(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023070278
(43)【公開日】2023-05-19
(54)【発明の名称】杭と上部構造物との接合構造
(51)【国際特許分類】
E02D 27/12 20060101AFI20230512BHJP
E02D 27/00 20060101ALI20230512BHJP
【FI】
E02D27/12 A
E02D27/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021182351
(22)【出願日】2021-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】591205536
【氏名又は名称】JFEシビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100184859
【弁理士】
【氏名又は名称】磯村 哲朗
(72)【発明者】
【氏名】亀田 哲二郎
(72)【発明者】
【氏名】野呂 彰
(72)【発明者】
【氏名】池田 辰弥
【テーマコード(参考)】
2D046
【Fターム(参考)】
2D046AA14
2D046CA02
(57)【要約】
【課題】
構造の簡素化及びコストダウンを図りつつ、上部構造物の各柱脚から杭に作用する水平力の大きさのばらつきを抑え、2層以上の上部構造物への適用やブレースの併用が可能な、杭と上部構造物との接合構造を提供する。
【解決手段】
地盤に打設された杭と、前記杭の杭頂に設置された垂直位置調整治具と、上部構造物の柱が接合されたトッププレートと、該トッププレートの下に設けられた筒状の嵌合部とを有し、前記嵌合部が前記杭の上部外周を覆う状態となるように前記トッププレートが前記垂直位置調整治具の上に設置されたキャップ部材と、前記杭の上部外周面と前記キャップ部材との間に形成される空間に充填されたコンクリートとを備える杭と上部構造物との接合構造であって、前記トッププレート直上には基礎梁との仕口部が設けられている、杭と上部構造物との接合構造。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に打設された杭と、
前記杭の杭頂に設置された垂直位置調整治具と、
上部構造物の柱が接合されたトッププレートと、該トッププレートの下に設けられた筒状の嵌合部とを有し、前記嵌合部が前記杭の上部外周を覆う状態となるように前記トッププレートが前記垂直位置調整治具の上に設置されたキャップ部材と、
前記杭の上部外周面と前記キャップ部材との間に形成される空間に充填されたコンクリートと
を備える杭と上部構造物との接合構造であって、
前記トッププレート直上には基礎梁との仕口部が設けられている、杭と上部構造物との接合構造。
【請求項2】
前記上部構造物にはブレースが設けられ、
該ブレースの下端が、前記仕口部内に接合されている、請求項1に記載の杭と上部構造物との接合構造。
【請求項3】
前記ブレースの前記仕口部への接合位置の中心の高さが、前記基礎梁の梁せい内に収まっている、請求項2に記載の杭と上部構造物との接合構造。
【請求項4】
前記基礎梁は鉄骨梁であり、
前記仕口部は前記基礎梁を取付可能なブラケットを有する、請求項1~3のいずれかに記載の杭と上部構造物との接合構造。
【請求項5】
前記キャップ部材と前記仕口部は一つの鉄骨部材として形成されている、請求項4に記載の杭と上部構造物との接合構造。
【請求項6】
前記基礎梁は鉄筋コンクリート梁であり、
前記仕口部は、前記柱の根巻コンクリートである、請求項1~3のいずれかに記載の杭と上部構造物との接合構造。
【請求項7】
前記基礎梁は鉄筋コンクリート梁であり、
前記仕口部は、前記柱の根巻コンクリートであり、該根巻コンクリートには、前記ブレースから前記仕口部に入力する水平力を該ブレースの下方の前記基礎梁に伝達する補強筋が配筋されている、請求項2または3に記載の杭と上部構造物との接合構造。
【請求項8】
前記基礎梁は幅が高さよりも大きい断面形状を有する、請求項6または7に記載の杭と上部構造物との接合構造。
【請求項9】
前記基礎梁は土間コンクリートと一体に形成されている、請求項6~8のいずれかに記載の杭と上部構造物との接合構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭と上部構造物との接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
