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特開2023-70445無線送電装置、無線電力伝送システム、方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023070445
(43)【公開日】2023-05-19
(54)【発明の名称】無線送電装置、無線電力伝送システム、方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H02J 50/40 20160101AFI20230512BHJP
   H02J 50/90 20160101ALI20230512BHJP
   H02J 50/80 20160101ALI20230512BHJP
   H04W 16/28 20090101ALI20230512BHJP
   H04W 4/02 20180101ALI20230512BHJP
【FI】
H02J50/40
H02J50/90
H02J50/80
H04W16/28
H04W4/02
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021182632
(22)【出願日】2021-11-09
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-04-17
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、国立研究開発法人情報通信研究機構「革新的情報通信技術研究開発委託研究/完全ワイヤレス社会実現を目指したワイヤレス電力伝送の高周波化および通信との融合技術」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】501440684
【氏名又は名称】ソフトバンク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(74)【代理人】
【識別番号】100128691
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 弘通
(72)【発明者】
【氏名】中本 悠太
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 直輝
(72)【発明者】
【氏名】林 合祐
(72)【発明者】
【氏名】藤井 隆史
(72)【発明者】
【氏名】竹内 祥子
(72)【発明者】
【氏名】太田 喜元
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA21
5K067EE02
5K067EE10
5K067KK02
5K067KK03
5K067KK06
(57)【要約】
【課題】複数の端末装置のそれぞれに対して所定電力を効率よく給電することができる無線送電装置を提供する。
【解決手段】無線送電装置は、複数の端末装置のそれぞれに対して複数のビームを同時に又は時間をずらして形成するビームフォーミングにより、複数のビームを介して前記複数の端末装置のそれぞれに無線電力伝送用信号を送信する無線処理部と、複数の端末装置のそれぞれについて、端末装置の現在位置の位置情報を含む端末情報を取得する情報取得部と、複数の端末装置のそれぞれの端末情報に基づいて、複数の端末装置のそれぞれにおいて無線電力伝送用信号が所定の受信電力で受信されるように、ビームフォーミングを制御する制御部と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の端末装置に無線送電する無線送電装置であって、
前記複数の端末装置のそれぞれに対して複数のビームを同時に又は時間をずらして形成するビームフォーミングにより、前記複数のビームを介して前記複数の端末装置のそれぞれに無線電力伝送用信号を送信する無線処理部と、
前記複数の端末装置のそれぞれについて、前記端末装置の現在位置の位置情報を含む端末情報を取得する情報取得部と、
前記複数の端末装置のそれぞれの前記端末情報に基づいて、前記複数の端末装置のそれぞれにおいて前記無線電力伝送用信号が所定の受信電力で受信されるように、前記ビームフォーミングを制御する制御部と、
を備える、無線送電装置。
【請求項2】
請求項1の無線送電装置において、
前記制御部は、前記無線送電装置から前記複数の端末装置それぞれまでの距離に基づいて、前記複数のビームを時分割で形成する遠距離用のビームフォーミングと、前記複数のビームを同時に形成する近距離用のビームフォーミングとを切り替える、無線送電装置。
【請求項3】
請求項2の無線送電装置において、
前記制御部は、前記複数の端末装置のうち、前記距離が所定の基準距離よりも長い位置に存在する複数の端末装置に対して前記遠距離用のビームフォーミングで前記ビームを形成し、前記距離が前記所定の基準距離以下の位置に存在する複数の端末装置に対して前記近距離用のビームフォーミングで前記ビームを形成するように制御する、無線送電装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかの無線送電装置において、
前記無線処理部は、
複数のアンテナ素子が2次元的又は3次元的に配列されたアレーアンテナと、前記複数のアンテナ素子に対応するように設けられ前記無線電力伝送用信号を生成する複数の信号生成部と、を有し、
前記制御部からのビームフォーミング制御情報に基づいて、前記複数のアンテナ素子に供給される無線電力伝送用信号の位相又は位相及び振幅の両方を変化させる、無線送電装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかの無線送電装置において、
前記端末情報は、前記複数の端末装置のそれぞれに設けられた電池の充電情報を含み、
前記制御部は、前記複数の端末装置のそれぞれについて、前記充電情報に基づいて前記端末装置に対する前記ビームの形成をオン・オフするように前記ビームフォーミングを制御する、無線送電装置。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれかの無線送電装置において、
前記端末情報は、前記複数の端末装置のそれぞれに設けられた電池の充電情報を含み、
前記制御部は、前記複数の端末装置のそれぞれについて、前記充電情報に基づいて前記端末装置に対して形成する前記ビームの種類を変更するように前記ビームフォーミングを制御する、無線送電装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかの無線送電装置において、
