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特開2023-70520装身具部品製造方法、装身具製造方法、装身具の部品及び装身具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023070520
(43)【公開日】2023-05-19
(54)【発明の名称】装身具部品製造方法、装身具製造方法、装身具の部品及び装身具
(51)【国際特許分類】
   A44C 27/00 20060101AFI20230512BHJP
   A44C 25/00 20060101ALI20230512BHJP
【FI】
A44C27/00
A44C25/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021182744
(22)【出願日】2021-11-09
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2022-04-01
(71)【出願人】
【識別番号】503175966
【氏名又は名称】株式会社クロスフォー
(74)【代理人】
【識別番号】100108006
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】土橋 秀位
【テーマコード(参考)】
3B114
【Fターム(参考)】
3B114AA02
3B114AA03
3B114JA00
(57)【要約】
【課題】本体に吊り下げたときに揺動し易い装身具の部品を効率的に製造できる装身具部品製造方法及び装身具製造方法を提供する。
【解決手段】装身具1は、第1内面132に囲まれた第1孔131を持つ本体10と、第1内面132と係合する第1内面132に囲まれた第1孔131持つ部品22とを備える。部品22の製造方法は、部品22を形成する板状部材30に打ち抜き加工で第2孔231を開ける穿孔工程と、第2孔231の内側に向かって第2内面232が盛り上がるように、第2孔231を囲む縁部303を圧縮する第1整形工程と、板状部材30から部品22を切り出すせん断工程と、第1整形加工により盛り上がった第2内面232の尖端部を丸める第2整形工程とを有する。第2整形工程は、せん断加工によって切り出された部品22にバレル加工を施すことを含む。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1内面に囲まれた第1孔を持つ本体と、
前記第1内面と係合する第2内面に囲まれた第2孔を持ち、前記本体に吊り下げられる部品と、
を備えた装身具における前記部品の製造方法であって、
前記部品を形成する板状部材を準備する工程と、
打ち抜き加工によって前記板状部材に前記第2孔を開ける穿孔工程と、
前記第2孔の内側に向かって前記第2内面が盛り上がるように、前記第2孔を囲む縁部を前記板状部材の厚さ方向に圧縮する第1整形工程と、
前記板状部材から前記部品を切り出すせん断工程と、
前記第1整形工程により盛り上がった前記第2内面の尖端部を丸める第2整形工程とを有し、
前記第2整形工程は、前記せん断工程によって切り出された前記部品にバレル加工を施すことを含む、
装身具部品製造方法。
【請求項2】
前記第1整形工程は、
テーパー状のピンを前記板状部材の一方の面から前記厚さ方向に沿って前記縁部に押し当てることにより、前記第2内面の一部をテーパー状に整形するテーパー整形工程と、
前記テーパー整形工程によって前記第2孔の内側に盛り上がった前記第2内面の一部を打ち抜き加工によって削り落とす打ち抜き工程とを含む、
請求項1に記載の装身具部品製造方法。
【請求項3】
前記第1整形工程は、
複数の前記テーパー整形工程と、
各前記テーパー整形工程の間に実施される少なくとも1つの前記打ち抜き工程とを含んでおり、
各前記テーパー整形工程で用いられる前記ピンのテーパーの角度が後の工程になるほど小さくなる、
請求項2に記載の装身具部品製造方法。
【請求項4】
前記テーパー整形工程は、前記板状部材の前記一方の面に対して反対側の面に配置されたプレートであって、前記厚さ方向と平行な方向から見て前記ピンのテーパー部分の少なくとも一部と重なる場所に配置された前記プレートと、前記ピンとの間に、前記縁部を挟んで圧縮することを含む、
請求項2又は3に記載の装身具部品製造方法。
【請求項5】
第1内面に囲まれた第1孔を持つ本体と、
前記第1内面と係合する第2内面に囲まれた第2孔を持ち、前記本体に吊り下げられる部品と、
を備えた装身具の製造方法であって、
請求項1~4のいずれか一項に記載の装身具部品製造方法により前記部品を製造する工程と、
