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特開2023-70625ケイ素-炭素複合材料、その調製方法及びその応用
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  • 特開-ケイ素-炭素複合材料、その調製方法及びその応用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023070625
(43)【公開日】2023-05-19
(54)【発明の名称】ケイ素-炭素複合材料、その調製方法及びその応用
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/05 20170101AFI20230512BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20230512BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20230512BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20230512BHJP
【FI】
C01B32/05
H01M4/38 Z
H01M4/48
H01M4/36 C
H01M4/36 A
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022069707
(22)【出願日】2022-04-20
(31)【優先権主張番号】202111322043.8
(32)【優先日】2021-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】520416026
【氏名又は名称】広東▲凱▼金新能源科技股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】Guangdong Kaijin New Energy Technology Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】Room 302, Unit 2, Building 29, No.4, Keji 10th Road, Songshanhu Park, Dongguan, Guangdong, 523000, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】鄭 安華
(72)【発明者】
【氏名】余 徳馨
(72)【発明者】
【氏名】傅 儒生
(72)【発明者】
【氏名】仰 韻霖
【テーマコード(参考)】
4G146
5H050
【Fターム(参考)】
4G146AA01
4G146AA17
4G146AA19
4G146AB01
4G146AD15
4G146AD23
4G146AD25
4G146BA15
4G146BB01
4G146BB04
4G146BB10
4G146BC23
4G146BC34B
4G146CB23
4G146CB33
5H050AA07
5H050BA17
5H050CB02
5H050CB11
5H050FA18
5H050GA02
5H050GA10
5H050GA22
5H050GA27
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA05
5H050HA06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ケイ素-炭素複合材料、その調製方法及びその応用を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明は、リチウムイオン電池の負極材料分野に関し、特に、長いサイクル、低膨張の内部細孔構造のケイ素-炭素複合材料に関し、前記長いサイクル、低膨張の内部細孔構造のケイ素-炭素複合材料はケイ素源、閉孔、充填層及び炭素被覆層で構成され、前記閉孔は1つの大きな閉孔又はいくつかの小さな閉孔からなり、前記充填層は炭素充填層である。