(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023070637
(43)【公開日】2023-05-19
(54)【発明の名称】プラズマプロセスを分析するためのデバイスにおける2段階イオン電流測定
(51)【国際特許分類】
H05H 1/00 20060101AFI20230512BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20230512BHJP
【FI】
H05H1/00 A
H01L21/302 103
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022157770
(22)【出願日】2022-09-30
(31)【優先権主張番号】21207043
(32)【優先日】2021-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】521396983
【氏名又は名称】インペダンズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ガーン,デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】レノン,ジェージェー
(72)【発明者】
【氏名】スカリン,ポール
(72)【発明者】
【氏名】ドイル,ジェイムズ
【テーマコード(参考)】
2G084
5F004
【Fターム(参考)】
2G084BB07
2G084FF06
2G084HH02
2G084HH15
2G084HH20
2G084HH30
2G084HH43
2G084HH44
5F004AA16
5F004CA08
5F004CB05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】プラズマ処理システムにおいてイオンエネルギー分布測定値の取得方法を提供する。
【解決手段】基板が、内部に配置されたイオンエネルギー分析器を有し、分析器が、複数の導電性グリッド、及び収集電極を備え、各グリッドが、絶縁層によって分離されている、基板を提供することと、高電圧生成回路に給電するための電池の出力電圧を受け取り、複数の導電性グリッドのうちの第1のグリッドに電圧を印加するように構成されている、高電圧生成回路を提供することと、第1のグリッドを装置の浮遊接地に放電するように構成された高電圧スイッチ、及び、高電圧スイッチと並列の抵抗器を提供することと、第1の電圧が、第1の段階中に、イオン電流をサンプリングすることと、第1のグリッドに印加された第2の電圧が、第2の段階中に、イオン電流をサンプリングすることと、を含む、方法。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ処理システムにおいてイオンエネルギー分布測定値を取得するために装置を動作させる方法であって、
前記プラズマ処理システム内に配置し、前記プラズマに曝露するための基板を提供することであって、前記基板が、プラズマ処理中に基板表面における前記イオンエネルギー分布を測定するための、内部に配置されたイオンエネルギー分析器を有し、前記分析器が、複数の導電性グリッド、及び収集電極を備え、各グリッドが、絶縁層によって分離されている、基板を提供することと、
前記基板内に高電圧生成回路を提供することであって、前記高電圧生成回路が、前記高電圧生成回路に給電するための電池の出力電圧を受け取り、前記複数の導電性グリッドのうちの第1のグリッドに電圧を印加するように構成されている、高電圧生成回路を提供することと、
前記第1のグリッドを前記装置の浮遊接地に放電するように構成された高電圧スイッチ、及び、前記高電圧スイッチと並列の抵抗器を提供することと、
第1の電圧が、前記第1のグリッド上で前記浮遊接地電位からプラトー電圧まで充電されている間の第1の段階中に、イオン電流をサンプリングすることと、
前記第1のグリッドに印加された第2の電圧が、前記高電圧生成回路によって生成された所定の電圧から前記プラトー電圧まで、前記抵抗器を通じて放電している間の第2の段階中に、イオン電流をサンプリングすることと、を含む、方法。
【請求項2】
前記第1の段階中にイオン電流をサンプリングする前に、前記スイッチを閉じて、前記第1のグリッドを前記浮遊接地に放電することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記スイッチを開いて、プラズマプロセスからのイオン電流が、前記第1のグリッドを前記プラトー電圧まで充電することを可能にすることを更に含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記プラトー電圧が、前記抵抗器を通って流れる前記プラズマプロセスからの前記イオン電流によって決定される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の電圧が、上昇電圧掃引であり、前記第2の電圧が、下降電圧掃引である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記高電圧回路が、電圧増倍器を含み、前記抵抗器が、前記電圧増倍器と並列である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記電圧増倍器の前記浮遊接地までの総静電容量と並列である前記抵抗器の抵抗値、及び、前記イオン電流は、前記第2の電圧が放電する速度を決定する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記電圧増倍器の前記浮遊接地までの総静電容量と並列である前記抵抗器の抵抗値、及び、前記イオン電流は、前記第1の電圧が充電する速度を決定する、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
