除去される血塊をより良好に固定し、剪断及び解剖学的構造の分岐部又は他の部分での引っ掛かりの可能性を防止することができる。
【0055】
図5は、吸引型血塊回収カテーテル100の設計の破断図である。カテーテル100は、長手方向軸111の周りに構成された近位の管状細長シャフト110を有することができる。細長シャフト110は、カテーテルルーメン116を画定する下地の編組支持構造(明確化のため図示せず)を有することができ、この構造は、低摩擦内側ライナ115を有することができ、補助装置の送達、造影剤注入、及び血塊面への直接遠位吸引のために使用することができる。好ましいライナ材料は、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ラップePTFE、又は同様の材料であり得る。遠位先端セクション210は、シャフトの遠位に延在し、送達のため外部シース内に装填することができる。シャフト110及び先端セクション210は、長手方向軸111と同心であり、外側シースを通る滑らかな送達のために同じおおよその直径を共有することができる。
【0056】
細長シャフト110の外面は、一連の5つ又は6つの外側ポリマー本体ジャケット160であり得る。ジャケットは、PTFE、ポリエーテルブロックアミド(Pebax(登録商標))、又はナイロンなどの様々な医療用ポリマーから作製することができる。例えば、カテーテルの近位端112に接近するにつれて、押し込み性に関して、漸進的により近位のセグメントが一般により硬くかつ可撓性が低くなるように(デュロメータ硬度、曲げ弾性率などによって)材料を選択できる。本体ジャケット160は、下地編組の上にリフローされ、編組セルの間隙空間を通って流れて、構築物の層を一緒に接合することができる。ジャケットは、軸方向に一連に突き合わせて、カテーテルシャフトの連続的かつ滑らかな外面を形成することができる。
【0057】
遠位先端セクション210は、下地編組によって許容される拡張特性に応じて、2つ以上の領域に細分割することができる。近位管状セクション211は、細長シャフト110とほぼ同じプロファイル及び直径を有し、大きくて堅い血塊が取り込まれたときに受動的に膨張するように設計された低剪断遠位拡張性セクション213に移行することができる。先端セクション210は1つ以上の外側先端ジャケット180を有することができ、ジャケットの硬度は、当該セクションの遠位端214が接近するにつれて徐々に低下して、カテーテルに軟質の非外傷性端部を提供する。
【0058】
下地編組のワイヤは、先端セクションの近位端212から遠位方向に一方の螺旋方向に巻き付けることができる。遠位端に到達すると、ワイヤは反転して238、遠位フープ230を形成し、反対方向に近位方向に巻き付けることができる。その結果、反転端部は、ワイヤの自由端が編組の近位端212にのみ存在するため、より非外傷的である。これは、例えば、編組補強セクションが装置の両対向端にワイヤの自由端が存在するステントに類似する他のカテーテル設計とは対照的である。本明細書に開示される編組設計は、一方向に巻き付けられたワイヤの合計が、反対方向に巻き付けられたワイヤの合計と必然的に等しくなり、さもなければ不均衡の結果としてカテーテル内に存在する可能性のある螺旋巻きを防止するという追加の利点を有する。
【0059】
細長シャフト110及び先端セクション210の異なる編組パターンは、完成した装置に特定の機械的特性を提供する。いくつかのパターンは、耐捩れ性及び破裂強度を提供することができるが、押し込み性を欠く可能性がある。他のパターンは、いくらかの可撓性を犠牲にして、外側ジャケットのより大きなトルク性及び支持を提供する。更に他のパターンは、優れた可撓性及びエネルギー分散を与えることができる。
【0060】
更に、他の要因も同様に調整することができる。カテーテルは、シャフト及び遠位先端部に2つの別個の編組セクションを有する必要はない。可撓性の異なる3つ、4つ、又はそれ以上の個別のセクションを使用することができる。壁厚及び材料組成などの他の物理的パラメータの選択もまた、様々なカテーテルセクションに対して実施することができる。例えば、より硬く、より近位の外側本体ジャケット160は、高い横方向可撓性を損なうことなく、長手方向のカラム剛性を維持する約0.004インチの壁厚124を有することができる。より遠位の先端ジャケット180は、約0.006インチとわずかに増加した壁厚224を有して、非常に軟質のジャケット材料が使用される追加の非外傷性緩衝を先端セクションに与えることができる。理想的には、ジャケット材料の壁厚は、編組構造の径方向外側で、かつライナが存在しない編組構造の径方向内側で、少なくとも0.0005インチである。
【0061】
処置中の蛍光透視下での視認性のために、放射線不透過性マーカバンドを、カテーテル100の長さに沿って異なる軸方向点に含めることができる。図示の例では、マーカバンド118は、先端セクション210の近位端212を照らして、カテーテルの拡張可能な能力が始まる場所の表示を担当医師に与えることができる。図示されるバンドは、カテーテルの可撓性及び外径への影響を最小限に抑えるために、約0.025~0.030インチの比較的短い長さ及び薄い壁厚(約0.0005インチ)を有する白金ストリップ又は他の貴金属であり得る。
【0062】
いくつかの例では、バンド118はまた、先端セクション210の編組の近位端212と細長シャフト110の遠位端との間のカテーテル100の連結構造を提供することができる。この接合部は、異なる材料及び複雑な編組構成を、カテーテルの近位部及び遠位部に使用し、比較的低い製造コスト及びより高い歩留まりで連結することを可能にする。近位細長シャフト110及び先端セクションの編組は、いくつかの所望の長さ及びパターンのいずれかに対して別々に迅速に製造される。カテーテル長が多くの設計において典型的な1320mmである場合、先端セクション210は、長さ218が約100mmであり得、1220mmのシャフト長130を近位ルアーで終端させる。より複雑な幾何学的形状又はより緩やかな剛性の移行の場合、先端セクションは、より近位のマーカバンド118位置で820mmのシャフトと結合される長さが最大約400mmであり得る。
【0063】
