(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023070665
(43)【公開日】2023-05-19
(54)【発明の名称】繊維機械用のドラフト装置
(51)【国際特許分類】
D01H 4/02 20060101AFI20230512BHJP
D01H 5/74 20060101ALI20230512BHJP
【FI】
D01H4/02
D01H5/74
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022178630
(22)【出願日】2022-11-08
(31)【優先権主張番号】CH070528/2021
(32)【優先日】2021-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(71)【出願人】
【識別番号】521553287
【氏名又は名称】ザウラー インテリジェント テクノロジー エイ・ジー
【氏名又は名称原語表記】Saurer Intelligent Technology AG
【住所又は居所原語表記】Textilstrasse 9, 9320 Arbon, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン グリースハマー
(72)【発明者】
【氏名】ルーデク マリーナ
【テーマコード(参考)】
4L056
【Fターム(参考)】
4L056AA01
4L056BA05
4L056BC04
4L056BC06
4L056BC23
4L056BC24
(57)【要約】 (修正有)
【課題】供給された紐状のスライバをドラフトするためのドラフト装置を提供する。
【解決手段】空気紡績機械用のドラフト装置1であって、スライバの走行方向Aに相前後して配置されたトップローラ3とボトムローラ4とを備え、トップローラを加圧するためのウェイティング装置を備え、ボトムローラは、ドラフト装置のハウジング2内に支持かつ保持されており、トップローラは、回動軸を中心として旋回可能なトップローラ支持体30によってドラフト装置のハウジング内に支持かつ保持され、ドラフト装置が、開放位置と閉鎖位置とにもたらすことができる旋回可能なウェイティングアーム20をさらに備え、このウェイティングアームが、各々のローラ対に対して、個別に調整可能なウェイティング装置40を有し、このウェイティング装置が、ウェイティングアームの閉鎖時に加圧位置で各々の旋回可能なトップローラ支持体を加圧することが特定されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
供給された紐状のスライバをドラフトするための、繊維機械、特に空気紡績機械用のドラフト装置(1)であって、
前記スライバの走行方向(A)に相前後して配置された、それぞれ1つのトップローラ(3)とボトムローラ(4)とを備えた複数のローラ対と、
前記複数のローラ対の前記トップローラ(3)を加圧するためのウェイティング装置と
を備え、
各々の前記ボトムローラ(4)は、前記ドラフト装置(1)のハウジング(2)内に支持かつ保持されており、
各々の前記トップローラ(3)は、回動軸を中心として旋回可能なトップローラ支持体(30)によって前記ドラフト装置(1)の前記ハウジング(2)内に支持かつ保持されている、
ドラフト装置(1)において、
前記ドラフト装置(1)は、開放位置と閉鎖位置とにもたらすことができる旋回可能なウェイティングアーム(20)をさらに備え、
前記ウェイティングアーム(20)は、各々のローラ対に対して、個別に調整可能なウェイティング装置(40)を有し、該ウェイティング装置(40)は、ウェイティングアーム(20)の閉鎖時に加圧位置で各々の前記旋回可能なトップローラ支持体(30)を加圧する
ことを特徴とする、ドラフト装置(1)。
【請求項2】
前記ボトムローラ(4)は、それぞれ前記ハウジング(2)内に取り付けられたボトムローラ支持体(2a)に支持されていることを特徴とする、請求項1記載のドラフト装置。
【請求項3】
前記ボトムローラ支持体(2a)は、前記スライバの前記走行方向(A)に沿って移動可能であり、所望の位置に固定可能であることを特徴とする、請求項2記載のドラフト装置。
