(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023070439
(43)【公開日】2023-05-19
(54)【発明の名称】転落防止装置
(51)【国際特許分類】
E02B 13/00 20060101AFI20230512BHJP
E02B 5/02 20060101ALI20230512BHJP
【FI】
E02B13/00 301
E02B5/02
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021182623
(22)【出願日】2021-11-09
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-04-19
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 2020年11月19日に、新潟県新潟市西蒲区潟頭の農業用水路において、株式会社新潟デックが、山田富市が発明した転落防止装置を施工し、その後、新潟県内の数箇所において同様の転落防止装置を施工した。
(71)【出願人】
【識別番号】521010735
【氏名又は名称】株式会社新潟デック
(71)【出願人】
【識別番号】512106540
【氏名又は名称】株式会社水倉組
(71)【出願人】
【識別番号】597063277
【氏名又は名称】グリーン産業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】502194403
【氏名又は名称】栄光産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】弁理士法人牛木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 富市
(57)【要約】
【課題】開閉可能なネット部材を備える簡易な構造の転落防止装置を提供することを目的とする。
【解決手段】上方が開口した凹溝状の構造物である水路5に取り付ける転落防止装置1であって、ネット部材2と、水路5に取り付けられ、ネット部材2を係止する係止具4と、を備え、係止具4は、固定部と抜止部を有し、固定部は、水路5の側壁の第2の上面部55に固定され、固定部が抜止部よりも開口側に位置し、第2の上面部55と抜止部の間に間隙が形成されることで、ネット部材2を開閉可能に水路5に取り付ける。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方が開口した凹溝状の構造物に取り付ける転落防止装置であって、
ネット部材と、
前記構造物に取り付けられ、前記ネット部材を係止する係止具と、を備え、
前記係止具は、固定部と抜止部を有し、
前記固定部は、前記構造物の側壁の上面部に固定され、
前記固定部が前記抜止部よりも前記開口側に位置し、
前記上面部と前記抜止部の間に間隙が形成されることを特徴とする転落防止装置。
【請求項2】
前記ネット部材の網目に前記抜止部を挿通し、前記ネット部材を構成する線材が前記間隙に配置されることで前記ネット部材が前記係止具に係止することを特徴とする請求項1に記載の転落防止装置。
【請求項3】
前記上面部が第1の上面部と第2の上面部を有し、
前記構造物に取り付けられ、前記ネット部材を固定する固定具を備え、
前記固定具が前記第1の上面部に取り付けられ、前記係止具が前記第2の上面部に取り付けられることを特徴とする請求項2に記載の転落防止装置。
【請求項4】
前記ネット部材が前記固定部と前記第1の上面部に挟持されて前記構造物に固定されることを特徴とする請求項3に記載の転落防止装置。
【請求項5】
前記固定具を前記第1の上面部に固定する固定手段を備え、
