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  • 特開-フッ素含有水の処理装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023070342
(43)【公開日】2023-05-19
(54)【発明の名称】フッ素含有水の処理装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/461 20230101AFI20230512BHJP
【FI】
C02F1/461 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021182450
(22)【出願日】2021-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】515157758
【氏名又は名称】公立大学法人 富山県立大学
(71)【出願人】
【識別番号】304024094
【氏名又は名称】エスオーシー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095430
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 勲
(72)【発明者】
【氏名】川上 智規
(72)【発明者】
【氏名】福岡 新太郎
【テーマコード(参考)】
4D061
【Fターム(参考)】
4D061DA01
4D061DB18
4D061EA02
4D061EB01
4D061EB12
4D061EB16
4D061EB20
4D061EB28
4D061EB30
4D061EB33
4D061FA10
4D061FA11
4D061FA13
4D061FA20
(57)【要約】
【課題】フッ素含有水からフッ素を確実に除去することができ、フッ素含有水からフッ素を除去する効率が良く、排水が少ないフッ素含有水の処理装置を提供する。
【解決手段】フッ素含有水11を入れる電解槽12を有し、電解槽12にはフッ素含有水11が入る水槽14を備える。水槽14は、4つの隔膜20により一方向に対して平行な薄形の5室に区画され、水槽14の中央に位置する1区画は、陽極16が設けられた陽極室26であり、陽極室26の両方の外側の2区画は、フッ素含有水11を直接入れる注水室24である。注水室24の両側の2区画は、水槽14の両側の側面の陰極室22である。隔膜20の下端部は水槽14の底部から所定の長さの隙間21を有して離間している。電解処理によりフッ素が除去された陰極水が流れ出る2つの陰極水流出口30と、陰極水流出口30が設けられた位置よりも高い位置に、フッ素を含む陽極水が流れ出る陽極水流出口32を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素含有水を入れて電解処理する電解槽が設けられ、前記電解槽には前記フッ素含有水が流入する水槽が設けられ、前記水槽は、4つの隔膜により一方向に薄形の5室に区画され、前記水槽の中央に位置する1区画は、陽極が設けられた陽極室であり、前記陽極室の両方の外側の2区画は、前記フッ素含有水を直接入れる注水室であり、前記注水室の両方の外側の2区画は、前記水槽の両側の側面の裏側に沿う区画であり陰極が設けられた陰極室であり、
前記隔膜の下端部は前記水槽の底部から所定の長さの隙間を有して離間し、
前記水槽の一側面の側には、前記フッ素含有水が注入されるフッ素含有水注入口が2つ各々前記注水室に連通して設けられ、前記フッ素含有水注入口が設けられた側面とは反対側には、電解処理によりフッ素が除去された陰極水が流れ出る2つの陰極水流出口が各々前記陰極室に連通して設けられ、前記陰極水流出口が設けられた側面には、フッ素を含む陽極水が流れ出る陽極水流出口が前記陽極室に連通して設けられ、
前記陰極水流出口の、前記水槽の前記底部からの高さは、前記陽極水流出口よりも低く、前記陰極水流出口にはポンプを接続し前記ポンプの流量は流入する前記フッ素含有水の量よりも少なく、前記陰極水を前記陰極水流出口から前記ポンプにより引き抜くとともに、前記フッ素含有水と前記ポンプにより引き抜かれる前記陰極水の量との差分が、前記陽極水流出口から排水として排出されることを特徴とするフッ素含有水の処理装置。