各サンプリングステップ中に取得している電流測定値を組み合わせて、測定値の完全なセットを取得することを更に含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記完全なセットの測定値をプロットして、イオンエネルギー分布を提供することを更に含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記複数のグリッドが、グリッドのスタックとして配置構成されており、前記第1のグリッドが、前記スタック内の前記グリッドのうちのいずれか1つであり、前記第1のグリッドが、イオンエネルギー弁別に使用されている、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、プラズマ処理中に基板又は表面に到達する入射荷電粒子電流密度及びエネルギー分布を測定するためのデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマ処理は、現代の産業において幅広い用途に広く使用されている。よく知られている例は、半導体産業における集積回路の製造である。プラズマ処理は、とりわけ、ソーラーパネル、フラットパネルディスプレイ、薄膜コーティング、及び医療デバイスの製造にも使用されている。
【0003】
基板表面に到達するイオンの電流密度(イオンフラックス)及びエネルギー分布は、プラズマベースのプロセスの性能に強く影響する。半導体製造では基板はシリコンウェハであるが、他の産業では基板はガラスパネル又は様々な代替品である場合がある。ウェハ及び基板は、本明細書を通じて交換可能に使用され得るが、プラズマプロセスにおいて使用される任意のタイプの基板を意味すると理解される。プロセス全体を通して、基板表面は、高エネルギーイオンを含むプラズマ種の衝突を受けて、材料の層が除去(エッチング)及び/又は堆積されて、加工片表面に構造又は特徴が形成される。イオン衝突は、エッチング及び堆積を直接的に駆動し得るか、又は、より反応性の高いプラズマ種が作用するように表面を活性化するために使用され得る。例えば、半導体産業における特徴部のプラズマエッチングにおいては、イオンフラックス及び関連する(IED)が、エッチング速度、エッチング選択性、及びエッチング異方性などの重要なパラメータを決定する。したがって、IEDは、最適なプロセス性能を確保するために測定、理解、及び制御するための重要なプラズマパラメータである。
【0004】
欧州特許出願第21193805.5号は、プラズマ処理システム内でイオンエネルギー分布測定値を取得するための装置であって、プラズマ処理システム内に配置するための基板と、プラズマ処理中に基板表面におけるイオンエネルギー分布を測定するために基板内に配置されたイオンエネルギー分析器であって、分析器が、第1の導電性グリッド、第2の導電性グリッド、第3の導電性グリッド、第4の導電性グリッド、及び収集電極を備え、各グリッドが、絶縁層によって分離されている、イオンエネルギー分析器と、イオンエネルギー分析器のグリッドの各々及び収集器に電圧を供給及び制御するための、バッテリ電源及び基板に統合されたバッテリマネージャと、基板内の高電圧生成回路であって、高電圧生成回路が、電圧増倍器に給電する高電圧パルス生成器を備え、高電圧生成回路が、バッテリマネージャの出力電圧を取得し、第3の電圧掃引を第3の導電性グリッドに供給するように構成されている、高電圧生成回路とを備える、装置を記載している。
【0005】
欧州特許出願第21193805.5号の高電圧生成回路は、下降電圧掃引を生成するように構成され、イオンエネルギー分析器は、電圧掃引が下降している間にイオン電流をサンプリングするように構成され得る。
【0006】
EP3971942は、プラズマ処理システム内でイオンエネルギー分布(IED)測定値を取得するための装置であって、プラズマ処理システム内に配置するための、プラズマに曝露される基板と、プラズマ処理中に基板表面におけるイオンエネルギー分布を測定するために基板内に配置されたイオンエネルギー分析器であって、分析器が、第1の導電性グリッドG0、第2の導電性グリッドG1、第3の導電性グリッドG2、第4の導電性グリッドG3、及び収集電極Cを備え、各グリッドが、絶縁層によって分離されている、イオンエネルギー分析器と、イオンエネルギー分析器のグリッドの各々及び収集器に電圧を供給及び制御するための、バッテリ電源及び基板に統合されたバッテリマネージャと、基板内の高電圧生成回路であって、高電圧生成回路が、バッテリマネージャの出力電圧を取得し、第3の電圧掃引を第3の導電性グリッドに供給する、高電圧生成回路とを備える、装置を記載している。
【0007】
高電圧生成回路の急速充電及び低速放電に基づく降下電圧掃引の使用は、電圧をゼロから最大値まで漸進的に増大させる連続モードよりも少ない電力しか必要としないという点で有利である。しかし、このような下降電圧掃引を使用することには潜在的な問題もあり、本出願はこれに対処する。
【発明の概要】
【0008】