【請求項4】
前記旋回可能なトップローラ支持体(30)は、該トップローラ支持体(30)の回動軸(31)を中心として旋回可能に前記ボトムローラ支持体(2a)に結合されていることを特徴とする、請求項2または3記載のドラフト装置。
【請求項5】
前記トップローラ支持体(30)の前記回動軸(31)は、前記スライバの走行方向(A)で前記ローラ対の下流側または上流側に配置されており、これによって、前記トップローラ支持体(30)が、走行方向(A)にあるいは前記走行方向(A)と逆方向に離反旋回可能であることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載のドラフト装置。
【請求項6】
前記トップローラ(3)のトップローラ軸(34)が、前記トップローラ支持体(30)に取り付けられたトップローラブラケット(32)内に両側で支持されていることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載のドラフト装置。
【請求項7】
前記トップローラ(3)のトップローラ軸(34)は、好ましくは手で解離可能であるトップローラ確保部材(33)によって前記トップローラブラケット(32)内に確保されていることを特徴とする、請求項6記載のドラフト装置。
【請求項8】
前記トップローラブラケット(32)は、前記スライバの前記走行方向(A)に沿って移動可能に前記トップローラ支持体(30)に取り付けられており、これによって、前記トップローラ(3)が、前記ボトムローラ(4)に対して相対的に所望の位置に到達可能であって、固定可能であることを特徴とする、請求項6または7記載のドラフト装置。
【請求項9】
前記ウェイティング装置(40)は、ウェイティング要素(41)、好ましくは、例えば空気圧シリンダ、空気ばね、コイルばね、板ばね、ダイヤフラムシリンダ、ダイヤフラム押圧要素およびベローズの群から選択された空気圧式のまたはばね荷重が加えられたウェイティング要素を有することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載のドラフト装置。
【請求項10】
前記ウェイティング装置(40)またはウェイティング要素(41)は、前記ウェイティングアーム(20)に対して前記スライバの前記走行方向(A)に沿ったそれぞれ異なる位置に可動であって、取付け可能であり、これによって、前記ウェイティング装置(40)による加圧の作用箇所が、前記トップローラ支持体(30)における所望の位置に到達可能であって、固定可能であることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載のドラフト装置。
【請求項11】
前記ウェイティング装置(40)は、凸面状のウェイティングヘッド(42)を有し、該ウェイティングヘッド(42)は、前記トップローラ支持体(30)に対して前記スライバの前記走行方向(A)に沿ったそれぞれ異なる位置に可動に取り付けられており、これによって、前記ウェイティング装置による加圧の作用箇所が、前記トップローラ支持体(30)に対して相対的な所望の位置に到達可能であって、固定可能であることを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載のドラフト装置。
【請求項12】
前記ウェイティングアーム(20)は、閉鎖位置において遊びなしにロック可能であることを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項記載のドラフト装置。
【請求項13】
前記ウェイティング装置(40)は、前記ウェイティングアーム(20)の前記閉鎖位置において加圧位置または除圧位置に到達可能であることを特徴とする、請求項1から12までのいずれか1項記載のドラフト装置。
【請求項14】
ドラフト装置の前記ウェイティング装置(40)は、それぞれ個々にまたはグループで前記加圧位置または前記除圧位置に到達可能であることを特徴とする、請求項11記載のドラフト装置。
【請求項15】
