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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023070361
(43)【公開日】2023-05-19
(54)【発明の名称】回転テーブル装置
(51)【国際特許分類】
   H02K 7/06 20060101AFI20230512BHJP
   H02K 41/03 20060101ALI20230512BHJP
【FI】
H02K7/06 A
H02K41/03 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021182483
(22)【出願日】2021-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】000229335
【氏名又は名称】日本トムソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136098
【弁理士】
【氏名又は名称】北野 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100137246
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勝也
(74)【代理人】
【識別番号】100158861
【弁理士】
【氏名又は名称】南部 史
(74)【代理人】
【識別番号】100194674
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 覚史
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 駿也
【テーマコード(参考)】
5H607
5H641
【Fターム(参考)】
5H607AA12
5H607BB01
5H607BB07
5H607BB11
5H607BB14
5H607BB26
5H607CC01
5H607CC03
5H607DD01
5H607DD02
5H607DD03
5H607DD19
5H607EE52
5H641BB06
5H641BB14
5H641BB19
5H641GG02
5H641GG08
5H641HH03
5H641JA04
(57)【要約】
【課題】回転テーブル装置において、小径であるとともに位置決めの精度が高いものを提供すること。
【解決手段】円筒状の内周壁を有する筐体と、前記筐体に貫通されるとともに、前記内周壁の軸方向と共通である軸方向に延びるシャフトと、前記シャフトの第1端側を前記筐体に対して直動可能に支持する第1の軸受機構と、前記シャフトを前記シャフトの軸方向に往復運動させるモータ機構と、前記シャフトの第1端側と逆側の端部である第2端側に設けられたボールねじ機構を介して、前記シャフトに連結された回転体と、を備え、前記回転体は、第2の軸受機構を介して前記筐体に対して回転可能に固定されており、互いに固定されたボールねじナットとテーブルとを含む、回転テーブル装置。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒状の内周壁を有する筐体と、
前記筐体に貫通されるとともに、前記内周壁の軸方向と共通である軸方向に延びるシャフトと、
前記シャフトの第1端側を前記筐体に対して直動可能に支持する第1の軸受機構と、
前記シャフトを前記シャフトの軸方向に往復運動させるモータ機構と、
前記シャフトの第1端側と逆側の端部である第2端側に設けられたボールねじ機構を介して、前記シャフトに連結された回転体と、
を備え、
前記回転体は、第2の軸受機構を介して前記筐体に対して回転可能に支持されており、互いに固定されたボールねじナットとテーブルとを含む、
回転テーブル装置。
【請求項2】
前記モータ機構が、
前記筐体の前記内周壁に固定されたコイルと、
前記シャフトの外周面であって前記コイルと対向する位置に固定された界磁と、
を含む、
請求項1に記載の回転テーブル装置。
【請求項3】
前記第1の軸受機構がボールスプライン機構であり、
前記筐体に、ボールスプラインナットが固定されており、
前記シャフトの前記第1端側の外周面にスプライン溝が形成されている、
請求項1または請求項2に記載の回転テーブル装置。
【請求項4】
前記第2の軸受機構がクロスローラ軸受であり、
前記筐体に、前記クロスローラ軸受の軸受外輪が固定されており、
前記軸受外輪と、前記ボールねじナットおよび前記テーブルに固定された軸受内輪とが、ローラを介して連結されている、
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の回転テーブル装置。
【請求項5】
前記界磁は、前記シャフトに挿嵌された環状の永久磁石が軸方向に複数並べられた磁石列を含み、
前記シャフトは、前記界磁が配置される部分の一端に、前記界磁と接するフランジ部が設けられており、
