(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023070325
(43)【公開日】2023-05-19
(54)【発明の名称】プログラム作成装置
(51)【国際特許分類】
B25J 9/22 20060101AFI20230512BHJP
【FI】
B25J9/22 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021182415
(22)【出願日】2021-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】000005197
【氏名又は名称】株式会社不二越
(74)【代理人】
【識別番号】100120400
【弁理士】
【氏名又は名称】飛田 高介
(74)【代理人】
【識別番号】100124110
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 大介
(72)【発明者】
【氏名】守澤 貴幸
(72)【発明者】
【氏名】前多 聡
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707BS10
3C707LS08
3C707LS14
3C707LT15
(57)【要約】
【課題】装置コストを抑制しつつ処理プロセスを短時間化し、ロボットの移動経路の軌跡の一部分を修正することが可能なプログラム作成装置を提供する。
【解決手段】本発明にかかるプログラム作成装置の構成は、入力部と、記憶部と、特定の動作パターンと動作種類とを関連付けて格納してある動作パターンテーブルと、動作パターンテーブルを参照してプログラム中の動作パターンを抽出し、動作種類をプログラムに付与する動作種類抽出手段と、動作種類と動作種類において適用可能な補正手段とを関連付けて格納してある補正手段テーブルと、補正手段テーブルを参照してプログラム中の動作種類に対応する補正手段を抽出するプログラム補正手段と、出力部と、を備え、入力部は、ユーザが選択した補正手段の入力を受け付け、プログラム補正手段は、入力部から選択された補正手段に応じてプログラムを補正し、ロボットに送信する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットの動作プログラムを作成するプログラム作成装置であって、
ユーザからの入力を受け付ける入力部と、
前記ユーザが入力したプログラムを格納する記憶部と、
特定の動作パターンと動作種類とを関連付けて格納してある動作パターンテーブルと、
前記動作パターンテーブルを参照して前記プログラム中の動作パターンを抽出し、前記動作種類を前記プログラムに付与する動作種類抽出手段と、
前記動作種類と該動作種類において適用可能な補正手段とを関連付けて格納してある補正手段テーブルと、
前記補正手段テーブルを参照して前記プログラム中の動作種類に対応する補正手段を抽出するプログラム補正手段と、
前記抽出された前記補正手段を出力する出力部と、
を備え、
前記入力部は、前記ユーザが選択した前記補正手段の入力を受け付け、
前記プログラム補正手段は、前記入力部から選択された前記補正手段に応じて前記プログラムを補正して、前記ロボットに送信することを特徴とするプログラム作成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットの動作プログラムを作成するプログラム作成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、工場等の生産現場において、ロボットアーム(マニピュレータとも称される)等の産業用機械が用いられている。産業用機械(以下、ロボットと称する)を動作させるためには、動作をロボットに教示するティーチングが行われる。ティーチングの種類としては、間接教示(オフラインティーチング、オンラインティーチング等)や直接教示(ダイレクトティーチング)が挙げられる。
【0003】
ロボットにオフラインティーチングを行うための教示データ作成装置としては、例えば特許文献1に実機のロボットの周辺構造物の形状を示す実測3次元モデルを利用した教示データ作成装置が開示されている。特許文献1の教示データ作成装置は、「実機のロボットの周辺構造物の形状を示す実測3次元モデルを取得する取得手段と、取得された実測3次元モデルにおいて、ロボットの移動経路を示す教示データによるロボットの移動経路がより短くできるか、または教示データによるロボットの移動により周辺構造物との干渉が生じる場合に、教示データを補正する補正手段」を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1によれば、仮想ロボットシステムの構成物と実機ロボットシステムの構成物との形状差異が発生している場合であっても、適切なオフライン教示データを作成することができるとしている。しかしながら、特許文献1の教示データ作成装置のように実測3次元モデルを利用する場合、3次元モデルを取得する手段や取得するプロセスが必須であるため、装置コストが嵩んだり処理が長時間化してしまったりする。また特許文献1の教示データ作成装置の補正手段では、教示データの補正は、ロボットの移動経路の短縮や周辺構造物との干渉回避に限られ、移動経路の軌跡の一部分をオフセットするような修正は対象外である。