(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023070330
(43)【公開日】2023-05-19
(54)【発明の名称】作業車両管理装置、システムおよび作業車両管理方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/06 20120101AFI20230512BHJP
F17C 13/02 20060101ALI20230512BHJP
【FI】
G06Q50/06
F17C13/02 301A
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021182421
(22)【出願日】2021-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】戎崎 英世
【テーマコード(参考)】
3E172
5L049
【Fターム(参考)】
3E172AA02
3E172AA05
3E172AB01
3E172BA01
3E172BB03
3E172BD03
3E172EA02
3E172EA12
3E172EA22
3E172EA35
3E172EB02
3E172KA22
5L049CC06
(57)【要約】
【課題】水素タンクを搭載する複数の作業車両の水素ガスの充填タイミングを決定する。
【解決手段】計測値取得部は、水素タンクを搭載する複数の作業車両それぞれの水素タンクの圧力の計測値と、水素タンクに水素ガスを充填する水素ステーションの蓄圧器の圧力の計測値を取得する。推定部は、圧力の計測値に基づいて、複数の作業車両による水素ステーションにおける水素ガスの充填時間に係る値を推定する。決定部は、充填時間に係る値に基づいて、充填時間の総和が最小となるように、複数の作業車両への水素ガスの充填タイミングを決定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素タンクを搭載する複数の作業車両それぞれの前記水素タンクの圧力の計測値と、前記水素タンクに水素ガスを充填する水素ステーションの蓄圧器の圧力の計測値とを取得する計測値取得部と、
前記圧力の計測値に基づいて、前記複数の作業車両への水素ガスの充填タイミングまたは充填順序を決定する決定部と
を備える作業車両管理装置。
【請求項2】
前記圧力の計測値に基づいて、前記複数の作業車両による前記水素ステーションにおける前記水素ガスの充填時間に係る値を推定する推定部を備え、
前記決定部は、前記充填時間に係る値に基づいて、前記複数の作業車両への水素ガスの充填タイミングまたは充填順序を決定する
請求項1に記載の作業車両管理装置。
【請求項3】
前記決定部は、前記充填時間に係る値に基づいて、前記充填時間の総和が最小となるように、前記複数の作業車両への水素ガスの充填タイミングまたは充填順序を決定する
請求項2に記載の作業車両管理装置。
【請求項4】
前記充填時間に係る値は、水素ガスの充填開始時における前記水素タンクの圧力と前記蓄圧器の圧力との差圧であって、
前記決定部は、前記複数の作業車両それぞれの水素ガスの充填開始時における前記水素タンクと前記蓄圧器の差圧の総和が最大となるように、前記充填タイミングまたは充填順序を決定する
請求項3に記載の作業車両管理装置。
【請求項5】
前記複数の作業車両の水素ガスの充填タイミングまたは充填順序に係る複数の候補を生成する候補生成部を備え、
前記推定部は、前記複数の候補のそれぞれについて前記水素ガスの充填時間に係る値を推定し、
前記決定部は、前記複数の候補のうち前記充填時間の総和が最小のものに基づいて、前記複数の作業車両への水素ガスの充填タイミングまたは充填順序を決定する
請求項3または請求項4に記載の作業車両管理装置。
【請求項6】
前記候補生成部は、前記水素ガスの充填順序の候補を生成し、
前記推定部は、
前記充填順序に従って、前記水素ステーションに同時充填可能台数を超える作業車両が同時に存在しないように、前記複数の作業車両それぞれが前記水素ステーションにおいて水素ガスの充填を開始する時刻を推定し、
前記圧力の計測値に基づいて、推定した前記時刻における前記水素タンクと前記蓄圧器との差圧を推定し、
前記差圧に基づいて前記水素ガスの充填時間を推定する
請求項5に記載の作業車両管理装置。
【請求項7】
前記決定部が決定した充填タイミングまたは充填順序に基づいて、前記複数の運搬車両の制御データを生成する制御データ生成部と、
前記制御データを前記複数の運搬車両に送信する制御データ送信部と、
を備える請求項1から請求項6の何れか1項に記載の作業車両管理装置。
【請求項8】
水素タンクと、前記水素タンクの圧力の計測値を取得する圧力計と、前記水素タンクの圧力の計測値を送信する通信装置と、を備える複数の作業車両と、
水素ガスを所定の圧力まで昇圧させて充填される蓄圧器と、前記蓄圧器の圧力の計測値を取得する圧力計と、前記蓄圧器の圧力の計測値を送信する通信装置と、を備える水素ステーションと、
前記水素タンクの圧力の計測値と前記蓄圧器の圧力の計測値とを受信する通信装置と、前記水素タンクの圧力と前記蓄圧器の圧力のそれぞれの計測値に基づいて、前記複数の作業車両への水素ガスの充填タイミングまたは充填順序を決定する決定部とを備える管理装置と、
を備えるシステム。
【請求項9】
前記管理装置は、
前記圧力の計測値に基づいて、前記複数の作業車両による前記水素ステーションにおける前記水素ガスの充填時間に係る値を推定する推定部を備え、
前記決定部は、前記充填時間に係る値に基づいて、前記複数の作業車両への水素ガスの充填タイミングまたは充填順序を決定する