本発明は、体積膨張の影響を軽減し、サイクル特性を改善する長いサイクル、低膨張の内部細孔構造のケイ素-炭素複合材料を提供する。本発明はまた、プロセスが単純で、体積膨張の影響を緩和し、サイクル特性を改善し、リチウムイオン電池におけるケイ素ベースの材料の応用にとって重要な意義を持つ長いサイクル、低膨張の内部細孔構造のケイ素-炭素複合材料の調製方法及びその応用を提供する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ素-炭素複合材料であって、ケイ素源、閉孔、充填層及び炭素被覆層で構成され、前記閉孔は1つの大きな閉孔又はいくつかの小さな閉孔からなり、前記充填層はケイ素源粒子間に充填された炭素充填層であり、前記炭素被覆層は前記ケイ素源、閉孔、充填層をカプセル化することを特徴とする、ケイ素-炭素複合材料。
【請求項2】
前記閉孔の外面は、炭素層を含み、ここで大きな閉孔の孔径は50nmより大きく、8um以下で、小さな閉孔の孔径が10nm以上50nm未満であることを特徴とする、請求項1に記載のケイ素-炭素複合材料。
【請求項3】
前記ケイ素源は、多結晶ナノケイ素又はアモルファスナノケイ素のうちの1種又は複数種であることを特徴とする、請求項1に記載のケイ素-炭素複合材料。
【請求項4】
前記ケイ素源が多結晶ナノケイ素の場合、前記多結晶ナノケイ素の結晶粒径は、1~40nmの範囲であることを特徴とする、請求項1に記載のケイ素-炭素複合材料。
【請求項5】
前記ケイ素源は、SiOであり、ここでXは0~0.8の範囲であり、前記ケイ素源の粒子径D50は200nm未満であることを特徴とする、請求項1に記載のケイ素-炭素複合材料。
【請求項6】
ケイ素-炭素複合材料の調製方法であって、
ケイ素源、分散剤、造孔剤を溶媒に混合して均一に分散させて、噴霧乾燥処理を施して前駆体Aを得る工程S0と、
前記前駆体Aを炭化して前駆体Bを得る工程S1と、
前記前駆体Bと有機炭素源を機械的に混合し、機械的に融合させて前駆体Cを得る工程S2と、
前記前駆体Cを高温、真空又は加圧炭化して前駆体Dを得る工程S3と、
前記前駆体Dを粉砕・篩分けして前駆体Eを得る工程S4と、
前記前駆体Eに炭素被覆、熱処理を施して前記ケイ素-炭素複合材料を得る工程S5と、
を含むことを特徴とする、ケイ素-炭素複合材料の調製方法。
【請求項7】
前記工程S0において、前記造孔剤は分散剤に不溶性又は僅かに可溶性である有機物質であることを特徴とする、請求項6に記載のケイ素-炭素複合材料の調製方法。
【請求項8】
前記造孔剤は、スクロース、グルコース、クエン酸、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ピッチ、ポリビニルアルコール、ポリピロール、ポリピロリドン、ポリアニリン、ポリアクリロニトリル、ポリドーパミン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニルのうちの1種又は複数種であることを特徴とする、請求項7に記載のケイ素-炭素複合材料の調製方法。
【請求項9】
前記工程S0において、前記造孔剤とケイ素源の比率は、1~80%の範囲であることを特徴とする、請求項6に記載のケイ素-炭素複合材料の調製方法。
【請求項10】
ケイ素-炭素複合材料の応用であって、請求項6~9のいずれか一項に記載の調製方法でで得られたケイ素-炭素複合材料を使用し、リチウムイオン電池に応用されることを特徴とする、ケイ素-炭素複合材料の応用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池の負極材料の分野に関し、特に、長いサイクル、低膨張の内部細孔構造のケイ素-炭素複合材料、その調製方法及びその応用に関する。
【背景技術】
【0002】
