IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日立産機システムの特許一覧

<>
  • 特開-スクリュー圧縮機 図1
  • 特開-スクリュー圧縮機 図2
  • 特開-スクリュー圧縮機 図3
  • 特開-スクリュー圧縮機 図4
  • 特開-スクリュー圧縮機 図5
  • 特開-スクリュー圧縮機 図6
  • 特開-スクリュー圧縮機 図7
  • 特開-スクリュー圧縮機 図8
  • 特開-スクリュー圧縮機 図9
  • 特開-スクリュー圧縮機 図10
  • 特開-スクリュー圧縮機 図11
  • 特開-スクリュー圧縮機 図12
  • 特開-スクリュー圧縮機 図13
  • 特開-スクリュー圧縮機 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023070489
(43)【公開日】2023-05-19
(54)【発明の名称】スクリュー圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04C 18/16 20060101AFI20230512BHJP
   F04C 29/00 20060101ALI20230512BHJP
   F04C 29/04 20060101ALI20230512BHJP
【FI】
F04C18/16 B
F04C29/00 D
F04C29/04 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021182696
(22)【出願日】2021-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】谷本 聖太
(72)【発明者】
【氏名】酒井 航平
(72)【発明者】
【氏名】矢部 利明
【テーマコード(参考)】
3H129
【Fターム(参考)】
3H129AA03
3H129AB02
3H129BB12
3H129BB43
3H129CC05
3H129CC48
(57)【要約】
【課題】スクリューロータの吐出側シャフト部に対する冷却能力を簡素な構造によって高めることができるスクリュー圧縮機を提供する。
【解決手段】スクリュー圧縮機1の雄ロータ2は、吐出側シャフト部22の内部に軸方向に延びる冷却流路25を有する。冷却流路25の壁面25aにおける雄ロータ2の吐出側端面21bの位置と吐出側軸受6の取付位置との間の領域の少なくとも一部分に溝構造26が設けられている。溝構造26は、スクリューロータ2の周方向に長さ方向の成分を有すると共に軸方向に間隔をあけて存在する溝27によって構成される。静止部材のノズル15が冷却流路25の内部に壁面25aに対して隙間をあけて配置される。ノズル15は、軸方向の位置において溝構造26の少なくとも一部分と重なるように配置される。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
捩れたローブを有すると共に軸方向の一方側に吐出側端面を有するロータ歯部及び前記ロータ歯部における前記軸方向の前記一方側に設けられた吐出側シャフト部を含むスクリューロータと、
前記吐出側シャフト部に取り付けられた吐出側軸受とを備え、
前記スクリューロータは、少なくとも前記吐出側シャフト部の内部に前記軸方向に延びる冷却流路を有し、
前記冷却流路の壁面における前記軸方向の前記吐出側端面の位置と前記吐出側軸受の取付位置との間の領域の少なくとも一部分に溝構造が設けられ、
前記溝構造は、前記スクリューロータの周方向に長さ方向の成分を有すると共に前記軸方向に間隔をあけて存在する溝によって構成され、
冷却流体を供給するための静止部材のノズルが前記冷却流路の内部に前記壁面に対して隙間をあけて配置され、
前記ノズルは、前記軸方向の位置において前記溝構造の少なくとも一部分と重なるように配置されている
スクリュー圧縮機。
【請求項2】
請求項1に記載のスクリュー圧縮機であって、
前記溝構造は、前記軸方向に間隔をあけて配置された複数本の環状溝によって構成されている
スクリュー圧縮機。
【請求項3】
請求項1に記載のスクリュー圧縮機であって、
前記溝構造は、螺旋状の溝によって構成されている
スクリュー圧縮機。
【請求項4】
請求項1に記載のスクリュー圧縮機であって、
前記冷却流路は、前記スクリューロータを前記軸方向に貫通する貫通孔によって構成され、
前記冷却流路の前記軸方向の開口部に、前記冷却流体以外の流体の前記冷却流路への侵入を防止する封止部材が設けられている
スクリュー圧縮機。
【請求項5】
請求項1に記載のスクリュー圧縮機であって、
前記冷却流路は、前記吐出側シャフト部の先端側が開口する有底の穴によって構成されている
スクリュー圧縮機。
【請求項6】
請求項1に記載のスクリュー圧縮機であって、
前記吐出側シャフト部は、前記ロータ歯部とは別部材として構成され、
前記冷却流路は、前記吐出側シャフト部を貫通している
スクリュー圧縮機。
【請求項7】
請求項6に記載のスクリュー圧縮機であって、
前記ロータ歯部は、前記吐出側シャフト部と接合する部分に凹部を有し、
前記凹部の径は、前記吐出側シャフト部の外径よりも小さく、且つ、前記冷却流路の径よりも大きくなるように設定されている
スクリュー圧縮機。
【請求項8】
請求項1に記載のスクリュー圧縮機であって、
前記溝構造は、前記吐出側端面の位置と前記吐出側軸受の取付位置との間の領域全体に亘って設けられている
スクリュー圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリュー圧縮機に係り、更に詳しくは、スクリューロータを冷却流体によって冷却するスクリュー圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
スクリュー圧縮機は、回転するスクリューロータとスクリューロータを収納するケーシングとを備えている。スクリュー圧縮機は、スクリューロータとそれを取り囲むケーシングの内壁面とによって形成された複数の作動室の容積がスクリューロータの回転に伴い増減することで気体を吸い込み圧縮するものである。
【0003】
スクリュー圧縮機の性能を低下させる要因の代表的なものとして、圧縮気体の内部漏洩がある。圧縮気体の内部漏洩とは、圧縮が進んで圧力が上昇した高圧の空間(作動室)から、圧縮の開始前や圧縮が進んでいない相対的に低圧の空間へ、圧縮された気体が逆流してしまう現象をいう。この内部漏洩は、エネルギを要して圧縮した気体が低圧状態に戻ってしまうので、エネルギ損失となる。圧縮気体の内部漏洩の経路となる内部隙間としては、スクリューロータの噛合い部間の隙間、スクリューロータの歯先とケーシングの内壁面(内周面)との隙間、スクリューロータの吐出側端面とそれに対向するケーシングの吐出側内壁面との隙間(以下、吐出側端面隙間と称することがある)などがある。
【0004】
スクリュー圧縮機では、圧縮された気体が高温になるので、ケーシングやスクリューロータが温度上昇して熱変形する。ケーシングやスクリューロータの熱変形によって、上述の内部隙間が拡大する傾向にある。
【0005】
スクリューロータの熱変形を低減する方策として、スクリューロータの内部に設けた冷却流路(穴)に冷却剤を供給することでスクリューロータを冷却する方法が知られている。このようなスクリューロータの冷却方法の一例としては、例えば、特許文献1に記載の技術がある。特許文献1に記載の圧縮機要素のロータにおいては、ロータの中心において軸方向に延びた内部冷却流路に複数の内向きのフィンが設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2010-510432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
