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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023070523
(43)【公開日】2023-05-19
(54)【発明の名称】電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/28 20060101AFI20230512BHJP
【FI】
H02M3/28 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021182751
(22)【出願日】2021-11-09
(71)【出願人】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松尾 瑛人
(72)【発明者】
【氏名】尾野 育未
(72)【発明者】
【氏名】金丸 就吾
【テーマコード(参考)】
5H730
【Fターム(参考)】
5H730AA02
5H730AS01
5H730BB66
5H730DD04
5H730DD16
5H730EE03
5H730EE07
5H730EE44
5H730EE45
5H730EE59
5H730FD01
5H730FD11
5H730FD31
5H730FG07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】部品点数が増やすことなく、出力電圧に生ずるノイズの抑制を容易とすることができる電流共振コンバータの電源装置を提供する。
【解決手段】電源装置1は、電流共振コンバータ11と、交流巻線32が電流共振コンバータの共振経路51に直列接続された可飽和リアクトル12と、制御部13と、を含む。制御部は、電流共振コンバータの出力電圧、出力電流、入力電圧又は入力電流に基づいて、可飽和リアクトルの制御巻線又は交流巻線に出力する電流を制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流共振コンバータと、
交流巻線が、前記電流共振コンバータの共振経路に直列接続された、可飽和リアクトルと、
前記電流共振コンバータの出力電圧、出力電流、入力電圧又は入力電流に基づいて、前記可飽和リアクトルの制御巻線又は前記交流巻線に電流を出力する、制御部と、
を含む、
ことを特徴とする、電源装置。
【請求項2】
前記可飽和リアクトルは、
前記制御巻線又は前記交流巻線に入力される電流により、インダクタンスが可変する特性を有する、
ことを特徴とする、請求項1に記載の電源装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記電流共振コンバータの出力電圧又は出力電流に基づいて、前記可飽和リアクトルの前記制御巻線に電流を出力する、第1回路
を含む、
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の電源装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記電流共振コンバータの出力電圧又は出力電流に基づいて、前記可飽和リアクトルの前記交流巻線に電流を出力する、第1回路
を含む、
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の電源装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記電流共振コンバータの入力電圧又は入力電流に基づいて、前記可飽和リアクトルの前記制御巻線に電流を出力する、第2回路
を含む、
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の電源装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記電流共振コンバータの入力電圧又は入力電流に基づいて、前記可飽和リアクトルの前記交流巻線に電流を出力する、第2回路
を含む、
ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の電源装置。
【請求項7】
前記制御部は、
前記電流共振コンバータのブリッジ回路を、一定のスイッチング周波数でスイッチングさせる、第3回路
を更に含む、
ことを特徴とする、請求項3から6のいずれか1項に記載の電源装置。
