(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023070640
(43)【公開日】2023-05-19
(54)【発明の名称】流体から溶媒を分離するためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
B01D 61/46 20060101AFI20230512BHJP
B01D 61/44 20060101ALI20230512BHJP
B01D 61/54 20060101ALI20230512BHJP
B01D 61/00 20060101ALI20230512BHJP
C02F 1/469 20230101ALI20230512BHJP
【FI】
B01D61/46
B01D61/44 520
B01D61/54 500
B01D61/00 500
C02F1/469
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022162860
(22)【出願日】2022-10-11
(31)【優先権主張番号】17/522,076
(32)【優先日】2021-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】504407000
【氏名又は名称】パロ アルト リサーチ センター インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【弁理士】
【氏名又は名称】那須 威夫
(72)【発明者】
【氏名】ユージーン、エス.、ベー
(72)【発明者】
【氏名】マイケル、ベネディクト
【テーマコード(参考)】
4D006
4D061
【Fターム(参考)】
4D006GA14
4D006GA17
4D006HA42
4D006HA47
4D006JA56Z
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4D061EB01
4D061EB13
4D061EB17
4D061EB19
4D061ED12
4D061ED20
(57)【要約】 (修正有)
【課題】レドックスフロー電気化学的分離デバイスを使用して、流体から水などの溶媒を除去するためのシステム及び方法を提供する。
【解決手段】電気化学システムは、供給物流102を収容する第1のリザーバ106を有する。供給物流は、溶媒及び塩とは異なる溶質を含む。第2のリザーバ108は、供給物流よりも高い、高塩濃度を有するブライン流122を収容する。電極116、118が、レドックス活性電解質材料のループ154に接触して、可逆的レドックス反応を引き起こす。この反応によって、ループが第1のリザーバ内の塩から第1のイオンを受容し、第2のイオンを第2のリザーバ内のブライン流に送り込む。3つの交互型のイオン交換膜110、112、114が、第1及び第2のリザーバを画定する。濃縮物流144が第1のリザーバから排出され、濃縮物流は、第1の溶質濃度を超える第2の溶質濃度を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気化学システムであって、
供給物流を収容する第1のリザーバであって、前記供給物流が、溶媒と、前記供給物流中で第1の塩濃度を有する塩と、第1の溶質濃度で前記塩とは異なる溶質と、を含む、第1のリザーバと、
ブライン流を収容する第2のリザーバであって、前記ブライン流が、前記第1の塩濃度よりも高い第2の塩濃度を有する、第2のリザーバと、
第1のレドックス活性電解質材料の第1の溶液と接触し、前記第1のレドックス活性電解質材料との第1の可逆的レドックス反応を有し、第1のイオンを前記第1のリザーバ内の前記塩から受容するように構成された第1の電極と、
第2のレドックス活性電解質材料の第2の溶液と接触し、前記第2のレドックス活性電解質材料との第2の可逆的レドックス反応を有し、第2のイオンを前記第2のリザーバ内の前記ブライン流に送り込むように構成された第2の電極と、
電位を前記第1及び第2の電極に供給するように構成されたエネルギー供給源と、
前記第1のリザーバと前記第2のリザーバとの間に配置された第1のイオン交換型を有する第1の膜と、
前記第1の電極と前記第1のリザーバとの間に配置された、前記第1のイオン交換型とは異なる第2のイオン交換型を有する第2の膜と、