プラズマ処理システムにおいてイオンエネルギー分布測定値を取得するために装置を動作させる方法であって、プラズマ処理システム内に配置し、プラズマに曝露するための基板を提供することであって、基板内には、プラズマ処理中に基板表面におけるイオンエネルギー分布を測定するためのイオンエネルギー分析器が配置されており、分析器が、複数の導電性グリッド、及び収集電極Cを備え、各グリッドが、絶縁層によって分離されている、基板を提供することと、基板内に高電圧生成回路を提供することであって、高電圧生成回路が、高電圧生成回路に給電するための電池の出力電圧を受け取り、複数の導電性グリッドのうちの第1のグリッドに電圧を印加するように構成されている、高電圧生成回路を提供することと、第1のグリッドを装置の浮遊接地まで放電するように構成されている高電圧スイッチ、及び、高電圧スイッチと並列の抵抗器を提供することと、第1の電圧が、第1のグリッド上で浮遊接地電位からプラトー電圧まで充電されている間の第1の段階中にイオン電流をサンプリングすることと、第1のグリッドに印加された第2の電圧が、高電圧生成回路によって生成された所定の電圧からプラトー電圧まで、抵抗器を通じて放電している間の第2の段階中にイオン電流をサンプリングすることと、を含む、方法を提供する。
【0009】
本方法は、第1の段階中にイオン電流をサンプリングする前に、スイッチを閉じて、第1のグリッドを浮遊接地まで放電することを更に含むことができる。
【0010】
本方法は、スイッチを開いて、プラズマプロセスからのイオン電流が、第1のグリッドを前記プラトー電圧まで充電することを可能にすることを更に含むことができる。
【0011】
任意選択的に、プラトー電圧が、抵抗器を通って流れるプラズマプロセスからのイオン電流によって決定される。
【0012】
任意選択的に、第1の電圧が、上昇電圧掃引であり、第2の電圧が、下降電圧掃引である。
【0013】
高電圧回路が、電圧増倍器を含むことができ、抵抗器が、電圧増倍器と並列である。
【0014】
電圧増倍器の浮遊接地までの総静電容量と並列である抵抗器の抵抗値、及び、イオン電流は、第2の電圧が放電する速度を決定し得る。
【0015】
電圧増倍器の浮遊接地までの総静電容量と並列である抵抗器の抵抗値、及び、イオン電流は、第1の電圧が充電する速度を決定する。
【0016】
本方法は、各サンプリングステップ中に取得している電流測定値を組み合わせて、測定値の完全なセットを取得することを更に含むことができる。
【0017】
本方法は、完全なセットの測定値をプロットして、イオンエネルギー分布を提供することを更に含むことができる。
【0018】
任意選択的に、複数のグリッドが、グリッドのスタックとして配置構成されており、第1のグリッドが、スタック内のグリッドのうちのいずれか1つであり、第1のグリッドが、イオンエネルギー弁別に使用される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
ここで、添付の図面を参照して、本出願を説明する。
【0020】
【
図1】プラズマ処理中にtaウェハプローブ表面に到達するイオンエネルギー分布を測定することができる、一致するシステムの概要を示す。
【
図2(a)】ウェハプローブの表面にわたって分散されている、IEDを測定するためのセンサのアレイを示す。
【
図2(b)】
図2(a)のセンサ内のグリッドの1つの配置構成を示す。
【
図2(c)】
図2(a)のセンサ内のグリッドの別の配置構成を示す。
【
図2(d)】
図2(a)のセンサ内のグリッドの更なる配置構成を示す。
【
図3(a)】センサに給電するための1つの構成を示す。
【
図3(b)】センサに給電するための別の構成を示す。
【
図4(a)】本教示による高電圧生成回路の構成を示す。
【
図4(b)】本教示による高電圧生成回路の別の構成を示す。
【
図5】本教示によるセンサの導電性グリッドに印加される電圧のプロットを示す。
【
図6】本教示による高電圧生成回路の更なる構成を示す。
【
図7】本教示による高電圧生成回路の別の構成を示す。 (図面の詳細な説明)
【0021】
図1は、プラズマ処理中にウェハプローブ表面101に到達するイオンエネルギー分布を測定することができるシステム100の概要を示す。この特定の図では、診断システム100は、統合されたイオンエネルギー分析器、電子制御回路、バッテリ電源、及び無線通信を備えた模造ウェハプローブを含む。診断システムは更に、模造ウェハプローブ101の充電、構成、及びデータ検索を可能にする、統合された無線トランスポンダ103を備えたドッキングステーション102を備える。ドッキングステーション102は、ホストPC104と通信するためのイーサネット接続を備えている。検索したデータを表示及び解析するためのアプリケーションソフトウェアが提供される。アプリケーションソフトウェアは、実験割り当てをスケジュールするための制御パネルを提供する。ドッキングステーションと工場の制御ソフトウェアとの間の直接的な対話を可能にする高度プログラミングインターフェース(API)も提供される。
【0022】
4チャンバプラズマ処理システム105も
図1に示されている。これは、多くの異なるタイプのプラズマ処理システムのうちの1つであり、本教示による模造ウェハプローブ101の機能を例示するために使用される。プラズマ処理システム105は、1つ以上の相互接続された処理チャンバ106を有することができる。各処理チャンバ106は、チャンバを排気するための真空ポンプ、プロセスレシピを設定するためのガスフロー制御部、プロセス動作圧力を調整するための真空ゲージ及びトランスデューサ、化学レシピをプラズマ状態に励起するための電力送達機構、並びに、処理中に基板を保持するためのペデスタルを備える。ロボット移送機構107を備えたロードロックチャンバ108が使用されて、処理チャンバへ、及び処理チャンバから基板が輸送される。基板バッチは、カセット又はFOUPを通じてロードロックチャンバ108に送達される。
【0023】