請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記決定部は、前記充填時間に係る値に基づいて、前記充填時間の総和が最小となるように、前記複数の作業車両への水素ガスの充填タイミングまたは充填順序を決定する
請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記充填時間に係る値は、水素ガスの充填開始時における前記水素タンクの圧力と前記蓄圧器の圧力との差圧であって、
前記決定部は、前記複数の作業車両それぞれの水素ガスの充填開始時における前記水素タンクと前記蓄圧器の差圧の総和が最大となるように、前記充填タイミングまたは充填順序を決定する
請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記管理装置は、
前記複数の作業車両の水素ガスの充填タイミングまたは充填順序に係る複数の候補を生成する候補生成部を備え、
前記推定部は、前記複数の候補のそれぞれについて前記水素ガスの充填時間に係る値を推定し、
前記決定部は、前記複数の候補のうち前記充填時間の総和が最小のものに基づいて、前記複数の作業車両への水素ガスの充填タイミングまたは充填順序を決定する
請求項10または請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記候補生成部は、前記水素ガスの充填順序の候補を生成し、
前記推定部は、
前記充填順序に従って、前記水素ステーションに同時充填可能台数を超える作業車両が同時に存在しないように、前記複数の作業車両それぞれが前記水素ステーションにおいて水素ガスの充填を開始する時刻を推定し、
前記圧力の計測値に基づいて、推定した前記時刻における前記水素タンクと前記蓄圧器との差圧を推定し、
前記差圧に基づいて前記水素ガスの充填時間を推定する
請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記決定部が決定した充填タイミングまたは充填順序に基づいて、前記複数の運搬車両の制御データを生成する制御データ生成部と、
前記制御データを前記複数の運搬車両に送信する制御データ送信部と、
を備える請求項8から請求項13の何れか1項に記載のシステム。
【請求項15】
水素タンクを搭載する複数の作業車両それぞれの前記水素タンクの圧力の計測値と、前記水素タンクに水素ガスを充填する水素ステーションの蓄圧器の圧力の計測値とを取得するステップと、
前記圧力の計測値に基づいて、前記複数の作業車両への水素ガスの充填タイミングまたは充填順序を決定するステップと
を備える作業車両管理方法。
【請求項16】
前記圧力の計測値に基づいて、前記複数の作業車両による前記水素ステーションにおける前記水素ガスの充填時間に係る値を推定するステップを備え、
前記充填タイミングまたは前記充填順序を決定するステップで、前記充填時間に係る値に基づいて、前記複数の作業車両への水素ガスの充填タイミングまたは充填順序を決定する
請求項15に記載の作業車両管理方法。
【請求項17】
前記充填タイミングまたは前記充填順序を決定するステップで、前記充填時間に係る値に基づいて、前記充填時間の総和が最小となるように、前記複数の作業車両への水素ガスの充填タイミングまたは充填順序を決定する
請求項16に記載の作業車両管理方法。
【請求項18】
前記充填時間に係る値は、水素ガスの充填開始時における前記水素タンクの圧力と前記蓄圧器の圧力との差圧であって、
前記充填タイミングまたは前記充填順序を決定するステップで、前記複数の作業車両それぞれの水素ガスの充填開始時における前記水素タンクと前記蓄圧器の差圧の総和が最大となるように、前記充填タイミングまたは充填順序を決定する
請求項17に記載の作業車両管理方法。
【請求項19】
前記複数の作業車両の水素ガスの充填タイミングまたは充填順序に係る複数の候補を生成するステップを備え、
前記充填時間に係る値を推定するステップで、前記複数の候補のそれぞれについて前記水素ガスの充填時間に係る値を推定し、
前記充填タイミングまたは前記充填順序を決定するステップで、前記複数の候補のうち前記充填時間の総和が最小のものに基づいて、前記複数の作業車両への水素ガスの充填タイミングまたは充填順序を決定する
請求項17または請求項18に記載の作業車両管理方法。
【請求項20】
前記複数の候補を生成するステップで、前記水素ガスの充填順序に係る複数の候補を生成し、
前記充填時間に係る値を推定するステップで、
前記充填順序に従って、前記水素ステーションに同時充填可能台数を超える作業車両が同時に存在しないように、前記複数の作業車両それぞれが前記水素ステーションにおいて水素ガスの充填を開始する時刻を推定し、
前記圧力の計測値に基づいて、推定した前記時刻における前記水素タンクと前記蓄圧器との差圧を推定し、
前記差圧に基づいて前記水素ガスの充填時間を推定する
請求項19に記載の作業車両管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、作業車両管理装置、システムおよび作業車両管理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、フリートを構成する複数の作業車両の給油タイミングをスケジューリングする技術が開示されている。特許文献1によれば、一定数以上の作業車両が同時に同一の給油所に到着することによる待ち時間が生じないように、給油タイミングをスケジューリングすることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水素ガスを燃料として用いる燃料電池を搭載する作業車両が検討されている。このような作業車両は、燃料である水素ガスを充填した水素タンクを搭載している。水素ガスの充填は、水素ステーションに設けられた水素ガスを高圧で貯蔵する蓄圧器と水素タンクとを接続することでなされる。水素ガスは、水素タンクと蓄圧器の差圧によって蓄圧器から水素タンクへ充填される。そのため、水素タンクへの水素ガスの充填速度は、水素タンクと蓄圧器の差圧が高いほど速い。そのため、特許文献1に記載の手法を、燃料電池を搭載する作業車両に適用しても、水素ガスの補給タイミングは必ずしも適正でない可能性がある。