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑み、装置コストを抑制しつつ処理プロセスを短時間化し、且つロボットの移動経路の軌跡の一部分を修正することが可能なプログラム作成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明にかかるプログラム作成装置の代表的な構成は、ロボットの動作プログラムを作成するプログラム作成装置であって、ユーザからの入力を受け付ける入力部と、ユーザが入力したプログラムを格納する記憶部と、特定の動作パターンと動作種類とを関連付けて格納してある動作パターンテーブルと、動作パターンテーブルを参照してプログラム中の動作パターンを抽出し、動作種類をプログラムに付与する動作種類抽出手段と、動作種類と動作種類において適用可能な補正手段とを関連付けて格納してある補正手段テーブルと、補正手段テーブルを参照してプログラム中の動作種類に対応する補正手段を抽出するプログラム補正手段と、抽出された補正手段を出力する出力部と、を備え、入力部は、ユーザが選択した補正手段の入力を受け付け、プログラム補正手段は、入力部から選択された補正手段に応じてプログラムを補正して、ロボットに送信することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、装置コストを抑制しつつ処理プロセスを短時間化し、且つロボットの移動経路の軌跡の一部分を修正することが可能なプログラム作成装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態にかかるプログラム作成装置の構成を例示する機能ブロック図である。
【
図2】本実施形態のプログラム作成装置の動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。かかる実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、また本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0011】
図1は、本実施形態にかかるプログラム作成装置の構成を例示する機能ブロック図である。
図1に例示する本実施形態のプログラム作成装置100は、ワークWの加工や搬送等を行う際のロボット200の動作プログラムを作成する装置であり、制御部110、入力部120、出力部130および記憶部140を含んで構成される。
【0012】
制御部110は、本実施形態のプログラム作成装置100の動作全体を制御する装置である。制御部110は、具体的にはCPU(Central Processing Unit)やPLD(Programmable Logic Device)などを用いたコンピュータによって構成することができる。入力部120は、キーボードやタッチパネル等からなり、ユーザ(不図示)からの入力を受け付ける。出力部130は、モニター等の表示装置からなり、後述する「抽出された補正手段」等の情報を出力する。
【0013】
記憶部140は、記憶媒体であり、ユーザが入力したプログラム142を格納する。また本実施形態の記憶部140に、特定の動作のパターンと動作種類を関連付けて格納してある動作パターンテーブル144、および動作種類と動作種類において適用可能な補正手段を関連付けて格納してある補正手段テーブル146が格納されている。
【0014】
更に本実施形態のプログラム作成装置100では、上述した制御部110は動作種類抽出手段112およびプログラム補正手段114として機能する。動作種類抽出手段112は、動作パターンテーブル144を参照してプログラム142中の動作パターンを抽出し、動作種類をプログラム142に付与する。プログラム補正手段114は、補正手段テーブル146を参照してプログラム142中の動作種類に対応する補正手段を抽出する。加えてプログラム補正手段114は、入力部120から選択された補正手段に応じてプログラムを補正して、ロボットに送信する。
【0015】
図2は、本実施形態のプログラム作成装置100の動作を説明する図である。なお
図1においてデータや信号の流れを示す矢印に、
図2のフローチャートにおいて対応する動作の符号を付している。
【0016】
本実施形態のプログラム作成装置100では、制御部110は、入力部120を介してプログラム142の入力を受け付けたら(S202のYES)、入力されたプログラム142を記憶部140に格納する(S204)。次に制御部110は動作種類抽出手段112として機能し、動作パターンテーブル144を参照してプログラム142中の動作パターンを抽出し(S206)、動作種類をプログラム142に付与する(S208)。
【0017】
ここで記憶部140に格納されているプログラム142とは、「move(p1)、move(p2)などのコマンドの列記」のことであり、動作パターンとは、「move(p1)、move(p2)などの複数コマンドの特定のパターン」のことである。そして動作パターンテーブル144では、特定の動作パターンに対して動作種類が関連付けて格納されている。動作種類とは、例えば、降下や上昇(垂直移動)、周回、直線移動、円弧移動、回避して移動などである。換言すれば、動作パターンとはロボットプログラムに頻出し且つ定型化可能な「複数のコマンド」であり、動作種類とは定型化された一群のコマンドのラベル(グループといってもよい)である。
