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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023070424
(43)【公開日】2023-05-19
(54)【発明の名称】接合方法、接合構造及び充填部材
(51)【国際特許分類】
   F16B 39/02 20060101AFI20230512BHJP
   E04B 1/48 20060101ALI20230512BHJP
   F16B 5/02 20060101ALI20230512BHJP
   F16B 43/00 20060101ALI20230512BHJP
   C09J 201/00 20060101ALI20230512BHJP
【FI】
F16B39/02 A
E04B1/48 E
E04B1/48 K
F16B5/02 U
F16B43/00 B
C09J201/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021182593
(22)【出願日】2021-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 和章
(72)【発明者】
【氏名】江村 勝
【テーマコード(参考)】
2E125
3J001
3J034
4J040
【Fターム(参考)】
2E125AA76
2E125AF03
2E125AG12
2E125CA05
2E125CA06
2E125CA09
2E125CA85
3J001FA02
3J001GA02
3J001GB01
3J001HA02
3J001HA07
3J001JA08
3J001JA10
3J001JD12
3J001KA19
3J001KB04
3J034AA09
3J034BA03
3J034BC01
4J040EC001
4J040JA13
4J040JB02
4J040KA16
4J040NA12
4J040PA33
4J040PB22
(57)【要約】
【課題】2剤混合型の接着剤をボルト孔とボルトの隙間に充填する作業を容易にすること。
【解決手段】本開示に係る接合方法は、ベース部材と、前記ベース部材に添接されたプレートとを接合する接合方法である。本件の接合方法は、挿入工程と、締結工程とを有する。挿入工程では、接着剤を構成する第1剤及び第2剤を有する充填部材を、ボルトと前記プレートのボルト孔との隙間に挿入する。締結工程では、前記ボルトにナットを締結することによって、前記ベース部材と前記プレートとを前記ボルトによって接合するとともに、前記充填部材を変形させることによって前記第1剤と前記第2剤とを混合させて、前記隙間に前記接着剤を充填する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部材と、前記ベース部材に添接されたプレートとを接合する接合方法であって、
接着剤を構成する第1剤及び第2剤を有する充填部材を、ボルトと前記プレートのボルト孔との隙間に挿入する挿入工程と、
前記ボルトにナットを締結することによって、
前記ベース部材と前記プレートとを前記ボルトによって接合するとともに、
前記充填部材を変形させることによって前記第1剤と前記第2剤とを混合させて、前記隙間に前記接着剤を充填する、締結工程と、
を有することを特徴とする接合方法。
【請求項2】
請求項1に記載の接合方法であって、
前記充填部材は、保持部材によって前記第1剤と前記第2剤とを分離して保持しており、
前記締結工程において、前記保持部材が変形し、前記保持部材から前記第1剤及び前記第2剤が漏出することによって、前記第1剤と前記第2剤が混合することを特徴とする接合方法。
【請求項3】
請求項2に記載の接合方法であって、
前記保持部材は、繊維部材であり、
前記締結工程において、前記隙間に繊維強化プラスチックを形成することを特徴とする接合方法。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の接合方法であって、
前記挿入工程において、前記充填部材の一端を前記ボルト孔の底に突き当てたときに、前記充填部材の他端が前記ボルト孔の開口から突出することを特徴とする接合方法。
【請求項5】
請求項4に記載の接合方法であって、
前記充填部材の長さは、前記ボルト孔の深さよりも長く、前記ボルトの長さよりも短いことを特徴とする接合方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の接合方法であって、
前記充填部材は、前記ボルトを挿入可能な円筒形状に構成されていることを特徴とする接合方法。
【請求項7】
請求項6に記載の接合方法であって、
前記第1剤と前記第2剤が径方向に分離配置されていることを特徴とする接合方法。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の接合方法であって、
流路を有するワッシャが前記ナットと前記プレートとの間に配置されており、
前記締結工程において、前記接着剤が前記ワッシャの前記流路から外部に漏洩することを特徴とする接合方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の接合方法であって、
前記ボルトは、前記ベース部材に溶接されたスタッドボルトであることを特徴とする接合方法。
【請求項10】
請求項1~8のいずれかに記載の接合方法であって、
前記ボルトは、通しボルトであり、前記ベース部材のボルト孔と前記プレートのボルト孔に挿入されることを特徴とする接合方法。