【請求項2】
前記電解槽の下流にはpH調整槽が設けられ、前記pH調整槽には前記電解槽の陰極水と陽極水が入れられるpH調整用水槽が設けられ、前記pH調整用水槽は、陽イオン交換膜により一方向に対して平行な薄形の2室に区画され、一方はpH調整用陽極を有するpH調整用陽極室となり、他方はpH調整用陰極を有するpH調整用陰極室となり、
前記pH調整用水槽の一側面の側には、前記電解槽で電解処理された陰極水が注入される陰極水注入口が2つ各々前記pH調整用陽極室に連通して設けられ、前記陰極水注入口が設けられた側面には、前記電解槽で電解処理された陽極水が注入される陽極水注入口が前記pH調整用陰極室に連通して設けられ、前記陰極水注入口と前記陽極水注入口が設けられた側面とは反対側の側面には、電解処理によりpHが下げられた処理水が流れ出る処理水流出口が前記pH調整用陽極室に連通して設けられ、前記処理水流出口が設けられた前記側面には、フッ素を含む排水が流れ出る排水流出口が前記pH調整用陰極室に連通して設けられている請求項1記載のフッ素含有水の処理装置。
【請求項3】
前記隔膜はセラミック板であり、前記隙間は、0.5~1mmである請求項1又は2記載のフッ素含有水の処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、フッ素含有水の中からフッ素を除去する処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地域によっては、飲料水として利用している地下水に地質由来の高濃度フッ素が含まれていることがあり、フッ素症の健康被害を防ぐためにフッ素を除去する処理が必要である。このようなフッ素含有水からフッ素を除去する処理装置には、フッ素含有水を電解処理して陰極水を得る電解槽が設けられているものがある。
【0003】
特許文献1のフッ素含有水の処理装置は、フッ素含有水を導入して電気分解する電解槽と、陰極室と陽極室に仕切る多孔質の素焼板隔膜と、電解槽の陰極室で作られた陰極水のろ過を行う砂ろ過装置と、砂ろ過装置でろ過された陰極水のpH調整を行うpH調整槽が設置され、電解槽、砂ろ過装置、及びpH調整槽は連結管路によって各々接続されている。陰極水は、フッ素と異物を除去し、pHを調整し、飲料水として利用可能な製品となる。
【0004】
特許文献2の電解イオン水の製造法は、水道水を電解処理する電解槽が設けられ、電解槽は、1つの陽極と、陽極を挟む一対の陰極が設けられ、陰極と陽極の間には各々隔膜が設けられて仕切られて1つの陽極室と、2つの陰極室が設けられている。1つの陽極室と、2つの陰極室には、各々水道水を流入する配管が接続されている。電解槽で電解処理した後、陰極室から電解イオン水を取り出し、製品とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】2016-168529号公報
【特許文献2】特開平8-99088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記背景技術の特許文献1の場合、陽極室と陰極室が設けられ、陰極室における多価金属とフッ素との共沈除去をその原理としているため、原水に多価金属が含まれていない場合には飲料水としての製品を得ることができなかった。上記背景技術の特許文献2の場合、1つの陽極室と、2つの陰極室が設けられているため、製品を得る効率は高いが、水道水を各室に流入するために配管が3つ必要であり、設備が多いものである。
【0007】