前記固定手段が前記ネット部材の前記網目に挿通されることを特徴とする請求項4に記載の転落防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水路内等への転落を防止する転落防止装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、人や自転車等が水路内に転落するのを防止するために、水路の上方開口をメッシュ体で被覆する側溝用被覆材が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に記載された側溝用被覆材は、道路(2)の側部に設けられた側溝(3)の上部開放部(31)を被覆するものであり、被覆材本体(10)として、細線材(12)、(13)で金網状又は格子状に形成した面状メッシュ体(11)を使用している。また、被覆材本体(10)は、側溝(3)の上部開放部(31)を被覆した状態において側溝長さ方向から見て上面側が凸型となるアーチ状又は山形状に成形されている。これによって、人や自転車等が水路内に転落するのを防止でき、歩行者や自動車運転者等に側溝があることの注意を喚起させるというものである。
【0004】
また、特許文献1に記載された側溝用被覆材は、被覆材本体(10)の一方がアングル状の保持材(14)を側溝(3)の右側壁(32)の上面(32a)における内面側角部にビス(15)で固定して取付けられ、他方は側溝(3)の左側壁(32)の上面(32a)に載せているだけである。そして、被覆材本体(10)を開閉する場合には、ヒンジ(16)を中心に被覆材本体(10)を枢動させる構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された側溝用被覆材のように、上面側が凸型となるアーチ状又は山形状に成形されていると、側溝(3)を跨いで渡る場合に、跨ぎ難くなるという問題がある。また、側溝(3)の周囲の道路や地面が平坦に形成されている場所では、側溝用被覆材がアーチ状又は山形状に成形されていることで景観を損ねる虞がある。
【0007】
また、上述のように被覆材本体(10)の他方は側溝(3)の左側壁(32)の上面(32a)に載せているだけであるため、風により側溝(3)と被覆材本体(10)の接触音が発生する虞もある。さらに、強風時に被覆材本体(10)を開けたり、被覆材本体(10)を繰り返し開閉することにより、ヒンジ(16)に負荷がかかり、破損の虞もある。
【0008】
そこで、本発明は以上の問題点を解決し、開閉可能なネット部材を備える簡易な構造の転落防止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る転落防止装置は、上方が開口した凹溝状の構造物に取り付ける転落防止装置であって、ネット部材と、前記構造物に取り付けられ、前記ネット部材を係止する係止具と、を備え、前記係止具は、固定部と抜止部を有し、前記固定部は、前記構造物の側壁の上面部に固定され、前記固定部が前記抜止部よりも前記開口側に位置し、前記上面部と前記抜止部の間に間隙が形成されることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る転落防止装置は、前記ネット部材の網目に前記抜止部を挿通し、前記ネット部材を構成する線材が前記間隙に配置されることで前記ネット部材が前記係止具に係止する場合がある。
【0011】
また、本発明に係る転落防止装置は、前記上面部が第1の上面部と第2の上面部を有し、前記構造物に取り付けられ、前記ネット部材を固定する固定具を備え、前記固定具が前記第1の上面部に取り付けられ、前記係止具が前記第2の上面部に取り付けられる場合がある。
【0012】
また、本発明に係る転落防止装置は、前記ネット部材が前記固定部と前記第1の上面部に挟持されて前記構造物に固定される場合がある。
【0013】
また、本発明に係る転落防止装置は、前記固定具を前記第1の上面部に固定する固定手段を備え、前記固定手段が前記ネット部材の前記網目に挿通される場合がある。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る転落防止装置によれば、簡易な構造により、歩行者や自転車に乗った人が誤って水路内等に転落することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態の転落防止装置の平面図である。
【
図3】本発明の一実施形態の固定具の平面図である。
【
図4】本発明の一実施形態の固定具の正面図である。
【
図5】本発明の一実施形態の係止具の平面図である。
【
図6】本発明の一実施形態の係止具の正面図である。
【
図7】本発明の一実施形態の補助固定具の平面図である。
【
図8】本発明の一実施形態の補助固定具の正面図である。
【
