(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023070189
(43)【公開日】2023-05-18
(54)【発明の名称】揮散体およびこれを含む薬剤揮散器
(51)【国際特許分類】
A61L 9/12 20060101AFI20230511BHJP
【FI】
A61L9/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178396
(22)【出願日】2022-11-07
(31)【優先権主張番号】P 2021182137
(32)【優先日】2021-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000100539
【氏名又は名称】アース製薬株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390024970
【氏名又は名称】永柳工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】東藤 悠一郎
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 沙紀
(72)【発明者】
【氏名】小野 康史
【テーマコード(参考)】
4C180
【Fターム(参考)】
4C180AA02
4C180AA07
4C180AA13
4C180AA18
4C180AA19
4C180CA06
4C180EB03X
4C180EB06X
4C180EB17X
4C180EC01
4C180HH10
4C180LL20
(57)【要約】
【課題】揮散終期まで揮散性薬剤の揮散量が大きく減少したり揮散が止まってしまう等の問題がなく、最後まで安定した揮散を実現することができる揮散体およびこれを含む薬剤揮散器を提供する。
【解決手段】コルク材と結合剤とを含み、炭素数10~16、蒸気圧0.05kPa以下(20℃)のイソパラフィン系溶剤に25℃の温度条件下で48時間浸漬したときに、下記式により求まる単位体積当たりの吸油量が80mg/cm3以上である、揮散性薬剤を揮散させるための揮散体とする。
単位体積当たりの吸油量[mg/cm3]=(浸漬後の揮散体の重量[mg]-浸漬前の揮散体の重量[mg])/揮散体の体積[cm3]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
揮散性薬剤を揮散させるための揮散体であって、
コルク材と結合剤とを含み、
炭素数10~16、蒸気圧0.05kPa以下(20℃)のイソパラフィン系溶剤に25℃の温度条件下で48時間浸漬したときに、下記式により求まる単位体積当たりの吸油量が80mg/cm3以上である、前記揮散体。
単位体積当たりの吸油量[mg/cm3]=(浸漬後の揮散体の重量[mg]-浸漬前の揮散体の重量[mg])/揮散体の体積[cm3]
【請求項2】
請求項1に記載の揮散体と揮散性薬剤とを含み、前記揮散体の少なくとも一部が前記揮散性薬剤と接触するように配置される、薬剤揮散器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揮散体およびこれを含む薬剤揮散器に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、種々の形態の薬剤揮散器が提案され、市販されている。例えば、特許文献1に示すように、上部に開口を有する容器に液状の揮散性薬剤を収容し、さらに容器の開口から棒状の揮散体を挿入して揮散性薬剤に浸した薬剤揮散器が開示されている。このような薬剤揮散器では、揮散性薬剤が棒状の揮散体を伝い、そして外部に揮散する。このような揮散器は、インテリア性に優れることから、特に芳香消臭剤などで広く利用されている。また、前記揮散体として、ラタン等の植物の茎やポリエステル等の樹脂を含むものが存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の揮散体または薬剤揮散器では、揮散終期になると揮散性薬剤の揮散量が大きく減少し、揮散が止まってしまうなど、最後まで安定した揮散を実現することが困難であった。
【0005】
本発明は、上記従来の実情に鑑みてなされたものであって、揮散終期まで揮散性薬剤の揮散量が大きく減少したり揮散が止まってしまう等の問題がなく、最後まで安定した揮散を実現することができる揮散体およびこれを含む薬剤揮散器の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、コルク材と結合剤とを含む、揮散性薬剤を揮散させるための揮散体において、所定の方法により求められる単位体積当たりの吸油量を一定の範囲とすることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は下記<1>および<2>に関するものである。
<1> 揮散性薬剤を揮散させるための揮散体であって、
コルク材と結合剤とを含み、
炭素数10~16、蒸気圧0.05kPa以下(20℃)のイソパラフィン系溶剤に25℃の温度条件下で48時間浸漬したときに、下記式により求まる単位体積当たりの吸油量が80mg/cm3以上である、前記揮散体。
単位体積当たりの吸油量[mg/cm3]=(浸漬後の揮散体の重量[mg]-浸漬前の揮散体の重量[mg])/揮散体の体積[cm3]
<2> <1>に記載の揮散体と揮散性薬剤とを含み、前記揮散体の少なくとも一部が前記揮散性薬剤と接触するように配置される、薬剤揮散器。
【発明の効果】
【0008】
本発明の揮散体およびこれを含む薬剤揮散器は、揮散終期まで揮散性薬剤の揮散量が大きく減少したり揮散が止まってしまう等の問題がなく、最後まで安定した揮散を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の揮散体の一態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳述するが、これらは望ましい実施態様の一例を示すものであり、本発明はこれらの内容に特定されるものではない。