前記第1内面と前記第2内面とが係合するように前記部品を前記本体に取り付ける工程と、
を有する装身具製造方法。
【請求項6】
装身具の本体に吊り下げられる部品であって、
前記本体は、第1内面に囲まれた第1孔を持ち、
前記部品は、前記第1内面と係合する第2内面に囲まれた第2孔を持ち、
前記第2内面は、前記第2孔の内側に向かって盛り上がった曲面であり、
前記第2孔の貫通方向と平行かつ前記第2孔の中心を通る平面で前記第2内面を切断した断面形状が、前記第2孔の内側に向かって突出した頂部において円弧状に曲がっている、
装身具の部品。
【請求項7】
前記第2内面の前記頂部は、前記第2孔の一方の開口部に比べて前記第2孔の他方の開口部の近くに位置しており、
前記第2内面は、前記第2孔の前記一方の開口部と前記頂部との間にテーパー面を持ち、
前記テーパー面は、前記一方の開口部から前記他方の開口部に向かって前記第2孔の中心側に傾斜している、
請求項6に記載の装身具の部品。
【請求項8】
本体と、前記本体に吊り下げられる部品とを備えた装身具であって、
前記部品が、請求項6又は7に記載の部品である、
装身具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装身具部品製造方法、装身具製造方法、装身具の部品及び装身具に関する。
【背景技術】
【0002】
本体に吊り下げられた部品が揺動することによって、部品に固定された宝石が瞬いて見えるように構成された揺動式の装身具が知られている。例えば、下記の特許文献1には、フレームに対して宝石の台座部が揺動可能に吊り下げられた身飾品が記載されている。この身飾品では、台座部に設けられた2つのリングがフレームに設けられた2つのリングとそれぞれ連結されることにより、台座部が揺動可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-163039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示すように、本体が持つ孔の内面(フレームに設けられたリングの孔の内面)と部品が持つ孔の内面(台座部に設けられたリングの孔の内面)とが接触するように構成されている場合、孔の内面の接触面積が小さいほど部品の揺動が生じ易くなり、揺動の持続時間が長くなる。この接触面積を小さくするため、特許文献1には、リングにおける孔の内面の断面形状を孔の内側に向かって先細りする尖った形状に形成することが記載されている。これにより、フレームと台座部のリング同士が先細り形状の尖端部分において接触することになるため、接触面積を小さくすることができる。
【0005】
しかしながら、リングの孔の内面に上記のような先細り形状を形成するためには、作業者がドリルなどで個々のリングの内面を削る必要があり、製造に手間がかかるという問題がある。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、本体に吊り下げたときに揺動し易い装身具の部品を効率的に製造できる装身具部品製造方法及び装身具製造方法を提供すること、並びに、本体に吊り下げられたときに揺動し易い装身具の部品とこれを備えた装身具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、第1内面に囲まれた第1孔を持つ本体と、前記第1内面と係合する第2内面に囲まれた第2孔を持ち、前記本体に吊り下げられる部品と、を備えた装身具における前記部品の製造方法であって、前記部品を形成する板状部材を準備する工程と、打ち抜き加工によって前記板状部材に前記第2孔を開ける穿孔工程と、前記第2孔の内側に向かって前記第2内面が盛り上がるように、前記第2孔を囲む縁部を前記板状部材の厚さ方向に圧縮する第1整形工程と、前記板状部材から前記部品を切り出すせん断工程と、前記第1整形工程により盛り上がった前記第2内面の尖端部を丸める第2整形工程とを有し、前記第2整形工程は、前記せん断工程によって切り出された前記部品にバレル加工を施すことを含む。
【0008】
好適に、前記第1整形工程は、テーパー状のピンを前記板状部材の一方の面から前記厚さ方向に沿って前記縁部に押し当てることにより、前記第2内面の一部をテーパー状に整形するテーパー整形工程と、前記テーパー整形工程によって前記第2孔の内側に盛り上がった前記第2内面の一部を打ち抜き加工によって削り落とす打ち抜き工程とを含む。
【0009】
好適に、前記第1整形工程は、複数の前記テーパー整形工程と、各前記テーパー整形工程の間に実施される少なくとも1つの前記打ち抜き工程とを含んでおり、各前記テーパー整形工程で用いられる前記ピンのテーパーの角度が後の工程になるほど小さくなる。