前記複数の端末装置と無線通信可能な通信中継装置として兼用される、無線送電装置。
【請求項8】
請求項7の無線送電装置において、
通信用アンテナを介して前記複数の端末装置のそれぞれと無線通信を行う第1無線処理部と、
前記ビームフォーミングにより電力伝送用アンテナを介して前記複数の端末装置のそれぞれに前記無線電力伝送用信号を送信する第2無線処理部と、
を有する、無線送電装置。
【請求項9】
請求項7又は8の無線送電装置において、
当該無線送電装置は、移動通信システムの基地局又は無線LANのアクセスポイント装置である、無線送電装置。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかの無線送電装置と、複数の端末装置とを備え、
前記複数の端末装置はそれぞれ、
前記無線送電装置から送信された前記無線電力伝送用信号を受信する無線処理部と、
前記無線電力伝送用信号を受信した受信信号の電力を、受電電力として出力する電力出力部と、を有する、無線電力伝送システム。
【請求項11】
請求項10の無線電力伝送システムにおいて、
前記複数の端末装置はそれぞれ、
通信用アンテナを介して前記通信中継装置と無線通信を行う第1無線処理部と、
電力伝送用アンテナを介して前記通信中継装置から前記無線電力伝送用信号を受信する第2無線処理部と、
を有する、無線電力伝送システム。
【請求項12】
複数の端末装置に無線送電する方法であって、
前記複数の端末装置のそれぞれに対して複数のビームを同時に又は時間をずらして形成するビームフォーミングにより、前記複数のビームを介して前記複数の端末装置のそれぞれに無線電力伝送用信号を送信することと、
前記複数の端末装置のそれぞれについて、前記端末装置の現在位置の位置情報を含む端末情報を取得することと、
前記複数の端末装置のそれぞれの前記端末情報に基づいて、前記複数の端末装置のそれぞれにおいて前記無線電力伝送用信号が所定の受信電力で受信されるように、前記ビームフォーミングを制御することと、
を含む、方法。
【請求項13】
複数の端末装置に無線送電する無線送電装置に備えるコンピュータ又はプロセッサにおいて実行されるプログラムであって、
前記複数の端末装置のそれぞれに対して複数のビームを同時に又は時間をずらして形成するビームフォーミングにより、前記複数のビームを介して前記複数の端末装置のそれぞれに無線電力伝送用信号を送信するためのプログラムコードと、
前記複数の端末装置のそれぞれについて、前記端末装置の現在位置の位置情報を含む端末情報を取得するためのプログラムコードと、
前記複数の端末装置のそれぞれの前記端末情報に基づいて、前記複数の端末装置のそれぞれにおいて前記無線電力伝送用信号が所定の受信電力で受信されるように、前記ビームフォーミングを制御するためのプログラムコードと、
を含む、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の端末装置に無線送電する無線送電装置、無線電力伝送システム、方法及びプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、無線フレームに設定された複数の無線リソースの少なくとも一部を用いて基地局(通信中継装置)と端末装置との間で通信を行う通信システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2017/164220号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の通信システムの基地局や無線LANアクセスポイント装置等の通信中継装置に接続して通信する端末装置として、内蔵電池から供給される電力を主に利用する携帯型の端末装置がある。この端末装置では、内蔵電池の残量が少なくなったときに内蔵電池を充電する煩雑な作業が必要である。また、内蔵電池ではなく有線接続の電源ラインから供給される電力を利用する端末装置は、そのような電源ラインを利用可能な場所での使用に制限される。このように基地局などの通信中継装置に接続して通信を行う様々な端末装置への給電をまかなうことができるような給電インフラが未整備である。
【0005】
第5世代及びその後の次世代の通信システムでは、基地局や無線LANアクセスポイント装置等の通信中継装置に接続して通信する端末装置(例えば、ユーザ装置、IoTデバイス等)が急増してくるのが予想され、膨大なトラフィックを捌く通信インフラの整備が進められている。しかしながら、上記通信を行う膨大な数の端末装置への給電をまかなうことができる給電インフラは未整備のままである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る無線送電装置は、複数の端末装置に無線送電する無線送電装置である。この無線送電装置は、前記複数の端末装置のそれぞれに対して複数のビームを同時に又は時間をずらして形成するビームフォーミングにより、前記複数のビームを介して前記複数の端末装置のそれぞれに無線電力伝送用信号を送信する無線処理部と、前記複数の端末装置のそれぞれについて、前記端末装置の現在位置の位置情報を含む端末情報を取得する情報取得部と、前記複数の端末装置のそれぞれの前記端末情報に基づいて、前記複数の端末装置のそれぞれにおいて前記無線電力伝送用信号が所定の受信電力で受信されるように、前記ビームフォーミングを制御する制御部と、を備える。
【0007】
本発明の他の態様に係るシステムは、前記無線送電装置と複数の端末装置とを備える。前記複数の端末装置はそれぞれ、前記無線送電装置から送信された前記無線電力伝送用信号を受信する無線処理部と、前記無線電力伝送用信号を受信した受信信号の電力を、受信電力として出力する電力出力部と、を有する。
【0008】
本発明の更に他の態様に係る方法は、複数の端末装置に無線送電する方法である。この方法は、前記複数の端末装置のそれぞれに対して複数のビームを同時に又は時間をずらして形成するビームフォーミングにより、前記複数のビームを介して前記複数の端末装置のそれぞれに無線電力伝送用信号を送信することと、前記複数の端末装置のそれぞれについて、前記端末装置の現在位置の位置情報を含む端末情報を取得することと、前記複数の端末装置のそれぞれの前記端末情報に基づいて、前記複数の端末装置のそれぞれにおいて前記無線電力伝送用信号が所定の受信電力で受信されるように、前記ビームフォーミングを制御することと、を含む。
【0009】
