(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023070492
(43)【公開日】2023-05-19
(54)【発明の名称】X線検査装置
(51)【国際特許分類】
G01N 23/18 20180101AFI20230512BHJP
【FI】
G01N23/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021182702
(22)【出願日】2021-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067323
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 教光
(74)【代理人】
【識別番号】100124268
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 典行
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 直也
(72)【発明者】
【氏名】増満 光希
【テーマコード(参考)】
2G001
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA11
2G001CA01
2G001PA11
2G001SA29
(57)【要約】
【課題】X線検査装置の筐体内にある複数の熱源に、筐体の外面にある送風部から冷気を適切に分配して供給し、各熱源に必要量の冷気を供給して冷却する。
【解決手段】X線検査装置1は、筐体2と、送風孔13から筐体内に冷気を供給する送風部12と、筐体2内に設けられたX線発生部7及びX線検出部10と、X線発生部7及びX線検出部10に冷気を導く第1導風路17及び第2導風路20と、送風孔13に対向して配置され、冷気を第1導風路17及び第2導風路20に導く第1導入口21及び第2導入口22を有している。冷気は、第1導入口と第2導入口が送風孔と対面する面積に応じて筐体内に入った時点で分配され、冷却に必要な適正量の冷気を熱源に供給できる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体(2)と、
前記筐体内に配置されたX線発生部(7)と、
前記筐体内に配置されたX線検出部(10)と、
前記筐体の外面に配置されて前記筐体の内部に通じる送風孔(13)から冷気を供給する送風部(12)と、
前記筐体内に設けられて前記送風部から供給される冷気を前記X線発生部に導く第1導風路(17)と、
前記筐体内に設けられて前記送風部から供給される冷気を前記X線検出部に導く第2導風路(20)と、
前記筐体内において前記送風孔に対向して配置され、前記送風孔を経て前記筐体内に供給された冷気を前記第1導風路に導く第1導入口(21)と、
前記筐体内において前記送風孔に対向して配置され、前記送風孔を経て前記筐体内に供給された冷気を前記第2導風路に導く第2導入口(22)と、
を有することを特徴とするX線検査装置(1,1a)。
【請求項2】
前記第1導風路(17)と前記第2導風路(20)の少なくとも一方に供給しようとする冷気が前記筐体(2)内に漏れないように、前記第1導入口(21)と前記第2導入口(22)の少なくとも一方の開口部が、前記送風孔(13)と同一平面内に配置されていることを特徴とする請求項1記載のX線検査装置(1,1a)。
【請求項3】
前記第1導入口(21)と前記第2導入口(22)は、前記送風孔(13)の全体を覆って互いに隣接して配置されていることを特徴とする請求項1に記載のX線検査装置(1,1a)。
【請求項4】
前記筐体(2)内に設けられて前記X線発生部(7)と前記X線検出部(10)を制御する制御部(9)を有しており、
前記送風孔(13)には、前記第1導入口(21)及び前記第2導入口(22)に対向していない開放部(25)があり、前記開放部から前記筐体内に供給される冷気が前記制御部を冷却することを特徴とする請求項1記載のX線検査装置(1)。
【請求項5】