現在市販されている負極材料は、主に黒鉛材料であるが、理論容量が小さい(372mAh/g)ため、市場の需要に応えることができないでいた。近年、新型の高比容量負極材料であるリチウム貯蔵金属及びその酸化物(例えば、Sn、Si)とリチウム遷移金属リン化物に注目が集まっている。多くの新しい高比容量負極材料の中で、Siは、高い理論的な比容量(4200mAh/g)を備えるため、黒鉛系材料に代替できる最も可能性のある一つとなっているが、ケイ素ベースの材料は充放電時の大きな体積膨張があり、割れ及び微粉化が発生しやすいため、集電体から剥離することにより、サイクル特性が急激に低下する。したがって、体積膨張の影響を軽減し、サイクル特性を向上することは、リチウムイオン電池におけるケイ素ベースの材料の応用にとって重要な意義を持っている。
【0003】
従来のケイ素-炭素負極材料は、ケイ素源と黒鉛を用いて造粒して得られている。ケイ素源を均一に分散させることが難しいため、必然的に造粒過程でケイ素源の局所的な凝集を引き起こし、充放電過程でケイ素源の凝集場所に局所的な応力集中を引き起こすことにより、複合材料の一部の構造損傷が生じ、材料全体の特性にも影響を及ぼす。したがって、どのように体積膨張による影響を低減し、サイクル特性を改善するかがリチウムイオン電池におけるケイ素ベースの材料の応用にとって重要な意義を持っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記技術的課題を解決するため、本発明は、体積膨張の影響を軽減し、サイクル特性を改善する長いサイクル、低膨張の内部細孔構造のケイ素-炭素複合材料を提供する。
【0005】
本発明はまた、プロセスが単純で、体積膨張の影響を緩和し、サイクル特性を改善し、リチウムイオン電池におけるケイ素ベースの材料の応用にとって重要な意義を持っている長いサイクル、低膨張の内部細孔構造のケイ素-炭素複合材料の調製方法及びその応用を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、次のような技術的手段を採用する。
【0007】
長いサイクル、低膨張の内部細孔構造のケイ素-炭素複合材料であって、前記長いサイクル、低膨張の内部細孔構造のケイ素-炭素複合材料は、ケイ素源、閉孔、充填層及び炭素被覆層で構成され、前記閉孔は1つの大きな閉孔又はいくつかの小さな閉孔からなり、前記充填層はケイ素源粒子間に充填された炭素充填層であり、前記炭素被覆層は前記ケイ素源、閉孔、充填層をカプセル化する。
【0008】
上記技術的手段の更なる改善形態として、前記閉孔の外面は、炭素層を含み、前記閉孔サイズは0.01~8μmの範囲である。
【0009】
上記技術的手段の更なる改善形態として、前記ケイ素源は、多結晶ナノケイ素又はアモルファスナノケイ素のうちの1種又は複数種である。
【0010】
上記技術的手段の更なる改善形態として、前記ケイ素源が多結晶ナノケイ素の場合、前記多結晶ナノケイ素の結晶粒径は、1~40nmの範囲である。
【0011】
上記技術的手段の更なる改善形態として、前記ケイ素源は、SiOであり、ここでXは0~0.8の範囲であり、前記ケイ素源の粒子径D50は200nm未満である。
【0012】
長いサイクル、低膨張の内部細孔構造のケイ素-炭素複合材料の調製方法であって、
ケイ素源、分散剤、造孔剤を溶媒と混合して均一に分散させて、噴霧乾燥処理を施して前駆体Aを得る工程S0と、
前駆体Aを炭化して前駆体Bを得る工程S1と、
前駆体Bと有機炭素源を機械的に混合させ、機械的に融合させて前駆体Cを得る工程S2と、
前駆体Cを高温、真空又は加圧炭化して前駆体Dを得る工程S3と、
前駆体Dを粉砕・篩分けして前駆体Eを得る工程S4と、
前駆体Eに炭素被覆、熱処理を施して前記ケイ素-炭素複合材料を得る工程S5とを含む。
【0013】
上記技術的手段の更なる改善形態として、前記工程S0において、前記造孔剤は分散剤に不溶性又は僅かに可溶性である有機物質である。
【0014】
上記技術的手段の更なる改善形態として、前記造孔剤は、スクロース、グルコース、クエン酸、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ピッチ、ポリビニルアルコール、ポリピロール、ポリピロリドン、ポリアニリン、ポリアクリロニトリル、ポリドーパミン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリ塩化ビニルのうちの1種又は複数種である。