好ましい実施形態では、ウェハプローブ101はドッキングステーション102内に配置され、ホストPC104上のアプリケーションソフトウェアを通じて通信が確立される。ウェハプローブ101上のバッテリ電源が充電され、格納されたデータが検索され、次の実験割り当てがウェハプローブ101を準備するようにスケジュールされる。次に、模造ウェハプローブ101は、フロントオープニングユニバーサルポッド(FOUP)内の利用可能なスロット内に配置され、その後、ロードロックチャンバ108に送達される。ロボットアーム107は、模造ウェハプローブ101を処理チャンバ106に輸送し、プラズマ露出に備えて処理ペデスタル上に位置付ける。チャンバ106がすでに真空下にある状態で、プロセスレシピが構成され、プラズマ点火される。プラズマが形成されると、プラズマ種がウェハプローブ101に衝突し始め、そのサンプルが分析のためにプローブ101のセンサに入る。オンボード圧力センサが高電圧アプリケーションの閾値に達したことを報告した場合、スケジューラにおいて構成された時間に分析が進行する。この安全機構は、電気アークによりセンサを破壊する可能性がある、大気圧における高電圧の偶発的な印加を防ぐ。圧力閾値が満たされている場合、ウェハプローブ101は、スケジュールされた時間に作動される。適切な電圧が全てのグリッド及び収集器に印加され、収集器電流が、マイクロコントローラ(MCU)(図示せず)によってイオン弁別電位の関数として記録され、結果のデータがメモリに格納される。ウェハプローブ101は、次のスケジュールされた測定までスリープモードに戻り、次のスケジュールされた測定の時点でプロセスが繰り返される。実験割り当てが完了すると、プラズマプロセスを終了して、ロードロックチャンバ108を通じてFOUPまでウェハプローブを輸送し戻すロボットアームを使用して、ウェハプローブ101を処理ペデスタルから回収することを可能にすることができる。ユーザは、ウェハプローブ101をFOUPから取り出し、データ検索、再充電、及び次の実験割り当てのスケジューリングのためにドッキングステーション102に配置し戻す。代替的に、ウェハプローブが、既知の無線通信装置及び方法論を使用して、処理チャンバ内の位置からドッキングステーションにリアルタイムでセンサデータを送信することが可能である。
【0024】
ウェハプローブ101は、標準的な半導体加工片を模倣するためにシリコンウェハベース上に製作することができる。ウェハプローブはまた、プラズマ処理に使用される他のタイプの基板を模倣するために、セラミック、金属、又はガラスなどの他の材料から製造されてもよく、実質的に同じ寸法及び重量の標準基板と同じ形状を有してもよい。1つのそのような構成の例が
図2(a)に示されており、これは、半導体ウェハプローブ101の表面にわたって分散されたセンサ(又はセンサスタック)201のアレイを描いている。特に、
図2(a)は、9つのセンサ201を有する300mmウェハプローブ101の平面図を示す。位置整合ノッチ202も示されている。以下でより詳細に説明されるように、これらのセンサ201は、好ましくは、ウェハプローブ101の基板表面におけるイオンエネルギー分布を測定するためのイオンエネルギー分析器である。
【0025】
図3(a)は、ウェハプローブ101の各センサ201がモジュール化されており、それ自体の専用電源、信号調整回路、MCU、圧力センサ、及び無線トランスポンダを有する1つの可能なアーキテクチャを示す。
【0026】
代替的なアーキテクチャでは、
図3(b)に示すように、電子制御回路が集中化されており、各検知素子からの個々の収集器電流が集中化された測定回路に多重化されている。
【0027】
イオンエネルギー分析器201は、プラズマ処理中の基板表面におけるイオンエネルギー分布を測定するために特に重要である。
図2(b)を参照すると、イオンエネルギー分析器201は、平面状で平行な導電性金属グリッドと絶縁体との交互の層を含み、グリッドは、プラズマ電子をフィルタリング除去し、正イオンをそれらのエネルギーに基づいて分離し、二次電子放出を抑制し、測定のためにイオン電流を収集するために体系的に電気的に分極されていることが分かる。
【0028】
図2(b)では、センサ201のプラズマ対向上面203は、基板表面と同一平面上にあり、同じ材料から作製される。サンプリング開口204のアレイがこの上面203内に形成され、それを通してプラズマ種が分析のためにデバイスに入る。サンプリング開口204は、直径がミリメートル未満であり得、検出のために適切な荷電粒子フラックスを送達するのに十分な開口面積を提供しなければならない。処理チャンバ内でのプラズマ形成の開始時に、基板の表面及びプラズマにさらされる全ての他の表面に隣接してプラズマシースが形成される。シースに印加される電圧は、基板表面に到達するイオンエネルギーを操作するために使用される。センサ開口204の存在は、上記開口の近くでの局所シース形成を阻害する可能性を有する。プラズマにさらされる任意の開口を、プラズマのデバイ長
【数1】
よりも小さい寸法にして、開口の上にシースの形成を可能にし、したがって、開口を通じたプラズマ侵入を防ぐ必要がある。
【数2】
は、以下を使用して計算することができる。
【数3】
式中、
【数4】
は真空の誘電率であり、
【数5】
は電子温度であり、
【数6】
は電子密度であり、
【数7】
は電子電荷である。
【0029】
電子温度が3eV、電子密度が
【数8】
である典型的なプラズマ処理条件を使用すると、デバイ長は約40ミクロンである。したがって、通常はミリメートル単位の開口は、デバイ長未満の基準を単独で満たさない場合がある。
【0030】
図2(b)に示す実施形態では、以降G
0と称される第1の導電グリッド(又はメッシュ)が、両面間を良好に電気接続して、開口204の下側に取り付けられる。グリッドG
0は、プラズマスクリーニングを保証するデバイ長未満の開口サイズで製造され、検出に十分なイオンフラックスを透過するのに十分な開口面積比を有する。
【0031】
別の実施形態では、G