図6は、細長シャフト110の最近位領域の断面を示す。シャフトの支持体を構成する複数の編組セグメント120は、セル126の周方向に細長リングを有する比較的高密度の織りを有して、より近位の本体ジャケット160により高い剛性を与えて良好な支持を提供することができる。編組セグメント120は、ワイヤの半分が一方向(例えば、時計回り)に巻き付けられる一方、ワイヤの他方の半分が対向方向に巻き付けられるように寸法安定性を有することができる。構造は、引張伸長に抵抗し、破裂強度を改善するために、編組の下に延在する螺旋コイルなどの他の支持部材を有することができる。内側ライナ115は、吸引中に内部ルーメン116内にいかなる弛み又は他の構造的な突出部も含まない低摩擦内面を提供することができる。内側ライナ115に加えて、又はその代わりに、シャフトの内面及び外面の両方の一方に親水性コーティングを使用することもできる。
【0064】
シャフトの耐捩れ性は、部分的に、外側ポリマー本体ジャケット160と協働する編組セグメント120の構造によるものである。編組PPI、ピッチ、及びセル角度を調整し、他のライナ及び/又は外側ジャケット材料の事前延伸又は短縮と組み合わせて、長手方向剛性及びシャフトの異なる部分を曲げるのに必要な力を効果的に設定することができる。近位シャフトの編組セグメント120は、約100~約170の範囲のPPIを有することができる、又はコイルを下に配置する場合、コイルが低編組PPIの改善された可撓性を利用しながら、60PPI編組の耐捩れ性を向上させるため、60のPPIを使用することができる。編組PPIは、60PPI未満で最も硬く、60PPIで最も可撓性があり、60PPI超で徐々に硬くなる傾向にあるが、170のより高いPPI値は、依然として40PPIの編組よりも可撓性が高い。PPIが高いほど、耐捩れ性は向上する。シャフトのこの領域の近位編組角度134は、約140度~約170度の範囲であり得る。
【0065】
トルク伝達性及び耐捩れ性は、2つのワイヤが並んで2つのワイヤの下を通過し、次いで2つの他のワイヤの上を通過する2本取りダイヤモンドパターンのステンレス鋼ワイヤを使用することによって得ることができる。ヘリンボンパターン又は平坦ワイヤはまた、より低いプロファイル断面に利用され得る。例えば、平坦編組は、同じ断面積の円形編組と同様の剛性を提供しながら、プロファイルを低減することができる。
【0066】
ジャケット160は、可撓性を追加するために、遠位方向に段階的により軟質な材料へと徐々に移行させることができる。限定ではなく例として、図示されるシャフト部は、近位端112から有意な距離(約1000mm)に及び、約72ショアDの硬度を有するPebax、TR55、ML21、又は同様の材料であり得る最近位ジャケット162を有することができる。次に遠位のジャケット164は、約60mmに及び、63Dの範囲の硬度を有するPebax又は同様のエラストマーで構成することができる。第3のジャケット166は、更に50mm延在し、約55DのPebaxであり得る。カテーテルの近位端及び最遠位端からのジャケットは、ハブ近傍で85Dと先端部の20Aとの間の硬度を有することができる。
【0067】
大ボアのカテーテルの低剪断先端セクション210の例示的な内部構成の拡大部分断面図を図7に示す。より近位管状セクション211及び当該セクションの遠位拡張性セクション213は、細長シャフト110とほぼ同じ公称内径113を有することができる。複数の編組220は、特に、特に軟質で可撓性の高いポリマー又はより構造の少ない混合物が選択される領域において、外側先端ジャケット182、184に良好な支えを提供することができる。
【0068】
先端部の編組セクション220のワイヤは、ニチノール、DFT、又は急な曲げに展開されたときの可撓性及び堅牢性が改善された別の形状記憶スーパー弾性合金であり得る(DFTワイヤの使用は、形状記憶特性を維持しながら、先端セクションの放射線不透過性も付与することができる)。ループ状端部はまた、視認性を高めるための放射線不透過性スリーブ又はコイルを含むことができる。したがって、編組は、カテーテルの内径と同じ内径113を有し、一定の公称外径217を有することができ、それにより、カテーテル100は、少なくとも0.002インチ大きい内径を有する外側カテーテルを通って前進することができる。超弾性材料の編組ワイヤを使用することの追加の利点は、可撓性又は破砕強度などの望ましい性能特性を犠牲にすることなく、カテーテル壁が先端セクション210に対して比較的薄く維持され得ることと、カテーテルルーメンが捩れを生じさせる力を受ける場合に回復することができることである。
【0069】
前述のように、編組ワイヤは、図示されるように近位方向で自身の上で反転し238、先端編組セクション220の遠位端214において遠位フープ230を形成することができる。これは、単一のワイヤが別の単一ワイヤの下を通過し、次いでその上を通過する1本取りの半ダイヤモンドパターンで編組を形成する。したがって、個々のワイヤがフープ230を形成するため、使用されるワイヤを少なくすることができる。フープは、鋭利な編組端部が、使用中に外側ジャケットのポリマー封止を通って移動する可能性を排除する。編組を追加で補強するために、2つ以上のワイヤを一緒に結び付けることもできる。
【0070】
カテーテル支持編組(すなわち、細長シャフト110及び先端セクション210の両方)全体を、ループ状遠位フープ230を用いて、近位端112から遠位端214まで延在する1つの材料の単一の一体型編組とすることが可能である。しかしながら、合理的な歩留まりで長さが400mmを超える編組でフープ230を製造することは困難である。最大400mmの長さの編組220を有する遠位先端セクション210を製造し、図5に示すような近位マーカバンド118などの接合部において細長本体の単純な近位編組120に接合することがより実現可能であり得る。先端部のワイヤのようなニチノール編組ワイヤを近位編組に使用することができるが、軸方向剛性及びより安価なコストのために、より安価なステンレス鋼ワイヤをこれらの領域で使用することができる。
【0071】
先端セクション210を構成する複数の編組220は、閉鎖セル226の外周リングを形成することができる。セル226は、編組ワイヤが互いに対して摺動する際に変形し、遠位拡張性セクション213が血塊を取り込むことによる力から径方向に拡張したときに軸111に対して円周方向に伸長し、拡張性セクションが縮小したときに長手方向軸に対して軸方向に伸長し(平坦化し)、血塊を通過したときに形状を回復することができる。セル226は、図示されるように、頂点がより均一な変形/拡張を容易にすることを可能にするために実質的にダイヤモンド形状とすることができる、又は編組ワイヤが非直線形状に従う場合、何らかの他のプロファイルをとることができる。
