(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023070178
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 11/00 20060101AFI20230511BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20230511BHJP
C08K 5/18 20060101ALI20230511BHJP
C08K 5/3437 20060101ALI20230511BHJP
C08L 9/00 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
B60C11/00 B
B60C1/00 A
B60C11/00 D
C08K5/18
C08K5/3437
C08L9/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022177641
(22)【出願日】2022-11-04
(31)【優先権主張番号】P 2021182205
(32)【優先日】2021-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 和幸
(72)【発明者】
【氏名】尼川 真衣
【テーマコード(参考)】
3D131
4J002
【Fターム(参考)】
3D131AA03
3D131AA04
3D131BA04
3D131BA18
3D131BA20
3D131BC35
3D131EA02U
4J002AC01W
4J002AC03W
4J002AC06W
4J002AC08W
4J002EN076
4J002EU056
4J002FD076
4J002GN01
(57)【要約】
【課題】クラックの発生を抑制したタイヤを提供する。
【解決手段】トレッド部5に、当該トレッド部5の踏面を構成する外層ゴム3と、該外層ゴム3のタイヤ径方向内側に配設された金属コードの層7と、前記外層ゴム3と前記金属コードの層7との間に位置する内層ゴム4と、を具えるタイヤにおいて、前記外層ゴム3は、N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミンの含有率が0.01質量%以下であって、前記内層ゴム4は、30℃での貯蔵弾性率(E’)が2~22MPaであり、且つ下記一般式(1):
[式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立して一価の飽和炭化水素基である]で表されるアミン系老化防止剤を0.45~4.8質量%含む、ことを特徴とするタイヤである。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部に、当該トレッド部の踏面を構成する外層ゴムと、該外層ゴムのタイヤ径方向内側に配設された金属コードの層と、前記外層ゴムと前記金属コードの層との間に位置する内層ゴムと、を具えるタイヤにおいて、
前記外層ゴムは、N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミンの含有率が0.01質量%以下であって、
前記内層ゴムは、30℃での貯蔵弾性率(E’)が2~22MPaであり、且つ下記一般式(1):
【化1】
[式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立して一価の飽和炭化水素基である]で表されるアミン系老化防止剤を0.45~4.8質量%含む、ことを特徴とするタイヤ。
【請求項2】
前記内層ゴムは、30℃での貯蔵弾性率(E’)が4~22MPaである、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項3】
前記外層ゴムが、キノリン系老化防止剤を含む、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項4】
前記キノリン系老化防止剤が、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合体を含む、請求項3に記載のタイヤ。
【請求項5】
前記外層ゴムが、上記一般式(1)で表されるアミン系老化防止剤を含む、請求項1に記載のタイヤ。
【請求項6】
前記内層ゴムにおける老化防止剤の総含有率が、前記外層ゴムにおける老化防止剤の総含有率よりも大きい、請求項1に記載のタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、タイヤを構成する各種ゴム部材は、オゾン存在下等の外気環境の影響を受けて劣化することがあり、該劣化が進行すると、クラック(亀裂)等を生じる場合がある。このような問題への対応として、タイヤを構成する各種ゴム部材には、老化防止剤を含むゴム組成物が適用されていることが多い。
例えば、下記特許文献1には、特定のキノリン系老化防止剤と、N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン(老化防止剤6PPD)とを選定して配合したゴム組成物をタイヤの表面を構成するゴムに適用することで、タイヤ表面のクラックと変色を抑制できることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1で使用されているN-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン(老化防止剤6PPD)は、環境への影響を有する可能性があり、ヨーロッパ法規の今後の規制可能性も含め、より環境に低負荷な老化防止剤を使用することが望ましい。これに対して、タイヤの表面を構成するゴムに老化防止剤6PPDを使用しない又は略使用しないことが考えられるが、本発明者が検討したところ、老化防止剤6PPDを使用しない又は略使用しない場合、タイヤの表面を構成するゴムの耐オゾン性が低下し、クラックが発生し易くなることが分かった。
【0005】
そこで、本発明は、上記従来技術の問題を解決し、クラックの発生を抑制したタイヤを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明のタイヤの要旨構成は、以下の通りである。
【0007】