【請求項11】
請求項1~10のいずれかに記載の接合方法であって、
前記ベース部材と前記プレートとの間に、接着剤を構成する第1剤及び第2剤を有するシート状の別の充填部材を配置するシート配置工程を更に有し、
前記締結工程において、前記ベース部材と前記プレートとの間に働く力によって前記別の充填部材の前記第1剤と前記第2剤とが混合して、前記ベース部材と前記プレートとの間を接着することを特徴とする接合方法。
【請求項12】
ベース部材と、
ボルト孔を有し、前記ベース部材に添接されるプレートと、
前記プレートの前記ボルト孔に挿入され、前記ベース部材と前記プレートとを接合するためのボルトと、
前記ボルトに締結するナットと、
前記ボルトと前記ボルト孔との隙間に挿入する充填部材と、
を備え、
前記充填部材は、接着剤を構成する第1剤及び第2剤を有しており、
前記ナットの締結時に変形した前記充填部材の前記第1剤と前記第2剤とを混合させた前記接着剤が、前記隙間に充填されることを特徴とする接合構造。
【請求項13】
接着剤を構成する第1剤及び第2剤を有し、
ベース部材とプレートとを接合するためのボルトと、前記プレートのボルト孔との隙間に挿入可能であり、
前記ボルトにナットを締結するときに力を受けて変形することによって、前記第1剤と前記第2剤とを混合させて前記隙間に前記接着剤を充填可能である
ことを特徴とする充填部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合方法、接合構造及び充填部材に関する。
【背景技術】
【0002】
高力ボルトを用いた摩擦接合では、製造誤差や取付誤差を考慮して、プレートのボルト孔は、ボルトの径よりも大きくすることが行われている。ボルト孔がボルトの径より大きいと、ボルト孔とボルトとの間に隙間が形成され、この結果、プレートのせん断ズレやナットの緩みが生じるおそれがある。このようなせん断ズレやナットの緩みを防止するため、特許文献1には、ボルト孔とボルトの隙間に接着剤を注入することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8-232939号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
主剤と硬化剤を混合して使用する2剤混合型の接着剤をボルト孔とボルトの隙間に注入する場合、適切な配合比率で混合する必要があるため、作業に熟練を要し、作業性が悪くなるおそれがある。
【0005】
本発明は、2剤混合型の接着剤をボルト孔とボルトの隙間に充填する作業を容易にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するための本発明は、ベース部材と、前記ベース部材に添接されたプレートとを接合する接合方法であって、接着剤を構成する第1剤及び第2剤を有する充填部材を、ボルトと前記プレートのボルト孔との隙間に挿入する挿入工程と、前記ボルトにナットを締結することによって、前記ベース部材と前記プレートとを前記ボルトによって接合するとともに、前記充填部材を変形させることによって前記第1剤と前記第2剤とを混合させて、前記隙間に前記接着剤を充填する、締結工程と、を有することを特徴とする接合方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、2剤混合型の接着剤をボルト孔とボルトの隙間に充填する作業が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本実施形態の接合構造100の斜視図である。
図2図2Aは、ナット締結前の接合構造100の概略説明図である。図2Bは、ナット締結後の接合構造100の概略説明図である。
図3図3は、ワッシャ50の斜視図である。
図4図4Aは、第1剤61及び第2剤62の配置例の説明図である。図4B及び図4Cは、第1剤61及び第2剤62の別の配置例の説明図である。
図5図5A図5Dは、図4Aに示す充填部材60の製造方法の説明図である。
図6図6A及び図6Bは、第1変形例の接合構造100の概略説明図である。
図7図7A及び図7Bは、第2変形例の接合構造100の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
後述する明細書及び図面の記載から、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0010】
ベース部材と、前記ベース部材に添接されたプレートとを接合する接合方法であって、接着剤を構成する第1剤及び第2剤を有する充填部材を、ボルトと前記プレートのボルト孔との隙間に挿入する挿入工程と、前記ボルトにナットを締結することによって、前記ベース部材と前記プレートとを前記ボルトによって接合するとともに、前記充填部材を変形させることによって前記第1剤と前記第2剤とを混合させて、前記隙間に前記接着剤を充填する、締結工程と、を有することを特徴とする接合方法が明らかとなる。このような接合方法によれば、2剤混合型の接着剤をボルト孔とボルトの隙間に充填する作業が容易になる。
【0011】
前記充填部材は、保持部材によって前記第1剤と前記第2剤とを分離して保持しており、前記締結工程において、前記保持部材が変形し、前記保持部材から前記第1剤及び前記第2剤が漏出することによって、前記第1剤と前記第2剤が混合することが望ましい。これにより、2剤混合型の接着剤をボルト孔とボルトの隙間に充填する作業が容易になる。
【0012】