図9】本発明の補助固定具を使用した実施形態の転落防止装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明における好適な実施の形態について、添付図面を参照して説明する。尚、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。
【0017】
図1及び
図2は、本実施形態における転落防止装置1の全体構成を示している。同図において、転落防止装置1は、ネット部材2と、固定具3と、係止具4と、固定具3を被取付部である水路5に固定する固定手段であるアンカーボルト6と、係止具4を被取付部である水路5に固定する固定手段であるアンカーボルト7と、を備えている。
【0018】
ネット部材2は、高耐久性を有するポリエステル製の線材21を多数ねじり合わせて六角形の網目22を形成した亀甲型の網体である。本実施形態の六角形の網目22のねじり部23は、線材21を3回ねじり合わせているが、このねじり数は適宜変更可能である。ネット部材2は、複数の六角形の網目22を有し、縦方向、横方向、斜め方向に僅かに弾性変形可能である。なお、ネット部材2は、一定以上の耐久性を有する他の素材により形成したものであってもよい。また、網目22の形状は六角形に限られず、他の多角形状であってもよい。
【0019】
固定具3は、鋼板に溶融亜鉛アルミニウム合金めっきを施したものであり、平面視矩形の板状に形成されている。そのため、耐久性が高く、特に塩害に強く、沿岸部での使用や融雪剤を使用する道路付近での使用において防錆効果を発揮する。なお、固定具3は、一定以上の耐久性を有する他の素材により形成したものであってもよい。
【0020】
図3及び
図4に示すように、固定具3には、アンカーボルト6を挿通するためのボルト挿通孔31が2箇所に形成されている。ボルト挿通孔31は、固定具3の長手方向に長い長孔であり、固定具3をアンカーボルト6で固定する際に位置調節が可能となっている。なお、本実施形態ではボルト挿通孔31を2箇所に形成しているが、3箇所以上形成してもよい。
【0021】
本実施形態の固定具3の寸法は、縦L1が50mm、横W1が200mm、厚さT1が6mmであり、ボルト挿通孔31の寸法はφ15-22mmである。なお、固定具3は、ボルト挿通孔31を形成することができ、所定以上の強度を有するものであれば、例えば、四つ角部32を円弧状に形成する等、所望の形状とすることができる。また、固定具3は、本実施形態のように板状とすることで、設置面(第1の上面部53)との段差を小さくすることができる。さらに、固定具3の寸法は、固定する水路5の第1の上面部53の寸法やネット部材2の網目22の寸法等を考慮して適宜変更可能である。
【0022】
係止具4も固定具3と同様に、鋼板に溶融亜鉛アルミニウム合金めっきを施したものであり、平面視矩形の板状に形成されている。
図5及び
図6に示すように係止具4は、固定部41と、傾斜部42と、抜止部43と、を一体に形成されている。固定部41と傾斜部42の間に第一折曲部44が形成され、傾斜部42と抜止部43の間に第二折曲部45が形成されている。
【0023】
固定部41には、アンカーボルト7を挿通するためのボルト挿通孔46が1箇所に形成されている。ボルト挿通孔46は、係止具4の長手方向に長い長孔であり、係止具4をアンカーボルト7で固定する際に位置調節が可能となっている。
【0024】
傾斜部42は、係止具4を第一折曲部44と第二折曲部45で折り曲げ加工することにより形成され、固定部41と抜止部43に連続して接続しており、固定部41側よりも抜止部43側が上方に位置するように傾斜している。
【0025】
係止具4を水路5に固定した状態で、水路5と抜止部43との間に間隙Sが形成される。この間隙Sは、後述するように、ネット部材2の線材21を配置できる必要がある。そのため、間隙Sは線材21の直径に基づいて決定する。間隙Sは、傾斜部42の傾斜角度や長さにより変更することができる。本実施形態では、間隙Sは5mmであり、線材21の直径は3mmとなっている。間隙Sを線材21の直径よりも僅かに大きくすることで、間隙S内で線材21が大きく移動することを防止できる。
【0026】