前記第2の電極と前記第2のリザーバとの間に配置された前記第2のイオン交換型を有する第3の膜と、
前記溶媒及び前記第2のリザーバから排出された第3の塩濃度を含む流出物流であって、前記溶媒が、電気浸透及び順浸透を介して前記第1のリザーバから除去される、流出物流と、
前記第1のリザーバから排出された濃縮物流であって、前記第1、第2、及び第3の塩濃度未満である第4の塩濃度、及び前記第1の溶質濃度を超える第2の溶質濃度を含む、濃縮物流と、を備える、電気化学システム。
【請求項2】
前記電気浸透が、塩イオンが前記溶媒の分子を前記第1及び第2の膜を通して前記第1のリザーバから引きずり出すことを伴う、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記順浸透が、前記第1のリザーバ内の前記供給物流よりも高い浸透圧を有する前記第2のリザーバ内の前記ブライン流に起因する、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記第4の塩濃度が、0.05重量%未満である、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記溶質が、糖を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記溶媒が、水である、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記第1の溶液及び前記第2の溶液が同じであり、電荷が前記電極に印加されると、前記第1及び第2の溶液が前記第1の電極と前記第2の電極との間で循環する、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記第1のリザーバ、前記第2のリザーバ、前記第1の型の膜、及び前記第2の型の膜が、セルを形成し、前記システムが、前記第1の電極と前記第2の電極との間にともに結合された複数のセルを備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記ブライン流の一部が、前記第1のリザーバに供給される、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記流出物流に結合され、前記ブライン流を再生し、前記溶媒を含む廃棄物流を生成するように構成された液体濃縮器を更に備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記液体濃縮器が、レドックスシャトルを利用する電気化学的液体再生器である、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記第1の膜及び前記第2の膜が、第1の電気浸透特性及び浸透輸送特性のセットを有し、前記第3の膜が、前記第1の特性のセットとは異なる第2の電気浸透特性及び浸透輸送特性のセットを有し、前記システムが、
前記第2の膜と、前記第1のイオン交換型並びに前記第2の電気浸透特性及び浸透輸送特性のセットを有する第4の膜とによって画定された第3のリザーバであって、前記ブライン流の第2の部分が、前記第3のリザーバに投入される、第3のリザーバと、
前記第4の膜と、前記第2のイオン交換型並びに前記第2の電気浸透特性及び浸透輸送特性のセットを有する第5の膜とによって画定された第4のリザーバであって、前記ブライン溶液の第3の部分が、前記第4のリザーバに投入される、第4のリザーバと、
前記溶媒及び前記第3のリザーバから排出された第5の塩濃度を含む第2の流出物流であって、前記溶媒が、前記第1及び第4のリザーバから電気浸透及び順浸透を介して前記第3のリザーバに移動する、第2の流出物流と、
前記第4のリザーバから排出された第6の塩濃度を含む溶媒流と、を更に備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記流出物流及び前記第2の流出物流が組み合わされ、前記第2、第3、及び第4のリザーバへ投入される前記ブライン流として再循環する、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記第1、第2、第3、及び第4のリザーバ、並びに前記第1、第2、第3、及び第4の膜が、再生セルを形成し、前記システムが、第1の再生セルの前記第4の膜と、前記第1の再生セルの前記第4のリザーバを画定する第2の再生セルの前記第3の膜とによってともに結合された複数の再生セルを備える、請求項12に記載のシステム。