なお、本明細書において、数値範囲「A~B」は「A以上B以下」であることを示す。
【0011】
[揮散体]
本発明の揮散体は、揮散性薬剤を揮散させるための揮散体である。
本発明の揮散体はコルク材と結合剤とを含む。コルク材はコルク樫の樹皮を剥いで粉砕したものであり、これと結合剤とを混合、成型することにより本発明の揮散体を製造することができる。
【0012】
コルク材と結合剤の混合物から本発明の揮散体を成型する方法は、特に限定されない。このような成型手段として、例えば、コンプレッション成型法、カレンダーロール成型法等が挙げられる。
【0013】
本発明の揮散体に含まれる結合剤は、コルク材と混合して成型することが可能なものであれば特に限定されない。
結合剤としては、例えば、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリエチレン樹脂およびフェノール樹脂、ゴム(天然ゴム、合成ゴム)等が挙げられ、これらの群から選択される少なくとも1種を用いることができる。
本発明の揮散体に含まれる結合剤の含有量は、後述する単位体積当たりの吸油量が満たされる限りにおいて特に限定されない。成型性の観点から、結合剤の含有量は、コルク材100重量部に対して5~70重量部であることが好ましく、7.5~60重量部であることがより好ましく、10~50重量部であることがさらに好ましい。
【0014】
本発明の揮散体は、単位体積当たりの吸油量が80mg/cm3以上である。
本明細書でいう単位体積当たりの吸油量とは、炭素数10~16、蒸気圧0.05kPa以下(20℃)のイソパラフィン系溶剤に25℃の温度条件下で48時間浸漬したときに、下記式により求めることができる値を意味する。
単位体積当たりの吸油量[mg/cm3]=(浸漬後の揮散体の重量[mg]-浸漬前の揮散体の重量[mg])/揮散体の体積[cm3]
揮散体の表面に液が付着している場合は、これを除去してから浸漬後の揮散体の重量を測定する。また、体積が大きい揮散体の場合は、その一部を切り取って得られた試験片を用いて単位体積当たりの吸油量を求めてもよい。例えば、揮散体から5.0mm×5.5mm×100mmの寸法で直方体状に切り取った試験片を用いて、揮散体の単位体積当たりの吸油量を求めることができる。
【0015】
揮散体の単位体積当たりの吸油量を求める際の揮散体の体積とは、揮散体中の空隙も含めた全体の体積を意味する。例えば、上述の5.0mm×5.5mm×100mmの寸法で直方体状に切り取った試験片の体積は2750mm3(=2.75cm3)として、単位体積当たりの吸油量を計算する。なお、浸漬により揮散体が膨張又は収縮する場合には、浸漬前の揮散体の体積を基に単位体積当たりの吸油量を求める。
また、揮散体の単位体積当たりの吸油量を求めるために用いる、炭素数10~16、蒸気圧0.05kPa以下(20℃)の前記イソパラフィン系溶剤としては、例えば、IPソルベント2028(出光興産株式会社製イソパラフィン系溶剤)等が挙げられる。
【0016】
本発明の揮散体は単位体積当たりの吸油量に応じて容器等から揮散性薬剤を取り込み、取り込まれた揮散性薬剤は大気中に揮散される。そして、揮散された揮散性薬剤を補う形で揮散体が揮散性薬剤を取り込むことにより、揮散性薬剤が継続的に揮散される。本発明の揮散体は単位体積当たりの吸油量が大きいほど揮散性薬剤を良好に取り込むことが可能となり、その結果として、揮散終期まで揮散性薬剤の揮散量が大きく減少したり揮散が止まってしまう等の問題がなく、最後まで安定した揮散が可能となる。
【0017】
本発明の揮散体の単位体積当たりの吸油量は80mg/cm3以上である。揮散終期まで揮散性薬剤の揮散量を適切な範囲に維持する観点で、単位体積当たりの吸油量は100mg/cm3以上であることが好ましく、120mg/cm3以上であることがより好ましく、150mg/cm3以上であることがさらに好ましく、170mg/cm3以上であることが特に好ましい。
本発明の揮散体の単位体積当たりの吸油量の上限は特に限定されず、揮散体に固有の飽和量が事実上の上限となる。飽和量は揮散体によって異なるが、用いられる溶剤(前記炭素数10~16、蒸気圧0.05kPa以下(20℃)のイソパラフィン系溶剤)および25℃の温度条件から、例えば、700mg/cm3程度である。したがって、本発明の揮散体の単位体積当たりの吸油量の上限を700mg/cm3に設定することも可能である。また、例えば、吸油量を500mg/cm3以下、好ましくは350mg/cm3以下としてもよい。
【0018】
本発明の揮散体の単位体積当たりの吸油量は、揮散体の原料や成型の条件等を適宜選択、調節することにより、所望の範囲とすることができる。例えば、揮散体の原料となるコルク材の粒度および結合剤の選択、ならびに、揮散体に含まれるコルク材の粒子断面積の調節等により、揮散体の単位体積当たりの吸油量の調節が可能となる。具体的に、コルク材の粒度を小さくすると吸油量は多くなり、コルク材の粒度を大きくすると吸油量は少なくなる。結合剤の配合量を減らすと吸油量は多くなり、結合剤の配合量を増やすと吸油量は少なくなる。結合剤としてウレタン樹脂を用いる場合、粘度が低いウレタン樹脂を選択すると吸油量は多くなり、粘度が高いウレタン樹脂を選択すると吸油量は少なくなる。またコルク材の粒子断面積の大きさを小さくすると吸油量は多くなり、コルク材の粒子断面積の大きさを大きくすると吸油量は少なくなる。
【0019】
本発明の揮散体に含まれるコルク材の形状、大きさ等は特に限定されない。成型性や単位体積当たりの吸油量を適切な範囲とする観点から、結合剤と混合して成型される前の状態(原料の段階)におけるコルク材の粒度幅が0.05mm~10mmであることが好ましく、0.1mm~6mmであることがより好ましく、0.2mm~4mmであることがさらに好ましい。
