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特開2023-70428信号処理装置、受信装置、通信端末、基地局、通信システム、信号処理方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023070428
(43)【公開日】2023-05-19
(54)【発明の名称】信号処理装置、受信装置、通信端末、基地局、通信システム、信号処理方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04B 17/318 20150101AFI20230512BHJP
   H04W 24/06 20090101ALI20230512BHJP
【FI】
H04B17/318
H04W24/06
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021182602
(22)【出願日】2021-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】501440684
【氏名又は名称】ソフトバンク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(74)【代理人】
【識別番号】100128691
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 弘通
(72)【発明者】
【氏名】木村 翔
(72)【発明者】
【氏名】表 英毅
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 彰弘
(72)【発明者】
【氏名】林 合祐
(72)【発明者】
【氏名】田中 翔馬
(72)【発明者】
【氏名】山里 敬也
(72)【発明者】
【氏名】中島 康雄
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067EE02
5K067EE10
5K067EE34
(57)【要約】
【課題】受信信号の電力変化プロファイルの測定において雑音電力の影響を低減して測定精度を高めることができる信号処理装置を提供する。
【解決手段】信号処理装置は、周期的に送信される対象信号の電波を受信した受信信号を処理する。信号処理装置は、前記受信信号の受信電力の変化を示す電力変化プロファイルの複数の測定点のそれぞれについて、前記対象信号の受信信号を繰り返し受信して得られた複数の受信波形プロファイルの平均化処理を行って平均受信波形プロファイルを生成する平均化処理部と、前記複数の測定点のそれぞれについて、前記平均受信波形プロファイルに基づいて前記受信信号の受信電力を計算する電力計算部とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周期的に送信される対象信号の電波を受信した受信信号を処理する信号処理装置であって、
前記受信信号の受信電力の変化を示す電力変化プロファイルの複数の測定点のそれぞれについて、前記対象信号の受信信号を繰り返し受信して得られた複数の受信波形プロファイルの平均化処理を行って平均受信波形プロファイルを生成する平均化処理部と、
前記複数の測定点のそれぞれについて、前記平均受信波形プロファイルに基づいて前記受信信号の受信電力を計算する電力計算部と、
を備える、信号処理装置。
【請求項2】
請求項1の信号処理装置において、
前記平均化処理を行う前の前記複数の受信波形プロファイルの位相が互いに一致するように調整する位相調整部を備える、信号処理装置。
【請求項3】
請求項2の信号処理装置において、
前記位相調整部は、
前記平均化処理を行う前の前記複数の受信波形プロファイルに基づいて、補正用電力変化プロファイルを計算し、
前記補正用電力変化プロファイルにおける最大電力位置を検出し、
前記最大電力位置に対応する複数の受信波形プロファイルについて受信波形プロファイル間の位相差を計算し、
前記位相差の計算結果に基づいて、前記平均化処理を行う前の前記複数の受信波形プロファイルの位相が互いに一致するように調整する、信号処理装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかの信号処理装置において、