圧縮機効率の向上を図るためには、スクリューロータに対する冷却能力の更なる向上によって、上述の内部隙間の拡大を抑制する必要がある。上述の吐出側端面隙間はスクリューロータの軸方向の熱変形によって拡大することが明らかになっている。このため、当該吐出側端面隙間を拡大させるスクリューロータの熱変形を低減することが求められている。特に、スクリューロータの吐出側シャフト部の熱変形が吐出側端面隙間の拡大に大きな影響を及ぼすことが想定される。
【0008】
スクリューロータに対する冷却能力を向上させる方法の一例として、スクリューロータの冷却流路に供給する冷却剤の温度を下げることが考えられる。しかし、この方法は、冷却剤を冷却するためのクーラを大型化する必要があり、コストが増加してしまう。さらに、当該クーラが外気を用いて冷却する空冷式の場合では、冷却剤の温度が外気温度以上に制約されてしまう。
【0009】
また、当該冷却能力を向上させる方法の別の一例として、冷却流路に供給する冷却剤の流量を増加させることが考えられる。しかし、この方法は、冷却剤を供給するためのポンプを大型化する必要があり、結果として、圧縮機システムの全体の動力が増加してしまう。
【0010】
そのため、冷却流路に供給する冷却剤の温度や流量を変更することなく、スクリューロータに対する冷却能力を高めることが求められる。
【0011】
また、特許文献1に記載の技術では、冷却流路内の複数のフィンの存在によって冷却流路を流れる冷却剤との熱交換表面積が大きくなるので、スクリューロータに対する冷却能力が向上すると考えられる。しかし、スクリューロータの冷却流路に複数の内向きのフィンを設ける構成は、構造が複雑になる。
【0012】
本発明は上記の問題点を解消するためになされたものであり、その目的の一つは、スクリューロータの吐出側シャフト部に対する冷却能力を簡素な構造によって高めることができるスクリュー圧縮機を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の好ましい一例は、捩れたローブを有すると共に軸方向の一方側に吐出側端面を有するロータ歯部及び前記ロータ歯部における前記軸方向の前記一方側に設けられた吐出側シャフト部を含むスクリューロータと、前記吐出側シャフト部に取り付けられた吐出側軸受とを備え、前記スクリューロータは、少なくとも前記吐出側シャフト部の内部に前記軸方向に延びる冷却流路を有し、前記冷却流路の壁面における前記軸方向の前記吐出側端面の位置と前記吐出側軸受の取付位置との間の領域の少なくとも一部分に溝構造が設けられ、前記溝構造は、前記スクリューロータの周方向に長さ方向の成分を有すると共に前記軸方向に間隔をあけて存在する溝によって構成され、冷却流体を供給するための静止部材のノズルが前記冷却流路の内部に前記壁面に対して隙間をあけて配置され、前記ノズルは、前記軸方向の位置において前記溝構造の少なくとも一部分と重なるように配置されているスクリュー圧縮機である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の好ましい一例によれば、冷却流路における溝構造の溝間に位置する壁面の近傍領域を流れる冷却流体の当該壁面に対する相対速度が軸方向に隣接する溝位置の領域を流れる冷却流体の影響を受けて大きくなる。また、冷却流路の壁面側を流れる冷却流体の当該壁面に対する相対速度がノズル近傍を流れる冷却流体の影響を受けて大きくなる。これにより、冷却流路の溝構造を有する壁面における熱伝達率が高まるので、スクリューロータの吐出側シャフト部に対する冷却能力が向上する。すなわち、スクリューロータの吐出側シャフト部に対する冷却能力を簡素な構造によって高めることができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第1の実施の形態に係るスクリュー圧縮機の概略構造を示す断面図及び当該スクリュー圧縮機に対する冷却流体の外部供給経路を示す系統図である。
図2】第1の実施の形態に係るスクリュー圧縮機を図1に示すII-II矢視から見た断面図である。
図3図1に示す第1の実施の形態に係るスクリュー圧縮機におけるスクリューロータ(雄ロータ)の冷却流路の構造及びノズルの配置を示す断面図である。
図4】第1の実施の形態に係るスクリュー圧縮機におけるスクリューロータの冷却流路に対する熱伝達率の分布の解析結果を示す図である。
図5】第1の実施の形態に係るスクリュー圧縮機のスクリューロータの冷却流路に対する比較例のスクリューロータの冷却流路(溝構造無し)の熱伝達率の分布の解析結果を示す図である。
図6】第1の実施の形態に係るスクリュー圧縮機におけるスクリューロータの冷却流路の作用を示す説明図である。
図7】第1の実施の形態の変形例に係るスクリュー圧縮機におけるスクリューロータの冷却流路の構造及びノズルの配置を示す断面図である。
図8】本発明の第2の実施の形態に係るスクリュー圧縮機におけるスクリューロータの構造を示す断面図である。
図9】本発明の第3の実施の形態に係るスクリュー圧縮機におけるスクリューロータの構造を示す断面図である。
図10】本発明の第4の実施の形態に係るスクリュー圧縮機におけるスクリューロータの構造を示す断面図である。
図11】本発明の第4の実施の形態の変形例に係るスクリュー圧縮機におけるスクリューロータの構造を示す模式図である。
図12図11に示すスクリューロータにおけるロータ歯部の凹部と吐出側シャフト部の寸法関係を示す模式図である。
図13】第4の実施の形態の変形例に係るスクリュー圧縮機のスクリューロータに対する比較例のスクリューロータにおける吐出側シャフト部の接合後の状態を示す説明図である。
図14】第4の実施の形態の変形例に係るスクリュー圧縮機の作用効果を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明によるスクリュー圧縮機の実施の形態について図面を用いて例示説明する。ここで説明する実施の形態は、無給油式のスクリュー圧縮機に本発明を適用した例を示している。
【0017】
[第1の実施の形態]
第1の実施の形態に係るスクリュー圧縮機の構成を図1及び図2を用いて説明する。図1は本発明の第1の実施の形態に係るスクリュー圧縮機の概略構造を示す断面図及び当該スクリュー圧縮機に対する冷却流体の外部供給経路を示す系統図である。図2は第1の実施の形態に係るスクリュー圧縮機を図1に示すII-II矢視から見た断面図である。図1中、左側がスクリュー圧縮機の軸方向の吸込側、右側が軸方向の吐出側である。図2中、太線の矢印はスクリューロータの回転方向を表している。
【0018】
図1及び図2において、スクリュー圧縮機1は、互いに噛み合い回転する雄ロータ2(雄型のスクリューロータ)及び雌ロータ3(雌型のスクリューロータ)と、雄雌両ロータ2、3を噛み合った状態で回転可能に収容するケーシング4とを備えている。雄ロータ2及び雌ロータ3は、互いの中心軸線A1、A2が平行となるように配置されている。雄ロータ2は、その軸方向(図1中、左右方向)の一方側(図1中、右側)及び他方側(図1中、左側)がそれぞれ吐出側軸受6、7及び吸込側軸受8により回転自在に支持されており、例えば、回転駆動源であるモータ90に接続されている。吐出側軸受6は、例えば、雄ロータ2の軸方向の位置決めをするための軸受である。雌ロータ3は、その軸方向の一方側及び他方側がそれぞれ吐出側軸受及び吸込側軸受(共に図示せず)により回転自在に支持されている。無給油式のスクリュー圧縮機1では、雄ロータ2と雌ロータ3が非接触の状態で回転するように配置されている。
【0019】