本発明の更に他の態様に係るプログラムは、複数の端末装置に無線送電する無線送電装置に備えるコンピュータ又はプロセッサにおいて実行されるプログラムである。このプログラムは、前記複数の端末装置のそれぞれに対して複数のビームを同時に又は時間をずらして形成するビームフォーミングにより、前記複数のビームを介して前記複数の端末装置のそれぞれに無線電力伝送用信号を送信するためのプログラムコードと、前記複数の端末装置のそれぞれについて、前記端末装置の現在位置の位置情報を含む端末情報を取得するためのプログラムコードと、前記複数の端末装置のそれぞれの前記端末情報に基づいて、前記複数の端末装置のそれぞれにおいて前記無線電力伝送用信号が所定の受信電力で受信されるように、前記ビームフォーミングを制御するためのプログラムコードと、を含む。
【0010】
前記無線送電装置、無線電力伝送システム、前記方法及び前記プログラムにおいて、前記無線送電装置から前記複数の端末装置それぞれまでの距離に基づいて、前記複数のビームを時分割で形成する遠距離用のビームフォーミングと、前記複数のビームを同時に形成する近距離用のビームフォーミングとを切り替えてもよい。
【0011】
前記無線送電装置、無線電力伝送システム、前記方法及び前記プログラムにおいて、前記複数の端末装置のうち、前記距離が所定の基準距離よりも長い位置に存在する複数の端末装置に対して前記遠距離用のビームフォーミングで前記ビームを形成し、前記距離が前記所定の基準距離以下の位置に存在する複数の端末装置に対して前記近距離用のビームフォーミングで前記ビームを形成するように制御してもよい。
【0012】
前記無線送電装置、無線電力伝送システム、前記方法及び前記プログラムにおいて、前記無線送電装置の無線処理部は、複数のアンテナ素子が2次元的又は3次元的に配列されたアレーアンテナと、前記複数のアンテナ素子に対応するように設けられ前記無線電力伝送用信号を生成する複数の送信信号生成部と、を有し、前記制御部からのビームフォーミング制御情報に基づいて、前記複数のアンテナ素子に供給される無線電力伝送用信号の位相又は位相及び振幅の両方を変化させてもよい。
【0013】
前記無線送電装置、無線電力伝送システム、前記方法及び前記プログラムにおいて、前記端末情報は、前記複数の端末装置のそれぞれに設けられた電池の充電情報を含み、前記複数の端末装置のそれぞれについて、前記充電情報に基づいて前記端末装置に対する前記ビームの形成をオン・オフするように前記ビームフォーミングを制御してもよい。
【0014】
前記無線送電装置、無線電力伝送システム、前記方法及び前記プログラムにおいて、前記端末情報は、前記複数の端末装置のそれぞれに設けられた電池の充電情報を含み、前記複数の端末装置のそれぞれについて、前記充電情報に基づいて前記端末装置に対して形成する前記ビームの種類を変更するように前記ビームフォーミングを制御してもよい。
【0015】
前記無線送電装置、無線電力伝送システム、前記方法及び前記プログラムにおいて、前記無線送電装置は、前記複数の端末装置と無線通信可能な通信中継装置として兼用されてもよい。
【0016】
前記無線送電装置、無線電力伝送システム、前記方法及び前記プログラムにおいて、前記無線送電装置は、通信用アンテナを介して前記複数の端末装置のそれぞれと無線通信を行う第1無線処理部と、前記ビームフォーミングにより電力伝送用アンテナを介して前記複数の端末装置のそれぞれに前記無線電力伝送用信号を送信する第2無線処理部と、を有してよい。
【0017】
前記無線送電装置、無線電力伝送システム、前記方法及び前記プログラムにおいて、前記無線送電装置は、移動通信システムの基地局又は無線LANのアクセスポイント装置であってもよい。
【0018】
前記無線送電装置、無線電力伝送システム、前記方法及び前記プログラムにおいて、前記複数の端末装置はそれぞれ、通信用アンテナを介して前記通信中継装置と無線通信を行う第1無線処理部と、電力伝送用アンテナを介して前記通信中継装置から前記無線電力伝送用信号を受信する第2無線処理部と、を有してもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、複数の端末装置のそれぞれに対して所定電力を効率よく給電することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】実施形態に係る無線電力伝送システムの概略構成の一例を示す説明図。
図2】実施形態に係るシステムを構成する基地局及び端末装置(UE)の主要構成の一例を示すブロック図。
図3】本実施形態に係る基地局のアレーアンテナ及び無線処理部の一構成例を示すブロック図。
図4】実施形態に係る基地局から複数の端末装置(UE)への時分割方式のビームフォーミングによる端末装置(UE)毎の給電の一例を示す説明図。
図5】実施形態に係る基地局から複数の端末装置(UE)へのマルチビーム方式のビームフォーミングによる端末装置(UE)毎の給電の一例を示す説明図。
図6】(a)は基地局のアレーアンテナで形成されるビームと複数の端末装置(UE)との位置関係の一例を示す説明図。(b)は端末装置(UE)の電力出力部における整流回路の入力電力と整流効率との関係の一例を示すグラフ。
図7】実施形態に係る基地局から複数の端末装置(UE)への距離に応じたビームフォーミングによる端末装置(UE)毎の給電の一例を示す説明図。
図8】実施形態に係る基地局から複数の端末装置(UE)への距離に応じたビームフォーミングによる端末装置(UE)毎の給電の他の例を示す説明図。
図9】実施形態に係る基地局及び端末装置(UE)の主要構成の他の例を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
本書に記載された実施形態に係る無線送電装置は、移動通信の基地局や無線LANアクセスポイント装置(AP)などの通信中継装置と通信可能な複数の端末装置(例えば通信機能を有するIoTデバイス)のそれぞれに対して複数のビームを同時に又は時間をずらして形成するビームフォーミングにより、複数のビームを介して複数の端末装置のそれぞれに無線電力伝送用信号を送信する。無線送電装置は、複数の端末装置のそれぞれについて、端末装置の現在位置の位置情報を含む端末情報を取得し、複数の端末装置のそれぞれの端末情報に基づいて、複数の端末装置のそれぞれにおいて無線電力伝送用信号が所定の受信電力で受信されるように、前記ビームフォーミングを制御することにより、複数の端末装置のそれぞれに対して所定電力を効率よく給電することができる。
【0022】
なお、以下の実施形態では、通信中継装置(移動通信の基地局)を無線送電装置として兼用して無線電力伝送(WPT)システムを構成した場合について説明するが、移動通信の基地局とは別に設けた無線送電装置から複数の端末装置へ給電する無線電力伝送(WPT)システムを構成してもよい。また、本実施形態のシステムは、通信中継装置(移動通信の基地局)が無線送電装置の機能を有する通信システム(移動通信システム)として構成してもよい。また、本実施形態の通信中継装置は、無線LANのアクセスポイント装置であってもよい。