前記ウェイティング装置(40)による加圧の作用箇所は、前記トップローラ(3)の中間に対してトップローラ軸(34)に沿ってずらされていることを特徴とする、請求項1から14までのいずれか1項記載のドラフト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維機械、特に空気紡績機械用のドラフト装置であって、スライバの走行方向に相前後して配置された複数のローラ対と、これら複数のローラ対のトップローラに荷重を加える、つまり、トップローラを加圧するためのウェイティング装置とを備える、ドラフト装置に関する。
【0002】
技術背景
繊維機械用のドラフト装置は数年来知られている。ドラフト装置は、このドラフト装置に供給された紐状のスライバをドラフトするために使用される。その際、スライバの繊維が互いに引き離されて、より細かい束が形成される。ドラフト装置の基本原理は、それぞれ異なる周速度で回転する少なくとも2つの回転機械部材あるいはローラ対の間でのスライバの引伸しに基づいている。
【0003】
大部分の繊維材料が遅い方の第1のローラ対によって固持されつつ、繊維の一部が速い方のローラ対の間に達する。この速い方のローラ対は繊維を前方に搬送し、こうして、より細いスライバが形成される。2つのローラ対から成るドラフト装置の能力は限られている。したがって、複数のローラ対と、いわゆるエプロンとから成るドラフト装置が使用される。エプロンは、繊維案内と繊維に対する拘束力とを高める。このようなエプロンは、すでに20世紀の初めにFernando Casablancasによって説明された。
【0004】
スイス国特許発明第683698号明細書には、トップローラとボトムローラとを備えた少なくとも3つのローラ対を有する精紡機械用のドラフト装置が記載されている。ボトムローラは、少なくとも相並んで配置された2つのドラフト装置に対して1つの共通の駆動装置を備えて形成されている。ボトムローラは、両側で軸に取り付けられていて、両方のドラフト装置用のハウジング内に支持されている。トップローラは、ウェイティングアームにおいて、それぞれ回動可能な支持体内にばね弾性的に個々に支持されていて、ウェイティングアームに対して側方に配置されている。回動可能な支持体は、軸受ブシュによって、遊びなしにウェイティングアームに取り付けられたL字形の支持部材に支持されている。したがって、このような支持・ウェイティングアームは、この支持・ウェイティングアームの両側に配置された、2つのドラフト装置用のトップローラを備えている。このようなドラフト装置において問題となるのは、トップローラに対する不均一な加圧によって、軸線方向に向けられた力がスライバに加わってしまうことである。また、個々の紡績ユニットに対するローラ対の独立した調整も不可能となってしまう。さらに、トップローラの個々の離反旋回が不可能となってしまう。
【0005】
スイス国特許出願公開第712605号明細書およびスイス国特許出願公開第713498号明細書に基づき、供給された紐状のスライバをドラフトするためのドラフト装置の別の変化形態が公知である。この公知のドラフト装置は、スライバの搬送方向に相前後して配置された、ボトムローラとトップローラとを備えた少なくとも2つのドラフト装置モジュールを備えている。各々のドラフト装置モジュールは、トップローラとボトムローラとが支持された別体の支持体を有している。トップローラは、残りのドラフト装置モジュールのローラから独立して加圧位置と除圧位置との間で往復運動可能となるように、取付け部を介して支持されている。旋回ジョイントを介して片側でしか支持されていない支持アームへの全てのローラの支持と異なり、公知の変化形態では、トップローラが、それぞれ固有の支持・ウェイティングアームに支持されている。トップローラとボトムローラとの間の力接続は個別に調整可能である。しかしながら、トップローラの個々の完全な離反旋回は不可能である。更なる欠点は、ローラの加圧が片側で行われており、これによって、トップローラの軸とボトムローラの軸とが互いに平行に延在しなくなってしまうことにある。加圧に変化が生じると、この誤差を特定し、いずれにせよ補正しなければならない。
【0006】