[1] トレッド部に、当該トレッド部の踏面を構成する外層ゴムと、該外層ゴムのタイヤ径方向内側に配設された金属コードの層と、前記外層ゴムと前記金属コードの層との間に位置する内層ゴムと、を具えるタイヤにおいて、
前記外層ゴムは、N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミンの含有率が0.01質量%以下であって、
前記内層ゴムは、30℃での貯蔵弾性率(E’)が2~22MPaであり、且つ下記一般式(1):
【化1】
[式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立して一価の飽和炭化水素基である]で表されるアミン系老化防止剤を0.45~4.8質量%含む、ことを特徴とするタイヤ。
かかる本発明のタイヤは、クラックの発生が抑制されている。
【0008】
[2] 前記内層ゴムは、30℃での貯蔵弾性率(E’)が4~22MPaである、[1]に記載のタイヤ。
この場合、タイヤの操縦安定性、耐久性、低発熱性が更に向上する。
【0009】
[3] 前記外層ゴムが、キノリン系老化防止剤を含む、[1]又は[2]に記載のタイヤ。
この場合、外層ゴムの耐オゾン性が向上して、クラックの発生を更に抑制できる。
【0010】
[4] 前記キノリン系老化防止剤が、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合体を含む、[3]に記載のタイヤ。
この場合、外層ゴムの耐オゾン性が更に向上して、クラックの発生をより一層抑制でき、また、外層ゴムを変色させ難い。
【0011】
[5] 前記外層ゴムが、上記一般式(1)で表されるアミン系老化防止剤を含む、[1]~[4]のいずれか一つに記載のタイヤ。
この場合、外層ゴムの耐オゾン性が向上し、外層ゴムにおけるクラックの発生を更に抑制できる。
【0012】
[6] 前記内層ゴムにおける老化防止剤の総含有率が、前記外層ゴムにおける老化防止剤の総含有率よりも大きい、[1]~[5]のいずれか一つに記載のタイヤ。
この場合、外層ゴムにおけるクラックの発生を更に長期間に亘って抑制でき、また、外層ゴムの変色をより確実に抑制することもできる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、クラックの発生を抑制したタイヤを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明のタイヤの一実施態様の断面図である。
【
図2】本発明のタイヤの他の実施態様の断面図である。
【
図3】本発明のタイヤの更に他の実施態様の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明のタイヤを、その実施形態に基づき、詳細に例示説明する。
【0016】
図1は、本発明のタイヤの一実施態様の断面図である。
図1に示す本実施形態のタイヤは、一対のビード部1及び一対のサイドウォール部2と、両サイドウォール部2に連なり、タイヤ径方向外側から順に外層ゴム3及び内層ゴム4を有するトレッド部5と、を有し、前記一対のビード部1間にトロイド状に延在して、これら各部1,2,5を補強するカーカス6と、該カーカス6のクラウン部のタイヤ径方向外側であって且つ前記内層ゴム4のタイヤ径方向内側に配置された金属コードの層7と、を具える。
ここで、
図1に示すタイヤの外層ゴム3は、一般に「キャップゴム」とも称され、
図1に示すタイヤの内層ゴム4は、一般に「ベースゴム」とも称され、また、
図1に示すタイヤの金属コードの層7は、一般に「ベルト」とも称される。
【0017】
図1に示すタイヤのカーカス6は、平行に配列された複数のコードをコーティングゴムで被覆してなるカーカスプライ1枚から構成され、また、該カーカス6は、上記ビード部1に夫々埋設されたビードコア8間にトロイド状に延びる本体部と、各ビードコア8の周りでタイヤ幅方向内側から外側に向けて径方向外方に巻上げた折り返し部とからなるが、本発明のタイヤにおいて、カーカス6のプライ数及び構造は、これに限られるものではない。
【0018】
また、
図1に示すタイヤの金属コードの層(ベルト)7は、2枚のベルト層からなるが、本発明のタイヤにおいて、金属コードの層7を構成するベルト層の枚数はこれに限られるものではなく、ベルト層の枚数は、3枚以上であってもよい。ここで、ベルト層は、通常、タイヤ赤道面に対して傾斜して延びる金属コード(好ましくは、スチールコード)のゴム引き層からなり、2枚のベルト層は、該ベルト層を構成する金属コードが互いにタイヤ赤道面を挟んで交差するように積層されて金属コードの層7を構成する。
【0019】
そして、本実施形態のタイヤは、トレッド部5に、当該トレッド部5の踏面を構成する外層ゴム3と、該外層ゴム3のタイヤ径方向内側に配設された金属コードの層7と、前記外層ゴム3と前記金属コードの層7との間に位置する内層ゴム4と、を具え、前記外層ゴム3は、N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン(以下、「老化防止剤6PPD」とも称する。)の含有率が0.01質量%以下であって、前記内層ゴム4は、30℃での貯蔵弾性率(E’)が2~22MPaであり、且つ下記一般式(1):
【化2】
[式中、R
1及びR
2は、それぞれ独立して一価の飽和炭化水素基である]で表されるアミン系老化防止剤を0.45~4.8質量%含む、ことを特徴とする。
【0020】
本実施形態のタイヤのトレッド部5の踏面を構成する外層ゴム3は、老化防止剤6PPDの含有率が0.01質量%以下であるため、環境に優しい。
また、本実施形態のタイヤにおいては、前記外層ゴム3と前記金属コードの層7との間に位置する内層ゴム4が上記一般式(1)で表されるアミン系老化防止剤を0.45質量%以上含み、該一般式(1)のアミン系老化防止剤が、経時により外層ゴム3に移行するため、外層ゴム3の耐オゾン性を十分に確保して、クラックの発生を抑制することができる。ここで、一般式(1)のアミン系老化防止剤は、老化防止剤6PPDよりも拡散速度が遅いため、外層ゴム3に長期にわたり供給することができる。
