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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023000703
(43)【公開日】2023-01-04
(54)【発明の名称】電磁波透過カバー用ヒータ
(51)【国際特許分類】
   H05B 3/03 20060101AFI20221222BHJP
【FI】
H05B3/03
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021101678
(22)【出願日】2021-06-18
(71)【出願人】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】道家 真一
【テーマコード(参考)】
3K092
【Fターム(参考)】
3K092PP15
3K092QA05
3K092QC25
3K092VV22
3K092VV27
3K092VV33
(57)【要約】
【課題】電磁波の減衰抑制と、均一な発熱との両立を図る。
【解決手段】ヒータ30の発熱部32はシート状をなす。第1通電部33及び第2通電部34は、発熱部32よりも導電性の高い材料により、発熱部32上においてそれぞれ線状に形成され、互いに極性の異なる電極として機能する。ミリ波14は、平面からなる偏波面15上を振動するように送信される。第1通電部33及び第2通電部34は、互いに隣り合った状態で、偏波面15に沿う方向へ延びる直線部33c,34cをそれぞれ有する。発熱部32のうち、両直線部33c,34cにより挟まれた発熱構成部32aのシート抵抗は、同発熱構成部32aがミリ波透過性を有する値に設定される。発熱構成部32aの直線部33c,34cに沿う方向の寸法である幅Wは、両直線部33c,34cが並ぶ方向の寸法である長さLよりも長く設定される。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波を送信及び受信する装置が搭載された乗物において、前記電磁波の送信方向における前記装置の前方に配置される電磁波透過カバーに組込まれ、前記送信方向における前記電磁波透過カバーの一部を構成する電磁波透過カバー用ヒータであって、
導電性発熱材料によりシート状に形成された発熱部と、前記発熱部よりも導電性の高い材料が用いられて、前記発熱部上にそれぞれ線状に形成され、かつ互いに極性の異なる電極として機能する第1通電部及び第2通電部とを備え、
前記電磁波は、平面からなる偏波面上を振動するように送信されるものであり、
前記第1通電部及び前記第2通電部は、互いに隣り合った状態で、前記偏波面に沿う方向へ延びる直線部をそれぞれ有し、
前記発熱部のうち、両直線部により挟まれた発熱構成部のシート抵抗は、同発熱構成部が電磁波透過性を有する値に設定され、
前記発熱構成部の前記直線部に沿う方向の寸法である幅は、両直線部が並ぶ方向の寸法である長さよりも長く設定されている電磁波透過カバー用ヒータ。
【請求項2】
前記電磁波はミリ波であり、
前記発熱構成部は、2000Ω/sq以上の前記シート抵抗を有している請求項1に記載の電磁波透過カバー用ヒータ。
【請求項3】
前記直線部は、50μm以下の線幅を有している請求項2に記載の電磁波透過カバー用ヒータ。
【請求項4】
前記発熱構成部は、200μm以上の前記長さを有している請求項2又は3に記載の電磁波透過カバー用ヒータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミリ波等の電磁波を透過する電磁波透過カバーに用いられて、その電磁波透過カバーに融雪機能を付加する電磁波透過カバー用ヒータに関する。
【背景技術】
【0002】
ミリ波等の電磁波を送信及び受信する装置が搭載された車両では、同装置から電磁波が車外へ向けて送信される。先行車両、歩行者等を含む車外の物体に当たって反射された電磁波は、上記装置によって受信される。そして、上記装置では、送信及び受信された電磁波により、上記物体が認識され、車両と物体との距離、相対速度等が検出される。
【0003】
上記車両では、電磁波の送信方向における上記装置の前方に、電磁波を透過する電磁波透過カバーが配置される。
ここで、上記電磁波透過カバーに氷雪が付着すると電磁波が減衰され、上記装置の検出性能が低下する問題がある。そこで、電磁波の透過性を確保しつつ、氷雪を溶かすことのできる電磁波透過カバー用ヒータが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