【0010】
好適に、前記テーパー整形工程は、前記板状部材の前記一方の面に対して反対側の面に配置されたプレートであって、前記厚さ方向と平行な方向から見て前記ピンのテーパー部分の少なくとも一部と重なる場所に配置された前記プレートと、前記ピンとの間に、前記縁部を挟んで圧縮することを含む。
【0011】
本発明の第2の態様は、第1内面に囲まれた第1孔を持つ本体と、前記第1内面と係合する第2内面に囲まれた第2孔を持ち、前記本体に吊り下げられる部品と、を備えた装身具の製造方法であって、上記第1の態様の装身具部品製造方法により前記部品を製造する工程と、前記第1内面と前記第2内面とが係合するように前記部品を前記本体に取り付ける工程とを有する。
【0012】
本発明の第3の態様は、装身具の本体に吊り下げられる部品であって、前記本体は、第1内面に囲まれた第1孔を持ち、前記部品は、前記第1内面と係合する第2内面に囲まれた第2孔を持ち、前記第2内面は、前記第2孔の内側に向かって盛り上がった曲面であり、前記第2孔の貫通方向と平行かつ前記第2孔の中心を通る平面で前記第2内面を切断した断面形状が、前記第2孔の内側に向かって突出した頂部において円弧状に曲がっている。
【0013】
好適に、前記第2内面の前記頂部は、前記第2孔の一方の開口部に比べて前記第2孔の他方の開口部の近くに位置しており、前記第2内面は、前記第2孔の前記一方の開口部と前記頂部との間にテーパー面を持ち、前記テーパー面は、前記一方の開口部から前記他方の開口部に向かって前記第2孔の中心側に傾斜している。
【0014】
本発明の第4の態様は、本体と、前記本体に吊り下げられる部品とを備えた装身具であって、前記部品が、上記第3の態様の部品である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、本体に吊り下げたときに揺動し易い装身具の部品を効率的に製造できる装身具部品製造方法及び装身具製造方法を提供できる。また、本発明によれば、本体に吊り下げられたときに揺動し易い装身具の部品とこれを備えた装身具を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本実施形態に係る装身具の一例を示す正面図である。
図2図2は、本実施形態に係る装身具の一例を示す正面側の斜視図である。
図3図3は、本実施形態に係る装身具の一例を示す背面側の斜視図ある。
図4図4は、本実施形態に係る装身具の部品の一例を示す図である。
図5図5は、本実施形態に係る装身具製造方法の一例を説明するためのフローチャートである。
図6図6Aは、本実施形態に係る装身具部品製造方法の一例を説明するためのフローチャートである。図6Bは、第1整形工程の一例を説明するためのフローチャートである。
図7図7A及び図7Bは、穿孔工程を説明するための図である。
図8図8A及び図8Bは、テーパー整形工程を説明するための図である。
図9図9A及び図9Bは、テーパー整形後の打ち抜き工程を説明するための図である。
図10図10A及び図10Bは、打ち抜き工程後のテーパー整形工程を説明するための図である。
図11図11は、順送金型によってプレス加工を受けている途中の板状部材の一例を示す図である。
図12図12Aは、第1整形工程後の板状部材の一例を示す断面図である。図12Bは、第2整形工程後の部品の一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1~3は、本実施形態に係る装身具の一例を示す図であり、装身具の一例としてのネックレス1を示す。図1はネックレス1の正面図を示し、図2は正面側から見たネックレス1の斜視図を示し、図3は背面側から見たネックレス1の斜視図を示す。ネックレス1は、紐状部材の一例であるチェーン3と、ペンダントトップ2とを備えており、ペンダントトップ2がチェーン3に吊り下げられている。図1図3では、要部であるペンダントトップ2を中心に図解している。
【0018】
ペンダントトップ2は、本体10と、本体10に対して揺動可能な装飾部材20とを有する。装飾部材20は、本体10に吊り下げられる部品22と、部品22に固定された宝石21とを含む。部品22は、4本の爪部221を備えており、これらの爪部221によって宝石21を保持する。
【0019】