前記平均化処理部は、前記複数の受信波形プロファイルのすべてを平均化処理して前記平均受信波形プロファイルを生成する、信号処理装置。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれかの信号処理装置において、
前記平均化処理部は、前記複数の受信波形プロファイルの一部を平均化処理して前記平均受信波形プロファイルを生成する、信号処理装置。
【請求項6】
請求項1乃至3のいずれかの信号処理装置において、
前記平均化処理部は、前記複数の受信波形プロファイルのすべてを平均化処理した第1の平均受信波形プロファイルと、前記複数の受信波形プロファイルの一部を平均化処理した第2の平均受信波形プロファイルとを生成し、
前記電力計算部は、前記複数の測定点のそれぞれについて、前記第1の平均受信波形プロファイル及び前記第2の平均受信波形プロファイルに基づいて前記受信信号の受信電力を計算する、信号処理装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかの信号処理装置において、
前記平均化処理を行う前の前記複数の受信波形プロファイルのそれぞれについて、前記受信波形プロファイルに含まれる雑音の時間平均を小さくするように前記受信波形プロファイルを補正する雑音前処理部を備える、信号処理装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかの信号処理装置において、
前記電力変化プロファイルは、前記対象信号の送信時を基準にした経過時間と前記受信電力との関係を示す遅延プロファイルである、信号処理装置。
【請求項9】
電波を受信する受信装置であって、
受信信号を処理する受信部に、請求項1乃至8のいずれかの信号処理装置を有する、受信装置。
【請求項10】
移動通信の基地局であって、
通信端末から受信したアップリンクの受信信号を処理する受信部に、請求項1乃至8のいずれかの信号処理装置を有する、基地局。
【請求項11】
移動通信の通信端末であって、
基地局から受信したダウンリンクの受信信号を処理する受信部に、請求項1乃至8のいずれかの信号処理装置を有する、通信端末。
【請求項12】
請求項10の基地局と請求項11の通信端末とを備える、通信システム。
【請求項13】
周期的に送信される対象信号の電波を受信した受信信号を処理する信号処理方法であって、
前記受信信号の受信電力の変化を示す電力変化プロファイルの複数の測定点のそれぞれについて、前記対象信号の受信信号を繰り返し受信して得られた複数の受信波形プロファイルの平均化処理を行って平均受信波形プロファイルを生成することと、
前記複数の測定点のそれぞれについて、前記平均受信波形プロファイルに基づいて前記受信信号の受信電力を計算することと、
を含む、信号処理方法。
【請求項14】
周期的に送信される対象信号の電波を受信した受信信号を処理する信号処理装置に備えるコンピュータ又はプロセッサにおいて実行されるプログラムであって、
前記受信信号の受信電力の変化を示す電力変化プロファイルの複数の測定点のそれぞれについて、前記対象信号の受信信号を繰り返し受信して得られた複数の受信波形プロファイルの平均化処理を行って平均受信波形プロファイルを生成するためのプログラムコードと、
前記複数の測定点のそれぞれについて、前記平均受信波形プロファイルに基づいて前記受信信号の受信電力を計算するためのプログラムコードと、
を含む、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電波の受信信号を処理する信号処理装置、受信装置、通信端末、基地局、通信システム、信号処理方法及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
移動通信の移動局、IoT機器などの通信端末の増加による通信トラフィックの問題に対して第5世代などの次世代の移動通信システムの導入が期待されている。特に、高速大容量などの特徴を有する波長の短い周波数帯域の使用が注目されている。例えば、特許文献1には、ミリ波を用いて移動局と無線通信を行う基地局が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-212649号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、基地局と通信端末との間に障害物がある市街地などの見通し外伝搬の環境において、波長の短い周波数を基地局に使用した場合、基地局からの電波の減衰が大きく、また電波が障害物で散乱されやすいため、通信端末と無線通信可能なエリアであるセルが狭い。