本実施形態の係止具4の寸法は、縦L2が30mm、横W2が92.5mm、厚さT2が6mmであり、ボルト挿通孔46の寸法はφ12-30mmである。上述のとおり、間隙Sが5mmであるため、係止具4の高さHは、11mmである。また、固定部41の横方向の長さWaは50mm、傾斜部42の横方向の長さWbは7.5mm、抜止部43の横方向の長さWcは35mmである。なお、係止具4は、ボルト挿通孔46を形成することができ、所定以上の強度を有するものであれば、例えば、四つ角部47を円弧状に形成する等、所望の形状とすることができるが、本実施形態のように板状とすることで、設置面(上面部52)との段差を小さくすることができる。さらに、係止具4の寸法は、固定する水路5の第2の上面部55の寸法やネット部材2の網目22の寸法等を考慮して適宜変更可能である。
【0027】
図1及び
図2に示すように、上方が開口した凹溝状の構造物である水路5は、道路51に沿って設けられたコンクリート製のいわゆる農業用水路である。水路5は、道路51と反対側の側壁である第1の側壁52と、道路51側の側壁である第2の側壁54を有している。第1の側壁52の上面部である第1の上面部53と、第2の側壁54の上面部である第2の上面部55は略平坦に形成されている。なお、転落防止装置1を設置するのは、本実施形態の農業用の水路5に限られず、上方が開口した他の凹溝状の構造物であってもよい。また、本実施形態では水路5の幅は1~2mを想定しているが、水路5の幅は特に限定されない。本実施形態では、水路5の道路51と反対側は、土の地面Gが広がっているが、第1の上面部53は地面Gと略面一であり、第2の上面部55は道路51と略面一である。
【0028】
アンカーボルト6も、固定具3及び係止具4と同様に溶融亜鉛アルミニウム合金めっきを施している。また、アンカーボルト6により固定具3を固定する際、溶融亜鉛アルミニウム合金めっきを施したワッシャー8を使用する。
【0029】
アンカーボルト7も、固定具3及び係止具4と同様に溶融亜鉛アルミニウム合金めっきを施している。また、アンカーボルト7により係止具4を固定する際、溶融亜鉛アルミニウム合金めっきを施したワッシャー9を使用する。
【0030】
固定具3及び係止具4を水路5に固定する固定手段としては、アンカーボルト6、7に限られず、ネット部材2の網目22に挿通して固定具3及び係止具4を固定できるものであれば、例えば、接着剤によりボルトを固定するもの等、他の固定手段を用いてもよい。
【0031】
本実施形態では、固定具3と共に補助固定具10を使用することができる。補助固定具10は、鋼板に溶融亜鉛アルミニウム合金めっきを施したものであり、平面視矩形の板状に形成されている。
【0032】
図7及び
図8に示すように、補助固定具10には、アンカーボルト6を挿通するためのボルト挿通孔61が1箇所に形成されている。ボルト挿通孔61は、補助固定具10の長手方向に長い長孔であり、補助固定具10をアンカーボルト6で固定する際に位置調節が可能となっている。
【0033】
本実施形態の補助固定具10の寸法は、縦L3が50mm、横W3が100mm、厚さT3が6mmであり、ボルト挿通孔61の寸法はφ15-22mmである。補助固定具10の厚さT3及びボルト挿通孔31の寸法を、固定具3の厚さT1及びボルト挿通孔31の寸法と同一にすることで、補助固定具10を固定する固定手段を共通のアンカーボルト6としている。補助固定具10をアンカーボルト6で固定する際は、ワッシャー8を使用する。なお、補助固定具10は、ボルト挿通孔61を形成することができ、所定以上の強度を有するものであれば、例えば、四つ角部62を円弧状に形成する等、所望の形状とすることができる。また、補助固定具10は、本実施形態のように板状とすることで、設置面(第1の上面部53)との段差を小さくすることができる。さらに、補助固定具10の寸法は、固定する水路5の第1の上面部53の寸法やネット部材2の網目22の寸法等を考慮して適宜変更可能である。
【0034】
