(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023070518
(43)【公開日】2023-05-19
(54)【発明の名称】生体の深部体温測定システム
(51)【国際特許分類】
G01K 13/20 20210101AFI20230512BHJP
H10N 10/00 20230101ALI20230512BHJP
H10N 10/13 20230101ALI20230512BHJP
【FI】
G01K13/20 341P
G01K13/20 361C
H01L35/00 S
H01L35/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021182741
(22)【出願日】2021-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】515135114
【氏名又は名称】株式会社Eサーモジェンテック
(71)【出願人】
【識別番号】518224912
【氏名又は名称】Biodata Bank株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小寺 裕也
(72)【発明者】
【氏名】平山 勝啓
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 光一郎
(72)【発明者】
【氏名】一ノ倉 悠
(72)【発明者】
【氏名】安才 武志
(72)【発明者】
【氏名】池村 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】岡嶋 道生
(72)【発明者】
【氏名】南部 修太郎
(57)【要約】
【課題】高精度で、かつ自己および通信機能のための電源を供給できる、簡単な構成からなるウェアラブル可能な生体の深部体温測定システムを提供する。
【解決手段】生体の深部体温測定システムは、プリント基板2と、プリント基板2に搭載され、複数のp型熱電素子チップ53及びn型熱電素子チップ54が交互に直列接続された熱電変換モジュール4と、プリント基板に搭載された温度センサ6とを備え、プリント基板を生体表面に接触させて配置し、熱電変換モジュールにおける起電力、及び温度センサで測定された生体の表面温度を測定することにより、生体の深部体温を測定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント基板と、
前記プリント基板に搭載され、複数のp型熱電素子チップ及びn型熱電素子チップが交互に直列接続された熱電変換モジュールと、
前記プリント基板に搭載された温度センサと
を備え、
前記プリント基板を生体表面に接触させて配置し、前記熱電変換モジュールにおける起電力、及び前記温度センサで測定された生体の表面温度を測定することにより、生体の深部体温を測定する、生体の深部体温測定システム。
【請求項2】
プリント基板と、
前記プリント基板に搭載され、複数のp型熱電素子チップ及びn型熱電素子チップが交互に直列接続された2つ熱電変換モジュールと、
前記プリント基板に搭載され、前記各熱電変換モジュールの近傍に配置された2つの温度センサと
を備え、
前記プリント基板を生体表面に接触させて配置し、前記各温度センサで測定された生体の表面温度、大気側の温度、及び前記各熱電変換モジュールの前記生体に接触する面と大気側の面との間の熱抵抗を測定することにより、生体の深部温度を測定する、生体の深部体温測定システム。
【請求項3】
前記各熱電変換モジュールの熱抵抗は、互いに異なる、請求項2に記載の生体の深部体温測定システム。
【請求項4】
前記熱電変換モジュールは、体温と外気温との温度差で発電する、請求項1~3の何れかに記載の生体の深部体温測定システム。
【請求項5】
前記熱電変換モジュールで発電された電力は、通信機能を含む深部体温計測システムの電源に用いられる、請求項1~4の何れかに記載の生体の深部体温測定システム。
【請求項6】
前記熱電変換モジュールの一部分が、交流抵抗値から換算される温度センサとして使われる、請求項1~5の何れかに記載の生体の深部体温測定システム。
【請求項7】
前記2つの熱電変換モジュールの底面の面積が同じである、請求項2~6の何れかに記載の生体の深部体温測定システム。
【請求項8】
前記2つの熱電変換モジュールのプリント基板が共通である、請求項2~7の何れかに記載の生体の深部体温測定システム。
【請求項9】
前記2つの熱電変換モジュールは、前記熱電素子チップの高さが異なる、または複数の熱電変換モジュールを重ねることで熱抵抗が互いに異なっている、請求項3に記載の生体の深部体温測定システム。
【請求項10】
前記熱電変換モジュールの周囲が、低放射断熱材で囲まれている、請求項1~9の何れかに記載の生体の深部体温測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体の深部体温の測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、熱中症予防の観点から、通常の体温(皮膚直下の温度)だけでなく、生体の深部体温の測定の重要性が指摘されている。さらに、測定したデータを医療機関に通信することも重要である。そのため、測定、通信だけでなく、それらを駆動する電源もウェアラブル化する必要がある。
【0003】