雄ロータ2は、螺旋状の捩じれた雄歯(ローブ)21aを複数(図2中、4つ)有するロータ歯部21と、ロータ歯部21における軸方向の一方側(図1中、右側)に設けられた吐出側シャフト部22及び他方側(図1中、左側)に設けられた吸込側シャフト部23とで構成されている。雄ロータ2は、ロータ歯部21と吐出側シャフト部22と吸込側シャフト部23が一体に形成された一部材として構成されている(後述の図3参照)。ロータ歯部21は、軸方向の一方端(図1中、右端)及び他方端(図1中、左端)にそれぞれ、軸方向(中心軸線A1)に直交する吐出側端面21b及び吸込側端面21cを有している。ロータ歯部21では、雄歯21aが吐出側端面21bから吸込側端面21cまで延在しており、雄歯21a間に歯溝が形成されている。吐出側シャフト部22の先端部には、タイミングギア10が取り付けられている。吸込側シャフト部23は、例えば、ケーシング4の外側に延出しており、ギア11を介してモータ90と接続されている。なお、吸込側シャフト部23は、モータ90とギア11を介さずに直結させる構成も可能である。
【0020】
雌ロータ3は、螺旋状の捩じれた雌歯(ローブ)31aを複数(図2中、6つ)有するロータ歯部31と、ロータ歯部31における軸方向(図2の紙面直交方向)の一方側に設けられた吐出側シャフト部32及び他方側に設けられた吸込側シャフト部(図示せず)とで構成されている。雌ロータ3も、例えば、雄ロータ2と同様に、ロータ歯部31と吐出側シャフト部32と吸込側シャフト部が一体に形成された一部材として構成されている。ロータ歯部31は、軸方向の一方端及び他方端にそれぞれ軸方向(中心軸線A2)に垂直な吐出側端面及び吸込側端面(共に図示せず)を有している。ロータ歯部31では、雌歯31aが吸込側端面から吐出側端面まで延在しており、雌歯31a間に歯溝が形成されている。吐出側シャフト部32の先端部には、雄ロータ2側のタイミングギア10と噛み合うタイミングギア(図示せず)が取り付けられている。雄ロータ2側のタイミングギア10及び雌ロータ3側のタイミングギアによって、雄ロータ2の回転力が雌ロータ3に伝達され、雄ロータ2と雌ロータ3が非接触で同期回転する。
【0021】
ケーシング4は、主ケーシング41と、主ケーシング41の吸込側(図1中、左側)に取り付けられる吸込側カバー42と、主ケーシング41の吐出側(図1中、右側)に取り付けられる吐出側カバー43とを備えている。
【0022】
ケーシング4の内部には、雄ロータ2のロータ歯部21及び雌ロータ3のロータ歯部31を互いに噛み合った状態で収容する収容室45が形成されている。収容室45は、ケーシング4の内部に形成された一部重複する2つの円筒状空間である。収容室45を形成する壁面(ケーシング4の内壁面)は、雄ロータ2のロータ歯部21の径方向外側を覆う略円筒状の雄側内周面46と、雌ロータ3のロータ歯部31の径方向外側を覆う略円筒状の雌側内周面47と、雄雌両ロータ2、3のロータ歯部21、31の吐出側端面21bに対向する軸方向一方側(図1中、右側)の吐出側内壁面48と、雄雌両ロータ2、3のロータ歯部21、31の吸込側端面21cに対向する軸方向他方側(図1中、左側)の吸込側内壁面49とで構成されている。ケーシング4の内壁面に対して、雄雌両ロータ2、3のロータ歯部21、31が数十~数百μmの隙間を保って配置されている。雄雌両ロータ2、3のロータ歯部21、31とそれを取り囲むケーシング4の内壁面とによって複数の作動室Cが形成される。作動室C内の作動気体は、作動室Cが雄雌両ロータ2、3の回転に伴って軸方向に移動しつつ収縮することで圧縮される。
【0023】
ケーシング4には、図1に示すように、作動室Cに気体を吸い込むための吸込流路51が収容室45における軸方向他方側(図1中、左側)に連通するように設けられている。また、ケーシング4には、作動室C内の圧縮空気をケーシング4の外部へ導いて吐出するための吐出流路52が収容室45における軸方向一方側(図1中、右側)に連通するように設けられている。
【0024】
主ケーシング41における吸込流路51側の端部には、雄ロータ2側の吸込側軸受8及び雌ロータ3側の吸込側軸受が配置されている。また、雄ロータ2の吸込側シャフト部23における吸込側軸受8よりもモータ90側には、軸封部材12が配置されている。主ケーシング41には、吸込側軸受8及び軸封部材12を覆うように吸込側カバー42が取り付けられている。吸込側カバー42には、吸込側軸受8及び軸封部材12に潤滑油を供給するための給油路53が設けられている。
【0025】
主ケーシング41における吐出流路52側の端部には、雄ロータ2側の吐出側軸受6、7及びタイミングギア10並びに雌ロータ3側の吐出側軸受及びタイミングギアが配置されている。主ケーシング41には、吐出側軸受6、7及びタイミングギア10に潤滑油を供給するための給油路53が設けられている。主ケーシング41には、吐出側軸受6、7及びタイミングギア10を覆うように吐出側カバー43が取り付けられている。
【0026】
本実施の形態に係る雄ロータ2(雄型のスクリューロータ)及び雌ロータ3(雌型のスクリューロータ)には、図1及び図2に示すように、冷却流体を循環させるための冷却流路25及び冷却流路35が設けられている。冷却流路25及び冷却流路35は、気体の圧縮により生じる熱が伝達される雄ロータ2及び雌ロータ3を冷却するための冷却流体が流通するものである。本実施の形態に係るスクリュー圧縮機1においては、雄ロータ2の冷却流路25の構造に特徴がある。当該冷却流路25の構造の詳細については後述する。
【0027】
雄雌両ロータ2、3(スクリューロータ)の冷却流路25、35には、図1に示すように、冷却流体を循環させるための外部冷却系統70が接続されている。外部冷却系統70は、例えば、雄雌両ロータ2、3を冷却するための冷却流体として雄雌両ロータ2、3用の吐出側軸受6、7及び吸込側軸受8を潤滑するための潤滑油を用いるように構成されたものである。具体的には、外部冷却系統70は、吐出側軸受6、7及び吸込側軸受8並びに雄雌両ロータ2、3の冷却流路25、35へ潤滑油(冷却流体)を送出するポンプ71と、潤滑油(冷却流体)を冷却する冷却器72と、フィルタや逆止弁などの補機73と、これらを接続する配管74とを備えている。冷却器72は、例えば、冷却器72の周囲の外気を用いて冷却する空冷式のものである。配管74は、冷却流路25、35に冷却流体としての潤滑油を供給する冷却流体供給ライン74aと、吐出側軸受6、7及び吸込側軸受8に潤滑油を供給する潤滑油供給ライン74bとを含んでいる。図1中、太線の矢印は潤滑油(冷却流体)の流れ方向を表している。
【0028】
なお、本実施の形態においては、雄雌両ロータ2、3の冷却流体として潤滑油を用いることで、雄雌両ロータ2、3の冷却流路25、35に冷却流体を供給する外部冷却系統と吐出側軸受6、7及び吸込側軸受8に潤滑油を供給する潤滑系統とを一体に構成した例を示している。しかし、冷却流体として、潤滑油の他に、冷却水などの液体又は気体を用いることが可能である。この場合、外部冷却系統は、潤滑系統とは別系統として構成する。例えば、冷却水などの冷却流体を雄雌両ロータ2、3及びモータ90に導入するように外部冷却系統を構成することが可能である。
【0029】
次に、第1の実施の形態に係るスクリュー圧縮機におけるスクリューロータ(雄ロータ)の冷却流路の構成及び構造について図1図3を用いて説明する。図3図1に示す第1の実施の形態に係るスクリュー圧縮機におけるスクリューロータ(雄ロータ)の冷却流路の構造及びノズルの配置を示す断面図である。
【0030】
上述の構成を備えたスクリュー圧縮機1では、図1に示すモータ90により雄ロータ2が回転駆動されると、雄ロータ2がタイミングギア10を介して図2に示す雌ロータ3を回転駆動する。これにより、図1及び図2に示す作動室Cが雄雌両ロータ2、3の回転に伴って軸方向に移動する。このとき、作動室Cは、その容積を増加させることでケーシング4の外部から図1に示す吸込流路51を介して気体(例えば、空気)を吸い込み、その容積を縮小させることで気体を所定の圧力まで圧縮する。当該作動室Cが吐出流路52に連通すると、作動室C内の圧縮気体が吐出流路52を通過してケーシング4の外部へ吐出される。