ここで、転落防止装置1の設置方法について説明する。まず、第1の上面部53の所定位置にアンカーボルト6を挿入するボルト挿入孔56を穿設する。その後、ボルト挿入孔56にアンカーボルト6のアンカー(図示せず)を挿入する。次に、事前に水路5の幅長に合わせたネット部材2を、水路5の開口を覆うように第1の上面部53と第2の上面部55に架け渡たして略水平に載置する。次に、第1の上面部53の上方の位置であってネット部材2上に固定具3を載置する。このとき、固定具3の長手方向を水路5の長手方向と同一の向きとし、ボルト挿通孔31をボルト挿入孔56の位置に合わせる。ワッシャー8に挿通したアンカーボルト6をボルト挿通孔31に挿通すると共にボルト挿入孔56に挿入し固定具3を第1の上面部53に固定する。このとき、2本のアンカーボルト6をネット部材2の異なる網目22にそれぞれ挿通し、ネット部材2を固定具3と上面部52により挟持させる。アンカーボルト6はネット部材2の道路51と反対側(地面G側)の最端部を構成する網目22の列である第1列目の網目22Aに挿通することで、固定具3よりも地面G側に不用なネット部材2が突出しないようにすることができる。
【0035】
次に、第2の上面部55の所定位置にアンカーボルト7を挿入するボルト挿入孔57を穿設する。このとき、ボルト挿入孔57をネット部材2の六角形の網目22の下方の位置となるように穿設する。その後、ボルト挿入孔57にアンカーボルト7のアンカー(図示せず)を挿入する。次に、係止具4の長手方向を水路5の長手方向に対して垂直となる向きとして第2の上面部55に載置する。このときボルト挿通孔46をボルト挿入孔57の位置に合わせる。ワッシャー9に挿通したアンカーボルト7をボルト挿通孔46に挿通すると共にボルト挿入孔57に挿入し係止具4を第2の上面部55に固定する。このとき、係止具4の固定部41が抜止部43よりも水路5の開口側に位置しており、抜止部43と第2の上面部55との間に間隙Sが形成される。
【0036】
最後に、ネット部材2を固定具3とは反対の方向に引っ張って弾性変形させ、網目22に抜止部43を挿通させて係止具4にネット部材2を係止させることで、転落防止装置1の設置が完了する。この状態で、ネット部材2の線材21が係止具4の傾斜部42又は抜止部43と第2の上面部55との間(間隙S)に配置され、ネット部材2を上方に引っ張ってもネット部材2は係止具4から外れない。また、ネット部材2を固定具3側に引っ張っても線材21が傾斜部42に係止するため、ネット部材2は係止具4から外れない。すなわち、ネット部材2は固定具3と反対側(道路51側)の方向へ引っ張ることで係止具4から外すことができる。なお、転落防止装置1を設置した状態では、間隙Sに配置したネット部材2の線材21が常時傾斜部42に係止していてもよいが、通常時は係止しておらず、ネット部材2に対して上側から下側方向に力が付加されることで間隙Sに配置した線材21が傾斜部42に係止するようにしてもよい。
【0037】
本実施形態のネット部材2は、道路51や地面Gと略面一となるように水路5に取り付けられているため、風の影響を受け難く、ネット部材2が固定具3、係止具4、水路5との接触音等が生じ難い。また、ネット部材2の線材21が弾性変形可能であることや、ねじり部23があることで、ネット部材2の開閉操作を繰り返し行った場合であっても、一箇所に負荷がかかることが少なく非常に損傷し難い。
【0038】
本実施形態では、複数の固定具3と係止具4をそれぞれ水路5の長手方向に約1m間隔で配置しているが、歩行者や自転車に乗った人が誤ってネット部材2の上に乗った場合や、豪雪地帯でネット部材2上に数m積雪した場合の荷重に耐え得る強度を保持し、かつ、ネット部材2と第1の上面部53及び第2の上面部55との間に不用な隙間が形成されなければ、配置する間隔は変更可能である。また、隣り合う固定具3の間隔と、隣り合う係止具4の間隔が異なっていてもよい。
【0039】
図1に示すように、本実施形態では、ネット部材2の係止具4側の端部を形成する第1の線材21Aを係止具4に係止しているが、ネット部材2の係止具4側の端部から2番目の線材21である第2の線材21Bと第1の線材21Aとのねじり部23である第1のねじり部23Aを係止具4に係止してもよい。また、ネット部材2の係止具4側の端部から3番目の線材21である第3の線材21Cと第2の線材21Bとのねじり部23である第2のねじり部23Bを係止具4に係止してもよい。また、その他の線材21やねじり部23を係止具4に係止してもよい。
【0040】
通常、水路5は現場に搬送されたネット部材2の長手方向の長さよりも長い。そのような場合には、複数のネット部材2を連続して連結させて使用する。ネット部材2の連結は、隣り合うネット部材2の端部同士を重ね合わせ、その部分に固定具3を配設し、固定具3と第1の上面部53により重ね合わせたネット部材2の端部を挟持すればよい。