なお、外層ゴム3に、老化防止剤6PPD以外の老化防止剤を多量に含有させると、外層ゴム3が変色する恐れがあるが、本実施形態タイヤにおいては、外層ゴム3のタイヤ径方向内側に位置する内層ゴム4に一般式(1)のアミン系老化防止剤を含有させ、内層ゴム4から外層ゴム3に一般式(1)のアミン系老化防止剤を移行させることで外層ゴム3の耐オゾン性を確保するため、外層ゴム3を変色させることなく、外層ゴム3におけるクラックの発生を抑制でき、また、内層ゴム4から外層ゴム3に一般式(1)のアミン系老化防止剤を長期間に亘って供給することで、長期間に亘って外層ゴム3におけるクラックの発生を抑制することもできる。
従って、本発明のタイヤは、クラックの発生が抑制されている。
【0021】
前記内層ゴム4は、30℃での貯蔵弾性率(E’)が2~22MPaであり、4~22MPaであることが好ましい。内層ゴム4は、30℃での貯蔵弾性率(E’)が2MPa以上であり、柔らか過ぎないため、本実施形態のタイヤは、操縦安定性、耐久性、低発熱性に優れる。また、内層ゴム4は、30℃での貯蔵弾性率(E’)が22MPa以下であり、硬過ぎないため、トレッド部5の踏面を構成する外層ゴム3との間の歪みが小さくなり、歪みに起因するクラックの発生も抑制できる。また、内層ゴム4の、30℃での貯蔵弾性率(E’)が4MPa以上であると、タイヤの操縦安定性、耐久性、低発熱性が更に向上する。
【0022】
前記内層ゴム4は、上記一般式(1)で表されるアミン系老化防止剤を含む。一般式(1)で表されるアミン系老化防止剤は、N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン(老化防止剤6PPD)と同様にフェニレンジアミン部分を含むものの、該フェニレンジアミン部分以外には二重結合を有しない点で、老化防止剤6PPDと異なる。一般式(1)で表されるアミン系老化防止剤は、ゴム(内層ゴム)の老化を防止して、耐オゾン性を向上させる作用を有する。
【0023】
上記一般式(1)中、R1及びR2は、それぞれ独立して一価の飽和炭化水素基である。R1とR2は、同一でも異なってもよいが、合成上の観点から、同一であることが好ましい。
【0024】
前記一価の飽和炭化水素基の炭素数は、1~20が好ましく、3~10が更に好ましく、6及び7が特に好ましい。飽和炭化水素基の炭素数が20以下であると、単位質量当たりのモル数が大きくなるため、老化防止効果が大きくなり、ゴム(内層ゴム)の耐オゾン性が向上する。
上記一般式(1)中のR1及びR2は、耐オゾン性を更に向上させる観点から、それぞれ独立して炭素数1~20の鎖状又は環状の一価の飽和炭化水素基であることが好ましい。
【0025】
前記一価の飽和炭化水素基としては、アルキル基、シクロアルキル基が挙げられ、アルキル基は、直鎖状でも、分岐鎖状でもよく、また、シクロアルキル基には、置換基として更にアルキル基等が結合していてもよい。
前記アルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、1,2-ジメチルブチル基、1,3-ジメチルブチル基、2,3-ジメチルブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1-メチルペンチル基、2-メチルペンチル基、3-メチルペンチル基、4-メチルペンチル基、1,2-ジメチルペンチル基、1,3-ジメチルペンチル基、1,4-ジメチルペンチル基、2,3-ジメチルペンチル基、2,4-ジメチルペンチル基、3,4-ジメチルペンチル基、n-ヘキシル基、1-メチルヘキシル基、2-メチルヘキシル基、各種オクチル基、各種デシル基、各種ドデシル基等が挙げられ、これらの中でも、1,4-ジメチルペンチル基が好ましい。
前記シクロアルキル基としては、シクロペンチル基、メチルシクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられ、これらの中でも、シクロヘキシル基が好ましい。
【0026】
上記一般式(1)で表されるアミン系老化防止剤として、具体的には、N,N’-ビス(1,4-ジメチルペンチル)-p-フェニレンジアミン(老化防止剤77PD)、N,N’-ビス(1-エチル-3-メチルペンチル)-p-フェニレンジアミン、N,N’-ジシクロヘキシル-p-フェニレンジアミン(老化防止剤CCPD)等が挙げられ、これらの中でも、N,N’-ビス(1,4-ジメチルペンチル)-p-フェニレンジアミン(老化防止剤77PD)、N,N’-ジシクロヘキシル-p-フェニレンジアミン(CCPD)が好ましく、N,N’-ビス(1,4-ジメチルペンチル)-p-フェニレンジアミン(老化防止剤77PD)が特に好ましい。前記アミン系老化防止剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0027】
前記内層ゴム4における、上記一般式(1)で表されるアミン系老化防止剤の含有率は、0.45~4.8質量%である。一般式(1)のアミン系老化防止剤の含有率が、0.45質量%未満であると、内層ゴム4から外層ゴム3への、一般式(1)のアミン系老化防止剤の移行量が少なく、外層ゴム3の耐オゾン性を十分に確保することができず、外層ゴム3のクラックの発生を十分に抑制することができない。一方、一般式(1)のアミン系老化防止剤の含有率が、4.8質量%を超えると、内層ゴム4の30℃での貯蔵弾性率(E’)が低下して、タイヤの操縦安定性、耐久性、低発熱性が低下する恐れがあり、また、内層ゴム4から外層ゴム3への、一般式(1)のアミン系老化防止剤の移行量が多くなり過ぎ、外層ゴム3の変色の恐れが生じる。
内層ゴム4における、上記一般式(1)で表されるアミン系老化防止剤の含有率は、耐オゾン性の観点から、0.6質量%以上が好ましく、1.0質量%以上がより好ましく、1.6質量%以上がより好ましく、1.9質量%以上が更に好ましく、また、外層ゴム3の変色抑制の観点から、4.1質量%以下が好ましく、3.8質量%以下がより好ましく、3.2質量%以下がより好ましく、2.9質量%以下がより好ましく、2.6質量%以下が更に好ましい。
【0028】
前記外層ゴム3は、N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン(老化防止剤6PPD)の含有率が0.01質量%以下であり、0質量%であること(即ち、老化防止剤6PPDを含まないこと)が好ましい。外層ゴム3における、老化防止剤6PPDの含有率が0.01質量%以下であれば、タイヤが環境に優しくなり、また、老化防止剤6PPDの含有率が0質量%であれば、タイヤが環境に更に優しくなる。