【0015】
上記技術的手段の更なる改善形態として、前記工程S0において、前記造孔剤とケイ素源の比率は、1~80%の範囲である。
【0016】
長いサイクル、低膨張の内部細孔構造のケイ素-炭素複合材料の応用であって、上記調製方法で得られた長いサイクル、低膨張の内部細孔構造のケイ素-炭素複合材料を使用し、リチウムイオン電池に応用される。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、長いサイクル、低膨張の内部細孔構造のケイ素-炭素複合材料を提供し、その充填層はケイ素源粒子間に三次元導電性ネットワークを形成し、三次元導電性ネットワークはケイ素ベースの材料の導電性を効果的に向上させ、同時に充放電時の体積膨張の影響を効果的に緩和し、サイクル過程における材料の微粉化を効果的に防ぐことができるだけではなく、サイクル過程におけるケイ素源と電解液との直接接触を抑制して副反応を減らすこともできる。ケイ素-炭素複合材料内の閉孔は、充放電時の応力を吸収して、さらに材料の膨張を低減できる。最外層の炭素被覆層は、ケイ素源と電解液との直接接触を抑制して副反応を減らし、同時にケイ素ベースの材料の導電性を効果的に向上させることができると共に充放電時の体積膨張の影響を効果的に緩和できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の長いサイクル、低膨張の内部細孔構造のケイ素-炭素複合材料の概略構成図である。
図2】本発明の実施例1に係る長いサイクル、低膨張の内部細孔構造のケイ素-炭素複合材料のサンプルスライス像である。
図3】本発明の実施例3に係る長いサイクル、低膨張の内部細孔構造のケイ素-炭素複合材料のサンプルスライス像である。
図4】本発明の実施例1に係る長いサイクル、低膨張の内部細孔構造のケイ素-炭素複合材料のサンプルの充放電曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明をよりよく理解するため、以下に実施例を参照しつつ本発明をさらに説明するが、本発明の実施形態はこれに限定されない。
【0020】
長いサイクル、低膨張の内部細孔構造のケイ素-炭素複合材料であって、前記長いサイクル、低膨張の内部細孔構造のケイ素-炭素複合材料は、ケイ素源10、閉孔20、充填層30及び炭素被覆層40で構成され、前記ケイ素源10はナノケイ素又はナノケイ素酸化物(SiOx)粒子で、その粒子径D50は<200nmである。前記前記閉孔20は1つの大きな閉孔20又はいくつかの小さな閉孔20であってもよく、閉孔20の外面は炭素層50である。前記充填層30は、ケイ素源10粒子間に充填され、粒子表面を炭素修飾する炭素充填層30であり、表面修飾層は少なくとも1層であり、単層の厚さは0.05~1.0μmである。炭素被覆層40は、前記ケイ素源10、閉孔20、充填層30をカプセル化する。
【0021】
好ましくは、前記長いサイクル、低膨張の内部細孔構造のケイ素-炭素複合材料の閉孔20の孔径は、0.01~8μmの範囲、より好ましくは0.1~7μmの範囲、特に好ましくは0.1~5μmの範囲である。ここで、大きな閉孔の孔径は、50nmより大きく、8um以下で、小さな閉孔の孔径は10nm以上50nm未満である。本出願において、閉孔20の孔径とは、閉孔20の幾何学的中心を通過し、かつ両端点が閉孔の境界と交差する線分の長さを意味する。
【0022】
好ましくは、前記長いサイクル、低膨張の内部細孔構造のケイ素-炭素複合材料のタップ密度は、0.5~1.2g/ccの範囲、より好ましくは0.7~1.2g/ccの範囲、特に好ましくは0.9~1.2g/ccの範囲であり、
好ましくは、前記ケイ素源10は、SiOxであり、ここでXは0~0.8の範囲であり、
好ましくは、前記ケイ素源10の酸素含有量は、0~20%の範囲、より好ましくは0~15%の範囲、特に好ましくは0~10%の範囲であり、
好ましくは、前記ケイ素源10の粒子径D50は、<200nm、より好ましくは30~150nmの範囲、特に好ましくは50~150nmの範囲である。