【0041】
本実施形態では、固定具3を道路51と反対側の第1の上面部53に取り付け、係止具4を道路51側の第2の上面部55に取り付けることで、ネット部材2は道路51側が開閉可能となっている。このようにすることで、例えば冬季等にネット部材2の道路51側を開け、道路51に積もった雪を水路5に捨て易くなっている。一方、固定具3を道路51側の第2の上面部55に取り付け、係止具4を道路51と反対側の第1の上面部53に取り付け、道路51と反対側(地面G側)を開閉可能とすることもできる。この場合、例えばネット部材2の地面G側を開け、水路5内に溜まったゴミやヘドロ等を除去する清掃作業を地面G側で行い易くなる。また、地面Gに畑等がある場合に、地面G側を開けることで、水路5から水を汲み、植物へ水やりを行うこともできる。その際、ネット部材2が係止された複数の係止具4のうち、必要な部分のみ係止を外すことができる。
【0042】
図9は、補助固定具10を使用した実施形態である。本実施形態では、水路5の長手方向において、隣り合う固定具3の中間部に補助固定具10を配置したものである。補助固定具10の取り付け方法は固定具3と同様であり、相違点は、アンカーボルト6を1つ使用して固定することのみである。本実施形態では、隣り合う固定具3の全ての中間部に補助固定具10が配設されているが、補助固定具10は固定強度を高めたい場所等、所望の場所に使用することができる。
【0043】
その他、
図9に示すように、水路5にコンクリート床版58等により蓋や橋が設けられている場合には、ネット部材2を固定具3、係止具4、補助固定具10によりコンクリート床版58に取り付けることができる。
図9では、ネット部材2を固定具3によりコンクリート床版58に固定している。また、
図9に示す水路5の奥側(遠方側)のように、転落防止装置1を設ける必要がなく水路5の上方を開口したい場合には、その部分に転落防止装置1を取り付けなければよい。さらに、一度ネット部材2を取り付けた後、ネット部材2が不要となった部分が生じた場合には、その部分のネット部材2を切断して取り外すことで、水路5の上方を容易に開口させることができる。この場合、第2の上面部55に取り付けた係止具4を取り付けたままにしておくことで、再度ネット部材2を取り付ける際に再利用することができる。
【0044】
上記の実施形態は、第1の上面部53に固定具3(補助固定具10)を取り付け、第2の上面部55に係止具4を取り付けたものであるが、例えば、第1の上面部53及び第2の上面部55に固定具3(補助固定具10)を取り付けてネット部材2を水路5に固定し、第1の上面部53、第2の上面部55、コンクリート床版58を問わず、ネット部材2を開閉したい部分にのみ係止具4を取り付けてもよい。また、係止具4のみを用いてネット部材2を水路5に取り付けてもよい。すなわち、固定具3、係止具4、補助固定具10は自由に配置することができる。
【0045】
以上のように、本実施形態の転落防止装置1は、上方が開口した凹溝状の構造物である水路5に取り付ける転落防止装置1であって、ネット部材2と、水路5に取り付けられ、ネット部材2を係止する係止具4と、を備え、係止具4は、固定部41と抜止部43を有し、固定部41は、水路5の側壁54の第2の上面部55に固定され、固定部41が抜止部43よりも開口側に位置し、第2の上面部55と抜止部43の間に間隙Sが形成されることにより、ネット部材2を係止具4に引っ掛けて係止するという簡易な構造でネット部材2の一部又は全部を着脱可能に水路5に取り付けることができる。また、水路5に取り付けたネット部材2は、上下方向に大きく凸形状とならないため、遠くからは視認し難く、景観を損ねることを抑制できる。
【0046】
また、本実施形態の転落防止装置1は、ネット部材2の網目22に抜止部41を挿通し、ネット部材2を構成する線材21が間隙Sに配置されることでネット部材2が係止具4に係止することにより、ネット部材2の線材21を係止具4に引っ掛けるという簡易な構造でネット部材2を開閉可能に水路5に係止することができる。
【0047】