前記保持部材は、繊維部材であり、前記締結工程において、前記隙間に繊維強化プラスチックを形成することが望ましい。これにより、支圧接合の耐力を向上させることができる。
【0013】
前記挿入工程において、前記充填部材の一端を前記ボルト孔の底に突き当てたときに、前記充填部材の他端が前記ボルト孔の開口から突出することが望ましい。これにより、ナット締結時に充填部材に力を付与できる。
【0014】
前記充填部材の長さは、前記ボルト孔の深さよりも長く、前記ボルトの長さよりも短いことが望ましい。これにより、充填部材の上端から突出したボルトにナットを取り付けることができ、ナット締結時に充填部材に力を付与できる。
【0015】
前記充填部材は、前記ボルトを挿入可能な円筒形状に構成されていることが望ましい。これにより、ボルトに案内させながら充填部材を隙間に挿入することができるため、挿入工程の作業が容易になる。
【0016】
前記第1剤と前記第2剤が径方向に分離配置されていることが望ましい。これにより、充填部材の製造が容易になる。
【0017】
流路を有するワッシャが前記ナットと前記プレートとの間に配置されており、前記締結工程において、前記接着剤が前記ワッシャの前記流路から外部に漏洩することが望ましい。これにより、隙間に接着剤が充填されたことを確認できる。
【0018】
前記ボルトは、前記ベース部材に溶接されたスタッドボルトであることが望ましい。若しくは、前記ボルトは、通しボルトであり、前記ベース部材のボルト孔と前記プレートのボルト孔に挿入されることが望ましい。
【0019】
前記ベース部材と前記プレートとの間に、接着剤を構成する第1剤及び第2剤を有するシート状の別の充填部材を配置するシート配置工程を更に有し、前記締結工程において、前記ベース部材と前記プレートとの間に働く力によって前記別の充填部材の前記第1剤と前記第2剤とが混合して、前記ベース部材と前記プレートとの間を接着することが望ましい。これにより、ベース部材とプレートとの摩擦接合の耐力を向上させることができる。
【0020】
ベース部材と、ボルト孔を有し前記ベース部材に添接されるプレートと、前記プレートの前記ボルト孔に挿入され、前記ベース部材と前記プレートとを接合するためのボルトと、前記ボルトに締結するナットと、前記ボルトと前記ボルト孔との隙間に挿入する充填部材と、を備え、前記充填部材は、接着剤を構成する第1剤及び第2剤を有しており、前記ナットの締結時に変形した前記充填部材の前記第1剤と前記第2剤とを混合させた前記接着剤が、前記隙間に充填されることを特徴とする接合構造が明らかとなる。このような接合構造によれば、2剤混合型の接着剤をボルト孔とボルトの隙間に充填する作業が容易になる。
【0021】
接着剤を構成する第1剤及び第2剤を有し、ベース部材とプレートとを接合するためのボルトと、前記プレートのボルト孔との隙間に挿入可能であり、前記ボルトにナットを締結するときに力を受けて変形することによって、前記第1剤と前記第2剤とを混合させて前記隙間に前記接着剤を充填可能であることを特徴とする充填部材が明らかとなる。このような充填部材によれば、2剤混合型の接着剤をボルト孔とボルトの隙間に充填する作業が容易になる。
【0022】
===実施形態===
図1は、本実施形態の接合構造100の斜視図である。図2Aは、ナット締結前の接合構造100の概略説明図である。図2Bは、ナット締結後の接合構造100の概略説明図である。
【0023】
本実施形態の接合構造100は、ベース部材10と、プレート20と、ボルト30と、ナット40と、充填部材60とを有する。以下の説明では、ボルト30の軸に平行な方向のことを「厚さ方向」又は「軸方向」と呼ぶことがある。
【0024】
ベース部材10は、接合対象となる部材である。ベース部材10は、母材と呼ばれることもある。ここでは、ベース部材10は、H型鋼や鋼板などの鋼材である。但し、ベース部材10は、鋼材に限られるものではなく、例えば基礎コンクリートでも良い。
【0025】
プレート20は、ベース部材10に添接させる板状の部材である。プレート20は、添接板、あて板、補強板などと呼ばれることもある。ここでは、プレート20は、鋼材に添接される鋼製の添接板である。
プレート20は、ボルト孔21を有する。ボルト孔21は、ボルトを挿通させるための孔であり、プレート20の厚さ方向に貫通する孔(貫通孔)である。ボルト孔21は、ルーズホールと呼ばれることもある。図2Aには、ボルト孔21の直径がD0として示されている。
【0026】
ボルト30は、ネジ部31を有する棒状の部材である。ボルト30は、ナット40とともに、ベース部材10とプレート20とを接合する接合部材となる。ここでは、ボルト30は、高力スタッドボルトで構成されており、端部(ここでは図中の上端)にネジ部31(雄ネジ)が設けられている。ボルト30(高力スタッドボルト)の一端(図中の下端)は、母材となるベース部材10に溶接されている。なお、ボルト30は、スタッドボルトに限られるものではなく、溶接でベース部材10に固定されていなくても良い。例えば、ボルト30は、基礎コンクリート(ベース部材10)に設けられたアンカーボルトでも良い。また、ボルト30の端部はベース部材10に固定されていなくても良く、例えば、ボルト30は、通しボルト(後述)でも良い。以下の説明では、ナット40が取り付けられる側のボルト30の端部のことを「先端」と呼び、逆側の端部のことを「基端」と呼ぶことがある。