杭と上部構造物とを接合する方法としては、鉄筋コンクリート製の基礎フーチング等を介して接合する方法が、多く用いられるが、配筋が繁雑になったり地盤の掘削土量が増えたりするため、コストの低減や工期の短縮が阻害されていた。
【0003】
そこで、基礎フーチングを不要として、掘削土量を削減すべく、例えば特許文献1には、鋼管柱またはコンクリート充填鋼管柱の柱脚に接合されたベースプレートと、その下側に接合された鋼管とから構成されたキャップ鋼管(接合治具)を、鋼管杭または既製コンクリート杭の頭部に被せ、その隙間にコンクリートを充填して、杭と柱を一体化させることで剛接合とする、杭と上部構造物との接合構造が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示される接合構造は、平屋の建築物等の、1層の構造物に適用することを前提としており、比較的荷重の大きな2層以上の構造物に適用することが難しかった。これは、2層以上の上部構造物は荷重が大きく、地震時に作用する水平力が大きくなるため、杭頭変位や柱の変形角が大きくなって保有水平耐力が上昇しないためである。特に、建設予定地の地盤のN値が低い場合には、地震時の杭頭変位や柱の変形角が大きくなるため、杭径の拡大やブレースの設置等、水平変形を抑える対策が必要になる。
【0006】
また、特許文献1に開示される接合構造は、1階の床を土間とすることを前提として、杭と柱との接合部を相互に連結する基礎梁を省略することにより、掘削土量を削減している。しかし、地盤が軟弱であり、1階の床の積載荷重が大きい場合には、土間構造では床が沈下してしまうため、この接合構造を適用することは難しかった。また、上部構造物の各柱脚から杭に作用する水平力が、基礎梁を通じて相互に伝達されることがなく、各柱脚から杭に作用する水平力の大きさにばらつきが生じやすかった。このため、上部構造物の平面計画によっては、大きな水平力が作用する柱脚の杭径を拡大する必要が生じ、杭の経済設計が難しかった。
【0007】
さらに、地震時の杭頭変位や柱の変形角を抑えるべく、上部構造物にブレースを設置しようとすると、ブレースの下端が接合される柱脚の下の杭には、ブレースからの入力によってさらに大きな水平力が作用する。このように、特許文献1に開示される接合構造を有する構造物にブレースを併用すると、杭径を更に拡大する必要が生じて、コスト低減効果が損なわれてしまう問題があった。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、構造の簡素化及びコストダウンを図りつつ、上部構造物の各柱脚から杭に作用する水平力の大きさのばらつきを抑え、2層以上の上部構造物への適用やブレースの併用が可能な、杭と上部構造物との接合構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
[1] 地盤に打設された杭と、前記杭の杭頂に設置された垂直位置調整治具と、上部構造物の柱が接合されたトッププレートと、該トッププレートの下に設けられた筒状の嵌合部とを有し、前記嵌合部が前記杭の上部外周を覆う状態となるように前記トッププレートが前記垂直位置調整治具の上に設置されたキャップ部材と、前記杭の上部外周面と前記キャップ部材との間に形成される空間に充填されたコンクリートとを備える杭と上部構造物との接合構造であって、前記トッププレート直上には基礎梁との仕口部が設けられている、杭と上部構造物との接合構造。
[2] 前記上部構造物にはブレースが設けられ、該ブレースの下端が、前記仕口部内に接合されている、[1]に記載の杭と上部構造物との接合構造。
[3] 前記ブレースの前記仕口部への接合位置の中心の高さが、前記基礎梁の梁せい内に収まっている、[2]に記載の杭と上部構造物との接合構造。
[4] 前記基礎梁は鉄骨梁であり、前記仕口部は前記基礎梁を取付可能なブラケットを有する、[1]~[3]のいずれかに記載の杭と上部構造物との接合構造。
[5] 前記キャップ部材と前記仕口部は一つの鉄骨部材として形成されている、[4]に記載の杭と上部構造物との接合構造。
[6] 前記基礎梁は鉄筋コンクリート梁であり、前記仕口部は、前記柱の根巻コンクリートである、[1]~[3]のいずれかに記載の杭と上部構造物との接合構造。
[7] 前記基礎梁は鉄筋コンクリート梁であり、前記仕口部は、前記柱の根巻コンクリートであり、該根巻コンクリートには、前記ブレースから前記仕口部に入力する水平力を該ブレースの下方の前記基礎梁に伝達する補強筋が配筋されている、[2]または[3]に記載の杭と上部構造物との接合構造。