0を開口のプラズマに対向する側に取り付けて、
図2(c)に示したのと同じ機能を達成することができる。
【0032】
代替的な実施形態では、開口204は、デバイ長未満の寸法を有し、検出に適切なイオンフラックスを維持するのに十分な数で、プラズマ対向面内に直接製造され、したがって、独立したG
0の必要性を排除する。この実施形態は、
図2(d)に示されている。
【0033】
図2(a)、
図2(b)及び
図2(c)の各構成において、G
0は、処理ペデスタルに印加される励起電位及びプラズマ特性によって決定される、ウェハプローブ外部本体と同じ電位を採用する。この電位は、センサ回路及びグリッド間電場形成の基準電位として作用する。
【0034】
第1の絶縁層205は、G0に近接して配置されて、他のグリッド、例えばG1、G2、及びG3からの電気的絶縁を提供する。絶縁層205は、1つ以上の絶縁体から構成することができる。絶縁体は、イオンが妨げられずに通過することを可能にするように、イオンサンプリング開口アレイと一致する開口アレイを有することができる。代替的に、絶縁体は、開口アレイ全体にわたる開口面積を有する単一の大径開口を有してもよい。
【0035】
図2(b)において、以後G
1と称される第2のグリッドが、開口サイズ及び開口面積比に関してG
0と同一又は同様の幾何学的特徴を有する第1の絶縁体205に近接して配置される。G
1は、第1の電圧源に結合され、G
0に対して負にバイアスされ、したがって、入ってくるプラズマ電子を反発するのに必要な遅延電場を生成する。第1の絶縁層と同一又は同様の寸法を有する第2の絶縁層206が、G
1に近接して配置される。他のグリッドと同一又は同様の形状を有する、以後G
2と称される第3のグリッドが、第2の絶縁層に近接して配置される。G
2は、第2の電圧源に結合され、G
0に対して正電位掃引でバイアスされ、したがってイオンエネルギー弁別に必要な電場を生成する。他の絶縁層と同一又は同様の寸法を有する第3の絶縁層207が、G
2に近接して配置される。他のグリッドと同一又は同様の幾何学的特性を有する、以後G
3と称される第4のグリッドが、第3の絶縁層207に近接して配置される。G
3は、第3の電圧源に結合され、収集器に対して負にバイアスされ、したがって、収集器からの二次電子放出を抑制するために必要な電場を生成する。他の絶縁層と同一又は同様の寸法を有する第4の絶縁層208が、G
3に近接して配置される。イオン収集電極、すなわち収集器Cが、第4の絶縁層208に近接して配置される。収集器は、電流測定回路を通じて第4の電圧源に結合され、G
0に対して負にバイアスされて、引力電場を確立し、検出のためにイオンを収集器に引き寄せる。最後の絶縁層209が、収集器電極とセンサシャーシのバックプレートとの間に配置される。グリッドは典型的には、ニッケル又はステンレス鋼などの金属から作製されているが、任意の他のプロセス適合導電性材料を使用することもできる。絶縁体は典型的には、セラミック、マイカ、又は他のプロセス適合絶縁材料から作製される。
【0036】
図3(a)及び
図3(b)を参照すると、信号調整が、グリッドG
1、G
2、及びG
3の各々並びに上述の収集器に電圧源を提供することが分かる。G
2に供給される電圧は可変である。すなわち、電圧掃引がG
2に印加される。一般的なプラズマプロセスに見られるIEDを適切に測定するには、十分に高いG
2電圧掃引範囲を生成することが重要である。直面するプラズマプロセスの多くは、数十eV~数千eVの範囲のエネルギーを有するイオンを生成する。これには、様々な産業プロセスにおいてIEDを適切にプローブするために、G
2電圧掃引範囲がG
0に対してゼロボルトから数千ボルトまで拡張する必要がある。
【0037】
図4(a)は、必要な高電圧掃引範囲を生成するために使用できる高電圧生成回路400の一般的な構成を示す。この回路には、バッテリの低電圧を取り込み、必要な高電圧掃引を生成する2つの段が含まれている。各段の可能な構成の特定の詳細は、
図6及び
図7に関して以下に説明される。しかしながら、各段は、
図6及び/又は
図7の詳細に限定されないことを理解されたい。
【0038】
図4(a)において、回路は、低電圧源B1、高電圧パルス生成器401(第1の段)、及び電圧増倍器402(第2の段)を備える。電圧増倍器402は、当該技術分野においてはチャージポンプとしても知られている。高電圧パルス生成器401は、電圧増倍器402に高電圧パルス列を提供する。電圧増倍器402は、パルス列を使用して一連の内部コンデンサを充電し、パルス生成器401からのパルス電圧の複数倍、典型的には4倍~5倍の電圧まで出力を充電する。
【0039】
高電圧生成回路400は、
図3(a)及び
図3(b)に関して概説した信号調整回路に含めることができることを理解されたい。
図3(a)及び
図3(b)に示されるバッテリマネージャ回路(下記により詳細に説明される)が回路400に提供され得ることも理解されるであろう。バッテリマネージャ回路は、バッテリ出力電圧を固定電圧レベルに調整する。例示的な実施形態では、低電圧電源は、3vDCレギュレータを備えた単一セルLiPoバッテリであってもよい。高電圧生成回路及びバッテリマネージャの構成は、当業者によって適切に選択され得ることが更に理解されるべきである。
【0040】
図4(a)の回路は、ゼロから開始し、徐々に最大値まで増大する電圧掃引、すなわち増大電圧掃引を生成する。掃引が増大すると、イオン電流がサンプリングされる。しかしながら、電圧の急速なランプアップ及び低速の解放により、バッテリ性能が向上することが分かっている。すなわち、各掃引でバッテリから消費される電力が少なくなる。したがって、電池の交換又は再充電が必要になるまで、センサをより長期間使用することができる。