【0072】
編組ワイヤの交差は、セル226の各々の頂点に編組角度231、232、233、234を形成し、これは、先端部の異なる部分の拡張能力を定義するのに役立つ。セル角度の変化は、血塊吸引中の先端部の異なる拡張度を可能にする。一般に、編組角度は、遠位端214に近づくにつれて小さく、かつ急になり、血塊と相互作用して、血塊を受け入れるように拡張するのを助けることができる。
【0073】
公称角度は、先端部の所望の競合する能力(送達及び標的部位性能)のバランスをとるように選択することができる。一般に、編組角度が小さいほど(例えば、125度未満)、血塊が取り込まれるときに大きな又は堅固なフィブリンに富む血塊の輪郭に適合する拡張能力が大きくなる。この追加の拡張は、より硬く可撓性の少ないフレーム又はより硬いポリマー材料を利用するものを有する他の先端部と比較するとき、より良好な血塊管理を可能にし、剪断のリスクを低減させる。更に、より小さい角度は、外側ガイドシースを通過するときの潰れへの抵抗を低下させ、力伝達を向上させる。しかしながら、これらの特性は、吸引中の先端部の潰れに抵抗するために、いくらかの柔軟性及び径方向力を犠牲にする可能性がある。
【0074】
代替的に、大きい編組角度は(ワイヤがより径方向に位置合わせされている場合)、吸引下での先端部の潰れに抵抗するために、拡張状態でより良好な圧縮フープ強度を提供することができる。より鈍角のセル角度はまた、カテーテル100が(ガイドシースからの展開後)血管を通って独立して前進したときに、拡張された先端部が圧縮下で径方向に拡張する能力を制限することができる。これは、拡張先端部が、特に急峻な曲がりにおいて、及び徐々に直径が小さくなる血管を通して押し込まれるときに、血管内の引っ掛かりを回避することを助けることができる。
【0075】
例として、第1の最近位編組角度231は、約150~160度であり得る。それぞれ約105度及び100度のより遠位の編組角度232、233に移行することによって、更なる拡張能力を組み込むことができる。最遠位最終編組角度234は、65~95度であり得る。
【0076】
遠位端214の近傍に放射線不透過性を与えるため、長さ約0.8mmの遠位マーカバンド121を最遠位先端ジャケット184のすぐ近位に含めることができる。マーカバンド121は、白金又は別の好適な貴金属であり得、軸方向スパイン(図示せず)上に圧着され得、先端セクションの編組220は、バンド上に延在することができる。バンド121はまた、先端セクション210の遠位端214から約5mm及び最大10mmの範囲で、内側ライナ115の遠位端119又はその近くに位置することができる。追従性を高めるために非常に短い先端部が望まれる場合、この距離はより短くてもよい(約2~3mm)。
【0077】
最も広く採用されているガイド及び/又はシースの多くと適合するために、カテーテル細長シャフト110及び未拡張先端セクション210の公称内径113は、それに応じてサイズ設定され増減され得る。例えば、直径約2.0mmの血管を標的とする5Frカテーテルは、約0.054インチの内径113を有し得る。同様に、直径約2.3~3.4mmの血管を標的とする6Frカテーテルは、約0.068~0.074インチの内径113を有し得る。より遠隔の血塊のためのより大きな8Frカテーテルは、約0.082~0.095インチの内径113を有することができる。理論的には、ボア内径の上限はないが、実際には、鼠径部穿刺サイズを10Fr未満に保つことが好ましい。
【0078】
より非外傷性の血管横断プロファイルを作成するために、最遠位先端ジャケット184は、先端セクション編組220の遠位フープ230を越えて張り出すように距離186にわたって延在することができる。その距離は、約0.1~1.0mm、又はより好ましくは0.5~0.8mmの範囲であり得る。ジャケット184は、カテーテル上のジャケットの中で最も軟質であり得、カテーテル長の遠位約90mmまでを覆うことができる。ジャケットの最終的な柔軟性は、編組の破砕抵抗及び拡張挙動とバランスをとる必要がある。一例では、約40ショアAの硬度を有するNeusoftをリフローして、最遠位先端ジャケット184を形成することができる。場合によっては、更に軟質の約20~40ショアAの層を使用することができる。次の近位外側ジャケット182は、25ショアDの領域の硬度を有するPebaxであってもよい。
【0079】
いくつかの例では、カテーテルルーメンの内面の滑らかな送達を可能にするために、PTFEなどの低摩擦若しくは潤滑性材料、又はSurmodics、Harland、Biocoat、又はCovalonによって提供されるような市販の潤滑性コーティングでコーティングされ得る。このコーティングは、補助装置の通過を容易にし、捕捉された血塊が、吸引及び/又は血塊回収装置でカテーテルを通して近位方向に引き込まれるのを助ける。
【0080】
図8A及び図8Bに示される例は、低剪断先端セクション210を構成する複数の編組セクション220が、どのように可変のPPI及び編組角度を有することができるかを示す。16個のニチノールワイヤを1本取りの半ダイヤモンドパターンで使用して、8つの遠位フープ230を生成することができる(強度を得るために2つのワイヤが1つにグループ化される)。別の例では、24個のワイヤを使用して12個の遠位フープを作成することができる。図示されるように、近位のセクションほど、遠位領域よりも大きいPPIを有することができる。一般に、編組のPPIは、先端部210の特定のセクションの拡張性と逆の関係を有する。より大きなPPIを有する領域ほど、より高い可撓性を有し得るが、拡張能力は限定される。同様に、より低いPPI値を有する領域ほど、著しく大きな拡張能力のためにフープ強度が犠牲になる。
【0081】
編組セクション220は、編組特性及びセグメントの拡張能力への寄与によってセグメントに細分することができる。最近位セクション219の編組は、本明細書に記載の「剛性」又は「より近位の」セクションであり得る。中間拡張性セクション221は、交互に、「中間」又は「中央」セクションとして所望され得る。同様に、最大径方向拡張能力を有する遠位拡張性セクション213は、「最小剛性」又は「より遠位」セクションと称され得る。
【0082】