そのため、既存の周波数よりも波長が短い周波数の基地局によって、既存のサービスエリアよりも広いサービスエリアをカバーするには、既存の基地局と比較してより蜜に基地局を配置する必要がある。このようにセルが狭い基地局を蜜に配置した構成において、基地局から周期的に送信される対象信号(例えば既知の参照信号)を通信端末が受信する受信信号における受信電力の変化を示す電力変化プロファイル(例えば、時間領域の遅延プロファイル)の測定において雑音電力の影響を低減して測定精度を高めたい、という課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様に係る信号処理装置は、周期的に送信される対象信号の電波を受信した受信信号を処理する信号処理装置である。この信号処理装置は、前記受信信号の受信電力の変化を示す電力変化プロファイルの複数の測定点のそれぞれについて、前記対象信号の受信信号を繰り返し受信して得られた複数の受信波形プロファイルの平均化処理を行って平均受信波形プロファイルを生成する平均化処理部と、前記複数の測定点のそれぞれについて、前記平均受信波形プロファイルに基づいて前記受信信号の受信電力を計算する電力計算部と、を備える。
【0006】
本発明の他の態様に係る受信装置は、電波を受信する受信装置であり、受信信号を処理する受信部に、前記信号処理装置を有する。
【0007】
本発明の更に他の態様に係る基地局は、移動通信の基地局であり、通信端末から受信したアップリンクの受信信号を処理する受信部に、前記信号処理装置を有する。
【0008】
本発明の更に他の態様に係る通信端末は、移動通信の通信端末であり、基地局から受信したダウンリンクの受信信号を処理する受信部に、前記信号処理装置を有する。
【0009】
本発明の更に他の態様に係る通信システムは、前記基地局と前記通信端末とを備える。
【0010】
本発明の更に他の態様に係る方法は、周期的に送信される対象信号の電波を受信した受信信号を処理する信号処理方法である。この方法は、前記受信信号の受信電力の変化を示す電力変化プロファイルの複数の測定点のそれぞれについて、前記対象信号の受信信号を繰り返し受信して得られた複数の受信波形プロファイルの平均化処理を行って平均受信波形プロファイルを生成することと、前記複数の測定点のそれぞれについて、前記平均受信波形プロファイルに基づいて前記受信信号の受信電力を計算することと、を含む。
【0011】
本発明の更に他の態様に係るプログラムは、周期的に送信される対象信号の電波を受信した受信信号を処理する信号処理装置に備えるコンピュータ又はプロセッサにおいて実行されるプログラムである。このプログラムは、前記受信信号の受信電力の変化を示す電力変化プロファイルの複数の測定点のそれぞれについて、前記対象信号の受信信号を繰り返し受信して得られた複数の受信波形プロファイルの平均化処理を行って平均受信波形プロファイルを生成するためのプログラムコードと、前記複数の測定点のそれぞれについて、前記平均受信波形プロファイルに基づいて前記受信信号の受信電力を計算するためのプログラムコードと、を含む。
【0012】
前記信号処理装置、前記受信装置、前記通信端末、前記基地局、前記通信システム、前記信号処理方法及び前記プログラムにおいて、前記平均化処理を行う前の前記複数の受信波形プロファイルの位相が互いに一致するように調整してもよい。
【0013】
前記信号処理装置、前記受信装置、前記通信端末、前記基地局、前記通信システム、前記信号処理方法及び前記プログラムにおいて、前記位相の調整では、前記平均化処理を行う前の前記複数の受信波形プロファイルに基づいて、補正用電力変化プロファイルを計算し、前記補正用電力変化プロファイルにおける最大電力位置を検出し、前記最大電力位置に対応する複数の受信波形プロファイルについて受信波形プロファイル間の位相差を計算し、前記位相差の計算結果に基づいて、前記平均化処理を行う前の前記複数の受信波形プロファイルの位相が互いに一致するように調整してもよい。
【0014】
前記信号処理装置、前記受信装置、前記通信端末、前記基地局、前記通信システム、前記信号処理方法及び前記プログラムにおいて、前記平均受信波形プロファイルは、前記複数の受信波形プロファイルのすべてを平均化して生成してもよいし、前記複数の受信波形プロファイルの一部を平均化して生成してもよい。
【0015】