この発明は、上記背景技術の問題点に鑑みてなされたものであり、フッ素含有水からフッ素を確実に除去することができ、フッ素含有水からフッ素を除去した製品を得る効率が良く、排水が少ないフッ素含有水の処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、フッ素含有水を入れて電解処理する電解槽が設けられ、前記電解槽には前記フッ素含有水が流入する水槽が設けられ、前記水槽は、4つの隔膜により一方向に対して平行な薄形の5室に区画され、前記水槽の中央に位置する1区画は、陽極が設けられた陽極室であり、前記陽極室の両方の外側の2区画は、前記フッ素含有水を直接入れる注水室であり、前記注水室の両方の外側の2区画は、前記水槽の両側の側面の裏側に沿う区画であり陰極が設けられた陰極室であり、前記隔膜はセラミック板であり、前記隔膜の下端部は前記水槽の底部から所定の長さの隙間を有して離間し、前記隙間は、例えば0.5~1mmであり、前記水槽の一側面の側には、前記フッ素含有水が注入されるフッ素含有水注入口が2つ各々前記注水室に連通して設けられ、前記フッ素含有水注入口が設けられた側面とは反対側の側面には、電解処理によりフッ素が除去された陰極水が流れ出る2つの陰極水流出口が各々前記陰極室に連通して設けられ、前記陰極水流出口が設けられた側面には、フッ素を含む陽極水が流れ出る陽極水流出口が前記陽極室に連通して設けられ、前記陰極水流出口の、前記水槽の前記底部からの高さは、前記陽極水流出口よりも少し低く、前記陰極水流出口にはポンプを接続し、前記ポンプの流量は流入する前記フッ素含有水の量よりも少なく、前記陰極水を前記陰極水流出口から前記ポンプにより引き抜くとともに、前記フッ素含有水と前記ポンプにより引き抜かれる前記陰極水の量との差分が、前記陽極水流出口から排水として排出されるフッ素含有水の処理装置である。前記陽極水流出口は、例えば前記水槽の前記底部から約25cmの高さに位置し、前記陰極水流出口よりも5cm高い。なお、前記フッ素含有水注入口の高さは自由である。
【0009】
前記電解槽の下流にはpH調整槽が設けられ、前記pH調整槽には前記電解槽の陰極水と陽極水が入れられるpH調整用水槽が設けられ、前記pH調整用水槽は、陽イオン交換膜により一方向に対して平行な薄形の2室に区画され、一方はpH調整用陽極を有するpH調整用陽極室となり、他方はpH調整用陰極を有するpH調整用陰極室となり、前記pH調整用水槽の一側面の側には、前記電解槽で電解処理された陰極水が注入される陰極水注入口が2つ各々前記pH調整用陽極室に連通して設けられ、前記陰極水注入口が設けられた側面には、前記電解槽で電解処理された陽極水が注入される陽極水注入口が前記pH調整用陰極室に連通して設けられ、前記陰極水注入口と前記陽極水注入口が設けられた側面とは反対側の側面には、電解処理によりpHが下げられた処理水が流れ出る処理水流出口が前記pH調整用陽極室に連通して設けられ、前記処理水流出口が設けられた前記側面には、フッ素を含む排水が流れ出る排水流出口が前記pH調整用陰極室に連通して設けられている。
【発明の効果】
【0010】
本発明のフッ素含有水の処理装置は、原水中に多価金属イオンが含まれていなくても、フッ素含有水からフッ素を確実に除去することができ、フッ素含有水からフッ素を除去した製品を効率が良く得ることができ、排水が少ない。簡単な構造で、電解槽に1つの陽極室に2つの陰極室を設けることができ、排水となる陽極室の陽極水が少ないため、収率を上げることができる。電解処理によりpHを調整するpH調整槽が電解槽の下流に直列で設けられ、コンパクトで処理能力が高く、効率が良い。また電解槽の、陰極室と陽極室の間にフッ素含有水を入れる注水室が設けられているため、陰極水と陽極水が混ざることがない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】この実施形態のフッ素含有水の処理装置の平面図である。
図2】この実施形態のフッ素含有水の処理装置の電解槽の平面図(a)、(a)のA-A線縦断面図、(a)のB-B線縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の実施形態について図面に基づいて説明する。図1図2はこの発明の一実施形態を示すもので、この実施形態のフッ素含有水の処理装置10は、フッ素含有水11を電解処理する電解槽12が設けられている。フッ素含有水11は、例えば地下水や、川や沼の水、雨水など何でもよい。
