(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023070402
(43)【公開日】2023-05-19
(54)【発明の名称】回転電機
(51)【国際特許分類】
H02K 5/04 20060101AFI20230512BHJP
H02K 5/24 20060101ALI20230512BHJP
H02K 9/06 20060101ALI20230512BHJP
【FI】
H02K5/04
H02K5/24 C
H02K5/24 Z
H02K9/06 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021182551
(22)【出願日】2021-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菊田 卓見
【テーマコード(参考)】
5H605
5H609
【Fターム(参考)】
5H605AA05
5H605BB01
5H605BB05
5H605CC01
5H605DD07
5H605DD11
5H609BB01
5H609BB18
5H609PP01
5H609PP05
5H609PP06
5H609QQ02
5H609QQ08
5H609RR28
(57)【要約】
【課題】騒音の発生を容易に抑制可能な回転電機を提供する。
【解決手段】一つの実施形態に係る回転電機は、ステータと、ロータと、筐体と、シャフトと、外扇と、外扇カバーと、調整部材とを備える。前記ロータは、前記ステータに対して第1の回転軸まわりに回転可能である。前記筐体は、前記ステータ及び前記ロータを収容する。前記シャフトは、前記第1の回転軸に沿って前記筐体の内部と外部とに亘って延びるとともに前記ロータに結合される。前記外扇は、前記筐体の外部で前記シャフトに結合される。前記外扇カバーは、前記外扇を覆い、前記外扇が配置された空間と当該空間の外部とを連通する第1の孔が設けられる。前記調整部材は、前記第1の孔を開放する第1の位置と前記第1の孔を少なくとも部分的に覆う第2の位置との間で前記外扇カバーに対して移動可能である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータと、
前記ステータに対して第1の回転軸まわりに回転可能なロータと、
前記ステータ及び前記ロータを収容する筐体と、
前記第1の回転軸に沿って前記筐体の内部と外部とに亘って延びるとともに前記ロータに結合されたシャフトと、
前記筐体の外部で前記シャフトに結合された外扇と、
前記外扇を覆い、前記外扇が配置された空間と当該空間の外部とを連通する第1の孔が設けられた、外扇カバーと、
前記第1の孔を開放する第1の位置と前記第1の孔を少なくとも部分的に覆う第2の位置との間で前記外扇カバーに対して移動可能な調整部材と、
を具備する回転電機。
【請求項2】
前記調整部材は、前記第1の位置と前記第2の位置との間で前記外扇カバーに対して回転可能に前記外扇カバーに取り付けられる、請求項1の回転電機。
【請求項3】
前記調整部材は、前記第1の位置と前記第2の位置との間で前記外扇カバーに対して第2の回転軸まわりに回転可能であり、前記第2の回転軸まわりに延びるとともに前記第1の孔に連通可能な第2の孔が設けられ、
前記第1の孔は前記第2の回転軸まわりに延びる、
請求項1又は請求項2の回転電機。
【請求項4】
前記第1の回転軸と前記第2の回転軸とが互いに延長線上に位置する、請求項3の回転電機。
【請求項5】
前記外扇カバーの外部に位置するとともに前記調整部材を前記外扇カバーに固定する固定部材、
をさらに具備し、
前記調整部材は、前記外扇カバーの外部に位置する、
請求項1乃至請求項4のいずれか一つの回転電機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、回転電機に関する。
【背景技術】
【0002】
回転電機は、一般的に、冷却のためにシャフトと一体的に回転するファンを有する。例えば、筐体の外部においてシャフトと一体的に回転する外扇を備えた回転電機が知られる。外扇は、例えば、外扇カバーによって覆われる。外扇カバーには、外気を吸引するための吸気口が設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
回転する外扇が吸気口を通過する気流を生じさせると、当該気流により騒音(笛吹音)が発生する虞がある。当該騒音が発生した場合、従来では、例えば、吸気口の面積を拡張する加工又は外扇を削る加工が、騒音の発生への対処として用いられる。これらの加工によって時間及びコストがかかってしまう。