本開示の目的は、水素タンクを搭載する複数の作業車両の水素ガスの充填タイミングを決定することができる作業車両管理装置、システムおよび作業車両管理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様によれば、作業車両管理装置は、水素タンクを搭載する複数の作業車両それぞれの前記水素タンクの圧力の計測値と、前記水素タンクに水素ガスを充填する水素ステーションの蓄圧器の圧力の計測値を取得する計測値取得部と、前記圧力の計測値に基づいて、前記複数の作業車両への水素ガスの充填タイミングを決定する決定部とを備える。
【0006】
本開示の一態様によれば、作業車両管理方法は、水素タンクを搭載する複数の作業車両それぞれの前記水素タンクの圧力の計測値と、前記水素タンクに水素ガスを充填する水素ステーションの蓄圧器の圧力の計測値を取得するステップと、前記圧力の計測値に基づいて、前記複数の作業車両への水素ガスの充填タイミングを決定するステップとを備える。
【発明の効果】
【0007】
上記態様によれば、水素タンクを搭載する複数の作業車両の水素ガスの充填タイミングを決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1の実施形態に係る管理装置を備える自動運搬システムの構成を示す図である。
【
図2】第1の実施形態に係る水素ステーションの構成を示す概略ブロック図である。
【
図3】第1の実施形態に係る運搬車両を模式的に示す斜視図である。
【
図4】第1の実施形態に係る運搬車両が備える動力系および駆動系の構成を示す概略ブロック図である。
【
図5】第1の実施形態に係る運搬車両が備える制御系の構成を示す概略ブロック図である。
【
図6】第1の実施形態に係る管理装置の構成を示す概略ブロック図である。
【
図7】第1の実施形態に係る管理装置による水素ガスの充填順序の決定方法を示すフローチャート(パート1)である。
【
図8】第1の実施形態に係る管理装置による水素ガスの充填順序の決定方法を示すフローチャート(パート2)である。
【
図9】第1の実施形態に係る管理装置による運搬車両の制御データの送信方法を示すフローチャートである。
【
図10】少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
〈第1の実施形態〉
《自動運搬システム1の構成》
以下、図面を参照しながら実施形態について詳しく説明する。
図1は、第1の実施形態に係る管理装置50を備える自動運搬システム1の構成を示す図である。自動運搬システム1は、鉱山において自動走行する複数の運搬車両10に採掘された砕石等を運搬するために用いられる。運搬車両10は、水素ガスを燃料とする燃料電池によって駆動する。管理装置50は、運搬車両10に走行指示を送信し、運搬車両10の運行を制御する。運搬車両10は作業車両の一例である。複数の運搬車両10は、フリートを構成する。
【0010】
鉱山には、採掘場P1と排土場P2と水素ステーションP3とが設けられる。運搬車両10は、採掘場P1にて積載された採石を排土場P2まで運搬し、排土場P2にて砕石を排出する。運搬車両10は、排土場P2にて砕石を排出すると、再度採掘場P1へ移動し、採石を積載する。運搬車両10は、水素ステーションP3にて水素ガスを補給する。
【0011】
鉱山には、運搬車両10が走行するコースCが設けられる。コースCは、第1通路C1と第2通路C2と第3通路C3とを備える。第1通路C1は、採掘場P1から排土場P2へ向かう一方通行通路である。第2通路C2は、排土場P2から採掘場P1へ向かう一方通行通路である。第3通路C3は、第2通路C2から分岐して水素ステーションP3に接続する。なお、他の実施形態においては、第3通路C3が第1通路C1から分岐してもよい。また他の実施形態に係る鉱山が複数の水素ステーションP3を有する場合、水素ステーションP3ごとに第3通路C3が設けられる。なお、
図1に示す例では、第1通路C1と第2通路C2とが離れて設けられることで、円環上のコースCを形成するが、他の実施形態ではこれに限られない。例えば、他の実施形態においては、第1通路C1と第2通路C2が隣接して設けられることで、対面通行のコースCを形成してもよい。
【0012】
図2は、第1の実施形態に係る水素ステーションP3の構成を示す概略ブロック図である。水素ステーションP3は、水素保管庫P31、コンプレッサP32、蓄圧器P33、ディスペンサP34、圧力計P35、通信装置P36を備える。水素保管庫P31は、水素ガスを保管するタンクである。水素保管庫P31は、水素ガスを第1の圧力(例えば約20MPa)で保管する。第1の圧力は、運搬車両10が備える水素タンク141の圧力より低くてよい。蓄圧器P33は、水素ガスを第2の圧力(例えば約82MPa)で保管する。第2の圧力は、運搬車両10が備える水素タンク141の圧力より高い。コンプレッサP32は、水素保管庫P31の水素ガスを第2の圧力まで昇圧させて蓄圧器P33に充填する。コンプレッサP32は、運搬車両10への水素ガスの充填がなされていないときに、水素保管庫P31から蓄圧器P33への水素ガスの充填を行う。ディスペンサP34は、水素ガスを出力するノズルを有する。ノズルは水素タンク141と係合するように構成される。ディスペンサP34は、水素ガスの充填による断熱圧縮で水素タンク141の温度が上昇しないように、水素ガスを冷却する。蓄圧器P33とディスペンサP34とは高圧配管で接続される。第1の実施形態に係る水素ステーションP3は、同時に1台の運搬車両10に水素ガスを供給することができる。他の実施形態においては、水素ステーションP3が複数の蓄圧器P33およびディスペンサP34を備え、複数台の運搬車両10に水素ガスを供給することができるものであってもよい。