ウェアラブル・デバイスを駆動する電源として、従来は、小型電池が検討されている。しかしながら、電池の交換コストが大きな課題になっており、生体の発熱を活かしたエネルギー・ハーベスティング技術による自立電源の開発要望も強い。
【0004】
特許文献1に、2組の熱流検出系を備えた深部体温計が開示されている。
図6は、特許文献1に開示された深部体温計の構成を示した断面図である。
図6に示すように、深部体温計100は、被検体からの熱が入力され、第1熱流と第2熱流とを分流して流出する熱入力端子101を備え、第1入力側温度センサ102と第1出力側温度センサ103とを用いて、第1熱流を測定し、第2入力側温度センサ105と第2出力側温度センサ106とを用いて、第2熱流を測定する。熱入力端子101と第1入力側温度センサ102との間には、第1熱抵抗体108が設けられ、熱入力端子101と第2入力側温度センサ105との間には、第2熱抵抗体109が設けられている。深部体温は、被検体から流出する第1熱流と第2熱流とに基づいて測定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された深部体温計では、積層体に埋め込まれた4個の温度センサが必要であるため、構成が複雑となり、また、深部体温計と通信手段を駆動する電源が充電池であるため、ウェアラブル・デバイスとして、大きな課題があった。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その主な目的は、高精度で、かつ自己および通信機能のための電源を供給できる、簡単な構成からなるウェアラブル可能な生体の深部体温計測システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る生体の深部体温測定システムは、プリント基板と、プリント基板に搭載され、複数のp型熱電素子チップ及びn型熱電素子チップが交互に直列接続された熱電変換モジュールと、プリント基板に搭載された温度センサとを備え、プリント基板を生体表面に接触させて配置し、熱電変換モジュールにおける起電力、及び温度センサで測定された生体の表面温度を測定することにより、生体の深部体温を測定することを特徴とする。
【0009】
本発明に係る他の生体の深部体温測定システムは、プリント基板と、プリント基板に搭載され、複数のp型熱電素子チップ及びn型熱電素子チップが交互に直列接続された2個の熱電変換モジュールと、プリント基板に搭載され、各熱電変換モジュールの近傍に配置された2個の温度センサとを備え、プリント基板を生体表面に接触させて配置し、各温度センサで測定された生体の表面温度、大気側の温度、及び各熱電変換モジュールの生体に接触する面と大気側の面との間の熱抵抗を測定することにより、生体の深部温度を測定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高精度で、かつ自己および通信機能のための電源を供給できる、簡単な構成からなるウェアラブル可能な生体の深部体温測定システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態における深部体温測定システムの構成を模式的に示した原理図である。
【
図2】本発明の一実施形態における熱電変換モジュールの構成図である。
【
図3】本発明の一実施形態における熱電変換モジュールの他の構成図である。
【
図4】本発明の他の実施形態における深部体温測定システムの構成を模式的に示した原理図である。
【
図5】本発明の深部体温測定システムのブロック構成の一例の図である。
【
図6】従来の深部体温計の構成を示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。また、本発明の効果を奏する範囲を逸脱しない範囲で適宜変更は可能である。
【0013】
図1は、本発明の一実施形態における生体の深部体温測定システムの構成を模式的に示した原理図である。
図1に示すように、プリント基板2上に実装された熱電変換モジュール4が、生体表面1に接して配置される。熱電変換モジュール4の一部は、温度センサ6として用いる。また、熱電変換モジュール4の周りには、低放射断熱材11が設けられている。
【0014】
図2は、熱電変換モジュール4の構成の一例を示した図である。
【0015】
図2に示すように、熱電変換モジュール4は、プリント基板51(2)上の配線ランド52に、p型熱電素子チップ53、n型熱電素子チップ54が実装され、上部配線基板55に形成されている上部接続配線56により、交互に直列接続されている。熱電変換モジュール4は、生体表面に接するプリント基板51の底面の温度と、上部配線基板55の外側の環境温度(Ta)との温度差で発電でき、その電力は、電源取出し電極57aと57bから取出すことができる。
【0016】
また、熱電変換モジュール4は、図中の最上部の一列を、温度センサ6として用いる。すなわち、電源取出し電極57aと温度センサ用取出し電極57cの間の起電力、あるいは、抵抗、好ましくは交流AC抵抗の温度依存性により、プリント基板51の底面の温度、すなわち、プリント基板51の底面と接する皮膚温度を測ることができる。
【0017】
なお、ここでは、熱電変換モジュール4の一部を皮膚温度の測定に用いているが、通常のサーミスタ、熱電対、白金抵抗温度センサ等を用いてもよい。この場合、薄いシート状の熱電対等を用いて、皮膚と熱電変換モジュール4の間に挿入すると、比較的正確に皮膚温度が測定できる。なお、熱流が変化して、測定誤差が大きくならないよう、皮膚と熱電変換モジュール4との接触をよくすることが好ましい。