【0005】
本発明が解決する課題の一例は、騒音の発生を容易に抑制可能な回転電機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一つの実施形態に係る回転電機は、ステータと、ロータと、筐体と、シャフトと、外扇と、外扇カバーと、調整部材とを備える。前記ロータは、前記ステータに対して第1の回転軸まわりに回転可能である。前記筐体は、前記ステータ及び前記ロータを収容する。前記シャフトは、前記第1の回転軸に沿って前記筐体の内部と外部とに亘って延びるとともに前記ロータに結合される。前記外扇は、前記筐体の外部で前記シャフトに結合される。前記外扇カバーは、前記外扇を覆い、前記外扇が配置された空間と当該空間の外部とを連通する第1の孔が設けられる。前記調整部材は、前記第1の孔を開放する第1の位置と前記第1の孔を少なくとも部分的に覆う第2の位置との間で前記外扇カバーに対して移動可能である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、例えば、回転電機における騒音の発生を容易に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一つの実施形態に係る回転電機を概略的に示す断面図である。
【
図2】
図2は、上記実施形態の回転電機を概略的に示す正面図である。
【
図3】
図3は、上記実施形態の回転電機の一部を
図2のF3-F3線に沿って概略的に示す断面図である。
【
図4】
図4は、上記実施形態の調整部材が回転した回転電機を概略的に示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、一つの実施形態について、
図1乃至
図4を参照して説明する。なお、本明細書において、実施形態に係る構成要素及び当該要素の説明が、複数の表現で記載されることがある。構成要素及びその説明は、一例であり、本明細書の表現によって限定されない。構成要素は、本明細書におけるものとは異なる名称でも特定され得る。また、構成要素は、本明細書の表現とは異なる表現によっても説明され得る。
【0010】
図1は、一つの実施形態に係る回転電機10を概略的に示す断面図である。回転電機10は、いわゆる全閉外扇型回転電機であり、例えば電動機又は発電機として利用される。なお、回転電機10は、この例に限られない。
【0011】
回転電機10は、ステータ11と、ロータ12と、筐体13と、シャフト14と、複数の軸受15と、内扇21と、外扇22と、外扇カバー23と、調整部材24と、固定部材25と、外枠26とを有する。なお、回転電機10は、この例に限られない。
【0012】
ステータ11は、固定子鉄心31と、固定子巻線32とを有する。固定子鉄心31は、中心軸Axを囲む略円筒状に形成される。中心軸Axは、回転電機10におけるロータ12及びシャフト14の回転の中心であり、例えばシャフト14の中心を通る仮想的な直線である。中心軸Axは、第1の回転軸及び第2の回転軸の一例である。固定子巻線32は、固定子鉄心31に設けられたスロットを貫通して、当該固定子鉄心31に取り付けられる。
【0013】
本明細書において、便宜上、軸方向、径方向、及び周方向が定義される。軸方向は、中心軸Axに沿う方向である。径方向は、中心軸Axと直交する方向である。周方向は、中心軸Axまわりに回転する方向である。
【0014】
軸方向は、第1の軸方向Da1と、第2の軸方向Da2とを含む。第1の軸方向Da1は、中心軸Axに沿う一方向である。第2の軸方向Da2は、第1の軸方向Da1の反対方向である。
【0015】
ロータ12は、回転子鉄心41と、導体42とを有する。回転子鉄心41は、中心軸Axを囲む略円筒状に形成され、固定子鉄心31の内側に配置される。導体42は、互いに周方向に間隔を介して配置される。導体42は、例えば、回転子鉄心41を軸方向に貫通する導体バーと、全ての導体バーの軸方向における端部に結合された短絡リングとを有する。
【0016】
筐体13は、フレーム51と、二つの軸受ブラケット52,53と、複数の放熱フィン54とを有する。フレーム51は、中心軸Axを囲む略円筒状に形成される。ステータ11及びロータ12は、フレーム51の内側に配置される。固定子鉄心31は、フレーム51に固定される。
【0017】
