(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023070234
(43)【公開日】2023-05-19
(54)【発明の名称】AIによるコンクリートの流動性推定システム
(51)【国際特許分類】
G01N 11/00 20060101AFI20230512BHJP
B28C 5/00 20060101ALI20230512BHJP
G01N 33/38 20060101ALI20230512BHJP
【FI】
G01N11/00 E
B28C5/00
G01N33/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021182270
(22)【出願日】2021-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】598037569
【氏名又は名称】會澤高圧コンクリート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147072
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 裕通
(74)【代理人】
【識別番号】100097696
【弁理士】
【氏名又は名称】杉谷 嘉昭
(72)【発明者】
【氏名】會澤 祥弘
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 良滋
(72)【発明者】
【氏名】藤井 大輔
(72)【発明者】
【氏名】藤本 邦幸
(72)【発明者】
【氏名】今 寿彦
(72)【発明者】
【氏名】高玉 信彦
(72)【発明者】
【氏名】神坂 和博
【テーマコード(参考)】
4G056
【Fターム(参考)】
4G056AA06
4G056DA09
(57)【要約】
【課題】コンクリートの流動性についての高い推定精度で推定する。
【解決手段】コンクリートの流動性推定システム(1)は制御装置(14)に設けた流動性推定AI(16)を備える。流動性推定AI(16)は、教師あり学習型のニューラルネットワークである第1~3のAI(18、19、20)から構成する。第1のAI(18)はマイクロホン(10)で得たコンクリートの混練音である音響データを説明変数として入力し、第1の中間流動性推定値を目的変数として出力する。第2のAI(19)はカメラ(12)で撮影したコンクリートの画像データを説明変数とし、第2の中間流動性推定値を目的変数とする。そして第3のAI(20)は第1、2の中間流動性推定値を説明変数とし、コンクリートの流動性推定値を目的変数として出力するようにする。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート混練用のミキサと、
前記ミキサの近傍に設けられているマイクロホンと、
前記ミキサの近傍に設けられているカメラと、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記マイクロホンで検出されるコンクリート混練音のサンプリングである音響データと、前記カメラで撮影されるコンクリートの画像データとを説明変数として入力し、スランプまたはスランプフローからなるコンクリート流動性についての推定値である流動性推定値を目的変数として出力する流動性推定AIを備え、
前記流動性推定AIは、教師あり学習型のニューラルネットワークである第1~3のAIから構成され、
前記第1のAIは、前記音響データを説明変数として入力すると目的変数として第1の中間流動性推定値が出力され、
前記第2のAIは、前記画像データを説明変数として入力すると目的変数として第2の中間流動性推定値が出力され、
前記第3のAIは、前記第1の中間流動性推定値と前記第2の中間流動性推定値とが説明変数として入力されると、前記流動性推定値が目的変数としてとして出力されるようになっており、
前記第1~3のAIは、複数ロットのコンクリートについてミキサにて混練して得た、それぞれの前記音響データと前記画像データとを学習用の説明変数とすると共に、実測されたスランプあるいは実測されたスランプフローからなるコンクリート流動性実測値を、前記1、2の中間流動性推定値と前記流動性推定値のそれぞれに対する教師データとして与えて学習するようになっている、コンクリートの流動性推定システム。
【請求項2】
前記音響データと、前記画像データは、コンクリート混練中における複数回のタイミングで得られるようになっており、