[8] 前記基礎梁は幅が高さよりも大きい断面形状を有する、[6]または[7]に記載の杭と上部構造物との接合構造。
[9] 前記基礎梁は土間コンクリートと一体に形成されている、[6]~[8]のいずれかに記載の杭と上部構造物との接合構造。
【発明の効果】
【0010】
本発明の杭と上部構造物との接合構造によれば、杭の上部に嵌合されるキャップ部材のトッププレートに上部構造物の柱が接合されるので、上部構造物の柱を基礎フーチング等を介さずに杭に接合できる。よって、基礎フーチングを省略することによる掘削土量の減少、基礎の軽量化、工期の短縮を図ることができる。
【0011】
また、トッププレート上に設けられた接合部に基礎梁が接合されることにより、上部構造物の各柱脚から杭に作用する水平力を、基礎梁を通じて分散させることができる。よって、上部構造物の各柱脚から杭に作用する水平力の大きさのばらつきが抑えられる。
【0012】
この結果、構造の簡素化及びコストダウンを図りつつ、2層以上の上部構造物への適用やブレースの併用が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1(a)~
図1(c)は、本発明の杭と上部構造物との接合構造の一例を示す縦断面図及び水平断面図である。
【
図2】
図2(a)~
図2(c)は、本発明の杭と上部構造物との接合構造の他の一例の適用例を示す斜視図及び平面図である。
【
図3】
図3(a)及び
図3(b)は、本発明の杭と上部構造物との接合構造の他の一例を示す縦断面図及び水平断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の杭と上部構造物との接合構造のさらに他の一例を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の杭と上部構造物との接合構造の実施形態について、具体的に説明する。
[第一の実施形態]
図1(a)~
図1(c)に、本発明の第一の実施形態の杭と上部構造物との接合構造の縦断面図及び水平断面図を示す。
図1(b)には、
図1(a)のIB-IB位置の断面を、
図1(c)には、
図1(a)のIC-IC位置の断面を、それぞれ示している。
【0015】
本実施形態の杭と上部構造物との接合構造は、鋼管杭1と、上部構造物の鋼管柱2とが接合される箇所に用いられる。本実施形態では、上部構造物として、2~3階建の鉄骨造建築物を想定している。
図1(a)に示すように、鋼管柱2の柱脚にはフーチングが設けられておらず、鋼管柱2の柱脚は後述のようにして鋼管杭1に直接接合されている。
【0016】
また、本実施形態では、各鋼管柱2の柱脚間はH形鋼からなる基礎梁3で連結され、さらに基礎梁3上にデッキプレート等からなる床スラブ32が設けられている。
【0017】
本実施形態の杭と上部構造物との接合構造をより具体的に説明すると、
図1(a)に示すように、鋼管杭1が地盤Gの根切り部分に、鋼管杭1の上部が地盤Gの根切り表面から突出する状態に建て込まれている。そして、地盤Gの根切り部分において、鋼管杭1の周囲には砕石81が敷きこまれている。
【0018】
鋼管杭1の杭頂は蓋板により閉塞されており、
図1(a)に示すように、鋼管杭1の杭頂近傍及びその下方の外周面には、ずれ止めリング1aが溶接により接合されている。なお、鋼管柱2から鋼管杭1に作用することが想定される引抜力が小さい場合には、ずれ止めリング1aを省略してもよい。
【0019】
鋼管杭1の杭頂の蓋板の上には、垂直位置調整治具6が設置されている。さらに、垂直位置調整治具6の上には、キャップ部材7が設置されている。
【0020】
キャップ部材7は、鋼管杭1と鋼管柱2とを接合する接合治具であり、キャップ部材7は、鋼管柱2の柱脚が接合されたトッププレート71と、トッププレート71の下に設けられた筒状の嵌合部72とを有している。そして、嵌合部72が鋼管杭1の上部外周を覆う状態となるように、トッププレート71が垂直位置調整治具6の上に設置されている。そして、垂直位置調整治具6により、鋼管杭1に対する鋼管柱2の高さが微調整される。
【0021】
キャップ部材7の嵌合部72の内径は、鋼管杭1の外径より大径(例えば、鋼管杭1の外径の1.2倍~2.5倍程度)に形成されている。そして、嵌合部72の上端には、嵌合部72の外径より大径のトッププレート71が溶接により接合されている。嵌合部72の内周面の下端には、ずれ止めリング72aが溶接により接合されている。なお、鋼管柱2から鋼管杭1に作用することが想定される引抜力が小さい場合には、鋼管杭1のずれ止めリング1aを省略してよいのと同様に、キャップ部材7の嵌合部72のずれ止めリング72aも省略してもよい。