最遠位セル228は、最大拡張能力に対応する最小セル角度を有することができる。これは、低剪断先端部の品質のいくつかと合致しており、血塊をすぐに完全に吸引することができない場合であっても、処置の残りの間に保護され得るように、血塊を首尾よく取り込むことを優先することができる。図8A及び8Bは、それぞれ65度及び95度の最終セル角度を示す。一般に、110度以下の編組角度は、圧縮下で径方向の拡張をもたらすことが見出された。したがって、拡張ゾーンのサイズは、近位側で110度以下の角度が維持される長さを変化させることによって調整することができる。代替的に、拡張ゾーンは、ある長さにわたって可変の編組角度を有することができる。
【0083】
設計は、血塊管理特性に更に対応するために比較的長い軸方向長さ216を有する拡張可能なセクションを有することができる。図8Aは、遠位拡張性セクション213及び中間拡張性セクション221の長さ217にわたって約154度まで近位方向に増加する遠位拡張性セクション213の編組角度を示す。より長い中間拡張性セクション221は、セル角度(例えば、105度から最終的には154度まで)及びPPI(約40から最大140)を近位方向に漸進的に増加させて、取り込まれた血塊がセクションを移行する際に徐々に圧縮されることを可能にすることができる。しかしながら、長いセクションほど、血塊が近位方向に移動するにつれて、可撓性が低くなり、軸方向負荷下で伸長又は短縮しやすくなり得る。代替的に、図8Bの例は、先端部の実質的により短い拡張長222にわたるはるかに迅速な移行を示す。拡張性セクションの短い長さ222は、フープ強度及び吸引下での潰れへの抵抗を改善することができる。
【0084】
先端セクションの特定の設計にかかわらず、本明細書に開示されるカテーテル設計のいずれもまた、1つ以上のステントリーバと共に使用され得ることに留意されたい。ステントリーバの引き込みと大きなカテーテルボアを通じた効率的な吸引との組み合わせは、共に作用して、血塊を除去する際の最初の通過成功の可能性を高めることができる。カテーテルはまた、吸引真空を血塊面に誘導することもでき、一方、ステントリーバは、複合血塊(脆砕性領域及びフィブリンに富む領域から構成される)をまとめて保持して塞栓を防ぎ、血塊を血管壁から取るのを助けることになる。ステントリーバは、カテーテル内で圧縮されるときに、血塊を安定化させて近位方向に付勢するのに役立ち得る。
【0085】
開示された設計を利用してカテーテルを製造するための方法が、図9A図9Hに示されている。図9Aは、支持貼付マンドレル50上に位置決めされた低摩擦ライナ115を示す。典型的な6Frカテーテルの場合、マンドレルは、約0.071インチの外径を有することができる。マンドレルは、これらの用途に一般的に使用されるように、多くの場合、銀めっき銅(silver-plated copper、SPC)であり得る。代替的に、カテーテルの組立完了後にマンドレルを除去することができるように、特に、延伸して公称外径をネックダウンする延性材料(PEEKなど)を使用することができる。更なるマンドレル材料は、ナイロンコーティングされた銅又はナイロンコーティングされた鋼を含み得る。
【0086】
内側ライナ115は、非常に薄い壁厚(0.00075インチ)を有するフィルム鋳造PTFEなどの潤滑性低摩擦材料であり得、結合を助けるためにエッチングされた表面及び/又は外側結合層を含むことができる。ライナは、ステントリーバなどの吸引及び/又は血塊回収装置を用いて、血塊がカテーテルを通して近位方向に引っ張られるのを助けることができる。ライナはまた、カテーテルのルーメンを通した標的部位へ関連装置の初期送達を助けることができる。選択された材料に応じて、ライナ材料の方向性を変化させるために(例えば、ライナ材料が繊維を有する場合、課された延伸は、名目上等方性スリーブをより異方性の長手方向に配向された組成物に変化させることができる)、必要に応じて壁の厚さを低減するように延伸することもできる。
【0087】
軸方向スパイン117は、編組の下の結合層に沿って位置付けられて、シャフトの引張伸長を打ち消すことができる。スパインは、Zylon又は別のLCPなどのねじ式形態とすることができ、その結果、圧縮時に硬直せず、断面プロファイルの低減のために編組の下で平坦化することができる。LCPは、最も高い引張強度を提供することができる一方、ステンレス鋼スパイン又はニチノールは、いくらかの横方向可撓性を犠牲にして最良の押し込み性を提供することができる。別の選択肢として、LCPスパインのいくつかは、ステンレス鋼及び/又はニチノールスパインで置き換えることができる。
【0088】
最初に、スパインの長さは、例示されるように、内側ライナ及び貼付マンドレルの遠位端を十分に越えて遠位方向に延在し、製造中の更なる組立工程を補助することができる。他の例は、引張強度を追加するために、180度離間した2つのスパインなどの追加のスパインを使用することができる。ラップePTFEライナを使用して、優れた横方向の可撓性を維持しながら引張伸長を低減することもできる。
【0089】
細長本体シャフト110の編組骨格120は、図9Bの内側ライナ115及び貼付マンドレル50の少なくとも近位部の周りに位置付けられている。編組は、カテーテルの近位端上のルアー(図示せず)から遠位方向に延在して、内側ライナ115の遠位端の近位に位置付けられた放射線不透過性の近位マーカバンド118と重なり合うことができる。遠位マーカバンド121は、スパインの適用前又は後に、内側ライナの遠位端又はその近傍に追加することができる。
【0090】
低剪断先端セクション210を支持する複数の編組220は、スパイン117の遠位部をガイドとして使用して、貼付マンドレル50及び内側ライナ115の上に近位方向にねじ込まれる。いくつかの例では、先端セクションの編組220は、追加の靭性及び可撓性のためにニチノール又は別の形状記憶超弾性合金のワイヤから切断することができる。先端セクション編組220は少なくとも、シャフトの編組120とほぼ同じサイズの公称内径及び公称外径を有することができる。
【0091】
シャフト110の周りの複数の編組120は、それらの遠位端で近位マーカバンド118と重なり合うことができる。同様に、先端セクション編組220の最近位部は、それらの近位端でバンド118と重なり合うことができる。両方の重なり合う編組は、スパイン117上に配置され、マーカバンド118に溶接することができる。いくつかの例では、編組セクションは、溶接される前に追加の強度を得るために一緒に織り合わせることができる。他の例では、溶接接合部に加えて、又は溶接接合部の代わりに接着剤を使用することができる。代替的に、編組セクションは、直接溶接されるか、又は高い引張強度のより近位(先端の約200mm~300mmの近位)のポリマージャケットに接合されてもよい。このジャケットは、カテーテルの所望の最終剛性に応じて、例えば、Pebax25D又はPebax72Dであり得る。