フレーム51は、内面51aと、外面51bと、複数のボス51cとを有する。内面51aは、筐体13の内部に向く。外面51bは、内面51aの反対側に位置し、筐体13の外部に向く。ボス51cは、第2の軸方向Da2におけるフレーム51の端部の近傍において、外面51bから筐体13の外部に突出する。複数のボス51cは、周方向に間隔を介して配置されている。
【0018】
軸受ブラケット52は、第1の軸方向Da1におけるフレーム51の端部に取り付けられる。軸受ブラケット53は、第2の軸方向Da2におけるフレーム51の端部に取り付けられる。軸受ブラケット52,53は、フレーム51の内部の空間を塞ぐ。軸受ブラケット52,53のそれぞれは、対応する軸受15を保持する。
【0019】
筐体13の内部に、閉空間Siが設けられる。筐体13は、閉空間Siにステータ11及びロータ12を収容する。筐体13は、閉空間Siと、当該閉空間Siの外部との間を、略気密に封止する。なお、閉空間Siは、筐体13に取り付けられる冷却器のような装置によってフレーム51の外部まで拡張されても良い。閉空間Siには、空気のような冷却用気体が満たされている。
【0020】
複数の放熱フィン54は、例えば、フレーム51の外面51bから筐体13の外部に突出する。複数の放熱フィン54のそれぞれは、略軸方向に延びている。放熱フィン54は、軸受ブラケット52,53から突出しても良いし、他の方向に延びても良い。
【0021】
シャフト14は、中心軸Axに沿って延びる略円柱状に形成される。シャフト14は、筐体13の内部と外部とに亘って延びている。シャフト14は、中部14aと、二つの外延部14b,14cとを有する。
【0022】
中部14aは、筐体13の内部に位置するシャフト14の一部である。中部14aは、二つの外延部14b,14cの間に位置する。軸方向における中部14aの両端部は、軸受15によって支持される。これにより、シャフト14は、中心軸Axまわりに回転可能に軸受15に支持される。
【0023】
外延部14b,14cは、筐体13の外部に位置するシャフト14の一部である。外延部14bは、第1の軸方向Da1における中部14aの端から、軸受ブラケット52を越えて筐体13の外部に突出している。外延部14cは、第2の軸方向Da2における中部14aの端から、軸受ブラケット53を越えて筐体13の外部へ突出している。
【0024】
外延部14bは、例えば、フランジ、キー溝、又はスプラインが設けられ、外部の機器に回転を伝達可能に結合される。これにより、回転電機10は、当該外部の機器にトルクを出力し、又は外部の機器からトルクを入力される。
【0025】
シャフト14の中部14aは、ロータ12の回転子鉄心41に結合される。ロータ12及びシャフト14は、ステータ11に対して中心軸Axまわりに一体的に回転することができる。
【0026】
内扇21は、筐体13の閉空間Siにおいて、シャフト14の中部14aに結合される。内扇21は、シャフト14と一体的に中心軸Axまわりに回転することができる。内扇21は、回転することで、閉空間Siに冷却用気体の気流を生じさせる。当該気流は、例えば、ステータ11とロータ12との間を略軸方向に通過し、ステータ11及びロータ12を冷却する。
【0027】
筐体13に、閉空間Siで冷却用気体を循環させるための種々の構造が設けられても良い。例えば、筐体13は、内扇21に隣接するとともに、回転する内扇21へ冷却用気体を導入するダクトを有しても良い。また、筐体13に、ステータ11及びロータ12を通過した冷却用気体を内扇21の近傍へ戻す流路が設けられても良い。
【0028】
外扇22は、筐体13の外部でシャフト14の外延部14cに結合される。これにより、外扇22は、ロータ12、シャフト14、及び内扇21と一体に、中心軸Axまわりに回転することができる。外扇22は、例えば、略径方向の気流を生じる遠心ファンである。
【0029】
外扇カバー23は、筐体13の外部に位置し、外扇22を覆う。外扇カバー23は、例えば、金属により作られる。外扇カバー23は、端壁61と、周壁62と、ガイド63と、ネジ軸64とを有する。なお、外扇カバー23は、この例に限られない。
【0030】
端壁61は、筐体13、シャフト14、及び外扇22から第2の軸方向Da2に離間した位置に配置される。端壁61は、例えば、中心軸Axと略直交する略円盤状に形成される。端壁61の外径は、第2の軸方向Da2におけるフレーム51の端部の外径よりも長く、且つ軸受ブラケット53の外径よりも長い。なお、端壁61の形状は、この例に限られない。
【0031】