図1図3では、ペンダントトップ2の本体10を基準とする3つの直交する方向(X方向、Y方向、Z方向)が規定されている。X方向は互いに逆向きの2つの方向(X1方向、X2方向)を含み、Y方向は互いに逆向きの2つの方向(Y1方向、Y2方向)を含み、Z方向は互いに逆向きの2つの方向(Z1方向、Z2方向)を含む。以下の説明では、Z1方向を上方向、Z2方向を下方向、Y1方向を背面方向、Y2方向を正面方向、X1方向を右方向、X2方向を左方向として説明する。
【0020】
本体10は、背面側において横方向に並んだ2つの第1係合部13を有する。2つの第1係合部13は、それぞれ第1孔131を持つ。第1孔131は、第1係合部13の第1内面132に囲まれている。
【0021】
部品22は、宝石21の右側と左側に位置した2つの第2係合部23を有する。2つの第2係合部23は、それぞれ第2孔231を持つ。第2孔231は、第2係合部23の第2内面232に囲まれている。
【0022】
本体10の2つの第1係合部13は、それぞれ部品22の2つの第2係合部23と連結されて係合する。すなわち、一方の第1係合部13の第1内面132と一方の第2係合部23の第2内面232とが係合するように、一方の第1係合部13と一方の第2係合部23とが連結され、他方の第1係合部13の第1内面132と他方の第2係合部23の第2内面232とが係合するように、他方の第1係合部13と他方の第2係合部23とが連結される。2つの第1係合部13と2つの第2係合部23とが互いに連結されて係合することにより、宝石21を保持した部品22が本体10に対して揺動可能に吊り下げられた状態となる。
【0023】
本体10は、正面側フレーム部11を有する。正面側フレーム部11は、図1に示すように、正面側から見て左右対称な逆V字形の形状を持つ。正面側フレーム部11の左右に分かれた2つの下側の端部には、それぞれ背面側へ延びた第1係合部13が設けられている。2つの第1係合部13の第1孔131は、それぞれ横方向に貫通しており、横方向から見て互いに重なる場所に位置する。
【0024】
本体10は、図2図3に示すように、正面側フレーム部11の左右両側の縁部から背面側へ延びた2つの背面側フレーム部12を有する。背面側フレーム部12は、正面側フレーム部11の頂部付近から背面側へ延びた上部フレーム121と、正面側フレーム部11の上下方向の中央付近から背面側へ延びた下部フレーム122と、上部フレーム121及び下部フレーム122の背面側の端部同士を接続する中間フレーム123とを含む。上部フレーム121と、下部フレーム122と、中間フレーム123と、正面側フレーム部11とにより囲まれる領域は、開口部124となっている。図2及び図3に示すように、2つの背面側フレーム部12の開口部124が横方向へ貫通しており、この開口部124にチェーン3が挿通される。
【0025】
図4は、本体10に吊り下げられる部品22を示す図である。部品22は、宝石21(装飾体の一例)が固定される台座部220と、台座部220の縁から延びた2つの腕部24と、2つの腕部24の端部に設けられた2つの第2係合部23とを有する。また部品22は、台座部220の縁から延びた4つの爪部221を有しており、爪部221の端部が宝石21の外縁を掴むように折り曲げられる。台座部220の中央部には円形の開口部222が形成されており、宝石21は、この開口部222からキューレット部を突き出した状態で台座部220に固定される。部品22は、後述するように、金属などの板状部材にプレス加工を施すことによって形成される。
【0026】
次に、本実施形態に係る装身具製造方法について、上述した図1図3に示すネックレス1の製造方法を例に挙げて説明する。図5は、本実施形態に係る装身具製造方法の一例を説明するためのフローチャートである。
【0027】
図5に示す装身具製造方法は、本体10を製造する本体製造工程(ST10)と、部品22を製造する部品製造工程(ST20)を有する。本体製造工程(ST10)では、例えば、プレス加工や鋳造などの方法によって本体10が製造される。部品製造工程(ST20)については、後で図6A及び図6Bのフローチャートを参照して説明する。
【0028】
ステップST20において部品22が製造されると、この部品22に宝石21を取り付ける工程(ST30)が実施される。この工程では、宝石21のキューレット部を台座部220の開口部222(図4)から突き出た状態にして、4本の爪部221を宝石21のクラウン側に曲げることにより、宝石21が台座部220に固定される。
【0029】
ステップST30において部品22に宝石21が取り付けられた後、この部品22を本体10に取り付ける工程(ST40)が実施される。このステップST40の工程は、図5の例において、挿通工程(ST41)と切り欠き閉塞工程(ST42)を含む。
【0030】