本明細書でいうコルク材の粒度幅とは、コルク材の95重量%以上が存在する粒度の幅を意味し、メッシュでのふるいわけにより確認することができる。本明細書では、例えば、10mmの目開きのふるいを通過しないコルク材と、0.05mmの目開きのふるいを通過するコルク材との合計が5重量%以下のコルク材を、0.05mm~10mmの粒度幅のコルク材という。
【0020】
また、結合剤と混合して成型される前の状態(原料の段階)におけるコルク材の粒度幅は、揮散体に含まれるコルク材の粒子断面積の割合と相関する。
本明細書でいう粒子断面積の割合は、以下の手順により求めることができる。
(1)揮散体表面のコルク材を色素液で着色する。
(2)着色された部分の揮散体表面のマイクロスコープ画像を得る。
(3)得られたマイクロスコープ画像に映し出されたコルク材の境界をペンでなぞり、揮散体表面に含まれる各コルク材の領域を確定する。
(4)各コルク材の領域を確定した画像を取り込み、揮散体表面における各コルク材の領域の面積(粒子断面積)を測定する。
(5)測定部分全体に存在するコルク材の領域の総数に対する、領域の面積が所定の範囲内にある領域の数の割合を、粒子断面積の割合として得る。
【0021】
本発明の揮散体表面における1.0mm2以下の面積を有するコルク材の領域の個数の割合は特に限定されないが、より安定した揮散を実現できるという観点から、上記手順により求められる1.0mm2以下の面積を有するコルク材の領域の個数の割合は20%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、60%以上であることがさらに好ましく、80%以上であることが特に好ましい。揮散体表面における1.0mm2以下の面積を有するコルク材の領域の個数の割合が上記範囲内であると、より安定した揮散を実現できる理由は明らかではないが、1.0mm2以下の小さい面積を有するコルク材の領域の個数の割合が大きいと、コルク材の表面積が増大し、揮散量が減少にしくいためと考えられる。
揮散体表面における1.0mm2以下の面積を有するコルク材の領域の個数の割合は、揮散体の原料となるコルク材の粒度幅の調整等により適宜調節することができる。
【0022】
本発明の揮散体に含まれる結合剤は上述のとおり特に限定されないが、単位体積当たりの吸油量を適切な範囲とする観点から、ウレタン樹脂およびエポキシ樹脂からなる群から選択される1以上であることが好ましい。
【0023】
本発明の揮散体の密度は特に限定されない。揮散性能向上の観点から、揮散体の密度が0.100g/cm3~0.600g/cm3であることが好ましく、0.130g/cm3~0.300g/cm3であることがより好ましく、0.150g/cm3~0.200g/cm3であることがさらに好ましい。
本明細書でいう密度とは、揮散体の重量を測定し、寸法から体積を求め、重量/体積により得ることができる密度を意味する。また、揮散体の密度を求める際の揮散体の体積は、揮散体の単位体積当たりの吸油量を求める際の揮散体の体積と同様に求めることができる。
揮散体の密度は、コルク材と結合剤の混合比率、成型時の仕込み量や圧力条件等により適宜調節することができる。
【0024】
本発明の揮散体の形状は特に限定されない。棒状、波形の棒状、柱状、波形の柱状、板状、波形の板状、筒状、球状、キャラクターの形状等、任意の形状を採用することができる。揮散性の観点から、本発明の揮散体の形状は、棒状又は波形の棒状であることが好ましく、例えば、
図1に示されるような波形の棒状とすることができる。
【0025】
なお、本発明の揮散体が棒状、波形の棒状、柱状、波形の柱状、板状、波形の板状、特に細長い棒状又は細長い波形の棒状である場合、上述の粒度幅が0.2mm~1mmのコルク材を用いると、揮散途中で揮散体が曲がりやすい傾向があるが、前記方法で測定される粒子断面積の大きなものの割合が大きいと、そのような変形を抑えることができるため好ましい。例えば、1.0mm2超の面積を有するコルク材の領域の個数の割合が18%以上(1.0mm2以下の面積を有するコルク材の領域の個数の割合が82%以下)であると、揮散体の変形を抑えることができるため好ましい。また、結合剤の含有量が小さいと揮散体が曲がりやすい傾向があるが、結合剤の含有量を10~50重量部とすることにより、そのような変形を抑えることができるため好ましい。
【0026】
本発明の揮散体は、揮散性薬剤の揮散が妨げられない範囲において、コルク材と結合剤以外の他の成分を含んでいてもよい。そのような他の成分としては、例えば、着色剤、撥油剤、除菌剤、消臭剤等が挙げられ、これらの群から選択される少なくとも1種を用いることができる。
他の成分の含有量は、例えば、コルク材100重量部に対して0.00001~10重量部であることが好ましい。
【0027】
[揮散性薬剤]
本発明の揮散体によって揮散される揮散性薬剤は、少なくとも室温で揮散性を有する液状の薬剤または溶剤に溶解して液状になる薬剤であれば、特に限定されない。
揮散性薬剤としては、例えば、香料、溶剤、消臭剤、殺菌剤、除菌剤、抗菌剤、防カビ剤、害虫忌避剤、害虫防除剤等が挙げられ、これらの群から選択される少なくとも1種を用いることができる。
なお、揮散性薬剤としては、親油性が高いものが好ましく、例えば、分配係数(logP)が好ましくは0以上、より好ましくは2以上、さらに好ましくは4以上の薬剤を用いることが好ましい。
ここで、LogPとは、オクタノール相と水相の間での物質の分配を表す尺度である。具体的には、化合物の化学構造をその構造要素に分解し、各フラグメントの有する疎水性フラグメント定数(f値)を積算して求められる。LogPは、例えば、MedChem1.01ソフトウエアプログラムを用いて計算することができる。なお、MedChemソフトウエアプログラムとは、Medicinal Chemistry Project,Pomona College,Pomona Californiaで開発されたソフトウエアプログラムである。
【0028】