欧州特許出願公開第1431433号明細書には、3つのローラ対を備えたドラフト装置が記載されている。同明細書では、トップローラがボトムローラから持上げ可能である。少なくとも1つのトップローラは、残りのトップローラから独立して持上げ可能である。このために、トップローラは2つの支持・ウェイティングアームに取り付けられている。トップローラは、それぞれトップローラブラケットの案内部内に保持されていて、ばね荷重を受けている。しかしながら、このような案内には摩擦が伴い、これによって、スライバにおける太い箇所、ローラの真円度またはこれに類するものに基づき、トップローラの持上げ後の戻りが過度にゆっくりと機能するかまたは好ましくない形でしか機能しなくなってしまう。さらに、トップローラに両側でそれぞれ1つのばねによって荷重が加えられ、これによって、精密かつ対称的な力調整がほとんど不可能となってしまう。
【0007】
また、トップローラが側方で2つのアームによって保持されるドラフト装置も公知である(独国特許出願公開第102019115905号明細書)。このような変化形態には、トップローラの加圧が両側で2つのウェイティング構造体を介して行われ、その際、加圧力の正確な調整が困難となるという欠点がある。なぜならば、両方のウェイティング構造体が正確に調整されなければならないからである。さらに、側方からの視認性および操作性が制限されていることがある。
【0008】
空気紡績機械用のドラフト装置は、別の紡績機械と比較して極めて高い運転速度を有しており、したがって、例えば紡績ユニットでの糸切れ時に個別に即座に停止させることができる必要性がある。したがって、ローラを個々に駆動し、必要に際して、停止させられたドラフト装置を個々に即座に開放することができると有利である。運転速度が高いため、例えば最大2/10mmの小さな誤差でのローラの正確な位置決めも有利である。ローラのこのような正確な位置決めは、公知のドラフト装置では不可能であるかまたはほとんど不可能であり、あるいは、せいぜい極めて多大な作業手間を伴って可能となる。
【0009】
発明の概要
本発明の課題は、空気紡績機械に課される要求も満たし、前述した問題も回避する、供給された紐状のスライバをドラフトするためのドラフト装置を提供することである。
【0010】
この課題は、請求項1の特徴を有する、繊維機械、特に空気紡績機械用のドラフト装置によって解決される。供給された紐状のスライバをドラフトするためのドラフト装置は、スライバの走行方向に相前後して配置された、それぞれ1つのトップローラとボトムローラとを備えた複数のローラ対と、これら複数のローラ対のトップローラを加圧するためのウェイティング装置とを備えている。ボトムローラは、ドラフト装置のハウジング内に支持かつ保持されている。トップローラは、回動軸を中心として旋回可能なトップローラ支持体によってドラフト装置のハウジング内に支持かつ保持されている。ドラフト装置は、開放位置と閉鎖位置とにもたらすことができる旋回可能なウェイティングアームをさらに備えている。このウェイティングアームは、各々のローラ対に対して、個別に調整可能なウェイティング装置を有しており、このウェイティング装置は、ウェイティングアームの閉鎖時に加圧位置で各々の旋回可能なトップローラ支持体を加圧する。
【0011】
このようなドラフト装置は、公知のドラフト装置に対して複数の利点を有している。
【0012】
トップローラは、ウェイティングアーム内に把持されているのではなく、旋回可能にドラフト装置ハウジング内に配置されている。相応して、ボトムローラとトップローラとの位置決めは、ウェイティング装置から切り離されており、つまり、ウェイティング装置の位置決めに左右されない。ウェイティングアームは、ローラ対の加圧にのみ用いられ、トップローラの位置決めおよび支持には用いられない。したがって、ボトムローラとトップローラとの位置を加圧に左右されずに簡単に調整することができる。これによって、ローラ相互の正確な位置決め時の誤差がより小さくなる。
【0013】
さらに、各々のトップローラは個々に加圧されており、トップローラの加圧は個別にかつ/または一緒に調整することができる。また、例えば紡績ユニットの停止時に部分的な除圧も可能であり、これによって、トップローラが静止状態の間に平らにならず、しかしながら、それにもかかわらず、繊維はローラ対によって保持されている。
【0014】