挿通工程(ST41)では、本体製造工程(ST10)で製造された本体10の第1係合部13の切り欠きに、部品22の第2係合部23が挿通される。本体製造工程(ST10)では、第1係合部13の外側の側面から第1内面132に達するように切り欠きが形成されている。この切り欠きに部品22の第2係合部23が挿通されることによって、第1係合部13の第1内面132と第2係合部23の第2内面232とが係合した状態となる。
【0031】
2つの第1係合部13の切り欠きにそれぞれ2つの第2係合部23が挿通された後、切り欠き閉塞工程(ST42)が実施される。切り欠き閉塞工程(ST42)では、第1係合部13に形成された切り欠きが閉塞される。例えば、切り欠きに面した両側の端部の間隙が減少するように第1係合部13を押圧し、第1係合部13を塑性変形させることによって切り欠きが閉塞される。また、ロウ付け、レーザ加熱などの方法で切り欠きに面した両側の端部を接合することにより切り欠きが閉塞されてもよい。
【0032】
以上の製造方法によって製造されたネックレス1では、本体10に対して部品22が揺動可能に吊り下げられた状態となる。僅かな振動で部品22が揺れると、部品22に固定された宝石21が瞬くように輝く。
【0033】
図6Aは、部品製造工程(ST20:図5)における部品22の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【0034】
(板状部材準備工程:ST200)
板状部材準備工程では、部品22を形成するための板状部材30が準備される。ここで準備される板状部材30は、例えば圧延などを経て形成された金属板である。板状部材の平面形状は、次のプレス加工工程(ST210)に合せて選択される。例えばプレス加工工程(ST210)において順送型の金型が用いられる場合、板状部材30はコイル状に巻かれた長尺の帯形状であってもよい。また、プレス加工工程(ST210)において単発型の金型やトランスファー型の金型が用いられる場合、板状部材30は所定の形状に切断された平板であってもよい。板状部材30の厚さ方向の断面形状は、加工性の観点から略矩形状であることが好ましい。板状部材30の厚みは、特に限定されないが、0.2mm以上であってもよく、0.5mm以下であってもよく、0.4mm以下であってもよく、0.35mm以下であってもよい。板状部材30を形成する材料(金種)は、特に限定されないが、例えば、銀、金、白金、銅、及び鉄からなる群から選ばれる金属でもよいし、これら金属の合金(例えば、金を主体として、銀及び銅の少なくとも一方を含有する合金)でもよいし、これら金属を主体として他の金属を含む合金(例えば、金を主体として、パラジウムなどを含有する合金、銅を主体として亜鉛を含有する合金など)でもよい。
【0035】
(プレス加工工程:ST210)
プレス加工工程では、ステップST200で準備された板状部材30に対してプレス加工が施される。ここでプレス加工とは、対をなす金型の間に被加工材(金属などの板状部材)を挟んで荷重を加えることにより、被加工材に対して種々の加工(せん断、曲げ、絞りなど)を施す加工法の総称である。プレス加工で使用される金型の種類は任意であり、順送型、単発型、トランスファー型など、目的とする部品22の製造に適した金型が使用される。プレス加工工程では、1つの部品22を形成するために複数回のプレス動作が実施される。すなわち、外形を打ち抜く加工、曲げ加工、絞り加工などが複数回のプレス動作によって実施される。また、各プレス動作では、1つの部品22における複数の部分に対して同時に加工が施されてもよい。例えば、1回のプレス動作で1つの部品22における複数の部分を同時に打ち抜いたり、複数の部分へ同時に曲げや絞りなどの変形を加えたりしてもよい。
【0036】
このプレス加工工程は、図6Aに示すように、穿孔工程(ST215)、第1整形工程(ST220)、せん断工程(ST240)を含む。これらの工程は、複数回のプレス動作によって部品22に実施される複数の加工工程の一部を示したものである。すなわち、プレス加工工程はこれ以外の加工工程を含んでよい。
【0037】
穿孔工程(ST215)では、図7A及び図7Bに示すように、打ち抜き加工によって板状部材30に第2孔231が開けられる。図7Aは、第2孔231の打ち抜き加工が行われる前の板状部材30の断面を示す。図7Bは、金型を用いて第2孔231を打ち抜いているときの板状部材30の断面を示す。図7Bに示すように、上側の金型のピン50Aが、下側の金型のプレート60Aに開けられた孔61Aへ挿入されると、これらの金型の間に配置された板状部材30には、ピン50Aと孔61Aの形状に応じた第2孔231が開けられる。