前記第1導入口(21)と前記第2導入口(22)が、前記送風孔(13)から遠い側に回動軸(27,29)を有する揺動自在の壁部(26,28)により隔てられ、かつ互いに隣接して配置されていることを特徴とする請求項1に記載のX線検査装置(1a)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱源であるX線発生部とX線検出部を筐体の内部に有しており、筐体の外部に設けられた送風部によって各熱源を冷却するX線検査装置に係り、特に送風部から送られた冷気が筐体に入る段階で熱源ごとに分配され、必要な量の冷気を各熱源に供給して確実な冷却を行うことができるX線検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、X線検査装置の発明が開示されている。このX線検査装置の第1筐体3の内部は、隔壁16によって使用制限温度等に基づき複数の冷却区画C1,C2,C3,C4 に仕切られており、各区画C2,C3,C4には各々固有の使用制限温度を有する熱源17,18,19,20 が収納されている。使用制限温度が低い熱源19,20 が使用制限温度が高い熱源17,18 の上流に配置されるように空気の流路Bが設定されているので冷却効率が良い。熱交換器15の吸熱部15a は第1筐体3内にあり、放熱部は外気に連通した第2筐体内にある。この発明によれば、高価なエアコンを用いずに高い冷却効果を実現できるものとされている。
【0003】
下記特許文献2には、X線異物検出装置の発明が開示されている。このX線異物検出装置1は、温度センサ14で検出した筐体3内の温度が所定温度以上である時、制御手段10が制御弁13を開とし、筐体3の上面に設けられたボルテックスチューブ11を作動させて筐体3内に冷却空気を供給し、X線発生手段7を冷却する。同時にアクチュエータ20が作動されて扉16が駆動され、筐体3の排気口15が開放される。この発明によれば、筐体内の圧力上昇が抑えられ、排気によって冷却効率が向上するものとされている。また、この特許文献2には、
図14において、X線異物検出装置100の筐体101の背面側にエアコン102を設け、筐体の内部を冷却する例が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-109488号公報
【特許文献2】特開2009-300379号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に開示されたX線検査装置の発明によれば、使用制限温度が低い熱源が高い熱源の上流に配置されるように空気の流路が筐体内に設けられているので、一定の冷却効果は得られるものの、冷却器を用いた場合のような高い冷却効果が得られないという問題があった。
【0006】
上記特許文献2に開示されたX線異物検出装置の発明によれば、筐体の上面に設けられたボルテックスチューブによって、一つの空間である筐体内に冷却空気を流入させている。また同文献の
図14に開示されたX線異物検出装置では、筐体の背面にあるエアコンから供給される冷気は、筐体の背面側から一つの空間である筐体内に直接供給されていた。何れの構成も、X線発生器のような主たる熱源に冷気を導くことを優先すれば、これら以外の熱源、例えばX線検出器や電源部等には冷気が届きにくくなり、これらX線検出器等のような熱源に対する冷却効率が良くないという問題があった。
【0007】
また、近年進展しているX線検査装置の高性能化に伴い、冷却すべき機器の種類が増加する傾向にある。例えば、制御部は、画像処理用の第1制御部と、検査データおよび画像データの外部機器への出力や周辺機器との連動を制御する第2制御部のように複数化しており、X線検査装置では多くの冷却対象について各々適切な冷却性能が求められるようになっている。特に、前述した制御部については、X線検査装置の高性能化の一例として、透過画像の分解能の向上が求められており、高分解能のために従来よりも素子数の大きいX線検出器が使用されるようになり、画像処理に要する制御部のCPUの負荷が増大している。CPUの性能は温度の上昇によって低下するため、制御部のPC(CPU)近傍は特に冷却の効果に留意しなければならない。さらに、X線検査装置の高性能化の他の例として、深層学習の付加が求められる場合があり、その場合には深層学習に必要な要素としてGPUを使用するため、さらに熱源が増加し、効率的な冷却が一層求められる状況となっている。
【0008】
