(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023070639
(43)【公開日】2023-05-19
(54)【発明の名称】化粧料用粉体、化粧料用粉体の製造方法、及び化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/02 20060101AFI20230512BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20230512BHJP
A61K 8/29 20060101ALN20230512BHJP
A61K 8/25 20060101ALN20230512BHJP
A61K 8/73 20060101ALN20230512BHJP
A61K 8/37 20060101ALN20230512BHJP
【FI】
A61K8/02
A61Q1/00
A61K8/29
A61K8/25
A61K8/73
A61K8/37
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022160888
(22)【出願日】2022-10-05
(31)【優先権主張番号】P 2021182367
(32)【優先日】2021-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】391015373
【氏名又は名称】大東化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【弁理士】
【氏名又は名称】沖中 仁
(72)【発明者】
【氏名】阿部 萌子
(72)【発明者】
【氏名】土屋 玲一郎
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 拓弥
(72)【発明者】
【氏名】村山 佳奈
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AB172
4C083AB242
4C083AB332
4C083AB432
4C083AC012
4C083AC122
4C083AC182
4C083AC352
4C083AC422
4C083AC532
4C083AC842
4C083AD152
4C083AD162
4C083BB25
4C083CC12
4C083DD32
4C083EE01
4C083EE06
4C083FF01
(57)【要約】
【課題】撥水性、感触特性、及び油剤への分散性を向上させることが可能でありながらも、環境、動植物、人体等への影響に対する懸念に配慮した化粧料用粉体、当該化粧料用粉体の製造方法、及び当該化粧料用粉体を配合した化粧料を提供する。
【解決手段】基粉体を、自然由来の(a)イソステアリン酸デキストリンと、自然由来の(b)グリセリン脂肪酸エステルとを含有する表面処理剤で表面処理した化粧料用粉体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基粉体を、自然由来の(a)イソステアリン酸デキストリンと、自然由来の(b)グリセリン脂肪酸エステルとを含有する表面処理剤で表面処理した化粧料用粉体。
【請求項2】
前記(a)イソステアリン酸デキストリン、及び前記(b)グリセリン脂肪酸エステルは、「ISO16128に基づく化粧品の自然及びオーガニックに係る指数表示に関するガイドライン」に示された算出方法により算出される自然由来指数が0.8以上である請求項1に記載の化粧料用粉体。
【請求項3】
前記表面処理剤における前記(a)イソステアリン酸デキストリンと、前記(b)グリセリン脂肪酸エステルとの質量配合比(a/b)が、0.5~5である請求項1又は2に記載の化粧料用粉体。
【請求項4】
前記表面処理剤を、0.10~20質量%配合する請求項1又は2に記載の化粧料用粉体。
【請求項5】
水の接触角が、70~160°である請求項1又は2に記載の化粧料用粉体。
【請求項6】
前記(b)グリセリン脂肪酸エステルにおける脂肪酸は、炭素数7~18の直鎖又は分岐鎖の脂肪酸である請求項1又は2に記載の化粧料用粉体。
【請求項7】
前記(b)グリセリン脂肪酸エステルは、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2、及びテトライソステアリン酸ポリグリセリル-2からなる群から選択される少なくとも一つである請求項6に記載の化粧料用粉体。
【請求項8】
前記基粉体は、無機顔料、有機顔料、及び有機色素からなる群から選択される少なくとも一つである請求項1又は2に記載の化粧料用粉体。
【請求項9】
自然由来の(a)イソステアリン酸デキストリンを、自然由来の(b)グリセリン脂肪酸エステルに溶解させる溶解工程と、
前記溶解工程によって得られた原液を、有機溶剤に分散、懸濁、又は溶解させて表面処理液を得る調製工程と、
基粉体と、前記表面処理液とを混合する混合工程と、
前記混合工程によって得られたスラリーを熱処理する熱処理工程と
を包含する化粧料用粉体の製造方法。
【請求項10】
前記熱処理工程における処理温度は、70~150℃に設定される請求項9に記載の化粧料用粉体の製造方法。
【請求項11】
請求項1又は2に記載の化粧料用粉体を配合した化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撥水性、感触特性、及び油剤への分散性を向上させることが可能でありながらも、環境、動植物、人体等への影響に対する懸念に配慮した化粧料用粉体の製造方法、及び当該化粧料用粉体を配合した化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧料には無機粉体及び有機粉体など種々の粉体が配合されている。これらの粉体には、目的に応じて、種々の表面処理剤で被覆することが提案されている。
【0003】
例えば、基粉体の表面をイソプロピルトリイソステアロイルチタネートで被覆することによって親油化することにより、油剤への分散性を向上させることが提案されている(特許文献1)。しかし、イソプロピルトリイソステアロイルチタネートは合成品であり、自然由来原料でないことから、環境等への影響に対する懸念に配慮したものであるとはいい難い。
【0004】
例えば、特定のデキストリン脂肪酸エステルで基粉体の表面処理を行うことで、様々な油剤への分散性が高く、製品安定性が良好で、また肌への付着力と化粧持続性が良い化粧料用粉体を得ることが提案されている(特許文献2)。しかし、デキストリン脂肪酸エステルは、それ自体の粘度が非常に高い(高粘性である)ため、油剤への分散性を優先しようとして配合量を大きくすると、化粧料用粉体が凝集し易くなり、感触特性の改良効果が得られないという難点がある。また処理を行う際の溶剤への溶解に時間を要することや、製造設備に付着した際、洗浄に溶剤を必要とする等、デキストリン脂肪酸エステル単体で基粉体の表面処理を行うことは、製造上好ましくないという問題もある。化粧料用粉体の感触は、塗布時の伸び及び滑り、並びに肌上での平滑感等に密接に関係するため、非常に重要である。
【0005】
一方、近年、表面処理された化粧料用粉体だけでなく、長さが数百μm程度のプラスチック粒子(例えば、ポリエチレン粒子)を化粧料に配合して、感触特性を向上させることが行われている。しかし、石油由来の合成高分子粒子(プラスチック粒子)の多くは、自然環境中で分解されず、さらに、殺虫剤等の化学物質を吸着し易い。そのため、様々な環境問題を引き起こすおそれがある。例えば、水環境に流出したプラスチック粒子が蓄積され、海洋や湖沼の生態系に大きな害を与えるおそれがある。また、生物濃縮により人体に影響を与えるおそれがある。このようなプラスチック粒子は、マイクロプラスチックと呼ばれており、長さが5mm以下からナノレベルまでの微細なプラスチック粒子であり、大きな問題となっている。マイクロプラスチックに該当するものとして、化粧料等に含まれる微粒子、加工前のプラスチック樹脂の小さな塊、比較的大きなプラスチック製品が海中で浮遊する間に微細化したもの等が挙げられる。また、一般的に化粧料用顔料の表面処理に用いられているシリコーン等にも、同様の懸念がある。
【0006】
これらは、国連の環境計画等でも指摘されており、世界の各国において、各種業界団体が規制を検討している。そこで、自然環境中で微生物等により水と二酸化炭素に分解され、自然界の炭素サイクルに組み込まれる生分解性プラスチックが注目されている。また、欧米を中心に自然派化粧品やオーガニック化粧品に関心が高まっており、化粧品の自然及びオーガニック指数表示に関するガイドライン(ISO16128)が制定されている。このガイドラインによれば、製品中の原料を、自然原料、自然由来原料、及び非自然原料に分類し、各原料の配合量に基づいて指数が定められる。今後、このガイドラインに沿って算出された指数が商品に表示されるといわれている。そのため、自然由来原料、さらには、自然原料を用いることが要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭57-207651号公報
