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特開2023-70398データ選択処理システム及びデータ選択処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023070398
(43)【公開日】2023-05-19
(54)【発明の名称】データ選択処理システム及びデータ選択処理方法
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20230512BHJP
【FI】
G05B23/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021182545
(22)【出願日】2021-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】林 喜治
(72)【発明者】
【氏名】堀 嘉成
(72)【発明者】
【氏名】山嵜 大介
(72)【発明者】
【氏名】上野 貴善
【テーマコード(参考)】
3C223
【Fターム(参考)】
3C223AA01
3C223BA01
3C223CC01
3C223DD01
3C223EB01
3C223EB02
3C223EB03
3C223FF03
3C223FF13
3C223FF22
3C223FF26
3C223FF45
3C223GG01
3C223HH03
3C223HH08
(57)【要約】
【課題】センサを解析用にグループ化する際に、適切なセンサ数のグループが構成できるようにする。
【解決手段】データ選択処理システムとして、複数のセンサの検出データを取込むセンサデータ取込部と、センサデータ取込部が取込んだ複数のセンサの検出データの相関係数を求める解析部と、解析部が求めた相関係数が、センサ間の相互に設定した閾値以上に高いセンサ同士の集合をグループとして定義する解析グループ作成部とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のセンサの検出データを取込むセンサデータ取込部と、
前記センサデータ取込部が取込んだ複数のセンサの検出データの相関係数を求める解析部と、
前記解析部が求めた相関係数が、センサ間の相互に設定した閾値以上に高いセンサ同士の集合をグループとして定義する解析グループ作成部と、を備える
データ選択処理システム。
【請求項2】
前記解析グループ作成部が作成したグループに属するセンサの数が規定値を超えたとき、前記相関係数の閾値を増加することにより、各グループに属するセンサの数を調整する
請求項1に記載のデータ選択処理システム。
【請求項3】
前記解析部が解析に使用するセンサの数が規定値を超えたとき、相関係数の閾値を増加することにより、解析に使用するセンサの数を調整する
請求項1又は2に記載のデータ選択処理システム。
【請求項4】
前記解析グループ作成部が作成したグループの数が規定値を超えたとき、相関係数の閾値を減少し、作成されたグループの数が規定値未満となったとき、相関係数の閾値を増加することにより、グループの数を調整する
請求項1に記載のデータ選択処理システム。
【請求項5】
前記解析部は、各センサをノードとして設定し、かつ、相関係数が閾値以上にあるセンサ間にエッジを設定したグラフを作成し、
相関が相互に高いセンサ同士の集合をクリークまたはクリークコミュニティに基づいて決定する
請求項1に記載のデータ選択処理システム。
【請求項6】
ノード数が規定値を超えたクリークまたはクリークコミュニティがある場合、これに属するセンサに対して、相関係数の閾値を増加してグラフを再作成し、
再作成後のグラフにおいて、ノード数が規定の範囲にあるクリークまたはクリークコミュニティが新たに生成された場合、このクリークまたはクリークコミュニティに属するセンサをグループとして定義する処理を繰り返すことにより、各グループに属するセンサの数を規定の範囲内とする
請求項5に記載のデータ選択処理システム。
【請求項7】
使用するセンサの数が規定値を超えたとき、相関係数の閾値を増加してグラフを再作成し、使用するセンサの数を調整する
請求項5又は6に記載のデータ選択処理システム。
【請求項8】
作成されたグループの数が規定値を超えたとき、相関係数の閾値を減少してグラフを再作成し、また、作成されたグループの数が規定値未満となったとき、相関係数の閾値を増加してグラフを再作成し、グループの数を調整する
請求項5又は6に記載のデータ選択処理システム。
【請求項9】
複数のセンサの検出データを取込むセンサデータ取込処理と、
前記センサデータ取込処理により取込んだ複数のセンサの検出データの相関係数を求める解析処理と、
前記解析処理により求めた相関係数が、センサ間の相互に設定した閾値以上に高いセンサ同士の集合をグループとして定義する解析グループ作成処理と、を含む