【0092】
シャフト110の近位編組120はまた、ニチノールから製造することもできるが、近位マーカバンド118における編組の中間接合部の使用により、軸方向剛性の増加及びコストの低減のために、ステンレス鋼又は同様の材料から製造することが可能である。このことは、先端セクション210の遠位ニチノール編組のより複雑な設計特徴を、バンド118の標準的な近位編組及び/又はコイルセクションと低コストで接合することを可能にするという利点をもたらす。この柔軟性は、複雑なセクションと標準的なカテーテルシャフトセクションとの分離を通じて製造歩留まりを増加させる。マーカバンド118のスリーブのための白金(ステンレス鋼及びニチノールの両方に溶接することができる)などの特定の金属化学物質の使用は、接着剤又は他の手段の使用と置き換えられて、より堅牢な接合部を作成することができる。シャフトの可撓性への影響を最小限に抑えるために、バンドを比較的短く、例えば0.3~1.0mmに保つことができる。
【0093】
スパイン117の軸ねじは、図9C図9Dに示されるように、先端セクション210のセル226の遠位編組開口部を通って引っ張られ、近位でループされて、スパインをカテーテルの遠位領域により確実に接続することができる。ループ229は、編組パターン222の上に延在する外側スパイン部251及び編組の下に延在する内側スパイン部252の両方を作成することができる。ループ229は、図9Dに見られるように、先端部の遠位端214から距離239だけ近位に、又は内側ライナ115の遠位端119に位置付けることができる。代替的に、ループ229は、先端セクション210の最遠位セル228まで又は最遠位セル228を通ってより遠位の位置にあってもよい。スパイン117がスパイン自体の上で折り返される距離は、短く保たれてもよい(<5mm)、又は約50mmのはるかに大きな距離であってもよい。多くの例では、ループ229で反転された後、スパイン117は、カテーテルシャフトの近位端まで戻ることができる。
【0094】
図9Dは、スパインが折り返されると、軸方向の一連の別々の外側ポリマージャケット押出物160が、細長シャフト110上の所定位置にリフロー又は積層され得ることを示す。加えられた熱は、外側ポリマーが、細長本体の編組間及びスパイン117の周囲の間隙部位を埋めることを可能にすることができる。この流れがジャケットを軸方向に固定するのに役立ち得るため、ジャケットは遠位方向に摺動することができない。細長本体110上の軸方向位置に応じて、ジャケット160は、交互に噴霧、浸漬、電気紡糸、及び/又はプラズマ堆積され得る。ジャケットは、好ましくは軸方向に連続し得るが、軸方向及び径方向の連続の組み合わせも使用され得る。ジャケットセグメント間の移行は、より緩やかな剛性の移行のために斜めの切断を含むことができる。
【0095】
好適なジャケット材料は、広範囲の機械的及び動的特性を有することができるPebaxファミリーのような熱可塑性エラストマーを含むことができる。ジャケット160は、異なるデュロメータ硬度及び/又は壁厚を有することができる。例えば、シャフトのより硬いより近位の部分は、約0.004インチの厚さ及び約72Dの硬度を有するジャケットを有することができる。対照的に、より高い可撓性を必要とするが、下にある支持編組がより低密度である遠位セクションは、0.006インチの壁厚及び約40Aの硬度を備えたジャケットを有することができる。本体ジャケットが所定の位置にある状態で、貼付マンドレルをアセンブリから取り外すことができる。
【0096】
図9Eは、アセンブリの遠位端214内に近位に装填されたツールの少なくとも一部上に適用された内側遠位ジャケット522を有するリフローツール52を示す。遠位先端セクションの支持編組フレームは、30ショアD(およそ80ショアA)未満の硬度を有するNeusoftなどの非常に軟質のジャケット材料を、それらの非外傷性の特性のために使用することを可能にすることができる。内側ジャケットは、薄くすることができ(例えば、約0.003インチ)、先端セクションに関してより均一な壁厚を得るために使用され、ルーメンが滑らかで閉塞されないように、編組の完全な封入を確保することができる。軟質の弾性外側ポリマー先端ジャケット184の押出部は、リフローツール52の外面、遠位拡張性セクション213の少なくとも一部、及び先端近位管状セクション211(図9F)上にねじ込む、又は延伸させることができる。代替的に、外側遠位ジャケット523の材料は、リフローツール52上に緩く嵌合するようにサイズ決定することができる。外側遠位ジャケットの壁厚は、組み合わされた遠位ポリマージャケットの最終壁厚が約0.006インチになるように0.003インチであり得る。ジャケットは、細長本体の近位外側ジャケットの遠位縁まで近位方向に延在し、遠位先端編組の編組フープ230の遠位端を超えて少なくとも数ミリメートル遠位方向に張り出すことができる。図9Gは、均質な遠位先端ジャケット180として融合するように先端セクションにリフローされる内側ジャケット層522及び外側ジャケット層523を示す。
【0097】
場合によっては、PTFE又は他の好適な低摩擦材料の一時的なスリーブを、予めリフローされたシャフト上に適用し、それが所定の位置にリフローされるときに遠位先端ジャケット180の近位流を制御及び阻止するために使用することができる。他の例では、熱収縮の層を外側ジャケット180の押出部の周りに位置決めして、リフロー又は積層中に、材料をリフローツール52の輪郭により良好に適合させることができる。完了すると、リフローツール52をアセンブリから除去することができ、必要に応じて、カテーテルの所望の遠位プロファイルが達成されることを確実にするために、過剰な材料をトリミングすることができる。取り外されると、内側ライナ終端部の遠位の内面の少なくとも遠位20cmを親水性コーティング524でコーティングすることができる。このコーティングを適用するために、浸漬コーティングなどのプロセスを使用することができる。
【0098】