香料としては、例えば、様々な植物や動物から抽出された天然香料や、化学的に合成される合成香料、さらにはこれらの香料成分を多数混合して作られる調合香料等が挙げられる。
【0029】
天然香料としては、例えば、ハッカ油、オレンジ油、レモン油、ラベンダー油、ラバンジン油、ベルガモット油、パチュリ油、シダーウッド油、ペパーミント油等の天然精油等が挙げられる。
合成香料としては、例えば、α-ピネン、β-ピネン、リモネン、p-シメン、テルピノレン、α-テルピネン、γ-テルピネン、α-フェランドレン、ミルセン、カンフェン、オシメン等の炭化水素テルペン;ヘプタナール、オクタナール、デカナール、ベンズアルデヒド、サリシリックアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、シトロネラール、ハイドロキシシトロネラール、ハイドロトロピックアルデヒド、リグストラール、シトラール、α-ヘキシルシンナミックアルデヒド、α-アミルシンナミックアルデヒド、リリアール、シクラメンアルデヒド、リラール、ヘリオトロピン、アニスアルデヒド、ヘリオナール、バニリン、エチルバニリン等のアルデヒド類;エチルフォーメート、メチルアセテート、エチルアセテート、メチルプロピオネート、メチルイソブチレート、エチルイソブチレート、エチルブチレート、プロピルブチレート、イソブチルアセテート、イソブチルイソブチレート、イソブチルブチレート、イソブチルイソバレレート、エチル-2-メチルバレレート、イソアミルアセテート、テルピニルアセテート、イソアミルプロピオネート、アミルプロピオネート、アミルイソブチレート、アミルブチレート、アミルイソバレレート、アリルヘキサノエート、エチルアセトアセテート、エチルヘプチレート、ヘプチルアセテート、メチルベンゾエート、エチルベンゾエート、エチルオクチレート、スチラリルアセテート、ベンジルアセテート、ノニルアセテート、ボルニルアセテート、リナリルアセテート、オルト-tert-ブチルシクロヘキシルアセテート、安息香酸リナリル、ベンジルベンゾエート、トリエチルシトレート、エチルシンナメート、メチルサリシレート、ヘキシルサリシレート、ヘキシルアセテート、ヘキシルブチレート、メンチルアセテート、ターピニルアセテート、アニシルアセテート、フェニルエチルイソブチレート、ジャスモン酸メチル、ジヒドロジャスモン酸メチル、エチレンブラシレート、γ-ウンデカラクトン、γ-ノニルラクトン、シクロペンタデカノライド、クマリン等のエステル・ラクトン類;アニソール、p-クレジルメチルエーテル、ジメチルハイドロキノン、メチルオイゲノール、β-ナフトールメチルエーテル、β-ナフトールエチルエーテル、アネトール、ジフェニルオキサイド、ローズオキサイド、ガラクソリド、アンブロックス等のエーテル類;イソプロピルアルコール、cis-3-ヘキセノール、ヘプタノール、2-オクタノール、ジメトール、ジヒドロミルセノール、リナロール、ベンジルアルコール、シトロネロール、ゲラニオール、ネロール、ターピネオール、テトラハイドロゲラニオール、l-メントール、セドロール、サンタロール、チモール、アニスアルコール、フェニルエチルアルコール、ヘキサノール等のアルコール類;ジアセチル、メントン、イソメントン、チオメントン、アセトフェノン、α-又はβ-ダマスコン、α-又はβ-ダマセノン、α-、β-又はγ-ヨノン、α-、β-又はγ-メチルヨノン、メチル-β-ナフチルケトン、ベンゾフェノン、テンタローム、アセチルセドレン、α-又はβ-イソメチルヨノン、α-、β-又はγ-イロン、マルトール、エチルマルトール、cis-ジャスモン、ジヒドロジャスモン、l-カルボン、ジヒドロカルボン、メチルアミルケトン等のケトン類、カンファー、1,8-シネオール、アリルアミルグリコレート、イソプレゴール、アリルカプロエート等が挙げられる。
これらの香料は、1種単独で使用されても、また2種以上を任意に組み合わせて、調合香料として使用することもできる。
【0030】
なお、香料の一例として挙げた天然精油は、後述する消臭剤、抗菌剤、害虫忌避剤及び/又は害虫防除剤としても用いることができる場合がある。
【0031】
溶剤としては、例えば、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール等のアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン、1,3-ブタンジオール等の多価アルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(ジプロピレングリコールメチルエーテル)、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール-tert-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル等のグリコールエーテル類、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ジエチルフタレート、ベンジルベンゾエート、トリエチルシトレート、ミリスチン酸イソプロピル等のエステル類、流動パラフィン、n-パラフィン、イソパラフィン等のパラフィン類、その他、ヘキサン、ケロシン、石油ベンジン等の脂肪族炭化水素類、尿素化合物等が挙げられる。中でも、溶剤としては、流動パラフィン、n-パラフィン、イソパラフィン等のパラフィン類が好ましい。
【0032】
消臭剤としては、例えば、植物抽出エキス(例えば、ツバキ、バラ、キク、マツ、スギ、オオバコ等から得られるエキス)、植物精油(例えば、茶抽出物、カテキン、植物ポリフェノール、リナロール、メントール、ボルネオール)等が挙げられ、公知の消臭剤が使用できる。
【0033】
殺菌剤、除菌剤、抗菌剤、防カビ剤としては、例えば、グルタルアルデヒド、フェノール、クレゾール、フェノキシエタノール、イソプロピルメチルフェノール(IPMP)、チモール、o-フェニルフェノール(OPP)、4-クロロ-3,5-ジメチルフェノール(PCMX)、チアベンダゾール(TBZ)、クロロタロニル(TPN)、トリクロサン等が挙げられ、公知の殺菌剤、抗菌剤、除菌剤、防カビ剤が使用できる。