端壁61は、内面61aと、外面61bとを有する。内面61aは、第1の軸方向Da1に向く。内面61aは、間隔を介して筐体13、シャフト14、及び外扇22に向く。外面61bは、内面61aの反対側に位置し、第2の軸方向Da2に向く。
【0032】
周壁62は、端壁61の外縁からおおよそ第1の軸方向Da1に延びる略円筒状に形成される。周壁62の内径は、第2の軸方向Da2におけるフレーム51の端部の外径よりも長く、且つ軸受ブラケット53の外径よりも長い。
【0033】
周壁62は、軸受ブラケット53と、第2の軸方向Da2におけるフレーム51の端部とを囲む。周壁62は、フレーム51の外面51b及び軸受ブラケット53から、径方向に離間している。これにより、周壁62と筐体13との間に、隙間Gが形成される。周壁62は、例えば、ボルト65によって、フレーム51のボス51cに固定される。
【0034】
端壁61及び周壁62は、筐体13の軸受ブラケット53と、シャフト14の外延部14cと、外扇22と、を覆う。外扇カバー23は、軸受ブラケット53と、端壁61と、周壁62とに囲まれた流路空間Scを形成(規定、区画)する。流路空間Scは、空間の一例である。シャフト14の外延部14cと外扇22とは、流路空間Scに配置される。端壁61の内面61aは、流路空間Scの内部に向く。
【0035】
外扇カバー23に、複数の第1の吸気口71が設けられる。複数の第1の吸気口71は、第1の孔の一例である。本実施形態において、第1の吸気口71は、端壁61に設けられる。第1の吸気口71は、端壁61を貫通し、端壁61の内面61a及び外面61bに開口する。これにより、第1の吸気口71は、流路空間Scと、当該流路空間Scの外部とを連通する。なお、第1の吸気口71は、周壁62に設けられても良い。
【0036】
図2は、本実施形態の回転電機10を概略的に示す正面図である。
図2に示すように、複数の第1の吸気口71のそれぞれは、中心軸Axまわりの周方向に延びる略円弧状に形成される。なお、第1の吸気口71の形状は、四角形、円形、又は他の形状であっても良い。
【0037】
複数の第1の吸気口71は、周方向に間隔を介して並べられている。さらに、周方向に並べられた第1の吸気口71の列が、径方向に間隔を介して並べられる。それぞれの列における第1の吸気口71の形状は、互いに略同一である。なお、第1の吸気口71の配置は、この例に限られない。
【0038】
図1に示すように、第2の軸方向Da2における流路空間Scの端部は、複数の第1の吸気口71を通じて外部に連通する。また、第1の軸方向Da1における流路空間Scの端部は、隙間Gを通じて外部に連通する。
【0039】
外扇22は、回転することにより、第1の吸気口71から流路空間Scに外気を吸引することができる。回転する外扇22によって生じた外気の気流は、例えば、隙間Gを通って流路空間Scの外部へ放出され、フレーム51の外面51bに沿って流れる。
【0040】
外気の気流は、放熱フィン54に沿って流れることで、フレーム51と熱交換を行う。これにより、外気の気流は、当該フレーム51を介して、フレーム51に結合されたステータ11及び閉空間Siの冷却用気体を冷却する。
【0041】
ガイド63は、流路空間Scに設けられる。ガイド63は、例えば、第1の吸気口71から吸引された外気を外扇22に導く流路と、外扇22により送られた外気を隙間Gに導く流路と、を形成する。
【0042】
ネジ軸64は、端壁61の外面61bから第2の軸方向Da2に突出する。ネジ軸64は、中心軸Axに沿って延びる略円柱状に形成される。すなわち、ネジ軸64の中心軸は、中心軸Axと略一致する。ネジ軸64の外周面の少なくとも一部に、雄ネジが形成される。
【0043】
調整部材24は、中心軸Axと略直交する略円盤状に形成される。調整部材24の外径は、端壁61の外径と略等しい。なお、調整部材24の形状は、この例に限られない。調整部材24は、例えば、金属により作られる。調整部材24は、外扇カバー23の外部に位置し、端壁61の外面61bを少なくとも部分的に覆う。なお、調整部材24は、外扇カバー23の内部に位置しても良い。
【0044】
図3は、本実施形態の回転電機10の一部を
図2のF3-F3線に沿って概略的に示す断面図である。
図3に示すように、調整部材24は、内面24aと外面24bとを有する。内面24aは、第1の軸方向Da1に向く。調整部材24の内面24aと、端壁61の外面61bとは、互いに向かい合う。外面24bは、内面24aの反対側に位置し、第2の軸方向Da2に向く。
【0045】