好ましくは,ケイ素源10は、多結晶ナノケイ素又はアモルファスナノケイ素のうちの1種又は複数種であり、前記多結晶ナノケイ素の結晶粒径は1~40nmの範囲である。
【0023】
前記長いサイクル、低膨張の内部細孔構造のケイ素-炭素複合材料は、ケイ素源10、閉孔20及び充填層30で構成される。
【0024】
好ましくは、前記長いサイクル、低膨張の内部細孔構造のケイ素-炭素複合材料の粒子径D50は、2~20μmの範囲、より好ましくは2~15μmの範囲、特に好ましくは2~10μmの範囲である。
【0025】
好ましくは、前記長いサイクル、低膨張の内部細孔構造のケイ素-炭素複合材料の最大粒径Dmaxは、10~40μmの範囲、より好ましくは10~35μmの範囲、特に好ましくは10~30μmの範囲である。
【0026】
好ましくは、前記長いサイクル、低膨張の内部細孔構造のケイ素-炭素複合材料の比表面積は、0.5~10m/gの範囲、より好ましくは0.5~5m/gの範囲、特に好ましくは0.5~2m/g。の範囲である。
【0027】
好ましくは、前記長いサイクル、低膨張の内部細孔構造のケイ素-炭素複合材料内の空隙率は、1~15%の範囲、より好ましくは1~10%の範囲、特に好ましくは1~3%の範囲である。
【0028】
好ましくは、前記長いサイクル、低膨張の内部細孔構造のケイ素-炭素複合材料の酸素含有量は、0~20%の範囲、より好ましくは0~15%の範囲、特に好ましくは0~10%の範囲である。
【0029】
好ましくは、前記長いサイクル、低膨張の内部細孔構造のケイ素-炭素複合材料の炭素含有量は、20~90%の範囲、より好ましくは20~75%の範囲、特に好ましくは20~60%の範囲である。
【0030】
好ましくは、前記長いサイクル、低膨張の内部細孔構造のケイ素-炭素複合材料のケイ素含有量は、5~90%の範囲、より好ましくは20~70%の範囲、特に好ましくは30~60%の範囲である。
【0031】
前記長いサイクル、低膨張の内部細孔構造のケイ素-炭素複合材料の調製方法は、
ケイ素源10、分散剤、造孔剤を溶媒に混合して均一に分散させて、噴霧乾燥処理を施して前駆体Aを得る工程S0と、
前駆体Aを炭化して前駆体Bを得る工程S1と、
前駆体Bと有機炭素源を機械的に混合し、機械的に融合させて前駆体Cを得る工程S2と、
前駆体Cを高温、真空又は加圧炭化して前駆体Dを得る工程S3と、
前駆体Dを粉砕・篩分けして前駆体Eを得る工程S4と、
前駆体Eに炭素被覆を行なって前記長いサイクル、低膨張の内部細孔構造のケイ素-炭素複合材料を得る工程S5とを含む。
【0032】
前記長いサイクル、低膨張の内部細孔構造のケイ素-炭素複合材料の調製方法の工程S0における分散剤は、有機溶媒又は水であり、前記有機溶剤は
石油系溶剤、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、アルカン系溶剤、N-メチル-2-ピロリドン、テトラヒドロフラン、トルエンのうちの1種又は複数種の混合物である。前記石油系溶剤は、灯油、鉱油、植物油のうちの1種又は複数種の混合物である。前記アルコール系溶剤は、エタノール、メタノール、エチレングリコール、イソプロパノール、n-オクタノール、プロペノール、オクタノールのうちの1種又は複数種の混合物である。前記ケトン溶剤は、アセトン、メチルメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、メチルイソアセトン、シクロヘキサノン、及びメチルヘキサノンのうちの1種又は複数種の混合物である。アルカン溶剤は、シクロヘキサン、ノルマルヘキサン、イソヘプタン、3,3-ジメチルペンタン、3-メチルヘキサンンのうちの1種又は複数種の混合物である。
【0033】
工程S0における造孔剤は、分散剤に不溶性又は僅かに可溶性である有機物質であるスクロース、グルコース、クエン酸、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ピッチ、ポリビニルアルコール、ポリピロール、ポリピロリドン、ポリアニリン、ポリアクリロニトリル、ポリドーパミン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート及びポリ塩化ビニルのうちの1種又は複数種である。