ボルト30は、プレート20のボルト孔21に挿通されている。ここでは、ボルト30の基端(図中の下端)はベース部材10に固定されており、ボルト30の先端(図中の上端)はボルト孔21の開口から突出している。ここでは、ボルト30の基端には、溶融した金属によるカラー32(フラッシュ)が形成されている。カラー32が形成される部位にはネジ部31は設けられていない。なお、ボルト30の全長にネジ部31が設けられても良い。図2Aには、ボルト30のネジ部31の直径がD1として示されている。また、図2Aには、ボルト30の基端(カラー32)の直径がD2として示されている。ボルト30の基端の直径D2は、ネジ部31の直径D1よりも大きい。
【0027】
図に示すように、ボルト30の直径D1,D2は、プレート20のボルト孔21の直径D0よりも小さい。なお、ボルト孔21の直径をD0、ボルト30のネジ部31の直径をD1、ボルト30のカラー32の直径をD2とすると、D0>D1であり、且つ、D0>D2である。このため、ボルト30とボルト孔21との間には、隙間が形成されることになる。後述するように、本実施形態では、図2Bに示すように、ボルト30とボルト孔21との隙間には接着剤が充填される。ボルト30とボルト孔21との間に接着剤が充填されることによって、摩擦接合による力の伝達だけでなく支圧接合による力の伝達ができるため、摩擦接合を超える耐力を実現できるため、効率の良い接合構造となる。
【0028】
ナット40は、ボルト30の先端に取り付けられる部材である。ナット40は、ボルト30とともに、ベース部材10とプレート20とを接合する接合部材となる。ナット40を締結することによって、ベース部材10とプレート20とがボルト接合されることになる。すなわち、ナット40をボルト30に締結することによってボルト30に軸力が働き、ベース部材10とプレート20との間に作用する摩擦力によってベース部材10とプレート20とが摩擦接合されることになる。なお、後述するように、ナット40は、充填部材60に力(圧縮力やトルク)を付与して、充填部材60を変形させる機能も有する。
【0029】
本実施形態では、ナット40とプレート20との間にワッシャ50が配置されている。ワッシャ50は、座金と呼ばれることもある。なお、接合構造100にワッシャ50が用いられていなくても良い。但し、ワッシャ50を用いることにより、ナット40の緩みを防止することができる。
【0030】
図3は、ワッシャ50の斜視図である。本実施形態のワッシャ50は、流路51を有する。流路51は、接着剤(図2B参照)の通路を構成する部位である。ここでは、流路51は、放射状の溝として形成されている。但し、流路51は、放射状でなくても良いし、溝に限られるものでもない。例えば、流路51は、厚さ方向に貫通する貫通孔でも良い。なお、ワッシャ50に流路51が設けられていなくても良い。但し、ワッシャ50に流路51を設け、図2Bに示すように流路51から接着剤(第1剤61及び第2剤62)が漏洩することによって、ボルト30とボルト孔21との隙間に接着剤(充填剤)が充填されたことを確認することが可能になる。
【0031】
充填部材60は、ボルト30とボルト孔21との隙間に接着剤(充填剤)を充填するための部材である。充填部材60は、第1剤61と、第2剤62と、保持部材63とを有する。
【0032】
第1剤61及び第2剤62は、2剤混合型(2液混合型)の接着剤(充填剤)を構成する部材である。ここでは、接着剤は、主剤(本剤)を第1剤61とし、硬化剤を第2剤62とする2剤混合型のエポキシ樹脂系接着剤で構成されている。本実施形態では、ナット40により密閉される空間(ボルト孔21の内部空間)に充填した接着剤を硬化させるため、2剤混合型(2液混合型)の接着剤が採用されている。接着剤を構成する第1剤61及び第2剤62は、液状に限られるものでは無く、粘土状、ゲル状でも良い(このため、本明細書では、2液混合型と呼ばずに、2剤混合型と呼んでいる)。充填部材60は、所定の配合比で構成された第1剤61及び第2剤62を有している。これにより、接合現場で第1剤61及び第2剤62を所定比率で配合する作業が不要になるため、接合作業の作業性を向上させることができる。
【0033】
保持部材63は、第1剤61及び第2剤62を保持する部材である。保持部材63が第1剤61及び第2剤62を所定の形状(ここでは円筒形状)で保持するため、液状の接着剤を充填する作業と比べると、充填作業の作業性を向上させることができる。例えば、本実施形態の充填部材60を用いれば、横向きや上向きに接着剤(充填剤)を充填する作業が容易になる。なお、保持部材63は、第1剤61と第2剤62を分離した状態で保持している(図2A参照)。また、保持部材63は、力を受けたときに第1剤61及び第2剤62を漏出可能に、第1剤61及び第2剤62を保持している。これにより、ナット40の締結によって充填部材60(保持部材63)が変形すると、分離状態の第1剤61と第2剤62とを混合させることができる。この結果、第1剤61と第2剤62とが反応し、接着剤(充填剤)が硬化することになる(図2B参照)。
【0034】
本実施形態では、保持部材63は、ナット40の締結時に、圧縮力及びトルク(ねじり力)を受けることになる。保持部材63が圧縮力だけでなくトルクも受けるように構成すれば、保持部材63は、ナット40の締結時に、圧縮変形だけでなく捻り変形する。これにより、保持部材63が第1剤61及び第2剤62を絞り出すように変形するため、分離状態の第1剤61と第2剤62とを混合させ易くなる。なお、保持部材63がトルクを受け易くするために、保持部材63の端部は、ベース部材10やワッシャ50に引っ掛かり易い形状であることが望ましい。例えば、保持部材63の端部(環状の縁)を凹凸形状にすれば、保持部材63の端部がベース部材10やワッシャ50に引っ掛かり易くなる。但し、保持部材63が受ける力が圧縮力だけであっても、保持部材63が圧縮変形することによって、第1剤61及び第2剤62を漏出可能である。