調整部材24の厚さは、例えば、外扇カバー23の端壁61の厚さと略等しい。調整部材24の厚さは、内面24aと外面24bとの間の距離である。端壁61の厚さは、内面61aと外面61bとの間の距離である。調整部材24の厚さは、例えば、外扇22が発生させる気流及び振動により調整部材24が移動又は変形することを抑制可能な厚さに設定される。
【0046】
調整部材24に、複数の第2の吸気口72が設けられる。複数の第2の吸気口72は、第2の孔の一例である。第2の吸気口72は、調整部材24を貫通し、調整部材24の内面24a及び外面24bに開口する。
【0047】
図2に示すように、複数の第2の吸気口72の位置及び形状は、第1の吸気口71の位置及び形状と略同一に設定される。すなわち、複数の第2の吸気口72のそれぞれは、中心軸Axまわりの周方向に延びる略円弧状に形成される。なお、
図2は、調整部材24を部分的に省略している。
【0048】
複数の第2の吸気口72は、周方向に間隔を介して並べられている。さらに、周方向に並べられた第2の吸気口72の列が、径方向に間隔を介して並べられる。それぞれの列における第2の吸気口72の形状は、互いに略同一である。なお、第2の吸気口72は、この例に限られず、第1の吸気口71と位置及び形状が異なっても良い。
【0049】
互いに対応する第1の吸気口71と第2の吸気口72とは、軸方向に並ぶことができる。言い換えると、第1の吸気口71と第2の吸気口72とは、軸方向に重なることができる。第1の吸気口71と第2の吸気口72とが軸方向に並ぶことで、第1の吸気口71と第2の吸気口72とが互いに連通する。
【0050】
互いに連通した第1の吸気口71と第2の吸気口72とは、流路空間Scと、当該流路空間Scの外部と、を連通する一つの吸気口75を形成する。例えば、外気の気流が、吸気口75を軸方向に通過することができる。
【0051】
互いに連通する第1の吸気口71と第2の吸気口72との間に、隙間が存在しても良い。すなわち、第1の吸気口71と第2の吸気口72との連通は、第1の吸気口71と第2の吸気口72とが直接的に接続される必要が無く、所定の方向(本実施形態においては軸方向)に外気が第1の吸気口71及び第2の吸気口72を通過可能な状態であれば良い。
【0052】
図3に示すように、調整部材24に、挿通孔77が設けられる。挿通孔77は、中心軸Axに沿って調整部材24を貫通し、調整部材24の内面24a及び外面24bに開口する。外扇カバー23のネジ軸64は、挿通孔77を貫通する。
【0053】
調整部材24は、挿通孔77を貫通したネジ軸64によって、中心軸Axまわりに回転可能に支持される。すなわち、調整部材24は、中心軸Axまわりに回転可能に外扇カバー23に取り付けられる。
【0054】
調整部材24と、シャフト14とは、同心(同軸)に回転することができる。すなわち、調整部材24の回転軸(中心軸Ax)と、シャフト14の回転軸(中心軸Ax)とは、互いに延長線上に位置する。なお、調整部材24の回転軸と、シャフト14の回転軸とが、互いに異なっても良い。
【0055】
図4は、本実施形態の調整部材24が回転した回転電機10を概略的に示す正面図である。調整部材24は、例えば、
図2に示す第1の位置P1と、
図4に示す第2の位置P2との間で、外扇カバー23に対して中心軸Axまわりに回転することができる。
【0056】
図2に示すように、調整部材24が第1の位置P1に位置するとき、中心軸Axと直交する方向において、第1の吸気口71と第2の吸気口72とが略同一位置に配置される。このため、第1の位置P1において、調整部材24は、第1の吸気口71を完全に開放する。
【0057】
図4に示すように、調整部材24が第2の位置P2に位置するとき、中心軸Axと直交する方向において、対応する第1の吸気口71と第2の吸気口72とは、少なくとも部分的に異なる位置に配置される。このため、第2の位置P2において、調整部材24は、第1の吸気口71を少なくとも部分的に覆う。
【0058】
調整部材24が第1の位置P1から第2の位置P2へ向かって回転すると吸気口75が小さくなる。言い換えると、第1の吸気口71のうち流路空間Scの外部に開放された部分の面積(断面積)が減少する。これにより、吸気口75を通って流路空間Scに流入可能な気流の量が減少する。
【0059】
第1の位置P1において、調整部材24が第1の吸気口71を部分的に開放し、調整部材24が第1の吸気口71の一部を覆っても良い。この場合、調整部材24が第1の位置P1に位置するときの第1の吸気口71のうち外部に開放された部分の面積は、調整部材24が第2の位置P2に位置するときの第1の吸気口71のうち外部に開放された部分の面積よりも大きい。