【請求項15】
第1の塩濃度を含む供給物流を、電気化学セルの第1のイオン交換膜及び第2のイオン交換膜によって画定された第1のリザーバに投入することであって、前記第2のイオン交換膜が、前記第1のイオン交換膜とは異なる型の膜であり、前記供給物流が、第1の溶質濃度で前記塩とは異なる溶質を有する、投入することと、
前記第1の塩濃度よりも高い第2の塩濃度を含む第2の流体流を、前記電気化学セルの第2のリザーバに投入することであって、前記第2のリザーバが、前記第1のイオン交換膜及び第3のイオン交換膜によって画定され、前記第3のイオン交換膜及び前記第2のイオン交換膜が、同じ型のものである、投入することと、
外部電圧を前記電気化学セルの第1及び第2の電極に印加することと、
レドックス活性電解質材料を含む溶液を、前記第1の電極と前記第2の電極との間に循環させることであって、前記レドックス活性電解質材料が、前記第1の電極と接触すると還元し、前記第2の電極と接触すると酸化する、循環させることと、
前記レドックス活性電解質材料の還元及び酸化に応じて、前記第1、第2、及び第3のイオン交換膜を横切ってイオンを輸送して、電気浸透及び順浸透を介して前記第1のリザーバから溶媒及び塩を除去することと、
前記第2のリザーバから、前記第2の塩濃度とは異なる第3の塩濃度を含む流出物流を排出することと、
前記第1のリザーバから、前記第1及び第3の塩濃度未満である第4の塩濃度、並びに前記第1の溶質濃度を超える第2の溶質濃度を含む濃縮物流を排出することと、を含む、方法。
【請求項16】
前記第2の流体流の一部を、前記第1のリザーバに供給することを更に含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記電気浸透が、塩イオンが前記溶媒の分子を前記第1及び第2の膜を通して前記第1のリザーバから引きずり出すことを伴う、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記順浸透が、前記第1のリザーバ内の前記供給物流よりも高い浸透圧を有する前記第2のリザーバ内の前記第2の流体流に起因する、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記レドックス活性電解質材料を含む前記溶液が、前記第1及び第2のリザーバとは反対側にある前記第1のイオン交換膜と前記第3のイオン交換膜との側面間で循環する、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記溶質が、糖を含む、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、全般的には、レドックスフロー電気化学的分離デバイスを使用して、流体から水などの溶媒を除去するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一部の産業では、溶液から溶媒(例えば、水、アルコール)を除去するプロセスが利用される。例えば、食品及び飲料産業は、ジュースの濃縮、粉末飲料の形成、ホエイ処理などの、濃縮され出荷しやすい食品を形成するために水を除去したい場合がある。この例では、濃縮物流が生産者にとって価値を持つ。廃棄物処理プラントもまた、廃棄物流から浄水を抽出したい場合がある。この場合、処理業者にとって、溶媒自体が価値を持ち、濃縮物は価値を持たない。
【0003】
現在、溶媒の除去は、溶媒を蒸発させる方法(加熱)、高圧下で溶媒のみを濾過する方法(逆浸透)、膜を横切って溶媒をより高い浸透圧の誘導溶液に抽出する方法(順浸透)などの、様々な方法で行われ得る。熱エネルギーを使用すると、最終生成物に影響を与え得ることもあり(例えば、加熱は、食品の味を変化させ得る)、かなりの量のエネルギーも使用する。順浸透及び逆浸透は、必ずしも流れを加熱しないが、実行するのにより高価であり得る。
【発明の概要】
【0004】