【0034】
害虫忌避剤としては、例えば、ディート、ジ-n-ブチルサクシネート、ヒドロキシアニソール、ロテノン、エチル-ブチルアセチルアミノプロピオネート、イカリジン(ピカリジン)、3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル、p-メンタン-3,8-ジオール等が挙げられ、公知の害虫忌避剤が使用できる。
【0035】
害虫防除剤としては、例えば、ピレトリン、プラレトリン、エトフェンプロックス、イミプロトリン、フェノトリン、アレスリン、フタルスリン、レスメトリン、フラメトリン、ペルメトリン、エムペントリン、シフェノトリン、トランスフルトリン、メトフルトリン、プロフルトリン、モンフルオロトリン、ジメフルトリン等のピレスロイド系化合物、フェニトロチオン、ジクロルボス、クロルピリホスメチル、ダイアジノン、フェンチオン等の有機リン系化合物、カルバリル、プロポクスル等のカーバメイト系化合物、メトプレン、ピリプロキシフェン、メトキサジアゾン、フィプロニル、アミドフルメト等の殺虫性化合物、その他アリルイソチオシアネート、パラジクロロベンゼン、ナフタリン、ショウノウ等が挙げられ、公知の害虫防除剤が使用できる。
【0036】
これらの薬剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、異なる作用の薬剤、例えば、香料と溶剤を組合せて含有する等、薬剤の組み合わせも任意である。例えば、香料と溶剤を組合せて含有する場合、香料は0.01~25重量部、溶剤は75~99.99重量部とすることができる。また害虫忌避剤と溶剤を組合せて含有する場合、害虫忌避剤は0.01~15重量部、溶剤は85~99.99重量部とすることができ、害虫忌避剤の力価によっては、害虫忌避剤は0.01~1重量部、溶剤は99~99.99重量部としてもよい。
【0037】
上述のとおり、本発明の揮散体は揮散終期まで揮散性薬剤の揮散量が大きく減少したり揮散が止まってしまう等の問題がなく、最後まで安定した揮散が可能であるため、香料を含む芳香剤であれば芳香効果、害虫忌避剤であれば虫よけ効果、殺菌剤であれば殺菌効果など、使用期間にわたり、薬剤の所望の効果を得ることができる。
【0038】
[薬剤揮散器]
本発明の薬剤揮散器は、上記揮散体と揮散性薬剤とを含み、前記揮散体の少なくとも一部が前記揮散性薬剤と接触するように配置されている。
本発明の薬剤揮散器に用いられる揮散体および揮散性薬剤の例および好ましい態様等は、上述のとおりである。
【0039】
本発明の薬剤揮散器は、さらに容器を含んでいてもよい。本発明の薬剤揮散器に用いることができる容器は、少なくとも揮散性薬剤を収容することができ、かつ、前記揮散性薬剤が上述の揮散体と接触し得る態様である限り、特に限定されない。
【0040】
本発明の薬剤揮散器に含まれていてもよい容器の形状は、上述のとおり、少なくとも揮散性薬剤を収容することができ、かつ、前記揮散性薬剤が上述の揮散体と接触し得る範囲のものであれば、特に限定されない。容器の形状としては、例えば、開口を有する容器等が挙げられ、より詳細には、皿状、開口を有する瓶状、開口を有するパウチパック状等が挙げられる。
【0041】
本発明の薬剤揮散器に含まれていてもよい容器の素材も、特に限定されない。容器の素材としては、例えば、プラスチック、ガラス、陶器、金属等が挙げられる。
本発明の薬剤揮散器の一態様としては、例えば、上部に開口を有する容器と、先端部が前記開口から突出するように前記容器に挿入される上述の揮散体と、前記容器に収容される上述の揮散性薬剤とを含むもの等が挙げられる。このような態様の薬剤揮散器に含まれる本発明の揮散体を従来の揮散体に置き換えたものは、例えば、香料のディフューザーとして一般的に知られている。
【0042】
本発明の薬剤揮散器は、容器を含まない態様であってもよい。容器を含まない薬剤揮散器としては、例えば、揮散性薬剤を含んだ多孔体(スポンジ等)に揮散体が差し込まれてなる薬剤揮散器等が挙げられる。
【実施例0043】
以下に実施例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明は何らこれらに限定されるものではない。
【0044】
[実施例1~4、比較例1~5]
(実施例1~3の揮散体の製造)
コルク材B 100重量部、ウレタン樹脂A 20重量部をリボンミキサーに装填し、撹拌した。得られた混合物をコンプレッション成型法(温度:140~150℃、圧力:8ton)により成型し、板状にカットして打ち抜きを行い、実施例1の揮散体を得た。得られた揮散体の形状は直方体、密度は0.182g/cm3、寸法は5.0mm×5.5mm×200mmであった。
なお、後述の実施例および比較例を含め、揮散体の密度は重量を測定し、寸法から体積を求め、重量/体積により得た。
【0045】
結合剤を表1に記載のものに変更したことを除き、実施例1と同様の方法により、実施例2~3の揮散体を得た。得られた揮散体のいずれも、形状は直方体、密度は0.182g/cm3、寸法は5.0mm×5.5mm×200mmであった。
【0046】
(実施例4の揮散体の製造)
コルク材B 100重量部、エポキシ樹脂 49重量部をリボンミキサーに装填し、撹拌した。得られた混合物をコンプレッション成型法により加熱することなく成型し、板状にカットして打ち抜きを行い、実施例4の揮散体を得た。得られた揮散体の形状は直方体、密度は0.260g/cm3、寸法は5.0mm×5.5mm×200mmであった。
【0047】
(比較例1の揮散体の製造)
コルク材A 100重量部、フェノール樹脂 25重量部をリボンミキサーに装填し、撹拌した。得られた混合物をコンプレッション成型法により成型し、板状にカットして打ち抜きを行い、比較例1の揮散体を得た。得られた揮散体の形状は直方体、密度は0.490g/cm3、寸法は5.0mm×5.5mm×200mmであった。