【0022】
そして、垂直位置調整治具6により、鋼管杭1に対する鋼管柱2の高さ、すなわち鋼管杭1に対するキャップ部材7の高さが調整された状態で、鋼管杭1の周囲に敷きこまれた砕石81の上に捨てコンクリート82が打設される。これにより、キャップ部材7の嵌合部72の下端の開口が、捨てコンクリート82によって閉塞される。
【0023】
さらに、
図1(c)に示すように、キャップ部材7のトッププレート71に設けられた貫通孔71hを通じて、鋼管杭1の上部外周面とキャップ部材7との間に形成される空間にコンクリート8が充填される。そして、このコンクリート8が硬化することにより、鋼管杭1と鋼管柱2とが接合される。
【0024】
さらに、本実施形態の杭と上部構造物との接合構造では、キャップ部材7のトッププレート71直上には、基礎梁3との仕口部73が設けられている。そして、仕口部73には、基礎梁3を取り付けるためのブラケット73Jが設けられている。
【0025】
具体的には、
図1(a)~
図1(c)に示すように、トッププレート71の上方にトッププレート71と平行にダイアフラム73aが配設されている。トッププレート71とダイアフラム73aとの間隔は、基礎梁3を構成するH形鋼の上下フランジ間の距離と等しく設定されている。そして、トッププレート71及びダイアフラム73aの各々の側方には、基礎梁3を取り付けるブラケット73Jの上下フランジ73fに溶接により接合されている。そして、キャップ部材7のトッププレート71及びその側方に接合されたフランジ73fと、ダイアフラム73a及びその側方に接合されたフランジ73fとの間には、ウェブ73wが溶接により接合されている。
【0026】
キャップ部材7のトッププレート71及びダイアフラム73aに接合された上下フランジ73f及びこの上下フランジ73fの間に接合されたウェブ73wの先端部分が、基礎梁3を取り付けるためのブラケット73Jとなる。ブラケット73Jの先端は、鋼管柱2の中心軸から例えば1200mm程度となるように設けるとよい。
【0027】
本実施形態では、キャップ部材7と仕口部73とは、予め鉄骨工場で一つの鉄骨部材として製作され、現場に搬入されて用いられる。
【0028】
本実施形態の杭と上部構造物との接合構造では、基礎梁3がH形鋼から構成されているので、基礎梁の梁せいを、例えば700~900mm程度に抑えることができる。これに対し、同規模の建築物で在来基礎工法を採用した場合には、鉄筋コンクリート造の基礎梁の梁せいは、1500~1800mm程度になる。このように、基礎梁3がH形鋼から構成されていることにより、梁せいのサイズが抑えられて掘削土量が大幅に削減されるとともに、基礎の大幅な軽量化を図ることができる。この結果、鋼管杭1の杭径を例えばφ1200程度からφ1000程度まで縮小できる。さらに、在来基礎工法を採用する場合には、鋼管柱2の柱脚を固定とするために構造根巻きが必要となるのに対し、本実施形態の杭と上部構造物との接合構造では、これが不要となる。
【0029】
また、本実施形態の杭と上部構造物との接合構造では、床スラブ32が設けられる基礎梁3が、鋼管柱2とともに鋼管杭1により支持されるので、地盤が軟弱である場合にも、土間構造とは異なり、1階の床の積載荷重を大きくすることができる。
[第二の実施形態]
図2(a)に、本発明の第二の実施形態の杭と上部構造物との接合構造が適用された建築物の斜視図を模式的に示す。また、
図3(a)及び
図3(b)に、本実施形態の杭と上部構造物との接合構造の縦断面図及び水平断面図を示す。
図3(b)には、
図3(a)のIIIB-IIIB位置の断面を示している。
【0030】
本実施形態の杭と上部構造物との接合構造では、第一の実施形態とは異なり、基礎梁4は鉄骨梁ではなく鉄筋コンクリート梁とされている。そして、
図3(a)に示すように、キャップ部材7のトッププレート71直上に設けられる基礎梁4との仕口部25は、鋼管柱2の根巻コンクリートにより構成されている。つまり、本実施形態では、キャップ部材7のトッププレート71が、仕口部25を構成する根巻コンクリートの下面台座として用いられている。
【0031】
図2(b)及び
図2(c)に示すように、本実施形態では、上部構造物として、2層の鉄骨造建築物の片側(
図2(b)及び
図2(c)の上側)がトラックバースとされた、1階の床が土間コンクリート41(
図2(a)参照)とされた物流倉庫を想定している。
【0032】