上記電磁波透過カバー用ヒータでは、通電により発熱するヒータ線が、電磁波透過性を有する基体の面方向に配線されている。ヒータ線の主要部が、基体の面中央に位置する基点を基準にして、基体のミリ波透過領域の外周に向かって拡がる様態で配線されている。この態様として、ヒータ線が、径方向に所定間隔をあけて、同心楕円状、同心円状又は放射状に配線されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-139860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、上記従来の電磁波透過カバー用ヒータでは、ヒータ線が太いと、電磁波がヒータ線によって反射されて減衰する。これに対し、ヒータ線を細くすると、電磁波の反射が抑制され、電磁波が透過しやすくなる。反面、均一な発熱が困難になる。すなわち、ヒータ線の周辺は高温になるが、隣り合うヒータ線間は上記周辺ほど高温にならない。その結果、隣り合うヒータ線間ではヒータ線の周辺よりも氷雪が溶けにくく、電磁波の透過を阻害する。そのため、電磁波の減衰抑制と、均一な発熱との両立が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決する電磁波透過カバー用ヒータは、電磁波を送信及び受信する装置が搭載された乗物において、前記電磁波の送信方向における前記装置の前方に配置される電磁波透過カバーに組込まれ、前記送信方向における前記電磁波透過カバーの一部を構成する電磁波透過カバー用ヒータであって、導電性発熱材料によりシート状に形成された発熱部と、前記発熱部よりも導電性の高い材料が用いられて、前記発熱部上にそれぞれ線状に形成され、かつ互いに極性の異なる電極として機能する第1通電部及び第2通電部とを備え、前記電磁波は、平面からなる偏波面上を振動するように送信されるものであり、前記第1通電部及び前記第2通電部は、互いに隣り合った状態で、前記偏波面に沿う方向へ延びる直線部をそれぞれ有し、前記発熱部のうち、両直線部により挟まれた発熱構成部のシート抵抗は、同発熱構成部が電磁波透過性を有する値に設定され、前記発熱構成部の前記直線部に沿う方向の寸法である幅は、両直線部が並ぶ方向の寸法である長さよりも長く設定されている。
【0008】
上記の構成を有する電磁波透過カバー用ヒータ(以下、単に「ヒータ」という)が組込まれた電磁波透過カバーでは、第1通電部の直線部と、第2通電部の直線部とが、発熱構成部を介して電気的に接続された状態となる。そのため、第1通電部及び第2通電部を介してヒータに電力が供給されると、電流が両直線部の一方から発熱構成部を通り、他方に流れる。
【0009】
ここで、発熱構成部の電気抵抗率をρとし、厚みをtとすると、シート抵抗Rsは次の(式1)で表される。
Rs=ρ/t……(式1)
発熱構成部の幅(直線部に沿う方向の寸法)をWとし、長さ(両直線部が並ぶ方向の寸法)をLとすると、発熱構成部の抵抗Rは、次の(式2)で表される。
【0010】
R=Rs・(L/W)……(式2)
また、電流をI、電圧をVとすると、電力Pは、次の(式3)で表される。
P=IV=V^2/R……(式3)
なお、上記(式3)中の「^2」は、2乗を意味する。
【0011】
また、電力量(発熱量)は、電力P及び時間に比例する。
従って、抵抗Rが小さくなるに従い、電力Pが大きくなる。これに伴い、電力量(発熱量)が多くなる。
【0012】
この点、上記の構成によれば、発熱構成部の幅Wが長さLよりも長く設定されている。そのため、電圧が一定という条件下では、抵抗Rを小さくし、電力量(発熱量)を多くすることが可能である。しかも、シート状の発熱構成部が発熱される。発熱部の略全体を対象として発熱がなされる。そのため、ヒータ線を発熱させる従来技術とは異なり、均一な発熱が可能となる。
【0013】
さらに、隣り合う第1通電部の直線部と、第2通電部の直線部とが、電磁波の偏波面に沿う方向へ延びている。そのため、直線部は、電磁波の透過を妨げにくい。
加えて、一般に、発熱構成部のシート抵抗と、電磁波の透過のしやすさとの間には相関関係が見られる。この点を考慮し、上記ヒータでは、発熱構成部のシート抵抗が、電磁波透過性を有する大きさに設定されている。
【0014】
以上のことから、電磁波がヒータを透過する際に減衰されにくい。
上記電磁波透過カバー用ヒータにおいて、前記電磁波はミリ波であり、前記発熱構成部は、2000Ω/sq以上の前記シート抵抗を有していることが好ましい。