【特許文献2】特許第5695331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、撥水性、感触特性、及び油剤への分散性を向上させることが可能でありながらも、環境、動植物、人体等への影響に対する懸念に配慮した化粧料用粉体、当該化粧料用粉体の製造方法、及び当該化粧料用粉体を配合した化粧料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための本発明に係る化粧料用粉体の特徴構成は、
基粉体を、自然由来の(a)イソステアリン酸デキストリンと、自然由来の(b)グリセリン脂肪酸エステルとを含有する表面処理剤で表面処理したことにある。
【0010】
本構成の化粧料用粉体によれば、基粉体を、自然由来の(a)イソステアリン酸デキストリンと、自然由来の(b)グリセリン脂肪酸エステルとを含有する表面処理剤で表面処理したことにより、当該化粧料用粉体は、撥水性、感触特性、及び油剤への分散性を向上させることが可能なものとなる。また、表面処理剤に含有される(a)イソステアリン酸デキストリン及び(b)グリセリン脂肪酸エステルが自然由来であることにより、当該化粧料用粉体は、環境、動植物、人体等への影響に対する懸念に配慮したものとなる。
【0011】
本発明に係る化粧料用粉体において、
前記(a)イソステアリン酸デキストリン、及び前記(b)グリセリン脂肪酸エステルは、「ISO16128に基づく化粧品の自然及びオーガニックに係る指数表示に関するガイドライン」に示された算出方法により算出される自然由来指数が0.8以上であることが好ましい。
【0012】
本構成の化粧料用粉体によれば、(a)イソステアリン酸デキストリン、及び(b)グリセリン脂肪酸エステルの自然由来指数が0.8以上であることにより、当該化粧料用粉体は、環境、動植物、人体等への影響に対する懸念に配慮したものとなる。
【0013】
本発明に係る化粧料用粉体において、
前記表面処理剤における前記(a)イソステアリン酸デキストリンと、前記(b)グリセリン脂肪酸エステルとの質量配合比(a/b)が、0.5~5であることが好ましい。
【0014】
本構成の化粧料用粉体によれば、表面処理剤における(a)イソステアリン酸デキストリンと、(b)グリセリン脂肪酸エステルとの質量配合比(a/b)が0.5~5であることにより、当該化粧料用粉体は、撥水性、感触特性、及び油剤への分散性が優れたものとなる。
【0015】
本発明に係る化粧料用粉体において、
前記表面処理剤を、0.10~20質量%配合することが好ましい。
【0016】
本構成の化粧料用粉体によれば、表面処理剤を、0.10~20質量%配合することにより、当該化粧料用粉体は、撥水性、感触特性、及び油剤への分散性が優れたものとなる。
【0017】
本発明に係る化粧料用粉体において、
水の接触角が、70~160°であることが好ましい。
【0018】
本構成の化粧料用粉体によれば、水の接触角が、70~160°であることにより、当該化粧料用粉体は、撥水性がより優れたものとなる。
【0019】
本発明に係る化粧料用粉体において、
前記(b)グリセリン脂肪酸エステルにおける脂肪酸は、炭素数7~18の直鎖又は分岐鎖の脂肪酸であることが好ましい。
【0020】
本構成の化粧料用粉体によれば、(b)グリセリン脂肪酸エステルにおける脂肪酸が、炭素数7~18の直鎖又は分岐鎖の脂肪酸であることにより、当該化粧料用粉体は、撥水性、感触特性、及び油剤への分散性がより優れたものとなる。
【0021】
本発明に係る化粧料用粉体において、
前記(b)グリセリン脂肪酸エステルは、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2、及びテトライソステアリン酸ポリグリセリル-2からなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。
【0022】
本構成の化粧料用粉体によれば、(b)グリセリン脂肪酸エステルとして上記の適切なものを選択することにより、当該化粧料用粉体は、撥水性、感触特性、及び油剤への分散性がより優れたものとなる。
【0023】
本発明に係る化粧料用粉体において、
前記基粉体は、無機顔料、有機顔料、及び有機色素からなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。
【0024】
本構成の化粧料用粉体によれば、化粧料用粉体として上記の適切なものを選択することにより、これらの化粧料用粉体を顔料として配合したファンデーション、アイシャドー、アイブロー、ほほ紅等のメイクアップ化粧料において、感触特性等を向上させることができる。
【0025】
上記課題を解決するための本発明に係る化粧料用粉体の製造方法は、
自然由来の(a)イソステアリン酸デキストリンを、自然由来の(b)グリセリン脂肪酸エステルに溶解させる溶解工程と、
前記溶解工程によって得られた原液を、有機溶剤に分散、懸濁、又は溶解させて表面処理液を得る調製工程と、
基粉体と、前記表面処理液とを混合する混合工程と、
前記混合工程によって得られたスラリーを熱処理する熱処理工程と
を包含することにある。
【0026】
本構成の化粧料用粉体の製造方法によれば、自然由来の(a)イソステアリン酸デキストリンを、自然由来の(b)グリセリン脂肪酸エステルに溶解させる溶解工程と、溶解工程によって得られた原液を、有機溶剤に分散、懸濁、又は溶解させて表面処理液を得る調製工程と、混合工程によって得られたスラリーを熱処理する熱処理工程とを包含することにより、基粉体を、(a)イソステアリン酸デキストリン及び(b)グリセリン脂肪酸エステルを含有する表面処理剤で表面処理した化粧料用粉体を得ることができる。調製工程が、溶解工程によって得られた原液を有機溶剤と混合(分散、懸濁、又は溶解)することにより行われ、混合工程が、得られた表面処理液と、基粉体とを混合することにより行われることにより、少量の表面処理液(表面処理剤)によって基粉体の表面を効率よく且つ均一に被覆することができる。得られた化粧料用粉体は、化粧料用粉体が(a)イソステアリン酸デキストリン及び(b)グリセリン脂肪酸エステルを含有する表面処理剤で表面処理されていることにより、撥水性、感触特性、及び油剤への分散性を向上させることが可能となる。また、(a)イソステアリン酸デキストリン及び(b)グリセリン脂肪酸エステルが自然由来であることにより、得られた化粧料用粉体は、環境、動植物、人体等への影響に対する懸念に配慮したものとなる。
【0027】
本発明に係る化粧料用粉体の製造方法において、
前記熱処理工程における処理温度は、70~150℃に設定されることが好ましい。
【0028】
本構成の化粧料用粉体の製造方法によれば、熱処理工程における処理温度が70~150℃に設定されることにより、撥水性、感触特性、及び油剤への分散性が優れた化粧料用粉体を得ることができる。
【0029】
上記課題を解決するための本発明に係る化粧料は、
上述の化粧料用粉体を配合したことにある。
【0030】
本構成の化粧料は、上述の化粧料用粉体を配合したことにより、油剤への分散性、及び化粧崩れ防止性に優れ、しかも環境、動植物、人体等への影響に対する懸念に配慮した製品となる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の化粧料用粉体、化粧料用粉体の製造方法、及び化粧料について、詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施形態及び実施例に限定されることを意図するものではない。
【0032】
〔化粧料用粉体〕
本発明の化粧料用粉体は、撥水性、感触特性、及び油剤への分散性を向上させることが可能でありながらも、環境、動植物、人体等への影響に対する懸念に配慮したものであり、基粉体を、自然由来の(a)イソステアリン酸デキストリンと、自然由来の(b)グリセリン脂肪酸エステルとを含有する表面処理剤で表面処理したものである。
【0033】
<イソステアリン酸デキストリン>
本発明の化粧料用粉体において、表面処理剤に含有されるイソステアリン酸デキストリンは、基粉体を親油化させるためのエステル化合物である。イソステアリン酸デキストリンは、通常、固体状である。
【0034】
イソステアリン酸デキストリンは、自然由来である。イソステアリン酸デキストリンが自然由来であることにより、化粧料用粉体は、環境、動植物、人体等への影響に対する懸念に配慮したものとなる。イソステアリン酸デキストリンの自然由来指数は、0.8以上が好ましく、1がより好ましい。イソステアリン酸デキストリンの自然由来指数が0.8以上であることにより、化粧料用粉体は、環境、動植物、人体等への影響に対する懸念に配慮したものとなる。