さらに、本実施形態では、地震時の杭頭変位や鋼管柱2の変形角を抑えるべく、建築物にブレース5を設置して、建築物の保有水平耐力を確保するようにしている。
図2(b)に、上記建築物の1階柱脚におけるブレース5の配置を示す。
図2(b)に示すように、本実施形態では、建築物の1階の片側がトラックバースとされているため、ブレース5の配置が制約される。よって、ブレース5は、トラックバースが設けられない側(
図2(b)及び
図2(c)の下側)に、X、Y両方向に配置され、ブレース5の下端が、仕口部25内の鋼管柱2に接合されている。また、
図3(a)及び
図3(b)に示すように、ブレース5の下端が接合される仕口部25を構成する根巻コンクリートには、ブレース5から入力する水平力をブレース5の下方の基礎梁4に伝達するU字形の補強筋26が配筋されている。
【0033】
図2(c)に、上記建築物における基礎梁4の配置を示す。
図2(c)に示すように、基礎梁4はブレース5が設けられる構面を中心に設けられており、ブレース5から入力するせん断力を基礎梁4を通じて土間コンクリート41に伝達するようにしている。
【0034】
また、本実施形態では、土間コンクリート41により構成される1階の床の高さは地盤面からから1100mm程度上方とされている。そして、
図3(a)及び
図3(b)に示すように、基礎梁4は幅4wが高さ4hよりも大きい扁平な断面形状を有するようにして、基礎梁4が土間コンクリート41とほぼ同じ高さに、土間コンクリート41と一体に形成されている。さらに、
図3(a)に示すように、仕口部25内におけるブレース5の鋼管柱2への接合位置の中心の高さ(ブレースポイント)5Pが、基礎梁4の梁せい4h内に収まるように設定されている。
【0035】
他の点については、本実施形態の杭と上部構造物との接合構造は、第一の実施形態の杭と上部構造物との接合構造と同様に構成されている。
【0036】
本実施形態の杭と上部構造物との接合構造では、地震時にブレース5の下端から鋼管柱2の柱脚に作用する水平力が、鋼管柱2の柱脚の仕口部25に取り付けられた基礎梁4及び土間コンクリート41を通じて、他の鋼管柱2と鋼管杭1との接合部に伝達される。よって、建築物の各鋼管柱2の柱脚から鋼管杭1に作用する水平力の大きさのばらつきが抑えられる。
【0037】
また、本実施形態の杭と上部構造物との接合構造では、仕口部25内におけるブレース5の鋼管柱2への接合位置(ブレースポイント)5Pが、基礎梁4及び土間コンクリート41(
図2(a)参照)とほぼ同じ高さに設定されている。これにより、
図4に示すような、ブレースポイント5Pと基礎梁4及び土間コンクリート41との間に高さの差が存在する場合における、高さの差による付加曲げの発生が抑えられる。よって、ブレース5から基礎梁4及び土間コンクリート41に水平力をスムーズに伝達することができる。
【0038】
また、仕口部25を構成する根巻コンクリート25に配筋されたU字形の補強筋26により、ブレース5から基礎梁4及び土間コンクリート41への水平力の伝達をさらに円滑化できる。
【0039】
よって、建築物の各鋼管柱2の柱脚に作用する水平力にばらつきがあっても、鋼管杭1に伝達される水平力のバランスを図ることができ、鋼管杭1の杭径を抑制できるため、鋼管杭1の経済設計が可能となる。
【0040】
また、本実施形態の杭と上部構造物との接合構造では、基礎梁4の幅4wを高さ4hよりも大きくしている。これにより、基礎梁の高さが幅よりも大きい通常の在来基礎工法に比べて、掘削土量の減少、基礎の軽量化、コスト低減を図ることができる。
【0041】
なお、上記各実施形態では、本発明の杭と上部構造物との接合構造により、鋼管杭1と鋼管柱2とが接合される例について説明したが、本発明の適用対象はこれに限られない。例えば、PHC杭、PRC杭(遠心成形プレストレスト鉄筋高強度コンクリート杭)、SC杭(遠心成形外殻鋼管付きコンクリート杭)等、種々の既製杭と、種々の柱との接合構造にも適用可能である。
【符号の説明】
【0042】
1 鋼管杭(杭)
1a ずれ止めリング
2 鋼管柱(柱)
25 根巻コンクリート(仕口部)
26 補強筋
3 鉄骨梁(基礎梁)
31 スプライスプレート
32 床スラブ
4 鉄筋コンクリート梁(基礎梁)
4h 梁せい(高さ)
41 土間コンクリート
5 ブレース
5P 接合位置
6 垂直位置調整治具
7 キャップ部材
71 トッププレート
71h 貫通孔
72 嵌合部
72a ずれ止めリング
73 仕口部
73J ブラケット
73a ダイアフラム
73w ウェブ
73f フランジ
8 コンクリート
81 砕石
82 捨てコンクリート
G 地盤