【0015】
シート抵抗とミリ波透過性との間には、一般に、シート抵抗が低いときにはミリ波が透過しにくく(減衰量が多く)、シート抵抗が高くなるに従いミリ波が透過しやすくなる(減衰量が少なくなる)関係が見られる。特に、シート抵抗が2000Ω/sq以上の場合には、ミリ波透過性が良好になる(減衰量が非常に少なくなる)。
【0016】
そのため、上記の構成によるように、発熱構成部として、2000Ω/sq以上のシート抵抗を有するものが用いられることにより、ミリ波が透過しやすく、ミリ波の減衰を良好に抑制することが可能となる。
【0017】
上記電磁波透過カバー用ヒータにおいて、前記直線部は、50μm以下の線幅を有していることが好ましい。
上記の構成によるように、直線部の線幅が50μm以下であると、ミリ波がヒータを透過する際に直線部で反射される量が少なくてすむ。その分、ヒータを透過するミリ波の量が多くなる。
【0018】
上記電磁波透過カバー用ヒータにおいて、前記発熱構成部は、200μm以上の前記長さを有していることが好ましい。
発熱構成部の長さが、上記の構成によるように、200μm以上あると、電磁波の透過が、隣り合う直線部によって妨げられにくく、発熱構成部を透過しやすくなる。
【発明の効果】
【0019】
上記電磁波透過カバー用ヒータによれば、電磁波の減衰抑制と、均一な発熱との両立を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】一実施形態におけるヒータが組込まれた電磁波透過カバーとしての車両用のミリ波透過カバーを、フロントグリルの一部とともに示す部分正面図。
図2】一実施形態のヒータにおける第1通電部及び第2通電部の配置態様を示す概略正面図。
図3】一実施形態のミリ波透過カバーの一部をミリ波レーダ装置の一部とともに示す部分平断面図。
図4】一実施形態におけるヒータとミリ波の偏波面との関係を示す説明図。
図5】発熱構成部のシート抵抗を説明する説明図。
図6】一実施形態における発熱構成部及び直線部の寸法関係を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、電磁波透過カバー用ヒータを、車両用のミリ波透過カバーに用いられるミリ波透過カバー用ヒータ(以下、単に「ヒータ」という)に具体化した一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0022】
なお、以下の記載においては、車両の前進方向を前方とし、後進方向を後方として説明する。また、上下方向は車両の上下方向を意味し、左右方向は車幅方向であって車両の前進時の左右方向と一致するものとする。さらに、図2図6では、ミリ波透過カバーにおける各部を認識可能な大きさとするために、縮尺を適宜変更して各部を示している。
【0023】
図1図3及び図4に示すように、車両10の前部の左右方向における中央部分であって、フロントグリル11の後方には、電磁波を送信及び受信する装置として、前方監視用のミリ波レーダ装置13が搭載されている。図3では、ミリ波レーダ装置13が一部のみ図示されている。ミリ波レーダ装置13は、電磁波におけるミリ波14を、車外のうち前方へ向けて送信し、かつ、車外の物体に当たって反射されたミリ波14を受信する機能を有する。ミリ波14は、平面からなり、かつ鉛直面に対し平行な偏波面15上を振動するように、ミリ波レーダ装置13から送信される。ミリ波とは、波長が1mm~10mmであり、周波数が30GHz~300GHzである電波をいう。
【0024】
なお、本実施形態では、上述したように、ミリ波レーダ装置13が車両10の前方に向けてミリ波14を送信することから、ミリ波レーダ装置13によるミリ波14の送信方向は、車両10の後方から前方へ向かう方向である。ミリ波14の送信方向における前方は、車両10の前方と概ね合致し、同送信方向における後方は車両10の後方と概ね合致する。そのため、以後の記載では、ミリ波14の送信方向における前方を単に「前方」、「前」等といい、同送信方向における後方を単に「後方」、「後」等というものとする。
【0025】
上記フロントグリル11の厚みは、一般的なフロントグリルと同様、一定ではない。また、フロントグリル11では、樹脂製基材の表面に金属めっき層が形成されることがある。フロントグリル11は、送信されたミリ波14と干渉する。このため、フロントグリル11において、ミリ波レーダ装置13の前方には、楕円形状をなす窓部12が開口されている。