【0013】
圧力計P35は、蓄圧器P33の圧力を計測する。通信装置P36は、圧力計P35による計測値を管理装置50に送信する。
【0014】
《運搬車両10の構成》
図3は、第1の実施形態に係る運搬車両10を模式的に示す斜視図である。運搬車両10は、ベッセル11と、車体12と、走行装置13とを備える。
【0015】
ベッセル11は、積荷が積載される部材である。ベッセル11の少なくとも一部は、車体12よりも上方に配置される。ベッセル11は、ダンプ動作及び下げ動作する。ダンプ動作及び下げ動作により、ベッセル11は、ダンプ姿勢及び積載姿勢に調整される。ダンプ姿勢とは、ベッセル11が上昇している姿勢をいう。積載姿勢とは、ベッセル11が下降している姿勢をいう。
【0016】
ダンプ動作とは、ベッセル11を車体12から離隔させてダンプ方向に傾斜させる動作をいう。ダンプ方向は、車体12の後方である。実施形態において、ダンプ動作は、ベッセル11の前端部を上昇させて、ベッセル11を後方に傾斜させることを含む。ダンプ動作により、ベッセル11の積載面は、後方に向かって下方に傾斜する。
【0017】
下げ動作とは、ベッセル11を車体12に接近させる動作をいう。実施形態において、下げ動作は、ベッセル11の前端部を下降させることを含む。
【0018】
排土作業を実施する場合、ベッセル11は、積載姿勢からダンプ姿勢に変化するように、ダンプ動作する。ベッセル11に積荷が積載されている場合、積荷は、ダンプ動作により、ベッセル11の後端部から後方に排出される。積込作業が実施される場合、ベッセル11は、積載姿勢に調整される。
【0019】
車体12は、車体フレームを含む。車体12は、ベッセル11を支持する。車体12は、走行装置13に支持される。
【0020】
走行装置13は、車体12を支持する。走行装置13は、運搬車両10を走行させる。走行装置13は、運搬車両10を前進又は後進させる。走行装置13の少なくとも一部は、車体12よりも下方に配置される。走行装置13は、一対の前輪と一対の後輪とを備える。前輪は操舵輪であり、後輪は駆動輪である。
【0021】
図4は、第1の実施形態に係る運搬車両10が備える動力系14および駆動系15の構成を示す概略ブロック図である。動力系14は、水素タンク141、水素供給装置142、燃料電池143、バッテリ144、DCDCコンバータ145を備える。なお、動力系14は、複数の燃料電池143を備える。
水素供給装置142は、水素タンク141に充填された水素ガスを燃料電池143に供給する。燃料電池143は、水素供給装置142から供給される水素と外気に含まれる酸素とを電気化学反応させて電力を発生する。バッテリ144は、燃料電池143において発生した電力を蓄える。DCDCコンバータ145は、制御系16(
図4参照)からの指示に従って接続される燃料電池143またはバッテリ144から電力を出力させる。
【0022】
動力系14が出力した電力は、母線Bを介して駆動系15へ出力される。駆動系15は、インバータ151と、ポンプ駆動モータ152と、油圧ポンプ153と、ホイストシリンダ154と、インバータ155と、走行駆動モータ156とを有する。インバータ151は、母線Bからの直流電流を三相交流電流に変換してポンプ駆動モータ152に供給する。ポンプ駆動モータ152は、油圧ポンプ153を駆動する。油圧ポンプ153から吐出された作動油は、図示しない制御弁を介してホイストシリンダ154に供給される。作動油がホイストシリンダ154に供給されることにより、ホイストシリンダ154が作動する。ホイストシリンダ154は、ベッセル11をダンプ動作又は下げ動作させる。インバータ155は、母線Bからの直流電流を三相交流電流に変換して走行駆動モータ156に供給する。走行駆動モータ156が発生した回転力は、走行装置13の後輪に伝達される。
【0023】
運搬車両10は、動力系14および駆動系15を制御する制御系16を備える。
図5は、第1の実施形態に係る運搬車両10が備える制御系16の構成を示す概略ブロック図である。制御系16は、計測装置161、通信装置162、制御装置163を備える。
【0024】
計測装置161は、運搬車両10の稼働状態および走行状態に関するデータを収集する。計測装置161は、GNSS(Global Navigation Satellite System)により運搬車両10の位置及び方位を計測する測位装置、運搬車両10の速度を計測する速度計、および水素タンク141の圧力を計測する圧力計を少なくとも含む。
【0025】
通信装置162は、移動体通信網などを介して管理装置50との通信を行う。通信装置162は、計測装置161によって計測された各種計測値を格納した計測データを管理装置50に送信する。通信装置162は、管理装置50から運搬車両10を制御するための制御データを受信する。
【0026】
制御装置163は、通信装置162が管理装置50から受信した制御データに従って、運搬車両10を駆動させる。制御装置163は、例えば制御データと計測装置161による計測値とに基づくPID制御により、運搬車両10を制御するための制御信号を生成する。例えば制御装置163は、走行装置13のステアリング、アクセル、ブレーキ、ベッセル動作などを制御する制御信号を生成する。