本発明は、以上の課題に鑑みてなされたものであり、少なくとも筐体内にあるX線発生部とX線検出部を含む複数の熱源に、筐体の外面に設けた送風部からの冷気を適切に分配して供給し、各熱源に必要な量の冷気を導いて確実な冷却を行うことができるX線検査装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載されたX線検査装置1,1aは、
筐体2と、
前記筐体2内に配置されたX線発生部7と、
前記筐体2内に配置されたX線検出部10と、
前記筐体2の外面に配置されて前記筐体2の内部に通じる送風孔13から冷気を供給する送風部12と、
前記筐体2内に設けられて前記送風部12から供給される冷気を前記X線発生部7に導く第1導風路17と、
前記筐体2内に設けられて前記送風部12から供給される冷気を前記X線検出部10に導く第2導風路20と、
前記筐体2内において前記送風孔13に対向して配置され、前記送風孔13を経て前記筐体2内に供給された冷気を前記第1導風路17に導く第1導入口21と、
前記筐体2内において前記送風孔13に対向して配置され、前記送風孔13を経て前記筐体2内に供給された冷気を前記第2導風路20に導く第2導入口22と、
を有することを特徴としている。
【0010】
請求項2に記載されたX線検査装置1,1aは、請求項1記載のX線検査装置1,1aにおいて、
前記第1導風路17と前記第2導風路20の少なくとも一方に供給しようとする冷気が前記筐体2内に漏れないように、前記第1導入口21と前記第2導入口22の少なくとも一方の開口部が、前記送風孔13と同一平面内に配置されていることを特徴としている。
【0011】
請求項3に記載されたX線検査装置1,1aは、請求項1に記載のX線検査装置1,1aにおいて、
前記第1導入口21と前記第2導入口22が、前記送風孔13の全体を覆って互いに隣接して配置されていることを特徴としている。
【0012】
請求項4に記載されたX線検査装置1,1aは、請求項1記載のX線検査装置1,1aにおいて、
前記筐体2内に設けられて前記X線発生部7と前記X線検出部10を制御する制御部9を有しており、
前記送風孔13には、前記第1導入口21及び前記第2導入口22に対向していない開放部25があり、前記開放部25から前記筐体2内に供給される冷気が前記制御部9を冷却することを特徴としている。
【0013】
請求項5に記載されたX線検査装置1aは、請求項1に記載のX線検査装置1aにおいて、
前記第1導入口21と前記第2導入口22が、前記送風孔13から遠い側に回動軸27,29を有する揺動自在の壁部26,28により隔てられ、かつ互いに隣接して配置されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載されたX線検査装置によれば、送風部で生成された冷気は、送風孔から筐体内へ供給される。筐体内においては、第1導風路の入口である第1導入口と、第2導風路の入口である第2導入口が、送風孔に対向した所定の配置で設けられている。このため冷気は、第1導入口と第2導入口が、送風孔と対面している各面積に応じて筐体内に入った時点で分配され、それぞれ第1導風路と第2導風路に供給される。従って、適正な冷却に必要な量の冷気をX線発生部とX線検出部にそれぞれ供給して適正な冷却を行うことができる。
【0015】
請求項2に記載されたX線検査装置によれば、例えば第1導入口の開口部を、送風孔が開口している面と同一平面内に配置すれば、送風孔から筐体内に供給された冷気のうち、第1導入口に供給しようとした冷気の全量が漏れなく確実に第1導入口に入るので、第1導風路を経て送られた冷気によってX線発生部の適正な冷却を確実に実行することができる。また、例えば第2導入口の開口部を、送風孔が開口している面と同一平面内に配置すれば、送風孔から筐体内に供給された冷気のうち、第2導入口に供給しようとした冷気の全量が漏れなく確実に第2導入口に入るので、第2導風路を経て送られた冷気でX線検出部の適正な冷却を確実に実行することができる。
【0016】
請求項3に記載されたX線検査装置によれば、第1導入口と第2導入口は、送風孔の全体を覆う大きさで、互いに隙間なく隣接して配置された構造であるため、隙間がある場合や送風孔の特定の一部分を覆う程度の大きさである場合等に較べれば、筐体構造が比較的単純であり、送風孔に対する位置決めが簡易に行えるため、より容易に製作することができる。
【0017】