【0018】
図3は、動作種類の具体例を説明する図である。
図3(a)ではロボット200(厳密には不図示のマニピュレータ)によってトレイTに載置されているワークWを把持する動作を例示している。
図3(a)に示す例ではロボット200は、現在の位置をP1とし、目標の位置P2に移動してワークWを把持する。
【0019】
この把持動作では、プログラム142には、現在の位置P1から目標の位置P2に移動する「move(p1)、move(p2)」という2つのコマンドが順に記載されている。この2つのコマンドが所定の順序に並んでいたら、動作種類抽出手段112は、その2つのコマンドを把持の動作パターンとして抽出し、その動作パターンに関連付けられている「降下」という動作種類をプログラム142に対して付与する。
【0020】
図3(b)ではロボット200(厳密には不図示のマニピュレータ)によってワークWを加工する動作を例示している。
図3(b)に示す例では、ロボット200は、現在の位置P1から、位置P2まで降下した後に位置P3、位置P4、位置P5、位置P6の順にほぼワークWの外周の軌跡に沿って移動(周回)して位置P2まで戻り、位置P2から位置P2に上昇して位置P1に戻る。
【0021】
この加工動作では、プログラム142には、現在の位置P1から位置P2-位置P6を経由して位置P1に戻る複数のコマンドが順に記載されている。この複数のコマンドが所定の順序に並んでいたら、動作種類抽出手段112は、その複数のコマンドを動作パターンとして抽出し、動作パターンごとにグルーピングして、その動作パターンに関連付けられている「降下」「周回」「上昇」という動作種類をプログラム142のコマンドの該当行に対して付与する。
【0022】
プログラム142に対して動作種類が付与されたら、制御部110はプログラム補正手段114として機能し、補正手段テーブル146を参照してプログラム142中の動作種類に適用可能な補正手段を抽出する(S210)。続いてプログラム補正手段114は、抽出した補正手段を出力部130に送信し、出力部130は、受信した補正手段を出力(表示)する(S212)。
【0023】
プログラム142の補正手段としては、例えば
図3(a)に示す把持動作では、「降下」という動作種類に基づいて補正手段テーブル146を参照し、「移動先である位置P2を変更する」という補正手段(補正可能なパラメータ)を抽出することができる。また例えば
図3(b)に示す加工動作では、「周回」という動作種類に基づいて補正手段テーブル146を参照し、「周回」の動作種類を構成するコマンド群を「全体的にシフトする(一括補正する)」という補正手段を抽出することができる。
【0024】
抽出した補正手段を出力部130に出力することにより、ユーザに補正案を提示することができる。ユーザは、出力部130を参照して、必要に応じて入力部120から補正手段を入力する。入力部120がユーザからの補正入力(ユーザが選択した補正手段の入力)を受け付けたら(もしくは補正なしで入力が確定されたら)(S214)、制御部110はプログラム補正手段114として機能し、補正入力に基づいてプログラム142を補正する(S216)。プログラム142の補正が完了したら、プログラム補正手段114は、補正したプログラム(補正プログラム)をロボット制御装置202に送信する(S218)。これにより、ロボット200が補正プログラムにしたがって動作する。
【0025】
上記説明したように本実施形態のプログラム作成装置100によれば、ロボット200のプログラム142を動作パターン単位で補正することができる。これにより、ロボット200の移動経路の軌跡の一部分(位置、距離、方向、移動量、角度、弧の曲率等)を容易且つ適切に修正することが可能となる。その結果、オフラインで作成したプログラムを実機(ロボット)に導入する際の誤差を効率的に修正し、教示作業に要する時間を短縮することができる。このとき本実施形態のプログラム作成装置100では、プログラム142を補正するための特段の装置を別途設ける必要がなく、且つ3次元モデルのデータを取得する装置および処理が不要である。このため、装置コストを抑制しつつ処理プロセスを短時間化することができる。
【0026】
上記説明では、プログラム補正手段114がロボット制御装置202に補正プログラムを送信した後にロボット200を補正プログラムによって動作させると述べたが、これに限定するものではない。例えば、補正プログラムによってロボット200を動作させながらユーザが補正プログラムを修正してもよい。この場合、補正プログラムをロボット200に仮適用して動作させながら修正を行い、プログラム全体の補正が完了した後にそれをロボットプログラムに変換してロボット制御装置202に送信してもよい(フィードバック方式)。
【0027】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は、ロボットの動作プログラムを作成するプログラム作成装置として利用することができる。
【符号の説明】
【0029】
100…プログラム作成装置、110…制御部、112…動作種類抽出手段、114…プログラム補正手段、120…入力部、130…出力部、140…記憶部、142…プログラム、144…動作パターンテーブル、146…補正手段テーブル、200…ロボット、202…ロボット制御装置、T…トレイ、W…ワーク