データ選択処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ選択処理システム及びデータ選択処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラントなどの大規模システムには、数千に及ぶ多数のセンサが設置されている。このような大規模システムを対象に異常診断処理を実施する場合、多数のセンサデータ全てを入力とする1つの解析処理を行うのではなく、系統や機器の単位ごとに分割した少数のセンサで構成するグループを定義し、グループごとの解析処理を同時並行で行う方式を採用することが多い。なぜなら、大規模システムの診断処理を複数のグループに分けて解析することで、異常が発生した系統や機器をグループとして特定できるからである。さらに、少数のセンサからなるグループ単位で解析することで、1つのセンサ値の変化による解析結果への感度が高まり、異常検知の精度が向上できるからである。
【0003】
しかしながら、多数のセンサデータに対して、系統や機器を単位とする少数のセンサからなる診断に適したグループを定義する作業は、プラントなどの診断対象の機器構成、及び、種々の異常発生における各センサへの影響を鑑みて決定する必要がある。このため、診断に適切なグループの定義には専門知識を必要とするため、診断処理に着手する際のネックとなっていた。
このような背景から、診断対象であるプラントなどの専門知識を使わずに、センサデータから自動的にグループを定義できる処理方法が望まれていた。
【0004】
このような要望に対し、各センサ間の関連性(相関係数)の高いセンサをまとめたグループを定義する方法が考えられる。この方法は、同一の系統や機器に設置されたセンサは相関係数が高くなることに依拠する。例えば、流量センサの場合、同じ流体経路中の上流側と下流側にそれぞれ設置されたセンサの場合、それぞれの流量の計測値は同じように変化するため高い相関を示す。また、同じ機器に設置されるセンサとして、ポンプを例に挙げると、駆動モータの回転数によりポンプ吐出流量を調整する制御方式を採用していれば、回転数と吐出流量の計測値は高い相関を示す。
【0005】
以上のように、センサ間の相関係数を基に、相関の高い同士のセンサを集めてグループを定義することが、専門知識を使わずにグループを自動決定する方法として有効である。
【0006】
特許文献1には、多数のセンサ信号で構成されたデータの解析を行う技術が記載されている。特許文献1に記載された例では、センサ間の相関係数から有向グラフの一種である有向非循環グラフを作成し、グラフが示すノードの繋がりの関係を用いて、異常の根本原因を特定している。有向グラフとは、ノードを結ぶエッジに向きの情報(ベクトル)を備えたものである。これにより、例えば、特定のセンサが別のセンサに影響を及ぼすなどの因果関係をグラフで表現できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2021-2335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載された技術などの公知の方法では、各グループのセンサ数を調整できないという問題がある。プラントのような大規模システムには、数千の規模のセンサが設置されていることが多い。このような多数のセンサから成るデータに対し、公知の方法でグループを定義すると、極端な例では、1つのグループに数千のセンサが集中し、他のグループは数個のセンサのみとなるなど、グループによってセンサ数が大きく偏る場合がある。これでは、診断精度を向上させるために複数の解析グループを定義するという本来の目的が達成できない。
【0009】
また、大規模システムに設置された数千のセンサ全てを診断処理に使用する必要はない場合もある。なぜなら、全てのセンサを使用すると多数のグループが定義されるが、システムの処理負荷の点で全グループの処理を実行できないことがある。さらに、どのグループの解析結果を注視すべきか分からなくなり、かえって、プラント状態の把握が困難になることも考えられる。
【0010】
以上述べたように、各センサの相関係数を用いて、相関関係をグラフとして表現し、グラフを基に相関の高いセンサ同士をまとめて解析用のグループを定義する際に、各グループのセンサ数、及び、解析に使用するセンサ数を調整可能とする方法、あるいは、各グループのセンサ数、及び、作成されるグループ数を調整可能とする方法、が望まれていた。
【0011】
本発明は、解析に使用するセンサをグループ化する際に、適切なセンサ数のグループを構成することができるデータ選択処理システム及びデータ選択処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。