【0013】
ここで電解槽12について説明する。電解槽12は、図2に示すように、フッ素含有水11を入れる水槽14を備え、水槽14は例えばアクリル製であり、一方向に長い矩形の底部14aと、底部14aに連続する側面14b,14c,14d,14eから成り、上方は閉鎖されるとともに、ガスを逃がすためのベントが設けられ、大気中に接続されている。側面14b,14cは、底部14aの短い辺に連続する小さい矩形であり、側面14d,14eは、底部14aの長い辺に連続する大きい矩形である。水槽14の大きさは、例えば、底部14aは300mm×150mm、深さは250mm以上である。なお、電解槽12には、水槽14の長手方向に沿って、つまり側面14d,14eに対して平行に、フッ素含有水11が流れて電解処理される。
【0014】
水槽14は、4つの隔膜20により長手方向に対して平行な薄形の5室に区画されている。水槽14の中央に位置する1区画は、陽極16が設けられた陽極室26である。陽極16は水槽14の中心に設けられ、白金線であり、水槽14の底部14aに対して略直角に立設され、例えば5本が設けられ、水槽14の長手方向、つまり側面14d,14e対して平行に、略等間隔に並んでいる。
【0015】
陽極室26の両方の外側の2区画は、フッ素含有水11を直接入れる注水室24であり、電極は設けられておらず、一対の隔膜20で囲まれている。注水室24の両側の2区画は、一番外側、つまり側面14d、14eの裏側に沿う区画であり陰極18が設けられた陰極室22である。陰極18は、矩形のステンレス板であり、水槽14の、長手方向に沿う一対の側面14d,14eの内壁面に沿って取り付けられ、大きさは側面14d,14eの内壁面をほぼ覆う大きさである。なお、陽極室26の流れ方向に交差する幅は、例えば50mm、各陰極室22の流れ方向に交差する幅は例えば各々約25mm、各注水室24の流れ方向に交差する幅は各々25mmである。
【0016】
隔膜20は、例えば多孔質のセラミック板である。ここで用いるセラミック板は、電解槽12の溶液の混合を確実に防ぎ、電解槽12内でイオンを通過させ、使用時の電気抵抗が小さく消費電力が小さいという特性を有するものである。セラミック板以外に同様の機能を有するナイロン布や繊維フィルター等でも良い。隔膜20は、矩形であり、一方向は水槽14の側面14b,14cに達する長さであり、側面14b,14cに固定され、交差する上下方向は底部14aの近傍かよりも少し低い位置に達する長さであり、隔膜20の下端部20aは水槽14の底部14aから所定の長さの隙間21を有して離間している。隔膜20の下端部20aと、底部14aとの隙間21は、例えば0.5~1mmである。水槽14には、4つの隔膜20が設けられ、陽極16と陰極18の間に各々2つ設けられている。陽極16と陰極18の間に設けられている2つの隔膜20どうしは、所定間隔開けて互いに平行に位置している。
【0017】
水槽14の一方の側面14bが、フッ素含有水11の上流側に位置し、側面14bには、上方の開口部に近い位置に、フッ素含有水11が注入されるフッ素含有水注入口28が設けられている。フッ素含有水注入口28は2つ設けられ、2つの注水室24に対向する位置に各々設けられ、注水室24に連通する。側面14bとは反対側の側面14cには、電解処理によりフッ素が除去された陰極水が流れ出る陰極水流出口30が設けられている。陰極水流出口30は、2つ設けられ、2つの陰極室22に対向する位置に各々設けられ、陰極室22に連通する。陰極水流出口30は、水槽14の底部14aから約20cmの高さに位置し、上方の開口部に近い。また、側面14cの一対の陰極水流出口30の間には、フッ素を含む陽極水が流れ出る陽極水流出口32が設けられ、陽極室26に連通する。陽極水流出口32は、水槽14の底部14aから例えば約25cmの高さに位置し、陰極水流出口30よりも5cm高い。なお、フッ素含有水注入口28の高さは上方の開口部に近い位置であれば良く、寸法は限定されない。
【0018】