【0031】
雄雌両ロータ2、3における吐出流路52の周囲やケーシング4の収容室45における軸方向吐出側の領域は、気体の圧縮行程で生じる熱が伝達されて温度が上昇する。この伝熱により雄雌両ロータ2、3には熱変形が生じる。特に、高温の圧縮気体が流れる吐出流路52の周辺に位置する雄雌両ロータ2、3の吐出側シャフト部22、32の熱変形が大きくなる。この熱変形より、雄ロータ2における吐出側軸受6の取付位置から吐出側端面21bの位置までの相対距離及び雌ロータ3における吐出側軸受の取付位置から吐出側端面の位置までの相対距離が拡大することがある。当該相対距離の拡大によって、雄雌両ロータ2、3の吐出側端面21bとそれに対向するケーシング4の吐出側内壁面48との間の隙間である吐出側端面隙間が拡がると、吐出側端面隙間を介した圧縮気体の内部漏洩が増大してしまう。
【0032】
本実施の形態に係るスクリュー圧縮機1は、雄雌両ロータ2、3を冷却する冷却システムを備えている。雄ロータ2は、例えば図2及び図3に示すように、中心軸線A1に沿って軸方向に延びる冷却流路25を有している。同様に、雌ロータ3は、例えば図2に示すように、中心軸線A2に沿って軸方向に延びる冷却流路35を有している。冷却流路25、35は、例えば図3に示すように、雄雌両ロータ2、3を軸方向に貫通する貫通孔によって構成されている。すなわち、冷却流路25、35は、雄雌両ロータ2、3の吐出側シャフト部22、32の先端から吸込側シャフト部23の先端まで延在して両側が開口している。
【0033】
本実施の形態においては、雄ロータ2の冷却流路25を形成する壁面25a(貫通孔の内周面)に溝構造26が設けられている。溝構造26は、例えば、雄ロータ2の吐出側端面21bの位置と吐出側軸受6の取付位置との間の領域に亘って設けられている。溝構造26は、雄ロータ2の周方向(回転方向)に長さ成分を有すると共に軸方向に間隔をあけて存在する溝によって構成されるものである。溝構造26は、例えば、軸方向に間隔をあけて配置された複数本の環状溝27によって構成されている。
【0034】
冷却流路25の内部には、冷却流体を供給するためのノズル15が配置される。ノズル15は、静止部材として構成されており、冷却流路25の壁面25aに対して隙間をあけて配置されている。すなわち、ノズル15の外周面15aに対して、冷却流路25の壁面25aが相対的に周方向に変位する関係となっている。ノズル15は、軸方向の位置において、冷却流路25の壁面25aの溝構造26の少なくとも一部分と重なるよう配置されている。ノズル15は、例えば、冷却流路25の吐出側シャフト部22側の開口から挿入されており、冷却流路25内において雄ロータ2の吐出側端面21bの近傍の位置から吐出側シャフト部22の先端まで延在している。ノズル15における溝構造26と重なる領域の部分には、複数の側孔15bが軸方向に間隔をあけて設けられている。側孔15bは、冷却流体の冷却流路25ヘの流出口として構成されている。ノズル15は、外部冷却系統70の冷却流体供給ライン74aに直接的に又は接続管を介して接続される。
【0035】
このように、本実施の形態においては、雄ロータ2の冷却流路25の壁面25aにおける所定の領域(雄ロータ2の吐出側端面21bの位置と吐出側軸受6の取付位置との間の領域)に対して溝構造26を設けると共に、冷却流路25の内部に静止部材のノズル15を溝構造26の少なくとも一部と軸方向において重なるように配置している。発明者らは、冷却流路25の壁面25aの溝構造26及び冷却流路25内の静止部材のノズル15によって冷却流路25の壁面25aと冷却流体との間の熱伝達率を高めることで、雄ロータ2の吐出側シャフト部22に対する冷却能力を向上させることが可能であることを見出した。
【0036】
次に、第1の実施の形態に係るスクリュー圧縮機におけるスクリューロータの冷却システムの作用及び効果を図1図3図6を用いて説明する。図4は第1の実施の形態に係るスクリュー圧縮機におけるスクリューロータの冷却流路に対する熱伝達率の分布の解析結果を示す図である。図5は第1の実施の形態に係るスクリュー圧縮機のスクリューロータの冷却流路に対する比較例のスクリューロータの冷却流路(溝構造無し)の熱伝達率の分布の解析結果を示す図である。
【0037】
図1に示すスクリュー圧縮機1では、外部冷却系統70から冷却流体としての潤滑油が雄ロータ2の冷却流路25に供給される。雄ロータ2を冷却して温度が上昇した冷却流体は、外部冷却系統70のポンプ71によって冷却器72に送出され、冷却器72にて冷却される。冷却器72により温度が低下した冷却流体は、補機73及び冷却流体供給ライン74aを介して再び雄ロータ2の冷却流路25に導入される。
【0038】
本実施の形態においては、外部冷却系統70の冷却流体供給ライン74aを介してノズル15から雄ロータ2の冷却流路25に対して冷却流体が供給される。冷却流体は、図3に示すように、ノズル15の内部を吐出側シャフト部22の先端側からロータ歯部21側に向かって流れ、大部分がノズル15の先端から冷却流路25内へ流入すると共に一部がノズル15の側孔15bから冷却流路25、35内へ流入する。図3中、白抜き矢印及び太い矢印は冷却流体(潤滑油)の流れの方向を示している。ノズル15の先端から冷却流路25内へ流入した冷却流体は、ロータ歯部21の内部及び吸込側シャフト部23の内部を順に通過する。ノズル15における下流側に位置する側孔15bから冷却流路25内へ流入した冷却流体は、ロータ歯部21側に向かって、冷却流路25の壁面25aとノズル15の外周面15aとの隙間(環状流路)を流れる。一方、ノズル15における上流側に位置する側孔15bから冷却流路25内へ流入した冷却流体は、吐出側軸受6側に向かって(ノズル15内の冷却流体の流れ方向とは逆方向に)、冷却流路25の壁面25aとノズル15の外周面15aとの隙間(環状流路)を流れる。
【0039】
ところで、雄ロータ2に対する冷却能力を向上させる方策の一例として、冷却流路25に供給する冷却流体の温度を下げることが考えられる。しかし、この場合、外部冷却系統70の冷却器72を大型化する必要があるので、その分、コストが増加する。加えて、冷却器72が空冷式である場合には、冷却流体の温度が外気温度以上に制約されるので、冷却流体の温度を下げることによって冷却能力を向上させることは難しい。
【0040】
冷却能力を向上させる別の方策として、冷却流路25に供給する冷却流体の流量を増加させることが考えられる。これにより、冷却流体の軸方向の流速が上昇して冷却流路25の壁面25a近傍における熱伝達率が向上する。しかし、この場合、外部冷却系統70のポンプ71を大型化する必要があり、その分、ポンプ71の動力が増加する。結果として、圧縮機システムの全体の動力が増加することがある。
【0041】
それに対して、本実施の形態においては、雄ロータ2の冷却流体の温度や流量を従前と同等に設定する場合であっても、雄ロータ2の冷却流路25の壁面25aにおける上述の所定領域に対して上述の溝構造26を設けること及び冷却流路25の内部に静止部材のノズル15を溝構造26の少なくとも一部と軸方向において重なるように配置することで、雄ロータ2に対する冷却能力の向上を図るものである。
【0042】
図4を参照すると、冷却流路25の壁面25aにおける溝構造26の各環状溝27の底部領域では熱伝達率が低くなっている。それに対して、冷却流路25の壁面25aにおける溝構造26の隣り合う環状溝27と環状溝27との間に存在する凹凸の無い曲面領域Wcでは、熱伝達率が相対的に高くなっていることが解る。
【0043】
一方、図5を参照すると、比較例のスクリューロータの冷却流路25Pにおける溝構造の無い壁面25a(領域全体が凹凸の無い曲面領域)では、熱伝達率が低くなっている。比較例の溝構造の無い冷却流路25Pの壁面25aにおける熱伝達率は、本実施の形態に係る溝構造26を有する冷却流路25の壁面25aのうち、溝構造26の環状溝27間に存在する凹凸の無い曲面領域Wcにおける熱伝達率よりも低くなっていることが解る。