ドラフト装置は、全体として、糸継ぎまたはローラ交換およびエプロン交換のために極めて良好なアクセス性を有している。この場合には、所定の紡績ユニットが停止させられさえすればよく、隣り合った紡績ユニットは妨害されずに引き続き運転することができる。全体として、ドラフト装置は側方から良好に覗き込むことができる。ドラフト装置は、良好な視認性がそれぞれ同一の側から保証されているように構成されており、これによって、紡績機械の見回り検査時にドラフト装置を簡単かつ迅速に検査することができる。
【0015】
ドラフト装置のハウジングとは、ドラフト装置の個々の部材が直接的または間接的に支持されているかあるいは取り付けられている支持構造体を意味している。
【0016】
幾つかの実施形態では、ボトムローラは、それぞれハウジング内に取り付けられたボトムローラ支持体に支持されていてよい。通常、旋回可能なトップローラ支持体は、このトップローラ支持体の回動軸を中心として旋回可能にボトムローラ支持体に結合されていてよい。このようなボトムローラ支持体は、スライバの走行方向に沿って移動可能であり、所望の位置に固定可能であり、これによって、個々のボトムローラを所望の位置にもたらすことができる。ローラ用の位置決め補助手段として、既知のテンプレートが使用されてよい。
【0017】
幾つかの実施形態では、トップローラ支持体の回動軸は、スライバの走行方向でローラ対の下流側または上流側に配置されており、これによって、トップローラ支持体が、走行方向にあるいは走行方向と逆方向に離反旋回可能であってよい。したがって、ローラ対が互いに近くに配置されている場合でもトップローラが離反旋回可能なままであるように、ローラ対を位置決めすることができる。回動軸の位置およびトップローラ支持体の形状は、トップローラが離反旋回時に実質的に上向きでボトムローラから離れる方向に運動することができるように選択されてよい。ローラ支持体は、真っ直ぐな形状、屈曲させられた形状または湾曲させられた形状を有していてよい。通常、ローラ支持体は、ドラフト装置平面に対して平行に延在する、ウェイティング装置用の接触面を有している。
【0018】
幾つかの実施形態では、トップローラのトップローラ軸が、トップローラ支持体に取り付けられたトップローラブラケット内に両側で支持されていてよい。したがって、トップローラのトップローラ軸が両方の側で均一に加圧され、ローラ中間に対して非対称である力作用時でも、トップローラ軸の傾動が阻止される。
【0019】
トップローラのトップローラ軸は、トップローラ確保部材によってトップローラブラケット内、例えば、トップローラブラケットに設けられた相応の溝内に確保されていてよい。トップローラ確保部材は、好ましくは手で解離可能である。こうして、トップローラの工具なしの迅速な交換が可能となる。トップローラブラケットは、スライバの走行方向に沿って移動可能にトップローラ支持体に取り付けられており、これによって、トップローラが、ボトムローラに対して相対的に所望の位置に到達可能であって、固定可能であってよい。こうして、ボトムローラに対するトップローラの、いわゆる前吊り(Vorhang)または後吊り(Nachhang)を調整することが可能となる。ここでも、位置決め補助手段としてテンプレートが使用されてよい。
【0020】
幾つかの実施形態では、ウェイティング装置は、ウェイティング要素、好ましくは、例えば空気圧シリンダ、空気ばね、コイルばね、板ばね、ダイヤフラムシリンダ、ダイヤフラム押圧要素およびベローズの群から選択された空気圧式のまたはばね荷重が加えられたウェイティング要素を有してよい。ウェイティング要素は、それぞれ、ただ1つのローラ対に作用してもよいし、同時に複数のローラ対に作用してもよい。
【0021】
幾つかの実施形態では、ウェイティング装置またはウェイティング要素は、ウェイティングアームに対してスライバの走行方向に沿ったそれぞれ異なる位置に可動であって、取付け可能であり、これによって、ウェイティング装置による加圧の作用箇所が、トップローラ支持体の所望の位置に到達可能であって、固定可能であってよい。こうして、加圧作用を最適化することができる。位置に応じて、トップローラ支持体のてこは増減される。各々のウェイティング装置において、トップローラへの力作用は個別に調整可能であってよい。
【0022】