一対の陰極水流出口30には図示しないポンプを接続し、陰極水を定流量で引き抜く。このとき、被処理水であるフッ素含有水11の流量を、ポンプで引き抜く陰極水の流量よりも大きくなるように設定する。これにより、引き抜かれる陰極水よりも余剰に流入する被処理水の分量の陽極水が、陽極水流出口32から排水として排出される。
【0019】
電解槽12の下流には、陰極水のpHを調整するpH調整槽34が設けられている。電解槽12では、陰極水は、陰極で発生する水酸化物イオンによりpHが10を超えて上昇するため、pH調整槽34を設置し、pHを電解処理により10未満に下げて、飲料水等の製品とする。電解槽12とpH調整槽34は、直列に接続されている。
【0020】
pH調整槽34は、電解槽12の水槽14とほぼ同じ大きさのpH調整用水槽36を備え、pH調整用水槽36も例えばアクリル製であり、一方向に長い矩形の底部36aと、底部36aに連続する側面36b,36c,36d,36eから成り、上方は閉鎖されるとともに、ガスを逃がすためのベントが設けられ、大気中に接続されている。側面36b,36cは、底部36aの短い辺に連続する小さい矩形であり、側面36d,36eは、底部36aの長い辺に連続する大きい矩形である。pH調整槽34には、pH調整用水槽36の長手方向に沿って電解槽12で電解処理された陰極水と陽極水が流れ、さらに電解処理されて陰極水のpHを下げる。
【0021】
pH調整用水槽36の、長手方向に沿う一方の側面36dの内壁面に、pH調整用陽極38が設けられ、反対側の側面36eの内壁面に、pH調整用陰極40が設けられている。pH調整用水槽36の中心には陽イオン交換膜42が設けられ、陽イオン交換膜42により水槽36は長手方向に対して平行な薄形の2室に区画され、側面36d側はpH調整用陽極38を有するpH調整用陽極室44となり、側面36e側はpH調整用陰極40を有するpH調整用陰極室46となる。pH調整用陽極38は白金線又は白金メッキのチタン板で構成され、pH調整用陰極40はステンレス板等で作られている。陽イオン交換膜42は、溶液の混合を確実に防ぎ、陽イオンのみを通過させ、電気抵抗が小さく消費電力が小さいものであり、電解槽12で排除したフッ素が、pH調整用陰極室46からpH調整用陽極室44に移動しない。
【0022】
pH調整用水槽36の一方の側面36bが上流側に位置し、側面36bには、上方の開口部に近い位置に、電解槽12で電気分解され陰極水流出口30から流れ出した陰極水が各々注入される陰極水注入口48が設けられている。陰極水注入口48は2つ設けられ、pH調整用陽極室44に対向する位置に並んで設けられ、各々pH調整用陽極室44に連通する。側面36bには、陰極水注入口48とほぼ同じ上方の開口部に近い位置に、電解槽12で電気分解された陽極水が注入される1つの陽極水注入口50が設けられ、pH調整用陰極室46に連通する。
【0023】
側面36bとは反対側の側面36cには、フッ素が除去されさらにpHを下げられた処理水が流れ出る処理水流出口52が1つ設けられ、pH調整用陽極室44に対向する位置に設けられ、pH調整用陽極室44に連通する。側面36cには、フッ素が含まれる排水流出口54が1つ設けられ、pH調整用陰極室46に対向する位置に設けられ、pH調整用陰極室46に連通する。処理水流出口52と排水流出口54は、上方の開口部に近い任意の位置に設けられている。処理水流出口52と排水流出口54から流れ出る水量の合計は、一対の陰極水注入口48と、陽極水注入口50から注入される水量とほぼ等しい。これによりpH調整用水槽36の水位はほぼ一定となる。処理水流出口52から取り出された処理水は、フッ素含有量が低く、pHが10以下となり、飲料水として使用可能な製品となる。必要に応じて、さらにろ過処理等を行ってもよい。
【0024】
次に、フッ素含有水の処理装置10による処理方法の一例について説明する。電解槽12のフッ素含有水11の流量は、例えば48l/hであり、収率85%の場合には7.2l/hの排水が出る。電解槽12の電圧は約110V、電流は1A×2で、合計2Aである。収率は80~95%である。pH調整槽34の電圧は約130V、電流は0.75Aである。電解槽12とpH調整槽34を備えたこの実施形態のフッ素含有水の処理装置10により、フッ素濃度は、2.5mg/l(フッ素含有水11)から0.8mg/l以下に低下する。なお、食品衛生法でのフッ素濃度基準値は2.0mg/lであり、0.8mg/l以上の場合は「7歳未満の飲用を控える」との表示が求められる。