【0060】
調整部材24は、他の態様で外扇カバー23に対して移動しても良い。例えば、調整部材24は、外扇カバー23に対して径方向にスライド移動しても良い。この場合、調整部材24は、例えばレールによって直線状に移動可能に支持される。
【0061】
回転電機10は、複数の調整部材24を有しても良い。この場合、複数の調整部材24のそれぞれは、複数の第1の吸気口71のうち対応する少なくとも一部を開放又は部分的に覆う。言い換えると、複数の調整部材24が第1の吸気口71の開放された面積を個別に調整しても良い。
【0062】
回転電機10は、第1の位置P1から第2の位置P2へ向かって回転する調整部材24を第2の位置P2で停止させるストッパを有しても良い。当該ストッパは、第1の吸気口71から流路空間Scに吸引される外気の量が所定の量を下回ることを抑制できる。また、回転電機10は、第2の位置P2から第1の位置P1へ向かって回転する調整部材24を第1の位置P1で停止させるストッパを有しても良い。
【0063】
図3に示すように、固定部材25は、例えば、ナットである。固定部材25は、外扇カバー23の外部に位置し、ネジ軸64に取り付けられる。固定部材25は、当該固定部材25と外扇カバー23との間に、調整部材24を保持する。
【0064】
端壁61の外面61bに、第1の回転制限部81が設けられる。第1の回転制限部81は、例えば、端壁61の外面61bから突出するとともに放射状に延びる複数の突起を有する。一方、調整部材24の内面24aに、第2の回転制限部82が設けられる。第2の回転制限部82は、例えば、調整部材24の内面24aから突出するとともに放射状に延びる複数の突起を有する。
【0065】
第1の回転制限部81と第2の回転制限部82とは、互いに向かい合う。第1の回転制限部81の複数の突起と、第2の回転制限部82の複数の突起とは、互いに噛み合うことができる。
【0066】
第1の回転制限部81と第2の回転制限部82とが噛み合った状態で、固定部材25は、当該固定部材25と外扇カバー23との間に、調整部材24を保持する。これにより、固定部材25は、調整部材24が外扇カバー23に対して移動及び回転することを制限する。言い換えると、固定部材25は、調整部材24を外扇カバー23に固定する。固定部材25は、第1の位置P1と第2の位置P2との間の所望の位置で、調整部材24を外扇カバー23に固定することができる。
【0067】
固定部材25は、他の手段により調整部材24を外扇カバー23に固定しても良い。例えば、固定部材25は、調整部材24を外扇カバー23に固定するネジ、ビス、又はフックであっても良い。
【0068】
外枠26は、端枠91と、周枠92とを有する。端枠91は、周方向に延びる略円環状に形成される。端枠91は、径方向の外側における調整部材24の外面24bの端部を覆う。周枠92は、端枠91の外縁からおおよそ第1の軸方向Da1に延びる略円筒状に形成される。周枠92は、調整部材24の外縁と外扇カバー23の周壁62の一部とを覆う。
図1に示すように、外枠26は、例えば、ボルト95によって、外扇カバー23の周壁62に取り付けられる。
【0069】
外扇カバー23の端壁61と、調整部材24と、の間に隙間が生じることがある。外枠26は、当該隙間を覆う。これにより、外枠26は、外気の気流が当該隙間を通ることを抑制することができる。
【0070】
上述のように、回転する外扇22は、第1の吸気口71から流路空間Scに外気を吸引する。すなわち、外扇22は、吸気口75(第2の吸気口72及び第1の吸気口71)を通って流路空間Scに流入する外気の気流を生じさせる。
【0071】
気流が吸気口75を通過することで、共鳴による騒音(笛吹音)が発生することがある。共鳴により騒音が発生するか否かは、例えば、気流が通過する吸気口75の面積により決まる。すなわち、吸気口75の面積の変化により、騒音が止まり得る。
【0072】
例えば、本実施形態の回転電機10の据付作業において、調整部材24は、当初、第1の位置P1に配置される。試運転において回転する外扇22により騒音が発生した場合、作業者は、固定部材25による調整部材24の固定を一時的に解除し、調整部材24を外扇カバー23に対して回転させる。調整部材24は、外面24bから突出するとともに作業者に操作されるタブのようなつまみを有しても良い。
【0073】