前記信号処理装置、前記受信装置、前記通信端末、前記基地局、前記通信システム、前記信号処理方法及び前記プログラムにおいて、前記複数の受信波形プロファイルのすべてを平均化処理した第1の平均受信波形プロファイルと、前記複数の受信波形プロファイルの一部を平均化処理した第2の平均受信波形プロファイルとを生成し、前記複数の測定点のそれぞれについて、前記第1の平均受信波形プロファイル及び前記第2の平均受信波形プロファイルに基づいて前記受信信号の受信電力を計算してもよい。
【0016】
前記信号処理装置、前記受信装置、前記通信端末、前記基地局、前記通信システム、前記信号処理方法及び前記プログラムにおいて、前記平均化処理を行う前の前記複数の受信波形プロファイルのそれぞれについて、前記受信波形プロファイルに含まれる雑音の時間平均を小さくするように前記受信波形プロファイルを補正してもよい。
【0017】
前記信号処理装置、前記受信装置、前記通信端末、前記基地局、前記通信システム、前記信号処理方法及び前記プログラムにおいて、前記電力変化プロファイルは、前記対象信号の送信時を基準にした経過時間と前記受信電力との関係を示す遅延プロファイルであってもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、受信信号の電力変化プロファイルの測定において雑音電力の影響を低減して測定精度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態に係る信号処理装置の一構成例を示すブロック図。
図2図1の信号処理装置における遅延プロファイル測定の信号処理の一例を示すフローチャート。
図3】実施形態に係る信号処理装置の他の構成例を示すブロック図。
図4図3の信号処理装置における遅延プロファイル測定の信号処理の一例を示すフローチャート。
図5】実施形態に係る信号処理装置の更に他の構成例を示すブロック図。
図6図5の信号処理装置における遅延プロファイル測定の信号処理の一例を示すフローチャート。
図7】実施形態に係る移動通信システムの基地局及び通信端末に適用可能な受信装置の主要部の一構成例を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
本書に記載された実施形態に係る信号処理装置は、セルラー方式の移動通信システムにおける建物などの障害物が多い市街地などの対象エリアに比較的高密度に配置された基地局(例えばLTEのeNodeB又は5G等の次世代のgNodeB)の受信部及び通信端末(「端末装置」、「ユーザ装置(UE)」又は「移動局」ともいう。)の受信部に用いられ、確率共鳴と呼ばれる非線形現象を利用することにより、高周波の電波(例えば、準ミリ波、ミリ波、テラヘルツ波)の受信信号に含まれる対象信号の受信感度の低下を抑制することができる。ここで、「確率共鳴」は、一般には、系の雑音強度の増大に対して系の応答が向上する非線形現象である。この確率共鳴を通信の受信系に応用した場合、例えば、雑音強度を適度に含む受信信号をAD変換器でデジタル信号に変換する際に、雑音を含む受信信号がAD変換器の各レベルの閾値を上回ることで、電波の受信信号に含まれる対象信号の強度が受信系の受信感度以下の場合でも対象信号を検出することができることが期待される。
【0021】
特に、本実施形態では、無線受信装置で受信した雑音を含む受信信号に上記確率共鳴を適用することで検出した微弱な対象信号が遅延プロファイル測定用の信号(例えば、参照信号)であった場合に、雑音を含む受信信号の受信波形プロファイルから、対象信号の送信時を基準にした経過時間と受信電力との関係を示す遅延プロファイルを計算する際に、雑音電力の影響を低減ことができるため、遅延プロファイルの測定精度を高めることができる。従って、対象エリアに比較的高密度に配置された基地局と端末装置との間で、遅延プロファイルを考慮した高品質の無線通信が可能になる。
【0022】
なお、以下の実施形態では、処理対象の受信信号が、一次変調方式として16QAM、64QAM等のQAM(直角位相振幅変調)方式で変調された信号である場合について説明するが、処理対象の受信信号は、QAM以外の他の変調方式で一次変調された信号であってもよい。
【0023】
また、以下の実施形態では、処理対象の受信信号に含まれる対象信号が、一定の周期で繰り返し送信される遅延プロファイル測定用の所定データ系列(例えば、M系列)を有する参照信号である場合について説明するが、対象信号は、一定の周期で繰り返し送信される信号であれば、遅延プロファイル測定用の参照信号以外の信号であってもよい。