【0035】
ここでは、保持部材63は、繊維部材で構成されている。例えば、保持部材63は、炭素繊維又はガラス繊維で構成された繊維シートである。保持部材63が繊維部材で構成されることによって、ボルト30とボルト孔21との隙間に繊維強化プラスチック(FRP:Fiber Reinforced Plastics)を形成することができ、支圧接合の耐力を向上させることができる。但し、保持部材63は、第1剤61及び第2剤62を所定の形状で保持できれば、繊維部材でなくても良い。例えば、保持部材63は、第1剤61及び第2剤62を分離して収容可能な収容部材で構成されても良い。
【0036】
充填部材60は、円筒形状に構成されており、ボルト30を挿入可能である。これにより、充填部材60をボルト30で案内させながら、充填部材60をボルト30とボルト孔21との隙間に挿入することができるため、充填部材60を挿入する作業が容易になる。なお、充填部材60は、円筒形状に構成されたものに限られない。例えば、充填部材60は、断面C字形状に構成されても良いし、筒状に変形可能な柔軟性のあるシート状に構成されても良い。
【0037】
円筒形状の充填部材60の内径は、ボルト30の直径D1よりも大きい。これにより、充填部材60にボルト30を挿入することが可能である。また、円筒形状の充填部材60の外径は、ボルト孔21の直径D0よりも小さい。このため、図2Aに示すように、円筒形状の充填部材60をボルト30とボルト孔21との隙間に挿入することが可能である。なお、ここでは、円筒形状の充填部材60の内径は、ボルト30のカラー32の直径D2よりも大きい。但し、円筒形状の充填部材60の内径は、ボルト30のカラー32の直径D2より小さくても良い。
【0038】
また、円筒形状の充填部材60の長さL1(軸方向の寸法;厚さ方向の寸法)は、ボルト孔21の深さL0(ボルト孔21の厚さ方向の寸法;ここではプレート20の厚さに相当)よりも長い。このため、図2Aに示すように、ナット40の締結前の段階において、充填部材60の一端がボルト孔21の底(充填部材60の一端が突き当たる部位;ここではベース部材10の上面)に突き当たるまで充填部材60をボルト30とボルト孔21との隙間に挿入したとき、充填部材60の他端(図中の上端)は、ボルト孔21の開口から突出する。なお、ボルト孔21からの充填部材60の突出量が、ナット締結時の充填部材60の圧縮変形量に相当することになる。つまり、円筒形状の充填部材60の長さL1と、ボルト孔21の深さL0との差(=L1-L0)が、ナット締結時の充填部材60の圧縮変形量に相当することになる。
また、円筒形状の充填部材60の長さL1は、ボルト30の長さよりも短い。このため、図2Aに示すように、充填部材60をボルト30とボルト孔21との隙間に挿入したときに、ボルト30の先端(図中の上端)は、充填部材60の上端側の開口から突出する。これにより、充填部材60の上端から突出したボルト30(ネジ部31)にワッシャ50及びナット40を取り付けることが可能である。また、これにより、充填部材60は、ナット40の締結時に力(圧縮力やトルク)を受けることが可能になる。
【0039】
充填部材60は、変形可能な部材である。充填部材60が厚さ方向(円筒形状の充填部材60の軸方向)に圧縮変形することによって、充填部材60に保持された第1剤61と第2剤62とが混合することになる。また、充填部材60は、捻り変形することが望ましい。これにより、充填部材60が第1剤61及び第2剤62を絞り出すように変形するため、分離状態の第1剤61と第2剤62とを混合させ易くなる。また、円筒形状の充填部材60は、径方向にも変形可能であることが望ましい。これにより、ボルト30がボルト孔21に対して偏心した状態であっても、ボルト30とボルト孔21との隙間に充填部材60を挿入し易くなる。
【0040】
図4Aは、第1剤61及び第2剤62の配置例の説明図である。図4A(及び図2A)に示す配置例では、円筒形状の充填部材60の内層(径方向内側の層)に第1剤61が配置されており、外層(径方向外側の層)に第2剤62が配置されている。なお、円筒形状の充填部材60の外層に第1剤61が配置され、内層に第2剤62が配置されても良い。また、第1剤61の層と第2剤62の層が径方向に交互に並ぶように、第1剤61及び第2剤62が径方向に多層配置されても良い。
【0041】
なお、円筒形状の部材が軸方向の圧縮力を受けたときに、円筒形状の部材が外側又は内側に交互に変形して軸方向に波打つように座屈する変形モードがある。径方向に第1剤61と第2剤62を分離配置する形態は、この変形モードで円筒形状の充填部材60が座屈したときに第1剤61と第2剤62とを混合させ易くなる。また、次に説明する通り、径方向に第1剤61と第2剤62を分離配置した充填部材60の製造は容易である。
【0042】
図5A図5Dは、図4Aに示す充填部材60の製造方法の説明図である。
【0043】
図5Aに示すように、円柱部材70を用意し、円柱部材70の外周に第1剤61を塗布する。なお、後の工程で第1剤61を剥離させやすいように、円柱部材70の外周には予めコーティングが施されている。
円柱部材70の外周に第1剤61を塗布した後、図5Bに示すように、円柱部材70に繊維部材を巻き付けることによって保持部材63を形成する。このとき、第1剤61は保持部材63の内周部(内層)に浸透し、保持部材63に保持されることになる。また、第1剤61が浸透した領域よりも更に外側に、繊維部材を巻き付ける。第1剤61が浸透した領域よりも外周部(外層)に巻き付けられた繊維部材は、第2剤62を保持する部位になる。