【0029】
前記外層ゴム3は、キノリン系老化防止剤を含むことが好ましい。該キノリン系老化防止剤は、キノリン部分又はその誘導体部分(ジヒドロキノリン部分等)を有する老化防止剤である。外層ゴム3が、キノリン系老化防止剤を含む場合、外層ゴム3の耐オゾン性が向上して、クラックの発生を更に抑制できる。
【0030】
前記キノリン系老化防止剤は、ジヒドロキノリン部分を有することが好ましく、1,2-ジヒドロキノリン部分を有することが更に好ましい。
前記キノリン系老化防止剤として、具体的には、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合体(老化防止剤TMDQ)、6-エトキシ-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン、6-アニリノ-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン等が挙げられる。
前記キノリン系老化防止剤は、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合体(老化防止剤TMDQ)を含むことが好ましい。前記キノリン系老化防止剤が、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合体を含む場合、即ち、外層ゴム3が、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合体を含むキノリン系老化防止剤を含む場合、外層ゴム3の耐オゾン性が更に向上して、クラックの発生をより一層抑制でき、また、この場合、外層ゴム3を変色させ難いという利点も有する。
なお、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの重合体としては、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリンの二量体、三量体、四量体等が挙げられる。
【0031】
前記外層ゴム3における、前記キノリン系老化防止剤の含有率は、0.1~1.0質量%であることが好ましい。キノリン系老化防止剤の含有率が、0.1質量%以上であると、外層ゴム3の耐オゾン性を向上させる効果が大きくなる。また、キノリン系老化防止剤の含有率が、1.0質量%以下であると、外層ゴム3の変色をより確実に抑制できる。
【0032】
前記外層ゴム3は、上記一般式(1)で表されるアミン系老化防止剤を含むことも好ましい。外層ゴム3が、上記一般式(1)のアミン系老化防止剤を含む場合、一般式(1)のアミン系老化防止剤が外層ゴム3の老化を防止して、外層ゴム3の耐オゾン性が向上し、外層ゴム3におけるクラックの発生を更に抑制できる。
【0033】
前記外層ゴム3における、上記一般式(1)で表されるアミン系老化防止剤の含有率は、0.4~2.0質量%であることが好ましい。上記一般式(1)で表されるアミン系老化防止剤の含有率が、0.4質量%以上であると、外層ゴム3の耐オゾン性を向上させる効果が大きくなる。また、上記一般式(1)で表されるアミン系老化防止剤の含有率が、2.0質量%以下であると、外層ゴム3の変色をより確実に抑制できる。
【0034】
前記内層ゴム4は、上記一般式(1)で表されるアミン系老化防止剤以外の老化防止剤を更に含有しもよい。例えば、前記内層ゴム4は、上述のキノリン系老化防止剤や、老化防止剤6PPDを含んでもよいし、含まなくでもよい。
なお、本発明のタイヤにおいては、前記内層ゴム4における老化防止剤の総含有率が、前記外層ゴム3における老化防止剤の総含有率よりも大きいことが好ましい。内層ゴム4における老化防止剤の総含有率が、外層ゴム3における老化防止剤の総含有率よりも大きい場合、内層ゴム4から外層ゴム3への老化防止剤の移行がより長期間に亘って進み易く、外層ゴム3におけるクラックの発生を更に長期間に亘って抑制でき、また、相対的に外層ゴム3における老化防止剤の総含有率が小さいことで、外層ゴム3の変色をより確実に抑制することもできる。
【0035】
なお、本発明において、老化防止剤の総含有率、老化防止剤6PPDの含有率、一般式(1)で表されるアミン系老化防止剤の含有率、キノリン系老化防止剤の含有率は、金属コードの層7のタイヤ幅方向両端をタイヤ径方向にそれぞれ延長して形成される2つの面の間の領域で測定され、また、内層ゴム4又は外層ゴム3に用いるゴム組成物の組成から、組成物の全量基準での値として、算出することもできる。また、内層ゴム4における、老化防止剤の総含有率、老化防止剤6PPDの含有率、一般式(1)で表されるアミン系老化防止剤の含有率は、上述の金属コードの層7のタイヤ幅方向両端を基準とする領域で、且つ外層ゴム3と金属コードの層7との間の領域で測定され、また、当該領域に適用するゴム組成物(内層ゴム用ゴム組成物)の組成から、組成物の全量基準での値として、算出することもできる。
【0036】
前記内層ゴム4及び前記外層ゴム3は、ゴム成分を含み、該ゴム成分が、内層ゴム4及び外層ゴム3にゴム弾性をもたらす。内層ゴム4及び外層ゴム3における、ゴム成分の含有率は、30~80質量%が好ましく、35~75質量%が更に好ましい。
前記ゴム成分としては、ジエン系ゴムが好ましく、また、ゴム成分は、天然ゴム(NR)、合成イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)から選択されることが更に好ましい。ゴム成分が、天然ゴム(NR)、合成イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)からなる群から選択される少なくとも1種を含む場合、内層ゴム4及び外層ゴム3のゴム弾性が優れ、耐久性が向上する。また、前記ゴム成分が、天然ゴム(NR)、合成イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)からなる群から選択される少なくとも1種を含む場合、本発明の効果(クラックの抑制効果)が顕著に現れ易い。ゴム成分中の、天然ゴム(NR)、合成イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)等のジエン系ゴムの含有率は、80質量%以上が好ましく、90質量%以上が更に好ましく、100質量%でもよい。前記ゴム成分は、1種単独でもよいし、2種以上のブレンドでもよい。