【0044】
つまり、本実施の形態においては、雄ロータ2の冷却流路25における溝構造26を有する壁面25aと冷却流体との間の熱伝達率が増加するので、冷却流体の温度や流量を従前と同等に設定する場合であっても、雄ロータ2から冷却流体への移動熱量が増加する。その結果、雄ロータ2の温度上昇が抑制されるので、雄ロータ2の軸方向の熱変形量を低減することができる。このため、雄ロータ2の吐出側端面21bとケーシング4の吐出側内壁面48との隙間(吐出側端面隙間)の拡大が抑制されて圧縮気体の内部漏洩量が低減するので、圧縮機の効率を向上させることができる。
【0045】
ここで、冷却流路の壁面に溝構造を設けることで当該壁面の熱伝達率が増加する理由について図6を用いて説明する。図6は第1の実施の形態に係るスクリューロータの冷却流路の壁面に対する冷却流体の相対速度(周方向速度)の分布を示す図である。図6中、二点鎖線は冷却流路の壁面を示している。二点鎖線よりも下側の領域は冷却流体が流れている領域である。また、白抜き矢印は、領域Dの冷却流体に作用する粘性力を示している。
【0046】
熱伝達率は固体壁面に対する流体の相対速度が大きいほど増加することが一般的に知られている。
【0047】
冷却流路25の壁面25aにおける溝構造26の環状溝27と環状溝27との間(軸方向に間隔をあけて存在する溝と溝との間)に存在する凹凸の無い曲面領域Wc(例えば、円筒面の領域)の近傍に位置する領域Dでは、冷却流体の冷却流路25の壁面25aに対する相対速度(周方向速度)が低くなる。これは、雄ロータ2の回転方向に移動する冷却流路25の壁面25aと冷却流体との間にせん断力が生じることで、冷却流体が冷却流路25の壁面25aと同じ方向(周方向)に移動するからである。
【0048】
一方、領域Dに対して雄ロータ2の軸方向に隣接する領域である領域Eでは、径方向に位置する冷却流路25の壁面としての溝構造26の環状溝27の底面又は側面までの距離が領域Dと凹凸の無い曲面領域Wcとの距離に比べて相対的に大きくなっている。このため、領域Eを流れる冷却流体に作用するせん断力が領域Dを流れる冷却流体の場合と比べて相対的に小さくなるので、領域Eの冷却流体の冷却流路25の壁面25aに対する相対速度(周方向速度)が領域Dの冷却流体の場合と比べて大きくなる。
【0049】
このため、領域Dの冷却流体と領域Eの冷却流体との間に速度差が生じるので、領域Dの冷却流体と領域Eの冷却流体との間に作用する粘性力が領域Dの冷却流体に対してブレーキとして機能し、領域Dの流速(周方向速度)が低下する。このため、領域Dを流れる冷却流体の冷却流路25の壁面25aに対する相対速度が増加するので、その分、領域Dにおける熱伝達率が溝構造26の無い冷却流路25Pの壁面25aの場合(図5参照)と比べて増加する。
【0050】
また、本実施の形態おいては、図3に示すように、冷却流路25の内部に静止部材のノズル15が冷却流路25の壁面25aに対して隙間をあけて配置されていると共に、雄ロータ2の軸方向の位置において溝構造26の一部と重なるように配置されている。このため、静止部材のノズル15と冷却流体との間にせん断力が生じるので、ノズル15の外周面15aの近傍を流れる冷却流体の速度が低下する。その結果、回転する冷却流路25の壁面25a側を流れる冷却流体(例えば、図6に示す領域Dの冷却流体及び領域Eの冷却流体)が速度の低下したノズル15近傍の冷却流体の影響を受けるので、冷却流路25の壁面25a側を流れる冷却流体の冷却流路25の壁面25aに対する相対速度がノズル15の無い場合と比べて増加する。
【0051】
このように、冷却流路25の壁面25aに溝構造26を設けることで、冷却流体の冷却流路25の壁面25aに対する相対速度(周方向速度)が大きくなる。
また、冷却流路25の内部に静止部材のノズル15を溝構造26の少なくとも一部と軸方向において重なるように配置することで、冷却流体の冷却流路25の壁面25aに対する相対速度(周方向速度)が大きくなる。このため、冷却流路25の溝構造26を有する壁面25aと冷却流体との間の熱伝達率を高めることができる。
【0052】
上述したように、本実施の形態のスクリュー圧縮機1は、捩れたローブ21aを有すると共に軸方向の一方側に吐出側端面21bを有するロータ歯部21及びロータ歯部21における軸方向の前記一方側に設けられた吐出側シャフト部22を含む雄ロータ2(スクリューロータ)と、吐出側シャフト部22に取り付けられた吐出側軸受6とを備える。雄ロータ2(スクリューロータ)は、少なくとも吐出側シャフト部22の内部に軸方向に延びる冷却流路25を有する。冷却流路25の壁面25aにおける軸方向の吐出側端面21bの位置と吐出側軸受6の取付位置との間の領域の少なくとも一部分に溝構造26が設けられており、溝構造26は雄ロータ2(スクリューロータ)の周方向に長さ方向の成分を有すると共に軸方向に間隔をあけて存在する溝27によって構成されている。冷却流体を供給するための静止部材のノズル15が、冷却流路25の内部に壁面25aに対して隙間をあけて配置され、軸方向の位置において溝構造26の少なくとも一部分と重なるように配置されている。
【0053】
この構成によれば、冷却流路25における溝構造26の溝27間に位置する壁面Wcの近傍領域Dを流れる冷却流体の当該壁面Wcに対する相対速度が軸方向に隣接する溝位置の領域Eを流れる冷却流体の影響を受けて大きくなる。また、冷却流路25の壁面25a側を流れる冷却流体の当該壁面25aに対する相対速度が静止部材のノズル15の近傍を流れる冷却流体の影響を受けて大きくなる。これにより、冷却流路25の溝構造26を有する壁面25aにおける熱伝達率が高まるので、雄ロータ2(スクリューロータ)の吐出側シャフト部22に対する冷却能力が向上する。すなわち、雄ロータ2(スクリューロータ)の吐出側シャフト部22に対する冷却能力を簡素な構造によって高めることができる。
【0054】
また、本実施の形態においては、溝構造26が軸方向に間隔をあけて配置された複数本の環状溝27によって構成されている。この構成によれば、溝構造26が簡素な構造となるので、当該溝構造26を容易に加工することができる。
【0055】
また、本実施の形態においては、溝構造26が吐出側端面21bの位置と吐出側軸受6の取付位置との間の領域全体に亘って設けられている。この構成によれば、吐出側シャフト部22における吐出側端面隙間の拡大に大きな影響を及ぼす領域全体に対する冷却能力を高めることができるので、吐出側シャフト部22の熱変形による吐出側端面隙間の拡大をより効果的に低減することができる。
【0056】
[第1の実施の形態の変形例]
第1の実施の形態の変形例に係るスクリュー圧縮機について図7を用いて例示説明する。第1の実施の形態の変形例に係るスクリュー圧縮機におけるスクリューロータの冷却流路の構造及びノズルの配置を示す断面図である。なお、図7において、図1図6に示す符号と同符号のものは、同様な部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0057】
図7に示す第1の実施の形態の変形例によるスクリュー圧縮機が第1の実施の形態と異なる点は、雄ロータ2A(スクリューロータ)の冷却流路25の溝構造26Aが異なることである。具体的には、雄ロータ2Aの冷却流路25の溝構造26Aは、雄ロータ2Aの軸方向に延在する1本の螺旋状の溝27Aによって構成されている。螺旋状の溝27Aは、雄ロータ2Aの回転方向(周方向)に長さ成分を有すると共に、軸方向に間隔をあけて存在する溝である。螺旋状の溝27Aの巻く方向は、右手巻きでも左手巻きでも任意である。
【0058】