図9Gは、遠位マーカバンド121の近位の完成した先端近位管状セクション211の一部の断面図である。近位管状セクション編組219は、上述した特性に類似する特性を有するパターンを有することができる。スパイン117は、外側セクション251が編組の上に延び、内側セクション252が編組の下に延びるように、近位で反転させ折り返すことができる。これらのセグメントは、製造中にスパインが編組の開口部を通して織られている場合、場所を入れ替えることができる。
【0099】
先端セクションの長手セクションの断面図を図10Aに示す。内側ライナ115の遠位端は、先端部の遠位端214から距離123をおいて位置付けることができる。この距離は、約5mmであることが多いが、遠位端214から最大25mmであり得る。スパインループ229は、内側ライナ115の遠位端及び遠位マーカバンド121の近くで反転して、外側セクション251及び内側セクション252を形成しているのが分かり得る。
【0100】
第2の複数の編組220は、先端ジャケット180内に封入され、遠位端214に近づくにつれて、相当低密度にすることができる。編組の遠位フープ230を形成するための編組反転部238の拡大図が、図10Bに示されている。フープ230は、径方向拡張又は血管系の急峻な屈曲下でジャケット180の穿刺のリスクを負わないように、広くかつ非外傷性であり得る。反転により、ワイヤは、1本取りパターンで近位方向に反対方向に螺旋状に織ることができる。
【0101】
本開示のカテーテルを使用して、身体血管から閉塞物を除去する場合、低剪断先端部を有する大ボアのカテーテルは、1つ以上の外側カテーテルを通って血管閉塞の近位位置に送達させることができる。階段状の直径の外側カテーテルを使用する伸縮式システムが図11及び図12に示されている。好ましくは、システム内の各カテーテルは、本明細書に記載されるような低剪断先端セクションを有し、それにより、血管閉塞に最終的に到達するときに、適切なサイズのカテーテルが血塊に適合して、血塊を首尾よく飲み込む最良の機会を有することができる。また、堅固な血塊が内側カテーテルのルーメンに付着する場合、外側カテーテルは、引き抜き用の導管として使用することができる。したがって、カテーテルは、3Fr、4Fr、5Fr、6Fr、7Fr、8Fr、及び9Frに適合するように供給され得る。ある範囲のカテーテルサイズを提供することにより、ユーザは、特定の患者の提示に対して最適に適合するサイズを選択することができる。
【0102】
理想的には、神経血管吸引の場合、カテーテルは、関連する血管サイズ範囲を覆い、鼠径部穿刺サイズを可能な限り小さく保つために(10Fr未満)、5Fr~9Frの適合性を提供することができる。大きなフランスサイズのカテーテルは、カテーテルのルーメンを通るより多くの流量を提供するが、本質的により硬く、曲がりくねった血管内、特にM2(中大脳動脈)位置までの遠位方向に前進することが困難である場合が多い。例えば、中大脳動脈閉塞の例の場合、外側カテーテル又はガイドシースは、頸動脈サイフォンの近位の内頸動脈内に位置付けられ得る。例えば、標的閉塞がM1血管内にある場合、外側カテーテルのうちの1つ以上は、これらの血管径の十分に近位の位置に維持される必要がある。
【0103】
図11は、最内吸引カテーテル530が、長手方向軸111の周りに同心円状に2つの外側吸引カテーテル540、550と共に使用されるシステムを示す。一例では、最内吸引カテーテル530は5Frであり得、次の外側吸引カテーテル540は6Frであり得、最後の外側吸引型カテーテルは8Frであり得る。この例は、以下の表の寸法をほぼ有することができる。
【0104】
【表1】
【0105】
理想的には、カテーテルのセットは、任意の所与のカテーテルの外径と次のより大きなカテーテルの内径との間に約0.001~0.006インチの間隙が存在するようにサイズ決定される。これは、滑らかな横断プロファイルのために血管側の分岐部又は他の障害物上での引っ掛かりが生じないように、血管を通って追跡するときに直列の2つの連続するカテーテルの外径と内径との間で生じ得る段部を最小限に抑える。
【0106】
図12は、どのようにしてこのサイズ範囲のカテーテルが、血塊40に到達するために、血管系10内で同時に伸縮自在に使用され得るかを示す。ユーザは、少なくとも2つのカテーテルを、治療位置まで伸縮自在に共に前進させることができ、最小径のカテーテル530のサイズは、標的部位の血管径13に合わせて選択される。漸進的に小さくなる血管直径12、14が、経路に沿って遭遇され得る。血塊が内側カテーテル530の内径よりも大きい内径を有する血管内に位置する場合、血管が取り込まれるときに内側カテーテルの先端部が血管内で安全に拡張することができ、それにより、先端部が血管との吸引封止を生成するか、又は血管とカテーテル先端部との間に小さな間隙を残す。堅い血塊が内側カテーテル530のシャフト内に詰まる場合、より大きなサイズの外側カテーテル540、550がバックアップとして機能することができ、次いで、次のカテーテルのシャフトを通して引き込むことができる。
【0107】
例えば、標的部位に到達するためにより大きい直径のカテーテルサイズが選択されるが、蛇行のために役に立たない場合、より小さい直径のカテーテル530が、大きいカテーテル540のルーメンを通って前進し、遠位方向に移動し、治療場所に到達することができる。例えば、6Frカテーテル540が近位M2内の血塊に到達するために使用されるが、近位M1の血管までしかナビゲートすることができない場合、5Frカテーテル530が、近位M2に到達するように伸縮自在に前進させることができる。6Frカテーテル540は、5Frカテーテル530を迅速に前進させることができるように、アクセスを維持することができる。血塊40が5Frカテーテルを用いて除去された後、6Frカテーテルを使用して、血管開存性をチェックし、断片が残っている場合、6Frカテーテルを介して又は血塊回収装置/ステントリーバとの共吸引を通じて吸引することができる。
【0108】
血塊回収装置と共に使用されるとき、カテーテルルーメンに完全に取り込むことができない硬い血塊は、カテーテル先端部の血塊回収装置によって所定位置に局所的に保持され得る。次いで、装置、血塊、及び内側カテーテルは、回収のために外側カテーテルの内径に、又は必要に応じて連続的に大きいカテーテルに引き込まれ得る。この手順中に、血塊回収装置によって血塊を安定化し支えることができる。
【0109】