【0035】
イソステアリン酸デキストリンの重合度、イソステアリン酸とデキストリンとのモル比等は、適宜設定され得る。イソステアリン酸デキストリンは、市販品を用いることができ、例えばユニフィルマHVY(千葉製粉株式会社製)等が挙げられる。なお、イソステアリン酸デキストリンは、2種以上を組み合わせて用いることも可能である。
【0036】
<グリセリン脂肪酸エステル>
本発明の化粧料用粉体において、表面処理剤に含有されるグリセリン脂肪酸エステルは、基粉体を親油化させるためのエステル化合物である。グリセリン脂肪酸エステルは、通常、比較的低粘度の液体状である。グリセリン脂肪酸エステルは無色であるため、当該グリセリン脂肪酸エステルを含有する表面処理剤で基粉体を表面処理しても、化粧料用粉体の色に影響を与える虞がない。
【0037】
グリセリン脂肪酸エステルは、自然由来である。グリセリン脂肪酸エステルが自然由来であることにより、化粧料用粉体は、環境、動植物、人体等への影響に対する懸念に配慮したものとなる。グリセリン脂肪酸エステルの自然由来指数は、0.8以上が好ましく、1がより好ましい。グリセリン脂肪酸エステルの自然由来指数が0.8以上であることにより、化粧料用粉体は、環境、動植物、人体等への影響に対する懸念に配慮したものとなる。このような自然由来のグリセリン脂肪酸エステルのグリセリンとしては、パーム、ヤシといった植物に由来するグリセリンが挙げられ、脂肪酸としては、菜種、パーム、ヤシといった植物に由来する脂肪酸が挙げられる。
【0038】
グリセリン脂肪酸エステルにおける脂肪酸は、炭素数7~18の直鎖又は分岐鎖の脂肪酸であることが好ましい。脂肪酸が炭素数7~18の直鎖又は分岐鎖の脂肪酸であることにより、撥水性、感触特性、油剤への分散性がより優れたものとなる。このようなグリセリン脂肪酸エステルにおける脂肪酸としては、エナント酸、カプリル酸、2-エチルヘキサン酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデカン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、イソトリデカン酸、ミリスチン酸、イソミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、イソパルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、及びイソステアリン酸などが例示される。これらの脂肪酸のうち、カプリル酸、カプリン酸、及びイソステアリン酸が好ましく、好ましい脂肪酸とグリセリンとのエステル化合物としては、例えばトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2(トリイソステアリン酸ジグリセリル)、テトライソステアリン酸ポリグリセリル-2(テトライソステアリン酸ジグリセリル)が挙げられる。これに例示されるように、上掲の各脂肪酸は、2種以上を組み合わせて用いることも可能である。また、グリセリン脂肪酸エステルは、2種以上を組み合わせて用いることも可能である。
【0039】
<表面処理剤における質量配合比(a/b)>
表面処理剤における(a)イソステアリン酸デキストリンと、(b)グリセリン脂肪酸エステルとの質量配合比(a/b)は、0.5~5であることが好ましい。表面処理剤における(a)イソステアリン酸デキストリンと、(b)グリセリン脂肪酸エステルとの質量配合比(a/b)が0.5~5であることにより、撥水性、感触特性、油剤への分散性が優れたものとなる。
【0040】
<表面処理剤におけるイソステアリン酸デキストリン及びグリセリン脂肪酸エステルの合計配合量>
表面処理剤におけるイソステアリン酸デキストリン及びグリセリン脂肪酸エステルの合計配合量は、90質量%以上が好ましく、100質量%であってもよい。イソステアリン酸デキストリン及びグリセリン脂肪酸エステルの合計配合量が90質量%以上であることにより、化粧料用粉体は、撥水性、感触特性、油剤への分散性がより優れたものとなる。
【0041】
<化粧料用粉体における表面処理剤の配合量>
化粧料用粉体における表面処理剤の配合量は、0.10~20質量%が好ましい。
【0042】
化粧料用粉体における表面処理剤の配合量が、0.10~20質量%であることにより、化粧料用粉体は、撥水性、感触特性、油剤への分散性がより優れたものとなる。
【0043】
<基粉体>
基粉体は、本発明の化粧料用粉体の基材となる粉体である。
【0044】
基粉体として、例えば、酸化チタン、黄色酸化鉄、赤色酸化鉄、黒色酸化鉄、タルク、酸化亜鉛、酸化ケイ素、パールマイカ、マイカ、カーボンブラック、ベンガラ、酸化セリウム、マンガンバイオレット、コバルトバイオレット、酸化クロム、水酸化クロム、チタン酸コバルト、群青、紺青、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、カオリン、絹雲母(セリサイト)、白雲母、金雲母、合成雲母、紅雲母、黒雲母、バーミキュライト、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸バリウム、ケイ酸カルシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、ヒドロキシアパタイト、窒化ホウ素、パール顔料、及びオキシ塩化ビスマス等の無機顔料、赤色3号、赤色10号、赤色106号、赤色201号、赤色202号、赤色204号、赤色205号、赤色220号、赤色226号、赤色227号、赤色228号、赤色230号、赤色401号、赤色405号、赤色505号、黄色4号、黄色5号、黄色202号、黄色203号、黄色205号、黄色401号、橙色201号、橙色203号、橙色204号、橙色205号、橙色206号、橙色207号、青色1号、青色2号、青色201号、青色404号、緑色3号、緑色201号、緑色204号、及び緑色205号等の有機色素、クロロフィル、及びβ-カロチン等の天然色素、ミリスチン酸亜鉛、パルミチン酸カルシウム、及びステアリン酸アルミニウム等の金属石鹸、タール顔料等の有機顔料、ナイロンパウダー、セルロースパウダー、ポリエチレンパウダー、ポリメタクリル酸メチルパウダー、ポリスチレンパウダー、アクリルパウダー、及びシリコーンパウダー等の有機粉体が挙げられる。これらの基粉体は、単独又は混合して使用することができる。特に、本発明の化粧料用粉体は、イソステアリン酸デキストリン及びグリセリン脂肪酸エステルを含有する表面処理剤を用いることで、ファンデーション、アイシャドー、アイブロー、及びほほ紅等のメイクアップ化粧料に配合される無機顔料、有機顔料、及び有機色素等を好適に使用することができる。
【0045】
<その他成分>
本発明の化粧料用粉体は、イソステアリン酸デキストリン、グリセリン脂肪酸エステル、及び基粉体以外の成分を含むことも可能である。
【0046】
<化粧料用粉体の撥水性>
本発明の化粧料用粉体は、十分な親油性を有することが好ましい。親油性の程度は、水に対する濡れ難さの程度で表される。水に対する濡れ難さは、例えば撥水性で表され、撥水性は水に対する接触角で表される。すなわち、親油性が高い程、撥水性が高くなり、接触角が大きくなる。よって、本発明の化粧料用粉体の接触角が大きい程、親油性が高くなるため、この観点から、本発明の化粧料用粉末の接触角は、70°以上が好ましく、100°以上がより好ましい。一方、前記接触角の上限値については特に定める必要はないが、160°程度が水玉を形成し得る限界となる。
【0047】
〔化粧料用粉体の製造方法〕
本発明の化粧料用粉体は、下記(I)、(II)、(III)、及び(IV)の工程を実施することで製造することができる。
【0048】
(I)溶解工程
溶解工程では、固体状であり、自然由来のイソステアリン酸デキストリンを、比較的低粘度の液体状であり、自然由来のグリセリン脂肪酸エステルに溶解させる。後述する調製工程(II)及び混合工程(III)の前に、予めイソステアリン酸デキストリンをグリセリン脂肪酸エステルに溶解させることにより、後段の調製工程(II)及び混合工程(III)において、表面処理液中にイソステアリン酸デキストリン及びグリセリン脂肪酸エステルを表面処理液に均一に存在させることができる。
【0049】
(II)調製工程