【0041】
図4(b)の高電圧生成回路500は、電圧を最大レベルまで急速に上昇させ、その後低速にゼロに戻して掃引するために使用される。この回路は、
図4(a)の回路に非常に類似しているが、更にいくつかの要素が必要である。電圧掃引の放電速度、すなわちタイミングを制御するために、放電抵抗器R1が追加される。電圧掃引がV
G2に適用される前にV
G2を放電するために、放電スイッチS1も追加されている。すなわち、G
2への高電圧出力と浮遊接地との間のスイッチは、電圧掃引プロセスが開始される直前にG
2を放電するために使用される。電圧が減少すると(電圧掃引下降)、イオン電流がサンプリングされる。
【0042】
例示的な実施形態では、回路500は、V
G2が、5ミリ秒以内に2kV強まで急速に充電されることを可能にし、次いでV
G2は、R1を介して最大1秒にわたって低速に放電されることを可能にされる。前述のように、
図4(b)の抵抗器R1は、高電圧の放電時間を設定するために使用される。放電時間は数秒(又はそれ未満)ほどであり得、イオン電流は電圧が放電するにつれて高速でサンプリングされる。すなわち、抵抗器は、高電圧生成回路の電圧増倍器402と並列である。電圧増倍器の浮遊接地までの総静電容量と並列である抵抗器の抵抗値は、電圧が放電する速度を決定する。
【0043】
G
2のフレーム上で収集されたイオン電流は、抵抗器R1を通じてプラズマに戻され、センサシャーシグランドに接続される。G
2のフレームに到達するイオン電流は、プラズマ条件の関数であり、広い範囲に及ぶ可能性がある。その結果、G
2電圧は、所望どおりに0Vまで完全に放電しない場合がある。代わりに、
図5に示すように、0Vを超えるあるレベルEにおいてプラトーになる場合がある。プラトー電圧は、R1を通って流れるイオン電流によって決定される。入ってくるイオン電流は、電圧増倍器402のポンプコンデンサ上の電荷を維持する。したがって、電圧を更に放電することはできない、すなわち、0Vまで放電することはできない。このシナリオでは、イオンエネルギー分布の低エネルギー領域にアクセスできなくなる。すなわち、イオンエネルギー分析は、E未満のG
2電圧のイオン電流をサンプリングすることはできない。
【0044】
この問題に対処するために、本教示による装置は、全イオンエネルギー分布にわたる測定値を取得するために、2段階の電圧スキャンを利用する。第1の段階は、第3の導電グリッドG2に印加される電圧が上昇している間にイオン電流を測定することを含み、第2の段階は、第3の導電グリッドG2に印加される電圧が下降しながらイオン電流を測定することを含む。次に、両方の段階からの電流測定値を組み合わせて、測定値の完全なセットを取得する。
【0045】
本教示によるセンサが待機モードにある(イオン電流をサンプリングしない)とき、プラズマはオンにされ得、イオン電流は第3の導電性グリッドG
2から抵抗器R1を通じてセンサ接地に流れる。このフローは、G
2の表面を、
図5の「A」で示されるある電圧レベルまで充電する。センサが測定を行うことが所望される場合、S1スイッチが閉じて、第3の導電性グリッドG
2が0Vまで完全に放電する。スイッチを閉じる結果として、
図5から分かるように、第3のグリッドがほぼ瞬時に放電される。次に、スイッチS1が開位置に戻り、
図5の「B」に示すように、イオン電流がG
2を再び充電し始める。第3のグリッドG
2が入来するイオンによって充電されるため、イオン電流は、この期間Bの間に高速で測定される。G
2はプラトーレベル「E」に整定する。これが、ゼロとR1を流れるイオン電流によって決定されるプラトー電圧Eとの間のG
2電圧掃引についてイオン電流が測定される第1の段階である。すなわち、G
2電圧掃引が上昇/増大している間にイオン電流が測定される。電圧増倍器の浮遊接地までの総静電容量と並列である抵抗器の抵抗値、及び、イオン電流は、第1の電圧が充電する速度を決定する。
【0046】
動作の第2の段階では、高電圧生成回路がトリガされ、G2電圧がその最大レベル「C」まで急速にブースト/ポンピングされる。ポンピングが停止すると、前述の理由により、G2はセクション「D」を通じて再びレベル「E」に放電し、イオン電流は放電フェーズ(下降電圧掃引)中に測定される。電圧増倍器の浮遊接地までの総静電容量と並列である抵抗器の抵抗値、及び、イオン電流は、第2の電圧が放電する速度を決定する。イオンエネルギー分布の高エネルギー領域及び低エネルギー領域は、その後、プロットのために2つの領域(充電及び放電)をつなぎ合わせると完全に回復する。
【0047】
本明細書に記載の高電圧生成回路は、センサの第3のグリッドG2に電圧を供給することに言及しているが、本教示はこれに限定されないことを当業者は理解されたい。本明細書に記載の高電圧生成回路は、センサのグリッドスタック内の任意のグリッドに電圧を供給することができる。例えば、センサには2つの導電性グリッドのみを設け、高電圧生成回路からの電圧をこれらのうちの1つに印加してもよい。電圧掃引は、イオンエネルギー弁別のために使用されるグリッドに印加され、このグリッドは、グリッドのスタック内の任意の位置を有することができることを理解されたい。イオンエネルギーの弁別に使用され、電圧掃引が印加されるグリッドは、弁別グリッドと考えることができる。
【0048】
高電圧生成回路の低電圧dc源は、2.75~4.5Vの範囲のdc電圧出力を有する薄型固体電池であり得る。バッテリを過充電及び過放電から保護するために、バッテリマネージャが使用される。バッテリマネージャは、電圧が特定の閾値を下回ったときにバッテリを接続解除するように構成されている。これにより、主回路への電力が接続解除される。バッテリ電圧が閾値レベルを超えて再充電されるまで、主回路への電力は回復しない。バッテリマネージャはまた、ドッキングステーション内の受信機の一部を形成するRFアンテナからも充電電力を引き出す。バッテリマネージャ回路はまた、バッテリ出力電圧を、例示的な実施形態では3.2Vである固定電圧レベルに調整する。