【0034】
好ましくは、前記造孔剤の炭素含有量は、1~70%の範囲、より好ましくは1~50%の範囲、特に好ましくは1~30%の範囲である。
【0035】
好ましくは、前記造孔剤の粒子径D50は、0.1~15μmの範囲、より好ましくは0.1~10μmの範囲、特に好ましくは0.1~6μmの範囲である。
【0036】
好ましくは、前記造孔剤とケイ素源10の比率は、1~80%の範囲、より好ましくは1~60%の範囲、特に好ましくは1~40%の範囲である。
【0037】
前記長いサイクル、低膨張の内部細孔構造のケイ素-炭素複合材料の調製方法の工程S1における炭化処理は、真空炭化、動的炭化及び静的炭化等のプロセスのうちの1種又は複数種である。
【0038】
前記長いサイクル、低膨張の内部細孔構造のケイ素-炭素複合材料の調製方法の工程S3における前記高温、真空又は加圧炭化は、真空炭化、熱間等方静水圧、加圧後炭化等のプロセスのうちの1種又は複数種である。
【0039】
工程S5における炭素被覆・熱処理は、静的熱処理又は動的熱処理である。
【0040】
前記静的熱処理は、前駆体Eを箱形炉、真空炉、ローラーハースキルンに入れ、保護雰囲気ガス下で400~1000℃の範囲まで1~5℃/分で昇温し、この温度を2~20時間保持し、室温まで自然冷却させる。
【0041】
前記動的熱処理は、前駆体Eを回転炉に入れ、保護雰囲気ガス下で400~1000℃の範囲まで1~5℃/分で昇温し0~20.0L/分の吹き込み速度で有機炭素源ガスを吹き込み、この温度を0.5~20時間保持し、室温まで自然冷却させる。
【0042】
好ましくは、有機炭素源は、メタン、エタン、プロパン、イソプロパン、ブタン、イソブタン、エチレン、プロピレン、アセチレン、ブテン、塩化ビニル、フッ化ビニル、2フッ化ビニリデン、クロロエタン、フルオロエタン、ジフルオロエタン、クロロメタン、フルオロメタン、ジフルオロメタン、トリフルオロメタン、メチルアミン、ホルムアルデヒド、ベンゼン、トルエン、キシレン、スチレン、フェノールのうちの1種又は複数種である。
【0043】
前記長いサイクル、低膨張の内部細孔構造のケイ素-炭素複合材料の初回の可逆容量は、1800mAh/g以上、初期効率は90%を超え、50サイクル後の膨張率は40%未満、容量維持率は95%を超える。
【0044】
(比較例)
1、粒子径D50が100nmのケイ素源10と無水エタノールを質量比1:10で混合して均一に分散させ、噴霧式造粒を使用して噴霧前駆体A0を得、
2、1000gの前駆体A0と100gのピッチを取って機械的に混合し、機械的に融合させて前駆体C0を得、その後前駆体C0を真空炉に入れ、昇温速度は1℃/分、熱処理温度は1050℃で、この温度を5時間保持し、室温まで自然冷却させた後粉砕・篩分けして前駆体E0を得、
3、1000gの得られた前駆体E0をCVD炉に取り、1000℃まで5℃/分で昇温させ、それぞれ4.0L/分の速度で高純度窒素ガスを吹き込み、0.5L/分の速度でメタンガスを吹き込み、メタンガス吹き込み時間は4時間であり、室温まで自然冷却させて、ケイ素-炭素複合材料を得た。
【0045】
(実施例1)
1、粒子径D50が100nmのケイ素源10、8μmポリイミド樹脂と無水エタノールを質量比100:20:1000で混合して均一に分散させ、噴霧式造粒を使用して噴霧前駆体A1を得、
2、窒素雰囲気条件下で、噴霧前駆体A1を焼結し、昇温速度は1℃/分、熱処理温度は1050℃で、この温度を5時間保持し、冷却後前駆体B1を得た。
3、1000gの前駆体B1と100gのピッチを取って機械的に混合し、機械的に融合させて前駆体C1を得、その後前駆体C0を真空炉に入れ、昇温速度は1℃/分、熱処理温度は1050℃で、この温度を5時間保持し、室温まで自然冷却させた後粉砕・篩分けして前駆体E1を得、
4、1000gの得られた前駆体E1をCVD炉に取り、1000℃まで5℃/分で昇温させ、それぞれ4.0L/分の速度で高純度窒素ガスを吹き込み、0.5L/分の速度でメタンガスを吹き込み、メタンガス吹き込み時間は4時間であり、室温まで自然冷却させて、ケイ素-炭素複合材料を得た。