【0025】
図1に示すように、フッ素含有水11を電解槽12の一対のフッ素含有水注入口28から注水室24に注有する。注入されたフッ素含有水11は、隔膜20の下端部20aと水槽14の底部14aとの間の隙間21から陰極室22と注水室24にも流れ、陽極水流出口32の高さまで満たされ、電解処理が行われる。陰極室22では、フッ素がフッ素含有水11から除去された陰極水が生成される。
【0026】
陰極室22でフッ素が除去された陰極水は、各陰極水流出口30からポンプで引き抜かれ、電解槽12の下流に直列に接続されたpH調整槽34に、各陰極水注入口48からpH調整用陽極室44に注入される。陰極水は、陰極18で発生する水酸化物イオンOHによりpHが10を超えているが、pH調整槽34のpH調整用陽極室44で発生する水素イオンHによってpHが10以下に低下する。pHが低下したpH調整用陽極室44内の処理水を、処理水流出口52から取り出し、飲料水として使用可能な製品とする。
【0027】
この実施形態のフッ素含有水の処理装置10によれば、フッ素含有水11からフッ素を確実に除去することができ、フッ素含有水11から飲料水を作ることができる。フッ素含有水11からフッ素を除去した製品を得る効率が良く、排水が少ない。簡単な構造で、電解槽12に1つの陽極室26に2つの陰極室22を設けることができ、排水となる陽極室26の陽極水が少ないため、排水を減らし収率を上げることができる。陽極室26の陽極16には高価な白金を使用するため、陰極室22に対して陽極室26の数を半分にすることはコストメリットが大きい。電解槽12には、各注水室24に連通するフッ素含有水注入口28からフッ素含有水11を入れると、隔膜20の下端部20aと水槽14の底部14aとの間の隙間21から、フッ素含有水11が陰極室22と陽極室26に流れて水槽14を満たすことができる。さらに、配管が少なく、構造がシンプルであり、陰極室22と陽極室26の間に、隔膜20で区切られた注水室24を設け、フッ素含有水11をここに注入して電解処理を行うため、陰極水と陽極水が混合することがなく、陰極水のフッ素濃度を低く抑えることができる。
【0028】
さらに、電解処理によりpHを調整するpH調整槽34が電解槽12の下流に直列で設けられ、簡単な構造でコンパクトであり、処理能力が高く、効率が良い。pH調整槽34は、簡単にpH調整することができ、pH調整用陰極室46からフッ素が移動することを確実に防ぐことができる。フッ素含有水の処理装置10により製造されたる製品はフッ素含有量が低く、フッ素濃度が高いことによる健康被害を防ぐことができ、安心して飲用として使用することができる。また、pHが10以下となり、飲料水として適している。必要に応じて、さらにろ過処理等を行ってもよく、ろ過処理や殺菌処理等、色々な処理を行う装置に連結して使用することもできる。
【0029】
なお、この発明のフッ素含有水の処理装置は、上記実施の形態に限定されるものではなく、適宜変更可能であり、電解槽の水槽の大きさや、隔膜と水槽の底部との隙間、各注入口と各流出口の高さ等は自由に変更可能である。水槽や電極の材料は上記以外でも良く、通常の電解処理に用いられるものを使用することができる。
【符号の説明】
【0030】
10 フッ素含有水の処理装置
11 フッ素含有水
12 電解槽
14 水槽
14a 底部
14b,14c,14d,14e 側面
16 陽極
18 陰極
20 隔膜
21 隙間
22 陰極室
24 注水室
26 陽極室
28 フッ素含有水注入口
30 陰極水流出口
32 陽極水流出口
34 pH調整槽
36 pH調整用水槽
38 pH調整用陽極
40 pH調整用陰極
42 陽イオン交換膜
44 pH調整用陽極室
46 pH調整用陰極室
48 陰極水注入口
50 陽極水注入口
52 処理水流出口
54 排水流出口
図1
図2