【請求項8】
前記制御部は、
前記電流共振コンバータのブリッジ回路を、前記電流共振コンバータの出力電圧又は出力電流に基づくスイッチング周波数でスイッチングさせる、第4回路
を更に含む、
ことを特徴とする、請求項3から6のいずれか1項に記載の電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電流共振コンバータ(LLCコンバータ)は、ブリッジ回路のスイッチング周波数を可変することにより出力電圧を制御する、PFM(Pulse Frequency Modulation)制御が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-195511号公報
【特許文献2】特開2020-22309号公報
【特許文献3】特開2017-192281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
PFM制御では、スイッチング周波数が広帯域に変化するので、出力電圧に生ずるノイズも広帯域にわたる。従って、ノイズ対策が難しい。
【0005】
特許文献1では、LLCコンバータの前段に力率改善回路が設けられており、力率改善回路の出力電圧を可変することにより、出力電圧を制御する。しかしながら、力率改善回路から電力の供給を受ける他の回路の入力電圧も変化してしまうことになる。また、力率改善回路が必要であり、回路規模の増大となる。
【0006】
特許文献2では、LLCコンバータの前段に昇降圧コンバータが設けられており、特許文献1と同様の問題がある。
【0007】
特許文献3では、LLC共振回路のキャパシタンスを、複数のコンデンサに夫々接続されたスイッチをオンオフして可変することにより、出力電圧を調整する。しかしながら、キャパシタンスを離散的に可変することしかできない。また、回路規模が大きくなり、部品点数が増える。
【0008】
本発明は、出力電圧に生ずるノイズ対策を容易とすることができる、電源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様の電源装置は、
電流共振コンバータと、
交流巻線が、前記電流共振コンバータの共振経路に直列接続された、可飽和リアクトルと、
前記電流共振コンバータの出力電圧、出力電流、入力電圧又は入力電流に基づいて、前記可飽和リアクトルの制御巻線又は前記交流巻線に電流を出力する、制御部と、
を含む、
ことを特徴とする。
【0010】
前記電源装置において、
前記可飽和リアクトルは、
前記制御巻線又は前記交流巻線に入力される電流により、インダクタンスが可変する特性を有する、
ことを特徴とする。
【0011】
前記電源装置において、
前記制御部は、
前記電流共振コンバータの出力電圧又は出力電流に基づいて、前記可飽和リアクトルの前記制御巻線に電流を出力する、第1回路
を含む、
ことを特徴とする。
【0012】
前記電源装置において、
前記制御部は、
前記電流共振コンバータの出力電圧又は出力電流に基づいて、前記可飽和リアクトルの前記交流巻線に電流を出力する、第1回路
を含む、
ことを特徴とする。
【0013】
前記電源装置において、
前記制御部は、
前記電流共振コンバータの入力電圧又は入力電流に基づいて、前記可飽和リアクトルの前記制御巻線に電流を出力する、第2回路
を含む、
ことを特徴とする。
【0014】
前記電源装置において、
前記制御部は、
前記電流共振コンバータの入力電圧又は入力電流に基づいて、前記可飽和リアクトルの前記交流巻線に電流を出力する、第2回路
を含む、
ことを特徴とする。
【0015】
前記電源装置において、
前記制御部は、
前記電流共振コンバータのブリッジ回路を、一定のスイッチング周波数でスイッチングさせる、第3回路
を更に含む、
ことを特徴とする。
【0016】
前記電源装置において、
前記制御部は、
前記電流共振コンバータのブリッジ回路を、前記電流共振コンバータの出力電圧又は出力電流に基づくスイッチング周波数でスイッチングさせる、第4回路
を更に含む、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の一態様の電源装置は、出力電圧に生ずるノイズ対策を容易とすることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、第1の実施の形態の電源装置の構成を示す図である。