制御装置163は、バスで接続されたプロセッサ、メモリ、補助記憶装置などを備え、プログラムを実行することによって、PID制御により制御信号を生成する装置として機能する。プロセッサの例としては、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphic Processing Unit)、マイクロプロセッサなどが挙げられる。
プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えば磁気ディスク、光磁気ディスク、光ディスク、半導体メモリ等の記憶装置である。プログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
なお、制御装置163の各機能の全て又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)等のカスタムLSI(Large Scale Integrated Circuit)を用いて実現されてもよい。PLDの例としては、PAL(Programmable Array Logic)、GAL(Generic Array Logic)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)が挙げられる。このような集積回路も、プロセッサの一例に含まれる。
【0027】
《管理装置50の構成》
図6は、第1の実施形態に係る管理装置50の構成を示す概略ブロック図である。
管理装置50は、計測値取得部51、候補生成部52、推定部53、決定部54、記憶部55、制御データ生成部56、制御データ送信部57を備える。
【0028】
計測値取得部51は、複数の運搬車両10から位置、方位、速度、および水素タンク141の圧力の計測値を受信する。また計測値取得部51は、水素ステーションP3から蓄圧器P33の圧力の計測値を受信する。
【0029】
候補生成部52は、複数の運搬車両10の水素ガスの充填順序候補をランダムに決定する。候補生成部52が生成する充填順序候補は、複数の運搬車両10を並べ替えて生成される重複のない列である。候補生成部52は、所定数の充填順序候補を生成する。
【0030】
推定部53は、候補生成部52が生成した充填順序候補に従って水素ガスの充填を行う場合における充填時間に係る値を推定する。充填時間は、水素ガスの充填開始時における水素タンク141と蓄圧器P33との差圧によって決まる。したがって、第1の実施形態に係る推定部53は、複数の運搬車両10における水素ガスの充填開始時における水素タンク141と蓄圧器P33との差圧の総和を、充填時間に係る値として算出する。具体的には、推定部53は、計測値取得部51が受信した計測値に基づいて、候補生成部52が生成した充填順序候補に従って複数の運搬車両10への水素ガスの充填をシミュレートし、当該シミュレートの結果に基づいて水素タンク141と蓄圧器P33との差圧を算出する。
【0031】
決定部54は、候補生成部52が生成した複数の充填順序候補のうち、水素ガスの充填時間が最も短いものを、充填順序として決定する。
記憶部55は、決定部54が決定した充填順序を記憶する。
制御データ生成部56は、決定部54が決定した充填順序と、計測値取得部51が取得したデータと、予め定められた運搬車両10の運行ルールとに基づいて、複数の運搬車両10の制御データを生成する。運搬車両10の運行ルールは、コースCにおける走行方向と、走行速度と、採掘場P1および排土場P2における標準作業時間とによって定められる。例えば、運行ルールは、コースCを複数の区間に分割し、区間ごとに走行方向と走行速度とを関連付けたものであってよい。運行ルールは、管理者等によって手動で設定されてもよいし、運搬車両10によるコースCの走行に応じて自動的に生成されるものであってもよい。
制御データ送信部57は、制御データ生成部56が生成した制御データを各運搬車両10に送信する。
【0032】
《管理装置50の処理》
図7は、第1の実施形態に係る管理装置50による水素ガスの充填順序の決定方法を示すフローチャート(パート1)である。
図8は、第1の実施形態に係る管理装置50による水素ガスの充填順序の決定方法を示すフローチャート(パート2)である。管理装置50は、例えば充填順序に従って複数の運搬車両10への水素ガスの充填が完了するたびに、
図7に示す水素ガスの充填順序の決定処理を行う。
管理装置50は、以下に示す手順で複数の運搬車両10の水素ガスの充填順序を決定する。まず、管理装置50の計測値取得部51は、複数の運搬車両10から位置、方位、速度、および水素タンク141の圧力の計測値を受信する(ステップS1)。また計測値取得部51は、水素ステーションP3から蓄圧器P33の圧力の計測値を受信する(ステップS2)。
【0033】
次に、候補生成部52は、複数の運搬車両10の水素ガスの充填順序候補をランダムに決定する(ステップS3)。推定部53は、ステップS3で決定した充填順序候補の先頭の運搬車両10を対象車両に決定し、現在時刻を第1対象時刻に決定する(ステップS4)。対象車両は、運搬車両10の運行シミュレーションにおいて、水素ガスの充填を行う運搬車両10である。第1対象時刻は、運行シミュレーションにおける計算の起点となる時刻である。
【0034】
推定部53は、対象車両が第1対象時刻における位置から水素ステーションP3に到達するまでの時間である第1時間を推定する(ステップS5)。例えば、推定部53は、対象車両の対象時刻における位置から水素ステーションP3までの距離に、運行ルールで定められる運搬車両10の制限速度を乗算することで、第1時間を推定する。初回計算時における対象車両の第1対象時刻における位置は、ステップS1で受信した計測値が示す位置である。2回目以降の計算時における対象車両の第1対象時刻における位置は、後述のステップS12で計算される。