【0023】
図1は、本実施形態に係る無線電力伝送システムの概略構成の一例を示す説明図である。本実施形態の無線電力伝送システムは、通信エリア(セル)10Aを形成するセルラー方式の基地局10と、通信エリア10Aに在圏しているときに基地局10に接続して基地局10と無線通信可能な端末装置(以下「UE」(ユーザ装置)ともいう。)20と、を有する。
【0024】
UE20は、移動通信システムの移動局でもよいし、通信装置(例えば移動通信モジュール)と各種デバイスとを組み合わせたものであってもよい。
【0025】
図1において、基地局10は、多数のアンテナ素子を有する複数のアレーアンテナ110を備え、複数のUE20との間でmassive MIMO(以下「mMIMO」ともいう。)伝送方式の通信を行うことができる。mMIMOは、アレーアンテナ110を用いてデータ送受信を行うことにより大容量・高速通信を実現する無線伝送技術である。また、複数のUE20のそれぞれに対して時分割で又は同時にビーム10Bを形成するビームフォーミングを行うMU(Multi User)-MIMO伝送方式で通信を行うことができる。多素子のアレーアンテナ110を用いてMU-MIMO伝送を行うことにより、各UE20の通信環境に応じてUE20ごとに適切なビームを向けて通信できるため、セル全体の通信品質を改善できる。また、同一の無線リソース(時間・周波数リソース)を用いて複数のUE20との通信ができるため、システム容量を拡大することができる。
【0026】
また、図1において、通信エリア10A内の一部は、基地局10から端末装置20に向けて無線電力伝送を行う無線電力伝送エリア(以下「WPTエリア」という。)10A'になっている。WPTエリア10A'は図示のように通信エリア10Aよりも狭いエリアでもよいし、通信エリア10Aと同じ又はほぼ同じサイズ及び位置のエリアであってもよい。
【0027】
WPTエリア10A'では、基地局10から複数のUE20のそれぞれに無線電力伝送用信号が送信される。無線電力伝送用信号の送信には、例えば、基地局10からの下りリンクの無線フレームを構成する複数の無線リソース(時間・周波数リソース)であるリソースブロックのうち通信に用いられていない通信未使用の無線リソース(リソースブロック)を無線電力伝送ブロックとして活用してもよい。また、基地局10は、UE20への下りリンクの無線フレームにおいて、通信未使用の無線リソースである無線電力伝送ブロック(WPTブロック)に無線電力伝送用信号としてのダミー信号(以下「WPT用ダミー信号」ともいう。)を割り当てた送信信号を生成してUE20に送信してもよい。
【0028】
特に、第5世代又はそれ以降の世代の移動通信システムにおいては、無線フレームの一部のサブキャリアのみに必要最小限の参照信号(RS)や制御信号を配置するリーンキャリアという技術が提案されており、無線フレームにおける通信未使用の無線リソースの部分を有効活用してUE20への無線電力伝送を行うことが期待される。
【0029】
図2は、本実施形態に係るシステムを構成する基地局10及び端末装置20の主要構成の一例を示すブロック図である。基地局10は、基地局装置100とアンテナ110とを備える。なお、図2において、図示の都合上、単数のUE20について示しているが、基地局10は、図示のUE20と同様な構成の複数のUEと同時に又は時分割で通信することができ、当該複数のUEに対して無線電力伝送用信号(WPT用信号)を同時に又は時分割で送信することができる。
【0030】
アンテナ110は、例えば、図1に示すように多数のアンテナ素子を有するアレーアンテナである。アンテナ110は単数でもよいし複数であってもよい。例えば、アンテナ110は複数のセクタセルに対応させて複数配置してもよい。
【0031】
基地局装置100は、通信信号処理部120と無線処理部130と電力伝送制御部140とNW(ネットワーク)通信部150とを備える。通信信号処理部120は、UE20との間で送受信される各種のユーザデータや制御情報等の信号を処理する。無線処理部130は、通信信号処理部120で生成した送信信号をアンテナ110からUE20に送信したり、UE20からアンテナ110を介して受信した受信信号を通信信号処理部120に出力したりする。
【0032】
通信信号処理部120は、無線電力伝送用信号としてのWPT用ダミー信号を含む下りリンクの送信信号を生成する。例えば、通信信号処理部120は、UE20に対する下りリンクの通信の際に、複数の無線リソースのうち通信に使用されていない通信未使用の無線リソースを用いたWPT用ダミー信号を含む下りリンクの送信信号を生成してもよい。WPT用ダミー信号を含む下りリンクの送信信号は、任意の変調方式で変調して生成することができる。例えば、WPT用ダミー信号は、デジタル変調方式の複数のシンボル点のうち振幅が最大のシンボル点で変調された信号であってもよい。また例えば、送信信号の生成は、QAM(直交振幅変調)等の一次変調及びOFDM(直交周波数多重変調)等の二次変調を含んでもよい。また、UE20に対する下りリンク通信の送信信号に、通信未使用の無線リソースを用いたWPT用ダミー信号を含める処理は、基地局10が自律的に行ってもよいし、UE20からの要求若しくは指示又は管理サーバからの要求若しくは指示に基づいて行ってもよい。
【0033】
無線処理部130は、通信信号処理部120で生成されたWPT用ダミー信号を含む下りリンクの送信信号を、アンテナ110を介してUE20に送信する。
【0034】
また、無線処理部130は、UE20に対する下りリンクの通信の際に、UE20毎に又は複数のUE20が属するターゲットエリアのUEグループ毎に、個別のビーム10Bを形成するビームフォーミング(BF)制御を行い、UE20毎に又はUEグループ毎に無線電力伝送を行う。UE20毎又はUEグループ毎のBF制御は、通信信号処理部120における周波数領域のデジタルBF制御で行ってもよいし、無線処理部130におけるアナログBF制御で行ってもよい。
【0035】
電力伝送制御部140は、WPTエリア10A'内に位置する複数のUE20の端末情報に基づいて、各UE20に対するWPT用ダミー信号を含む送信信号を生成して送信するように、通信信号処理部120を制御する。例えば、電力伝送制御部140は、複数のUE20に対して個別のビーム10Bを形成するためのBF(ビームフォーミング)制御情報を生成して無線処理部130に送る。
【0036】