請求項4に記載されたX線検査装置によれば、第1導入口及び第2導入口に対向していない送風孔の開放部から出てくる冷気によって制御部を冷却することができる。
【0018】
請求項5に記載されたX線検査装置によれば、第1導入口と第2導入口を隔てている壁部を揺動させれば、第1導入口が対向している送風孔の面積と、第2導入口が対向している送風孔の面積を変えることができ、X線発生部とX線検出部に供給される冷気の量や比率を任意に設定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図3】
図1の矢印B方向の視線において、第1導入口及び第2導入口と送風孔との配置関係のバリエーションを示す模式図である。
【
図4】第1導入口と第2導入口に供給される冷気の配分が変更可能である構造を示す第2実施形態の模式図であって、分図(a)は第1例の横断面図であり、分図(b)は第2例の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の第1実施形態のX線検査装置1について、
図1~
図4を参照して説明する。
第1実施形態のX線検査装置1は、X線発生器から被検査物にX線を照射し、被検査物を透過したX線をX線検出器で検出することにより、被検査物に含まれる異物の有無や被検査物の材質等についての検査を行う装置である。
【0021】
図1に示すように、X線検査装置1は、上述した機能を発揮するために必要な各種の構成を収納する容器である筐体2を備えている。筐体2は、設置面GLの上に支持台3をもって設置されている。筐体2は、その背面側を構成する縦長の基部4と、基部4の正面上部に設けられた大箱型の上部5と、前記上部5に対して縦方向に間隔をおいて基部4の正面下部に設けられた薄い小箱型の下部6を有しており、
図1に示すように全体としては正面(図中左側)の下方に被検査物を検査する凹部状の検査領域Sを備えた略コ字形の全体形状となっている。
【0022】
図1に示すように、筐体2の上部5の内部にはX線発生部7が配置されており、筐体2の上部5の正面外側には操作パネル8が設けられている。また、筐体2の基部4の内部には制御部9が配置されている。また、筐体2の下部6の内部にはX線検出部10が配置されている。
【0023】
図1に示すように、筐体2の下部6の上面には、
図1の紙面と直交する搬送方向に沿って被検査物Wを搬送する搬送手段11(ベルトコンベア等)が設けられている。筐体2の上部5と下部6の間の空間、すなわち搬送手段11が設けられた前記検査領域Sには、その正面側(図中左側)に開閉自在の蓋体11が設けられている。また、
図1には現れないが、
図1の紙面に垂直な方向について搬送手段11の奥側と手前側には、被検査物Wが検査領域Sに出入りするための入口と出口が設けられている。筐体2と、検査領域Sに設けられた蓋体11と入口及び出口は、何れもX線遮蔽構造となっている。
【0024】
以上の構成によれば、搬送手段11によって被検査物Wを検査領域S内で搬送しながら、上部5のX線発生部7によってX線を下方に照射し、被検査物Wを透過したX線を下部6のX線検出部10で検出することにより、被検査物Wの検査を行うことができる。
【0025】
次に、このX線検査装置1における冷却システムについて説明する。
図1に示すように、筐体2の外面のうち、基部4の背面側(
図1において右側)には、縦長薄型であるパネル状の送風部12(冷却器又はエアコン)が設けられている。送風部12は、外気よりも低温の空気である冷気を生成して筐体2内に供給し、対象を冷却した後に温度が上昇した空気(温気)を回収し、再び冷気として筐体2内に循環して供給することができる。
【0026】
図1に示す基部4に接している送風部12の壁体及び送風部12に接している基部4の背面の壁体には、筐体2と送風部12を貫通して設けられた送風孔13が設けられている。
図2に示すように、この送風孔13は、送風部12で生成されて筐体2内に供給される冷気が通過するための円形の孔である。
図1に示すように筐体2と送風部12の間に若干の隙間がある場合には、この隙間において筐体2と送風部12を繋ぐ円筒形の短い連絡路も含めて送風孔13と称するものとする。
図2に示すように、送風孔13には網状のガード14が設けられ、さらに
図1及び