調製工程では、溶解工程によって得られた原液を、有機溶剤に分散、懸濁、又は溶解させることにより、表面処理液を得る。有機溶剤としては、例えば、炭化水素系溶媒、アルコール系溶媒、及び高極性有機溶媒(アセトン、酢酸エチル)等が挙げられる。これらの有機溶剤は、使用するイソステアリン酸デキストリン及びグリセリン脂肪酸エステルを適切に分散、懸濁、又は溶解できるものを使用する。有機溶剤には、ヘキサン等の極性の低い炭化水素系溶媒を使用することが好ましい。予めイソステアリン酸デキストリン及びグリセリン脂肪酸エステルを有機溶剤に分散、懸濁、又は溶解させておくことで、後段の混合工程(III)において、少量の表面処理液(表面処理剤)によって、基粉体の表面を効率よく且つ均一に被覆することが容易となる。有機溶剤の量は、表面処理液と混合する基粉体の吸油量に合わせて適宜設定することが好ましく、例えば基粉体の10~100質量%が好ましい。有機溶剤の量が基粉体の10質量%以上であることによって、有機溶剤に対する基粉体の濡れ性が低くても、基粉体の表面を表面処理剤によって均一に被覆できる。これにより、後段の混合工程(III)において、表面処理液と基粉体との混合に要する時間が短縮し、化粧料用粉体の製造効率を向上させることができる。有機溶剤の量が基粉体の100質量%以下であることによって、表面処理液と基粉体との混合後、有機溶剤の除去に要する時間が短縮し、化粧料用粉体の製造効率を向上させることができる。また、有機溶剤の量が上記の範囲にあれば、化粧料用粉体における表面処理剤の配合量を0.10~20質量%に設定する場合に、表面処理剤による化粧料用粉体の表面の均一な被覆がより容易なものとなる。
【0050】
(III)混合工程
混合工程では、基粉体と、調製工程で得られた表面処理液とを混合する。基粉体と表面処理液との混合方法としては、例えば、ヘンシェルミキサー、レディゲミキサー、ニーダー、V型混合機、ロールミル等の混合機を用いる方法が挙げられる。混合機を用いる方法では、基粉体を攪拌し、攪拌下の基粉体に、表面処理液を滴下(すなわち、徐々に添加)しながら混合することが、表面処理剤で基粉体を均一に被覆し得る点で、好ましい。表面処理剤で基粉体をより均一に被覆し得る点で、基粉体を攪拌し、攪拌下の基粉体に、表面処理液を2段階に分けて滴下することがより好ましい。このような2段階の滴下によれば、1段階目の表面処理液の滴下により、基粉体の表面が表面処理液で十分に濡らされつつ被覆され、続く2段階目の表面処理液の滴下において、残りの表面処理液が、既に基粉体の表面に付着した表面処理液に付着し易くなるため、1段階目及び2段階目の全ての表面処理液が、基粉体に均一に付着(被覆)し易くなる。また、本発明の製造方法では、有機溶剤として、n-ヘキサン等を用い、本混合工程においてスラリーを基粉体と混合しながら、又は、本混合工程でのスラリーと基粉体との混合後(後段の熱処理工程時)に加熱し、有機溶剤を揮発させることで除去することが好ましい。
【0051】
(IV)熱処理工程
熱処理工程では、混合工程において得た混合物を熱処理する。熱処理により、化粧料用粉体の表面が、イソステアリン酸デキストリン及びグリセリン脂肪酸エステルを含有する表面処理剤によって被覆された本発明の化粧料用粉体が得られる。熱処理工程における処理温度は、70~150℃に設定されることが好ましい。処理温度が上記の範囲にあれば、撥水性、感触特性、及び油剤への分散性が優れた化粧料用粉体を得ることができる。処理温度が70℃以上であることによって、イソステアリン酸デキストリン及びグリセリン脂肪酸エステルが適切に配向し、化粧料用粉体に十分な親油性を付与できる。処理温度が150℃以下であることによって、イソステアリン酸デキストリン及びグリセリン脂肪酸エステルが一部揮発又は分解することを抑制でき、これにより、基粉体の表面を適切に被覆でき、化粧料用粉体に十分な親油性を付与できる。熱処理工程における処理時間は、3~9時間に設定されることが好ましい。処理時間が上記の範囲にあれば、基粉体の表面におけるイソステアリン酸デキストリン及びグリセリン脂肪酸エステルの配向の程度が適切なものとなる。処理時間が3時間以上であることによって、イソステアリン酸デキストリン及びグリセリン脂肪酸エステルが適切に配向し、化粧料用粉体に十分な親油性を付与できる。処理時間が9時間以下であることによって、イソステアリン酸デキストリン及びグリセリン脂肪酸エステルが一部揮発又は分解することを抑制でき、これにより、基粉体の表面を適切に被覆でき、化粧料用粉体に十分な親油性を付与できる。また、熱処理後には、粉砕処理を施すことが好ましい。熱処理後に粉砕を行う場合においては、ハンマーミル、ボールミル、サンドミル、ジェットミル等の通常の粉砕機を用いることができる。何れの粉砕機によっても同等の品質のものが得られるため、特に限定されるものではない。また、本熱処理工程において、上述したスラリーと基粉体との混合後の乾燥を行う場合には、上述した70℃以上での熱処理を行う前に、70℃未満の、有機溶媒を揮発させるのに十分な温度で熱処理(乾燥)を行えばよい。この場合、この乾燥が、本熱処理工程の一部として行われる。
【0052】
〔化粧料〕
本発明の化粧料は、上述した化粧料用粉体を配合したものである。化粧料用粉体の配合量は特に限定されないが、好ましくは0.1~95質量%である。化粧料に上述した化粧料用粉体を配合することによって、油剤への分散性、及び化粧崩れ防止性に優れ、しかも環境、動植物、人体等への影響に対する懸念に配慮した製品となる。
【0053】
さらに、本発明の化粧料には、通常化粧料に用いられる成分、例えば、基粉体以外の粉体、界面活性剤、油剤、ゲル化剤、高分子、美容成分、保湿剤、色素、防腐剤、香料等を本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。
【実施例0054】
<化粧料用粉体>
本発明の化粧料用粉体(実施例1~13)を作製し、撥水性としての水の接触角、感触特性、及び油剤への分散性を評価した。また、比較のため、本発明の範囲外となる化粧料用粉体(比較例1~5)を作製し、同様の評価を実施した。この他、実施例14~16、及び比較例6、7の化粧料用粉体を作製し、後述する各評価に供した。
【0055】
〔実施例1~5、比較例1~3〕
基粉体として酸化チタン(CR-50、石原産業株式会社製)を使用し、表1に示す配合量で、下記のように化粧料用粉体を製造した。
【0056】
〔実施例1〕
イソステアリン酸デキストリンとして、固形状であり、自然由来指数が1であるイソステアリン酸デキストリン(ユニフィルマHVY、千葉製粉株式会社製)を使用した。グリセリン脂肪酸エステルとして、比較的低粘度の液体状であり、自然由来指数が1であるトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル(O.D.O、日清オイリオ社製)を使用した。
【0057】
トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル1に対し、イソステアリン酸デキストリン3の質量割合で、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルにイソステアリン酸デキストリンを加え、ディスパーミキサーにて混合することにより、溶解させた。得られた原液5質量部をn-ヘキサン12.5質量部に加え、ヘンシェルミキサーにて混合することにより、表面処理液を調製した。次いで、ヘンシェルミキサーにて酸化チタン95質量部を攪拌しながら、攪拌下で表面処理液(合計17.5質量部)を滴下しながら混合してスラリーを得た後、得られたスラリーを乾燥してn-ヘキサンを除去し、110℃で6時間熱処理した。得られた熱処理物をパルベライザーで粉砕処理することにより、実施例1の化粧料用粉体を得た。実施例1の化粧料用粉体は、酸化チタンがイソステアリン酸デキストリン及びトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルで表面処理されており、化粧料用粉体におけるイソステアリン酸デキストリンの配合量が3.75質量%、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルの配合量が1.25質量%、これらの合計配合量(すなわち、表面処理剤の配合量)が5.00質量%であった。
【0058】
〔実施例2〕
トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル1に対し、イソステアリン酸デキストリン6の質量割合で、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルにイソステアリン酸デキストリンを加え、ディスパーミキサーにて混合することにより、溶解させた。得られた原液(5質量部)を用いたこと以外は上述した実施例1と同様とし、実施例2の化粧料用粉体を得た。実施例2の化粧料用粉体は、酸化チタンがイソステアリン酸デキストリン及びトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルで表面処理されており、化粧料用粉体におけるイソステアリン酸デキストリンの配合量が4.29質量%、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルの配合量が0.71質量%、これらの合計配合量(すなわち、表面処理剤の配合量)が5.00質量%であった。