UE20の端末情報は、移動通信ネットワーク、インターネットなどの通信ネットワーク30のサーバ35から受信して取得してもよいし、WPTエリア10A'内に位置する複数のUE20のそれぞれから受信して取得してもよい。サーバ35は、単数又は複数のコンピュータ装置で構成されている。サーバ35は、通信ネットワーク30に設けられたノードであってもよいし、通信ネットワーク30に構築されたクラウドコンピュータシステム(以下「クラウドシステム」ともいう。)であってもよい。
【0037】
端末情報は、UE20の現在位置の位置情報を含む。端末情報は、UE20の電池の残量情報等の充電情報を含んでもよい。
【0038】
NW通信部150は、有線又は無線の通信回線を介して通信ネットワーク30に接続され、サーバ35と通信することができる。NW通信部150は、UE20から受信した通信データ又は情報を通信ネットワーク30側に送信したり、UE20に送信する通信データ又は情報を通信ネットワーク30側から受信したりすることもできる。
【0039】
図2において、UE20は、アンテナ210と無線処理部220と通信信号処理部230と電力出力部240と電池250とを含む。無線処理部220は、通信信号処理部230で生成した送信信号をアンテナ210から基地局10に送信したり、基地局10からアンテナ210を介して受信した受信信号を通信信号処理部230に出力したりする。
【0040】
無線処理部220は、基地局10から送信されたWPT用ダミー信号を含む送信信号を受信する。電力出力部240は、例えば整流器を含む整流回路を有し、基地局10からのWPT用ダミー信号を含む送信信号を受信した受信信号の電力を、電池充電用の直流の受信電力(以下、「受電電力」ともいう。)として出力する。電力出力部240から出力された受電電力により、電池250を充電することができる。
【0041】
図3は、本実施形態に係る基地局10のアレーアンテナ110及び無線処理部130の一構成例を示すブロック図である。図3において、アレーアンテナ110は、複数(n×m個)のアンテナ素子110a(1,1)~110a(n,m)が2次元的に配列した構成を有している。無線処理部130は、アンテナ素子110a(1,1)~110a(n,m)に対応する複数の送信信号生成部としての送信モジュール130a(1,1)~130a(n,m)を有する。なお、図3では、図示の都合上、送信モジュール130a(1,1)~130a(n,1)についてのみ表し、他の送信モジュール130a(2,1)~130a(n,m)については、図示を省略している。
【0042】
送信モジュール130a(1,1)~130a(n,m)はそれぞれ、例えば、図3に示すように高周波信号生成部1301と可変移相器1302と高周波電力増幅器1303とを備える。高周波信号生成部1301は、例えば、通信信号処理部120から受けたWPT用ダミー信号を含む送信信号と局部発振器からの高周波信号とを混合し、不要な周波数信号成分を阻止することにより、対応するアンテナ素子110aに供給する所定周波数の高周波信号を生成する。なお、後述のように通信用の無線処理部とは別に電力伝送用の無線処理部を設ける場合は、高周波信号生成部1301は高周波発振器であってもよい。
【0043】
可変移相器1302は、電力伝送制御部140から受けたビームフォーミング制御情報(BF制御情報)としての移相情報に基づいて、対応するアンテナ素子110aに供給するWPT用ダミー信号を含む送信信号の位相φを変化させて出力する。可変移相器1302は、電力伝送制御部140から受けたBF制御情報(移相情報、振幅情報)に基づいて、対応するアンテナ素子110aに供給する送信信号の位相φ及び振幅の両方を変化させて出力してもよい。
【0044】
高周波電力増幅器1303は、可変移相器1302から出力された所定の周波数、位相及び振幅の送信信号の電力を所定電力まで増幅し、対応するアンテナ素子110aに供給する。
【0045】
送信モジュール130a(1,1)~130a(n,m)のそれぞれから出力された所定の位相φ(1,1)~φ(n,m)の送信信号又は所定の位相φ(1,1)~φ(n,m)及び振幅A(1,1)~A(n,m)の送信信号が、アンテナ素子110a(1,1)~110a(n,m)に供給されることにより、複数のUE20のそれぞれに対して時分割で又は同時にビーム10Bを形成するビームフォーミングを行うことができる。
【0046】
図4は、本実施形態に係る基地局10から複数の端末装置(UE)20への時分割方式のビームフォーミングによるUE20毎の給電の一例を示す説明図である。図4の例では、基地局10のアレーアンテナ110から複数のUE20(1)~UE20(4)のそれぞれに向いた指向性を有する複数のビーム10B(1)~10B(4)を時分割で形成している。複数のUE20(1)~UE20(4)に対するビーム10B(1)~10B(4)は所定の時間間隔で定期的に又は不定期に切り替えて形成することができる。例えば、図4に示す時間帯では、2番目のUE20(2)に対するビーム10B(2)のみ形成され、UE20(2)に対してのみ給電される。
【0047】
図4の時分割方式のビームフォーミングの場合は、複数のUE20(1)~UE20(4)のそれぞれに対して形成されるビーム10Bの指向性が高く且つ無線給電時のゲインを高くすることができる。
【0048】
図5は、本実施形態に係る基地局10から複数の端末装置(UE)20へのマルチビーム方式のビームフォーミングによるUE20毎の給電の一例を示す説明図である。図5の例では、基地局10のアレーアンテナ110から複数のUE20(1)~UE20(4)のそれぞれに向いた指向性を有する複数のビーム10B(1)~10B(4)を同時に形成している。
【0049】
図5のマルチビーム方式のビームフォーミングの場合は、多数のUE20に対する無線給電を同時に行うことができる。
【0050】
以上説明した基地局10からのビームフォーミングによって複数のUE20に無線給電するシステムについて、本願発明者等が更に実験及び検討を行い、以下に示すように時分割方式とマルチビーム方式とを組み合わせて各UE20に対するビームフォーミングを行うことにより、基地局10からの距離にかかわらず各UE20での整流効率の低下を抑制しつつ各UE20に対して効率的に給電できることがわかった。
【0051】
図6(a)は基地局10のアレーアンテナ110で形成されるビーム10Bと複数の端末装置(UE)20との位置関係の一例を示す説明図であり、図6(b)はUE20の電力出力部240における整流回路の入力電力と整流効率との関係の一例を示すグラフである。
【0052】