場合によっては、システム内の外側カテーテルのうちの1つ以上は、図13に示されるように、折り畳み可能なスーパーボアの漏斗カテーテル560、又は自己拡張型先端部を有する大ボアのカテーテルであり得る。外側カテーテルから展開されると、自己拡張型先端部は、径方向に拡張して、血塊40の取り込み前に吸引のためにより大きな内径561を有する漏斗形状を形成することができる。多くの場合、漏斗形状は、吸引中にスーパーボア先端部の近位の流体が自己拡張型先端部に引き込まれるのを遮断するために、同様のサイズの血管で封止するようにサイズ決定され得る。
【0110】
前述の伸縮例と同様に、標的部位に到達するためにスーパーボア漏斗カテーテル560が選択されるが、蛇行により標的位置まで到達することができない場合、低剪断先端部を有する、より小さい一定の外径カテーテル530が、スーパーボアカテーテルのルーメンを通って前進し、より遠位に移動し、治療場所に到達することができる。
【0111】
例えば、0.140インチの漏斗内径を有する8Frの圧潰可能なスーパーボアカテーテルが、内部頸動脈及び分岐部内の大きな血塊を吸引及び回収するために使用される場合(又はM1血管内の6Frカテーテル)、ユーザは、血管開存性をチェックするために造影剤を注入する。いくつかの血塊断片がより遠位の血管内に残っていることをユーザが発見する場合、圧潰可能なスーパーボアカテーテルを前進させて、より遠位の位置で断片を吸引することができる。蛇行によりアクセスを達成することができない場合、又は漏斗外径が血管内径にほぼ等しくなる点に到達した場合、より小径の6Fr(又は5fr)の内側カテーテルの低剪断先端部を、より遠位の血管位置に伸縮自在に迅速に前進させて、吸引を介して又はステントリトリーバとの共吸引を介して血塊を回収することができる。内側カテーテル及び血塊がスーパーボアカテーテルを通して引き込まれると、一方を他方の中に引き込むプランジャ型の吸引効果は、スーパーボアカテーテルの口を通して吸引するように作用して、当初の血塊回収プロセスから取り除かれた可能性のある断片が回収されることを確実にすることができる。吸引はまた、スーパーボアカテーテルのルーメンに直接適用することができ、それにより、処置中にそこを流れる逆向きの流れを維持することができる。
【0112】
図14は、本開示の拡張性低剪断先端部を有するカテーテルを使用して、血管内の血塊を除去するための方法工程を示すフロー図である。方法14000は、最内吸引カテーテルと複数の外側吸引カテーテルとを備える同軸カテーテルシステムを、標的血塊に向かって前進させる工程14010を有することができる。最内カテーテルは、標的血管の予測内径とほぼ同じ外径を有するようにサイズ決定することができる。システム内のカテーテルは、吸引されている大きな堅い血塊によって衝突されたときに受動的に拡張することができる、本明細書に記載の低剪断先端部を有することができる。
【0113】
工程14020では、外側吸引カテーテルのうちの少なくとも1つは、大きなルーメン及び径方向自己拡張型遠位先端部を有するスーパーボア漏斗カテーテルであり得る。漏斗先端部は、血管内の近位流体を封止し、血塊が先端に引き込まれるときに血塊を徐々に圧縮することができる外径を有することができる。システム内の連続する吸引カテーテルの各々の位置は、血管が損傷しないように、それぞれの公称外径が横断される血管の内径に近似するときの位置を維持することができる(工程14030)。カテーテルのうちの少なくとも2つを標的部位の近位位置に前進させることができ、それにより、堅い血塊が内側カテーテルのルーメン内に詰まっている場合、外側カテーテルは、内側カテーテル及び捕捉された血塊を引き抜くためのバックアップとして機能することができる。
【0114】
漏斗カテーテルを前進させて、標的血塊を吸引することができる。工程14040及び14050では、拡張先端部の外径が横断される血管の内径に到達する場合、低剪断先端部を有するより小さい直径の内側カテーテルを、標的部位に到達するようにルーメンを通して遠位に方向付けることができる。血塊は、内側カテーテルの口に吸引され得、これは、血塊の堅固な部分との相互作用によって、工程14070での径方向拡張を可能にして、血塊を覆い、詰まり又は剪断から保護することができる。
【0115】
内側カテーテル及び捕捉された血塊が外側漏斗カテーテル内に引き抜かれると、内側カテーテルの拡張セクションは、場合によっては、より大きい外側漏斗カテーテルの内径に等しいか、又はわずかに大きくなり得る。つまり、漏斗カテーテルを通じて内側カテーテルを引き込むことで、空間が内側カテーテルによって空にされるときに、漏斗カテーテルの口を通る吸引を生成することができる(工程14090)。吸引は、漏斗カテーテルのルーメンを通して血塊から断片を引き込み、下流への移動を防止することができる。必要に応じて、遠位での塞栓が懸念される場合、吸引は、システム内の他の外側カテーテルのうちの1つ以上を通じて方向付けることができる。
【0116】
本発明は、記載された例に必ずしも限定されず、構成及び詳細において変化し得る。「遠位」及び「近位」という用語は、前述の説明を通して使用され、処置している医師に対する位置及び方向を指すことを意図する。したがって、「遠位」又は「遠位に」は、医師に対して離れた位置又は医師から離れる方向を指す。同様に、「近位」又は「近位に」は、医師に対して近い位置又は医師に向かう方向を指す。更に、文脈が明らかに既定しない限り、「a」、「an」、及び「the」という単数形は、複数の指示対象を含む。
【0117】
本明細書で使用される場合、任意の数値又は数値の範囲に対する「約」又は「およそ」という用語は、構成要素の部分又は構成要素の集合が、本明細書において説明されるその意図された目的に沿って機能することを可能にする、好適な寸法の許容誤差を示すものである。より具体的には、「約」又は「およそ」は、列挙された値の±20%の値の範囲を指してもよく、例えば「約90%」は、71%~99%の値の範囲を指してもよい。
【0118】
例示的実施形態について記載する際、明確にするために、専門用語が利用されている。その結果、全ての可能な組み合わせが列挙されているわけではなく、かかる変更例は、多くの場合、当業者には明らかであり、以下の特許請求の範囲の範囲内にあることが意図される。各用語は、当業者によって理解されるその最も広い意味を有することを企図し、本発明の範囲及び趣旨を逸脱することなく、同様の目的を実現するために同様の様式で作用する全ての技術的な均等物を含むことが意図される。方法の1つ又は2つ以上の工程への言及は、追加の方法工程又は明示的に識別されたそれらの工程間に介在する方法工程の存在を排除しないことも理解されたい。同様に、方法のいくつかのステップは、開示される技術の範囲から逸脱することなく、本明細書に述べられる順序とは異なる順序で実施することができる。