本明細書に記載される実施形態は、電気透析装置に関する。一実施形態では、電気化学システムは、供給物流を収容する第1のリザーバを含む。供給物流は、溶媒と、供給物流中で第1の塩濃度を有する塩と、第1の溶質濃度で塩とは異なる溶質と、を含む。第2のリザーバは、ブライン流を収容し、ブライン流は、第1の塩濃度よりも高い第2の塩濃度を有する。第1の電極は、第1のレドックス活性電解質材料の第1の溶液と接触し、第1のレドックス活性電解質材料との第1の可逆的レドックス反応を有し、第1のリザーバ内の塩から第1のイオンを受容するように構成されている。第2の電極は、第2のレドックス活性電解質材料の第2の溶液と接触し、第2のレドックス活性電解質材料との第2の可逆的レドックス反応を有し、第2のリザーバ内のブライン流に第2のイオンを送り込むように構成されている。エネルギー供給源は、電位を第1及び第2の電極に供給するように構成されている。第1のイオン交換型を有する第1の膜が、第1のリザーバと第2のリザーバとの間に配置されている。第1のイオン交換型とは異なる第2のイオン交換型を有する第2の膜が、第1の電極と第1のリザーバとの間に配置されている。第2のイオン交換型を有する第3の膜が、第2の電極と第2のリザーバとの間に配置されている。溶媒及び第3の塩濃度を含む流出物流が、第2のリザーバから排出される。溶媒が、電気浸透及び順浸透を介して第1のリザーバから除去される。濃縮物流が、第1のリザーバから排出される。濃縮物流は、第1、第2、及び第3の塩濃度未満である第4の塩濃度、並びに第1の溶質濃度を超える第2の溶質濃度を有する。
【0005】
他の実施形態は、第1の塩濃度を含む供給物流を、電気化学セルの第1のイオン交換膜及び第2のイオン交換膜によって画定された第1のリザーバに投入することを伴う方法に関する。第2のイオン交換膜は、第1のイオン交換膜とは異なる型の膜である。供給物流は、第1の溶質濃度で塩とは異なる溶質を有する。本方法は、第1の塩濃度よりも高い第2の塩濃度を含む第2の流体流を、電気化学セルの第2のリザーバに投入することを更に伴う。第2のリザーバは、第1のイオン交換膜及び第3のイオン交換膜によって画定される。第3のイオン交換膜及び第2のイオン交換膜は、同じ型のものである。外部電圧が電気化学セルの第1及び第2の電極に印加される。レドックス活性電解質材料を有する溶液が、第1の電極と第2の電極との間で循環する。レドックス活性電解質材料は、第1の電極と接触すると還元し、第2の電極と接触すると酸化する。レドックス活性電解質材料の還元及び酸化に応じて、第1、第2、及び第3のイオン交換膜を横切ってイオンを輸送して、電気浸透及び順浸透を介して第1のリザーバから溶媒及び塩を除去する。流出物流は、第2のリザーバから排出され、第2の塩濃度とは異なる第3の塩濃度を有する。濃縮物流が、第1のリザーバから排出される。濃縮物流は、第1及び第3の塩濃度未満である第4の塩濃度、並びに第1の溶質濃度を超える第2の溶質濃度を含む。
【0006】
上記の概要は、開示される各実施形態又は本開示の全ての実施を説明することを意図したものではない。図面及び以下の詳細な説明は、例示的な実施形態をより具体的に例示する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
以下の考察は、以下の図を参照し、同じ参照番号は、複数の図において類似の構成要素/同じ構成要素を識別するために使用することができる。しかしながら、所与の図の構成要素を指す数字の使用は、同じ数字でラベル付けされた別の図における構成要素を制限することを意図していない。図面は、必ずしも縮尺どおりではない。
【
図1】例示的な実施形態による、レドックスフロー電気化学的溶媒除去スタック及びシステムの図である。
【
図2】別の例示的な実施形態による、レドックスフロー電気化学的溶媒除去スタック及びシステムの図である。
【
図3】例示的な実施形態による、複数の溶媒除去スタックの処理システムへの接続を示す図である。
【
図4】例示的な実施形態による、複数の溶媒除去スタックの処理システムへの接続を示す図である。
【
図5】特定の実施形態による方法のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
供給物流から溶質(例えば、塩)を電気化学的に除去することによって、順浸透と電気浸透との組み合わせを使用して、供給物流から水を除去するためのシステム及び方法が記載される。供給物流は、電気化学的塩除去システムへの導入の前に、供給物流中の既存の溶質と同じか、異なるか、又はそれらの何らかの組み合わせのうちのいずれかの溶質を任意選択的に濃縮することができる。