前記流動性推定AIは、前記複数回のタイミングで得られた複数の前記音響データから前記第1のAIによって複数の前記第1の中間流動性推定値が出力され、前記複数回のタイミングで得られた複数の前記画像データから前記第2のAIによって複数の前記第2の中間流動性推定値が出力され、複数の前記第1の中間流動性推定値と複数の前記第2の中間流動性推定値とから前記第3のAIによって1個の前記流動性推定値が出力されるようになっている、請求項1に記載のコンクリートの流動性推定システム。
【請求項3】
前記複数回のタイミングは、コンクリートの混練完了10秒前から混練完了までの1秒毎のタイミングを含んでいる、請求項2に記載のコンクリートの流動性推定システム。
【請求項4】
前記第1~3のAIのいずれか、あるいは全てに対して、コンクリートを混練する際に指定する呼び方スランプあるいは呼び方スランプフローが入力されるようになっている、請求項1~3のいずれかの項に記載のコンクリートの流動性推定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートの流動性を推定する流動性推定システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンクリートはいわゆるバッチャープラントのミキサによって、普通ポルトランドセメント、混練水、細骨材、粗骨材、そして適宜添加される混和剤が混練されて得られる。製造されたコンクリートはアジテータトラックによって搬送され、コンクリート打設現場で荷下ろしされ打設される。コンクリートは要求される強度、性状等がコンクリート打設現場によって異なっており、発注時に指定されている。コンクリートの性状を示す指標の一つにスランプがある。スランプは流動性を示す指標であり、正式には次のようにして測定する。すなわち円錐形の高さ30cmの容器すなわちスランプコーンにコンクリートを詰め、これを逆さにしてスランプコーンを静かに上方に抜き取る。このときコンクリートの形状が崩れて頂部が低下するが、この低下によって下がる高さがスランプであり、値が大きいと流動性が大きく、小さいと流動性が小さいことを示している。バッチャープラントのミキサの多くにはスランプモニタが設けられている。スランプモニタは、ミキサを駆動する電流等からスランプを推定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【0004】
特許文献1には、機械学習を使ってスランプを推定する推定システムが記載されている。この推定システムにおいては、まずコンクリートを混練する際にミキサ内においてコンクリートを撮影し、得られた画像データをニューラルネットワークに説明変数として入力し、そのときのスランプを教師データとして学習させる。学習したニューラルネットワークにおいて、スランプを推定したいコンクリートについてその画像データを入力する。そうすると目的変数として推定値としてのスランプが出力される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のスランプモニタによるスランプの推定方法によっても、実用的な精度でスランプを推定することができ優れている。また、特許文献1に記載のスランプの推定システムによってもスランプモニタを使用せずにスランプを推定でき優れている。しかしながら、バッチャープラントにスランプモニタが設けられていなければスランプを推定することはできないし、スランプモニタが必ずしも正しいスランプを推定するとは限らない。特許文献1に記載の方法によるスランプの推定システムについては、スランプの推定の精度が必ずしも実用的な精度に達しているとは言えず、さらに推定精度を改善する余地があるように見受けられる。
【0006】
本発明は、スランプあるいはスランプフローからなるコンクリートの流動性についてより推定精度の高い推定値を推定することができる流動性推定システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、コンクリート混練用のミキサと、マイクロホンと、カメラと、制御装置とからなるコンクリートの流動性推定システムとして構成する。制御装置には流動性推定AIを備える。流動性推定AIは、教師あり学習型のニューラルネットワークである第1~3のAIから構成する。第1のAIはマイクロホンで得たコンクリートの混練音である音響データを説明変数として入力し、第1の中間流動性推定値を目的変数として出力する。第2のAIはカメラで撮影したコンクリートの画像データを説明変数として入力し、第2の中間流動性推定値を目的変数として出力する。そして第3のAIは第1、2の中間流動性推定値を説明変数とし、コンクリートの流動性推定値を目的変数として出力するようにする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、3個のAIつまり第1~3のAIから流動性推定AIを構成しており、コンクリートの混練音の音響データとコンクリートの画像データとから流動性推定値を出力するようにしているので、高い推定精度でコンクリートの流動性を推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施の形態に係るコンクリートの流動性推定システムを示す正面図である。