図2図2は、第1の実施の形態の電源装置の出力監視回路と可飽和リアクトルに電流を出力する回路の構成の一例を示す図である。
図3図3は、第1の実施の形態の電源装置の出力電圧-スイッチング周波数特性の一例を示す図である。
図4図4は、第1の実施の形態の電源装置の出力電圧-出力電流特性の一例を示す図である。
図5図5は、第1の実施の形態の電源装置の制御電圧に対する出力電圧の波形の一例を示す図である。
図6図6は、第1の実施の形態の電源装置の出力電圧に関するFFTの波形の一例を示す図である。
図7図7は、第2の実施の形態の電源装置の構成を示す図である。
図8図8は、第2の実施の形態の電源装置の出力監視回路の構成の一例を示す図である。
図9図9は、第3の実施の形態の電源装置の構成を示す図である。
図10図10は、第4の実施の形態の電源装置の構成を示す図である。
図11図11は、第5の実施の形態の電源装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の電源装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態により本発明が限定されるものではない。
【0020】
<第1の実施の形態>
図1は、第1の実施の形態の電源装置の構成を示す図である。
【0021】
電源装置1は、入力電圧Vin及び入力電流Iinの供給を直流電源2から受けて、直流の出力電圧Vout及び出力電流Ioutを負荷3に出力する。
【0022】
電源装置1は、LLCコンバータ11と、可飽和リアクトル12と、制御部13と、を含む。
【0023】
LLCコンバータ11は、ブリッジ回路21と、コンデンサ22及び25と、トランス23と、整流回路24と、を含む電流共振コンバータである。
【0024】
ブリッジ回路21は、トランジスタTr1及びTr2を含む。第1の実施の形態では、ブリッジ回路21はハーフブリッジ回路としたが、本開示はこれに限定されない。ブリッジ回路21は、例えば、フルブリッジ回路であっても良い。
【0025】
なお、本開示では、各トランジスタがMOSFETであることとしたが、これに限定されない。各トランジスタは、シリコンパワーデバイス、GaNパワーデバイス、SiCパワーデバイスなどでも良い。
【0026】
各トランジスタは、積極的に電流を流すことができる寄生ダイオード(ボディダイオード)を有する、又は、逆並列にダイオードが接続されている。寄生ダイオードとは、MOSFETのバックゲートとソース及びドレインとの間のpn接合である。
【0027】
トランジスタTr1のドレインは、直流電源2の高電位側端子に電気的に接続されている。トランジスタTr1のソースは、ノードN1に電気的に接続されている。トランジスタTr2のドレインは、ノードN1に電気的に接続されている。トランジスタTr2のソースは、直流電源2の低電位側端子に電気的に接続されている。
【0028】
コンデンサ22の一端は、ノードN1に電気的に接続されている。コンデンサ22の他端は、可飽和リアクトル12の交流巻線31の一端に電気的に接続されている。
【0029】
トランス23は、1次巻線23aと、2次巻線23bと、コア23cと、を含む。1次巻線23a及び2次巻線23bは、コア23cに巻回されている。1次巻線23aは、励磁インダクタンス23dを含む。
【0030】
LLCコンバータ11は、ブリッジ回路21とトランス23との間に、漏れインダクタンス23eを含む。漏れインダクタンス23eは、トランス23に含まれても良い。
【0031】
漏れインダクタンス23eの一端は、交流巻線31の他端に電気的に接続されている。漏れインダクタンス23eの他端は、1次巻線23aの一端に電気的に接続されている。1次巻線23aの他端は、トランジスタTr2のソースに電気的に接続されている。
【0032】
コンデンサ22、交流巻線31、漏れインダクタンス23e及び励磁インダクタンス23dが、LLCコンバータ11の共振経路51である。
【0033】
交流巻線31は、共振経路51に直列に挿入されている。なお、第1の実施の形態では、交流巻線31は、コンデンサ22と、漏れインダクタンス23eと、の間に直列に挿入されていることとしたが、本開示はこれに限定されない。交流巻線31は、例えば、漏れインダクタンス23eと、励磁インダクタンス23dと、の間に直列に挿入されても良い。
【0034】
ブリッジ回路21は、トランジスタTr1がオン状態、且つ、トランジスタTr2がオフ状態の場合、正方向の直流電圧をトランス23の1次巻線23aに出力する。