【0024】
また、以下の実施形態は、通信端末が静止している場合に適するが、通信端末は移動してもよい。
【0025】
図1は、実施形態に係る移動通信システムの基地局及び通信端末に用いることができる信号処理装置100の一例を示すブロック図である。図1において、信号処理装置100は、遅延プロファイル測定部(遅延プロファイル測定装置)として機能し、記憶部110と平均化処理部120と電力計算部130とを備える。信号処理装置100は、例えばコンピュータ又はプロセッサなどで構成され、予め組み込まれた所定のプログラム又は通信網を介してダウンロードされた所定のプログラムが読み込まれて実行されることにより、以下の各部として機能することができる。
【0026】
記憶部110は、無線受信部から出力された遅延プロファイル測定用の所定の既知データ系列を有する対象信号としての周期的に送信される参照信号を繰り返し受信して得られた複数の受信波形プロファイルのデータを、受信信号の信号波形のデータとして記憶する。本実施形態において、対象信号としての参照信号はQAM(直交位相振幅変調)方式で変調されている。また、複数の受信波形プロファイルはそれぞれ、QAM方式で変調された受信信号をベースバンド信号に変換した後、直交検波によって得られた同相チャネル成分のIch信号プロファイルと直交チャネル成分のQch信号プロファイルとを含む。
【0027】
記憶部110は、直近の所定数(例えば、10プロファイル~10000プロファイル)の受信波形プロファイルを記憶し、後段の平均化処理において移動平均を行うようにしてもよい。また、各受信波形プロファイルは、例えば、参照信号の直接波及び遅延波の両方を受信可能な時間よりも長く、且つ、参照信号の繰り返し送信の周期よりも短い時間長を有し、所定のサンプリング周期でサンプリングされた所定数(例えば2048個)のデータ点を有する。
【0028】
平均化処理部120は、受信信号の受信電力の変化を示す電力変化プロファイルである遅延プロファイルの複数の測定点のそれぞれについて、前記複数の受信波形プロファイルの平均化処理を行って平均受信波形プロファイルを生成する。例えば、平均化処理部120は、記憶部110に記憶されている直近の所定数(例えば、10プロファイル~1000プロファイル)の受信波形プロファイルの平均を算出して移動平均の平均受信波形プロファイルを生成してもよい。受信波形プロファイルの平均化処理により、雑音の分散が減少するため、確率共鳴を利用して得られた受信波形プロファイルから対象信号(参照信号)と雑音との分離が可能になり、遅延プロファイルにおける雑音電力の影響を低減できる。また、平均の対象の受信波形プロファイルの数を増やすことにより、遅延プロファイルにおける雑音電力の影響の低減効果を高めることができる。
【0029】
電力計算部130は、遅延プロファイルの複数の測定点のそれぞれについて、平均化処理部120で生成された平均受信波形プロファイル(Ich信号プロファイル及びQch信号プロファイル)を用いて受信電力を計算し、遅延プロファイルを出力する。こので、受信電力は、例えば、受信信号の無線フレームのシンボル単位で、平均受信波形プロファイルと既知の対象信号(参照信号)のレプリカから生成したレプリカ波形プロファイルとの間の相関処理により計算してもよい。電力計算部130で電力の計算に用いる平均受信波形プロファイルは、雑音の分散が減少したものであるため、電力計算部130から出力される遅延プロファイルの精度を高めることができる。
【0030】
図2は、図1の信号処理装置100における遅延プロファイル測定の信号処理の一例を示すフローチャートである。図2の信号処理において、まず、記憶部110に記憶されている遅延プロファイルの最初の測定点に対応する複数の受信波形プロファイルを読み出し(S101)、複数の受信波形プロファイルの平均化処理を行って平均受信波形プロファイルを生成し(S102)、生成した平均受信波形プロファイルを用いて受信電力を計算する(S103)。この複数の受信波形プロファイルの読み出し(S101)と受信波形プロファイルの平均化処理(S102)と受信電力の計算(S103)とを、遅延プロファイルのすべての測定点について実行し、遅延プロファイルの計算結果を出力する(S104)。
【0031】
図1及び図2の例によれば、受信波形プロファイルが確率共鳴を利用して検知可能な微弱な信号の受信波形プロファイルであっても、その受信波形プロファイルを用いて測定する遅延プロファイルの測定において雑音電力の影響を低減して測定精度を高めることができる。