冷却流路25の溝構造26Aが螺旋状の溝27Aによって構成されている場合においても、第1の実施の形態と同様に、冷却流路25の壁面25aにおける溝構造26Aの軸方向に間隔をあけて存在する螺旋状の溝27Aの間に位置する領域Wc(図6参照)の近傍の領域D(図6参照)を流れる冷却流体と当該領域Dの軸方向に隣接する溝位置の領域E(図6参照)を流れる冷却流体との間に速度差が生じる。このため、領域Dを流れる冷却流体の冷却流路25の壁面25aに対する相対速度が増加するので、その分、領域Dにおける熱伝達率が溝構造26の無い冷却流路25Pの壁面25aの場合(図5参照)と比べて増加する。
【0059】
このように、雄ロータ2Aの冷却流路25における溝構造26Aを有する壁面25aと冷却流体との間の熱伝達率が増加すれば、冷却流体の温度や流量を従前と同等に設定する場合であっても、雄ロータ2Aから冷却流体への移動熱量が増加する。その結果、雄ロータ2Aの温度上昇が抑制されるので、雄ロータ2Aの軸方向の熱変形量を低減することができる。このため、雄ロータ2Aの吐出側端面21bとケーシング4の内壁面48との隙間(吐出側端面隙間)の拡大が抑制されて圧縮気体の内部漏洩量が低減するので、圧縮機の効率を向上させることができる。
【0060】
なお、本変形例においては、冷却流路25の溝構造26Aを1本の螺旋状の溝27Aによって構成する例を示した。しかし、冷却流路25の溝構造26Aを複数本の螺旋状の溝27Aによって構成することも可能である。
【0061】
上述した第1の実施の形態の変形例においては、第1の実施の形態と同様に、冷却流路25の壁面25aに溝構造26Aを設けること及び静止部材のノズル15を冷却流路25の内部に溝構造26Aの少なくとも一部と重なるように配置することで、冷却流路25の溝構造26Aを有する壁面25aにおける熱伝達率が高まるので、雄ロータ2A(スクリューロータ)の吐出側シャフト部22に対する冷却能力が向上する。すなわち、雄ロータ2A(スクリューロータ)の吐出側シャフト部22に対する冷却能力を簡素な構造によって高めることができる。
【0062】
また、本変形例においては、溝構造26Aが螺旋状の溝27Aによって構成されている。この構成によれば、溝構造26Aとしての螺旋状の溝27Aを一度の切削加工によって冷却流路25の壁面における軸方向の広範囲に設けることができるので、第1の実施の形態の場合と比べて製造工数や製造コストを低減することが可能である。
【0063】
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態に係るスクリュー圧縮機について図8を用いて例示説明する。図8は本発明の第2の実施の形態に係るスクリュー圧縮機におけるスクリューロータの構造を示す断面図である。図8中、白抜き矢印及び太い矢印は冷却流体(潤滑油)の流れの方向を示している。なお、図8において、図1図7に示す符号と同符号のものは、同様な部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0064】
図8に示す第2の実施の形態によるスクリュー圧縮機が第1の実施の形態の変形例(図7参照)と異なる点は、雄ロータ2B(スクリューロータ)の冷却流路25としての貫通孔の軸方向の両側の開口部に対して封止部材28を設けていることである。封止部材28は、冷却流路25の内部に冷却流体以外の流体が侵入することを防止するものである。一方の封止部材28は、例えば、ノズル15が貫通した状態で雄ロータ2Bの吐出側シャフト部22の先端部に冷却流路25を閉塞するように取り付けられている。他方の封止部材28は、例えば、排出パイプ29が貫通した状態で雄ロータ2Bの吸込側シャフト部23の先端部に冷却流路25を閉塞するように取り付けられている。排出パイプ29は、ノズル15から冷却流路25に供給された冷却流体を雄ロータ2Bの外部へ排出するものである。
【0065】
本実施の形態において、図8に示すように、ノズル15に供給された冷却流体は、ノズル15の先端から冷却流路25内へ流入すると共に、ノズル15の側孔15bから冷却流路25内へ流入する。ノズル15の先端から冷却流路25内へ流入した冷却流体は、ロータ歯部21の内部及び吸込側シャフト部23の内部を順に通過する。ノズル15の側孔15bから冷却流路25内へ流入した冷却流体は、冷却流路25の吐出側シャフト部22側の開口が封止部材28によって閉塞されているので、ロータ歯部21側のみに向かって冷却流路25の壁面25aとノズル15の外周面15aとの隙間(環状流路)を流れる。
【0066】
ところで、前述した第1の実施の形態の変形例(図7参照)においては、雄ロータ2Aの冷却流路25の軸方向の両側が開口している。このため、冷却流路25の開口部から内部に外気等の気体が侵入することが懸念される。冷却流路25の内部に気体が侵入すると、相対的に密度の大きな冷却流体が遠心力によって雄ロータ2Aの径方向外側の冷却流路25の壁面25a側に移動する。一方、相対的に密度の小さな気体は雄ロータ2Aの径方向内側のノズル15の外周面15a側に移動して層を形成してしまうことがある。ノズル15の外周面15aに気体の層が形成されると、ノズル15の外周面15aと冷却流体との接触面積が減少するので、静止部材のノズル15と冷却流体との間に生じるせん断力が小さくなる。その結果、前述した冷却流体の冷却流路25の壁面25aに対する相対速度の増加効果が低減してしまう。
【0067】
それに対して、本実施の形態においては、冷却流路25の開口部に封止部材28を設けることで冷却流路25の内部への気体の侵入が阻止される。これにより、ノズル15から冷却流路25に供給された冷却流体によって冷却流路25の内部が満たされるので、ノズル15の外周面15aと冷却流体との接触面積の減少が回避される。したがって、静止部材のノズル15の冷却流路25内への配置による、冷却流体の冷却流路25の壁面25aに対する相対速度の増加効果を確実に得ることができる。
【0068】
上述した第2の実施の形態においては、第1の実施の形態の変形例と同様に、冷却流路25の壁面25aに溝構造26Aを設けること及び静止部材のノズル15を冷却流路25の内部に溝構造26Aの少なくとも一部と重なるように配置することで、冷却流路25の溝構造26Aを有する壁面25aにおける熱伝達率が高まるので、雄ロータ2B(スクリューロータ)の吐出側シャフト部22に対する冷却能力が向上する。すなわち、雄ロータ2B(スクリューロータ)の吐出側シャフト部22に対する冷却能力を簡素な構造によって高めることができる。
【0069】
また、本実施の形態においては、冷却流路25が雄ロータ2B(スクリューロータ)を軸方向に貫通する貫通孔によって構成されており、冷却流路25の軸方向の開口部に冷却流体以外の流体の冷却流路25への侵入を防止する封止部材28が設けられている。
【0070】
この構成によれば、封止部材28によって冷却流路25の内部に冷却流体以外の流体の侵入を阻止することができるので、侵入した流体に起因するノズル15の外周面15aと冷却流体との接触面積の減少を回避することができる。このため、冷却流路25の壁面25aに対する冷却流体の相対速度の増加効果を確実に得ることができるので、冷却流路25の溝構造26Aを有する壁面25aにおける熱伝達率が高まり、雄ロータ2B(スクリューロータ)の吐出側シャフト部22に対する冷却能力が向上する。
【0071】
[第3の実施の形態]
第3の実施の形態に係るスクリュー圧縮機について図9を用いて例示説明する。図9は本発明の第3の実施の形態に係るスクリュー圧縮機におけるスクリューロータの構造を示す断面図である。図9中、白抜き矢印及び太い矢印は冷却流体(潤滑油)の流れの方向を示している。なお、図9において、図1図8に示す符号と同符号のものは、同様な部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0072】