図1では、図は、様々な実施形態による流体及びイオンの動きを示す電気化学的液体再生器100を示す。電気化学デバイス150は、2つの電極116、118、少なくとも3つのイオン交換膜110、112、114、エネルギー供給部152、反応混合物、及び収容流体を含む。
【0009】
第1の電極116は、第1のレドックス活性電解質材料の第1の溶液と接触し、第1のレドックス活性電解質材料との第1の可逆的レドックス反応を有するように構成されている。第2の電極118は、第2のレドックス活性電解質材料の第2の溶液と接触し、第2のレドックス活性電解質材料との第2の可逆的レドックス反応を有するように構成されている。簡略化するために、第1及び第2のレドックス活性電解質材料は、レドックス活性電解質材料を含むレドックスシャトル溶液117として、
図1において示される。
【0010】
レドックスシャトル溶液の例としては、1、1’-ビス((3-トリメチルアンモニオ)プロピル)フェロセン([BTMAP-Fc]2+)及び1、1’-ビス((3-トリメチルアンモニオ)プロピル)フェロセニウム([BTMAP-Fc]3+)、若しくは1,1’-ビス((3-ジメチルエチルアンモニオ)プロピル)フェロセン([BDMEAP-Fc]2+)及び1,1’-ビス((3-ジメチルエチルアンモニオ)プロピル)フェロセニウム([BDMEAP-Fc]3+)(これらは、非毒性で非常に安定であり、非常に迅速な電気化学的速度論及び無視できる膜透過性を有する)、又はフェロシアン化物/フェリシアン化物([Fe(CN)6]4-/[Fe(CN)6]3-)が挙げられる。例えば、レドックスシャトル溶液の追加の詳細は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる、同一所有者の、2021年7月30日出願された米国特許出願第17/390,600号(代理人整理番号20210171US01/0600.382US01)に見出され得る。
【0011】
レドックスシャトル117は、ループ154によって示されるように、2つの電極116、118の間で循環する。電位がエネルギー供給部152によって各電極116、118に印加されると、レドックスシャトルは、第1の電極(例えば、116)で酸化され、反対の電極(例えば、118)で還元される。エネルギー供給部152は、バッテリ、光起電力パネル、ガルバニックセル、ポテンシオスタット、AC/DC電力コンバータなどの、任意の様々な直流(DC)エネルギー供給部であり得、極性は、全体的に同じに保たれ得るか、又は周期的に反転され得、エネルギー供給部は、電気化学デバイス150内に含有され得るか、又は外部にありデバイス150に結合され得る。したがって、シャトル117が電極間を循環することで、シャトル117の一部は、レドックス状態の間で連続的に交互になっている。特定の実施形態では、各電極116、118は、同じレドックスシャトル溶液117がループ内で流れる代わりに、別個のレドックス活性溶液に接触し得る。別個のレドックス活性溶液は、同じレドックス活性電解質材料又は異なるレドックス活性電解質材料を有し得る。異なるレドックス活性溶液がそれぞれの電極116、118に使用される場合、エネルギー供給部は、電極に供給される電位を周期的に逆転させて、レドックス活性電解質材料溶液の各々の電荷状態(すなわち、還元状態と比較して酸化状態にある、各溶液中のレドックス活性電解質材料の割合)を回復させ得る。
【0012】
電極116、118の間に位置付けられているのは、イオン交換の型で交互になっている3つ以上のイオン交換膜である。例えば、3つの膜の中で、
図1に示されるように、中央の膜110は、第2の膜112及び第3の膜114の陰イオン交換膜に挟まれた陽イオン交換膜であり得る。しかしながら、他の実施形態では、中央の第1の膜は、陰イオン交換膜であり得、第2及び第3の膜は、陽イオン交換膜であり得る。膜110、112、114は、電気化学デバイス150内にチャネル又はリザーバを画定する。見られ得るように、第1の膜110及び第2の膜112は、この例では、脱塩チャンバとして構成されている第1のリザーバ106を画定する。第1の膜110はまた、第3の膜114と組み合わせて、この例では、サリネート(又は濃縮物)チャネルとして構成されている第2のリザーバ108も画定する。膜110、112、114は、イオン選択性並びに水透過性であり、有機溶媒に不溶性であり、反応混合物及び/又は生成物において不活性である(例えば、化学的に変化しない)。特定の実施形態では、膜を通る順浸透水輸送の速度を最大化するために、膜は可能な限り薄い(例えば、10~50μm)。特定の実施形態では、膜は、膜自体に一体化されたポリマーメッシュで補強され、他の実施形態では、膜は補強されない。