【0032】
図3は、実施形態に係る移動通信システムの基地局及び通信端末に用いることができる信号処理装置100の他の例を示すブロック図である。図3において、信号処理装置100は、記憶部110と平均化処理部120と電力計算部130と位相調整部140とを備える。なお、図3において、前述の図1の構成と共通する部分については説明を省略する。
【0033】
図3の信号処理装置100において、位相調整部140は、前記平均化処理を行う前の複数の受信波形プロファイルの位相が互いに一致するように調整する。この位相調整により、受信波形プロファイルにおける最大強度の信号の位相が一致するので、遅延プロファイルの測定における雑音電力の影響を更に低減することができる。
【0034】
図4は、図3の信号処理装置100における遅延プロファイル測定の信号処理の一例を示すフローチャートである。なお、図4のステップS201、S203~S205は、前述の図2のステップS101、S102~S104と共通であるので、それらの説明は省略する。
【0035】
図4の位相調整ステップS202では、例えば次の処理A~Dを行う。
A.前記平均化処理を行う前の複数の受信波形プロファイルに基づいて、補正用電力変化プロファイル(暫定の遅延プロファイル)を計算する(S2021)。
B.前記補正用電力変化プロファイルにおける最大電力位置を検出する(S2022)。
C.前記最大電力位置に対応する複数の受信波形プロファイルについて受信波形プロファイル間の位相差を計算する(S2023)。
D.前記位相差の計算結果に基づいて、前記平均化処理を行う前の複数の受信波形プロファイルの位相が互いに一致するように各受信波形プロファイル(Ich、Qch)の値を調整する(S2024)。
【0036】
図4の平均化処理ステップS203では、上記位相調整を行った後の複数の受信波形プロファイルについて平均化処理を行い、電力計算に用いる平均受信波形プロファイルを生成する。
【0037】
図3図4の例によれば、受信波形プロファイルが確率共鳴を利用して検知可能な微弱な信号の受信波形プロファイルであっても、その受信波形プロファイルを用いて測定する遅延プロファイルの測定において雑音電力の影響を更に低減して測定精度を高めることができる。特に、図3図4の例は、信号処理装置100が組み込まれる基地局及び通信端末が静止した環境の場合に適する。
【0038】
図5は、実施形態に係る移動通信システムの基地局及び通信端末に用いることができる信号処理装置100の更も他の例を示すブロック図である。図5において、信号処理装置100は、記憶部110と平均化処理部120と電力計算部130と位相調整部140と雑音前処理部150とを備える。なお、図5において、前述の図1及び図3の構成と共通する部分については説明を省略する。
【0039】
図5の信号処理装置100において、雑音前処理部150は、前記平均化処理を行う前の複数の受信波形プロファイルのそれぞれについて、受信波形プロファイルに含まれる雑音の時間平均を小さくするように受信波形プロファイルの各値を補正する。この補正により、前記平均化処理を行う対象の各受信波形プロファイルの雑音の時間平均を小さくなるため、遅延プロファイルの測定における雑音電力の影響を更に低減することができる。
【0040】
図6は、図5の信号処理装置100における遅延プロファイル測定の信号処理の一例を示すフローチャートである。なお、図6のステップS301、S304~S306は、前述の図2のステップS101、S102~S104と共通であり、図6のステップS303は、前述の図4のステップS202と共通であるので、それらの説明は省略する。
【0041】
図6の雑音前処理ステップS302では、例えば、記憶部110から読み出す複数の受信波形プロファイルのそれぞれについて、受信波形プロファイルに含まれる雑音の時間平均を小さくするように受信波形プロファイルを補正する雑音低減処理を行う。
【0042】
図6の位相調整処理ステップS303では、上記雑音低減処理を行った後の複数の受信波形プロファイルについて位相調整処理を行う。
【0043】
図5図6の例によれば、受信波形プロファイルが確率共鳴を利用して検知可能な微弱な信号の受信波形プロファイルであっても、その受信波形プロファイルを用いて測定する遅延プロファイルの測定において雑音電力の影響を更に低減して測定精度を高めることができる。