【0035】
ブリッジ回路21は、トランジスタTr1がオフ状態、且つ、トランジスタTr2がオン状態の場合、トランス23の1次巻線23aを短絡する。
【0036】
ブリッジ回路21は、トランジスタTr1がオフ状態、且つ、トランジスタTr2がオフ状態の場合、トランス23の1次巻線23aを開放する。若しくは、トランジスタTr2の寄生ダイオードを通じてトランス23が短絡される。若しくは、トランジスタTr1の寄生ダイオードを通じて直流電源2にトランス23の電流が還流される。
【0037】
整流回路24は、ダイオードD1及びD2を含む。ダイオードD1のアノードは、トランス23の2次巻線23bの一端に電気的に接続されている。ダイオードD2のアノードは、トランス23の2次巻線23bの他端に電気的に接続されている。
【0038】
ダイオードD1のカソード及びダイオードD2のカソードは、コンデンサ25の一端(高電位側端)に電気的に接続されている。コンデンサ25の他端(低電位側端)は、トランス23の2次巻線23bの中点に電気的に接続されている。
【0039】
整流回路24は、トランス23の2次巻線23bに励磁される電圧を整流して、コンデンサ25に出力する。コンデンサ25は、整流回路24で整流された電圧を平滑化する。コンデンサ25の電圧が、出力電圧Voutである。
【0040】
可飽和リアクトル12は、交流巻線31と、制御巻線32と、コア33と、を含む。交流巻線31及び制御巻線32は、コア33に巻回されている。
【0041】
可飽和リアクトル12は、交流巻線31又は制御巻線32に入力される電流により、インダクタンスが可変する特性を有する回路要素である。
【0042】
制御部13は、出力監視回路41と、発振回路42と、を含む。
【0043】
出力監視回路41が、本開示の「第1回路」の一例に相当する。発振回路42が、本開示の「第3回路」の一例に相当する。
【0044】
発振回路42は、一定の周波数のスイッチング制御信号を、トランジスタTr1及びTr2のゲートに出力する。発振回路42は、トランジスタTr1及びTr2の各々を、一定のスイッチング周波数でオン状態又はオフ状態に制御する。
【0045】
出力監視回路41には、出力電圧Voutが入力される。出力監視回路41は、出力電圧Voutに基づいて、電流I1を可飽和リアクトル12の制御巻線32に出力する。
【0046】
出力監視回路41は、目標電圧が出力電圧Voutよりも高い場合、可飽和リアクトル12の制御巻線32に電流I1を出力する。すると、可飽和リアクトル12が飽和する方向に変化し、可飽和リアクトル12の交流巻線31のインダクタンスが減少し、共振経路51のインダクタンスが減少し、出力電圧Voutが上昇する。
【0047】
これにより、電源装置1は、出力電圧Voutを目標電圧に制御できる。
【0048】
出力監視回路41は、目標電圧が出力電圧Voutよりも低い場合、可飽和リアクトル12の制御巻線32に電流I1を出力しない。すると、可飽和リアクトル12が飽和しない方向に変化し、可飽和リアクトル12の交流巻線31のインダクタンスが増加し、共振経路51のインダクタンスが増加し、出力電圧Voutが下降する。
【0049】
これにより、電源装置1は、出力電圧Voutを目標電圧に制御できる。
【0050】
図2は、第1の実施の形態の電源装置の出力監視回路と可飽和リアクトルに電流を出力する回路の構成の一例を示す図である。
【0051】
出力監視回路41は、抵抗61、62、65及び67と、定電圧源63と、エラーアンプ64(差動増幅器)と、トランジスタ66と、を含む。
【0052】
抵抗61の一端には、出力電圧Voutが入力される。抵抗61の他端は、ノードN2に電気的に接続されている。抵抗62の一端は、ノードN2に電気的に接続されている。抵抗62の他端は、基準電位に電気的に接続されている。基準電位は、接地電位が例示されるが、本開示はこれに限定されない。
【0053】
エラーアンプ64の反転入力端子(-端子)は、ノードN2に電気的に接続されている。エラーアンプ64の反転入力端子(-端子)には、出力電圧Voutを抵抗61及び62で抵抗分圧した後の電圧Vsenseが入力される。
【0054】
エラーアンプ64の非反転入力端子(+端子)は、定電圧源63に電気的に接続されている。定電圧源63は、目標電圧に応じたリファレンス電圧Vrefを、エラーアンプ64の非反転入力端子(+端子)に出力する。