本願は、上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、データ選択処理システムとして、複数のセンサの検出データを取込むセンサデータ取込部と、センサデータ取込部が取込んだ複数のセンサの検出データの相関係数を求める解析部と、解析部が求めた相関係数が、センサ間の相互に設定した閾値以上に高いセンサ同士の集合をグループとして定義する解析グループ作成部と、を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、相関の高いセンサをまとめたグループを定義する際に、各グループのセンサ数、及び、解析に使用する全センサ数を調整してグループを定義できるようになる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の第1の実施の形態例によるプラント診断システムの例を示す構成図である。
図2】本発明の第1の実施の形態例によるセンサ値データベースのデータ構造の例を示す図である。
図3】本発明の第1の実施の形態例による4つのセンサに対する相関係数をグラフの形式で示した図である。
図4】本発明の第1の実施の形態例による各グループのセンサ数を調整するための処理を模式的に示した図である。
図5】本発明の第1の実施の形態例によるグループを定義する処理の流れを示すフローチャートである。
図6】本発明の第1の実施の形態例による解析グループデータベースのデータ構造の例を示す図である。
図7】本発明の第1の実施の形態例による解析結果データベースのデータ構造の例示す図である。
図8】本発明の第1の実施の形態例による解析グループ作成を行う際の画面の例を示す図である。
図9】本発明の第1の実施の形態例によるタグ番号データベースのデータ構造の例を示す図である。
図10】本発明の第1の実施の形態例による診断の解析結果を示す表示画面の例を示す図である。
図11】本発明の第2の実施の形態例によるグループを定義する処理の流れを示すフローチャートである。
図12】本発明の第2の実施の形態例による解析グループを示すシステムの表示画面の例を示す図である。
図13】本発明の各実施の形態例によるシステムをコンピュータで構成した場合のハードウェア構成の例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<第1の実施の形態例>
以下、本発明の第1の実施の形態例によるデータ選択処理システムを、図1図10を参照して説明する。
【0016】
[データ選択処理システムを搭載したプラント診断システムの構成]
図1は、本発明の第1の実施の形態例によるデータ選択処理システムを搭載したプラント診断システムの構成を示す。
プラント診断システム1には、プラント3に設置されたセンサの検出データであるセンサデータが供給される。また、プラント診断システム1には、入出力装置2が接続されている。入出力装置2は、プラント診断システム1に対してデータ選択処理に係る解析条件を設定すると共に、診断の解析結果を提示する。プラント3は、プラント診断システム1が診断の対象、すなわち、診断のためのデータ選択処理を適用するプラントである。
【0017】
プラント診断システム1のセンサデータ取込部11は、プラント3からセンサデータを取り込むセンサデータ取込処理を行い、センサ値データベース12に取り込んだセンサデータを格納する。
図2は、センサ値データベース12のデータ構造を示す。センサ値データベース12には、日時データと共に、センサ値がセンサごとに時系列に格納される。各センサはタグ番号で識別される。図2の例では、A001,A002,・・・がタグ番号である。
【0018】
図1の構成の説明に戻ると、解析グループ作成部13は、センサ値データベース12からデータを取り込み、解析グループを作成する。解析グループを作成する処理の詳細は後述する。解析グループ作成部13で作成された解析グループのデータは、解析グループデータベース14に格納される。解析部15は、解析するグループに対して、解析グループデータベース14からグループに属する複数のタグ番号を取り込み、次に、センサ値データベース12から各タグ番号に相当するセンサ値の時系列データを取り込む。
【0019】
解析部15は、取り込んだセンサ値データを使って、プラント診断のための解析処理を実行する。ここで、解析手法については、複数の時系列データを入力として処理する手法であれば、特に限定しない。例えば、パターン認識処理の1つであるクラスタリングを利用した手法がある。これは、正常時におけるセンサデータから作成されたクラスタを基準とするものである。つまり、事前に正常時のセンサデータで学習しておき、これを基準として診断する学習型の手法である。診断処理は、センサデータと正常時のクラスタとの距離を基に行われる。すなわち、センサデータと正常時のクラスタとの距離が大きいほど、正常時のデータパターンとは異なることを意味する。
したがって、センサデータと正常時のクラスタとの距離が大きい場合に、その距離を異常度とすればよい。例えば解析部15は、センサデータを取り込み、センサデータと正常時のクラスタとの距離に基づいた異常度を解析結果データベース16に出力する。
【0020】