【0013】
供給物流102は、電気化学デバイス150の第1のリザーバ106に投入される。供給物流102は、少なくとも溶媒(この例では水)及び第1の塩濃度(この例では約5重量%)を有する塩(この例ではNaCl、しかしNa2SO4、CaCl2、KCl、及び「塩」の化学的定義における任意の他のイオン塩も)を含む。供給物流102はまた、第1の溶質濃度での溶質も含み、溶質は、塩とは異なる。この例では、溶質は、約12%の濃度で糖であり、任意の型の糖又はそれらの組み合わせ(例えば、スクロース、フルクトース、デキストロースなど)であり得る。他の溶質としては、食品溶質又は粒子、廃棄物質、緩衝剤、アミノ酸、ブライン流122に使用される塩とは異なる塩、供給物流内の化学反応を促進するために使用される触媒、グリセロール、エチレングリコールなどが挙げられ得る。ブライン流122は、電気化学デバイス150の第2のリザーバ108に投入される。ブライン流は、第1の濃度よりも高い第2の塩濃度(約20%)を有する。濃縮ブラインの一部130は、供給物流102が電気化学デバイス150の第1のリザーバ106に入る際に、任意選択的に供給物流102と混合される。
【0014】
電位が電極116、118に印加されると、レドックスシャトル117は、1つの電極116で酸化され、他の電極118で還元され、それによって、塩イオン127を、第1のリザーバ106内の供給物流102から、第2のリザーバ108内のブライン流122に送り込む。特に、第1の電極116におけるレドックスシャトル117は、第1のリザーバ106内の塩から少なくとも1つのイオン134を受容する。第2の電極118におけるレドックスシャトル117は、少なくとも1つのイオン133を第2のリザーバ108内のブライン流122に送り込み、電荷は、イオン133、134に対する電化の反対の符号の少なくとも1つのイオン127を、第1のリザーバ106内の供給物流102から、中央の膜110を横切って、第2のリザーバ108内のブライン流122に送り込むことによって平衡化される。
【0015】
第1のリザーバ106から第2のリザーバ108に移動するイオン127はまた、電気浸透として既知の現象において、中央の膜110を横切って、それらと一緒に溶媒分子(例えば、水125)も引きずる。水125はまた、第2のリザーバ108内のブライン溶液122が供給物流102よりも高い浸透圧を有し、したがって、誘導溶液としても挙動するため、第1のリザーバ106を出て、順浸透を通って第2のリザーバ108に入る。結果として、水125及び第3の塩濃度を含む流出物流123は、第2のリザーバ108から排出される。この場合、流出物流123の濃度は、投入ブライン流122の濃度以下、例えば、前者が15~20%に対し、後者が20%であり得る。移送される塩と水との比に応じて、この流れは、濃度が希釈される場合、又は希釈されない場合があるが、より多くの体積(又は流出する流量)を有することになる。本明細書及び他の場所で使用される「流出物」という用語は、例示の目的で使用され、限定するものではないことに留意されたい。場合によっては、流出物として記載される流れは、再利用、保持、再処理などが行われ得、全体的な流体処理システムの一部としてそれら自体の何らかの価値を有し得る。他の場合には、流出物流は、廃棄生成物として廃棄され得る。
【0016】
第1のリザーバ106を通る供給物流102の処理によって、第1のリザーバ106を出る濃縮物流144がもたらされる。第1のリザーバからの濃縮物流144は、第1、第2、及び第3の塩濃度未満である第4の塩濃度(例えば、0.05%未満)を含む。濃縮物流144はまた、供給物流102よりも高い濃度の溶質、例えば、前者が70%で、後者が12%を有する。正味の結果は、供給物流102からブライン溶液122への水の輸送である。流出物流123は、本明細書では液体濃縮器とも称されるデバイス124によって示されるように、様々な可能な方法のうちの1つ以上を使用して、再生される(元の濃度及び体積に回復する)。流出物流123は、吸収された水を蒸発させることによってデバイス124で熱的に、逆浸透によって、又は電気透析、若しくはレドックスシャトルを使用した更に別の電気化学デバイスを使用して電気化学的に再生され得る。デバイス124の排出は、主に水又は供給物流102中の主溶媒を含む排出物流126である。