【0035】
次に、推定部53は、第1対象時刻にステップS5で算出した第1時間を加算した時刻を第2対象時刻に決定する(ステップS6)。第2対象時刻は、対象車両が水素ステーションP3に到着する時刻、すなわち対象車両への水素ガスの充填開始時刻である。推定部53は、第2対象時刻における対象車両の水素タンク141の圧力を推定する(ステップS7)。例えば、推定部53は、以下に示す手順で第2対象時刻における対象車両の水素タンク141の圧力を推定する。まず、推定部53は、コースCのうち運搬車両10が走行している区域について予め定められている水素ガスの圧力の減少速度を特定する。区域ごとの水素ガスの圧力の減少速度は、当該区域の勾配や制限速度等に基づいて予め計算される。次に、推定部53は、特定された減少速度にステップS5で算出した第1時間を乗算することで得られる圧力の減少量を求める。推定部53は、求めた減少量を、第1対象時刻における水素タンク141の圧力から減算することで、第2対象時刻における対象車両の水素タンク141の圧力を推定する。また、推定部53は、水素ステーションP3の蓄圧器P33の第2対象時刻における圧力を推定する(ステップS8)。例えば、推定部53は、以下に示す手順で第2対象時刻における蓄圧器P33の圧力を推定する。まず、推定部53は、コンプレッサP32による蓄圧器P33の圧力の増加速度にステップS5で算出した第1時間を乗算することで、圧力の増加量を求める。推定部53は、求めた増加量を、第1対象時刻における蓄圧器P33の圧力に加算することで、第2対象時刻における蓄圧器P33の圧力を推定する。
【0036】
推定部53は、第2対象時刻における対象車両の水素タンク141と蓄圧器P33との差圧を推定する(ステップS9)。推定部53は、推定した差圧に基づいて、対象車両の水素タンク141への水素ガスの充填の完了に要する時間である第2時間を推定する(ステップS10)。水素タンク141と蓄圧器P33との差圧と、単位時間当たりの水素タンク141の圧力の変化量との関係は予め算出しておくことができる。そのため、推定部53は、圧力の変化量の時間積分値が、第2対象時刻における対象車両の水素タンク141の圧力と満充填時の水素タンク141の圧力との差に等しくなる時間を、第2時間として推定する。
【0037】
推定部53は、ステップS3で決定した充填順序候補において、対象車両の次の運搬車両10が存在するか否かを判定する(ステップS11)。
【0038】
次の運搬車両10が存在する場合(ステップS11:YES)、推定部53は、第2対象時刻に第2時間を加算した時刻を第3対象時刻に決定する(ステップS12)。推定部53は、第3対象時刻における対象車両以外の運搬車両10の位置を推定する(ステップS13)。例えば、推定部53は、運行ルールで定められる運搬車両10の制限速度に第1時間と第2時間の和を乗算することで得られた距離を、第1対象時刻における運搬車両10の位置に加算することで、第3対象時刻における運搬車両10の位置を推定する。なお、第3対象時刻における対象車両の位置は、水素ステーションP3の位置である。次に、推定部53は、第3対象時刻における対象車両以外の運搬車両10の水素タンク141の圧力を推定する(ステップS14)。例えば、推定部53は、コースCのうち運搬車両10が走行している区域について予め定められている水素ガスの圧力の減少速度を特定する。次に、推定部は、特定された減少速度に第1時間と第2時間の和を乗算することで得られる圧力の減少量を、第1対象時刻における水素タンク141の圧力から減算することで、第3対象時刻における運搬車両10の水素タンク141の圧力を推定する。また、推定部53は、水素ステーションP3の蓄圧器P33の第3対象時刻における圧力を推定する(ステップS15)。例えば、推定部53は、第2対象時刻における蓄圧器P33の圧力から、第2時間における水素タンク141の圧力の変化量を減算することで、蓄圧器P33の第3対象時刻における圧力を推定する。そして、推定部53は、対象車両を次の運搬車両10に変更し、第1対象時刻を第3対象時刻の値に変更する(ステップS16)。そして推定部53は、ステップS5に処理を戻す。
【0039】
ステップS11で次の運搬車両10が存在しない場合(ステップS11:NO)、推定部53は、ステップS9で算出した水素ガスの充填開始時における複数の運搬車両10の水素タンク141と蓄圧器P33との差圧の総和を、水素ガスの充填時間の指標値として算出する(ステップS17)。指標値は、充填時間が短いほど大きくなる。
上記ステップS4からステップS17の処理により、管理装置50は、水素ステーションP3に2台以上の運搬車両10が同時に存在しないように、複数の運搬車両10それぞれの充填開始時刻を推定することができる。
【0040】
候補生成部52は、生成した充填順序候補が所定数以上であるか否かを判定する(ステップS18)。充填順序候補が所定数未満である場合(ステップS18:NO)、管理装置50は処理をステップS3に戻し、次の充填順序候補についての指標値の算出を行う。他方、充填順序候補が所定数以上である場合(ステップS18:YES)、決定部54は、候補生成部52が生成した複数の充填順序候補のうち、ステップS17で算出された指標値が最も大きいものを、採用する充填順序として決定する(ステップS19)。決定部54は、決定した充填順序を記憶部55に記録し(ステップS20)、充填順序の決定処理を終了する。なお、ステップS18における充填順序候補が所定数以上であるか否かの判定は、決定部54が行ってもよい。この場合、充填順序候補が所定数未満であるときに決定部54が候補生成部52に新たな充填順序候補の生成を指示する。