【0018】
また、
図3に示すように、温度センサ6として、サーミスタチップ59をプリント基板51に実装しても良い。これにより、製作プロセスが簡単になり、生体への装着も簡単になる。
【0019】
また、プリント基板51は、熱伝導率が大きい材料からなり、また、その厚みは薄いことが好ましい。これにより、熱抵抗が小さくなり、皮膚温度をより正確に測定することができる。また、プリント基板51は、フレキシブルであることが好ましい。これにより、生体表面のような、曲面で、変形しやすいところに、より密着して装着することができる。
【0020】
図1に示した深部体温測定システムにおいて、熱電変換モジュール4の周りには低放射断熱材11が設けられているので、生体深部(温度:Tx)からの熱流Qは、熱電変換モジュール4を通って外部に放出される。従って、[深部温度(Tx)-表面(皮膚)温度(T1)]は、熱流Qに比例する。また、熱電変換モジュール4の熱起電力は、熱流Qに比例する。従って、[深部温度(Tx)-表面(皮膚)温度(T1)]は、熱電変換モジュール4の熱起電力(V)に比例し、以下の式(1)が成立する。
【0021】
Tx-T1=a×V+b・・・(1)
ここで、定数a、bは、深部温度計での実測値を用いて、実験的に求めることができる。また、表面(皮膚)温度(T1)は、温度センサ6により測定することができる。
【0022】
上記の式(1)に基づいて、熱電変換モジュール4の熱起電力(V)と、表面(皮膚)温度(T1)とを測定することにより、生体の深部温度(Tx)を求めることができる。
【0023】
(他の実施形態)
図4は、他の実施形態における生体の深部体温測定システムの構成を模式的に示した原理図である。
図4に示すように、プリント基板2上に2つの熱電変換モジュール4、5が搭載されている。熱電変換モジュール4、5の周りには、低放射断熱材11が設けられているので、生体深部(温度Tx)からの熱流Q
1、Q
2は、それぞれ、熱電変換モジュール4、5を通って外部に放出される。熱流Q
1、Q
2において、生体内の熱抵抗をR
1、R
2、熱電変換モジュール4、5の熱抵抗をR
M1、R
M2とすると、以下の式(2)、(3)が成り立つ。なお、熱抵抗R
M1、R
M2は、熱電変換モジュール4、5の生体に接触する面と大気側の面との間の熱抵抗である。
【0024】
Q1=(T1-Ta)/RM1=(Tx-T1)/R1 ・・・(2)
Q2=(T2-Ta)/RM2=(Tx-T2)/R2 ・・・(3)
ここで、Taは、熱電変換モジュール4、5の外側の環境温度、T1は、熱電変換モジュール4近傍の表面(皮膚)温度、T2は、熱電変換モジュール5近傍の表面(皮膚)温度である。なお、表面(皮膚)温度T1、T2は、それぞれ、熱電変換モジュール4、5の近傍に配置された温度センサ6、7によって測定される。
【0025】
熱電変換モジュール4、5の構成及び面積が同じであれば、R1≒R2と考えるため、上記の式(2)、(3)は、2つの未知数(Tx、R1(≒R2))からなる連立方程式となる。従って、式(2)、(3)に基づいて、表面(皮膚)温度(T1、T2)、大気側の温度Ta、及び熱電変換モジュール4、5の熱抵抗をRM1、RM2を、それぞれ測定することにより、生体の深部温度(Tx)を求めることができる。
【0026】
なお、熱電変換モジュール4、5の熱抵抗R
M1、R
M2が同じになると、T1=T2となり、上記の2つの式(2)、(3)は同じになるため、R
M1、R
M2は異なるものである必要がある。熱電変換モジュール4、5の熱抵抗R
M1、R
M2は、熱電素子チップ53、54の部分が大きく占めるため、熱抵抗R
M1、R
M2が異なるようにするためには、熱電素子チップ53、54の高さ(H)(
図2を参照)を変えるのが簡便である。あるいは、熱電変換モジュールを複数枚重ねて熱抵抗を変えてもよい。
【0027】
本実施形態において、2つの熱電変換モジュール4、5は、共通のプリント基板51に搭載されていることが好ましい。これにより、製作プロセスが簡単になり、生体への装着も簡単になる。
【0028】
図5は、深部体温測定システムのブロック構成図である。
図5に示すように、深部体温測定システムは、各温度センサ6、7及び環境温度センサ8の信号を受け、深部体温を演算する処理装置31、及び、演算したデータを送信する無線通信装置32を備えている。また、熱電変換モジュール4、5の発電出力を、処理装置31及び無線通信装置32の電源として供給するためのDC-DCコンバータ33を備えている。
【0029】
熱電変換モジュール4、5の一部を、温度センサ6、7として用いた場合、起電力から温度に換算する際、起電力が小さいため、電圧増幅アンプ34、35を設けることが好ましい。なお、交流AC抵抗値からの換算値を用いる場合には、電圧増幅アンプ34、35は不要であり、処理装置31にその機能を持たせればよい。
【0030】
なお、
図5では、2つの熱電変換モジュール4、5を示したが、勿論、
図1に示したように、熱電変換モジュール4は1つであってもよい。
【符号の説明】
【0031】
1 生体表面
2 プリント基板
4、5 熱電変換モジュール
6、7 温度センサ
8 環境温度センサ
11 低放射断熱材
31 処理装置
32 無線通信装置
33 DC-DCコンバータ
34、35 電圧増幅アンプ
51 プリント基板
52 配線ランド
53 p型熱電素子チップ
54 n型熱電素子チップ
55 上部配線基板
56 上部接続配線
57a、57b、57c 電極
59 サーミスタチップ