【0059】
〔実施例3〕
トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル1に対し、イソステアリン酸デキストリン0.2の質量割合で、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルにイソステアリン酸デキストリンを加え、ディスパーミキサーにて混合することにより、溶解させた。得られた原液(5質量部)を用いたこと以外は上述した実施例1と同様とし、実施例3の化粧料用粉体を得た。実施例3の化粧料用粉体は、酸化チタンがイソステアリン酸デキストリン及びトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルで表面処理されており、イソステアリン酸デキストリンの配合量が0.83%、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルの配合量が4.17%、これらの合計配合量(すなわち、表面処理剤の配合量)が5.00質量%であった。
【0060】
〔実施例4〕
イソステアリン酸デキストリンとして、実施例1と同様に、イソステアリン酸デキストリン(ユニフィルマHVY、千葉製粉株式会社製)を使用した。グリセリン脂肪酸エステルとして、比較的低粘度の液体状であり、自然由来指数が1であるトリイソステアリン酸ポリグリセリル-2(コスモール43V、日清オイリオグループ株式会社製)を使用した。トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2 1に対し、イソステアリン酸デキストリン3の質量割合で、トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2にイソステアリン酸デキストリンを加え、ディスパーミキサーにて混合することにより、溶解させた。得られた原液(5質量部)を用いたこと以外は上述した実施例1と同様とし、実施例4の化粧料用粉体を得た。実施例4の化粧料用粉体は、酸化チタンがイソステアリン酸デキストリン及びトリイソステアリン酸ポリグリセリル-2で表面処理されており、化粧料用粉体におけるイソステアリン酸デキストリンの配合量が3.75質量%、トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2の配合量が1.25質量%、これらの合計配合量(すなわち、表面処理剤の配合量)が5.00質量%であった。
【0061】
〔実施例5〕
イソステアリン酸デキストリンとして、実施例1と同様に、イソステアリン酸デキストリン(ユニフィルマHVY、千葉製粉株式会社製)を使用した。グリセリン脂肪酸エステルとして、比較的低粘度の液体状であり、自然由来指数が1であるテトライソステアリン酸ポリグリセリル-2(コスモール44V、日清オイリオグループ株式会社製)を使用した。テトライソステアリン酸ポリグリセリル-2 1に対し、イソステアリン酸デキストリン3の質量割合で、テトライソステアリン酸ポリグリセリル-2にイソステアリン酸デキストリンを加え、ディスパーミキサーにて混合することにより、溶解させた。得られた原液(5質量部)を用いたこと以外は上述した実施例1と同様とし、実施例5の化粧料用粉体を得た。実施例5の化粧料用粉体は、酸化チタンがイソステアリン酸デキストリン及びテトライソステアリン酸ポリグリセリル-2で表面処理されており、化粧料用粉体におけるイソステアリン酸デキストリンの配合量が3.75質量%、テトライソステアリン酸ポリグリセリル-2の配合量が1.25質量%、これらの合計配合量(すなわち、表面処理剤の配合量)が5.00質量%であった。
【0062】
〔比較例1〕
イソステアリン酸デキストリン5質量部をn-ヘキサン12.5質量部に加え、ディスパーミキサーにて混合することにより、溶解させて、表面処理液を得た。得られた表面処理液(合計17.5質量部)を用いたこと以外は上述した実施例1と同様とし、比較例1の化粧料用粉体を得た。比較例1の化粧料用粉体は、酸化チタンがイソステアリン酸デキストリンで表面処理されており、化粧料用粉体におけるイソステアリン酸デキストリンの配合量が5.00質量%であった。
【0063】
〔比較例2〕
トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル5質量部をn-ヘキサン12.5質量部に加え、ディスパーミキサーにて混合することにより、溶解させて、表面処理液を得た。得られた表面処理液(合計17.5質量部)を用いたこと以外は上述した実施例1と同様とし、比較例2の化粧料用粉体を得た。比較例2の化粧料用粉体は、酸化チタンがイソステアリン酸デキストリンで表面処理されており、化粧料用粉体におけるトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルの配合量が5.00質量%であった。
【0064】
〔比較例3〕
自然由来指数が0である(すなわち、自然由来ではない)トリエチルヘキサノイン(T.I.O、日清オイリオ社製)1に対し、イソステアリン酸デキストリン3の質量割合で、トリエチルヘキサノインにイソステアリン酸デキストリンを加え、ディスパーミキサーにて混合することにより、溶解させた。得られた原液(5質量部)を用いたこと以外は上述した実施例1と同様とし、比較例3の化粧料用粉体を得た。比較例3の化粧料用粉体は、酸化チタンがイソステアリン酸デキストリン及びトリエチルヘキサノインで表面処理されており、化粧料用粉体におけるイソステアリン酸デキストリンの配合量が3.75質量%、トリエチルヘキサノインの配合量が1.25質量%、これらの合計配合量(すなわち、表面処理剤の配合量)が5.00質量%であった。
【0065】
【0066】
〔実施例6~11、比較例4、5〕
基粉体として非多孔質球状シリカ(SUNSPHARE NP-100、旭硝子株式会社製)、及び多孔質球状シリカ(SUNSPHARE H-121、旭硝子株式会社製)を使用し、表2に示す配合量で、下記のように化粧料用粉体を製造した。
【0067】
〔実施例6〕
上述した実施例1と同様に原液を調製し、得られた原液2質量部をn-ヘキサン25質量部に加え、ヘンシェルミキサーにて攪拌しながら混合することにより、表面処理液を調製した。ヘンシェルミキサーにて非多孔質球状シリカ98質量部を攪拌しながら、攪拌下で表面処理液(合計27質量部)を滴下しながら混合して、スラリーを得た。それ以外は上述した実施例1と同様とし、実施例6の化粧料用粉体を得た。実施例6の化粧料用粉体は、非多孔質球状シリカがイソステアリン酸デキストリン及びトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルで表面処理されており、化粧料用粉体におけるイソステアリン酸デキストリンの配合量が1.50質量%、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルの配合量が0.50質量%、これらの合計配合量(すなわち、表面処理剤の配合量)が2.00質量%であった。
【0068】
〔実施例7〕
トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル1に対し、イソステアリン酸デキストリン6の質量割合で、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルにイソステアリン酸デキストリンを加え、ディスパーミキサーにて混合することにより、溶解させた。得られた原液(2質量部)を用いたこと以外は上述した実施例6と同様とし、実施例7の化粧料用粉体を得た。実施例7の化粧料用粉体は、非多孔質球状シリカがイソステアリン酸デキストリン及びトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルで表面処理されており、化粧料用粉体におけるイソステアリン酸デキストリンの配合量が1.71質量%、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルの配合量が0.29質量%、これらの合計配合量(すなわち、表面処理剤の配合量)が2.00質量%であった。
【0069】
〔実施例8〕
トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル5に対し、イソステアリン酸デキストリン1の質量割合で、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルにイソステアリン酸デキストリンを加え、ディスパーミキサーにて混合することにより、溶解させた。得られた原液(2質量部)を用いたこと以外は上述した実施例6と同様とし、実施例8の化粧料用粉体を得た。実施例8の化粧料用粉体は、非多孔質球状シリカがイソステアリン酸デキストリン及びトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルで表面処理されており、イソステアリン酸デキストリンの配合量が0.33質量%、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルの配合量が1.67%、これらの合計配合量(すなわち、表面処理剤の配合量)が2.00質量%であった。