【0041】
これにより、管理装置50は、記憶部55が記憶する充填順序に従って運搬車両10が水素ステーションP3へ移動するように、運搬車両10を制御することができる。
図9は、第1の実施形態に係る管理装置50による運搬車両10の制御データの送信方法を示すフローチャートである。管理装置50は、一定の制御周期ごとに
図8に示す制御データの送信処理を実行する。
まず、管理装置50の計測値取得部51は、複数の運搬車両10から位置、方位、速度を受信する(ステップS31)。次に、管理装置50は、運搬車両10を1つずつ選択し(ステップS32)、選択した運搬車両10について以下のステップS33からステップS37に示す計算を行う。
【0042】
制御データ生成部56は、記憶部55が記憶する充填順序を参照し、次に水素ガスの充填を行う運搬車両10がステップS32で選択した運搬車両10であるか否かを判定する(ステップS33)。次に水素ガスの充填を行う運搬車両10がステップS32で選択された運搬車両10である場合(ステップS33:YES)、ステップS31で受信した位置の計測値に基づいて、選択された運搬車両10が第3通路C3の分岐点の近傍に位置するか否かを判定する(ステップS34)。分岐点の近傍とは、例えば制御周期に係る時間で運搬車両10が走行する距離だけ分岐点より手前の地点から、分岐点までの範囲であってよい。選択された運搬車両10が第3通路C3の分岐点の近傍に位置する場合(ステップS34:YES)、水素ステーションP3で他の運搬車両10が水素ガスの充填中であるか否かを判定する(ステップS35)。他の運搬車両10の充填中でない場合(ステップS35:NO)、制御データ生成部56は、選択された運搬車両10に第3通路C3を走行させる制御データを生成する(ステップS36)。他方、水素ガスの充填を行う運搬車両10がステップS32で選択された運搬車両10でない場合(ステップS33:NO)、選択された運搬車両10が分岐点の近傍に位置しない場合(ステップS34:NO)、または水素ステーションP3で他の運搬車両10が水素ガスの充填中である場合(ステップS35:YES)、制御データ生成部56は、選択された運搬車両10に第1通路C1または第2通路C2を走行させる制御データを生成する(ステップS37)。
【0043】
《作用・効果》
このように、第1の実施形態に係る管理装置50は、複数の運搬車両10それぞれの水素タンク141の圧力の計測値と、水素ステーションP3の蓄圧器P33の圧力の計測値に基づいて、複数の運搬車両10による水素ステーションにおける水素ガスの充填時間の総和が最小となるように、複数の運搬車両10への水素ガスの充填タイミングを決定する。これにより、管理装置50は、燃料電池を搭載する管理装置50について、水素ガスの適切な補給タイミングを決定することができる。
【0044】
また、第1の実施形態に係る管理装置50は、水素ガスの充填開始時における水素タンク141と蓄圧器P33の差圧に基づいて充填時間の指標値を算出する。水素ガスの充填速度は水素タンク141と蓄圧器P33の差圧によって定まる。そのため、管理装置50は、水素タンク141と蓄圧器P33の差圧に基づいて指標値を算出し、当該指標値が最大となるように、充填タイミングを決定することで、水素ガスの適切な補給タイミングを決定することができる。
【0045】
〈他の実施形態〉
以上、図面を参照して一実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、様々な設計変更等をすることが可能である。すなわち、他の実施形態においては、上述の処理の順序が適宜変更されてもよい。また、一部の処理が並列に実行されてもよい。
上述した実施形態に係る管理装置50は、単独のコンピュータによって構成されるものであってもよいし、管理装置50の構成を複数のコンピュータに分けて配置し、複数のコンピュータが互いに協働することで管理装置50として機能するものであってもよい。このとき、管理装置50を構成する一部のコンピュータが水素ステーションP3に設けられてもよい。
【0046】
上述した実施形態に係る管理装置50は、充填順序に従って複数の運搬車両10への水素ガスの充填が完了するたびに、水素ガスの充填順序の決定処理を行うが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る管理装置50は、複数の運搬車両10のうち水素タンク141の圧力が所定値を下回るものが発生したときなど、他の契機によって充填順序の決定処理を行ってもよい。
【0047】
上述した実施形態に係る管理装置50は、決定した充填順序に従って複数の運搬車両10すべてに水素ガスの充填を行うが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る管理装置50は、複数の運搬車両10のうち、水素タンク141の圧力が所定値を下回るものを対象に充填順序を決定し、水素タンク141の圧力が所定値以上のものについて計算を行わないものであってもよい。
【0048】
上述した実施形態に係る管理装置50は、充填順序候補を所定数生成し、その中から最適な充填順序を決定するが、これに限られない。例えば他の実施形態に係る管理装置50は、運搬車両10が水素ガスの充填を開始してから充填が完了するまでの間、繰り返し充填順序候補を生成し、次の充填順序を決定してもよい。この場合、管理装置50は、充填順序の先頭に位置する運搬車両10が水素ステーションP3に到着するたびに充填順序を計算しなおしてよい。運搬車両10の位置および水素タンク141の圧力、ならびに水素ステーションP3の蓄圧器P33の圧力の推定精度は、現在時刻から遠い時刻になるほど低くなる。そのため、運搬車両10が水素ステーションP3に到着するたびに充填順序を計算しなおすことで、常に適切な充填順序を算出し続けることができる。