前記界磁は、前記フランジ部と前記シャフトに挿嵌されたナットとによって挟持固定されている、
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の回転テーブル装置。
【請求項6】
さらにエンコーダを備え、
前記エンコーダは、
前記回転体の外周面に取り付けられたスケールと、
前記筐体に取り付けられ、前記スケールと対向するエンコーダヘッドと、
を含む、
請求項1から請求項5のいずれか1項に請求項に記載の回転テーブル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転テーブル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
回転テーブル装置として、固定部であるベッドと、回転テーブルと、それらの間に配置される軸受と、を備え、リニアモータによって回転駆動される回転テーブル装置が知られている。例えば特許文献1の回転テーブル装置では、テーブルの下面にテーブルの周方向に沿って複数のマグネットが並んで配設されているとともに、ベッドの上面にマグネットに対向するように複数のコイルが並んで配設されている。特許文献1の回転テーブル装置は、マグネットの磁束とコイルに流れる電流とから得られる推力によってテーブルを回転させる、ダイレクトドライブ装置である。
【0003】
一方、ボールねじとモータを組み合わせたリニアアクチュエータが知られている。特許文献2のリニアアクチュエータは、シャフトと、モータ部と、ボールねじナットと、ボールスプラインナットとを備えている。モータ部は、モータ外装に固定されたコイルを含むステータと、モータ外装に軸受を介して軸支されたロータ保持軸の外周部に設けられたロータと、から構成される。ロータ保持軸はボールねじナットであり、ボールねじナットの外周部にはマグネットと鉄心からなるロータが構成されているとともに、ボールねじナットの内周部には、ボールねじ溝が形成されており、ボールを介してシャフトを支持している。ボールスプラインナットは、モータ外装に回転不能に固定されるとともに、その内周側にボール転走溝が形成されており、ボールを介してシャフトを支持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許4608238号公報
【特許文献2】特開平4-236158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
回転テーブル装置において、より小径で、位置決め精度が高いものが望まれる。そこで、回転テーブル装置において、小径であるとともに位置決めの精度が高いものを提供することを本発明の目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に従う回転テーブル装置は、
円筒状の内周壁を有する筐体と、
前記筐体に貫通されるとともに、前記内周壁の軸方向と共通である軸方向に延びるシャフトと、
前記シャフトの第1端側を前記筐体に対して直動可能に支持する第1の軸受機構と、
前記シャフトを前記シャフトの軸方向に往復運動させるモータ機構と、
前記シャフトの第1端側と逆側の端部である第2端側に設けられたボールねじ機構を介して、前記シャフトに連結された回転体と、
を備え、
前記回転体は、第2の軸受機構を介して前記筐体に対して回転可能に支持されており、互いに固定されたボールねじナットと、テーブルとを含む。
【発明の効果】
【0007】
上記の構成によれば、小径であるとともに位置決め精度の高い回転テーブル装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施の形態1に係る回転テーブル装置1の斜視図である。
図2図2は、回転テーブル装置1の、図1におけるII-II断面を示す断面図である。
図3図3は、図2の断面図に一部の構成を加えて示す断面図である。
図4図4は、回転テーブル装置1の図1におけるII-II断面を示す断面斜視図である。
図5図5は、実施の形態2に係る回転テーブル装置101の断面図である。
図6図6は、実施の形態3に係る回転テーブル装置201の断面図である。
図7図7は、実施の形態4に係る回転テーブル装置301の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[実施形態の概要]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0010】
本開示にかかる回転テーブル装置は、円筒状の内周壁を有する筐体と、前記筐体に貫通されるとともに、前記内周壁の軸方向と共通である軸方向に延びるシャフトと、前記シャフトの第1端側を前記筐体に対して直動可能に支持する第1の軸受機構と、前記シャフトを前記シャフトの軸方向に往復運動させるモータ機構と、前記シャフトの第1端側と逆側の端部である第2端側に設けられたボールねじ機構を介して、前記シャフトに連結された回転体と、を備える。前記回転体は、第2の軸受機構を介して前記筐体に対して回転可能に支持されている。前記回転体は、互いに固定されたボールねじナットとテーブルとを含む。