【0070】
〔実施例9〕
トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル1に対し、イソステアリン酸デキストリン3の質量割合で、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルにイソステアリン酸デキストリンを加え、ディスパーミキサーにて混合することにより、溶解させた。得られた原液25質量部をn-ヘキサン20質量部に加え、ヘンシェルミキサーにて攪拌しながら混合することより、表面処理液を調製した。次いで、ヘンシェルミキサーにて非多孔質球状シリカ75.00質量部を攪拌しながら、攪拌下で表面処理液(合計45質量部)を滴下することにより混合して、スラリーを得た。それ以外は上述した実施例6と同様とし、実施例9の化粧料用粉体を得た。実施例9の化粧料用粉体は、非多孔質球状シリカがイソステアリン酸デキストリン及びトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルで表面処理されており、化粧料用粉体におけるイソステアリン酸デキストリンが18.75質量%、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルが6.25質量%、これらの合計配合量(すなわち、表面処理剤の配合量)が25.00質量%であった。
【0071】
〔実施例10〕
トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル3に対し、イソステアリン酸デキストリン1の質量割合で、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルにイソステアリン酸デキストリンを加え、ディスパーミキサーにて混合することにより、溶解させた。得られた原液0.05質量部をn-ヘキサン20質量部に加え、ヘンシェルミキサーにて攪拌しながら混合することより、表面処理液を調製した。次いで、ヘンシェルミキサーにて非多孔質球状シリカ99.95質量部を攪拌しながら、攪拌下で表面処理液(合計20.05質量部)を滴下することにより混合して、スラリーを得た。それ以外は上述した実施例6と同様とし、実施例10の化粧料用粉体を得た。実施例10の化粧料用粉体は、非多孔質球状シリカがイソステアリン酸デキストリン及びトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルで表面処理されており、化粧料用粉体におけるイソステアリン酸デキストリンが0.0125質量%、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルが0.0375質量%、これらの合計配合量(すなわち、表面処理剤の配合量)が0.0500質量%であった。
【0072】
〔実施例11〕
化粧料用粉体として、多孔質球状シリカを用いた。上述した実施例1と同様に原液を調製し、得られた原液2質量部をn-ヘキサン100質量部に加え、ヘンシェルミキサーにて攪拌しながら混合することにより、表面処理液を調製した。ヘンシェルミキサーにて多孔質球状シリカ98質量部を攪拌しながら、攪拌下で表面処理液(合計102質量部)を滴下しながら混合して、スラリーを得た。それ以外は上述した実施例1と同様とし、実施例11の化粧料用粉体を得た。実施例11の化粧料用粉体は、多孔質球状シリカがイソステアリン酸デキストリン及びトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルで表面処理されており、化粧料用粉体におけるイソステアリン酸デキストリンの配合量が1.50質量%、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルの配合量が0.50質量%、これらの合計配合量(すなわち、表面処理剤の配合量)が2.00質量%であった。
【0073】
〔比較例4〕
イソステアリン酸デキストリン2質量部をn-ヘキサン25質量部に加え、ディスパーミキサーにて混合することにより、溶解させた。得られた表面処理液(合計27質量部)を用いたこと以外は上述した実施例6と同様とし、比較例4の化粧料用粉体を得た。比較例4の化粧料用粉体は、非多孔質球状シリカがイソステアリン酸デキストリンで表面処理されており、化粧料用粉体におけるイソステアリン酸デキストリンの配合量が2.00質量%であった。
【0074】
〔比較例5〕
トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル2質量部をn-ヘキサン25質量部に加え、ディスパーミキサーにて混合することにより、溶解させた。得られた表面処理液(合計27質量部)を用いたこと以外は上述した比較例4と同様とし、比較例5の化粧料用粉体を得た。比較例5の化粧料用粉体は、非多孔質球状シリカがトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル(すなわち、表面処理剤)で表面処理されており、化粧料用粉体におけるトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルの配合量が2.00質量%であった。
【0075】
【0076】
〔実施例12、13〕
基粉体としてマイカ(Y-2300、ヤマグチマイカ株式会社製)を使用し、表3に示す配合量で、下記のように化粧料用粉体を製造した。
【0077】
〔実施例12〕
トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル1に対し、イソステアリン酸デキストリン5の質量割合で、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルにイソステアリン酸デキストリンを加え、ディスパーミキサーにて混合することにより、溶解させた。得られた原液1質量部をn-ヘキサン20質量部に加え、ヘンシェルミキサーにて攪拌しながら混合することにより、表面処理液を調製した。次いで、ヘンシェルミキサーにてマイカ99質量部を攪拌しながら、攪拌下で表面処理液(21質量部)を滴下することにより混合して、スラリーを得た。それ以外は上述した実施例1と同様とし、実施例12の化粧料用粉体を得た。実施例12の化粧料用粉体は、マイカがイソステアリン酸デキストリン及びトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルで表面処理されており、化粧料用粉体におけるイソステアリン酸デキストリンが0.83質量%、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルが0.17質量%、これらの合計配合量(すなわち、表面処理剤の配合量)が1.00質量%であった。
【0078】
〔実施例13〕
熱処理条件を、110℃で6時間から、50℃で6時間に変更した以外は、実施例12と同様とし、実施例13の化粧料用粉体を得た。実施例13の化粧料用粉体は、マイカがイソステアリン酸デキストリン及びトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルで表面処理されており、化粧料用粉体におけるイソステアリン酸デキストリンの配合量が0.83質量%、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルが0.17質量%、これらの合計配合量(すなわち、表面処理剤の配合量)が1.00質量%であった。
【0079】
【0080】
〔実施例14~16、比較例6、7〕
基粉体として、黄色酸化鉄、赤色酸化鉄、及び黒色酸化鉄を質量比が7:2:1(黄色酸化鉄:赤色酸化鉄:黒色酸化鉄=7:2:1)となるように混合して得られた酸化鉄を使用し、下記のように化粧料用粉体を製造した。実施例14~16の化粧料用粉体は、後述するW/O型リキッドファンデーションに配合し、化粧料の評価にのみ用いた。
【0081】
〔実施例14〕
基粉体として、酸化鉄を用いた。それ以外は上述した実施例1と同様とし、実施例14の化粧料用粉体を得た。実施例14の化粧料用粉体は、酸化鉄がイソステアリン酸デキストリン及びトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルで表面処理されており、化粧料用粉体におけるイソステアリン酸デキストリンが3.75質量%、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルが1.25質量%、これらの合計配合量(すなわち、表面処理剤の配合量)が5.00質量%であった。