【0055】
エラーアンプ64は、電源電圧Vccの供給を受けて動作する。エラーアンプ64の出力端子は、抵抗65の一端に電気的に接続されている。エラーアンプ64は、リファレンス電圧Vrefと電圧Vsenseとの差分に応じた電圧Verrを、抵抗65の一端に出力する。
【0056】
電圧Verrは、電圧Vsenseに応じて、連続的に変化する。
【0057】
抵抗65の他端は、トランジスタ66のベースに電気的に接続されている。トランジスタ66のコレクタには、電源電圧Vccが供給される。トランジスタ66のエミッタは、抵抗67の一端に電気的に接続されている。トランジスタ66は、電圧Verrに応じた電流I1を、抵抗67の一端に出力する。
【0058】
電流I1は、電圧Verrに応じて、連続的に変化する。つまり、電流I1は、電圧Vsenseに応じて、連続的に変化する。
【0059】
可飽和リアクトル12の制御巻線32は、巻線32aと、巻線32bと、が直列接続されている。巻線32aの一端は、抵抗67の他端に電気的に接続されている。巻線32aの他端は、巻線32bの一端に電気的に接続されている。巻線32bの他端は、基準電位に電気的に接続されている。
【0060】
エラーアンプ64は、リファレンス電圧Vrefが電圧Vsenseよりも高い場合、ハイレベルの電圧Verrを出力する。すると、トランジスタ66は、オン状態になり、抵抗67を介して、電圧Verrに応じた電流I1を制御巻線32に出力する。
【0061】
可飽和リアクトル12は、電流I1が制御巻線32に入力されると、コア33が直流に偏磁される。交流巻線31のインダクタンスは、偏磁の度合いによって、減少する。交流巻線31のインダクタンスは、コア33が飽和すると、最小となる。交流巻線31のインダクタンスが減少すると、共振経路51のインダクタンスが減少し、出力電圧Voutが上昇する。
【0062】
これにより、電源装置1は、出力電圧Voutを目標電圧に制御できる。
【0063】
エラーアンプ64は、リファレンス電圧Vrefが電圧Vsenseよりも低い場合、ローレベルの電圧Verrを出力する。すると、トランジスタ66は、オフ状態になり、電流I1を制御巻線32に出力しない。
【0064】
交流巻線31には、交流電流が供給されるので、コア33は、正負両方に偏磁される。従って、コア33は飽和せず、交流巻線31のインダクタンスは、最大となる。また、制御巻線32は、巻線32a及び32bが直列接続されているので、制御巻線32の両端の電圧は、交流巻線31の電圧によらず、ゼロとなる。交流巻線31のインダクタンスが増加すると、共振経路51のインダクタンスが増加し、出力電圧Voutが下降する。
【0065】
これにより、電源装置1は、出力電圧Voutを目標電圧に制御できる。
【0066】
図3は、第1の実施の形態の電源装置の出力電圧-スイッチング周波数特性の一例を示す図である。
【0067】
図3において、波形71は、交流巻線31のインダクタンスが下限値の場合の出力電圧Voutの一例を示す。波形72は、交流巻線31のインダクタンスが中間値の場合の出力電圧Voutの一例を示す。波形73は、交流巻線31のインダクタンスが上限値の場合の出力電圧Voutの一例を示す。
【0068】
線74は、ブリッジ回路21のスイッチング周波数の下限の一例を示す。線75は、ブリッジ回路21のスイッチング周波数の上限の一例を示す。矢印76は、ブリッジ回路21のスイッチング周波数の範囲の一例を示す。
【0069】
矢印76で示されるスイッチング周波数の範囲内では、交流巻線31のインダクタンスが大きくなるほど、出力電圧Voutが低下する。
【0070】
発振回路42は、ブリッジ回路21のスイッチング周波数を、矢印76で示される範囲内のいずれかのスイッチング周波数で一定にする。そして、出力監視回路41は、交流巻線31のインダクタンスを、波形71から波形73までの範囲内で連続的に可変する。
【0071】
これにより、電源装置1は、出力電圧Voutを連続的に可変制御できる。
【0072】
図4は、第1の実施の形態の電源装置の出力電圧-出力電流特性の一例を示す図である。
【0073】
図4において、波形81は、交流巻線31のインダクタンスが下限値の場合の出力電圧Voutの一例を示す。波形82は、交流巻線31のインダクタンスが中間値の場合の出力電圧Voutの一例を示す。波形83は、交流巻線31のインダクタンスが上限値の場合の出力電圧Voutの一例を示す。