【0011】
従来、回転テーブル装置として、回転テーブルの下面にマグネット列を備えるとともに、ベッドの上面に前記マグネット列と対向して、コイル列を備えるものが知られている(例えば特許文献1)。特許文献1の回転テーブル装置は精密な位置決めが可能である。一方で、モータを構成するマグネット列がテーブルに取り付けられているため、テーブルが小径であるほどマグネット列も小さくなり、その結果モータの出力が小さくなってしまう。このため、回転テーブル装置の小径化には限界があった。
【0012】
一方で、シャフト上を可動子が往復運動するシャフトモータが知られている。シャフトモータは、磁極を交互にして軸方向に並べられた複数の磁石を含むシャフトと、それを取り囲むようにした円筒形のコイルを含む可動子と、で構成される。シャフトモータでは、コイルに電流を流すことで推力が発生し、可動子がシャフト上で直線運動する。従来、回転テーブル装置におけるテーブルの回転にシャフトモータの直線運動を利用することは想定されていなかった。
【0013】
また、ボールねじとボールスプラインとを組み合わせて、ボールねじナットの内部にモータを組み込んだリニアアクチュエータが知られている(例えば特許文献2)。特許文献2のリニアアクチュエータは、ボールねじナットの回転運動をシャフトの直線運動に変換する。特許文献2のリニアアクチュエータでは、さらにボールスプラインナットの内部にもモータを組み込むことによって、シャフトを回転運動あるいはスパイラル運動させることも可能である。ただし、特許文献2のリニアアクチュエータを、一定の位置に保持されたテーブルを回転させる用途に適用することはできない。
【0014】
本開示にかかる回転テーブル装置は、シャフトモータを応用してシャフトを軸方向に往復運動させる。また、シャフトの一端にボールねじ機構が設けられている。このボールねじ機構におけるボールねじナットは、シャフトモータの筐体に対して軸受を介して回転可能に取り付けられている。このため、ボールねじナットは軸方向には移動不能で、回転運動のみが許容される。これらの構成によって、シャフトの直動運動がボールねじナットの回転運動に変換され、ボールねじナットに固定されたテーブルが回転する。本開示の回転テーブル装置は、テーブルにモータ部品が取り付けられていないため、テーブルの小径化が容易である。また、従来の回転テーブル装置では矩形に形成されていた基台が不要となり、回転テーブル装置の平面方向の大きさをより小型化できる。また、ボールねじ機構によってシャフトの直動運動をテーブルの回転運動に変換するため、回転の制御を確実にできる。このため位置決め精度が高い。さらに、モータの出力を制御することによって回転速度を制御できる。また、ボールねじのリードとテーブルの回転角度が相関するため、ボールねじのリードを設定し形成するという汎用的で確立された手法を用いて、所望の回転角度を有する回転テーブル装置が得られる。
【0015】
前記回転テーブル装置において、前記モータ機構は、前記筐体の前記内周壁に固定されたコイルと、前記シャフトの外周面であって前記コイルと対向する位置に固定された界磁と、を含んでもよい。モータ機構としてリニアモータを備えることによって、シャフトの移動量すなわち回転テーブルの回転量の制御が、より確実かつ容易にできる。このため、位置決め精度により優れた回転テーブル装置が得られる。
【0016】
前記回転テーブル装置において、前記第1の軸受機構がボールスプライン機構であり、前記筐体にボールスプラインナットが固定されており、前記シャフトの前記第1端側の外周面にスプライン溝が形成されていてもよい。シャフトにおける、回転テーブルが備えられた側(第2端側)と逆側の端部(第1端側)をボールスプライン軸受で支持することによって、負荷に対する許容範囲をより大きくできる。
【0017】
前記回転テーブル装置において、前記第2の軸受機構がクロスローラ軸受であり、前記筐体に前記クロスローラ軸受の軸受外輪が固定されており、当該軸受外輪と、前記ボールねじナットおよび前記テーブルに固定された軸受内輪とが、ローラを介して連結されていてもよい。この回転テーブル装置では、クロスローラ軸受によってあらゆる方向からの負荷を許容可能となる。このため、物体を載置して回転させる用途に留まらず、たとえばマニピュレータの手先等に適用する等、より広い用途に好適となる。
【0018】
前記回転テーブル装置において、前記界磁は、前記シャフトに挿嵌されたリング状の永久磁石が軸方向に複数並べられた磁石列を含んでよい。また、前記シャフトは、前記界磁が配置される部分の一端に前記界磁と接するフランジ部が設けられており、前記界磁は前記フランジ部と前記シャフトに挿嵌されたナットとによって挟持固定されていてもよい。かかる構成によって、回転テーブル装置を構成する部品の点数を抑えつつ、組み立てが容易で、シャフトの偏心やがたつきを防止し、精度の高い回転テーブル装置を実現できる。
【0019】