なお、グループの作成に係る条件、及び、診断の解析に係る条件の設定は、ユーザの入出力装置2での操作に基づいて、入出力制御部18で行われる。また、センサ名称のデータは、タグ番号データベース17に格納されている。
【0021】
[解析グループ作成処理]
次に、解析グループ作成部13で行われる解析グループ作成処理について説明する。
本実施の形態例では、解析グループ作成処理に、グラフ理論を適用した。グラフ理論とは、ノード(節点・頂点)とエッジ(枝・辺)を使ったグラフと呼ばれるデータ構造に対する数学理論一般を指す。ノードを各センサ、エッジを相関の高いセンサのペアとして表現したグラフを作成すれば、グラフ理論を応用することができる。このとき、エッジは、2つのセンサの相関係数に対して閾値判定を行い、閾値以上にある場合に解析グループを作成すればよい。
【0022】
グラフ理論の中の信号処理の1つにクリークという考え方がある。クリークとは、グラフの中で全ノードが相互にエッジで結ばれた部分集合(これを完全グラフという)をいう。センサの相関を、グラフを使って表現した場合、クリークは相互に相関の高いセンサの集合を表すことになり、診断処理のグループとして利用できる。なお、K個のノードから成るクリークはKクリークと呼ばれる。また、ノードの数に応じて、3クリーク、4クリーク…のように呼ばれる。
【0023】
クリークに関連した集合として、クリークコミュニティという考え方がある。K個のノードから成る2つのKクリークがあったとき、両者がK-1個のノードを共有していれば、2つのクリークを1つの集合とみなす。この集合をKクリークコミュニティと呼ぶ。つまり、クリークコミュニティはクリークの集合であり、クリークよりも広い集合となる。
【0024】
以上説明したグラフ理論を適用して解析グループ作成部13で行われる解析グループ作成処理について説明すると、まず、センサ値データベース12から各センサの時系列データを取り込み、各センサ間の相関係数を求める。求める相関係数の数は、2つのセンサの組合せ数と同じになる。例えば、1000個のセンサに対する2つのセンサの組合せ数は499,500通りになる。計算で求める相関係数の数も、これと同じになる。
【0025】
図3(a)は、簡単に4つのセンサ[1]~[4]に対する相関係数をグラフの形式で示している。ここで、グラフとはノードとエッジで表すデータの表現形式をいう。図3の例では、丸で囲った数字で示すセンサ[1]~[4]をノードと呼ぶ。また、2つのノード(センサ)を結ぶ線をエッジと呼ぶ。4つのセンサに対する組合せ数は6となるため、6つのエッジが示されている。
【0026】
図3(a)では、各エッジに、両端のノード(センサ)に対応する相関係数を記載している。通常の相関係数は-1~+1の範囲内にある数値となる。相関係数が1である場合は、両者の相対的な変化が同じであることを示す。但し、相関係数が1であっても、絶対値が同じとは限らない。また、相関係数が-1にある場合は、両者の相対的な変化が完全に逆であることを示す。一方、相関係数が0にある場合は、両者の相対的な変化に相関が全くない場合である。本実施の形態例では、正の相関も負の相関も同様に扱うため、相関係数の絶対値が使用される。
【0027】
図3(a)に示した例では、センサ[1]と[2]の相関係数は0.9であり、非常に相関が高いことを示す。一方、センサ[2]と[4]の相関係数は0.1であり、相関が低いことを示す。本実施の形態例では、相関の高いセンサ同士をまとめてグループを定義するため、相関係数の閾値判定が行われる。閾値以下にあるセンサは相関が低いと判断され、これらのセンサ間のエッジを削除したグラフが作成される。
【0028】
図3(a)で示したグラフにおいて、閾値を0.2に設定すると、図3(b)のグラフが得られる。このグラフが示すように、センサ[1],[2],[3]に相当する各ノードは、相互にエッジが連結されており、相関が高い同士の集合であると判別できる。このように、全てのノードがエッジで連結されている集合をクリークと呼ぶ。図3(b)に示す例の場合は、クリークが3つのノードで構成されているので、3クリークと呼ぶ。すなわち、各センサの相関係数を基にグラフを作成し、グラフからクリークを抽出すれば、相互に相関の高いセンサの集合を特定することができる。
【0029】
以上がクリーク解析の基本である。本実施の形態例によるシステムは、クリーク解析を基に特定した相関の高いセンサの集合を1つのグループとして定義し、プラント診断のための解析を各グループに対して行う。さらに、本実施の形態例によるシステムは、プラントのように多数のセンサから成る大規模システム向けに、各グループのセンサ数を調整する処理を行う。
【0030】
[センサ数の調整処理]
次に、解析グループ作成部13で行われる、センサ数の調整処理を説明する。
図4は、各グループのセンサ数を調整するための処理を模式的に示した図である。
図4の例では10個のセンサ[1]~[10]があり、各グループのセンサ数を3~4個に規定する場合の処理を示している。図4でも、各センサ[1]~[10]は、丸で囲った数字で示されている。
【0031】