【0074】
領域84は、電源装置1の定電圧出力制御が可能な範囲の一例を示す。
【0075】
領域84で示される定電圧出力制御が可能な範囲内では、交流巻線31のインダクタンスが大きくなるほど、出力電流Ioutが低下する。
【0076】
発振回路42は、ブリッジ回路21のスイッチング周波数を一定に制御する。そして、出力監視回路41は、交流巻線31のインダクタンスを、波形81から波形83までの範囲内で連続的に可変する。
【0077】
これにより、電源装置1は、出力電圧Voutを定電圧制御できる。
【0078】
図5及び図6は、第1の実施の形態の電源装置の波形の一例を示す図である。
【0079】
図5は、電圧Verrを操作(設定)した場合の、回路シミュレーション結果を示す。
【0080】
図5において、波形91は、リファレンス電圧Vrefの一例を示す。波形92は、エラーアンプ64の電圧Verrの一例を示す。波形93は、電源装置1の出力電圧Voutの一例を示す。
【0081】
タイミングtからタイミングtまでの期間において、エラーアンプ64の電圧Verrがハイレベルに操作(設定)される。すると、出力電圧Voutは、タイミングtからタイミングtまでの期間において、電圧Verrに応じて上昇する。
【0082】
このように、波形92で示す電圧Verrに追従して、波形93で示す出力電圧Voutが変化する。
【0083】
図6は、図5の波形93で示す出力電圧VoutのFFT(高速フーリエ変換)によるスペクトラム波形の一例を示す。
【0084】
スイッチング周波数fswの整数倍(例えば、2fsw)にノイズのピーク値が出ている。
【0085】
従って、電源装置1は、スイッチング周波数fsw及びその高調波の周波数成分のノイズ対策を主にすれば良いので、ノイズ抑制を容易とすることができる。
【0086】
なお、第1の実施の形態では、出力監視回路41は、出力電圧Voutに基づいて、電流I1を可飽和リアクトル12の制御巻線32に出力することとしたが、本開示はこれに限定されない。出力監視回路41は、出力電流Ioutに基づいて、電流を可飽和リアクトル12の制御巻線32に出力することとしても良い。例えば、出力監視回路41は、目標電流と出力電流Ioutとを比較し、目標電流が出力電流Ioutよりも大きい場合に、目標電流と出力電流Ioutとの差分に応じた電流I1を、制御巻線32に出力するようにしても良い。
【0087】
<第2の実施の形態>
第2の実施の形態の構成要素のうち、第1の実施の形態と同一の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0088】
図7は、第2の実施の形態の電源装置の構成を示す図である。
【0089】
第2の実施の形態の電源装置1Aは、第1の実施の形態の電源装置1(図1参照)と比較して、制御部13に代えて、制御部13Aを含む。また、電源装置1Aは、電源装置1と比較して、可飽和リアクトル12に代えて、可飽和リアクトル12Aを含む。可飽和リアクトル12Aは、可飽和リアクトル12と比較して、制御巻線32を含んでいない。
【0090】
制御部13Aは、制御部13と比較して、出力監視回路41に代えて、出力監視回路41Aを含む。
【0091】
出力監視回路41Aが、本開示の「第1回路」の一例に相当する。
【0092】
出力監視回路41Aは、出力電圧Voutに基づいて、可飽和リアクトル12Aの交流巻線31の他端に電流I2を出力する。
【0093】
図8は、第2の実施の形態の電源装置の出力監視回路の構成の一例を示す図である。
【0094】
出力監視回路41Aは、出力監視回路41(図2参照)と比較して、ダイオード68を更に含む。
【0095】
ダイオード68のアノードは、抵抗67の他端に電気的に接続されている。ダイオード68のカソードは、交流巻線31の他端に電気的に接続されている。
【0096】
エラーアンプ64は、リファレンス電圧Vrefが電圧Vsenseよりも高い場合、ハイレベルの電圧Verrを出力する。すると、トランジスタ66は、オン状態になり、抵抗67を介して、電圧Verrに応じた電流I2を交流巻線31の他端に出力する。
【0097】
可飽和リアクトル12Aは、電流I2が交流巻線31に入力されると飽和する方向に変化し、交流巻線31のインダクタンスが減少し、共振経路51のインダクタンスが減少し、出力電圧Voutが上昇する。
【0098】