円柱部材70に繊維部材を巻き付けることによって、保持部材63が完成する。保持部材63の完成後(円柱部材70に繊維部材を巻き付け後)、図5Cに示すように、保持部材63の外周部に第2剤62を塗布する。このとき、第2剤62は、保持部材63の外周部に浸透し、保持部材63に保持されることになる。
保持部材63の外周に第2剤62を塗布した後、図5Dに示すように、円柱部材70から円筒形状の充填部材60を取り出す。なお、円柱部材70から充填部材60を取り出し易くするために、第1剤61を塗布する前の円柱部材70の外周に予めコーティングが施されている。円柱部材70から充填部材60を取り出すことによって、第1剤61及び第2剤62が径方向に分離配置された円筒形状の充填部材60が製造されることになる。
【0044】
なお、充填部材60の製造方法は、図5A図5Dに示す方法に限られるものではない。例えば、第1剤61の塗布と、繊維部材の巻き付けとを同時に行っても良いし、交互に行っても良い。また、繊維部材の巻き付けと、第2剤62の塗布とを同時に行っても良いし、交互に行っても良い。また、円筒形状の保持部材63を用意し、円筒形状の保持部材63の内周面に第1剤61(又は第2剤62)を塗布するとともに、円筒形状の保持部材63の外周面に第2剤62(又は第1剤61)を塗布することによって、第1剤61及び第2剤62が径方向に分離配置された円筒形状の充填部材60を製造しても良い。
【0045】
図4Bは、第1剤61及び第2剤62の別の配置例の説明図である。図4Bに示す配置例では、円筒形状の充填部材60の軸方向(厚さ方向)に沿って第1剤61と第2剤62とが交互に積層配置されている。このように、第1剤61と第2剤62は、径方向に分離配置するものに限らず、軸方向(厚さ方向)に分離配置しても良い。なお、軸方向に第1剤61と第2剤62を分離配置した形態は、径方向に第1剤61と第2剤62を分離配置した形態と比べて、充填部材60の製造工程が複雑になると考えられる。一方、ナット締結時に充填部材60は軸方向の圧縮力を受けるため、軸方向に第1剤61と第2剤62を分離配置する形態は、充填部材60が軸方向に圧縮変形したときに第1剤61と第2剤62とを混合させ易くなる形態だと考えられる。
【0046】
図4Cは、第1剤61及び第2剤62の別の配置例の説明図である。図4Bに示す配置例では、マイクロカプセル入りの第2剤62(又は第1剤61)が第1剤61(又は第2剤62)に混合されている。このように、第1剤61と第2剤62が積層配置されていなくても良い。この配置例では、カプセルによって第1剤61と第2剤62とが分離されている。なお、この配置例の場合、ナット締結時に繊維部材によってカプセルが破壊されることによって、若しくは、ナット締結時の流動時にカプセルが変形して破壊されることによって、第1剤61と第2剤62とが混合する。
【0047】
上記の通り、本実施形態の接合構造100は、ベース部材10と、プレート20と、ボルト30と、ナット40と、充填部材60とを有する。充填部材60は、接着剤を構成する第1剤61及び第2剤62を有しており、ボルト30とボルト孔21との隙間に挿入可能であり、ナット40の締結時に変形した充填部材60の第1剤61と第2剤62とを混合させた接着剤が隙間に充填される。本実施形態の接合構造100によれば、摩擦接合による力の伝達だけでなく、支圧接合による力の伝達が可能になる。このため、本実施形態の接合構造100は、摩擦接合を超える耐力を実現できるため、効率の良い接合構造となる。加えて、本実施形態によれば、充填部材60を用いることによって、2剤混合型の接着剤をボルト孔とボルトの隙間に充填する作業が容易になるため、接合作業が容易になる。
【0048】
また、本実施形態の充填部材60は、接着剤を構成する第1剤61及び第2剤62を有し、ボルト30とボルト孔21との隙間に挿入可能であり、ボルト30にナット40を締結するときに力を受けて変形することによって、第1剤61と第2剤62とを混合させて隙間に接着剤を充填可能である。このような充填部材60を用いることによって、2剤混合型の接着剤をボルト孔とボルトの隙間に充填する作業が容易になる。
【0049】
更に、本実施形態では、保持部材63が繊維部材で構成されているため、第1剤61と第2剤62とが硬化すると、保持部材63(繊維部材)とともに繊維強化プラスチック(FRP)が形成される。ボルト30とボルト孔21との隙間に繊維強化プラスチックが形成されることによって、単に接着剤を硬化させた場合と比べて、支圧接合の耐力を向上させることができる。
【0050】
<接合方法>
次に、本実施形態の接合方法(接合構造100の製造方法)について説明する。
【0051】
図1の左側に示すように、作業者は、ベース部材10にプレート20を添接させ、プレート20のボルト孔21にボルト30を挿通させる。ここでは、ベース部材10にボルト30(高力スタッドボルト)が溶接されており、ベース部材10に基端が予め固定されたボルト30をプレート20に挿通させる。これにより、図1の左側に示すように、ボルト30の先端は、プレート20のボルト孔21から突出した状態になる。ボルト30の直径D1,D2はプレート20のボルト孔21の直径D0よりも小さいため、プレート20のボルト孔21にボルト30を挿通させたとき、ボルト30とボルト孔21との間に隙間が形成されることになる。
【0052】