【0049】
図4(a)及び
図4(b)の高電圧生成回路400、500の各段のより詳細な構成は、
図6及び
図7に関して以下に説明される。
図6及び
図7の両方の回路は、前述の2段階イオン電流測定技術に従って動作するように構成することができる。
【0050】
図6は、高電圧生成回路の1つの構成を示しており、マイクロコントローラ(
図3(a)及び3(b)のMCU)は、バッテリによって電力を供給され、一定の周波数範囲にわたって掃引される正弦波AC電圧を出力するようにプログラムされている。出力は昇圧変圧器の一次巻線に接続されている。二次巻線の巻数は、一次巻線入力に印加される特定の周波数に必要な最大レベルまで電圧を上昇させるように選択される。二次巻線出力において、電圧が整流されて直流(DC)電圧が生成され、この直流(DC)電圧は電圧増倍器(段階2)に結合されて、必要に応じて電圧範囲を拡張するために電圧を更に増倍することができる。二次巻線の出力において生成されるDC電圧は、周波数に依存する。一次巻線に印加されるAC信号の周波数及び/又は振幅を掃引することにより、二次巻線又は増倍器の出力におけるDC電圧は、使用される変圧器巻数比に応じてゼロボルトから数千ボルトまでの必要な電圧範囲にわたって掃引される。電流は、ADCを使用して高電圧掃引で一定の電圧間隔でサンプリングされて、電流電圧特性が構築される。例示的な実施形態では4段電圧増倍器(4重倍器)が使用されているが、当業者は任意の数の段を適切に選択することができることを理解されたい。
【0051】
図6に示される高電圧生成回路を、ここでより詳細に説明する。前述のように、この回路は、電圧増倍器(第2の段)に給電する、低電圧から高電圧への変圧器(T1)(第1の段)を含む。電圧増倍器は、ダイオード構成要素D1、D2、D3、及びD4と組み合わせたコンデンサ構成要素C1、C2、C3、及びC4から構成される、コッククロフトウォルトン電圧増倍回路の一種である。低電圧AC信号は、Hブリッジスイッチを使用してT1の一次側で生成される。Hブリッジ、又は同様のスイッチングトポロジが使用されて、シングルレール電源からT1の一次巻線にバイポーラ電流が流れることが可能にされる。AC信号の周波数及び振幅は、マイクロコントローラによって制御される。巻数比1:Nの変圧器T1は、二次側で高電圧AC信号を生成する。正の半サイクル中、C2はC1及びD2を介して充電され、C4はC1、C3及びD4を介して充電される。負の半サイクル中、C1はD1を介して充電され、C3はC2及びD3を介して充電される。所定数のACサイクルの後、全てのコンデンサにわたる電圧が等しくなり、VG
2はC2にわたる電圧の4倍の最大レベルに達する。T1の一次巻線に印加されるAC信号の周波数及び振幅を制御することにより、VG
2をゼロから最大値まで漸進的に増大させることができることは明らかである。したがって、逆電位型分析器においてイオンエネルギー弁別を駆動するために使用される典型的な増大電圧ランプ(鋸歯又は階段関数)を実現することができる。電圧掃引の最大電圧に達し、結果として生じるイオン電流が測定されると、次の電圧掃引に備えてVG
2をゼロにリセットするために、T1の一次巻線に印加されるAC電圧がオフになる。スイッチS1もこの時点で閉じて、G
2及びコンデンサを迅速に放電するのに役立つ。
【0052】
電圧掃引を生成するための回路の別の構成では、ブースト変換及び/又はチャージポンピングの原理を適用することができる。ハイブリッドソリューションが提供されるが、現在の技法のバリエーションを適用することができることは明らかである。
図7は、この技法を使用して高電圧掃引を生成するために使用される回路を示している。バッテリは、3V出力を薄型DC-DCコンバータの入力に送達して、電圧を約80Vに増大させる。80Vの信号は、直列のブーストインダクタ及びダイオード(ブースト回路)を通じて電圧増倍回路に結合される。パルス幅変調(PWM)信号によって制御される電場効果トランジスタ(FET)が、直列ダイオードの後のシステム浮遊接地に結合されて、80V電源を変調し、電圧増倍回路を駆動する。電圧増倍回路への入力において、昇圧回路によって電圧が約250Vに昇圧されているが、アプリケーションの必要に応じて更に高くすることもできる。この例では、電圧増倍器には4つの段があるが、更により高い電圧を供給するために、更に多くの段を有することができる。各電圧増倍器段は、各段が入力に印加される電圧を増大させる典型的な設計を有する。第1のコンデンサC1は、PWM信号の十分なサイクル数が生成した後、500Vの最大レベルまで充電される。同様に、C3の出力は1000Vに達し、C5は1500Vに達し、C7は2000Vに達する。各段において、一連のダイオードが、PWMオフ状態中に電荷蓄積コンデンサが放電するのを防ぐように構成されており、したがって、高電圧掃引を生成するために必要な「増倍」効果が提供される。イオン電流は、ADCを使用して高電圧掃引で一定の電圧間隔でサンプリングされて、電流電圧特性が構築される。
【0053】
図7の構成は、より厳しい高さ要件を満たすために考案された。バッテリ及びバッテリマネージャ構成要素は、