図4(a)は、10個のセンサ[1]~[10]の相関を、グラフで表現している。この例では、センサ[5],[6],[9]が3クリークとなっている。すなわち、3つのセンサ[5],[6],[9]の相関が相互に高い集合であり、これら3つのセンサをグループとして確定する。
一方、センサ[1]~[7]が7クリークとなっている。これは、各グループのセンサ数を3~4個に規定する条件から逸脱する。このため、図4(b)に示すように、7クリークを取り出し、少数のグループとするための処理が行われる。
【0032】
図4(c)は、図4(b)の7クリークを構成するセンサに対し、相関係数の閾値を増加方向に調整して、グラフを再作成した結果を示す。相関係数の閾値を増加方向に調整することで、相関の低いセンサ間のエッジから削除されていく。図4(c)の例では、センサ[1]~[3]が3クリークとなっている。これはセンサ数の条件を満足するので、グループとして確定する。
【0033】
一方、図4(c)では、センサ[3]~[7]が5クリークとなっている。これは、各グループのセンサ数を3~4個に規定する条件から逸脱する。このため、図4(d)に示す5クリークを取り出す。次に、図4(e)は、図4(d)のセンサに対し、前述の処理と同様に相関係数の閾値を増加方向に調整して、グラフを再作成した結果を示す。これにより、センサ[4]~[7]が4クリークとなっている。これはセンサ数の条件を満足するので、グループとして確定する。
【0034】
以上の処理によって、センサ数が3~4個の条件を満足する3つのグループを定義できた。このように、ノード数が規定値を超えるクリークが存在する場合は、相関係数の閾値を増加方向に調整してグラフを再作成する処理を行う。このとき、グラフはエッジが削除される方向に変化するので、ノード数が規定値の範囲内にあるクリークが生成される。クリークが生成されなければ、再度、閾値を増加方向に調整する。このクリーク生成処理を繰り返せば、定義される全てのグループのセンサ数を規定の範囲内にすることができる。
【0035】
[解析グループ作成処理及びセンサ数調整処理の流れ]
図5は、前述した処理を示すフローチャートである。図5に示す処理フローのステップS1~S8は、前述の図4で説明した各グループのセンサ数を調整するための処理である。
まず、解析グループ作成部13は、相関係数の閾値に対して初期値を設定する(ステップS1)。次に、解析グループ作成部13は、相関係数が閾値以上にあるセンサ間(ノード間)のエッジを結合したグラフを作成する(ステップS2)。さらに、解析グループ作成部13は、作成したグラフに対してクリーク解析を行う(ステップS3)。そして、解析グループ作成部13は、センサ数(ノード数)が規定の範囲内にあるクリークを取り出す(ステップS4)。このステップS4によって取り出したクリークに属するセンサ(ノード)を、解析グループ作成部13は、グループとして確定する。
【0036】
次に、解析グループ作成部13は、センサ数(ノード数)が規定値を超えたクリークがあるか否かを判定する(ステップS6)。ステップS6で、規定値を超えたクリークがある場合(ステップS6のYES)、解析グループ作成部13は、センサ数(ノード数)が規定値を超えたクリークを取り出す(ステップS7)。そして、解析グループ作成部13は、相関係数の閾値を増加する(ステップS8)。次に、ステップS2に戻って、相関係数が閾値以上にあるセンサ間(ノード間)のエッジを結合したグラフを作成する。
このステップS2~S8の処理を繰り返すことで、定義されるグループは全てセンサ数が規定の範囲内となる。
【0037】
ここまでは、前述の図4を使って説明した処理である。次に、ステップS9~S11の処理について説明する。ステップS2~S8が、各グループのセンサ数を規定の範囲内にするための処理であるのに対し、ステップS9~S11は、使用するセンサ数を規定値以下にするための処理である。
【0038】
前述のステップS6で、センサ数(ノード数)が規定値を超えたクリークがない、と判定された場合(ステップS6のNO)、確定した全グループのセンサ数は、規定の範囲内にあることを示す。これを受けて、次に、解析グループ作成部13は、選択されたセンサ数が規定値以下にあるかを判定する(ステップS9)。例えば、前述した図4の処理で確定したグループでは、センサ[1]~[10]の10個のセンサの中で、センサ[8]とセンサ[10]以外の8個のセンサが使われている。これに対し、5個以下のセンサでグループを定義する、という規定を設定したとする。すると、ステップS9で選択されたセンサ数が規定値以下ではなくなるので(ステップS9のNO)、解析グループ作成部13は、確定したグループを全てリセットする(ステップS10)。なお、ステップS9で選択されたセンサ数が規定値以下の場合(ステップS9のYES)には、処理を終了する。
【0039】