次に、図1の左側及び図2Aに示すように、作業者は、ボルト30とボルト孔21との隙間に充填部材60を挿入する(挿入工程)。既に説明した通り、充填部材60には所定の配合比で第1剤61及び第2剤62が構成されているため、作業者は、第1剤61及び第2剤62を所定の配合比率にして隙間に充填する作業を容易に行うことができる。また、既に説明した通り、充填部材60の保持部材63に第1剤61及び第2剤62が保持されているため、仮に横向きや上向きに接着剤(充填剤)を充填するような場合であっても、作業者は、ボルト30とボルト孔21との隙間に第1剤61及び第2剤62を充填する作業を容易に行うことができる。更に、本実施形態では充填部材60が円筒形状に構成されているので、充填部材60をボルト30で案内させながら、充填部材60をボルト30とボルト孔21との隙間に挿入することができるため、充填部材60を挿入する作業が容易になる。
【0053】
なお、充填部材60の長さL1(軸方向の寸法;厚さ方向の寸法)は、ボルト孔21の深さL0(ボルト孔21の厚さ方向の寸法;ここではプレート20の厚さに相当)よりも長いため、作業者が充填部材60をボルト30とボルト孔21との隙間に挿入すると、図2Aに示すように、充填部材60の一端(図中の上端)は、ボルト孔21の開口から突出した状態になる。また、充填部材60の長さL1は、ボルト30の長さよりも短いため、作業者が充填部材60にボルト30を挿入すると、ボルト30の先端(図中の上端)は、充填部材60の上端側の開口から突出した状態になる。ボルト孔21からの充填部材60の突出量は、ナット締結時の充填部材60の圧縮変形量に相当することになる。このため、充填部材60が長すぎる場合には、作業者は、充填部材60の長さL1とボルト孔21の深さL0との差(ボルト孔21からの充填部材60の突出量に相当;ナット締結時の充填部材60の圧縮変形量に相当)が所定の長さになるように、充填部材60を所定の長さにカットした上で、ボルト30とボルト孔21との隙間に充填部材60を挿入する。
【0054】
充填部材60を隙間に挿入した後、図2Aに示すように、作業者は、充填部材60から突出したボルト30の先端に、ボルト30の先端にワッシャ50及びナット40を取り付ける。これにより、充填部材60は、ボルト孔21の底(充填部材60の一端が突き当たる部位;ここではベース部材10の上面)とナット40(ワッシャ50)との間に挟まれた状態になる。
【0055】
次に、作業者は、ナット40を締結する(締結工程)。ナット40が締結されることによって、ベース部材10とプレート20とがボルト接合されることになる。すなわち、ナット40をボルト30に締結することによってボルト30に軸力が働き、ベース部材10とプレート20との間に作用する摩擦力によってベース部材10とプレート20とが摩擦接合される。
【0056】
また、充填部材60の端部がボルト孔21の開口から突出しているため、充填部材60は、ナット40を締結するときに力を受けて変形する。なお、ナット40を締結すると、ナット40がベース部材10に向かって移動するため、これにより、充填部材60は、ワッシャ50を介して軸方向(厚さ方向)の圧縮力を受けて、圧縮変形することになる。また、ナット40を締結するときに、充填部材60は、ワッシャ50を介してトルクを受けて、捻り変形することになる。充填部材60が変形することによって、分離状態で保持されていた第1剤61と第2剤62とが混合する。
【0057】
ところで、図2Aに示すように、ナット締結前の段階では、第1剤61及び第2剤62は、互いに分離した状態で保持部材63に保持されている。そして、ナット40の締結時に充填部材60が力を受けると、保持部材63が変形し、第1剤61及び第2剤62が絞り出されるように保持部材63から漏出し、これにより、第1剤61と第2剤62とが混合する。但し、第1剤61及び第2剤62が保持部材63から漏出する形態とは異なる形態で、第1剤61と第2剤62とが混合しても良い。例えば、図4Cに示すようにカプセルによって第1剤61と第2剤62とが分離されている場合、ナット締結時に繊維部材によってカプセルが破壊されることによって、若しくは、ナット締結時の第1剤61(又は第2剤62)の流動によってカプセルが変形して破壊されることによって、第1剤61と第2剤62とが混合しても良い。
【0058】
ナット締結時に、図2Bに示すように、ワッシャ50の流路51から接着剤(第1剤61及び第2剤62)が漏洩する。作業者は、接着剤が流路51を通じて外部に漏洩したこと確認することによって、ボルト30とボルト孔21との隙間に接着剤(充填剤)が充填されたことを確認することができる。これにより、接合構造100の品質確認を行うことができる。
【0059】
ボルト30とボルト孔21との隙間で第1剤61と第2剤62とが混合すると、第1剤61と第2剤62とが反応し、2剤混合型の接着剤(充填剤)が硬化する。2剤混合型の接着剤(充填剤)が採用されているため、ナット40により密閉された空間(ボルト孔21の内部空間)でも硬化し易い。接着剤が硬化することによって、本実施形態の接合構造100が完成する(接合構造100が製造される)。
【0060】
上記の通り、本実施形態の接合方法では、ボルト30とボルト孔21との隙間に充填部材60を挿入する挿入工程と、ボルト30にナット40を締結する締結工程とが行われる。締結工程では、ベース部材10とプレート20がボルト30によって接合(ボルト接合;摩擦接合)されることになる。また、本実施形態では、締結工程において、充填部材60を変形させることによって第1剤61と第2剤62とを混合させて、隙間に接着剤を充填している。これにより、支圧接合の耐力を向上させることができる。すなわち、本実施形態の接合方法によれば、摩擦接合による力の伝達だけでなく、支圧接合による力の伝達が可能になる。このため、本実施形態の接合方法は、摩擦接合を超える耐力を実現できるため、効率の良い接合構造を実現できる。加えて、本実施形態の接合方法によれば、充填部材60を用いることによって、2剤混合型の接着剤をボルト孔とボルトの隙間に充填する作業が容易になるため、接合作業が容易になる。