前述のようにアレーアンテナ110からUE20に対してビーム10Bを形成して給電する場合、アレーアンテナ110からの距離(以下「送電距離」ともいう。)に応じてUE20での受電電力が変化する。例えば、図6(a)において、ビーム10Bを介して給電される複数のUE20(1)及び20(2)のうち、送電距離D1が短いUE20(1)では受電電力が大きく、送電距離D2が長いUE20(2)では受電電力が小さい。
【0053】
一方、図6(b)に示すように、UE20の電力出力部240における整流回路の入力電力(整流前の交流電力)に対する整流後の直流電力の比率である整流効率は、整流回路に入力される入力電力に応じて高くなっていくが、入力電力が所定電力よりも大きくなるとブレークダウン電圧効果により整流効率が低下する。例えば、図6(a)及び(b)に示すように、送電距離D2が長いUE20(2)で受信された受電電力が入力電力Pi(2)として整流回路に入力されるときにピークの整流効率が得られ、送電距離D1が短いUE20(1)で受信された受電電力が入力電力Pi(1)として入力されるときは整流効率が低下している。このように送電距離に応じてUE20の受電電力が変わり、送電距離が所定距離よりも短く受電電力が大きいUE20では高い整流効率が得られない。また、整流回路への入力電力が大きすぎると整流回路を構成するダイオードの耐圧を超え、ダイオードが破壊される可能性が高くなる。
【0054】
そこで、本実施形態のシステムにおいて、以下に示すように、UE20の現在位置の位置情報を含む端末情報に基づいて、複数のUE20のそれぞれにおいてWPT用ダミー信号を含む送信信号が所定の受信電力で受信されるように、前述の時分割方式とマルチビーム方式とを組み合わせてビームフォーミングを制御してもよい。
【0055】
図7は、本実施形態に係る基地局10から複数の端末装置(UE)20への距離に応じたビームフォーミングによるUE20毎の給電の一例を示す説明図である。図7において、無線送電装置として兼用される基地局10は、前述の電力伝送制御部140で無線処理部130を制御することにより、基地局10から複数のUE20(1)~20(6)それぞれまでの距離に基づいて、複数のビーム10B(2)、20(3)を時分割で形成する遠距離用のビームフォーミングと、複数のビーム10B(1)、10B(4)~10B(6)を同時に形成する近距離用のビームフォーミングとを切り替えている。
【0056】
例えば、基地局10は、前述の電力伝送制御部140で無線処理部130を制御することにより、給電対象の複数のUE20(1)~20(6)について、基地局10のアレーアンテナ110からの距離と所定の基準距離とを比較する。ここで、電力伝送制御部140は、基地局10のアレーアンテナ110からの距離が所定の基準距離よりも長い位置に存在する複数のUE20(2),20(3)に対して遠距離用のビームフォーミングでビーム10B(2)、10B(3)を時分割で形成するように制御する。一方、電力伝送制御部140は、基地局10のアレーアンテナ110からの距離が所定の基準距離以下の位置に存在する複数のUE20(1)、20(4)~20(6)に対して近距離用のビームフォーミングでビーム10B(1)、10B(4)~10B(6)を同時に形成する。
【0057】
上記制御に用いる基準距離は、例えば、UE20の電力出力部240に用いる整流回路の入力電力と整流効率との関係を示す整流効率特性(前述の図6(b)参照)に基づいて、WPTエリア10A'の全体で、複数のUE20のそれぞれにおいて所定の整流効率が得られるとともに基地局10からの送信信号が所定の受信電力で受信されるように設定される。上記基準距離の決定には、上記整流効率特性とともに、遠距離用のビームフォーミング及び近距離用のビームフォーミングのそれぞれで用いられるビームの種類(例えばビーム幅)を考慮してもよい。
【0058】
図8は、本実施形態に係る基地局10から複数の端末装置(UE)20への距離に応じたビームフォーミングによるUE20毎の給電の他の例を示す説明図である。なお、図8において、前述の図7と共通する部分については説明を省略する。
【0059】
図8の例では、前記近距離用のビームフォーミングにおいて、更にマルチビーム方式と時分割方式とを組み合わせている。例えば、電力伝送制御部140は、基地局10のアレーアンテナ110からの距離が所定の基準距離以下の位置に存在する近距離の複数のUE20(1)、20(4)~20(6)のうち、一部のUE20(1)、UE20(4)についてはマルチビーム方式で同時にビーム10B(1)、10B(4)を形成し、残りのUE20(5)、UE20(6)についてはビーム10B(1)、10B(4)を時分割で形成するように制御する。
【0060】
これらのビームフォーミング制御によれば、整流効率を考慮して複数のUE20に対して所定電力を給電することができる。また、送電電力の超過によりダイオードが破損する可能性を低減することができる。すなわち、本実施形態によれば、基地局10からの距離にかかわらず複数のUE20のそれぞれに対して所定電力を効率よく給電することができる。
【0061】
なお、上記ビームフォーミング制御のそれぞれにおいて、前記端末情報は、複数のUE20のそれぞれに設けられた電池250の充電情報を含み、電力伝送制御部140は、複数のUE20のそれぞれについて、前記充電情報に基づいてUE20に対するビーム10Bの形成をオン・オフするようにビームフォーミングを制御してもよい。この場合、電池250の充電が不要なUEE20に対する給電を回避することができる。
【0062】
また、上記ビームフォーミング制御のそれぞれにおいて、前記端末情報は、複数のUE20のそれぞれに設けられた電池250の充電情報を含み、電力伝送制御部140は、複数のUE20のそれぞれについて、前記充電情報に基づいてUE20に対して形成するビーム10Bの種類(例えばビーム幅)を変更するようにビームフォーミングを制御してもよい。この場合、電池250の残量が少ないUEE20に対してビーム幅が狭く指向性が高い種類のビームを形成し、当該電池250をすみやかに充電することができる。
【0063】
図9は、本実施形態に係る基地局10及び端末装置(UE)20の主要構成の更に他の例を示すブロック図である。図9の例は、基地局装置100が無線電力伝送用のアンテナ及び無線処理部を備え、UE20が無線電力伝送用のアンテナ及び無線処理部を備え、電池250を有するIoTデバイス260を備えるシステムの例である。なお、図9において、図2のシステムと共通する部分については同じ符号を付し、説明を省略する。また、図9において、図示の都合上、単数のUE20について示しているが、基地局10は、図示のUE20と同様な構成の複数のUEと同時に又は時分割で通信することができ、当該複数のUEに対して無線電力伝送用信号(WPT用信号)を同時に又は時分割で送信することができる。
【0064】