【0017】
流出物流123はまた、溶媒が供給物流から除去されると、同じ電気化学スタック(又は一連の同一スタック)においても再生され得る。
図2では、図は、別の例示的な実施形態によるブライン再生特徴を含むレドックス支援溶媒除去スタック200を示す。デバイス200は、
図1に示され、記載されるものと同様の、第1のリザーバ106、供給物流102、第2のリザーバ108、ブライン流122、第1の電極116、第2の電極118、レドックス活性電解質材料シャトル117、第1のリザーバ106、第2のリザーバ108、第1の膜110、第2の膜112、第3の膜114、流出物流123、及び濃縮物流144を含む。スタック200はまた、エネルギー供給部152などの明確にするために示されていない他の構成要素も含む。
【0018】
この例では、第1及び第2の膜110、112は、第1の電気浸透特性及び浸透輸送特性のセットを有する。第3の膜114は、第1の特性のセットとは異なる第2の電気浸透特性及び浸透輸送特性のセットを有する。システム200は、第2の膜112によって画定された第3のリザーバ202と、第1のイオン交換型(この例では、第1の膜110と同じ型、CEM)を有する第4の膜204と、を更に含む。第4の膜204はまた、第2の電気浸透特性及び浸透輸送特性のセットも有する。ブライン流122の第2の部分206は、第3のリザーバ202に投入される。
【0019】
第4のリザーバ208は、第4の膜204と、第2のイオン交換型(この例ではAEM)並びに第2の電気浸透特性及び浸透輸送特性のセットを有する第5の膜210とによって画定される。ブライン溶液122の第3の部分212は、第4のリザーバ208に投入される。溶媒及び第5の塩濃度を含む第2の流出物流214は、第3のリザーバ202から排出される。溶媒は、電気浸透及び順浸透を介して第1及び第4のリザーバ106、208から第3のリザーバ202に移動する。第6の塩濃度を有する溶媒流216は、第4のリザーバ208から排出される。
【0020】
スタック200は、供給物流102を境界とする一対の膜110、112の反対側に、一対の反対の型(陰イオン対陽イオン又は陽イオン対陰イオン)のイオン交換膜114、204を加えることによって、ブライン再生を可能にする。外側対のイオン交換膜114、204は、内部対のイオン交換膜110、112とは異なる第2の電気浸透特性及び浸透輸送特性のセットを有するように選択される。第5の膜210もまた、これらの第2の電気浸透特性及び浸透輸送特性を有し、第1の電極116でレドックスシャトル117との所望のイオン交換を得るために含まれる。供給物流102は、内部対のイオン交換膜110、112によって境界を定められるリザーバ/チャンバ106に流入し、ブライン溶液122は、残りのリザーバ/チャンバ108、202、208に流入する。膜は、低い電気浸透特性及び浸透輸送特性を有する2つの膜によって境界を定められるリザーバ/チャンバ208が、別の脱塩チャンバを形成するように配置される。このチャンバに入るブライン溶液212の一部は、それによって、最小限の水損失で脱塩されて、電気化学スタック200を出る溶媒流216(水流)を形成する。正味の結果は、希釈供給物流を受容し、2つの流れ、すなわち濃縮生成物流144、及び非常に低い塩含有量(例えば、両方とも0.05%未満)を有する水/溶媒流216を排出する単一のスタックである。
【0021】
上に記載される電気化学スタックは、処理のスケール及び/又は所望の溶媒除去量に応じて、様々な方法で組み合わされ得る。
図3では、図は、例示的な実施形態による並列スタック配置を示す。希釈供給物リザーバ300は、マニホールド302又は他の流体分配経路に結合され、2つ以上の電気化学スタック304、305に供給される。スタック304、305が