幾つかの実施形態では、ウェイティング装置は、凸面状のウェイティングヘッドを有し、このウェイティングヘッドは、トップローラ支持体に対してスライバの走行方向に沿ったそれぞれ異なる位置に可動であって、取付け可能であり、これによって、ウェイティング装置による加圧の作用箇所が、トップローラ支持体に対して相対的な所望の位置に到達可能であって、固定可能であってよい。凸面状のウェイティングヘッドは、半球形、ドーム状またはきのこ状に形成されていてよい。
【0023】
幾つかの実施形態では、ウェイティングアームは、閉鎖位置において遊びなしにロック可能であってよい。このために、ウェイティングアームのハウジングには、好適には不動のストッパが存在している。
【0024】
幾つかの実施形態では、ウェイティング装置は、ウェイティングアームの閉鎖位置において加圧位置または除圧位置に到達可能であってよい。ドラフト装置のウェイティング装置は、それぞれ個々にまたはグループに加圧位置または除圧位置に到達可能であってよい。
【0025】
幾つかの実施形態では、ウェイティング装置による加圧の作用箇所は、トップローラの中間に対してトップローラ軸に沿ってずらされていてよい。言い換えると、ウェイティング装置の作用箇所は、全てのローラ対において、トップローラの中間に対して非対称にかつトップローラ軸に沿って同一の側に向かってずらされて配置されていてよく、これによって、一方の側からのドラフト装置の視認性および操作性が向上させられている。これによって、それぞれ同一の側からの視認性が向上させられ、紡績機械の見回り検査時にドラフト装置の検査がより簡単かつ迅速になる。
【0026】
記載したドラフト装置では、1つには、ウェイティング要素の力を制御することができ、もう1つには、トップローラ支持体へのウェイティング装置の作用箇所をそれぞれ所望の位置にもたらすことができることによって、ウェイティング装置を介してローラ対の押付け力を個別に調整することができる。
【0027】
さらに、すでに先行技術において公知であるように、1つ以上のトップローラおよび/またはボトムローラにエプロンが巻き掛けられていてよい。各々のエプロンは、相応のローラまたは対応ローラを介した案内に対して付加的に1つ以上の付加的な案内要素によって案内されていてよい。
【0028】
さらに、ボトムローラは、ドラフト装置内に片持ち式にまたは両側で支持されていてよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
以下に、本発明を図面に関連した実施例に基づき詳しく説明する。
【
図2】
図1に示したドラフト装置の一部を示す図である。
【
図3】ウェイティング装置を含むトップローラ懸架機構の断面図である。
【
図4】可動のウェイティングヘッドを備えたウェイティング装置を有するドラフト装置の一部を示す図である。
【
図5(a)】可動のウェイティングヘッドを備えたウェイティング装置を示す図である。
【
図7】複数のローラ対用のウェイティング要素を備えたウェイティング装置を示す図である。
【0030】
発明を実施するための形態
図1には、繊維機械用のドラフト装置の実施形態の概略的な側面図が示してある。ドラフト装置1は複数のローラ対を有していて、特に空気紡績機械に適している。この空気紡績機械では、高い紡績速度に基づき、ローラ対を正確に位置決めしかつ加圧することが不可欠である。
図2には、1つのローラ対を含む
図1の一部が示してある。
【0031】
ドラフト装置1は、スライバの走行方向Aに相前後して配置された、それぞれ1つのトップローラ3とボトムローラ4とを備えた複数のローラ対を備えている。さらに、ドラフト装置は、先行技術に基づき公知のエプロン(図示せず)を有していてよい。ボトムローラ4は、それぞれ公知の形式でドラフト装置ハウジング2内の支持台またはボトムローラ支持体2aに支持されていてよい。通常、ボトムローラ4の位置決めは、走行方向Aに対して相対的に調整可能かつ固定可能である。
【0032】