【0049】
上述した実施形態に係る管理装置50は、運搬車両10の充填順序を決定するが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る管理装置50は、各運搬車両10の充填開始時刻、すなわち充填タイミングを決定してよい。この場合、候補生成部52は、ランダムに複数の運搬車両10それぞれの充填タイミングを決定し、運搬車両10ごとに、充填タイミングにおける充填時間を推定する。
また、他の実施形態に係る管理装置50は、第1の実施形態と同様の手順で充填順序を決定し、推定部53が推定した各運搬車両10の充填開始時刻を充填タイミングとして決定してもよい。
【0050】
上述した実施形態に係る管理装置50は、ランダムに充填順序候補を生成するが、これに限られない。例えば、他の実施形態に係る管理装置50は、水素タンク141の圧力に応じた重みに基づいて、充填順序候補を生成してもよい。すなわち、他の実施形態に係る管理装置50は、水素タンク141の圧力が低い運搬車両10が優先的に選択されるように充填順序候補を生成してもよい。
【0051】
上述した実施形態に係る水素ステーションP3は、同時に1台の運搬車両10のみが水素ガスの充填を行うことができるが、これに限られない。例えば、他の実施形態においては、水素ステーションP3において同時に2台以上の運搬車両10へ水素ガスの充填を行うことができてもよい。この場合、管理装置50は、同時充填可能台数を超える運搬車両10が水素ステーションP3に存在しないように、複数の運搬車両10それぞれの充填開始時刻を推定する。
【0052】
〈コンピュータ構成〉
図10は、少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
コンピュータ90は、プロセッサ91、メインメモリ92、ストレージ93、インタフェース94を備える。
上述の管理装置50は、コンピュータ90に実装される。そして、上述した各処理部の動作は、プログラムの形式でストレージ93に記憶されている。プロセッサ91は、プログラムをストレージ93から読み出してメインメモリ92に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、プロセッサ91は、プログラムに従って、上述した各記憶部に対応する記憶領域をメインメモリ92に確保する。プロセッサ91の例としては、CPU、GPU、マイクロプロセッサなどが挙げられる。
【0053】
プログラムは、コンピュータ90に発揮させる機能の一部を実現するためのものであってもよい。例えば、プログラムは、ストレージに既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせ、または他の装置に実装された他のプログラムとの組み合わせによって機能を発揮させるものであってもよい。なお、他の実施形態においては、コンピュータ90は、上記構成に加えて、または上記構成に代えてPLDなどのカスタムLSIを備えてもよい。PLDの例としては、PAL、GAL、CPLD、FPGAが挙げられる。この場合、プロセッサ91によって実現される機能の一部または全部が当該集積回路によって実現されてよい。このような集積回路も、プロセッサの一例に含まれる。
【0054】
ストレージ93の例としては、磁気ディスク、光磁気ディスク、光ディスク、半導体メモリ等が挙げられる。ストレージ93は、コンピュータ90のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インタフェース94または通信回線を介してコンピュータ90に接続される外部メディアであってもよい。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ90に配信される場合、配信を受けたコンピュータ90が当該プログラムをメインメモリ92に展開し、上記処理を実行してもよい。少なくとも1つの実施形態において、ストレージ93は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0055】
また、当該プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、当該プログラムは、前述した機能をストレージ93に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせで実現するもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【符号の説明】
【0056】
1…自動運搬システム 10…運搬車両 11…ベッセル 12…車体 13…走行装置 14…動力系 141…水素タンク 142…水素供給装置 143…燃料電池 144…バッテリ 145…DCDCコンバータ 15…駆動系 151…インバータ 152…ポンプ駆動モータ 153…油圧ポンプ 154…ホイストシリンダ 155…インバータ 156…走行駆動モータ 16…制御系 161…計測装置 162…通信装置 163…制御装置 50…管理装置 51…計測値取得部 52…候補生成部 53…推定部 54…決定部 55…記憶部 56…制御データ生成部 57…制御データ送信部 90…コンピュータ 91…プロセッサ 92…メインメモリ 93…ストレージ 94…インタフェース B…母線 C…コース C1…第1通路 C2…第2通路 C3…第3通路 P1…採掘場 P2…排土場 P3…水素ステーション P31…水素保管庫 P32…コンプレッサ P33…蓄圧器 P34…ディスペンサ P35…圧力計 P36…通信装置