調整部材24は、第1の位置P1と第2の位置P2との間の所望の位置に配置された後、固定部材25により外扇カバー23に固定される。これにより、第1の吸気口71のうち外部に開放された部分の面積が減少する。発生する騒音が所望の音量を下回るまで、外扇22の回転と調整部材24の移動とが繰り返される。これにより、据え付け作業が行われる現場において、騒音の発生が抑制される。
【0074】
以上説明された実施形態に係る回転電機10において、外扇カバー23は、外扇22を覆い、当該外扇22が配置された流路空間Scと当該流路空間Scの外部とを連通する第1の吸気口71が設けられる。調整部材24は、第1の吸気口71を開放する第1の位置P1と、第1の吸気口71を少なくとも部分的に覆う第2の位置P2と、の間で外扇カバー23に対して移動可能である。すなわち、調整部材24は、第1の位置P1と第2の位置P2との間の任意の位置に配置されることで、第1の吸気口71のうち外部に開放された部分の面積(断面積)を調整することができる。回転する外扇22が第1の吸気口71を通過する気流を生じさせると、当該気流により騒音(笛吹音)が発生する虞がある。当該騒音が発生するか否かは、例えば、気流が通過する第1の吸気口71の面積又は外扇22の形状により決まる。例えば、従来では、外扇カバーの吸気口の面積を拡張する加工が、騒音の発生への対処として用いられる。これに対し、本実施形態の回転電機10は、調整部材24が第1の吸気口71のうち外部に開放された部分の面積を変化させることで、騒音の発生を抑制することができる。また、本実施形態の回転電機10は、調整部材24を移動させることで容易に騒音の発生を抑制できるため、第1の吸気口71の面積を調整する加工時間及びコストを低減することができる。さらに、本実施形態の回転電機10は、回転電機10の据付現場においても、調整部材24を移動させることで容易に騒音の発生を抑制できる。
【0075】
調整部材24は、第1の位置P1と第2の位置P2との間で外扇カバー23に対して回転可能に当該外扇カバー23に取り付けられる。これにより、調整部材24は、単純な移動により第1の吸気口71の面積を調整することができる。また、回転する調整部材24は、例えば上下にスライドする場合に比べて、重力により望まぬ移動をしてしまうことを抑制できる。
【0076】
調整部材24に、第1の吸気口71に連通可能な第2の吸気口72が設けられる。外扇カバー23に設けられた第1の吸気口71と、調整部材24に設けられた第2の吸気口72とは、調整部材24の回転の中心である中心軸Axまわりに延びる。このため、調整部材24は、当該調整部材24の移動量に対する第1の吸気口71の面積の変化を比較的一様にすることができる。従って、調整部材24は、容易に第1の吸気口71の面積を調整することができる。
【0077】
ロータ12の回転軸(中心軸Ax)と調整部材24の回転軸(中心軸Ax)とが、互いに延長線上に位置する。すなわち、調整部材24、ロータ12、シャフト14、及び外扇22とは、同心(同軸)に配置される。これにより、本実施形態の回転電機10は、大型化してしまうことを抑制できる。
【0078】
調整部材24は、外扇カバー23の外部に位置する。さらに、固定部材25は、外扇カバー23の外部に位置し、調整部材24を外扇カバー23に固定する。これにより、作業者は、回転電機10の外部において、調整部材24の移動及び固定を行うことができる。従って、本実施形態の回転電機10は、据付作業を容易にすることができる。
【0079】
以上の実施形態において、外扇22は、フレーム51の外面51b及び放熱フィン54に沿って流れる外気の気流を発生させる。しかし、外扇22はこの例に限られない。例えば、外扇22は、冷却器の冷却管の内部を流れる外気の気流を発生させ、フレーム51の内部の空間から当該冷却器に流入した冷却用気体と外気の気流とを熱交換させても良い。
【0080】
以上の説明において、抑制は、例えば、事象、作用、若しくは影響の発生を防ぐこと、又は事象、作用、若しくは影響の度合いを低減させること、として定義される。また、以上の説明において、制限は、例えば、移動若しくは回転を防ぐこと、又は移動若しくは回転を所定の範囲内で許容するとともに当該所定の範囲を超えた移動若しくは回転を防ぐこと、として定義される。
【0081】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0082】
10…回転電機、11…ステータ、12…ロータ、13…筐体、14…シャフト、22…外扇、23…外扇カバー、24…調整部材、25…固定部材、71…第1の吸気口、72…第2の吸気口、Ax…中心軸、Sc…流路空間、P1…第1の位置、P2…第2の位置。