各々のトップローラ3は、それぞれ回動軸31を中心として旋回可能なトップローラ支持体30に取り付けられている。回動軸31は、ローラの回動軸に対して平行に延在している。旋回可能なトップローラ支持体30は、ボトムローラ4の支持台もしくはボトムローラ支持体2aまたはドラフト装置ハウジングに結合されている。トップローラ3を支持するために、トップローラ支持体30は、このトップローラ支持体30に結合されたトップローラブラケット32を有していてよい。この結合部は、トップローラブラケット32がトップローラ支持体30に対して相対的にドラフト装置の走行方向Aに可動であり、所望の位置に固定可能であるように形成されている。これによって、ボトムローラ4に対するトップローラ3の正確な位置決めが可能となる。特に、こうして、ボトムローラ4に対するトップローラ3の前吊りまたは後吊りを調整することができる。移動性は、
図2および
図4に矢印Cによって示してある。
【0033】
トップローラブラケット32は、トップローラ軸34を両側で加圧し、これによって、両方のローラの均一な押付け力が達成される。
【0034】
トップローラ支持体30の回動軸31は、図面に示した位置よりもさらに下方でトップローラ3の回動軸の近くに配置されていてもよい。この場合には、図示の真っ直ぐなトップローラ支持体30の代わりに、屈曲または湾曲させられたトップローラ支持体が使用されてもよい。
【0035】
特にトップローラ支持体30の離反旋回時にトップローラ3をトップローラブラケット32の支持部に保持するために、図示の実施形態では、トップローラ軸34に作用する、例えば板ばねの形態のトップローラ確保部材33が設けられている。このトップローラ確保部材33は手で簡単に解離することができ、これによって、トップローラ軸34をトップローラ3と共にトップローラブラケット32における支持部から容易に取り外すことができる。トップローラ確保部材33の別の構成も可能である。
【0036】
トップローラ3の上方には、回動軸21を介して旋回可能にドラフト装置ハウジング2に結合されたウェイティングアーム20が配置されている。回動軸21も同じくローラの回動軸に対して平行に延在している。ウェイティングアーム20は、開放位置と閉鎖位置との間で往復運動させられてよい。閉鎖位置では、ウェイティングアーム20は、好適には不動のストッパ24に接して位置していて、この位置でロック機構23によって位置固定することができるため、ウェイティングアームは、閉鎖位置では、遊びなしの正確に規定された位置をとっている。
【0037】
ウェイティングアーム20には、各々のローラ対に対して、それぞれ1つのウェイティング装置40が配置されている。このウェイティング装置40は、それぞれトップローラ3を加圧するために働く。このために、ウェイティング装置40は、ウェイティング要素41と凸面状のウェイティングヘッド42とを有している。ウェイティング要素は、空気圧式のまたはばね荷重が加えられたウェイティング要素(例えば、空気圧シリンダ、空気ばね、コイルばね、板ばね、ダイヤフラムシリンダ、ダイヤフラム押圧要素またはベローズ)として形成されていてよい。ウェイティングヘッド42は、トップローラ支持体30に対するウェイティング装置40による加圧の作用箇所を正確に位置決めすることができる。この作用箇所の移動によって、加圧を微調整することができる。
【0038】
図示の実施形態では、ウェイティング装置40またはウェイティング要素41が、ウェイティングアーム20に可動であると共に固定可能に保持されており、これによって、ウェイティング装置40が、トップローラ支持体30に対して相対的にドラフト装置の走行方向Aで所望の位置に固定可能となる。この移動性によって、ウェイティング要素41の作用箇所をトップローラ支持体30あるいはトップローラ3に対して相対的に調整し、これによって、トップローラ支持体30のてこ作用を介して、ボトムローラ4へのトップローラ3の押付け圧の微調整を達成することができる。移動性は、
図2に矢印Bによって示してある。
【0039】
図3には、ウェイティング装置40を含む前述したトップローラ懸架機構の断面図が示してある。トップローラブラケット32には、トップローラ3のトップローラ軸34が支持されている。トップローラブラケット32は、移動可能であると共に固定可能にトップローラ支持体30に取り付けられている。図示の実施形態では、トップローラブラケット32の突出部が、トップローラ支持体30に設けられたガイド部にガイドされている。トップローラブラケット32はねじによって固定されてよい。同じようにして、ウェイティング装置40もウェイティングアーム20に結合されていてよい。