図9において、基地局装置は、通信用アンテナ111を介してUE20と無線通信を行う第1無線処理部131と、送電用アンテナ112を介して無線電力伝送用信号(WPT用信号)を含む送信信号をUE20に送信する第2無線処理部132と、を備える。通信用アンテナ111及び送電用アンテナ112は例えば前述のアレーアンテナである。
【0065】
通信信号処理部120は、UE20との間で送受信される各種のユーザデータや制御情報等の信号を処理する。第1無線処理部131は、通信信号処理部120で生成した送信信号をアンテナ111からUE20に送信したり、UE20からアンテナ111を介して受信した受信信号を通信信号処理部120に出力したりする。
【0066】
第2無線処理部132は、電力伝送制御部140から受けたBF制御信号に基づいて制御したビームフォーミングにより、無線電力伝送用信号(WPT用信号)を含む送信信号を、アンテナ112を介してUE20に送信する。
【0067】
電力伝送制御部140は、サーバ35から受信して取得した複数のUE20のそれぞれの端末情報、又は、複数のUE20のそれぞれから受信して取得した端末情報に基づいて、BF制御信号を生成して出力する。
【0068】
UE20は、通信用アンテナ211を介して基地局10と無線通信を行う第1無線処理部221と、受電用アンテナ212を介して基地局10からの無線電力伝送用信号(WPT用信号)を含む送信信号を受信する第2無線処理部222と、を備える。
【0069】
通信信号処理部230は、データや制御情報などの通信の送信信号を生成して第1無線処理部221に出力したり、通信用アンテナ211及び第1無線処理部221を介して受信した受信信号を処理し、データや制御情報などをIoTデバイス260に出力したりする。
【0070】
第2無線処理部222は、基地局10から送信された無線電力伝送用信号(WPT用信号)を含む送信信号を、受電用アンテナ212を介して受信し、電力出力部240に渡す。電力出力部240は、例えば整流器を有し、基地局10からの無線電力伝送用信号(WPT用信号)を含む送信信号を受信した受信信号の電力を、電池充電用の受電電力として出力する。電力出力部240から出力された受電電力により、IoTデバイス260に内蔵されている電池250を充電することができる。
【0071】
以上、本実施形態によれば、複数のUE(端末装置)20のそれぞれに対して所定電力を効率よく給電することができる。
【0072】
なお、本明細書で説明された処理工程並びに無線送電装置、通信システム及び無線電力伝送システムの構成要素は、様々な手段によって実装することができる。例えば、これらの工程及び構成要素は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、又は、それらの組み合わせで実装されてもよい。
【0073】
ハードウェア実装については、実体(例えば、各種無線通信装置、基地局装置(Node B、Node G)、端末装置、ハードディスクドライブ装置、又は、光ディスクドライブ装置)において上記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、1つ又は複数の、特定用途向けIC(ASIC)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、デジタル信号処理装置(DSPD)、プログラマブル・ロジック・デバイス(PLD)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、電子デバイス、本明細書で説明された機能を実行するようにデザインされた他の電子ユニット、コンピュータ、又は、それらの組み合わせの中に実装されてもよい。
【0074】
また、ファームウェア及び/又はソフトウェア実装については、上記構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、本明細書で説明された機能を実行するプログラム(例えば、プロシージャ、関数、モジュール、インストラクション、などのコード)で実装されてもよい。一般に、ファームウェア及び/又はソフトウェアのコードを明確に具体化する任意のコンピュータ/プロセッサ読み取り可能な媒体が、本明細書で説明された上記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段の実装に利用されてもよい。例えば、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば制御装置において、メモリに記憶され、コンピュータやプロセッサにより実行されてもよい。そのメモリは、コンピュータやプロセッサの内部に実装されてもよいし、又は、プロセッサの外部に実装されてもよい。また、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM)、プログラマブルリードオンリーメモリ(PROM)、電気的消去可能PROM(EEPROM)、フラッシュメモリ、フロッピー(登録商標)ディスク、コンパクトディスク(CD)、デジタルバーサタイルディスク(DVD)、磁気又は光データ記憶装置、などのような、コンピュータやプロセッサで読み取り可能な媒体に記憶されてもよい。そのコードは、1又は複数のコンピュータやプロセッサにより実行されてもよく、また、コンピュータやプロセッサに、本明細書で説明された機能性のある態様を実行させてもよい。
【0075】
また、前記媒体は非一時的な記録媒体であってもよい。また、前記プログラムのコードは、コンピュータ、プロセッサ、又は他のデバイス若しくは装置機械で読み込んで実行可能であればよく、その形式は特定の形式に限定されない。例えば、前記プログラムのコードは、ソースコード、オブジェクトコード及びバイナリコードのいずれでもよく、また、それらのコードの2以上が混在したものであってもよい。
【0076】
また、本明細書で開示された実施形態の説明は、当業者が本開示を製造又は使用するのを可能にするために提供される。本開示に対するさまざまな修正は当業者には容易に明白になり、本明細書で定義される一般的原理は、本開示の趣旨又は範囲から逸脱することなく、他のバリエーションに適用可能である。それゆえ、本開示は、本明細書で説明される例及びデザインに限定されるものではなく、本明細書で開示された原理及び新規な特徴に合致する最も広い範囲に認められるべきである。
【符号の説明】
【0077】
10 :無線送電装置、通信中継装置(基地局、AP)
10A :通信エリア
10A' :WPTエリア
10B :ビーム
20 :端末装置
100 :基地局装置
110 :アンテナ、アレーアンテナ
111 :通信用アンテナ
112 :送電用アンテナ