図2に示すように筐体2内に向けて冷気を送り込む送風ブロア15が設けられている。また、
図1及び
図2に示すように、送風孔13の下方には筐体2から戻ってきた空気が吸い込まれる吸込口16が設けられている。なお、筐体2と送風部12の間に
図1に示したような隙間がなく、筐体2と送風部12を隔てている壁体が1枚である場合は、この壁体に形成された円形の孔が送風孔13となる。
【0027】
なお、この送風孔13の円形の開口の内側は、冷気が通過する部分であるから、当然壁体や構造物等の遮蔽物は存在しないが、この孔の範囲に円形の面を仮想し、冷気が通過可能な範囲を示す面との意味で、この面を送風面と称することとする。すなわち、送風面又は送風面を含む平面は、送風孔13が形成された筐体2の壁体又は送風部12の壁体の表面と実質的に同一平面となる。この「送風面」なる用語は、以下に説明するが、筐体2内で冷気を導く導風路の導入口(ダクトの入口)の開口部と、送風孔13との配置関係を説明するための便宜上の概念である。
【0028】
図1に示すように、筐体2の基部4と上部5の内部には、送風部12から供給される冷気をX線発生部7に導くダクトである第1導風路17が設けられている。第1導風路17は、前記送風孔13に近い基部4内の上方に後述する冷気の入口を有しており、ここから上方に延設され、さらに上部5内を正面に向けて延設されて、上部5内にあるX線発生部7に達している。X線発生部7に近接した第1導風路17の第1出口18には、冷気を吸引してX線発生部7に確実に供給するためのファン19が設けられている。第1導風路17の冷気の入口である第1導入口21は、角筒状の部材であり、基部4内にある第1導風路17の一端に接続され、前記送風孔13(または前記送風面)に対向して配置されている。
【0029】
図1に示すように、筐体2の基部4の内部には、送風部12から供給される冷気をX線検出部10に導くダクトである第2導風路20が設けられている。第2導風路20は、前記送風孔13に近い基部4内に後述する冷気の入口を有しており、ここから下方に延設され、さらに基部4内を正面に向け延設されて、下部6内にあるX線検出部10に達している。第2導風路20の第2出口23に近接しているX線検出部10の一部には、冷気を吸引してX線検出部10に確実に供給するためのファン19が設けられている。第2導風路20の冷気の入口である第2導入口22は、角筒状の部材であり、基部4内にある第2導風路20の一端に接続され、第1導入口21の下方に隣接して、前記送風孔13(または前記送風面)に対向して配置されている。
【0030】
図1及び
図3を参照しながら、第1導入口21及び第2導入口22と、送風孔13(または送風面)の配置関係について説明する。なお
図3は、
図1の矢印B方向の視線において、第1導入口21及び第2導入口22と送風孔13との配置関係のバリエーションを示す模式図であり、
図1に示す配置関係は
図3では分図(a)に相当する。
【0031】
まず、
図1に示すように、第1導入口21と第2導入口22は、送風孔13に対向して配置されている。対向して配置されるとは、第1導入口21と第2導入口22の開口部が、送風面又は送風面を含む平面に対して近距離で向き合っているか、又は送風面又は送風面を含む平面に突き当たっていることを意味する。突き当たっているとは、第1導入口21と第2導入口22の各開口部が、送風面又は送風面を含む平面と同一平面内に配置されていることを意味するが、その場合には、第1導入口21と第2導入口22の開口部が、送風面を含む平面に溶接等により隙間なく固定されていてもよいし、固定されずに当接しているだけでもよい。このような配置関係であれば、送風孔13から筐体2内に送られてくる冷気は、筐体2内に入った時点で、
図1の矢印B方向から見て第1導入口21と第2導入口22が送風孔13を覆っている面積(又はその割合)に応じて、対向する第1導入口21と第2導入口22に分配されて流入することになり、第1導入口21と第2導入口22に流入すべき冷気が筐体2内に漏れてしまうことはない。従って、第1導入口21と第2導入口22が送風孔13を覆っている面積(又はその割合)を適宜に定めておけば、冷却に適した量の冷気をX線発生部7とX線検出部10に確実に供給することができる。
図1及び