前記回転テーブル装置は、さらにエンコーダを備え、前記エンコーダは、前記回転体の外周面に取り付けられたスケールと、前記筐体に取り付けられ、前記スケールと対向するエンコーダヘッドと、を含んでよい。回転体の回転を直接検知することによって、より精度の高い回転制御を実現できる。
【0020】
[実施形態の具体例]
次に、本開示の回転テーブル装置の具体的な実施の形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
【0021】
(実施の形態1)
図1は、本開示の一実施の形態における回転テーブル装置である回転テーブル装置1の構造を示す外観の斜視図である。図2は、回転テーブル装置1の図1におけるII-II断面を示す断面図である。図3は、図2の断面図に一部の構成を加えて示す図である。図4は、回転テーブル装置1の図1におけるII-II断面を示す断面斜視図である。なお、図1図4はいずれも模式図であり、回転テーブル装置を構成する部品のうち一部の図示を省略し、また、各部品の詳細な構成も省略している。
【0022】
図1を参照して、回転テーブル装置1は、全体に円筒状の外観を有する。回転テーブル装置1は、筐体としての外筒11と、外筒11を貫通するシャフト21と、回転テーブルであるテーブル31と、を備える。回転テーブル装置1において、シャフト21が突き出している側を第1端側、テーブル31が備えられた側を第2端側と称する。
【0023】
外筒11は軸方向に延びる円筒形の外周面を有する。外筒11の第1端側には、ハウジング12が固定されている。ハウジング12も回転テーブル装置1における筐体を構成する。ハウジング12の外径は、外筒11と同径である。外筒11の第2端側には、軸受外輪13が固定されている。軸受外輪13の外径は、外筒11と同径である。ただし、図1に示された外筒11、ハウジング12、軸受外輪13の外形は一例であり、これに限定されない。例えば、外筒11、ハウジング12、軸受外輪13は互いに異なる外径を有していてもよい。また、外筒11、ハウジング12の外面の形状は円筒形に限られず、矩形の筒状であってもよい。また、センサや各種コード類を収容する収容部、他部材との取り付け部等が設けられていてもよい。
【0024】
外筒11、ハウジング12および軸受外輪13は、互いに固定されている。外筒11、ハウジング12および軸受外輪13は、回転テーブル装置1における固定部10を構成する。これに対して、シャフト21は、外筒11の内部に備えられるモータ機構40(図2)によって、軸方向に往復運動する。シャフト21は回転テーブル装置1における直動部20を構成する。テーブル31は、シャフト21の往復運動に連動して、回転運動する。テーブル31は、回転テーブル装置1における回転部30を構成する。すなわち、回転テーブル装置1は、固定部10と、直動部20と、回転部30と、を含む。
【0025】
固定部10について説明する。図2を参照して、外筒11は円筒状の内周壁11aを有する。内周壁11aに、コイル41が固定されている。コイル41は、内周壁11aに沿って螺旋状に多重に巻回され、全体として内周壁11aの軸方向に延在する。なお、コイル41は内周壁11aに対して直接固定されていてもよいし、支持部材を介して取り付けられていてもよい。
【0026】
外筒11の第1端側に固定されたハウジング12の内周側に、ボールスプラインナット51が固定されている。ボールスプラインナット51は、第1の軸受機構としてのボールスプライン50(図3)を構成する。ボールスプラインナット51は、ボール53(図3)を介して、シャフト21の第1端側を軸方向に直動可能に支持する。外筒11の第2端側には、軸受外輪13が固定されている。軸受外輪13は、軸受内輪32と対向する。
【0027】
直動部20について説明する。図2を参照して、シャフト21は、外筒11の内部を貫通して延びる軸状部材である。シャフト21の軸方向は、外筒11の内周壁11aの軸方向と同一方向である。言い換えると、シャフト21は、外筒11の内周壁11aと共通である軸方向に延びる。シャフト21の軸方向における中央付近に、界磁42が固定されている。界磁42は、シャフト21に挿嵌されたリング状の永久磁石が軸方向に複数並べられてなる。周知のとおり、複数の永久磁石は、N極とS極が交互に並べられる。界磁42は、コイル41と対向する位置に備えられている。シャフト21は、鍔状に外方に突出した部分であるフランジ部22を有する。界磁42は、フランジ部22とベアリングナットであるナット23とによって、挟持固定されている。界磁42およびナット23は、シャフト21に固定されている。コイル41と界磁42は、モータ機構40を構成する。
【0028】
シャフト21の第2端側は、ボール63(図3)を介して、ボールねじナット61によって支持されている。シャフト21の第2端は、軸受内輪32の内周の中空部分を貫通し、テーブル31の内周の中空部分に至っている。シャフト21は軸方向に直動するところ、シャフト21が最大に第2端側に移動した状態で、テーブル31の主面31aからシャフト21が突出しないよう設計されることが好ましい。