【0037】
前記内層ゴム4及び前記外層ゴム3は、既述の老化防止剤、ゴム成分の他にも、必要に応じて、ゴム工業界で通常使用される各種成分、例えば、充填剤(シリカ、カーボンブラック、炭酸カルシウム等)、シランカップリング剤、軟化剤、ワックス、界面活性剤、有機酸(ステアリン酸等)、酸化亜鉛(亜鉛華)、加硫促進剤、加硫剤(硫黄等)等を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して含有していてもよい。これら配合剤としては、市販品を好適に使用することができる。
【0038】
上記一般式(1)で表されるアミン系老化防止剤は、任意の担体に担持されていてもよい。例えば、上記一般式(1)で表されるアミン系老化防止剤は、シリカ、炭酸カルシウム等の無機充填剤に担持されていてもよい。
また、上記一般式(1)で表されるアミン系老化防止剤は、ゴム成分とのマスターバッチであってもよい。ここで、マスターバッチとする際に用いるゴム成分は、特に限定されるものではなく、天然ゴム(NR)等のジエン系ゴムでもよいし、エチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)等であってもよい。
また、上記一般式(1)で表されるアミン系老化防止剤は、有機酸との塩としてもよい。ここで、塩とする際に用いる有機酸としては、特に限定されるものではないが、ステアリン酸等が挙げられる。
【0039】
本実施形態において、前記内層ゴム4及び前記外層ゴム3には、ゴム成分に対して、老化防止剤等を配合したゴム組成物を適用する。内層ゴム4及び外層ゴム3に用いるゴム組成物は、例えば、ゴム成分に対して、老化防止剤と、必要に応じて適宜選択した各種成分を配合して、混練り、熱入れ、押出等することにより製造することができる。
【0040】
次に、本発明のタイヤの他の実施形態を例示説明する。
図2及び
図3は、本発明のタイヤの他の実施態様の断面図である。
【0041】
図2に示すタイヤは、トレッド部5において、タイヤ径方向外側から順に(タイヤの表面(踏面)から順に)、外層ゴム3、ベースゴム9、トレッドアンダークッションゴム10、及び金属コードの層(ベルト)7を有する以外は、
図1に示すタイヤと同じ構造を有する。
ここで、
図2に示すタイヤのベースゴム9及びトレッドアンダークッションゴム10が、内層ゴム4に相当する。
【0042】
ベースゴム9及びトレッドアンダークッションゴム10は、30℃での貯蔵弾性率(E’)が2~22MPaであるが、ベースゴム9とトレッドアンダークッションゴム10との30℃での貯蔵弾性率(E’)は、同一であっても、異なってもよい。
また、ベースゴム9及びトレッドアンダークッションゴム10の少なくとも一方は、上記一般式(1)で表されるアミン系老化防止剤を含み、ベースゴム9及びトレッドアンダークッションゴム10の全体における上記一般式(1)で表されるアミン系老化防止剤の含有率は、0.45~4.8質量%の範囲である。
【0043】
また、
図3に示すタイヤは、トレッド部5において、タイヤ径方向外側から順に(タイヤの表面(踏面)から順に)、外層ゴム3、ベースゴム9、トレッドアンダークッションゴム10、金属コード層の補強層(ベルト補強層)11、及び金属コードの層(ベルト)7を有する以外は、
図1に示すタイヤと同じ構造を有する。
図3に示すタイヤの金属コード層の補強層11は、金属コードの層7のタイヤ径方向外側で金属コードの層7の全体を覆うように配置されているが、金属コード層の補強層は、金属コードの層7のタイヤ径方向外側で金属コードの層7の両端部のみを覆うように配置されていてもよいし、金属コードの層7の全体を覆う層と、金属コードの層7の両端部のみを覆う一対の層と、の組み合わせでもよい。
ここで、
図3に示すタイヤのベースゴム9、トレッドアンダークッションゴム10、及び金属コード層の補強層11が、内層ゴム4に相当する。
【0044】
本実施形態において、金属コード層の補強層11は、タイヤ周方向に対し実質的に平行に配列した補強コードのゴム引き層からなる。該金属コード層の補強層11は、補強コードを被覆ゴムでゴム引きして準備した幅狭のストリップ(コード-ゴム複合体)をタイヤ周方向に連続して螺旋状に巻回して形成されている。この場合、タイヤ周方向にジョイント部がないため、タイヤのユニフォミティーが良好となり、また、ジョイント部がないため、ジョイント部への歪集中も防止できる。金属コード層の補強層11の補強コードとしては、ポリエチレンテレフタレートコード、ナイロンコード、レーヨンコード等の有機繊維コードを用いることができる。
【0045】
ベースゴム9、トレッドアンダークッションゴム10、及び金属コード層の補強層11(補強コードの被覆ゴム)は、30℃での貯蔵弾性率(E’)が2~22MPaであるが、ベースゴム9、トレッドアンダークッションゴム10及び金属コード層の補強層11(補強コードの被覆ゴム)の30℃での貯蔵弾性率(E’)は、同一であっても、異なってもよい。なお、
図3に示すタイヤのように、内層ゴム4に相当する部位に、ゴム以外(例えば、有機繊維コード等の補強コード)を含む場合、30℃での貯蔵弾性率(E’)は、ゴム部分で測定する。
また、ベースゴム9、トレッドアンダークッションゴム10及び金属コード層の補強層11(補強コードの被覆ゴム)の少なくとも一つは、上記一般式(1)で表されるアミン系老化防止剤を含み、ベースゴム9、トレッドアンダークッションゴム10及び金属コード層の補強層11(補強コードの被覆ゴム)の全体における上記一般式(1)で表されるアミン系老化防止剤の含有率は、0.45~4.8質量%の範囲である。
【0046】
なお、本発明のタイヤは、これらの実施形態に限られるものではなく、例えば、
図3に示すタイヤにおいて、トレッドアンダークッションゴム10を省略したタイヤも、本発明のタイヤの好適態様の一つである。更に、本発明のタイヤの他の実施形態を、以下に例示する。
【0047】
本発明の他の実施形態のタイヤは、
それぞれが赤道面の軸方向外側に位置し、周方向に延在する一対のショルダー主溝が刻まれたトレッドを具え、当該トレッドが、ベースゴムと、当該ベースゴムを覆うキャップゴムとを有しており、