図6と同じである。バッテリマネージャは、DC電圧レベルを80Vに昇圧するために、電圧ダブラを内蔵した既製の薄型DC-DCコンバータに給電する。高電圧生成回路は、ブーストセクション及びそれに続く電圧増倍器セクションから構成される。ブーストセクションは、インダクタL1、MOSFETトランジスタQ1(パルス幅変調器によってオンとオフとを切り替えられる)、ダイオードD2、及びコンデンサC1を使用する典型的なDC-DCブーストコンバータトポロジである。これにより、回路が、その例示的な実施形態におけるDC-DC出力電圧である80Vよりも高い電圧にC1を充電することが可能になる。増倍器セクションは、コンデンサ構成要素C2、C3、C4、C5、C6、及びC7並びにダイオード構成要素D3、D4、D5、D6、D7、及びD8を備えた
図6のコッククロフトウォルトン型電圧乗算器回路に非常に類似している。
図7の回路は、
図6の回路とは異なる方式で電圧掃引を生成する。ゼロから開始して漸進的に最大値まで増大する電圧掃引の代わりに、この回路は、電圧を最大レベルまで急速に上昇させ、その後低速にゼロに戻して掃引するために使用される。ただし、これは、電圧をゼロから最大電圧まで漸進的に掃引するために使用することもできる。
【0054】
当業者は、本教示がMOSFETトランジスタに限定されないことを理解すべきである。むしろ、例えばバイポーラトランジスタなどの任意の好適なトランジスタを選択することができる。
【0055】
図6の回路は、
図7について説明した不連続モードで動作され得ることに留意されたい。この場合、電圧は、低速に放電してゼロに戻る前に、急速に最大値まで増大させることもできる、すなわち、
図6の回路は、下降電圧掃引を提供することができる。当業者には明らかであるように、これは、
図4(b)及び
図7に関してより詳細に説明されているように、放電抵抗器R1の追加を必要とする。
【0056】
図7に示す回路は不連続に動作するため、L1に蓄積されたエネルギーが枯渇した後、C2からL1を介して浮遊接地に電流が逆流するのを防ぐために、D1が追加される。
【0057】
スイッチS1が使用されて、ブースト回路がDC-DCコンバータの80V出力に接続される。VG
2が最大レベルまで充電されている間、S1は閉じたままである。MOSFETトランジスタQ1のスイッチングレートは、制御されるマイクロプロセッサ出力である。Q1が開いている場合、C1はDC-DCコンバータの80V出力及び通電中のインダクタからD1及びD2を介して充電される。次に、C3はD4を介してC2によって充電され、C5はD6を介してC4によって充電され、C7はD8を介してC6によって充電される。Q1が閉じている場合、L1は、DC-DCコンバータからQ1を介して浮遊接地に流れる電流によって通電される。浮遊接地に対するコンデンサC2、C4、及びC6にわたる電圧は、Q1が閉じているために減少し、それぞれ、コンデンサC1、C3、及びC5にわたる電圧を下回る。ここで、C2はD3を介してC1によって充電され、C4はD5を介してC3によって充電され、C6はD7を介してC5によって充電される。昇圧セグメントが不連続モードで動作することによって、L1に蓄積されているエネルギー(E)は
【数9】
によって与えられ、VはL1にわたる電圧であり、T
ONはトランジスタスイッチが閉じている時間の長さであり、LはL1のインダクタンスである。複数のQ1スイッチサイクルの後、全てのコンデンサにわたる電圧が等しくなって、必要な最大VG
2が得られる。この例では、VG
2はC1にわたる電圧の約4倍になる。必要に応じてより多くの段を追加してVG
2を増大することができる。最大VG
2に達すると、スイッチS2が閉じてVG
2の放電が開始され、低速に0ボルトまで低下する。抵抗R1はS2と並列に配置される。R1とコンデンサとの組み合わせによって、VG
2の放電掃引速度が設定される。
【0058】
図7の電圧増倍器(高電圧生成回路の段2)は、コンデンサの2つの並列ストリング(C1、C3、C5及びC7)並びに(C2、C4及びC6)を有する。トランジスタスイッチQ1が開くと、増倍器への入力がハイになり、増倍器はC1を充電し、C2はC3を充電し、C4はC5を充電し、C6はC7を充電する。Q1が閉じている場合、入力は低くなり、C1はC2を充電し、C3はC4を充電し、C5はC6を充電する。スイッチQ1は、全てのコンデンサが入力電圧に等しい充電電圧を有するように、オンとオフとを繰り返し切り替えられる。その結果、出力VG
2は入力電圧の4倍になる。効率を考慮したとき、電圧増倍器を80Vラインから直接使用すると、最大電圧は約300Vになる。
【0059】
その電圧を更に増大するために、電圧増倍器の前にブースト回路がある。エネルギーはインダクタL1に蓄積され、コンデンサC1に転送され、ここで、ダイオードD1は、エネルギーがインダクタを介して入力に戻るのを防ぐ。昇圧回路への入力は80Vであり、トランジスタがオンのとき、インダクタは接地に短絡し、インダクタ電流が増大し、エネルギーが蓄積される。トランジスタがオフのとき、電流はインダクタを通じてD8及びD1を介してコンデンサC7に流れ続ける。コンデンサC7にわたる電圧は、蓄積されたエネルギーが増大するにつれて増大する。入力電圧は80Vであり、MOSFETトランジスタはインダクタと電圧増倍器の両方の入力を接地に短絡する。数マイクロ秒後にトランジスタが解放され、これによって、チャージポンプ効果を達成するために必要な電流が誘導されて、最大電圧VG2が生成される。
【0060】
図4(a)、
図4(b)、及び
図5~
図7の例示的な実施形態に関して提供される電圧値は、単に例示的なものであることが当業者には理解されよう。本教示は、これらの値に限定されると考えるべきではない。むしろ、これらの回路は、必要な電圧を提供するように適切に構成することができる。
【0061】
本発明は、本明細書に記載の実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲から逸脱することなく補正又は改変することができる。
【外国語明細書】