次に、解析グループ作成部13は、相関係数の閾値の初期値を増加し(ステップS11)、ステップS1に戻り、最初から処理をやり直す。このとき、相関係数の閾値の初期値を増加させることで、作成されるグラフのエッジの数は、前より削減する。これにより、最終的にグループに使用されるセンサ数も減らすことができる。
【0040】
つまり、この処理フローは、二重のループで構成されており、内側のループで各グループのセンサ数を調整し、その外側のループで使用するセンサ数を調整している。以上に述べた処理によって定義されるグループは、各グループのセンサ数が規定の範囲内、かつ、使用されるセンサ数が規定値以下、という2つの条件を満足する。
【0041】
なお、図4及び図5で示した処理では、クリークの考え方を適用してグループを定義していたが、クリークコミュニティでも同様の方法で実現できる。クリークをクリークコミュニティに置き換えれば、同じ目的の処理が実現できる。
ここまでが、図1に示した解析グループ作成部13の処理である。この処理結果は、解析グループデータベース14に出力される。
【0042】
[解析グループデータベースの構成例]
図6は、解析グループデータベース14のデータ構造の例を示す。解析グループデータベース14は、図6(a)及び図6(b)に示す2種類のデータで構成される。すなわち、図6(a)に示すように、各解析グループに属するセンサがタグ番号の形式で格納される。一方、図6(b)に示すように、各解析グループを確定したときの、各解析グループの相関係数が格納される。
【0043】
[解析グループに対して行われる処理の例]
解析グループ作成部13により解析グループが作成されると、解析部15は、解析するグループに対して、解析グループデータベース14からグループに属する複数のタグ番号を取り込み、次に、センサ値データベース12から各タグ番号に相当するセンサ値の時系列データを取り込む。
【0044】
解析部15は、取り込んだセンサ値データを使って、プラント診断のための解析を実施する。ここで、解析部15による解析手法としては、複数の時系列データを入力として処理する手法であれば、特に限定されない。例えば、パターン認識処理の1つであるクラスタリングを利用した手法がある。これは、正常時におけるセンサデータから作成されたクラスタを基準とするものである。つまり、事前に正常時のセンサデータで学習しておき、これを基準として診断する学習型の手法である。診断処理は、センサデータと正常時のクラスタとの距離を基に行われる。距離が大きいほど、正常時のデータパターンとは異なることを意味するので、閾値以上の距離を異常度とすればよい。本実施の形態例でも、解析部15はセンサデータを取り込み、解析結果データベース16に異常度を出力する。
【0045】
図7は、解析結果データベース16のデータ構造の例を示す。解析結果データベース16には、解析部15が出力した解析結果(異常度)が、センサ値データベース12の日時データに対応させて時系列に格納される。前述したように、解析部15はグループごとに解析を行うので、格納される異常度のデータもグループごとに格納される。
【0046】
[ユーザによる設定で診断の解析結果を得るまでの一連の手順と表示画面の例]
次に、本実施の形態例によるシステムにおいて、図1の入出力装置2を通して、ユーザがグループの作成に係る条件、及び、診断の解析に係る条件を設定し、それに応じて診断の解析結果を得るまでの一連の手順を説明する。なお、これらの入出力データの制御は、入出力制御部18が実施する。
【0047】
図8は、入出力装置2が表示する画面の一例である。図8に示す画面は、解析グループ作成に係る画面を表示させるタブ101を選択して表示させた例である。タブ101の上部には、解析グループ作成の条件を設定する窓が配置される。具体的には、タブ101には、グループ作成処理に使用するセンサデータに対して日時の範囲を指定する窓102が配置される。また、タブ101には、グループ作成の解析手法を選択する窓103が配置される。この窓103により、クリーク/クリークコミュニティのいずれかを選択できる。さらに、タブ101には、グループ作成の条件として、前述した各グループのセンサ数の範囲、及び、使用するセンサ数の上限値を指定する窓104が配置される。
【0048】
それぞれの窓102~104で条件を指定し、「グループ作成」と記載されたボタン105を押下すると、前述したグループ作成の処理が実行され、処理結果が解析結果データベース16に出力される。次に、処理結果が画面上の結果表示欄106に表示される。結果表示欄106には、各グループの信号名称がリスト形式で表示される。この際、入出力制御部18が、タグ番号からセンサ名称への変換を行う。センサ名称のデータは、図1のタグ番号データベース17に格納されている。
【0049】