【0026】
窓部12には、ミリ波透過カバー20が配置されている。ミリ波透過カバー20は、その前面が車両10の前方を向き、かつ後面が車両10の後方を向くように、起立した状態で配置される。
【0027】
ミリ波透過カバー20の主要部は、略楕円形の板状をなすカバー本体部22によって構成されている。図3では、カバー本体部22の一部が拡大されて示されている。同図3に示すように、カバー本体部22は、後基材23、加飾層24、前基材25及びヒータ30を備えており、ミリ波レーダ装置13の前方に位置している。
【0028】
<後基材23>
後基材23は、ミリ波レーダ装置13から送信された電磁波(ミリ波14)を透過する性能である電磁波透過性(ミリ波透過性)を有する樹脂材料によって形成されている。本実施形態では、この樹脂材料として、AES(アクリロニトリル-エチレン-スチレン共重合)樹脂が用いられ、後基材23が有色に形成されている。
【0029】
なお、後基材23は、ASA(アクリロニトリル-スチレン-アクリレート共重合)樹脂、PC(ポリカーボネート)樹脂、PC樹脂及びABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合)樹脂のポリマーアロイ等によって形成されてもよい。
【0030】
<加飾層24>
加飾層24は、例えば、黒色、青色等の濃色を有する有色加飾層と、インジウム(In)等の金属材料からなる光輝加飾層との組み合わせによって構成されており、ミリ波透過性を有している。加飾層24は、有色加飾層のみによって構成されてもよいし、光輝加飾層のみによって構成されてもよい。
【0031】
<前基材25>
前基材25は、加飾層24を介して上記後基材23の前方に位置している。前基材25は、ミリ波透過性を有する樹脂材料によって形成されている。本実施形態では、この樹脂材料としてPC樹脂が用いられ、前基材25が透明に形成されている。ここでの透明には、無色透明のほか、着色透明(有色透明)も含まれる。なお、前基材25は、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)樹脂等の透明な樹脂材料によって形成されてもよい。
【0032】
<ヒータ30>
ヒータ30は、ミリ波透過カバー20に融雪機能を付加するためのものであり、前後方向におけるミリ波透過カバー20の一部を構成している。本実施形態では、ヒータ30は、前基材25よりも前方に位置しており、ミリ波透過カバー20の最前部を構成している。ヒータ30は、前基材25の前面の形状に対応した形状に賦形され、同前面に密着している。ヒータ30は、ヒータ基材31、発熱部32、第1通電部33及び第2通電部34を備えており、全体として、厚みが一様なシート状をなしている。
【0033】
ヒータ基材31は、ヒータ30の最前部に位置しており、ミリ波透過性を有する樹脂材料によって楕円形のシート状に形成されている。本実施形態では、ヒータ基材31は、上記前基材25と同様、PC樹脂によって透明に形成されている。ヒータ基材31の前面は、ミリ波透過カバー20の意匠面21を構成している。
【0034】
発熱部32は、導電性発熱材料により、厚みが一様な楕円形のシート状に形成されている。導電性発熱材料としては、例えば、Ag(銀)、Cu(銅)が挙げられる。そのほかにも、導電性発熱材料として、導電性ペースト、PEDOT(ポリエチレンジオキシチオフェン)等が用いられてもよい。
【0035】
導電性ペーストとは、導電性粒子を有機バインダに分散したものである。導電性粒子としては、Ag、Ni(ニッケル)、Au(金)、Cu、C(カーボン)等の粒子を用いることができる。また、導電性粒子として、2種以上の金属を合金化した金属粉末、2種以上の金属粉末の混合物等が用いられてもよい。有機バインダとしては、例えば、エポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂等を用いることができる。
【0036】
PEDOTは、芳香族共役系導電性高分子1つである。PEDOTからなる発熱部32は、例えば、スクリーン印刷、グラビア印刷等の印刷法によって形成することができる。
図2に示すように、第1通電部33及び第2通電部34は、発熱部32よりも抵抗が低く導電性の高い材料によって、線状に形成されている。第1通電部33及び第2通電部34は、銅等の導電性発熱材料からなるヒータ線が配線されることによって形成されてもよいし、導電性発熱材料を用いたスパッタリング、エッチング等によって形成されてもよい。