【
図2】本実施の形態に係る流動性推定AIを示すブロック図である。
【
図3】本実施の形態に係る流動性推定AIを構成する第1のAIのニューラルネットワークを示す図である。
【
図4】本実施の形態に係る流動性推定AIを構成する第2のAIのニューラルネットワークを示す図である。
【
図5】本実施の形態に係る流動性推定AIを構成する第3のAIのニューラルネットワークを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施の形態を説明する。
本発明の形態に係るコンクリートの流動性推定システム1は、
図1に示されているように、バッチャープラント2のミキサ4に関連して設けられている。バッチャープラント2には、図に示されていないが、普通ポルトランドセメントを貯蔵・投入するセメントビン、骨材を貯蔵・投入する骨材ビン、そしてこれらから投入される材料を計量する複数の計量槽、混練水・混和剤を投入する計量槽、等が設けられている。ミキサ4にはこれらから材料が投入されるようになっており、混練してコンクリートを製造する。ミキサ4の下方には積み込み用ホッパ5が設けられており、製造したコンクリートをアジテータトラック6に積載するようになっている。なお、ミキサ4には、ミキサの駆動に要するトルク、つまり消費される電力を測定して、コンクリートのスランプを推定するスランプモニタ7が設けられている。
【0011】
本実施の形態に係る流動性推定システム1は、ミキサ4と、ミキサ4の近傍に設けられているマイクロホン10と、ミキサ4の上方に設けられているカメラ12と、コントローラつまり制御装置14とから構成されている。制御装置14には、次に詳しく説明する本実施の形態に係る流動性推定AI16が設けられており、コンクリートの流動性を推定するようになっている。推定する流動性としてスランプとすることも、スランプフローとすることもできるが、本実施の形態においてはスランプを推定するようになっている。流動性推定AI16が学習型のAIからなり、教師データとしてスランプが与えられるようになっているからである。ミキサ4において混練されるコンクリートは、マイクロホン10によって混練音が集音され、そしてカメラ12によって撮影されるようになっている。混練音はサンプリングされて音響データとして、そしてコンクリートの撮影された画像は画像データとして、それぞれ制御装置14に送られる。流動性推定AI16は、これらからコンクリートの流動性を推定する。なお、本実施の形態においては、制御装置14にはスランプモニタ7が接続されている。スランプモニタ7で測定したスランプによって、流動性推定AI16が学習するようになっている。
【0012】
本実施の形態に係る流動性推定AI16は、
図2に示されているように、3個のAIつまり第1~3のAI18、19、20を組み合わせた構成になっている。第1~3のAI18、19、20は、いずれも教師あり学習型のニューラルネットワークである。
【0013】
第1のAI18は、コンクリート混練音のサンプリングである音響データを説明変数として入力し、コンクリートの流動性の中間的な推定値である第1の中間流動性推定値を目的変数として出力するようになっている。
図3には第1のAI18を構成するニューラルネットワークが模式的に示されている。複数層に階層化された複数個のニューロンと、隣り合う階層のニューロン同士を接続しているシナプスとから構成され、いわゆるパーセプトロン型のニューラルネットワークからなる。つまり、入力層22と、複数層の中間層24と、出力層25とから構成されている。入力層22に説明変数としての音響データが入力され、これが処理されて出力層25から目的変数としての第1の中間流動性推定値が出力されるようになっている。
図2に示されているように、第1のAI18にはコンクリート流動性実測値も入力されるようになっており、これによって第1のAI18が学習するようになっている。コンクリート流動性実測値は、本実施の形態においてはスランプモニタ7で測定されるスランプになっている。この測定されたスランプを、コンクリート流動性実測値として採用し、学習するようにしている。
【0014】