図9に示す第3の実施の形態によるスクリュー圧縮機が第1の実施の形態の変形例(図7参照)と異なる点は、雄ロータ2C(スクリューロータ)の冷却流路25Cが貫通孔でなく一方側が開口する有底の穴によって構成されていることである。冷却流路25Cは、例えば、雄ロータ2Cの吐出側シャフト部22の先端からロータ歯部21の吐出側端面21bの位置まで延在するように形成されており、吐出側シャフト部22の先端側に開口部を有すると共に吐出側端面21bの位置に底部25bを有している。つまり、雄ロータ2Cは、吐出側シャフト部22が中空のシャフト部として構成されている一方、吸込側シャフト部23が中実なシャフト部として構成されている。冷却流路25Cの壁面25aに対する溝構造26Aは、第1の実施の形態の変形例と同様に、ロータ歯部21の吐出側端面21bの位置と吐出側軸受6の取位置との間の領域に亘って設けられた螺旋状の溝27Aによって構成されている。
【0073】
本実施の形態においては、図9に示すように、ノズル15の先端から冷却流路25C内へ流入した冷却流体は、冷却流路25Cの底部25bによって転向し、冷却流路25Cの壁面25aとノズル15の外周面15aとの隙間(環状流路)を吐出側シャフト部22の先端側の開口部に向かって流れるようになる。また、ノズル15の側孔15bから冷却流路25C内へ流入した冷却流体は、冷却流路25Cの底部25bで転向した冷却流体と共に、冷却流路25Cの壁面25aとノズル15の外周面15aとの隙間(環状流路)を吐出側シャフト部22の先端側の開口部に向かって流れる。ノズル15から冷却流路25C内へ流入した冷却流体は、冷却流路25Cの開口部から排出される。このとき、冷却流路25Cを流れる冷却流体は冷却流路25Cに滞留する気体を冷却流路25Cの開口部に押し出して排出するので、冷却流路25C内が冷却流体によって満たされた状態になる。
【0074】
このように、雄ロータ2Cの冷却流路25Cを一方側が開口する有底の穴によって構成することで、外気の冷却流路25Cへの侵入を阻止することができる。したがって、第2の実施の形態と同様に、冷却流路25Cに侵入した気体がノズル15の外周面15aに層を形成することでノズル15の外周面15aと冷却流体との接触面積が減少することを防ぐことができる。すなわち、第2の実施の形態の封止部材28を用いることなく、第2の実施の形態の場合と同様に、外気の冷却流路25Cへの侵入を阻止することができる。
【0075】
上述した第3の実施の形態においては、第1の実施の形態の変形例と同様に、冷却流路25Cの壁面25aに溝構造26Aを設けること及び静止部材のノズル15を冷却流路25Cの内部に溝構造26Aの少なくとも一部と重なるように配置することで、冷却流路25Cの溝構造26Aを有する壁面25aにおける熱伝達率が高まるので、雄ロータ2C(スクリューロータ)の吐出側シャフト部22に対する冷却能力が向上する。すなわち、雄ロータ2C(スクリューロータ)の吐出側シャフト部22に対する冷却能力を簡素な構造によって高めることができる。
【0076】
また、本実施の形態においては、冷却流路25Cが吐出側シャフト部22の先端側が開口する有底の穴によって構成されている。この構成によれば、冷却流路25Cに供給された冷却流体が冷却流路25Cの底部25bで転向して冷却流路25Cの開口部から流出するので、第2の実施の形態のような封止部材28を用いることなく、冷却流体以外の流体の冷却流路25Cへの侵入を阻止することができる。したがって、第2の実施の形態と比べて、部品点数を低減することが可能であると共に、製造工数及び製造コストの低減を図ることができる。
【0077】
[第4の実施の形態]
第4の実施の形態に係るスクリュー圧縮機について図10を用いて例示説明する。図10は本発明の第4の実施の形態に係るスクリュー圧縮機におけるスクリューロータの構造を示す断面図である。図10中、白抜き矢印及び太い矢印は冷却流体(潤滑油)の流れの方向を示している。なお、図10において、図1図9に示す符号と同符号のものは、同様な部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0078】
図10に示す第4の実施の形態によるスクリュー圧縮機が第1の実施の形態の変形例(図7参照)と異なる点は、雄ロータ2D(スクリューロータ)のロータ歯部21と吐出側シャフト部22Dとが一体の一部材ではなく分離した別部材によって構成されていることである。具体的には、雄ロータ2Dは、一体に形成された一部材としてのロータ歯部21及び吸込側シャフト部23と、ロータ歯部21及び吸込側シャフト部23とは別部材である一部材の吐出側シャフト部22Dとで構成されている。吐出側シャフト部22Dは、その基端側の部分がロータ歯部21の吐出側端面21b側の部分に対して接合されている。ロータ歯部21と吐出側シャフト部22Dは、例えば、摩擦圧接または溶接によって繋ぎ合わされている。溝構造26Aは、吐出側シャフト部22Dの冷却流路25における接合側(図10中、左側)の端部の位置から吐出側軸受の取付位置までの領域に亘って形成されている。
【0079】
本実施の形態の雄ロータ2Dにおいては、吐出側シャフト部22Dをロータ歯部21に接合する前段階で、吐出側シャフト部22Dの冷却流路25の壁面25aに対して溝構造26Aを加工することが可能となる。このため、溝構造26Aを加工するための加工装置を冷却流路25における吐出側シャフト部22Dの接合側の開口部から挿入することが可能となる。この加工方法は、吐出側シャフト部の先端側の開口部から加工装置を挿入する場合に比べて、加工装置の挿入が容易になるので、溝構造26Aの加工時間の短縮につながる。
【0080】
上述した第4の実施の形態においては、第1の実施の形態の変形例と同様に、冷却流路25の壁面25aに溝構造26Aを設けること及び静止部材のノズル15を冷却流路25の内部に溝構造26Aの少なくとも一部と重なるように配置することで、冷却流路25の溝構造26Aを有する壁面25aにおける熱伝達率が高まるので、雄ロータ2D(スクリューロータ)の吐出側シャフト部22Dに対する冷却能力が向上する。すなわち、雄ロータ2D(スクリューロータ)の吐出側シャフト部22Dに対する冷却能力を簡素な構造によって高めることができる。
【0081】
また、本実施の形態においては、吐出側シャフト部22Dがロータ歯部21とは別部材として構成されており、冷却流路25が吐出側シャフト部22Dを貫通している。この構成によれば、吐出側シャフト部22Dをロータ歯部21に接合する前に、吐出側シャフト部22Dの冷却流路25の壁面25aに対して溝構造26Aを加工することが可能となる。これにより、ロータ歯部21と吐出側シャフト部22とが一体の一部材として構成されている場合と比べて、溝構造26Aを加工する加工装置に対する吐出側シャフト部22Dの配置や加工装置の冷却流路25内への挿入が容易となるので、溝構造26Aの加工がしやすくなる。
【0082】
[第4の実施の形態の変形例]
第4の実施の形態の変形例に係るスクリュー圧縮機について例示説明する。まず、第4の実施の形態の変形例に係るスクリュー圧縮機におけるスクリューロータの構造について図11及び図12を用いて説明する。図11は本発明の第4の実施の形態の変形例に係るスクリュー圧縮機におけるスクリューロータの構造を示す模式図である。図12図11に示すスクリューロータにおけるロータ歯部の凹部と吐出側シャフト部の寸法関係を示す模式図である。なお、図11及び図12において、図1図10に示す符号と同符号のものは、同様な部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0083】
図11に示す第4の実施の形態の変形例によるスクリュー圧縮機が第4の実施の形態(図10参照)と異なる点は、雄ロータ2Eの冷却流路25Eが吐出側シャフト部22Dのみに設けられていること及びロータ歯部21Eにおける吐出側シャフト部22Dと接合する部分(吐出側端面21bの位置)に凹部21fを設けていることである。