前記ベースゴムが、赤道面上に位置するセンター部と、それぞれが当該センター部よりも軸方向外側に位置する一対のサイド部とを具えており、
前記サイド部が前記センター部と間隔をあけて配置されており、
前記ショルダー主溝が軸方向において前記センター部と前記サイド部との間に位置しており、前記ショルダー主溝から前記ベースゴムまでの離間距離が6mm以上25mm以下である。
ここで、キャップゴムが外層ゴムに相当し、ベースゴムが内層ゴムに相当する。また、ベースゴムのタイヤ径方向内側には、金属コードの層が配設される。
【0048】
本発明の他の実施形態のタイヤは、
キャップゴム及びベースゴムを具え、
下記式(1)~(2)を満たす。
0.4≦Tc/Tb≦1.5 ・・・ (1)
[式(1)中、Tcはキャップゴムの平均厚み、Tbはベースゴムの平均厚みである。]
tanδc/E*c≧0.16 ・・・ (2)
[式(2)中、tanδcはキャップゴムの-30℃tanδ(温度-30℃、初期歪10%、動歪2.5%、周波数10Hzの条件で測定した損失正接)、E*cはキャップゴムの0℃E*(温度0℃、初期歪10%、動歪2.5%、周波数10Hzの条件で測定した複素弾性率)である。]
ここで、キャップゴムが外層ゴムに相当し、ベースゴムが内層ゴムに相当する。また、ベースゴムのタイヤ径方向内側には、金属コードの層が配設される。
【0049】
本発明の他の実施形態のタイヤは、
トレッド部にトレッドゴムを具えた二輪車用タイヤであって、
前記トレッドゴムは、トレッド面をなすキャップゴムと、そのタイヤ半径方向内側に配されたベースゴムとを含み、
前記キャップゴムの300%モジュラス(M300c)は、前記ベースゴムの300%モジュラス(M300b)よりも大きく、
前記キャップゴムの損失正接(tanδc)は、前記ベースゴムの損失正接(tanδb)よりも小さく、
前記トレッド面は、タイヤ赤道を中心としたクラウン領域と、前記クラウン領域のタイヤ軸方向外側のショルダー領域とを含み、
前記クラウン領域での前記キャップゴムの厚さは、前記ショルダー領域での前記キャップゴムの厚さよりも大きい。
ここで、キャップゴムが外層ゴムに相当し、ベースゴムが内層ゴムに相当する。また、ベースゴムのタイヤ径方向内側には、金属コードの層が配設される。
【0050】
本発明の他の実施形態のタイヤは、
タイヤ接地面をなすキャップゴムと前記キャップゴムのタイヤ径方向内側に設けられたベースゴムとを具えるトレッドゴムが設けられたトレッド部と、サイドウォールゴムが設けられたサイドウォール部とを具え、
前記トレッドゴムの幅方向端部の外側に前記サイドウォールゴムのタイヤ径方向外側が重ねて設けられた空気入りタイヤにおいて、
前記ベースゴムは、前記キャップゴムのタイヤ径方向内側に設けられたアンダーゴム部と、前記アンダーゴム部のタイヤ幅方向端部からタイヤ径方向外側へ延び前記キャップゴムと前記サイドウォールゴムの間に配置された巻き上げ部とを具え、
前記キャップゴムのゴム硬度が前記ベースゴムのゴム硬度より大きく、かつ、前記ベースゴムのゴム硬度が前記サイドウォールゴムのゴム硬度より大きい。
ここで、キャップゴムが外層ゴムに相当し、ベースゴムが内層ゴムに相当する。また、ベースゴムのタイヤ径方向内側には、金属コードの層が配設される。
【0051】
本発明の他の実施形態のタイヤは、
キャップゴム及びベースゴムが積層されたトレッド部を具え、
前記キャップゴムを構成するキャップゴム組成物と、前記ベースゴムを構成するベースゴム組成物との接着力が9MPa以上であり、
前記キャップゴム組成物が下記式(A)を満たす。
オゾン劣化前の破断伸び≦オゾン劣化後の破断伸び (A)
ここで、キャップゴムが外層ゴムに相当し、ベースゴムが内層ゴムに相当する。また、ベースゴムのタイヤ径方向内側には、金属コードの層が配設される。
【0052】
本発明の他の実施形態のタイヤは、
少なくとも1層のカーカス層と、前記カーカス層におけるトレッド部に位置する部分のタイヤ径方向外側に配置されて複数のベルトが積層されるベルト層と、前記トレッド部における前記ベルト層のタイヤ径方向外側に配置されるトレッドゴム層とを具える空気入りタイヤであって、
前記トレッド部には、タイヤ周方向に延びる主溝が形成されると共に、前記主溝によって複数の陸部が画成されており、
前記トレッド部は、
前記陸部のうちタイヤ赤道面に最も近い前記陸部であるセンター陸部が位置する領域をセンター領域とし、
前記ベルト層が有する複数の前記ベルトのうちタイヤ幅方向における幅が最も広い前記ベルトである最幅広ベルトのタイヤ幅方向における幅の85%の位置と前記最幅広ベルトのタイヤ幅方向における端部との間の領域をショルダー領域とする場合に、
前記センター領域におけるタイヤ平均厚さ(Gc)と、前記ショルダー領域におけるタイヤ平均厚さ(Gsh)との関係が、1.05≦(Gc/Gsh)≦1.35の範囲内であり、
前記トレッドゴム層は、タイヤ径方向における外側から内側に向かってキャップゴム、中間ゴム、ベースゴムの3層が積層され、
前記キャップゴムと前記中間ゴムと前記ベースゴムとは、前記キャップゴムの300%伸長時のモジュラス(Ma)と、前記中間ゴムの300%伸長時のモジュラス(Mb)と、前記ベースゴムの300%伸長時のモジュラス(Mc)との関係が、Ma<Mb<Mcを満たす。
ここで、キャップゴムが外層ゴムに相当し、中間ゴム及びベースゴムが内層ゴムに相当し、ベルト層が金属コードの層に相当する。
【0053】
本発明の他の実施形態のタイヤは、
複数の周方向溝が刻まれたトレッドと、
径方向において前記トレッドの内側に位置するベルトと、
径方向において内側から前記ベルトの端部を支持する一対のクッション層と
を具え、
前記トレッドは、径方向において前記ベルトの外側に位置するベースゴムと、径方向において前記ベースゴムの外側に位置するキャップゴムとを具え、
前記ベースゴムの複素弾性率が、前記クッション層の複素弾性率の1.5倍以上1.9倍以下であり、
前記クッション層の破壊エネルギーは、前記ベースゴムの破壊エネルギーの1.3倍以上1.6倍以下である。
ここで、キャップゴムが外層ゴムに相当し、ベースゴムが内層ゴムに相当し、ベルトが金属コードの層に相当する。
【0054】
本発明の他の実施形態のタイヤは、
空気入りタイヤであって、
タイヤ周方向に対してスチールコードが傾斜角度を持って延在する、タイヤ径方向に積層した複数のベルトであって、タイヤ径方向に隣接するベルトのスチールコードが互いに交差する構成の複数の交差ベルトと、