また、センサ数表示欄107には、各グループのセンサ数が表示される。また、使用センサ数表示欄108には、使用されたセンサ数が表示される。このセンサ数は、センサ数表示欄107で示す各グループのセンサ数の合計ではない。なぜなら、同じ信号が複数のグループに属する場合があるためである。センサ数表示欄107の各グループのセンサ数、使用センサ数表示欄108の使用センサ数を表示することにより、窓104で設定した条件が満足されていることを確認できる。センサ間の相関係数表示欄109には、グループが確定したときの相関係数が表示される。画面上に示される相関係数については、同じグループに属するセンサ間の相関係数は、いずれも、この値以上になっていることを意味する。
【0050】
図9は、タグ番号データベース17のデータ構造の例を示している。図9に示すように、タグ番号とセンサ名称とが対応させる形で格納されている。図1に示す解析グループデータベース14には、各グループに属するセンサがタグ番号の形式で格納されている。入出力制御部18は、このデータを取り出し、タグ番号データベース17を基にタグ番号からセンサ名称への変換を行い、画面に表示する。
【0051】
なお、本実施の形態例によるシステムは、プラント3からオンラインでデータを取り込み、診断の解析結果をリアルタイムで逐次表示する処理を想定している。したがって、前述した解析グループの作成に係る操作は、システムで診断処理を実行する前にあらかじめ実施しておく。
【0052】
図10は、診断の解析結果を示す表示画面である。図10に示す画面は、解析結果に係る画面を表示させるタブ201を選択することで表示される。
タブ201の上部には、解析結果を表示する解析グループを指定するリスト202が配置される。リスト202で解析グループを選択することで、入力センサ名称表示欄203に該当するグループのセンサの名称が表示され、解析結果表示欄204に解析グループの解析結果が表示される。図10に示す解析結果表示欄204の例は、異常度のトレンドであり、前述の解析結果データベース16に格納されている。
【0053】
以上に述べたように、本実施の形態例によれば、プラントなどの大規模システムの診断を行う場合、センサ間の相関が相互に高い集合を診断処理のグループとして自動で定義できる。さらに、定義される各グループのセンサの数を規定の範囲にでき、かつ、選択されたセンサの数を規定値以下とすることができる。センサ数を調整できる機能は、多数のセンサが設置された大規模システムを対象とする場合に、特に有効である。
【0054】
<第2の実施の形態例>
次に、本発明の第2の実施の形態例によるデータ選択処理システムを、図11図12を参照して説明する。
本実施の形態例においても、第1の実施の形態例と同様に、プラントなどの大規模システムの診断を行うものであり、図1に示すシステム構成にてセンサの選択処理が行われる。
第1の実施の形態例と第2の実施の形態例との相違点は、第1の実施の形態例では選択されたセンサの数を規定値以下とする処理であったが、これに代わり、第2の実施の形態例では作成されるグループの数を規定の範囲とする処理となる点である。なお、第1の実施の形態例で実施した各グループのセンサ数を規定の範囲とする点は、第2の実施の形態例でも同様である。
なお、本実施の形態例での解析グループ作成処理及びセンサ数調整処理を説明する図11のフローチャートにおいて、図5のフローチャートの処理と同じ処理が行われるステップについては、同じステップ番号を付し、重複説明を省略する。
【0055】
[解析グループ作成処理及びグループ数調整処理の流れ]
図11は、本実施の形態例での解析グループ作成処理及びグループ数調整処理の流れを示すフローチャートである。
この図11のフローチャートでは、ステップS1~S8については、図5のフローチャートに示す処理と同じ処理が行われる。そして、ステップS6でセンサ数が規定値を超えたクリークがない場合(ステップS6のNO)に、作成されたグループ数が規定の範囲にあるか否かを判断する処理が行われる(ステップS9B)。
このステップS9Bで、グループ数が規定値の範囲内にあれば(ステップS9BのYES)、解析グループ作成処理及びグループ数調整処理は終了する。
一方、ステップS9Bで、グループ数が規定値の範囲内でなければ(ステップS9BのNO)、ステップS10に移って、解析グループをクリアして初期状態に戻す処理が行われる。
【0056】
さらに、ステップS10で解析グループをクリアして初期状態に戻す処理が行われた後、相関係数の閾値の初期値が変更される(ステップS11B)。ここで、作成されたグループ数が規定値の範囲未満であり、グループ数を増やしたい場合は、閾値が減少方向に調整される。これにより、2つのセンサの相関が高いと判定されるケースが増え、ステップS2で作成されるグラフはエッジの数が増加する。その結果、クリークの数が増え、グループ数も増える。一方、作成されたグループ数が規定値の範囲を超えており、グループ数を減らしたい場合は、前述の例とは逆に閾値を増加方向に調整すればよい。
ステップS11Bで相関係数の閾値の初期値を変更した後、ステップS1の処理に戻る。
【0057】
以上の処理が行われることで、作成されるグループ数を規定値の範囲内とすることができる。図11のフローチャートでは、ステップS1~S8で各グループのセンサ数の調整処理が行われると共に、さらにステップS9B,S10,S11Bの処理が加わることで、作成されるグループ数の調整処理が行われる。