【0048】
(比較例2の揮散体の製造)
コルク材B 100重量部、ラバーA 307重量部をリボンミキサーに装填し、撹拌した。得られた混合物をコンプレッション成型法により成型し、板状にカットして打ち抜きを行い、比較例2の揮散体を得た。得られた揮散体の形状は直方体、密度は0.510g/cm3、寸法は5.0mm×5.5mm×200mmであった。
【0049】
(比較例3の揮散体の製造)
コルク材A 100重量部、ラバーB 153重量部をリボンミキサーに装填し、撹拌した。得られた混合物をコンプレッション成型法により成型し、板状にカットして打ち抜きを行い、比較例3の揮散体を得た。得られた揮散体の形状は直方体、密度は0.890g/cm3、寸法は5.0mm×5.5mm×200mmであった。
【0050】
(比較例4の揮散体の製造)
コルク材C 100重量部、ラバーC 548重量部をリボンミキサー装填し、撹拌した。得られた混合物をコンプレッション成型法により成型し、板状にカットして打ち抜きを行い、比較例4の揮散体を得た。得られた揮散体の形状は直方体、密度は1.04g/cm3、寸法は5.0mm×5.5mm×200mmであった。
【0051】
(比較例5の揮散体の製造)
コルク材A 100重量部、ポリエチレン樹脂 333重量部をリボンミキサーに装填し、撹拌した。得られた混合物をカレンダーロール成型法により成型し、打ち抜きを行い、比較例5の揮散体を得た。得られた揮散体の形状は直方体、密度は0.710g/cm3、寸法は1.0mm×5.5mm×200mmであった。
【0052】
実施例および比較例の揮散体の製造に用いたコルク材および結合剤の詳細は、下記のとおりである。
【0053】
・コルク材A:コルク樫の樹皮を剥いで粉砕したコルク材(粒度幅0.2~1.0mm)
・コルク材B:コルク樫の樹皮を剥いで粉砕したコルク材(粒度幅0.3~2.0mm)
・コルク材C:コルク樫の樹皮を剥いで粉砕したコルク材(粒度幅1.0~2.5mm)
・コルク材D:コルク樫の樹皮を剥いで粉砕したコルク材(粒度幅1.0~4.0mm)
・コルク材E:コルク樫の樹皮を剥いで粉砕したコルク材(粒度幅0.3~2.5mm)
・コルク材F:コルク樫の樹皮を剥いで粉砕したコルク材(粒度幅2.4~4.0mm)
・コルク材G:コルク樫の樹皮を剥いで粉砕したコルク材(粒度幅4.0~5.6mm)
・コルク材H:コルク樫の樹皮を剥いで粉砕したコルク材(粒度幅5.6~10.0mm)
【0054】
なお、各コルク材の粒度幅は、粒度の上限および下限の大きさの目開きを有するふるいがそれぞれセットされた振とう機にコルク材を入れ、15分間振とうしてふるいわけし、粒度幅から外れるコルク材が5重量%以下であることにより確認した。
【0055】
・ウレタン樹脂A:エーテル系ウレタン樹脂(主成分:ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート)、比重1.07(20℃)、粘度50~150mPa・s(20℃)
・ウレタン樹脂B:エーテル系ウレタン樹脂(主成分:ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート)、粘度1862mPa・s(25℃)
・ウレタン樹脂C:エステル系ウレタン樹脂(主成分:ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート)、比重1.21、粘度5300mPa・s(25℃)
・エポキシ樹脂:ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂と変性脂環式アミンとの反応物
【0056】
・フェノール樹脂:ホルムアルデヒドを主成分とする、比重0.48(25℃)
・ポリエチレン樹脂:ポリエチレン50重量%、ポリブタジエン系エラストマー50重量%の混合物
・ラバーA:ニトリルゴムを主成分とし、炭酸カルシウム(充填剤)を含有するラバー材
・ラバーB:ニトリルゴムを主成分とし、炭酸カルシウム(充填剤)および発泡剤を含有するラバー材
・ラバーC:ニトリルゴムを主成分とし、カーボン(充填剤)を含有するラバー材
【0057】
(単位体積当たりの吸油量の測定)
実施例1の揮散体を5.0mm×5.5mm×100mmの寸法に切り取り、試験片とした。試験片3つをφ27mm×250mmの試験管に装填した。この試験管に溶媒(IPソルベント2028:出光興産株式会社製イソパラフィン系溶剤)を30mL入れ、試験片を25℃の温度条件下で48時間浸漬させた。試験片が浮くものについてはアルミホイルで押さえて、試験片が溶媒に完全に浸漬されるようにした。48時間浸漬後の試験片をピンセットにより取り出し、試験片を縦にした状態でピンセットにより固定し、表面に付着した溶媒が5分間垂れなくなったことを確認したうえで浸漬後の揮散体の重量を測定した。そして、単位体積当たりの吸油量を下記の式により求めた。結果を表1に示す。
単位体積当たりの吸油量[mg/cm3]=(浸漬後の揮散体の重量[mg]-浸漬前の揮散体の重量[mg])/揮散体の体積[cm3]
なお、単位体積当たりの吸油量は、試験片3つについて求めた吸油量の平均値を採用した。
【0058】
実施例2~4および比較例1~5の揮散体についても同様の試験を行い、それぞれの単位体積当たりの吸油量を求めた。なお、比較例5の揮散体については、1.0mm×5.5mm×100mmの寸法に切り取った揮散体を用いたことを除き、実施例1の揮散体と同様の試験を行った。結果を表1に示す。
【0059】
(揮散性能試験)
揮散性薬剤として芳香液20gを充填したガラス瓶に実施例1の揮散体を2本立て、30℃で72時間および追加の72時間の計144時間静置した。72時間静置後の芳香液の重量と試験開始時の芳香液の重量(20g)との差を0~72時間の揮散量(g)として求め、144時間静置後の芳香液の重量と72時間静置後の芳香液の重量との差を72~144時間の揮散量(g)として求めた。結果を表1に示す。