120 :通信信号処理部
130 :無線処理部
130a :送信信号生成部(送信モジュール)
1301 :高周波信号生成部
1302 :可変移相器
1303 :高周波電力増幅器
131 :第1無線処理部
132 :第2無線処理部
140 :電力伝送制御部
210 :アンテナ
211 :通信用アンテナ
212 :受電用アンテナ
220 :無線処理部
221 :第1無線処理部
222 :第2無線処理部
230 :通信信号処理部
240 :電力出力部
250 :電池
260 :IoTデバイス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2023-01-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の端末装置に無線送電する無線送電装置であって、
前記複数の端末装置のそれぞれに対して複数のビームを同時に又は時間をずらして形成するビームフォーミングにより、前記複数のビームを介して前記複数の端末装置のそれぞれに無線電力伝送用信号を送信する無線処理部と、
前記複数の端末装置のそれぞれについて、前記端末装置の現在位置の位置情報を含む端末情報を取得する情報取得部と、
前記複数の端末装置のそれぞれの前記端末情報に基づいて、前記複数の端末装置のそれぞれにおいて前記無線電力伝送用信号が所定の受信電力で受信されるように、前記ビームフォーミングを制御する制御部と、
を備え
記制御部は、前記無線送電装置から前記複数の端末装置それぞれまでの距離に基づいて、前記複数のビームを時分割で形成する遠距離用のビームフォーミングと、前記複数のビームを同時に形成する近距離用のビームフォーミングとを切り替える、無線送電装置。
【請求項2】
請求項の無線送電装置において、
前記制御部は、前記複数の端末装置のうち、前記距離が所定の基準距離よりも長い位置に存在する複数の端末装置に対して前記遠距離用のビームフォーミングで前記ビームを形成し、前記距離が前記所定の基準距離以下の位置に存在する複数の端末装置に対して前記近距離用のビームフォーミングで前記ビームを形成するように制御する、無線送電装置。
【請求項3】
請求項1又は2の無線送電装置において、
前記無線処理部は、
複数のアンテナ素子が2次元的又は3次元的に配列されたアレーアンテナと、前記複数のアンテナ素子に対応するように設けられ前記無線電力伝送用信号を生成する複数の信号生成部と、を有し、
前記制御部からのビームフォーミング制御情報に基づいて、前記複数のアンテナ素子に供給される無線電力伝送用信号の位相又は位相及び振幅の両方を変化させる、無線送電装置。
【請求項4】
請求項1乃至のいずれかの無線送電装置において、
前記端末情報は、前記複数の端末装置のそれぞれに設けられた電池の充電情報を含み、
前記制御部は、前記複数の端末装置のそれぞれについて、前記充電情報に基づいて前記端末装置に対する前記ビームの形成をオン・オフするように前記ビームフォーミングを制御する、無線送電装置。
【請求項5】
請求項1乃至のいずれかの無線送電装置において、
前記端末情報は、前記複数の端末装置のそれぞれに設けられた電池の充電情報を含み、
前記制御部は、前記複数の端末装置のそれぞれについて、前記充電情報に基づいて前記端末装置に対して形成する前記ビームの種類を変更するように前記ビームフォーミングを制御する、無線送電装置。
【請求項6】
請求項1乃至のいずれかの無線送電装置において、
前記複数の端末装置と無線通信可能な通信中継装置として兼用される、無線送電装置。
【請求項7】
請求項の無線送電装置において、
通信用アンテナを介して前記複数の端末装置のそれぞれと無線通信を行う第1無線処理部と、
前記ビームフォーミングにより電力伝送用アンテナを介して前記複数の端末装置のそれぞれに前記無線電力伝送用信号を送信する第2無線処理部と、
を有する、無線送電装置。
【請求項8】
請求項又はの無線送電装置において、
当該無線送電装置は、移動通信システムの基地局又は無線LANのアクセスポイント装置である、無線送電装置。
【請求項9】
請求項1乃至のいずれかの無線送電装置と、複数の端末装置とを備え、
前記複数の端末装置はそれぞれ、
前記無線送電装置から送信された前記無線電力伝送用信号を受信する無線処理部と、
前記無線電力伝送用信号を受信した受信信号の電力を、受電電力として出力する電力出力部と、を有する、無線電力伝送システム。
【請求項10】
請求項の無線電力伝送システムにおいて、
前記複数の端末装置はそれぞれ、
通信用アンテナを介して通信中継装置と無線通信を行う第1無線処理部と、
電力伝送用アンテナを介して前記通信中継装置から前記無線電力伝送用信号を受信する第2無線処理部と、
を有する、無線電力伝送システム。
【請求項11】
複数の端末装置に無線送電する方法であって、
前記複数の端末装置のそれぞれに対して複数のビームを同時に又は時間をずらして形成するビームフォーミングにより、前記複数のビームを介して前記複数の端末装置のそれぞれに無線電力伝送用信号を送信することと、
前記複数の端末装置のそれぞれについて、前記端末装置の現在位置の位置情報を含む端末情報を取得することと、
前記複数の端末装置のそれぞれの前記端末情報に基づいて、前記複数の端末装置のそれぞれにおいて前記無線電力伝送用信号が所定の受信電力で受信されるように、前記ビームフォーミングを制御することと、
無線送電装置から前記複数の端末装置それぞれまでの距離に基づいて、前記複数のビームを時分割で形成する遠距離用のビームフォーミングと、前記複数のビームを同時に形成する近距離用のビームフォーミングとを切り替えることと、
を含む、方法。
【請求項12】
複数の端末装置に無線送電する無線送電装置に備えるコンピュータ又はプロセッサにおいて実行されるプログラムであって、
前記複数の端末装置のそれぞれに対して複数のビームを同時に又は時間をずらして形成するビームフォーミングにより、前記複数のビームを介して前記複数の端末装置のそれぞれに無線電力伝送用信号を送信するためのプログラムコードと、
前記複数の端末装置のそれぞれについて、前記端末装置の現在位置の位置情報を含む端末情報を取得するためのプログラムコードと、
前記複数の端末装置のそれぞれの前記端末情報に基づいて、前記複数の端末装置のそれぞれにおいて前記無線電力伝送用信号が所定の受信電力で受信されるように、前記ビームフォーミングを制御するためのプログラムコードと、
前記無線送電装置から前記複数の端末装置それぞれまでの距離に基づいて、前記複数のビームを時分割で形成する遠距離用のビームフォーミングと、前記複数のビームを同時に形成する近距離用のビームフォーミングとを切り替えるためのプログラムコードと、
を含む、プログラム。