【0084】
具体的には、雄ロータ2Eは、一体に形成された一部材としてのロータ歯部21E及び吸込側シャフト部23と、一部材としての吐出側シャフト部22Dとで構成されている。吐出側シャフト部22Dには、冷却流路25Eとして、軸方向に貫通する貫通孔が形成されている。ロータ歯部21E及び吸込側シャフト部23の一部材は、冷却流路の無い構成である。すなわち、冷却流路25Eは、吐出側シャフト部22Dのみに存在している。ロータ歯部21Eにおける吐出側シャフト部22Dとの接合部分側の端面(吐出側端面21bの位置)には、凹部21fが設けられている。ロータ歯部21Eの凹部21fの径Dlは、図12に示すように、吐出側シャフト部22Dの外径dsよりも小さく、且つ、吐出側シャフト部22Dの冷却流路25E(貫通孔)の径dpよりも大きくなるように設定されている。ロータ歯部21Eの吐出側端面21b側の部分と吐出側シャフト部22Dの基端側(図11中、左側)の端面は、摩擦圧接によって接合される。
【0085】
次に、第4の実施の形態の変形例に係るスクリュー圧縮機におけるスクリューロータの作用効果を比較例のスクリューロータと比較しつつ図13及び図14を用いて説明する。図13は第4の実施の形態の変形例に係るスクリュー圧縮機のスクリューロータに対する比較例のスクリューロータにおける吐出側シャフト部の接合後の状態を示す説明図である。図14は第4の実施の形態の変形例に係るスクリュー圧縮機の作用効果を示す説明図である。なお、図13及び図14において、図1図12に示す符号と同符号のものは、同様な部分であるので、その詳細な説明は省略する。
【0086】
摩擦圧接は、母材同士を高速で擦り合わせることで発生する摩擦熱によって母材を軟化させ更に圧力を加えることで、両者を塑性変形させて固相状態で接合させるものである。摩擦圧接では、両者の接合面から酸化皮膜などの接合の阻害要因となっている材料がバリとして外部へ押し出される。
【0087】
比較例のスクリューロータ102は、ロータ歯部121における凹部の無い平面状の吐出側端面121bに対して、冷却流路125を有する吐出側シャフト部122を摩擦圧接によって接合する構成である。すなわち、比較例のロータ歯部121の接合面は平坦面である一方、冷却流路125を有する吐出側シャフト部122の接合面は環状の平坦面となっている。このため、ロータ歯部121と吐出側シャフト部122とを摩擦圧接によって接合すると、吐出側シャフト部122の外周面及び冷却流路125の壁面125aの付近にバリBが生じる。冷却流路125の壁面125aの付近に生じたバリBが冷却流路125の壁面125aを覆うことで、冷却流路125の壁面125aと冷却流体との伝熱面積が減少する懸念がある。
【0088】
それに対して、本実施の形態においては、図12に示すように、ロータ歯部21Eの吐出側端面21bにおける接合部分に凹部21fを設け、凹部21fの径Dlを吐出側シャフト部22Dの外径dsよりも小さく且つ吐出側シャフト部22Dの冷却流路25Eの径dpよりも大きくなるように設定している。これにより、ロータ歯部21Eと吐出側シャフト部22Dとの摩擦圧接の際にロータ歯部21Eと吐出側シャフト部22Dの接合面21j、22jから押し出されるバリBは、吐出側シャフト部22Dの冷却流路25E側ではなく、ロータ歯部21Eの凹部21f側に生じるようになる。このため、冷却流路25Eにおける溝構造26Aを有する壁面25aをバリBが覆うことで冷却流路25Eの壁面25aと冷却流体との伝熱面積が減少することを防止することができる。
【0089】
上述した第4の実施の形態の変形例においては、第4の実施の形態と同様に、冷却流路25Eの壁面25aに溝構造26Aを設けること及び静止部材のノズル15を冷却流路25Eの内部に溝構造26Aの少なくとも一部と重なるように配置することで、冷却流路25Eの溝構造26Aを有する壁面25aにおける熱伝達率が高まるので、雄ロータ2E(スクリューロータ)の吐出側シャフト部22Dに対する冷却能力が向上する。すなわち、雄ロータ2E(スクリューロータ)の吐出側シャフト部22Dに対する冷却能力を簡素な構造によって高めることができる。
【0090】
また、本変形例においては、ロータ歯部21Eが吐出側シャフト部22Dと接合する部分に凹部21fを有している。凹部21fの径は、吐出側シャフト部22Dの外径よりも小さく且つ冷却流路25Eの径よりも大きくなるように設定されている。
【0091】
この構成によれば、ロータ歯部21Eと吐出側シャフト部22Dとを摩擦圧接によって接合するときに接合面21j、22jから押し出されるバリBが冷却流路25Eの内部でなくロータ歯部21Eの凹部21fに生じるようになるので、摩擦圧接により生じたバリBによって冷却流路25Eの壁面25aが覆われることを防止することができる。したがって、雄ロータ2E(スクリューロータ)の吐出側シャフト部22Dに対する冷却能力が摩擦圧接によって損なわれることを防止することができる。
【0092】
[その他の実施の形態]
なお、本発明は、上述した実施の形態に限られるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記した実施形態は本発明をわかり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。すなわち、ある実施形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。
【0093】
上述した第1~第4の実施の形態及びその変形例においては、無給油式のスクリュー圧縮機1を例に挙げて説明したが、油や水などの液体を作動室Cに供給する給液式のスクリュー圧縮機にも本発明を適用することができる。
【0094】
また、上述した実施の形態においては、一対のスクリューロータ(雄ロータ及び雌ロータ3)を備えるツインスクリュー式のスクリュー圧縮機1を例に挙げて説明した。しかし、3つ以上のスクリューロータを備えるマルチスクリュー式のスクリュー圧縮機にも本発明を適用することができる。また、1つのスクリューロータと一対のゲートロータとを備えるシングルスクリュー式のスクリュー圧縮機にも本発明を適用する
また、上述した実施の形態においては、雄ロータ2の冷却流路25、25C、25Eの壁面25aのみに溝構造26、26Aを設けた構成の例を示した。しかし、雌ロータ3の冷却流路35の壁面35aのみに溝構造を設ける構成や雄ロータ2の冷却流路25、25C、25Eの壁面25a及び雌ロータ3の冷却流路35の壁面35aの両方に溝構造を設ける構成も可能である。
【0095】
また、上述した実施の形態においては、雄ロータ2の冷却流路25の壁面25aにおける吐出側端面21bの位置と吐出側軸受6の取付位置との間の領域の全体に亘って溝構造26、26Aを設けた構成の例を示した。しかし、冷却流路25の壁面25aにおける吐出側端面21bの位置と吐出側軸受6の取付位置との間の領域の一部分に溝構造を設ける構成も可能である。また、冷却流路25の壁面25aにおける吐出側端面21bの位置と吐出側軸受6の取付位置との間の領域を超えて溝構造を設ける構成も可能である。
【符号の説明】
【0096】
1…スクリュー圧縮機、 2、2A、2B、2C、2D、2E…雄ロータ(スクリューロータ)、 3…雌ロータ(スクリューロータ)、 6、7…吐出側軸受、 15…ノズル、 21、21E…ロータ歯部、 21a…ローブ、 21b…吐出側端面、 21f…凹部、 22、22D…吐出側シャフト部、 25、25C、25E…冷却流路、 25a…壁面、 26、26A…溝構造、 27…環状溝、 27A…螺旋状の溝、 28…封止部材、 31…ロータ歯部、 31a…ローブ、 32…吐出側シャフト部、 35…冷却流路、 35a…壁面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14