なお、使用した芳香液の処方は下記のとおりである。
・フローラル系香料(高砂香料工業社製):10重量%
・IPクリーンLX(出光興産株式会社製イソパラフィン系溶剤):75重量%
・IPソルベント2028(出光興産株式会社製イソパラフィン系溶剤):15重量%
【0060】
実施例2~4および比較例1~4の揮散体についても同様の試験を行い、それぞれの揮散量を求めた。また、比較例5の揮散体については、1.0mm×5.5mm×100mmの寸法に切り取った揮散体を5枚重ねし、5.0mm×5.5mm×100mmの寸法として実施例1と同様の試験を行い、揮散量を求めた。結果を表1に示す。
【0061】
(官能評価)
揮散性薬剤として芳香液20gを充填したガラス瓶に実施例1の揮散体を2本立て、25℃で48時間静置した。その後、25℃で、1時間当たり0.4回換気している2.9m3(95cm×140cm×220cm)の空間に移した。
なお、使用した芳香液の処方は、揮散性能試験で用いたものと同様である。
【0062】
1時間静置後の香り強度を以下の5段階評価にて行った(N=10~15)。そして、香り強度の平均スコアを官能評価の結果とした。結果を表1に示す。
・香り強度
5:強い
4:やや強い
3:普通
2:やや弱い
1:弱い
【0063】
実施例2~4および比較例1~4の揮散体についても同様の試験を行い、それぞれの官能評価の結果を得た。また、比較例5の揮散体については、1.0mm×5.5mm×100mmの寸法に切り取った揮散体を5枚重ねし、5.0mm×5.5mm×100mmの寸法として実施例1と同様の試験を行い、官能評価の結果を得た。結果を表1に示す。
【0064】
【0065】
上記の結果より、単位体積当たりの吸油量が80mg/cm3以上の揮散体は、揮散量が良好かつ長時間にわたって安定しており、官能評価結果も良好であることが分かった(実施例1~4)。他方、単位体積当たりの吸油量が80mg/cm3未満の揮散体は、揮散量が少なく、官能評価結果も不良であった(比較例1~5)。
【0066】
[実施例5~8]
(実施例5の揮散体の製造)
コルク材A 100重量部、ウレタン樹脂B 15重量部をリボンミキサーに装填し、撹拌した。得られた混合物をコンプレッション成型法(温度:140~150℃、圧力:8ton)により成型し、板状にカットして打ち抜きを行い、実施例5の揮散体を得た。得られた揮散体の形状は直方体、密度は0.182g/cm3、寸法は5.0mm×5.5mm×200mmであった。
【0067】
(実施例6の揮散体の製造)
コルク材Aに代えてコルク材Bを用いたことを除き、実施例5と同様の方法により、実施例6の揮散体を得た。得られた揮散体の形状は直方体、密度は0.182g/cm3、寸法は5.0mm×5.5mm×200mmであった。
【0068】
(実施例7の揮散体の製造)
コルク材Aに代えてコルク材Cを用いたことを除き、実施例5と同様の方法により、実施例7の揮散体を得た。得られた揮散体の形状は直方体、密度は0.182g/cm3、寸法は5.0mm×5.5mm×200mmであった。
【0069】
(実施例8の揮散体の製造)
コルク材Aに代えてコルク材Dを用いたことを除き、実施例5と同様の方法により、実施例8の揮散体を得た。得られた揮散体の形状は直方体、密度は0.182g/cm3、寸法は5.0mm×5.5mm×200mmであった。
【0070】
(単位体積当たりの吸油量の測定と揮散性能試験)
実施例5~8の揮散体について、実施例1~4および比較例1~4の揮散体に対して行ったことと同様の方法により、単位体積当たりの吸油量と揮散量(0~72時間、72~144時間)を求めた。結果を表2に示す。
【0071】
(官能評価)
揮散性薬剤として芳香液20gを充填したガラス瓶に、5.0mm×5.5mm×190mmの寸法に調節した実施例5の揮散体を2本立て、30℃で6時間又は125時間静置した。その後、25℃で、1時間当たり0.4回換気している2.9m3(95cm×140cm×220cm)の空間に移した。ここで、静置時間として採用した6時間及び125時間は、それぞれ、上記揮散量の測定時間である0~72時間及び72~144時間と対応する時間であり、それぞれ、揮散初期及び揮散後期に相当する。
なお、使用した芳香液の処方は、実施例1~4及び比較例1~5における揮散性能試験で用いたものと同様である。
【0072】
1時間静置後の香り強度を以下の5段階評価にて行った(N=10~15)。そして、香り強度の平均スコアを官能評価の結果とした。結果を表2に示す。
・香り強度
5:強い
4:やや強い
3:普通
2:やや弱い
1:弱い
【0073】
5.0mm×5.5mm×190mmの寸法に調節した実施例6~8の揮散体についても同様の試験を行い、それぞれの官能評価の結果を得た。結果を表2に示す。
【0074】
【0075】
上記の結果より、コルク材の粒度幅を変更することにより、揮散体の単位体積当たりの吸油量の調節が可能であることが分かった。このようにして得られた揮散体においても同様に、単位体積当たりの吸油量が80mg/cm3以上の場合には良好かつ長時間にわたって安定した揮散量が得られ、官能試験の結果も良好であった(実施例5~8)。
また、結合剤と混合して成型される前の状態(原料の段階)におけるコルク材の粒度幅が好ましくは4.0mm未満の範囲を含む場合(実施例5~8)、より好ましくは2.0mm未満の範囲を含む場合(実施例5~8)、さらに好ましくは1.0mm未満の範囲を含む場合(実施例5~6)に、良好な揮散量を示す傾向があった。
【0076】
[実施例9~12]
(実施例9の揮散体の製造)
コルク材Aに代えてコルク材Eを用いたことを除き、実施例5と同様の方法により、実施例9の揮散体を得た。得られた揮散体の形状は直方体、密度は0.182g/cm3、寸法は5.0mm×5.5mm×200mmであった。
【0077】
(実施例10の揮散体の製造)