【0038】
第1整形工程(ST220)では、第2孔231の内側に向かって第2内面232が盛り上がるように第2内面232を整形する加工が施される。すなわち、第2孔231の内側に向かって第2内面232が盛り上がるように、第2孔231を囲む縁部303が板状部材30の厚さ方向に圧縮される。
【0039】
第1整形工程(ST220)は、例えば図6Bのフローチャートに示すように、複数の工程(テーパー整形工程、打ち抜き工程)を含んでよい。
テーパー整形工程では、テーパー状のピンを板状部材30の一方の面301から厚さ方向に沿って縁部303に押し当てることにより、第2内面232の一部がテーパー状に整形される。打ち抜き工程では、テーパー整形工程によって第2孔231の内側に盛り上がった第2内面232の一部が打ち抜き加工によって削り落とされる。
【0040】
図8A及び図8Bは、図6BのステップST225のテーパー整形工程を説明するための図である。図8Aは、穿孔工程(ST215:図6A)において第2孔231が開けられた状態の板状部材30の断面を示す。図8Bは、金型を用いて第2内面232をテーパー状に整形しているときの板状部材30の断面を示す。
【0041】
図8Bに示すように、上側の金型のピン50Bには、先端部にテーパー部分501Bが設けられている。このピン50Bのテーパー部分501Bが、板状部材30の一方の面301から厚さ方向(図8Bの縦方向)に沿って板状部材30の縁部303に押し当てられる。板状部材30の反対側の面302には、下側の金型のプレート60Bが配置されている。プレート60Bは、厚さ方向(図8Bの縦方向)と平行な方向から見て、ピン50Bのテーパー部分501Bの少なくとも一部と重なる場所に配置されている。そのため、ピン50Bのテーパー部分501Bが板状部材30の一方の面301に押し当てられると、板状部材30の縁部303は、ピン50Bのテーパー部分501Bとプレート60Bとの間に挟まれて圧縮される。これにより、板状部材30の第2内面232の一部は、テーパー部分501Bの外面にならったテーパー面2320(図9A)に整形される。
【0042】
図9A及び図9Bは、図6BのステップST230の打ち抜き工程を説明するための図である。図9Aは、テーパー整形工程(ST225:図6B)において第2内面232がテーパー状に整形された板状部材30の断面を示す。図9Bは、金型を用いて第2内面232の一部を削り落としているときの板状部材30の断面を示す。
【0043】
図9Aに示すように、ステップST225のテーパー整形工程を経た板状部材30の第2内面232は、面301側にテーパー面2320が形成されている一方、面302側が厚さ方向に潰れている。第2内面232の断面形状は、面302側における第2孔231の開口部2312付近において、第2孔231の内側に突出した尖端部2324Aを有する。ステップST230の打ち抜き工程では、この尖端部2324Aを含む第2内面232の一部(第2孔231の内側に突出した部分)が打ち抜き加工によって削り落とされる。図9Bに示すように、上側の金型のピン50Cが、下側の金型のプレート60Cに開けられた孔61Cへ挿入されると、このピン50C及び孔61Cに挟まれた場所に位置する第2内面232の一部が削り落とされる。
【0044】
図10A及び図10Bは、図6BのステップST235のテーパー整形工程を説明するための図である。図10Aは、打ち抜き工程(ST230:図6B)において第2内面232の一部が削り落とされた状態の板状部材30の断面を示す。図10Bは、金型を用いて第2内面232の一部をテーパー状に整形しているときの板状部材30の断面を示す。図12Aは、ステップST235のテーパー整形工程を経た板状部材30の断面図である。
【0045】
図10Bに示すように、上側の金型のピン50Dには、先端部にテーパー部分501Dが設けられている。このピン50Dのテーパー部分501Dが、板状部材30の一方の面301から厚さ方向(図10Bの縦方向)に沿って板状部材30の縁部303に押し当てられる。板状部材30の反対側の面302には、下側の金型のプレート60Dが配置されている。プレート60Dは、厚さ方向(図10Bの縦方向)と平行な方向から見て、ピン50Dのテーパー部分501Dの少なくとも一部と重なる場所に配置されている。そのため、ピン50Dのテーパー部分501Dが板状部材30の一方の面301に押し当てられると、板状部材30の縁部303は、ピン50Dのテーパー部分501Dとプレート60Dとの間に挟まれて圧縮される。これにより、板状部材30の第2内面232は、テーパー部分501Dの外面にならったテーパー面2321(図12A)が形成される。