【0082】
〔実施例15〕
基粉体として、酸化鉄を用いた。それ以外は上述した実施例2と同様とし、実施例15の化粧料用粉体を得た。実施例15の化粧料用粉体は、酸化鉄がイソステアリン酸デキストリン及びトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルで表面処理されており、化粧料用粉体におけるイソステアリン酸デキストリンの配合量が4.29%、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルの配合量が0.71%、これらの合計配合量(すなわち、表面処理剤の配合量)が5.00質量%であった。
【0083】
〔実施例16〕
基粉体として、酸化鉄を用いた。それ以外は上述した実施例3と同様とし、実施例16の化粧料用粉体を得た。実施例16の化粧料用粉体は、酸化鉄がイソステアリン酸デキストリン及びトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルで表面処理されており、化粧料用粉体におけるイソステアリン酸デキストリンの配合量が0.83質量%、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルの配合量が4.17%、これらの合計配合量(すなわち、表面処理剤の配合量)が5.00質量%であった。
【0084】
〔比較例6〕
基粉体として、酸化鉄を用いた。それ以外は上述した比較例1と同様とし、比較例6の化粧料用粉体を得た。比較例6の化粧料用粉体は、酸化鉄がイソステアリン酸デキストリンで表面処理されており、化粧料用粉体におけるイソステアリン酸デキストリンの配合量が5.00質量%であった。
【0085】
〔比較例7〕
基粉体として、酸化鉄を用いた。それ以外は比較例2と同様とし、比較例7の化粧料用粉体を得た。比較例7の化粧料用粉体は、酸化鉄がトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルで表面処理されており、化粧料用粉体におけるトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリルの配合量が5.00質量%であった。
【0086】
上記のように製造した実施例1~16の化粧料用粉体は、自然由来指数が1であるイソステアリン酸デキストリン、及び自然由来指数が1であるグリセリン脂肪酸エステルによって表面処理されているため、環境、動植物、人体等への影響に対する懸念に配慮したものであることが明らかである。また、比較例1、2、4~7の化粧料用粉体も、自然由来指数が1であるイソステアリン酸デキストリン、又は自然由来指数が1であるグリセリン脂肪酸エステルによって表面処理されているため、環境、動植物、人体等への影響に対する懸念に配慮したものであることが明らかである。これに対し、比較例3の化粧料用粉体は、自然由来指数が1であるイソステアリン酸デキストリン、及び自然由来指数が0であるトリエチルヘキサノインによって表面処理されているため、実施例1~16、及び比較例1、2、4~7の化粧料用粉体よりも、環境、動植物、人体等への影響に対する懸念に配慮していないものであることが明らかである。
【0087】
上記のように製造した実施例1~16、及び比較例1~7の化粧料用粉体のうち、実施例1~13、及び比較例1~5の化粧料用粉体を用い、下記のように撥水性試験、感触特性試験、及び油剤分散性試験を行った。
【0088】
[撥水性試験]
化粧料用粉体の撥水性は、上述した通り、水に対する接触角で表される。接触角は、タブレット状に打錠した化粧料用粉体と、滴下した水滴とで形成される角度であり、その測定値は、撥水性の程度を示す。従って、化粧料用粉体の接触角が大きくなるほど、その撥水性は高くなる。そこで、撥水性試験として、実施例1~13、及び比較例1~5の化粧料用粉体の撥水性を、水に対する接触角で評価した。接触角は、以下のように測定した。まず、直径1cmのモールドに2gの化粧料用粉体を投入し、5MPaの圧縮力で打錠することによって、接触角測定用のタブレットを作製した。作製したタブレットを接触角測定装置(接触角計LSE-B100、ニック株式会社製)に設置し、シリンジを用いて水滴をタブレット上に滴下し、水滴とタブレットとの間に形成される接触角(°)を測定した。結果を表1~3に示す。
【0089】
[感触特性試験]
化粧料用粉体は、感触特性が良好なもの程、化粧料に好適に使用される。そこで、実施例1~10、12、13、及び比較例1~5の化粧料用粉体の感触特性について、専門パネラー10名による官能評価を行った。評価項目は、サラサラ感、しっとり感、ソフト感、及び肌への付着性の4項目とし、判定基準は、下記に示すように1点~5点の5段階とし、点数が大きい程、感触特性が良好であることを示す。結果を表1~3に示す。各項目に関する各パネラーの評価点の平均値を評価結果とし、表1~3に示す。参考として、化粧料用粉体の調製に用いた未処理の基粉体について、同様に評価した結果も表1~3に併せて示す。なお、実施例11の化粧料用粉体は、基粉体が多孔質球状シリカであり、物性が非多孔質球状シリカとは異なる。すなわち、そもそも未処理状態において、多孔質球状シリカ(基粉体)の感触は、非多孔質球状シリカ(基粉体)の感触とは異なる。それゆえ、基粉体が多孔質球状シリカである化粧料用粉体と、基粉体が非多孔質球状シリカである化粧料用粉体との間で感触特性を比較することにあまり意味がなく、よって、実施例11の化粧料用粉体については、本感触特性試験を行わなかった。
〔判定基準〕
1点:劣る
2点:やや劣る
3点:普通
4点:やや優れている
5点:優れている
【0090】
[油剤分散性試験]
化粧料用粉体の油剤への分散性が大きい程、油剤に化粧料用粉体を分散させた分散体の粘度は小さくなることが知られている。そこで、実施例1~10、12、13、及び比較例1~5の化粧料用粉体を油剤に分散させた分散体の粘度を、B型粘度計を用いて測定した。油剤として、炭素数が9~12のアルカンを用いた。分散体は、化粧料用粉体60gと油剤40gとを、ディスパーミキサーで1000rpm、10分間攪拌混合することにより調製したものを用いた。分散体の粘度を、B型粘度計(TVB-10H、東機産業株式会社製)で測定し、分散性を評価した。B型粘度計においては、一般的に、低粘度測定用のM1ローターから高粘度測定用のM4ローターまで4種類(低粘度側から順に、M1、M2、M3、及びM4)のローターが使用される。本油剤分散性試験では、相対的に低粘度の化粧料用粉体についてはM2ローターを使用し、室温(25℃)、60rpmで1分間での粘度を測定した。一方、M2ローターで粘度を測定できない化粧料用粉体については、より高粘度用のM3ローターを使用し、上記と同条件(室温、60rpm)で粘度を測定した。また、M3ローターで粘度を測定できない化粧料粉体については、より高粘度用であるM4ローターを使用し、上記と同条件(室温、60rpm)で粘度を測定した。評価基準は、下記に示すように1点~5点の5段階とし、点数が大きい程、粘度が小さく、分散性が良好であることを示す。結果を表1~3に示す。なお、実施例11の化粧料用粉体は、基粉体が多孔質球状シリカであり、吸油量等の物性が非多孔質球状シリカとは異なる。すなわち、多孔質球状シリカの方が、非多孔質球状シリカよりも吸油量が大きい(吸油性能が高い)。それゆえ、本油剤分散性試験の油剤量(40g)にて、基粉体が多孔質球状シリカである化粧料用粉体と、基粉体が非多孔質球状シリカである化粧料用粉体との間で分散性を比較することは適切ではなく、よって、実施例11の化粧料用粉体については、本油剤分散性試験を行わなかった。
〔判定基準〕
1点:粘度が10.0Pa・s以上
2点:粘度が4.0Pa・s以上10.0Pa・s未満
3点:粘度が1.0Pa・s以上4.0Pa・s未満
4点:粘度が0.1Pa・s以上1.0Pa・s未満
5点:粘度が0.1Pa・s未満
【0091】
表1に示すように、基粉体として酸化チタンを用いた場合、実施例1~5、及び比較例1~3の全ての化粧料用粉体において、撥水性は良好であったが、感触特性及び分散性は、撥水性とは異なる結果が得られた。
【0092】
具体的には、実施例1、4、5、及び比較例3の化粧料用粉体は、撥水性、感触特性、及び分散性の全てが良好であった。一般的に、合成された非自然由来の原料は、精製度が高く、機能的に優れていることが知られている。しかし、自然由来指数が1であるイソステアリン酸デキストリンと組み合わせる成分として、自然由来指数が1のグリセリン脂肪酸エステルであるトリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、トリイソステアリン酸ポリグリセリル-2、及びテトライソステアリン酸ポリグリセリル-2を用いた実施例1、4、5の化粧料用粉体は、自然由来指数が0であるトリエチルヘキサノインを用いた比較例3の化粧料用粉体と同等の評価が得られたため、機能的に合成された原料を使用した場合と遜色がない効果を発揮することが示された。