本実施の形態においては、音響データはコンクリートの混練完了前の所定のタイミングから、混練完了のタイミングまで所定の周期でサンプリングされている。例えば混練完了の10秒前から、混練完了するまで毎秒サンプリングされている。このような、サンプリングされた複数のタイミングの音響データに対して、第1のAI18が処理し、それぞれ第1の中間流動性推定値を出力するようになっている。つまり、本実施の形態に係る流動性推定AI16において、第1の中間流動性推定値は、時系列に複数個出力されるようになっている。
【0015】
流動性推定AI16を構成している第2のAI19は、
図2に示されているように、コンクリートの画像の画像データを説明変数として入力とし、コンクリートの流動性の中間的な推定値である第2の中間流動性推定値を目的変数として出力するようになっている。第2のAI19も第1のAI18と同様に構成され、
図4に示されているように入力層27と、中間層28と、出力層29とからなる。入力層に説明変数としての画像データが入力され、出力層29から目的変数としての第2の中間流動性推定値が出力される。この第2のAI19も、
図2に示されているように、コンクリート流動性実測値であるスランプモニタ7で測定されるスランプが入力され、学習するようになっている。本実施の形態においては、画像データもコンクリートの混練完了前の所定のタイミングから、混練完了のタイミングまで所定の周期で撮影されるようになっている。例えば混練完了の10秒前から、混練完了するまで毎秒撮影されている。このような複数のタイミングで撮影された画像データに対して、第2のAI19が処理し、それぞれ第2の中間流動性推定値を出力するようになっている。つまり第2の中間流動性推定値も、時系列に複数個出力されるようになっている。
【0016】
流動性推定AI16を構成している第3のAI20は、
図2に示されているように、第1、2のAI18、19が目的変数として出力した第1、2の中間流動性推定値を説明変数として入力し、コンクリートの流動性の推定値、つまり流動性推定値を目的変数として出力するようになっている。第3のAI20も第1のAI18と同様に構成され、
図5に示されているように入力層31と、中間層32と、出力層33とからなる。ところで
図5には、入力層に入力されている第1の中間流動性推定値と、第2の中間流動性推定値は、それぞれ複数個示されている。これらはいずれも、第1、2のAI18、19から時系列に複数個出力された第1、2の中間流動性推定値である。第3のAI20は、これらの時系列に複数個ある第1、2の中間流動性推定値について処理して、1個の流動性推定値を出力する。この第3のAI20も、
図2に示されているように、コンクリート流動性実測値としてスランプモニタ7で測定されるスランプが入力され、学習するようになっている。
【0017】
本実施の形態に係る流動性推定AI16は、次のようにして学習させる。まず、バッチャープラント2において、多数ロットのコンクリートを製造する。つまりミキサ4においてコンクリートを混練し、それぞれのコンクリートについて音響データ、画像データを得る。そしてスランプモニタ7において測定されるスランプを得る。以下、このスランプをスランプ実測値と呼ぶ。多数ロットについて得た、これらの学習用データによって学習させる。まず、音響データとスランプ実測値とから第1のAI18を学習させ、画像データとスランプ実測値とから第2のAI19を学習させる。第1、2のAI18、19の学習が進むと第1、2のAI、18、19の出力する第1、2の中間流動性推定値が安定する。このようになったら、第1、2のAI18、19により出力される第1、2の中間流動性推定値と、スランプ実測値とから第3のAI20を学習させる。
【0018】
流動性推定AI16が学習されたら、バッチャープラント2において混練するコンクリートについて、次のようにスランプを推定することができる。コンクリートの混練音から音響データを得、コンクリートの画像データを得る。これらを流動性AI16に入力すると、流動性推定値が得られる。すなわちスランプを推定することができる。
【0019】
本実施の形態に係る流動性推定システム1は色々な変形が可能である。例えば流動性推定AI16について変形することができる。例えば第1~3のAI18、19、20に入力する入力データを追加することができる。コンクリートを製造するとき、流動性の目標値として例えば呼び方スランプを指定している。呼び方スランプは必ずしも製造されるコンクリートのスランプと一致するとは限らないが、このような呼び方スランプを説明変数として追加することができる。例えば、第1のAI18と、第3のAI20に対して、呼び方スランプを説明変数として追加する、ということが考えられる。説明変数として他のデータ、例えば気温、水温等を追加してもよい。説明変数の追加は適宜実施することができる。他の点についての変形も可能である。本実施の形態に係る流動性推定システム1では、目的変数に関する教師データとしてスランプモニタ7で測定されるスランプが採用されている。しかしながらスランプフローを実測することができれば、これを教師データとして与えて学習させることができる。この場合に流動性推定システム1で推定する流動性推定値は、スランプではなく当然にスランプフローになる。