図1に示されるように構成されている場合、それらは各々、専用の塩再生デバイス(デバイス124を参照)を有し得るか、又は単一の(共通に接続された)塩再生デバイスを共有し得る。スタック304、305の濃縮物流306、307は、使用又は下流の処理のために濃縮物リザーバ308に送られるか、又は例えば廃棄物流として排出され得る。溶媒流310、311は排出されるが、使用又は下流の処理のためにリザーバ、保持タンクなどにも保持され得る。
図3に示されるシステムは、電気を含む他の入力を利用して、スタック304、305内の電気化学反応を駆動し得、当該技術分野で既知である流体ポンプ(図示せず)を駆動し得る。
【0022】
図3では、図は、例示的な実施形態による直列スタック配置を示す。希釈供給物リザーバ400は、供給物流402を、第2の電気化学スタック405に直列に接続された第1の電気化学スタック404に提供する。スタック404、405が
図1に示されるように構成されている場合、それらは各々、専用の塩再生デバイス(デバイス124を参照)を有し得るか、又は単一の塩再生デバイスを共有し得る。第1のスタック404の濃縮物流406は、供給物流として第2のスタック405に供給され、これは、濃縮物流406よりも高濃度の溶質を有するそれ自体の濃縮物流407を排出する。溶媒流410、411は排出されるが、下流の処理の使用のためにリザーバ、保持タンクなどにも保持され得る。スタック404、405が
図1に示されるように構成されている場合、それらは各々、専用の塩再生デバイス(デバイス124を参照)を有し得るか、又は単一の塩再生デバイスを共有し得る。
図4に示されるシステムは、電気を含む他の入力を利用して、スタック404、405内の電気化学反応を駆動し得、当該技術分野で既知である流体ポンプ(図示せず)を駆動し得る。
図3及び
図4に示される並列及び直列の配置が組み合わされ得ることに留意されたい。
【0023】
図5では、フローチャートは、例示的な実施形態による、供給蒸気から溶媒を分離するための方法を示す。本方法は、第1の塩濃度を有する供給物流を、電気化学セルの第1のイオン交換膜及び第2のイオン交換膜によって画定された第1のリザーバに投入することを伴う(500)。第2のイオン交換膜は、第1のイオン交換膜とは異なる型の膜である。第1の塩濃度よりも高い第2の塩濃度を有する第2の流体流は、電気化学セルの第2のリザーバへの投入である(501)。第2のリザーバは、第1のイオン交換膜及び第3のイオン交換膜によって画定される。第3のイオン交換膜及び第2のイオン交換膜は、同じ型のものである(例えば、AE又はCE)。
【0024】
外部電圧が電気化学セルの第1及び第2の電極に印加され(502)、レドックス活性電解質材料を有する溶液は、第1の電極と第2の電極との間で循環する(503)。レドックス活性電解質材料は、第1の電極と接触すると還元し、第2の電極と接触すると酸化する。レドックス活性電解質材料の還元及び酸化に応じて、イオンが第1、第2、及び第3のイオン交換膜を横切って輸送されて、第1のリザーバから溶媒及び塩を除去する。第2の塩濃度以下の第3の塩濃度を有する流出物流は、第2のリザーバから排出される(505)。第1及び第3の塩濃度未満である第4の塩濃度を有する濃縮物流は、第1のリザーバから排出される(506)。
【0025】
特段の指示がない限り、本明細書及び特許請求の範囲で使用される特徴サイズ、量及び物理的特性を表す全ての数は、全ての場合において、「約」という用語によって修飾されるものとして理解されるべきである。したがって、それと異なる指示がない限り、前述の明細書及び添付の特許請求の範囲に記載される数値パラメータは、本明細書に開示される教示を利用して当業者が得ようとする所望の特性に応じて変化し得る近似値である。端点による数値範囲の使用は、その範囲内の全ての数(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、及び5を含む)、並びにその範囲内の任意の範囲を含む。
【0026】
前述の説明は、例示及び説明の目的のために提示されている。これは、網羅的であること、又は実施形態を、開示される形態に厳密に限定することを意図するものではない。上記の教示に照らして、多くの修正及び変形が可能である。開示される実施形態の任意の又は全ての特徴は、個別に又は任意の組み合わせで適用することができ、限定することを意図するものではなく、単に例示的なものである。本発明の範囲は、この「発明を実施するための形態」に限定されるものではなく、むしろ本明細書に添付の「特許請求の範囲」によって決定されることが意図される。