【0037】
第1通電部33及び第2通電部34には、絶縁被覆が施されていない。第1通電部33及び第2通電部34は互いに離間しており、互いに極性(プラス極、マイナス極)の異なる電極として機能する。
【0038】
第1通電部33の一部は、バスバー部33a及び端子部33bによって構成されている。バスバー部33aは、例えば、楕円形状をなす発熱部32の周縁部の下端部を起点として、同周縁部に沿って発熱部32の周方向における一方へ延びており、全体が円弧状に湾曲している。端子部33bは、上記バスバー部33aの上記起点に接続されて、下方へ延びている。
【0039】
第2通電部34の一部は、バスバー部34a及び端子部34bによって構成されている。バスバー部34aは、例えば、発熱部32の周縁部の下端部を起点として、同周縁部に沿って上記周方向における両方向へ延びている。バスバー部34aは、発熱部32の周縁部の下部において、下方へ膨らむように円弧状に湾曲している。端子部34bは、上記バスバー部34aの中間部分(起点)に接続されて、下方へ延びている。
【0040】
両端子部33b,34bは、コネクタ(図示略)の一部を構成する部材として用いられている。コネクタは、上記ヒータ30に対し電力を供給するための機器のコネクタ(いずれも図示略)が脱着可能に結合される部材である。ヒータ30のコネクタは、上記両端子部33b,34bに加え、それらの端子部33b,34bを覆うコネクタハウジング(図示略)を備えている。
【0041】
第1通電部33は、さらに複数の直線部33cを備えている。複数の直線部33cは、左右方向へ一定距離ずつ離れた状態で上下方向へ延びている。各直線部33cは、上端部において、上記バスバー部33aの上部に繋がっている。
【0042】
第2通電部34は、さらに複数の直線部34cを備えている。複数の直線部34cは、左右方向へ一定距離ずつ離れた状態で上下方向へ延びている。各直線部34cは、第1通電部33の直線部33cから左右方向へ離れた箇所に位置している。多くの直線部34cは、隣り合う直線部33c間の中央に位置している。各直線部34cは、下端部において、上記バスバー部34aに繋がっている。
【0043】
複数の直線部33cと複数の直線部34cとは、左右方向に互い違いに配置されている。隣り合う直線部33c,34cは、互いに平行の関係にある。各直線部33c,34cが延びる方向(上下方向)は、ミリ波14の上記偏波面15に沿う方向でもある。
【0044】
ここで、発熱部32において隣り合う直線部33c,34cによって挟まれた領域を、発熱構成部32aというものとする。直線部33c,34cが複数ずつ設けられていることから、発熱構成部32aも複数設けられている。
【0045】
本実施形態では、発熱部32として、各発熱構成部32aのシート抵抗Rsが、2000Ω/sq以上であるものが用いられている。シート抵抗Rsとは、一様の厚さtを有する薄い膜、フィルム状物質(この場合、発熱構成部32a)の電気抵抗を表す量の一つであり、表面抵抗率、面抵抗率とも呼ばれる。シート抵抗Rsの単位は、Ω/sq(オーム/スクエア)である。
【0046】
各発熱構成部32aの電気抵抗率をρとすると、シート抵抗Rsは次の(式1)で表される。
Rs=ρ/t……(式1)
図3図5に示すように、各発熱構成部32aにおいて、隣り合う直線部33c,34cが並ぶ方向の寸法を、各発熱構成部32aの長さLとし、各直線部33c,34cに沿う方向の寸法を各発熱構成部32aの幅Wとする。
【0047】
各発熱構成部32aの抵抗Rは、次の(式2)で表される。
R=Rs・(L/W)……(式2)
従って、図5に示すように、各発熱構成部32aの幅Wと長さLとが同一であるときの抵抗Rは、シート抵抗Rsと同一になる。
【0048】
図2図4及び図6に示すように、本実施形態では、いずれの発熱構成部32aについても、幅Wが長さLよりも長く設定されている。
ここで、ミリ波透過カバー20において、ミリ波レーダ装置13から送信されたミリ波14が照射される領域を照射領域Z1(図2図4参照)とする。直線部33c,34cの多くは、この照射領域Z1に位置する。直線部33c,34cのうち照射領域Z1に位置する部分は、ミリ波14の透過の妨げとなる。ミリ波14は直線部33c,34cで反射される。直線部33c,34cの線幅Aが広くなるに従い、ミリ波14がヒータ30を透過する際に直線部33c,34cで反射される量が多くなる。そのため、反射されるミリ波14を少なくする観点からは、直線部33c,34cの線幅Aが狭い方がよい。この点を考慮し、本実施形態では、線幅Aが50μm以下に設定されている。