コルク材Aに代えてコルク材Fを用いたことを除き、実施例5と同様の方法により、実施例10の揮散体を得た。得られた揮散体の形状は直方体、密度は0.182g/cm3、寸法は5.0mm×5.5mm×200mmであった。
【0078】
(実施例11の揮散体の製造)
コルク材Aに代えてコルク材Gを用いたことを除き、実施例5と同様の方法により、実施例11の揮散体を得た。得られた揮散体の形状は直方体、密度は0.182g/cm3、寸法は5.0mm×5.5mm×200mmであった。
【0079】
(実施例12の揮散体の製造)
コルク材Aに代えてコルク材Hを用いたことを除き、実施例5と同様の方法により、実施例12の揮散体を得た。得られた揮散体の形状は直方体、密度は0.182g/cm3、寸法は5.0mm×5.5mm×200mmであった。
【0080】
(単位体積当たりの吸油量の測定)
実施例9~12の揮散体について、実施例1~4および比較例1~4の揮散体に対して行ったことと同様の方法により、単位体積当たりの吸油量を求めた。結果を表3に示す。
【0081】
(揮散性能試験と官能評価)
揮散性薬剤として芳香液70mlを充填したガラス瓶に、5.0mm×5.5mm×190mmの寸法に調節した実施例9の揮散体を5本立て、30℃で、薬液残量が100%から約80%となるまでの1日当たりの揮散量を揮散量(初期)と定義し、薬液残量が約35%から約15%となるまでの1日当たりの揮散量を揮散量(終期)と定義し、初期と終期の揮散量を測定した。結果を表3に示す。
なお、使用した芳香液の処方は下記のとおりである。
・フローラル系香料(高砂香料工業社製):10重量%
・IP1620(出光興産株式会社製イソパラフィン系溶剤):40重量%
・アイソパーL(Exxon Mobil社製イソパラフィン系溶剤):35重量%
・アイソパーM(Exxon Mobil社製イソパラフィン系溶剤):15重量%
【0082】
上記揮散性能試験と同様の条件のもとで薬液残量が約90%となるまで芳香液を揮散させた揮散体(初期)、及び、上記揮散性能試験と同様の条件のもとで薬液残量が約35%となるまで芳香液を揮散させた揮散体(終期)を、それぞれ、25℃で、1時間当たり0.4回換気している2.9m3(95cm×140cm×220cm)の空間に移した。1時間静置後の香り強度を以下の5段階評価にて行った(N=10~15)。そして、香り強度の平均スコアを官能評価の結果とした。結果を表3に示す。
・香り強度
5:強い
4:やや強い
3:普通
2:やや弱い
1:弱い
【0083】
実施例10~12の揮散体についても同様の試験を行い、それぞれの単位体積当たりの吸油量の測定、揮散性能試験及び官能評価の結果を得た。なお、吸油量の測定は揮散体を5.0mm×5.5mm×100mmの寸法に調節し、また、揮散性能試験及び官能評価は、揮散体を5.0mm×5.5mm×190mmの寸法に調節して行った。結果を表3に示す。
【0084】
【0085】
上記の結果より、コルク材の粒度幅を変更することにより、揮散体の単位体積当たりの吸油量の調節が可能であることが分かった。このようにして得られた揮散体においても同様に、単位体積当たりの吸油量が80mg/cm3以上の場合には良好かつ長時間にわたって安定した揮散量が得られ、官能評価も良好であった(実施例9~12)。
また、結合剤と混合して成型される前の状態(原料の段階)におけるコルク材の粒度幅が好ましくは4.0mm未満の範囲を含む場合(実施例9~10)、より好ましくは2.0mm未満の範囲を含む場合(実施例9)、さらに好ましくは1.0mm未満の範囲を含む場合(実施例9)に、良好な揮散量及び官能評価を示す傾向があった。
【0086】
[実施例13~17]
(1.0mm2以下の面積を有するコルク材の領域の個数の割合の測定)
実施例5で用いた揮散体について、下記の手順により1.0mm2以下の面積を有するコルク材の領域の個数の割合を求めた(実施例13)。結果を表4に示す。
【0087】
(1)揮散体の5.5mm×200mmの面における、長辺方向の端から50mm、100mmおよび150mmの3か所のそれぞれに対して色素液(オリヱント化学工業株式会社製、OIL BLUE 2NをIPソルベント2028で溶解させた飽和溶液)をピペットで3滴(約0.2mL)滴下することにより、揮散体表面のコルク材を着色した。以下の測定を着色した3か所のそれぞれについて行い、得られた結果の平均値を最終的な結果として得た。
(2)着色した部分をマイクロスコープ(株式会社キーエンス製VHX-7000)を用いて20倍に拡大し、マイクロスコープ画像(観測範囲:約5.5mm×約15mm)を得た。
(3)得られたマイクロスコープ画像をA4紙に印刷し、コルク材の境界をペンでなぞり、さらに空隙部を塗りつぶし、スキャナーで取り込むことで揮散体表面における各コルク材の領域を確定した。
(4)各コルク材の領域を確定した画像をillustrator(Adobe社製)に取り込み、コルク材表面における各コルク材の領域の面積を測定した。
(5)測定部分全体に存在するコルク材の領域の総数に対する、1.0mm2以下の面積を有するコルク材の領域の個数の割合を、1.0mm2以下の面積を有するコルク材の領域の個数の割合として得た。
【0088】
実施例5で用いた揮散体に代えて実施例6、実施例4、実施例8及び実施例10で用いた揮散体を用いたことを除き、それぞれ実施例13と同様の測定を行った(実施例14~17)。結果を表4に示す。
【0089】
【0090】
上記の結果より、コルク材の粒度幅及び結合剤の種類を変更することにより、1.0mm2以下の面積を有するコルク材の領域の個数の割合の調節が可能であることが分かった。このようにして得られた揮散体において、単位体積当たりの吸油量が80mg/cm3以上であり、さらに、良好かつ長時間にわたって安定した揮散量が得られ、官能評価も良好であった揮散体は、1.0mm2以下の面積を有するコルク材の領域の個数の割合が20%以上であった(実施例13~17)。