【実施例0020】
本実施の形態に係る流動性推推定システム1について、十分に高い精度でスランプを推定できることを確認するため、実験を行った。
実験方法:
バッチャープラント2において、スランプが異なるコンクリートを15131ロット分製造し、学習用データを得た。つまり15131セット分の時系列の音響データと、時系列の画像データと、スランプモニタ7で測定したスランプ実測値を得た。
第1のAI18に対しては、学習用データの音響データを説明変数とし、スランプ実測値を目的変数についての教師データとして与えて学習させた。
第2のAI19に対しては、学習用の画像データだけでなくコンクリートを製造したときに指定した呼び方スランプも説明変数として与え、スランプ実測値とともに学習させた。
第3のAI20に対しては、第1、2の中間流動性推定値だけでなく、呼び方スランプも説明変数として与え、スランプ実測値とともに学習させた。
次に、バッチャープラント2において、スランプが異なるコンクリートを3000ロット分製造し、確認用データを得た。つまり、3000セット分の時系列の音響データと、時系列の画像データと、スランプモニタ7で測定したスランプ実測値を得た。
学習済みの第1のAI18に対して、確認用データの音響データを与えて第1の中間流動性推定値を出力させ、スランプ実測値と比較した。比較した結果を表1-1に示す。
同様に学習済みの第2のAI19に対して、確認用データの画像データと呼び方スランプとを与えて第2の中間流動性推定値を出力させ、スランプ実測値と比較した。比較した結果を表1-2に示す。
最後に、学習済みの第2のAI19に対して、第1、2のAI18、19が出力した第1、2の中間流動性推定値と呼び方スランプとを与えて流動性推定値を出力させ、スランプ実測値と比較した。比較した結果を表1-3に示す。
【0021】
【0022】
考察:
本実施の形態に係る流動性推定AI16のうち、第1のAI18によって推定した第1の中間流動性推定値については、スランプ実測値との比較で誤差が±2.5cm以内になった割合は79.47%であり比較的良好であった。しかしながら誤差が±1.5cm以内になった割合は61.09%であり、十分に高いとは言えない。同様に、第2のAI20によって推定した第2の流感流動性推定値については、スランプ実測値との比較で誤差が±2.5cm以内になった割合は88.06%であり比較的良好であったが、誤差が±1.5cm以内になった割合は70.90%であり、十分に高いとは言えない。
これに対して、第3のAI20によって推定した流動性推定値、つまり本実施の形態に係る流動性推定AI16によって推定した流動性推定値については、スランプ実測値との比較で誤差が±2.5cm以内になった割合が96.31%であり誤差が±1.5cm以内になった割合が80.84%であり、非常に良好であった。本実施の形態に係る流動性推定AI16は、高い精度でスランプを推定できることが確認できた。
本実施の形態について、マイクロホン10によってコンクリート混練音のサンプリングである音響データを得ると説明した。ところで混練音には、コンクリート材料同士が衝突・分散・混合するときのコンクリート材料が発する音の他に、コンクリート材料がミキサ4の鋼板にぶつかる衝撃音や摩擦音も含まれている。さらにはミキサ4を駆動するモータ音も含まれている。マイクロホン10を設置する場所に応じて、それぞれの音の割合が当然に変わってくる。つまり、ミキサ4を駆動するモータ近傍にマイクロホン10が配置されていると、モータ音の割合が高くなるが、ミキサ4内に配置されているとコンクリート材料が発する音の割合が高くなるからである。本実施の形態に係る流動性推定AI16は、音響データに含まれるこれらの音の割合がどのようになっていても、コンクリートの流動性を推定できる。つまり、音響データに含まれる音の中でモータ音の割合が大きくても、あるいはほとんどなくても、コンクリートの流動性を推定できる。ただし、マイクロホン10の設置位置については、固定にして学習用データとしての音響データを得、コンクリート流動性の推定用として音響データを得るようにすることが好ましい。