前記交差ベルトのタイヤ径方向外側に設けられ、前記傾斜角度に比べて大きい角度でスチールコードが延在する1枚以上の保護ベルトと、を具え、
前記保護ベルトのうちベルト幅が最大である最大幅保護ベルトのベルト幅は、前記交差ベルトのいずれのベルト幅よりも広く、
前記空気入りタイヤをタイヤ径方向に沿って切断したときのタイヤプロファイルにおいて、前記最大幅保護ベルトは、タイヤ幅方向におけるショルダー領域に、タイヤ径方向の最大突出位置を有し、前記最大突出位置をAとし、前記最大幅保護ベルトの端位置をBとし、前記最大突出位置Aを通り、前記空気入りタイヤのトレッド表面に対して法線方向に延びる直線aが前記トレッド表面と交わる位置を位置A’とし、前記端位置Bを通り、前記トレッド表面に対して法線方向に延びる直線bが前記トレッド表面と交わる位置を位置B’としたとき、
前記最大突出位置Aと前記端位置Bを結ぶ第1直線と、前記位置A’と前記位置B’とを結ぶ第2直線との間の成す角度は0度以上15度以下である。
ここで、前記空気入りタイヤのトレッドゴムは、前記保護ベルトのタイヤ径方向外側にあるベースゴムと、前記ベースゴムと接し、トレッド表面を形成するキャップゴムと、を具え、キャップゴムが外層ゴムに相当し、ベースゴムが内層ゴムに相当し、交差ベルト及び保護ベルトが金属コードの層に相当する。
【0055】
本発明の他の実施形態のタイヤは、
車両に対する装着方向を示す装着方向表示部と、トレッド部とを具える空気入りタイヤであって、
前記トレッド部は、ベルトと、前記ベルトのタイヤ径方向外側に設けられたベルトカバーとからなるベルト層と、前記ベルトカバーのタイヤ径方向外側に設けられたベースゴムと前記ベースゴムのタイヤ径方向外側に設けられたキャップゴムとの積層構造を有し、
タイヤ赤道面を基準とし、前記トレッド部のトレッド面における前記車両に対する装着外側の接地面積比は、前記トレッド面における前記車両に対する装着内側の接地面積比より大きく、
前記キャップゴムの正接損失が前記ベースゴムの正接損失より大きく、
前記タイヤ赤道面を基準とし、前記ベルト層において前記車両に対する装着外側のタイヤ径方向外側の端部から前記トレッド面に向かう法線に沿ったベースゴムの厚さは、前記ベルトにおいて前記車両に対する装着内側のタイヤ径方向外側の端部から前記トレッド面に向かう法線に沿ったベースゴムの厚さより大きく、
前記ベルトカバーの前記車両に対する装着外側のタイヤ幅方向の単位長さ当たりの剛性が前記車両に対する装着内側のタイヤ幅方向の単位長さ当たりの剛性より高い。
ここで、キャップゴムが外層ゴムに相当し、ベースゴムが内層ゴムに相当し、ベルトが金属コードの層に相当する。なお、ベルトカバーが金属コードを含む場合は、ベルトカバーも金属コードの層に相当する。
【0056】
本発明の他の実施形態のタイヤは、
タイヤ周方向に延在して環状をなすトレッド部と、該トレッド部の両側に配置された一対のサイドウォール部と、これらサイドウォール部のタイヤ径方向内側に配置された一対のビード部とを具えると共に、前記トレッド部がキャップゴムとベースゴムとの積層構造を有し、前記トレッド部にタイヤ周方向に延びる複数本の縦溝とタイヤ幅方向に延びる複数本の横溝が形成され、前記縦溝及び前記横溝により前記トレッド部にタイヤ周方向に配列された複数のブロックからなるブロック列が区画され、各ブロックに複数本のサイプが形成された空気入りタイヤにおいて、
前記サイプの底側の輪郭線が前記キャップゴムと前記ベースゴムとの境界面に対して傾斜し、前記サイプが各ブロックの中央側から端部側に向かって徐々に浅くなっている。
ここで、キャップゴムが外層ゴムに相当し、ベースゴムが内層ゴムに相当する。また、ベースゴムのタイヤ径方向内側には、金属コードの層が配設される。
【0057】
本発明の他の実施形態のタイヤは、
少なくとも1枚のカーカスプライからなるカーカスと、上記カーカスのタイヤ径方向外側に配置されてコードを含むベルト層を含むベルトと、上記ベルトのタイヤ径方向外側に配置され、トレッド部の一部を構成するトレッドゴムと、を具え、上記トレッド部に合計幅が接地幅の15%以上である周方向主溝が少なくとも1本形成された空気入りタイヤであって、
前記トレッドゴムは、ベースゴムと、該ベースゴムのタイヤ径方向外側に形成され、ベースゴムよりも硬度の高いゴムからなるキャップゴムとを含み、
規定リムに組み込んで規定内圧の92%を充填し、最大負荷能力の75%の荷重を負荷した状態おける、タイヤ子午断面視で、タイヤ接地幅をタイヤ幅方向において4分割したタイヤ幅方向中央の2領域をセンター領域とする一方、残りの2領域をそれぞれショルダー領域とした場合において、前記ベースゴムの平均厚さは、センター領域においてショルダー領域よりも大きく、
60℃における損失正接tanδは、キャップゴムにおいてベースゴムよりも高く、
前記センター領域において、前記周方向主溝の溝底からタイヤ径方向外側1.6mmの位置においてタイヤプロファイルラインに平行に延在する仮想線よりもタイヤ径方向内側の領域においては、前記キャップゴムの断面積(CAI)と上記ベースゴムの断面積(BAI)との比(CAI/BAI)が、0.15以上0.95以下である。
ここで、キャップゴムが外層ゴムに相当し、ベースゴムが内層ゴムに相当する。また、ベースゴムのタイヤ径方向内側には、金属コードの層が配設される。
【0058】
本実施形態のタイヤは、適用するタイヤの種類に応じ、未加硫のゴム組成物を用いて成形後に加硫して得てもよいし、予備加硫工程等を経た半加硫ゴムを用いて成形後、さらに本加硫して得てもよい。なお、本実施形態のタイヤの外層ゴム3及び内層ゴム4以外の部材は、特に限定されず、公知の部材を使用することができる。
また、本実施形態のタイヤは、好ましくは空気入りタイヤであり、空気入りタイヤに充填する気体としては、通常の或いは酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを用いることができる。
【実施例0059】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0060】
表1及び表2に、本発明のタイヤの外層ゴム3及び内層ゴム4に適用するのに好適なゴム組成物の配合例(実施例)と、不適なゴム組成物の配合例(比較例)を示す。表に示す以外にも薬品を含む。また、内層ゴム4の30℃での貯蔵弾性率(E’)の測定方法を以下に示す。