【0061】
<変形例>
図6A及び図6Bは、第1変形例の接合構造100の概略説明図である。図6Aは、ナット締結前の接合構造100の概略説明図である。図6Bは、ナット締結後の接合構造100の概略説明図である。
【0062】
第1変形例においても、接合構造100は、ベース部材10と、プレート20と、ボルト30と、ナット40と、充填部材60とを有する。第1変形例では、ボルト30は、通しボルトで構成されている(このため、ボルト30の一端はベース部材10に溶接されていない)。第1変形例では、ベース部材10にもボルト孔11が設けられている。ボルト30は、ベース部材10の側(プレート20とは反対側)から差し込まれており、ベース部材10及びプレート20のそれぞれのボルト孔11,21に挿通されている。
【0063】
円筒形状の充填部材60の長さL1’(軸方向の寸法;厚さ方向の寸法)は、ボルト孔11,21の深さL0’(ボルト孔11,21の厚さ方向の寸法:ここではベース部材10及びプレート20の厚さに相当)よりも長い。このため、図6Aに示すように、ナット40の締結前の段階において、充填部材60の一端がボルト孔11,21の底(充填部材60の一端が突き当たる部位;ここではボルト30の座面)に突き当たるまで充填部材60をボルト30とボルト孔11,21との隙間に挿入したとき、充填部材60の他端(図中の上端)は、ボルト孔21の開口から突出する。
【0064】
第1変形例においても、ナット40を締結すると、充填部材60は、ワッシャ50を介して力(圧縮力やトルク)を受ける。ナット40の締結時に充填部材60が力を受けると、充填部材60が変形し、分離状態で保持されていた第1剤61と第2剤62とが混合し、第1剤61と第2剤62とが反応し、2剤混合型の接着剤(充填剤)が硬化する。これにより、第1変形例の接合構造100が完成する(接合構造100が製造される)。第1変形例においても、充填部材60を用いることによって、2剤混合型の接着剤をボルト孔とボルトの隙間に充填する作業が容易になるため、接合作業が容易になる。
【0065】
図7A及び図7Bは、第2変形例の接合構造100の概略説明図である。図7Aは、ナット締結前の接合構造100の概略説明図である。図7Bは、ナット締結後の接合構造100の概略説明図である。
【0066】
第2変形例においても、接合構造100は、ベース部材10と、プレート20と、ボルト30と、ナット40と、充填部材60(第1の充填部材)とを有する。また、第2変形例の接合構造100は、更に別の充填部材60’(第2の充填部材)を有する。この充填部材60’は、ベース部材10とプレート20との間に配置される部材である。この充填部材60’も、前述の充填部材60と同様に、2剤混合型の接着剤を構成する第1剤61’及び第2剤62’を有する。但し、充填部材60’は、前述の円筒形状の充填部材60とは異なり、平坦なシート状の部材である。第2変形例の接合方法では、ベース部材10とプレート20との間にシート状の充填部材60’を配置する工程(シート配置工程)が行われた後に、ボルト30とボルト孔21との隙間に充填部材60を挿入する挿入工程と、ボルト30にナット40を締結する締結工程とが行われることになる。
【0067】
第2変形例においても、ナット40を締結すると、充填部材60(第1の充填部材)が力(圧縮力やトルク)を受けて変形し、分離状態で保持されていた第1剤61と第2剤62とが混合する。また、第2変形例では、ナット40を締結すると、充填部材60’(第2の充填部材)がベース部材10とプレート20との間に働く圧縮力を受けて、第1剤61’及び第2剤62’が絞り出されるように漏出し、これにより、第1剤61’と第2剤62’とがベース部材10とプレート20との間で混合する。なお、ベース部材10とプレート20との間で漏出した接着剤(第1剤61’及び第2剤62’)の一部は、ボルト孔21に漏洩しても良い。ナット40の締結によって第1剤61’と第2剤62’とが反応し、2剤混合型の接着剤(充填剤)が硬化する。これにより、第2変形例の接合構造100が完成する(接合構造100が製造される)。第2変形例においても、ボルト30とボルト孔21との隙間で接着剤(充填剤)が硬化することによって、摩擦接合による力の伝達だけでなく、支圧接合による力の伝達が可能になる。また、第2変形例では、ベース部材10とプレート20との摩擦接合の耐力が向上するため、更に効率の良い接合構造となる。加えて、第2変形例では、充填部材60、60’を用いることによって、2剤混合型の接着剤を用いた接合作業が容易になる。
【0068】
===その他の実施形態===
以上、上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0069】
10 ベース部材、11 ボルト孔、
20 プレート、21 ボルト孔、
30 ボルト、31 ネジ部、32 カラー、
40 ナット、50 ワッシャ、51 流路、
60 充填部材、60’充填部材、
61 第1剤、62 第2剤、
63 保持部材、
70 円柱部材、
100 接合構造
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7