図3(a)に示す例では、第1導入口21と第2導入口22が送風孔13を覆う面積の割合は、概ね6:4程度となっており、送風孔13から入ってくる冷気の概ね60%がX線発生部7に供給され、概ね40%がX線検出部10に供給されることとなる。なお、この段での説明では、第1導入口21と第2導入口22の何れもが、送風孔13に対向して配置されているものとしたが、少なくとも一方がそのような配置となっていれば、当該導入口及びこれに連通する導風路には所期量の冷気が確実に供給されることとなり、所定の効果が得られる。
【0032】
また、
図1及び
図3(a)に示す第1導入口21と第2導入口22は、送風孔13の全体を覆っており、かつ互いに隣接して配置されている。すなわち、
図3(a)から理解されるように、第1導入口21と第2導入口22は何れも箱型の部材であるが、境壁を共通の部材とした1個の箱体における隣接した2つの部屋として作られているため、構造的に簡単であり、製作が容易である。また、一体に構成された第1導入口21と第2導入口22は、
図3(a)に示すように正方形であり、これが円形の送風孔13を完全に覆っているため、特定の箇所において送風孔13の一部を露出させるような構成(後述する
図3(e),(f),(g)に示す)に較べれば、送風孔13に対する位置決めを簡易に行えるため、この点においても製作が容易である。このような製造上の利点は、次に説明する
図3(b),(c),(d)に示す変形例も同様である。
【0033】
図3(b)は、第1導入口21b及び第2導入口22bの送風孔13に対する配置例である第1変形例を示している。第1変形例では、第1導入口21bと第2導入口22bを、送風孔13の全体を覆う略正方形状とし、かつ
図3(a)と同様の割合で左右に隣接して配置した。
【0034】
図3(c)は、第1導入口21c及び第2導入口22cの送風孔13に対する配置例である第2変形例を示している。第2変形例では、第1導入口21cと第2導入口22cを、第1変形例と同様に送風孔13の全体を覆う略正方形状とし、第1導入口21cは、送風孔13の左側半分と、同右側半分の上半分を覆う構造とし、第2導入口22cは、送風孔13の右側半分の下半分を覆う構造とし、第1導入口21cと第2導入口22cが、
図1のB矢視でL字形に見える境壁を共通の部材として隣接する構造とした。従って、送風孔13から入ってくる冷気の概ね75%がX線発生部7に供給され、概ね15%がX線検出部10に供給される。
【0035】
図3(d)は、第1導入口21d及び第2導入口22dの送風孔13に対する配置例である第3変形例を示している。第3変形例では、第1導入口21dを、第1変形例と同様に送風孔13の全体を覆う略正方形状とし、第2導入口22dは、第1導入口21dの一側面を貫通して第1導入口21dの内外を連通させる細い角筒状の構造とした。この構造によれば、図示の状態では、送風孔13から入ってくる冷気の概ね75%がX線発生部7に供給され、概ね15%がX線検出部10に供給されるが、X線発生部7とX線検出部10の発熱量が異なる異機種のX線検査装置1に登載する場合には、導入口の基本構成は
図3(d)と同様とし、組立において第2導入口22dの第1導入口21dに対する挿入長さを調整した上で両者を固定すれば、第1導風路17と第2導風路20に供給される冷気の配分をある程度の範囲で調整することができ、発熱量が異なるX線発生部7とX線検出部10に対応することができる。
【0036】
図3(e)は、第1導入口21e及び第2導入口22eの送風孔13に対する配置例である第4変形例を示している。第4変形例では、第1導入口21eと第2導入口22eが、送風孔13を完全には覆っておらず、送風孔13の略中央付近において送風孔13の一部が筐体2内に露出している。すなわち、第1導入口21eは、送風孔13の上半分を覆う構造とし、第2導入口22eは、送風孔13の下半分のさらに下半分を覆う構造とし、第1導入口21eと第2導入口22eの間に、何れの導入口も対向してないために送風孔13又は送風面が筐体2内に露出する部分が生じるような構造となっている。この送風孔13が露出した部分を、送風孔13又は送風面の開放部25と称する。
図1の構造に
図3(e)の構造を組み込んだ場合、