これにより、電源装置1Aは、出力電圧Voutを目標電圧に制御できる。
【0099】
エラーアンプ64は、リファレンス電圧Vrefが電圧Vsenseよりも低い場合、ローレベルの電圧Verrを出力する。すると、トランジスタ66は、オフ状態になり、電流I2を交流巻線31に出力しない。
【0100】
可飽和リアクトル12Aは、電流I2が交流巻線31に入力されないと飽和しない方向に変化し、可飽和リアクトル12の交流巻線31のインダクタンスが増加し、共振経路51のインダクタンスが増加し、出力電圧Voutが下降する。
【0101】
これにより、電源装置1Aは、出力電圧Voutを目標電圧に制御できる。
【0102】
なお、第2の実施の形態では、出力監視回路41Aは、出力電圧Voutに基づいて、電流I2を可飽和リアクトル12Aの交流巻線31に出力することとしたが、本開示はこれに限定されない。出力監視回路41Aは、出力電流Ioutに基づいて、電流I2を可飽和リアクトル12Aの交流巻線31に出力することとしても良い。例えば、出力監視回路41Aは、目標電流と出力電流Ioutとを比較し、目標電流が出力電流Ioutよりも大きい場合に、目標電流と出力電流Ioutとの差分に応じた電流I2を、交流巻線31に出力するようにしても良い。
【0103】
<第3の実施の形態>
第3の実施の形態の構成要素のうち、他の実施の形態と同一の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0104】
図9は、第3の実施の形態の電源装置の構成を示す図である。
【0105】
第3の実施の形態の電源装置1Bは、第1の実施の形態の電源装置1(図1参照)と比較して、制御部13に代えて、制御部13Bを含む。
【0106】
制御部13Bは、制御部13と比較して、発振回路42に代えて、周波数変調回路43を含む。
【0107】
周波数変調回路43が、本開示の「第4回路」の一例に相当する。
【0108】
周波数変調回路43には、電圧Vsense(図2参照)が出力監視回路41から入力される。電圧Vsenseは、出力電圧Voutを抵抗分圧した電圧である。
【0109】
周波数変調回路43は、電圧Vsense、つまり出力電圧Voutに基づくスイッチング周波数で、ブリッジ回路21をスイッチングさせる。
【0110】
電源装置1Bは、可飽和リアクトル12による出力電圧制御に加えて、ブリッジ回路21のスイッチング周波数制御による出力電圧制御を行うことで、共振経路51の共振を維持したまま出力電圧制御範囲を拡大可能である。
【0111】
電源装置1Bでは、可飽和リアクトル12による出力電圧制御が主となり、ブリッジ回路21のスイッチング周波数制御による出力電圧制御が従となっている。
【0112】
従って、電源装置1Bは、スイッチング周波数の帯域が狭く、従来のPFM制御に比べてノイズ抑制が容易である。
【0113】
なお、第3の実施の形態では、出力監視回路41は、出力電圧Voutに基づいて、電流I1を可飽和リアクトル12の制御巻線32に出力することとしたが、本開示はこれに限定されない。出力監視回路41は、出力電流Ioutに基づいて、電流I1を可飽和リアクトル12の制御巻線32に出力することとしても良い。
【0114】
また、第3の実施の回路と、第2の実施の回路と、を組み合わせることも可能である。即ち、制御部13Bは、出力監視回路41に代えて、出力監視回路41Aを備えても良い。
【0115】
<第4の実施の形態>
第4の実施の形態の構成要素のうち、他の実施の形態と同一の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0116】
図10は、第4の実施の形態の電源装置の構成を示す図である。
【0117】
第4の実施の形態の電源装置1Cは、第1の実施の形態の電源装置1(図1参照)と比較して、制御部13に代えて、制御部13Cを含む。
【0118】
制御部13Cは、制御部13と比較して、出力監視回路41に代えて、入力監視回路44を含む。
【0119】
入力監視回路44が、本開示の「第2回路」の一例に相当する。
【0120】
入力監視回路44には、入力電圧Vinが入力される。
【0121】
入力電圧Vinが上昇すると、出力電圧Voutが上昇する傾向がある。入力電圧Vinが下降すると、出力電圧Voutが下降する傾向がある。つまり、入力電圧Vinと、出力電圧Voutと、の間には、正の相関関係がある。
【0122】