【0040】
ウェイティング装置40による加圧の作用箇所は、全てのローラ対において、トップローラ3の中間に対して非対称にかつトップローラ軸34に沿って同一の側にずらされて配置されており、これによって、一方の側からのドラフト装置の視認性および操作性が向上させられている。
【0041】
図4には、ウェイティング装置の別の実施形態によるドラフト装置の一部が示してある。
図2のウェイティング装置と異なり、凸面状のウェイティングヘッド42が、ドラフト装置の走行方向Aに沿ったそれぞれ異なる位置でトップローラ支持体30に取付け可能であり、ウェイティング要素41に凸面状の側で接触している。ウェイティングヘッド42の移動(矢印D)によって、前述した微調整を達成することができる。この実施形態は、ボトムローラ支持体2aの移動に際して、ウェイティング装置40による加圧の作用箇所が、トップローラ支持体30に対して相対的に移動させられず、万が一の再度の微調整が不要になるという利点を有している。
【0042】
図5(a)には、ウェイティング要素41としてのダイヤフラムシリンダを備えたウェイティング装置の実施形態が示してある。さらに、トップローラ支持体30にそれぞれ異なる位置で取付け可能な凸面状のウェイティングヘッド42が示してある。
図5(b)には、
図5(a)のより大きな詳細図が示してある。
【0043】
この変化形態では、ウェイティングヘッド42が、凸面状の側と反対側の下面に、トップローラ支持体30に設けられた二重孔35内に差込み可能である2つのピン43を有している。ウェイティングヘッド42をそれぞれ異なる箇所に位置決めするために、トップローラ支持体30は、均等な間隔を置いて配置された複数の二重孔35を有している(差替え(Spruenge))。ウェイティングヘッドの下面の平面図が
図6に示してある。
【0044】
ピン43は、二重孔35の間隔の1/4だけウェイティングヘッド42の軸線からずらされて設けられている。ウェイティングヘッド42を180°だけ回動させて互い違いに二重孔35に差し込むことによって、差替えの数を二重孔35の数の2倍にすることができる。ウェイティングヘッド42の向きを光学的に検査するために、ウェイティングヘッド42の台座に斜面が形成されていてよい。
【0045】
ウェイティングヘッド42の凸面状の側は、球形、ドーム状またはきのこ状に形成されており、これによって、ダイヤフラムシリンダのダイヤフラムが、硬質の面なしで全く十分となる。ウェイティングヘッドの下部構造体あるいはボトムローラ支持体2aは、ダイヤフラムシリンダを一緒に運動させる必要なしに、僅かに運動させられてよい。
【0046】
ピンは、方形または楕円形に形成されていてもよく、これによって、ただ1つのピンでも、ウェイティングヘッド42の自動的な回動が阻止されている。
【0047】
より高い加圧を達成するために、ダイヤフラムシリンダは楕円形または長円形に形成されていてよい。
【0048】
図7には、
図5と異なり、複数のローラ対にわたって延在するウェイティング要素41としてのダイヤフラム要素を備えたウェイティング装置40の実施形態が示してある。ダイヤフラム要素は、ホース状またはソーセージ状に形成されていてよく、複数のローラ対のウェイティングヘッド42に作用する。この場合、力作用は、トップローラ支持体30に対して相対的なウェイティングヘッド42の位置決めを介して個別に調整されてよい。
【符号の説明】
【0049】
1 ドラフト装置
2 ドラフト装置のハウジング(支持構造体)
2a ボトムローラ支持体
3 トップローラ
4 ボトムローラ
20 ウェイティングアーム
21 ウェイティングアームの回動軸
23 ウェイティングアームのロック機構
24 ストッパ
30 トップローラ支持体
31 トップローラ支持体の回動軸
32 トップローラブラケット
33 トップローラ確保部材
34 トップローラ軸
35 二重孔
40 ウェイティング装置
41 ウェイティング要素
42 凸面状のウェイティングヘッド
43 ピン
A 繊維走行方向
B ウェイティング要素の可動性
C トップローラブラケットの可動性
D ウェイティングヘッドの可動性
【外国語明細書】