【0049】
また、各発熱構成部32aの長さLが短くなるに従い、ミリ波14が各発熱構成部32aを透過しにくくなる。この点を考慮し、本実施形態では、長さLが200μm以上に設定されている。
【0050】
ミリ波透過カバー20は、上記カバー本体部22のほかに取付部(図示略)を備えており、この取付部においてフロントグリル11又は車体に取付けられる。
次に、上記のように構成された本実施形態の作用について説明する。また、作用に伴い生ずる効果についても併せて説明する。
【0051】
図2に示すヒータ30が組込まれたミリ波透過カバー20では、第1通電部33の直線部33cと、第2通電部34の直線部34cとが、それらの間の発熱構成部32aを介して電気的に接続されている。
【0052】
そのため、ミリ波透過カバー20の意匠面21に氷雪が付着して、第1通電部33及び第2通電部34を介してヒータ30に電力が供給されると、電流が隣り合う直線部33c,34cの一方から発熱構成部32aを通り他方に流れる。
【0053】
ここで、電流をI、電圧をVとすると、電力Pは、次の(式3)で表される。
P=IV=V^2/R……(式3)
なお、上記(式3)中の「^2」は、2乗を意味する。
【0054】
ミリ波透過カバー20が取付けられた車両10の電源電圧(車載電圧)は、一定である。このことから、ヒータ30に加えられる電圧Vは一定である。また、電力量は、電力P及び時間に比例する。
【0055】
従って、上記のように、抵抗Rが小さくなるに従い、電力Pが大きくなる。これに伴い、電力量(発熱量)が多くなる。
この点、本実施形態では、図2図4及び図6に示すように、いずれの発熱構成部32aでも、幅Wが長さLよりも長く設定されている。そのため、抵抗Rを小さくし(上記(式2)参照)、電力量(発熱量)を多くすることが可能である。しかも、それぞれシート状をなす複数の発熱構成部32aが発熱される。発熱部32の略全体を対象として発熱がなされる。そのため、ヒータ線を発熱させる従来技術とは異なり、均一な発熱が可能となる。
【0056】
図3に示すように、各発熱構成部32aが発した熱の一部は、ヒータ基材31を介して意匠面21に伝達される。この熱により、意匠面21に付着している氷雪が溶かされる。特に、上記のように発熱部32の全体が均一に発熱されるため、意匠面21の部位によらず、氷雪が均一に溶かされる。氷雪が部分的に溶けずに残る現象が起こりにくい。
【0057】
一方、同図3に示すミリ波レーダ装置13からミリ波14が送信されると、そのミリ波14は、カバー本体部22の各部を透過する。
ここで、各発熱構成部32aのシート抵抗Rsとミリ波の透過のしやすさとの間には、以下の相関関係が見られる。すなわち、シート抵抗Rsが大きくなるに従い、ミリ波14が透過しやすくなる。この点、本実施形態では、シート抵抗Rsが2000Ω/sq以上といった大きな値に設定されている。そのため、ミリ波14は、発熱構成部32aを透過しやすい。
【0058】
また、図4に示すように、隣り合う直線部33c,34cが、ミリ波14の偏波面15に沿う方向へ延びている。そのため、直線部33c,34cは、ミリ波14の透過の妨げとなりにくい。
【0059】
また、図6に示すように、本実施形態では、直線部33c,34cの線幅Aが50μm以下に設定されている。そのため、ミリ波14がヒータ30を透過する際に直線部33c,34cで反射される量を少なくすることができる。
【0060】
さらに、本実施形態では、各発熱構成部32aの長さLが、200μm以上に設定されている。そのため、ミリ波14が直線部33c,34cによって妨げられにくく、各発熱構成部32aを透過しやすい。
【0061】
加えて、上述したように、意匠面21に付着した氷雪が、発熱部32からの熱によって均一に溶かされる。このことからも、ミリ波14の減衰が抑制される。
以上のことから、ミリ波14はヒータ30を透過する際に減衰されにくい。
【0062】
そして、上記のようにカバー本体部22を透過したミリ波14は、先行車両、歩行者等を含む車両前方の物体に当たって反射された後、再びカバー本体部22を透過し、ミリ波レーダ装置13によって受信される。ミリ波レーダ装置13では、送信及び受信された上記ミリ波14に基づき、物体が認識され、車両10と同物体との距離、相対速度等の検出等が行われる。
【0063】
このように、本実施形態によると、ミリ波14の減衰抑制と、均一な発熱との両立を図ることができる。ミリ波減衰に起因するミリ波レーダ装置13の検出性能の低下を抑制できる。