そこで、入力監視回路44は、入力電圧Vinに基づいて、電流I1を可飽和リアクトル12の制御巻線32に出力する。
【0123】
入力監視回路44は、入力リファレンス電圧が入力電圧Vinよりも高い場合、入力電圧Vinに応じた電流I1を制御巻線32に出力する。
【0124】
入力監視回路44は、入力リファレンス電圧が入力電圧Vinよりも低い場合、電流I1を制御巻線32に出力しない。
【0125】
これにより、電源装置1Cは、電源装置1と同様の効果を奏する。
【0126】
なお、第4の実施の形態では、入力監視回路44は、入力電圧Vinに基づいて、電流I1を可飽和リアクトル12の制御巻線32に出力することとしたが、本開示はこれに限定されない。入力監視回路44は、入力電流Iinに基づいて、電流I1を可飽和リアクトル12の制御巻線32に出力することとしても良い。例えば、入力監視回路44は、入力リファレンス電流と入力電流Iinとを比較し、入力リファレンス電流が入力電流Iinよりも大きい場合に、入力リファレンス電流と入力電流Iinとの差分に応じた電流I1を、制御巻線32に出力するようにしても良い。
【0127】
また、第4の実施の回路と、第2の実施の回路と、を組み合わせることも可能である。即ち、入力監視回路44は、入力電圧Vin又は入力電流Iinに基づいて、電流I2を可飽和リアクトル12の交流巻線31に出力することとしても良い。
【0128】
<第5の実施の形態>
第5の実施の形態の構成要素のうち、他の実施の形態と同一の構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0129】
図11は、第5の実施の形態の電源装置の構成を示す図である。
【0130】
第5の実施の形態の電源装置1Dは、第4の実施の形態の電源装置1C(図10参照)と比較して、制御部13Cに代えて、制御部13Dを含む。
【0131】
制御部13Dは、制御部13Cと比較して、発振回路42に代えて、出力監視回路41と、周波数変調回路43と、を含む。
【0132】
電源装置1Dは、可飽和リアクトル12による出力電圧制御に加えて、ブリッジ回路21のスイッチング周波数制御による出力電圧制御を行うことで、共振経路51の共振を維持したまま出力電圧制御範囲を拡大可能である。
【0133】
電源装置1Dでは、可飽和リアクトル12による出力電圧制御が主となり、ブリッジ回路21のスイッチング周波数制御による出力電圧制御が従となっている。
【0134】
従って、電源装置1Dは、スイッチング周波数の帯域が狭く、従来のPFM制御に比べてノイズ抑制が容易である。
【0135】
なお、第5の実施の形態では、入力監視回路44は、入力電圧Vinに基づいて、電流I1を可飽和リアクトル12の制御巻線32に出力することとしたが、本開示はこれに限定されない。入力監視回路44は、入力電流Iinに基づいて、電流I1を可飽和リアクトル12の制御巻線32に出力することとしても良い。
【0136】
また、第5の実施の回路と、第2の実施の回路と、を組み合わせることも可能である。即ち、入力監視回路44は、入力電圧Vin又は入力電流Iinに基づいて、電流I2を可飽和リアクトル12の交流巻線31に出力することとしても良い。
【0137】
本発明のいくつかの実施の形態を説明したが、これらの実施の形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施の形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0138】
本開示では、電流共振コンバータの一例としてLLCコンバータを用いたが、これに限定されない。本開示は、LLCコンバータ以外の電流共振コンバータにも適用可能である。
【符号の説明】
【0139】
1、1A、1B、1C、1D 電源装置
2 直流電源
3 負荷
11 LLCコンバータ
12、12A 可飽和リアクトル
13、13A、13B、13C、13D 制御部
21 ブリッジ回路
22、25 コンデンサ
23 トランス
24 整流回路
31 交流巻線
32 制御巻線
33 コア
41、41A 出力監視回路
42 発振回路
43 周波数変調回路
44 入力監視回路
61、62、65、67 抵抗
63 定電圧源
64 エラーアンプ
66、Tr1、Tr2 トランジスタ
68、D1、D2 ダイオード
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11