【0046】
ステップST235のテーパー整形工程におけるピン50D(図10B)のテーパーの角度は、前のテーパー整形工程(ST225:図6B)におけるピン50B(図8B)のテーパーの角度に比べて小さい。そのため、ピン50D(図10B)によって第2内面232に形成されたテーパー面2321(図12A)は、ピン50B(図8B)によって第2内面232に形成されたテーパー面2320(図12A)に比べて、厚さ方向に対する傾きの角度が小さくなっている。また、後のテーパー整形工程(ST235:図6B)で形成されたテーパー面2321(図12A)は、先のテーパー整形工程(ST225:図6B)で形成されたテーパー面2320(図12A)に比べて、板状部材30の面302側に位置している。
【0047】
図11は、順送金型によってプレス加工を受けている途中の板状部材30の一例を示す図である。プレス加工工程(ST210:図6A)において順送金型が用いられる場合、板状部材30は、例えば図11に示すように長尺の帯形状を有する。板状部材30の両側の縁に近い場所には、複数のパイロット孔31が長手方向に一定の間隔で並んで形成される。パイロット孔31は、順送金型に対して板状部材30を位置決めするために用いられる。図11の例では、プレス動作の度に板状部材30が右方向へシフトする。板状部材30には、加工途中の複数の部品22が長手方向に並んでおり、板状部材30のシフト方向(図11の例では右側)にある部品22ほど、プレス加工の工程が進んでいる。
【0048】
図6Aに戻る。
第1整形工程(ST220)によって第2内面232が整形された後、せん断工程(ST240)が実施される。
【0049】
せん断工程(ST240)では、板状部材30から部品22が切り出される。例えば図11に示す板状部材30の場合、部品22と板状部材30とを繋げている部分32が金型により切断されて、概ね図4に示すような形状の部品22が得られる。
【0050】
(第2整形工程:ST250)
第2整形工程では、第1整形工程(ST220)により第2孔231の内側へ盛り上がった状態にある第2内面232の尖端部2324B(図12A)を丸めるように整形する加工が施される。具体的には、せん断工程(ST240)により板状部材30から切り出された部品22に対してバレル加工が施される。ここでバレル加工とは、流動性を有する補助剤(コンパウンド)の中に硬質の固形物(研磨石)と加工対象物を入れて補助剤を攪拌することにより、加工対象物に対して研磨や整形などを施す加工法の総称である。
【0051】
図12Bは、第2整形工程(ST250)後の部品22の一例を示す断面図であり、第2孔231付近の断面を示す。図12A図12Bを比較して分かるように、バレル加工を施すことによって、第2内面232の断面形状における尖端部2324B(図12A)が整形されて、円弧状に曲がった頂部2326となる。
【0052】
図12Bに示す第2整形工程(ST250)後の部品22において、第2内面232は、第2孔231の内側に向かって盛り上がった曲面となっている。第2内面232の断面形状(第2孔231の貫通方向と平行かつ第2孔231の中心を通る平面で第2内面232を切断した断面の形状)は、第2孔231の内側に向かって突出した頂部2326において円弧状に曲がっている。
これにより、第2内面232は、円弧状に曲がった頂部2326において第1係合部13の第1内面132と接触することになる。第1係合部13の第1内面132が比較的平らな形状であっても、第2係合部23の第2内面232が頂部2326において円弧状に曲がった曲面であるため、第2内面232の頂部2326と第1内面132との接触部分は点に近くなり、接触面積が小さくなる。従って、本体10に吊り下げられた部品22が僅かな外力で振動し易くなるとともに、接触部分の摩擦が小さくなるため振動が持続し易くなる。
【0053】
また、図12Bに示す部品22において、第2内面232の頂部2326は、第2孔231の一方の開口部2311に比べて他方の開口部2312の近くに位置している。第2内面232は、一方の開口部2311と頂部2326との間にテーパー面2325を持っており、このテーパー面2325が、開口部2311から開口部2312に向かって第2孔231の中心側に傾斜している。
これにより、頂部2326において第1内面132と接触した状態にある第2内面232が第2孔231の開口部2311側において大きく振れても、第2内面232のテーパー面2325が第1内面132と接触し難くなる。従って、本体10に吊り下げられた部品22の振れ幅を大きくすることができる。