【0029】
回転部30について説明する。図2を参照して、回転部30は、互いに固定された、ボールねじナット61と、軸受内輪32と、テーブル31とを含む。ボールねじナット61は、前述のとおり、ボール63(図3)を介してシャフト21と連結されている。また、軸受内輪32は、ローラ33(図3)を介して軸受外輪13に対して回動可能に連結されている。回転部30は回転可能であると同時に、固定部10を構成する軸受外輪13と連結されているため軸方向には移動不能である。
【0030】
図3を参照して、固定部10と、直動部20と、回転部30とを連結する構造について説明する。固定部10と、直動部20を構成するシャフト21との間には、第1の軸受機構としてのボールスプライン50が構成されている。シャフト21の第1端側の外周面には、軸方向に延びるスプライン溝52が形成されている。ボールスプラインナット51と、スプライン溝52との間に形成される軌道内にボール53が挿入されている。なお、図3に示されるボールスプライン50は、構成を概念的に示す模式図であり、実際の寸法や形状を必ずしも反映するものではない。また、図3に示す例では第1の軸受機構としてボールスプライン50を備えるが、所望の荷重を支持し、シャフト21の軸方向の移動を許容できる機構であればよく、ボールスプラインに限定されない。例えば、ボールスプラインに代えてすべり軸受を用いてもよい。ボールスプラインを用いる場合、回転部30から受ける回転反力を受けることが可能で、軸の空転を抑制できるという利点がある。
【0031】
図3を参照して、直動部20を構成するシャフト21と、回転部30との間には、ボールねじ機構60が構成されている。シャフト21の第2端側の外周面には、螺旋状に延びるボールねじ溝62が形成されている。ボールねじナット61と、ボールねじ溝62との間に形成される軌道内にボール63が挿入されている。なお、図3に示されるボールねじ機構60は、構成を概念的に示す模式図であり、実際の寸法や形状を必ずしも反映するものではない。直動部20と回転部30との間をボールねじ機構で連結することによって、エネルギーロスが少なく、直動部20の直動運動を効率的に回転部30の回転運動に変換することができる。また、リードの選択によって回転部30の回転速度や回転量を設計可能である。また、ボールのサイズ選択によって高剛性化を図ること、バックラッシを低減することができる。耐久性等についてボールねじの既存の知見を利用できる可能性もある。
【0032】
図3を参照して、固定部10と、回転部30との間には、第2の軸受機構としてのクロスローラ軸受70が備えられている。クロスローラ軸受70は、固定部10を構成する軸受外輪13と、回転部30を構成する軸受内輪32と、軸受外輪13と軸受内輪32との間に形成される軌道内に挿入されたローラ33と、を含む。なお、図3に示されるクロスローラ軸受70は、構成を概念的に示す模式図であり、実際の寸法や形状を必ずしも反映するものではない。また、図3に示す例では第2の軸受機構としてクロスローラ軸受70を備えるが、所望の荷重を支持し、テーブル31の回転運動を支持できる機構であればよく、クロスローラ軸受に限定されない。例えば、クロスローラ軸受に代えてアンギュラ軸受や通常の玉軸受であってもよく、用途や寸法に応じてすべり軸受であってもよい。クロスローラ軸受を用いる場合、高剛性化を図ることができる。また、クロスローラ軸受70は、シャフト21から受けるアキシアル荷重とテーブル31から受けるラジアル荷重の両方を受けることができるため、好ましい。また、精度が高いクロスローラ軸受をエンコーダとともに用いることによって、位置決め精度をより向上できる。
【0033】
図4を参照して、回転テーブル装置1の動作について説明する。回転テーブル装置1は、モータ機構40を備える。モータ機構40は、外筒11の内周壁11aに固定されたコイル41と、シャフト21の外周面であってコイル41と対向する位置に固定された界磁42と、を含む。界磁42はリング状の磁石がシャフト21に挿嵌され、複数軸方向に並べられてなる。モータ機構40における固定子であるコイル41に電流が流れると、軸方向への推力が生じてシャフト21が軸方向に移動する。コイル41に流れる電流の方向を切り替えることによって、シャフト21を往復運動させることができる。また、電流の量を変化させることによってモータ40の出力を制御し、シャフト21の移動速度を制御できる。
【0034】
シャフト21の直動運動は、ボールねじナット61に伝達される。ボールねじナット61は軸方向の動きが規制されているため、回転運動のみが生じる。テーブル31はボールねじナット61に固定されているため、テーブル31はボールねじナット61とともに回転する。テーブル31の回転量は、シャフト21の移動量と相関する。テーブル31の回転角度は、ボールねじ溝62(図3)のリードに依存する。回転テーブル装置1では、ボールねじ溝62のリードによって任意の回転角度を有する回転テーブル装置が得られる。例えば、回転角度が60°、120°、250°等の一定角度内を往復運動する回転テーブル装置であってもよく、360°以上回転する回転テーブル装置としてもよい。