【0046】
(実施例2)
1、粒子径D50が100nmのケイ素源10、2μmポリイミド樹脂と無水エタノールを質量比100:20:1000で混合して均一に分散させ、噴霧式造粒を使用して噴霧前駆体A2を得、
2、窒素雰囲気条件下で、噴霧前駆体A2を焼結し、昇温速度は1℃/分、熱処理温度は1050℃で、この温度を5時間保持し、冷却後前駆体B2を得た。
3、1000gの前駆体B2と100gのピッチを取って機械的に混合し、機械的に融合させて前駆体C2を得、その後前駆体C0を真空炉に入れ、昇温速度は1℃/分、熱処理温度は1050℃で、この温度を5時間保持し、室温まで自然冷却させた後粉砕・篩分けして前駆体E2を得、
4、1000gの得られた前駆体E2をCVD炉に取り、1000℃まで5℃/分で昇温させ、それぞれ4.0L/分の速度で高純度窒素ガスを吹き込み、0.5L/分の速度でメタンガスを吹き込み、メタンガス吹き込み時間は4時間であり、室温まで自然冷却させて、ケイ素-炭素複合材料を得た。
【0047】
(実施例3)
1、粒子径D50が100nmのケイ素源10、2μmポリイミド樹脂と無水エタノールを質量比100:30:1000で混合して均一に分散させ、噴霧式造粒を使用して噴霧前駆体A3を得、
2、窒素雰囲気条件下で、噴霧前駆体A3を焼結し、昇温速度は1℃/分、熱処理温度は900℃で、この温度を5時間保持し、冷却後前駆体B3を得た。
3、1000gの前駆体B3と100gのピッチを取って機械的に混合し、機械的に融合させて前駆体C3を得、その後前駆体C0を真空炉に入れ、昇温速度は1℃/分、熱処理温度は1050℃で、この温度を5時間保持し、室温まで自然冷却させた後粉砕・篩分けして前駆体E3を得、
4、1000gの得られた前駆体E3をCVD炉に取り、1000℃まで5℃/分で昇温させ、それぞれ4.0L/分の速度で高純度窒素ガスを吹き込み、0.5L/分の速度でメタンガスを吹き込み、メタンガス吹き込み時間は4時間であり、室温まで自然冷却させて、ケイ素-炭素複合材料を得た。
【0048】
(実施例4)
1、粒子径D50が100nmのケイ素源10、2μmポリイミド樹脂と無水エタノールを質量比100:30:1000で混合して均一に分散させ、噴霧式造粒を使用して噴霧前駆体A4を得、
2、窒素雰囲気条件下で、噴霧前駆体A4を焼結し、昇温速度は1℃/分、熱処理温度は850℃で、この温度を5時間保持し、冷却後前駆体B4を得た。
3、1000gの前駆体B4と100gのピッチを取って機械的に混合し、機械的に融合させて前駆体C4を得、その後前駆体C0を真空炉に入れ、昇温速度は1℃/分、熱処理温度は1050℃で、この温度を5時間保持し、室温まで自然冷却させた後粉砕・篩分けして前駆体E4を得、
4、1000gの得られた前駆体E4をCVD炉に取り、1000℃まで5℃/分で昇温させ、それぞれ4.0L/分の速度で高純度窒素ガスを吹き込み、0.5L/分の速度でメタンガスを吹き込み、メタンガス吹き込み時間は4時間であり、室温まで自然冷却させて、ケイ素-炭素複合材料を得た。
【0049】
【0050】
以下の方法で材料の体積膨張率を試験及び計算した。調製したケイ素-炭素複合材料と黒鉛複合で容量500mAh/gの複合材料を調製し、サイクル特性を試験した。膨張率=(50サイクル後のポールピースの厚さ~サイクル前のポールピースの厚さ)/(サイクル前のポールピースの厚さ~銅箔の厚さ)×100%。
【0051】
実施例と比較例について、それぞれ初回サイクル試験、サイクルの膨張試験を実施した結果を表1及び表2に示す。
【0052】
【0053】
【0054】
以上、本発明を詳細に説明したが、上記したものは本発明の好ましい実施例のみであって、これらによって本発明の保護範囲は限定的に解釈されない。当業者であれば、本発明の技術的思想を逸脱することなく、様々な変形及び改良が可能であり、かかる変形及び改良は本発明の保護範囲に属することを指摘しておかなければならない。
【符号の説明】
【0055】
10 ケイ素源
20 閉孔
30 充填層
40 炭素被覆層
図1
図2
図3
図4