【0119】
〔実施の態様〕
(1) カテーテルであって、
長手方向軸と、
近位端と、遠位端と、ルーメンと、内側ライナと、セルの外周リングを含む第1の複数のワイヤ編組セグメントとを備える近位細長シャフトと、
前記近位細長シャフトの前記遠位端に接続された遠位先端セクションであって、近位管状本体と、送達構成及び拡張血塊捕捉構成を備える遠位拡張性セクションと、セルの外周リングを含む第2の複数のワイヤ編組セグメントと、を備える、遠位先端セクションと、
を備え、
前記遠位拡張性セクションの前記遠位端が、前記第2の複数のワイヤ編組セグメントのワイヤが反転して、前記第2の複数のワイヤ編組セグメントを通って折り返す遠位フープを備え、
前記遠位拡張性セクションが、前記拡張血塊捕捉構成における、取り込まれた血塊によって径方向に衝突されたときのより大きい拡張内径と、前記送達構成におけるより小さい送達内径とを更に備える、カテーテル。
(2) 前記第1の複数のワイヤ編組セグメントの少なくとも一部が、第1の材料組成を有するワイヤを備え、前記第2の複数のワイヤ編組セグメントの少なくとも一部が、前記第1の材料組成とは異なる第2の材料組成を有するワイヤを備える、実施態様1に記載のカテーテル。
(3) 前記近位細長シャフトと前記先端セクションとの間の接続部が、前記近位細長シャフトの前記遠位端と前記先端セクションの前記近位端とに結合された近位マーカバンドを備える、実施態様1に記載のカテーテル。
(4) 前記第1の複数のワイヤ編組セグメントの少なくとも一部と前記第2の複数のワイヤ編組セグメントの少なくとも一部とが、一体型編組として形成されている、実施態様3に記載のカテーテル。
(5) 前記第1の複数のワイヤ編組セグメントの各セルが、第1の編組セグメント編組角度を含む、実施態様1に記載のカテーテル。
【0120】
(6) 前記第2の複数のワイヤ編組セグメントが、少なくとも第1の編組角度及び最終編組角度を備え、前記最終編組角度が、前記第1の編組角度よりも小さい、実施態様1に記載のカテーテル。
(7) 前記第2の複数のワイヤ編組セグメントの最遠位セルが、約40度~約120度の範囲の最終編組角度を含む、実施態様5に記載のカテーテル。
(8) 前記第2の複数のワイヤ編組セグメントの前記最遠位セルが、約85度~約95度の範囲の最終編組角度を含む、実施態様5に記載のカテーテル。
(9) 前記近位細長シャフトの前記近位端から遠位方向に延在し、前記第2の複数のワイヤ編組セグメントのセルの開口部を通ってループ点で反転する軸方向スパインを更に備える、実施態様1に記載のカテーテル。
(10) 前記1つ以上のポリマー先端ジャケットが、約20ショアA~約72ショアAの範囲の硬度を有する最遠位先端ジャケットを含む、実施態様9に記載のカテーテル。
【0121】
(11) 前記内側ライナの前記遠位端と前記遠位先端セクションの前記遠位端との間に軸方向長を更に有し、前記軸方向長が約1mm~約10mmである、実施態様1に記載のカテーテル。
(12) 前記遠位先端セクションが、約100mm~約400mmの範囲の長手方向長を更に備える、実施態様1に記載のカテーテル。
(13) スパインループ点が、前記内側ライナの前記遠位端に軸方向に近接して位置する、実施態様9に記載のカテーテル。
(14) 前記軸方向スパインが、前記第1の複数のワイヤ編組セグメントのセル及び前記第2の複数のワイヤ編組セグメントのセルと織り合わされている、実施態様9に記載のカテーテル。
(15) 前記第2の複数のワイヤ編組セグメントの少なくとも一部が、ニチノールワイヤを含む、実施態様2に記載のカテーテル。
【0122】
(16) 標的血管内の血塊を治療するための方法であって、前記方法が、
最内吸引カテーテルと複数の外側吸引カテーテルとを含むカテーテルシステムを前記血塊に向かって前進させる工程であって、前記カテーテルシステムの少なくとも前記最内吸引カテーテルが、
公称内径を含み、かつ前記血塊を取り込むことによる力によって受動的により大きい拡張内径まで径方向に拡張するように構成されたワイヤ編組構造と、
連続する最外吸引カテーテルの各々の外径が、横断されている血管の内径にほぼ等しくなる、前記複数の外側吸引カテーテルの各々の位置と、
を有する、工程と、
前記標的血管の内径にほぼ等しい公称外径を有するようにサイズ決定された前記最内吸引カテーテルを、伸縮自在に前記カテーテルシステムを通して前記血塊の近位の位置まで遠位方向に前進させる工程と、
前記最内吸引カテーテルを通して吸引して、前記血塊を取り込む工程と、
前記血塊が近位方向に取り込まれるときに生成される局所的な径方向力を利用する工程であって、前記最内吸引カテーテルの前記ワイヤ編組構造を前記最内吸引カテーテルの公称外径よりも大きい外径に径方向に拡張させる、工程と、
前記カテーテルシステムを通して、前記最内吸引カテーテルと捕捉された血塊とを近位方向に引き抜く工程と、を含む、方法。
(17) 前記外側吸引カテーテルのうちの1つ以上として、径方向自己拡張型遠位先端部を有する漏斗カテーテルを選択する工程を更に含む、実施態様16に記載の方法。
(18) 前記径方向自己拡張型遠位先端部が遠位方向に拡張された状態で前記漏斗カテーテルを前進させる工程と、
前記径方向自己拡張型遠位先端部の前記外径が、横断されている血管の内径と一致するか、又は前記漏斗先端部が前記先端部よりも小さい直径を有する血管を通って前進するときに従うことができる血管サイズ範囲の下端に到達している、前記径方向自己拡張型遠位先端部を有する前記漏斗カテーテルの位置を維持する工程と、を更に含む、実施態様17に記載の方法。
(19) 前記漏斗カテーテルのより小さい内径を通して取り込まれた前記血塊と共に前記径方向に拡張された最内吸引カテーテルを近位方向に引き込むことによって吸引力を発生させて、残りの血塊断片を吸引する工程を更に含む、実施態様17に記載の方法。
(20) 前記複数の外側吸引カテーテルのうちの1つ以上を用いて吸引して、残りの血塊断片を除去する工程を更に含む、実施態様16に記載の方法。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図9F
図9G
図9H
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14
【外国語明細書】