【0064】
本実施形態によると、上記以外にも、次の効果が得られる。
(1)図3に示すように、ヒータ基材31が透明な樹脂材料によって形成されている。そのため、発熱部32が透明である場合には、可視光がヒータ30を透過可能である。
【0065】
ミリ波透過カバー20に対し車両10の前方から可視光が照射されると、その可視光は、ヒータ30及び前基材25を透過し、加飾層24で反射又は吸収される。車両10の前方からミリ波透過カバー20を見ると、ヒータ30及び前基材25を通して、それらの裏側(奥側)に加飾層24が位置するように見える。加飾層24のうち有色加飾層については、その有色加飾層の有する色が見える。また、加飾層24のうち光輝加飾層については、金属のように光り輝いて見える。このように、加飾層24によってミリ波透過カバー20が装飾され、同ミリ波透過カバー20及びその周辺部分の外観が向上する。
【0066】
(2)可視光の加飾層24での上記反射又は吸収は、ミリ波レーダ装置13よりも前方で行われる。加飾層24は、ミリ波レーダ装置13を覆い隠す機能を発揮する。そのため、ミリ波透過カバー20よりも前方からは、ミリ波レーダ装置13が見えにくい。従って、ミリ波レーダ装置13がミリ波透過カバー20を介して透けて見える場合に比べて外観が向上する。
【0067】
なお、上記実施形態は、これを以下のように変更した変形例として実施することもできる。上記実施形態及び以下の変形例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0068】
・上記ヒータ30は、ミリ波14の偏波面15が鉛直面に対し交差、例えば直交する場合にも適用可能である。この場合、直線部33c,34cが、偏波面15に沿う方向へ延びるように、第1通電部33及び第2通電部34が形成又は配線される。
【0069】
・「直線部33c,34cが偏波面15に沿う方向」には、偏波面15に対し平行な方向が含まれるが、そのほかにも、平行に近い角度で偏波面15に対し交差する方向も含まれる。
【0070】
・バスバー部33a,34aが上記実施形態とは異なる形状に形成されてもよい。
・端子部33b,34bが、バスバー部33a,34aにおいて、上記実施形態とは異なる箇所に接続されてもよい。
【0071】
・ヒータ30は、電磁波の送信方向における電磁波透過カバーの一部を構成するものであればよい。従って、ヒータ30は、上記実施形態(図3参照)のように電磁波透過カバー(ミリ波透過カバー20)の最前部に配置されてもよいが、最後部に配置されてもよい。例えば、発熱部32が不透明である場合には、ヒータ30はミリ波透過カバー20の最後部に配置されてもよい。
【0072】
また、ヒータ30は、電磁波透過カバー(ミリ波透過カバー20)の中間部、例えば、前基材25と後基材23との間に配置されてもよい。
・加飾層24が省略されて、前基材25及び後基材23が一体に形成されてもよい。この場合には、ミリ波透過カバー20における基材が1つになる。
【0073】
・ヒータ30が組込まれた上記ミリ波透過カバー20は、車両のエンブレム、オーナメント、マーク等に具体化することができる。
・ヒータ30が組込まれた上記電磁波透過カバーは、車外の物体を検出するための電磁波を送信及び受信する装置が搭載された車両であれば配置可能である。この場合、装置が送信及び受信する電磁波には、ミリ波のほかにも、近赤外線等の電磁波が含まれる。
【0074】
・車外の物体を検出するための電磁波を送信及び受信する装置は、前方監視用以外にも、後方監視用、前側方監視用、又は後側方監視用の装置であってもよい。この場合、ヒータ30が組込まれた電磁波透過カバーは、電磁波の送信方向における上記装置の前方に配置される。
【0075】
・ヒータ30が組込まれた電磁波透過カバーは、電磁波を送信及び受信する装置が、車両とは異なる種類の乗物、例えば、航空機、船舶等に搭載された場合にも配置可能である。
【符号の説明】
【0076】
10…車両(乗物)
13…ミリ波レーダ装置(装置)
14…ミリ波(電磁波)
15…偏波面
20…ミリ波透過カバー(電磁波透過カバー)
30…ヒータ(電磁波透過カバー用ヒータ)
32…発熱部
32a…発熱構成部
33…第1通電部
33c,34c…直線部
34…第2通電部
A…線幅
L…長さ
Rs…シート抵抗
W…幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6