【0044】
なお、図1図6の例において、平均受信波形プロファイルは、遅延プロファイルの測定点のそれぞれについて、記憶部110に記憶されている複数の受信波形プロファイルのすべてを平均化処理して生成してもよいし、複数の受信波形プロファイルの一部を平均化処理(例えば、時間軸上の移動平均を行う処理)して生成してもよい。
【0045】
また、遅延プロファイルの所定間隔の複数の測定点のそれぞれについて、複数の受信波形プロファイルのすべてを平均化処理した第1の平均受信波形プロファイルと、前記複数の受信波形プロファイルの一部を平均化処理(例えば、時間軸上の移動平均を行う処理)した第2の平均受信波形プロファイルとを生成し、第1の平均受信波形プロファイル及び第2の平均受信波形プロファイルに基づいて受信信号の受信電力を計算してもよい。例えば、通信端末が移動している状況においては、移動平均処理した第2の平均受信波形プロファイルを用いることで雑音の分散を低減できる可能性があり、また、状況によっては複数の受信波形プロファイルのすべてを平均化処理した第1の平均受信波形プロファイルを用いた方がよい結果(雑音の分散が低減された結果)が得られる場合もある。そのため、通信端末が移動している状況において、第1の平均受信波形プロファイル及び第2の平均受信波形プロファイルの両方を常に生成して準備しておき、通信端末の移動状況の変化に応じて、第1の平均受信波形プロファイル及び第2の平均受信波形プロファイルのいずれかを選択して受信信号の受信電力の計算を用いることにより、雑音電力が低減された遅延プロファイルをすみやかに安定して出力することができる。
【0046】
図7は、移動通信システムの基地局及び通信端末に適用可能な受信装置10の主要部の一構成例を示すブロック図である。図7において、受信装置10は、アンテナ11に接続された無線受信部12と、前述の信号処理装置100を適用できる遅延プロファイル測定部13と、復調・復号処理部14とを備える。
【0047】
無線受信部12は、例えば、アンテナ11で受信した高周波信号を増幅するローノイズ増幅器と、高周波信号の周波数をベースバンド信号の中間周波数に変換する周波数変換部と、ベースバンド信号を直交検波(1次復調)してIch信号及びQch信号を出力する直交検波部と、アナログのIch信号及びQch信号をデジタルのIch信号及びQch信号に変換するAD変換部とを有する。
【0048】
無線受信部12から出力されるIch信号及びQch信号は、前述の信号処理装置100からなる遅延プロファイル測定部13と、基地局及び通信端末で送受信されユーザデータや制御情報等の希望信号に得るための2次復調及び復号処理を行う復調・復号処理部14とに出力される。遅延プロファイル測定部13で測定された時間領域の遅延プロファイルは、例えば、周波数領域の遅延プロファイルに変換され、復調・復号処理部14での処理に用いられる伝搬路応答に適用される。
【0049】
図7の受信装置10を基地局に適用した場合、確率共鳴を利用して通信端末から基地局への雑音に埋もれた微弱なアップリンク信号に対する受信感度の向上を図るとともに、アップリンク信号の受信波形プロファイルから計算する遅延プロファイルの測定精度を高めることができるので、通信端末から基地局への伝搬路の遅延プロファイルを考慮したアップリンクの高品質の無線通信が可能になる。
【0050】
図7の受信装置10を通信端末に適用した場合、確率共鳴を利用して基地局から通信端末への雑音に埋もれた微弱なダウンリンク信号に対する受信感度の向上を図るとともに、ダウンリンク信号の受信波形プロファイルから計算する遅延プロファイルの測定精度を高めることができるので、基地局から通信端末への伝搬路の遅延プロファイルを考慮したダウンリンクの高品質の無線通信が可能になる。
【0051】
なお、通信端末の受信装置10で測定した遅延プロファイルの情報は、通信端末から基地局にフィードバックされる測定報告(MR)に含めてもよい。
【0052】
以上、本実施形態によれば、確率共鳴を利用して検知可能な雑音に埋もれた微弱な対象信号(参照信号)の受信波形プロファイルを用いて遅延プロファイルを測定する場合に、受信波形プロファイルから遅延プロファイルを計算する際に雑音電力の影響を低減ことができるため、遅延プロファイルの測定精度を高めることができる。
【0053】
なお、本実施形態の信号処理装置100及び受信装置10は、移動通信システムの基地局及び通信端末だけでなく、デジタル放送の放送受信装置等の他の受信装置にも適用することができる。