【0054】
(まとめ)
本実施形態によれば、第2孔231の内側に向かって盛り上がった第2内面232の形状をプレス加工とバレル加工によって形成することができるため、ドリルなどを用いて手作業でこのような内面を形成する場合に比べて製造の手間を大幅に削減することが可能になり、部品22を効率的に製造できる。
【0055】
本実施形態によれば、第1整形加工(ST220)によって盛り上がった第2内面232の尖端部2324B(図12A)をバレル加工によって丸めることにより、尖端部2324Bの変形による摩擦抵抗の増大を回避できるため、第1内面132と第2内面232との接触状態が安定し易くなり、本体10に吊り下げられた部品22を安定的に振動し易い状態に保つことができる。また、このような尖端部を手作業で丸める場合に比べて製造の手間を大幅に削減することが可能になり、部品22を効率的に製造できる。
【0056】
本実施形態によれば、テーパー状のピン(50B、50D)を板状部材30の一方の面301から厚さ方向に沿って縁部303に押し当てることにより、第2内面232の一部をテーパー状に整形するテーパー整形工程(ST225、ST235)と、テーパー整形工程によって第2孔231の内側に盛り上がった第2内面232の一部を打ち抜き加工によって削り落とす打ち抜き工程(ST230)とによって、第2内面232が盛り上がった形状に整形される。そのため、板状部材30の一方の面301にピンを押し当てる一般的なプレス加工によって第2内面232の整形を行うことができる。
【0057】
なお、本発明の実施形態は上述した例に限定されるものではなく、様々なバリエーションを含んでいる。
【0058】
例えば、図6Bに示す第1整形工程の例では、2回のテーパー整形工程(ST225、ST235)の間に1回の打ち抜き工程(ST235)が実施されているが、本発明の実施形態はこの例に限定されない。すなわち、テーパー整形工程を1回実施し、その後に打ち抜き工程を実施してもよい。あるいは、テーパー整形工程を3回以上実施し、各テーパー整形工程の間に打ち抜き工程を実施してもよい。テーパー整形工程を複数回実施する場合、各テーパー整形工程で用いられるピンのテーパーの角度は、後の工程になるほど小さくなるようにすることが好ましい。
【0059】
上述の実施形態では、装身具の一例として、ペンダントトップ2とチェーン3を有するネックレス1の例を挙げたが、本発明の実施形態はこの例に限定されない。本発明の実施形態に係る装身具は、本体に対して揺動可能に吊り下げられた部品を有するものであれば、ピアス、イヤリング、ブローチ、ネクタイ止めなど、ネックレス以外の装身具でもよい。
【0060】
上述の実施形態では、本体10の第1係合部13と部品22の第2係合部23とが全体的にリング形状を有する例を挙げているが、本発明の実施形態はこの例に限定されない。すなわち、本体において第1孔が形成される部分の形状はリング以外の形状でもよい。また、部品において第2孔が形成される部分の形状はリング以外の形状でもよい。
【0061】
上述の実施形態では、部品22における2つの第2孔231の第2内面232と本体10における2つの第1孔131の第1内面132とがそれぞれ係合する例を挙げているが、本発明の実施形態はこの例に限定されない。すなわち、部品における第2孔の数は1つでもよいし、3以上でもよい。同様に、本体における第1孔の数は1つでもよいし、3以上でもよい。また、部品における1つの第2孔の第2内面が本体における2以上の第1孔の第1内面と係合してもよいし、本体における1つの第1孔の第1内面が部品における2以上の第2孔の第2内面と係合してもよい。
【符号の説明】
【0062】
1…ネックレス、2…ペンダントトップ、3…チェーン、10…本体、11…正面側フレーム部、12…背面側フレーム部、121…上部フレーム、122…下部フレーム、123…中間フレーム、124…開口部、13…第1係合部、131…第1孔、132…第1内面、20…装飾部材、21…宝石、22…部品、220…台座部、221…爪部、23…第2係合部、231…第2孔、2311…開口部、2312…開口部、232…第2内面、2320…テーパー面、2321…テーパー面、2324A,2324B…尖端部、2325…テーパー面、2326…頂部、24…腕部、30…板状部材、31…パイロット孔、301…面、302…面、303…縁部、50A~50D…ピン、501B,501D…テーパー部分、60A~60D…プレート
図1
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図12