【0061】
<貯蔵弾性率(E’)の測定方法>
ゴム組成物を145℃で33分間加硫して得られた加硫ゴムに対して、株式会社上島製作所製スペクトロメーターを用いて、歪1%、周波数52Hzの条件下で、30℃における貯蔵弾性率(E’)を測定する。
【0062】
【0063】
【0064】
*1 NR: 天然ゴム
*2 BR-1: ブタジエンゴム、シス-1,4結合量=95質量%以上
*3 SBR: スチレン-ブタジエンゴム、未変性、JSR株式会社製、商品名「#1500」、スチレン結合量=24.5質量%等
*4 カーボンブラック-1: 旭カーボン株式会社製、商品名「旭#78」
*5 シリカ: 東ソー・シリカ工業株式会社製、商品名「ニップシールAQ」
*6 ワックス: マイクロクリスタリンワックス、日本精鑞株式会社製の商品名「オゾエース0701」等
*7 老化防止剤77PD: 一般式(1)中のR1及びR2が飽和炭化水素基(1,4-ジメチルペンチル基)であるアミン系老化防止剤、N,N’-ビス(1,4-ジメチルペンチル)-p-フェニレンジアミン、EASTMAN社製、商品名「Santoflex 77PD」
*8 老化防止剤6PPD: 一般式(1)中のR1及びR2の一方が不飽和炭化水素基(フェニル基)であるアミン系老化防止剤、N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン、住友化学株式会社製、商品名「アンチゲン6C」
*9 老化防止剤TMDQ: キノリン系老化防止剤、2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン重合体
*10 シランカップリング剤: ビス(トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィド、信越化学工業株式会社製、商品名「ABC-856」
*11 ステアリン酸: 日油株式会社製、商品名「桐印ステアリン酸」
*12 硫黄: 細井化学工業株式会社製、商品名「HK200-5」、5%オイル
*13 促進剤: ハクスイテック株式会社製の酸化亜鉛と三新化学工業株式会社製の商品名「サンセラーCM-G」を少なくとも含む促進剤総量
【0065】
*14 BR-2: ブタジエンゴム、JSR株式会社製、商品名「BR01」
*15 カーボンブラック-2: 旭カーボン株式会社製、商品名「旭#65」
*16 軟化剤: ENEOS株式会社製、商品名「スーパーオイルY22」
*17 酸化亜鉛: 九州白水株式会社製、商品名「ハクスイテック」
*18 加硫促進剤パッケージ: 加硫促進剤NS(TBBS)、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミドを少なくとも含む総量
【0066】
表1に示す実施例1-1~実施例1-2の配合の外層ゴム用組成物と、表2に示す実施例2-1~実施例2-7の配合の内層ゴム用組成物を、適宜組み合わせることで、本発明のタイヤを製造することができる。
ここで、表2に示す実施例2-1~実施例2-7の配合の内層ゴム用組成物は、30℃での貯蔵弾性率(E’)が4MPa以上であるため、タイヤの操縦安定性、耐久性、低発熱性の向上に特に有効である。
【0067】
<試験片の作製>
表1に示す外層ゴム用組成物から厚さ2mmのゴムシート(外層ゴム)を作製した。
また、表2に示す内層ゴム用組成物から厚さ2mmのゴムシート(内層ゴム)を作製した。
得られた各ゴムシートを、表3~表6に示す通りに組み合わせて、外層ゴム/内層ゴム/内層ゴム/外層ゴムの順に積層して、積層ゴム試験片(4層からなり、外表面が外層ゴムからなる)を作製した。
【0068】
<耐オゾン性の評価>
上記のようにして得た積層ゴム試験片に対して、JIS K 6259-1に準拠して、オゾンを含む空気中に17時間又は89時間曝露後、動的オゾン劣化試験(繰り返し歪みを加えた試験)と、静的オゾン劣化試験(一定歪みを加えて放置した試験)を行い、耐オゾン性を評価した。評価は、亀裂(クラック)のレベルによるランク付けを行い、以下の基準(0~7の8段階)に分類した。ランクの値が低いものほど、亀裂(クラック)の程度が小さく、耐オゾン性に優れることを示す。
【0069】
--亀裂のレベルによるランク付け--
0: 亀裂無し。
1: 肉眼では見えないが、拡大すると見えるもの。
2: 肉眼でギリギリ確認できるもの。
3: 亀裂は疎らだが、肉眼でも確認できるもの。
4: 亀裂が全体に万遍無く発生しているもの。
5: 亀裂の一部が繋がっているもの。
6: 亀裂が繋がっているものが散見されるもの。
7: 深く長い亀裂が全体に広がっているもの。
なお、17時間曝露後の積層ゴム試験片については、評価が0~2のものは、耐オゾン性が良好であり、クラックの発生を抑制できていると言える。
また、89時間曝露後の積層ゴム試験片については、評価が0~6のものは、耐オゾン性が良好であり、クラックの発生を抑制できていると言える。
【0070】
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
表3の結果から、本発明に従う実施例1~5の積層ゴム試験片は、比較例1の積層ゴム試験片に比べて、耐オゾン性が良好で、クラックの発生を抑制できていることが分かる。
また、表4の結果から、本発明に従う実施例6の積層ゴム試験片は、比較例3の積層ゴム試験片に比べて、耐オゾン性が良好で、クラックの発生を抑制できていることが分かる。
また、表5の結果から、本発明に従う実施例7の積層ゴム試験片は、比較例4の積層ゴム試験片に比べて、耐オゾン性が良好で、クラックの発生を抑制できていることが分かる。
また、表6の結果から、本発明に従う実施例8の積層ゴム試験片は、比較例5~7の積層ゴム試験片に比べて、耐オゾン性が良好で、クラックの発生を抑制できていることが分かる。
更に、表3中の比較例2は、実施例1に比べて貯蔵弾性率(E’)が低下しており、操縦安定性が低下することが考えられる。
1:ビード部、 2:サイドウォール部、 3:外層ゴム、 4:内層ゴム、 5:トレッド部、 6:カーカス、 7:金属コードの層、 8:ビードコア、 9:ベースゴム、 10:トレッドアンダークッションゴム、 11:金属コード層の補強層