図1中、矢印Bで示す位置に開放部25が来るので、開放部25から筐体2内に供給された冷気は制御部9に吹き付けられ、これを冷却する。この構造によれば、送風孔13から入ってくる冷気の概ね50%がX線発生部7に供給され、概ね25%がX線検出部10に供給され、概ね25%が制御部9に供給される。開放部25は横方向に長いので、冷気も横方向に広がって制御部9に供給されるため、制御部9において特に冷却したい範囲が横方向に長い場合に適している。
【0037】
図3(f)は、第1導入口21f及び第2導入口22fの送風孔13に対する配置例である第5変形例を示している。第5変形例は、第4変形例の
図3(e)に示す配置を、反時計廻り方向に90度回転した配置となっている。X線発生部7とX線検出部10と制御部9に対して、それぞれ供給される冷気の割合は第4変形例と同一である。開放部25は縦方向に長いので、冷気も縦方向に広がって制御部9に供給されるため、制御部9において特に冷却したい範囲が縦方向に長い場合に適している。
【0038】
図3(g)は、第1導入口21g及び第2導入口22gの送風孔13に対する配置例である第6変形例を示している。第6変形例では、第1導入口21gは、送風孔13の左側半分を覆う構造とし、第2導入口22gは、送風孔13の右側半分の下半分を覆う構造とし、送風孔13の右側半分の上半分が、何れの導入口も対向してないために送風孔13又は送風面が筐体2内に露出する開放部25となっている。第1導入口21gと第2導入口22gは、共通の境壁を介して隣接している。送風孔13から入ってくる冷気の概ね50%がX線発生部7に供給され、概ね25%がX線検出部10に供給され、概ね25%が制御部9に供給される。
【0039】
図4は、第1導入口21及び第2導入口22の構造、並びにこれらの送風孔13に対する配置例である第6変形例を示している。第1導入口21と第2導入口22に供給される冷気の配分が変更可能である構造を示す模式図であって、分図(a)は第1の例の横断面図であり、分図(b)は第1の例を左側面における縦断面図で示したものである。
【0040】
本発明の第2実施形態のX線検査装置1の2つの構造例について
図4(a)と
図4(b)を参照して説明する。
第2実施形態のX線検査装置1aのX線検査に関与する機構の基本構造は、
図1を参照して説明した第1実施形態と同一である。第2実施形態のX線検査装置1aの構成のうち、第1実施形態と構造が異なっているのは実質的に第1導入口21と第2導入口22の部分であるので、当該部分を中心として説明する。
【0041】
図4(a)は、第2実施形態の第1例を示す横断面図である。第1導入口21hと第2導入口22hは、第1実施形態の変形例を示す
図3(b)のように、横方向に隣接する一体型の箱型に構成されており、送風孔13の全体を覆いつつ送風面に対向している。第1導入口21hと第2導入口22hの境となる壁部26は、垂直方向(図中紙面に垂直な方向)に平行であり、送風孔13から遠い側に垂直方向と平行に配置された回動軸27に軸支されて揺動自在となっている。従って、図中に示すように壁部26を左右方向に揺動させれば、第1導入口21hが対向している送風孔13の面積と、第2導入口22hが対向している送風孔13の面積を変えることができ、X線発生部7とX線検出部10に供給される冷気の量や比率を任意に設定することができる。
【0042】
図4(b)は、第2実施形態の第2例を示す縦断面図である。第1導入口21kと第2導入口22kは、第1実施形態を示す
図3(a)のように、縦方向に隣接する一体型の箱型に構成されており、送風孔13の全体を覆いつつ送風面に対向している。第1導入口21kと第2導入口22kの境となる壁部28は、第1導入口21kと第2導入口22kを上下に仕切っており、送風孔13から遠い側に水平方向(図中紙面に垂直な方向)と平行に配置された回動軸29に軸支されて前端縁が上下方向に揺動自在となっている。従って、図中に示すように壁部28を上下に揺動させれば、第1導入口21kが対向している送風孔13の面積と、第2導入口22kが対向している送風孔13の面積を変えることができ、X線発生部7とX線検出部10に供給される冷気の量や比率を任意に設定することができる。
【符号の説明】
【0043】
1,1a…X線検査装置
2…筐体
7…X線発生部
9…制御部
10…X線検出部
12…送風部
13…送風孔
17…第1導風路
20…第2導風路
21…第1導入口
22…第2導入口
25…開放部
26,28…壁部
27,29…回動軸
W…被検査物
S…検査領域