【0093】
グリセリン脂肪酸エステルを用いず、イソステアリン酸デキストリンのみを単体で用いた比較例1の化粧料用粉体は、分散性が優れるが、感触特性が不十分な結果となった。イソステアリン酸デキストリンを用いず、グリセリン脂肪酸エステルのみを単体で用いた比較例2の化粧料用粉体は、感触特性が優れるが、分散性が不十分な結果となった。
【0094】
実施例2の化粧料用粉体は、分散性が優れるが、感触特性が不十分であり、実施例3の化粧料用粉体は、感触特性が優れるが、分散性が不十分な結果となった。実施例1~5の化粧料用粉体の結果より、優れた分散性と感触特性とを有する化粧料用粉体を得るためには、表面処理剤における(a)イソステアリン酸デキストリンと(b)グリセリン脂肪酸エステルとの質量配合比(a/b)が、0.5~5の範囲内であることが好ましいことがわかった。
【0095】
表2に示すように、基粉体として球状シリカ(非多孔質球状シリカ又は多孔質球状シリカ)を用いた場合、実施例6、7、9、11、及び比較例4の化粧料用粉体は、撥水性が良好であったが、実施例8、10、及び比較例5の化粧料用粉体は、撥水性が不十分であった。なお、実施例10では、イソステアリン酸デキストリン及びグリセリン脂肪酸エステルの合計配合量が小さく、表面性状が未処理の球状シリカに近いため、水が染み込み、接触角を測定することができなかった。
【0096】
基粉体としての球状シリカに撥水性を付与することが難しいことは、良く知られている。それにもかかわらず、実施例6、及び実施例11の化粧料用粉体の結果から明らかなように、イソステアリン酸デキストリンとグリセリン脂肪酸エステルで表面処理することで、非多孔質球状シリカにも、多孔質球状シリカにも撥水性を付与することができることが示された。
【0097】
基粉体として球状シリカを用いた場合の感触特性、及び分散性については、上述した基粉体として酸化チタンを用いた場合と同じ傾向であった。実施例6の化粧料用粉体は、他の化粧料用粉体と比較して、サラサラ感、しっとり感、ソフト感、肌への付着性の全てが優れており、しかも分散性が良いという結果が得られた。一般的に、球状の粉体は、肌の上を転がることができるため、化粧料に伸び広がり性を付与することができると言われている一方、ずっと転がり続けると化粧膜がヨレたり不均一になり、結果的に化粧持ちを悪化させるおそれがあると考えられる。しかし、実施例6の化粧料用粉体においては、球状の粉体の伸び広がり性を示すサラサラ感は維持しつつ、肌への付着性を向上させ得ることが示された。実施例11については、上述したように、感触特性、及び分散性の評価は行わなかった。
【0098】
実施例6~8、10の化粧料用粉体の結果より、実施例6の化粧料用粉体は、実施例7、8、10の化粧料用粉体よりも各特性に優れるため、優れた撥水性と、感触特性と、分散性とを有する化粧料用粉体を得るためには、表面処理剤における(a)イソステアリン酸デキストリンと(b)グリセリン脂肪酸エステルとの質量配合比(a/b)が、0.5~5の範囲内であることが好ましいことがわかった。
【0099】
実施例6、9、10の化粧料用粉体の結果より、実施例6の化粧料用粉体は、実施例9、10の化粧料用粉体よりも各特性に優れるため、優れた撥水性と、感触特性と、分散性とを有する化粧料用粉体を得るためには、化粧料用粉体におけるイソステアリン酸デキストリンとグリセリン脂肪酸エステルとの合計配合量、すなわち、表面処理剤の配合量が、0.10~20質量%であることが好ましいことがわかった。
【0100】
表3に示すように、基粉体としてマイカを用いた場合、110℃で熱処理された実施例12の化粧料用粉体は、撥水性、感触特性、及び分散性が良好であった。一方、50℃で熱処理された実施例13の化粧料用粉体は、実施例12の化粧料用粉体と、表面処理剤の処方が同じであるにもかかわらず、撥水性が不十分であり、また、感触特性及び分散性が実施例12の化粧料用粉体よりも低下する結果が得られた。
【0101】
<化粧料>
〔実施例17~19〕
上述した実施例1~3、6~8、14~16の化粧料用粉体を用いて、下記の製法を用いて表4に示す処方で実施例17~19の化粧料(W/O型リキッドファンデーション)を製造した。なお、表4において、各成分の配合量の単位は質量%とする。
【0102】
(W/O型リキッドファンデーションの製法)
先ず、粉体成分である成分Bを混合し、これを、ミキサーを用いて均一になるまでよく撹拌した。次に、油性成分である成分Aを混合し、これを80℃に加温し、ディスパーミキサーを用いて均一になるまでよく撹拌混合した。このディスパーミキサーによる撹拌下の成分Aの混合物に、成分Bの混合物を徐々に添加しながら、よく攪拌混合し、温度を80℃に維持させた。一方、水性成分である成分Cを混合し、これを80℃に加温して均一に溶解させた後、最後に、80℃でのディスパーミキサーによる撹拌下において、成分A及びBの混合物中に、成分Cの混合物を徐々に添加することで乳化させた。この乳化物を室温まで冷却してW/O型リキッドファンデーションを得た。
【0103】
【0104】
[分散性]
製造直後の実施例17~19の各化粧料を規格瓶に入れ、製造1日後、及び50℃で1ヶ月静置後に、粘度及び色値を測定した。製造1日後の粘度に対する50℃1ヶ月後の粘度の変化率を算出すると共に、製造1日後の色に対する経時後の50℃1ヶ月後の色変化(色差:ΔE)を測定し、粘度の変化率、及び色変化を評価した。粘度は、B型粘度計(TVB-10H、東機産業株式会社製)を用いて測定した。粘度の変化率は、下記式(1)に示すように、製造1日後の粘度を基準とした50℃1ヶ月後の粘度の百分率として算出した。
粘度の変化率(%)={(50℃1ヶ月後の粘度)/(製造1日後の粘度)}×100 ・・・ (1)
色変化は、色差計(SE6000、日本電色株式会社製)を用い、調製1日後に色値を測定し、測定された色値を基準値として設定し、この基準値からの50℃1ヶ月後に測定した色の差(色差)ΔE値を測定した。測定結果を下記の判定基準で評価した。結果を表5に示す。
〔粘度判定基準〕
A:変化率が10%以下
B:変化率が10%超30%以下
C:変化率が30%超
〔色変化判定基準〕
A:ΔE値が1未満
B:ΔE値が1以上2未満
C:ΔE値が2以上
【0105】
[化粧崩れ防止性]
各化粧料の化粧崩れ防止性について、専門パネラー10名による官能評価を行った。評価項目は、化粧の伸び、密着感、及び化粧持ちの3項目とし、判定基準は、下記に示すように1点~5点の5段階とし、点数が大きい程、特性が良好であることを示す。化粧持ちは、塗布してから3時間後に判定した。各項目に関する各パネラーの評価点の平均値を評価結果とし、表5に示す。
〔化粧の伸び〕
1点:悪い
2点:やや悪い
3点:普通
4点:やや良い
5点:良い
〔密着感〕
1点:悪い
2点:やや悪い
3点:普通
4点:やや良い
5点:良い
〔化粧持ち(塗布から3時間後)〕
1点:化粧崩れがひどい
2点:化粧崩れしている
3点:やや化粧崩れしている
4点:ほとんど化粧崩れしていない
5点:全く化粧崩れしていない
【0106】
【0107】
表面処理剤における(a)イソステアリン酸デキストリンと(b)グリセリン脂肪酸エステルとの質量配合比(a/b)が0.5~5の範囲内であり、化粧料用粉体におけるイソステアリン酸デキストリン及びグリセリン脂肪酸エステルの合計配合量が0.10~20質量%である実施例1、6、14の化粧料用粉体を用いて製造された実施例17の化粧料は、粘度変化が小さく、色変化もほぼないため、分散性及び安定性に優れることが示された。実施例17の化粧料は、化粧崩れ防止性のうち、密着性が特に良く、この結果、化粧膜が綺麗に形成されるため、化粧持ち性も良好であると考えられた。
【0108】
上記質量配合比(a/b)が0.5~5の範囲外である実施例2、7、15の化粧料用粉体を用いて製造された実施例18の化粧料、及び上記質量配合比(a/b)が0.5~5の範囲外である実施例3、8、16の化粧料用粉体を用いて製造された実施例19の化粧料は、化粧伸び性において実施例17の化粧料とほぼ差がないが、分散性、安定性、化粧崩れ防止性においては不十分な結果となった。
【0109】
以上の結果、本発明の化粧料用粉体によれば、油への分散性、化粧の伸び、密着感、化粧持ち等の使用感が良好でありながらも、環境、動植物、人体等への影響に対する懸念に配慮した化粧料を実現し、提供し得ることが示された。
本発明の化粧料用粉体は、化粧料等に利用可能であり、特に、顔料を配合したファンデーション、アイシャドー、アイブロー、ほほ紅等のメイクアップ化粧料への利用に適する。