【0058】
[表示画面の例]
図12は、本実施の形態例におけるシステムの表示画面例である。この図12の表示画面において、図8に示す表示画面と同じ項目には同じ符号を付す。
図12に示す画面は、図8の使用するセンサ数の上限値を指定する窓104の代わりに、グループ数の下限・上限を設定する窓104Bを設けたものである。
図12の画面のその他の箇所は、図8の画面と同様である。
以上に述べたように、第2の実施の形態例によれば、定義される各グループのセンサの数を規定の範囲にでき、かつ、作成されるグループの数を規定の範囲内とすることができる。
【0059】
[変形例]
なお、ここまで説明した実施の形態例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
また、図1に示すデータ選択処理システム(プラント診断システム1)の各処理部は、コンピュータ装置に、データ選択処理システムとしての各処理機能を実行するソフトウェア(プログラム)を実装して、構成するのが一般的である。
【0060】
図13は、このデータ選択処理システムとして機能するコンピュータ装置のハードウェア構成の概要の一例を示す。
【0061】
コンピュータ装置で構成されたデータ選択処理システムは、バスにそれぞれ接続された、CPU(Central Processing Unit)1a、主記憶部1b、不揮発性ストレージ1c、ネットワークインタフェース1e、入出力部1f、及び表示部1gを備える。
【0062】
CPU1aは、データ選択処理システムが行う機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを主記憶部1b又は不揮発性ストレージ1cから読み出して実行する演算処理部である。
【0063】
CPU1aが主記憶部1b又は不揮発性ストレージ1cからプログラムコードを読み出して、主記憶部1bのワークエリアで演算処理を実行することで、主記憶部1bに様々な処理機能部が構成される。例えば主記憶部1bには、図1に示すセンサデータ取込部11、解析グループ作成部13、解析部15及び入出力制御部18が構成される。
【0064】
不揮発性ストレージ1cには、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、メモリカードなどの大容量情報記憶媒体が用いられる。不揮発性ストレージ1cには、データ選択処理システムが持つ機能を実現するソフトウェアと、そのプログラムの実行で得られたデータ、並びに各データベース12,14,16,17としての情報が記憶される。
【0065】
ネットワークインタフェース1eは、例えば、NIC(Network Interface Card)などが用いられ、他の装置とのデータの送受信が行われる。
入出力部1fは、プラント3からのセンサデータの取込などを行う。
表示部1gは、図8などに示す画面の表示を行う。なお、図1の例では、入出力装置2が表示を行う例としてあり、表示部1gはデータ選択処理システムとしてのコンピュータ装置は備えない構成でもよい。
【0066】
また、図1などに示す構成図では、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものだけを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
また、各実施の形態例で説明したシステムをコンピュータなどの情報処理装置で構成した場合に、各処理機能を実現するプログラムについては、コンピュータ装置内の不揮発性ストレージやメモリに用意する他に、外部のメモリ、ICカード、SDカード、光ディスク等の記録媒体に置いて、転送してもよい。
【符号の説明】
【0067】
1…プラント診断システム(データ選択処理システム)、1a…CPU、1b…主記憶部、1c…不揮発性ストレージ、1e…ネットワークインタフェース、1f…入出力部、1g…表示部、2…入出力装置、3…プラント、11…センサデータ取込部、12…センサ値データベース、13…解析グループ作成部、14…解析グループデータベース、15…解析部、16…解析結果データベース、17…タグ番号データベース、18…入出力制御部、101~104,104B…窓、105…ボタン、106…結果表示欄、107…センサ数表示欄、108…使用センサ数表示欄、109…相関係数表示欄、201…タブ、202…リスト、203…入力センサ名称表示欄、204…解析結果表示欄
図1
図2
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図6
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図10
図11
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図13