また、本実施形態の転落防止装置1は、上面部が第1の上面部53と第2の上面部55を有し、水路5に取り付けられ、ネット部材2を固定する固定具3を備え、固定具3が第1の上面部53に取り付けられ、係止具4が第2の上面部55に取り付けられることにより、ネット部材2の第1の上面部53側を確実に水路5に固定し、ネット部材2の第2の上面部55側を開閉可能に水路5に係止することができる。
【0048】
また、本実施形態の転落防止装置1は、ネット部材2が固定部41と第1の上面部53に挟持されて水路5に固定されることにより、ネット部材2の固定箇所が、周囲の道路51や地面Gとの段差を小さくすることができる。
【0049】
また、本実施形態の転落防止装置1は、固定具3を第1の上面部53に固定する固定手段であるアンカーボルト6を備え、アンカーボルト6がネット部材2の網目22に挿通されることにより、ネット部材2が引っ張られ、ネット部材2が固定具3と第1の上面部53との間で移動した場合であっても、ネット部材2の線材21がアンカーボルト6に係止し、ネット部材2が水路5から外れることを防止できる。
【0050】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々の変形実施が可能である。上記実施形態では、
図2に示すように、水路5の第1の上面部53と第2の上面部55の高さが同一のものに転落防止装置1を設置しているが、第1の上面部53と第1の上面部55の高さが異なる場合であっても、ネット部材2が傾斜して第1の上面部53と第1の上面部55に載置されることで、当然に転落防止装置1を設置することが可能である。
【符号の説明】
【0051】
1 転落防止装置
2 ネット部材
3 固定具
4 係止具
5 水路(構造物)
6 アンカーボルト(固定手段)
22 網目
41 固定部
43 抜止部
52 第1の側壁(側壁)
53 第1の上面部(上面部)
54 第2の側壁(側壁)
55 第2の上面部(上面部)
【手続補正書】
【提出日】2023-03-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上方が開口した凹溝状の構造物に取り付ける転落防止装置であって、
ネット部材と、
前記構造物に取り付けられ、前記ネット部材を係止する板状の係止具と、を備え、
前記係止具は、固定部と抜止部を有し、
前記固定部は、前記構造物の側壁の上面部に固定され、
前記固定部が前記抜止部よりも前記開口側に位置し、
前記上面部と前記抜止部の間に間隙が形成されることを特徴とする転落防止装置。
【請求項2】
前記ネット部材の網目に前記抜止部を挿通し、前記ネット部材を構成する線材が前記間隙に配置されることで前記ネット部材が前記係止具に係止することを特徴とする請求項1に記載の転落防止装置。
【請求項3】
前記上面部が第1の上面部と第2の上面部を有し、
前記構造物に取り付けられ、前記ネット部材を固定する固定具を備え、
前記固定具が前記第1の上面部に取り付けられ、前記係止具が前記第2の上面部に取り付けられることを特徴とする請求項2に記載の転落防止装置。
【請求項4】
前記ネット部材が前記固定具と前記第1の上面部に挟持されて前記構造物に固定されることを特徴とする請求項3に記載の転落防止装置。
【請求項5】
前記固定具を前記第1の上面部に固定する固定手段を備え、
前記固定手段が前記ネット部材の前記網目に挿通されることを特徴とする請求項4に記載の転落防止装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
本発明に係る転落防止装置は、上方が開口した凹溝状の構造物に取り付ける転落防止装置であって、ネット部材と、前記構造物に取り付けられ、前記ネット部材を係止する板状の係止具と、を備え、前記係止具は、固定部と抜止部を有し、前記固定部は、前記構造物の側壁の上面部に固定され、前記固定部が前記抜止部よりも前記開口側に位置し、前記上面部と前記抜止部の間に間隙が形成されることを特徴とする。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0048
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0048】
また、本実施形態の転落防止装置1は、ネット部材2が固定具3と第1の上面部53に挟持されて水路5に固定されることにより、ネット部材2の固定箇所が、周囲の道路51や地面Gとの段差を小さくすることができる。