【0035】
回転テーブル装置1は、さらに、移動量を検出するためのエンコーダを備えていてもよい。図5は、実施の形態2に係る回転テーブル装置101の断面図である。図6は、実施の形態3に係る回転テーブル装置201の断面図である。図7は、実施の形態4に係る回転テーブル装置301である。回転テーブル装置101,201,301はそれぞれエンコーダを備えており、エンコーダを設置する位置が異なる。図5図7において、回転テーブル装置1と同様の構成には同様の符号を付し、説明の一部を省略する。
【0036】
図5を参照して、回転テーブル装置101は、テーブル31の軸部の外周面にロータリスケール81を備える。ロータリスケール81に対向して、エンコーダヘッド82が備えられている。エンコーダヘッド82は、ブラケット83を介して外筒11に固定されている。ロータリスケール81と、エンコーダヘッド82とが、エンコーダ80を構成する。このような配置であれば、テーブル31の回転を直接検出できるため、より正確に回転を制御し、位置決めを行うことができる。
【0037】
図6を参照して、回転テーブル装置201は、ボールねじナット61の軸部の外周面にロータリスケール81を備える。ロータリスケール81に対向して、エンコーダヘッド82が備えられている。エンコーダヘッド82は、外筒11に固定されている。ロータリスケール81と、エンコーダヘッド82とが、エンコーダ80を構成する。このような構成であれば、テーブル31とともに回転するボールねじナット61の回転を検出できるため、より正確に回転を制御し、位置決めを行うことができる。また、ロータリスケール81とエンコーダヘッド82の検出部が外筒11内に収容されるため、埃の付着等が防止され、耐久性と動作安定性に優れる。
【0038】
図7を参照して、回転テーブル装置301は、シャフト21の外周面にロータリスケール81を備える。ロータリスケール81に対向して、エンコーダヘッド82が備えられている。エンコーダヘッド82は、ハウジング12に固定されている。ロータリスケール81と、エンコーダヘッド82とが、エンコーダ80を構成する。このような構成であれば、回転テーブル装置301の径方向に突出する部材を低減し、より小型の回転テーブル装置を構成できる。
【0039】
本開示にかかる回転テーブル装置は上述の具体的な実施形態に代えて、あるいは付加して、様々な構成でありえる。例えば、モータ機構は、所望の精度と出力が得られる限りにおいて、リニアモータに限定されない。例えば、油圧シリンダ等によってシャフトを軸方向に往復運動させてもよい。また、テーブル主面の形状は中心部の開いた円環状の面に限られず、中空部のない円板状であってもよい。テーブル主面にさらに別部材が取り付けられていてもよい。テーブル主面は平面に限られず、突起や段部が設けられていてもよい。すなわち、テーブルは、物を載置して回転させる機能に代えて、あるいは物を載置して回転させる機能に加えて、他の機能を有していてもよい。例えば、本開示にかかる回転テーブル装置は、マニピュレータの手先として、テーブルに取り付けられた手先部品を回転させるために利用されうる。また、シャフトの形状について、上述の実施例では、シャフトの第1端側にスプライン溝が形成され、中央部にフランジ部が形成され、第2端側にボールねじ溝が形成されていたが、具体的な形状はこれに限定されない。
【0040】
本開示にかかる回転テーブル装置は、特に小径の回転テーブル装置として好適である。具体的な寸法は特に制限されるものではないが、例えば、回転テーブルの外径を30~80mm程度とすることができ、筐体(固定部)の外径も同程度にできる。
【0041】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、どのような面からも制限的なものではないと理解されるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなく、請求の範囲によって規定され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0042】
1、101、201、301 回転テーブル装置、10 固定部、11 外筒、11a 内周壁、12 ハウジング、13 軸受外輪、20 直動部、21 シャフト、22 フランジ部、23 ナット、30 回転部、31 テーブル、31a 主面、32 軸受内輪、33 ローラ、40 モータ機構、41 コイル、42 界磁、50 ボールスプライン、51 ボールスプラインナット、52 スプライン溝、53、63 ボール、60 ボールねじ機構、61 ボールねじナット、62 ボールねじ溝、70 クロスローラ軸受、80 エンコーダ、81 ロータリスケール、82 エンコーダヘッド83 ブラケット。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7