【0054】
なお、本明細書で説明された処理工程並びに信号処理装置、無線受信装置、通信端末、基地局、移動通信システムなどの構成要素は、様々な手段によって実装することができる。例えば、これらの工程及び構成要素は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、又は、それらの組み合わせで実装されてもよい。
【0055】
ハードウェア実装については、実体(例えば、各種無線通信装置、NodeB、NodeG、端末、ハードディスクドライブ装置、又は、光ディスクドライブ装置)において上記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、1つ又は複数の、特定用途向けIC(ASIC)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、デジタル信号処理装置(DSPD)、プログラマブル・ロジック・デバイス(PLD)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、電子デバイス、本明細書で説明された機能を実行するようにデザインされた他の電子ユニット、コンピュータ、又は、それらの組み合わせの中に実装されてもよい。
【0056】
また、ファームウェア及び/又はソフトウェア実装については、上記構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、本明細書で説明された機能を実行するプログラム(例えば、プロシージャ、関数、モジュール、インストラクション、などのコード)で実装されてもよい。一般に、ファームウェア及び/又はソフトウェアのコードを明確に具体化する任意のコンピュータ/プロセッサ読み取り可能な媒体が、本明細書で説明された上記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段の実装に利用されてもよい。例えば、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば制御装置において、メモリに記憶され、コンピュータやプロセッサにより実行されてもよい。そのメモリは、コンピュータやプロセッサの内部に実装されてもよいし、又は、プロセッサの外部に実装されてもよい。また、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM)、プログラマブルリードオンリーメモリ(PROM)、電気的消去可能PROM(EEPROM)、フラッシュメモリ、フロッピー(登録商標)ディスク、コンパクトディスク(CD)、デジタルバーサタイルディスク(DVD)、磁気又は光データ記憶装置、などのような、コンピュータやプロセッサで読み取り可能な媒体に記憶されてもよい。そのコードは、1又は複数のコンピュータやプロセッサにより実行されてもよく、また、コンピュータやプロセッサに、本明細書で説明された機能性のある態様を実行させてもよい。
【0057】
また、前記媒体は非一時的な記録媒体であってもよい。また、前記プログラムのコードは、コンピュータ、プロセッサ、又は他のデバイス若しくは装置機械で読み込んで実行可能であればよく、その形式は特定の形式に限定されない。例えば、前記プログラムのコードは、ソースコード、オブジェクトコード及びバイナリコードのいずれでもよく、また、それらのコードの2以上が混在したものであってもよい。
【0058】
また、本明細書で開示された実施形態の説明は、当業者が本開示を製造又は使用するのを可能にするために提供される。本開示に対するさまざまな修正は当業者には容易に明白になり、本明細書で定義される一般的原理は、本開示の趣旨又は範囲から逸脱することなく、他のバリエーションに適用可能である。それゆえ、本開示は、本明細書で説明される例及びデザインに限定されるものではなく、本明細書で開示された原理及び新規な特徴に合致する最も広い範囲に認められるべきである。
【符号の説明】
【0059】
10 :受信装置
11 :アンテナ
12 :無線受信部
13 :遅延プロファイル測定部
14 :復号処理部
100 :信号処理装置
110 :記憶部
120 :平均化処理部
130 :電力計算部
140 :位相調整部
150 :雑音前処理部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7