(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023070666
(43)【公開日】2023-05-19
(54)【発明の名称】レンズシステムをアライメントするための方法及びレンズシステムをアライメントするための装置
(51)【国際特許分類】
G02B 7/00 20210101AFI20230512BHJP
G02B 7/02 20210101ALI20230512BHJP
G02B 27/62 20060101ALI20230512BHJP
G06N 20/00 20190101ALI20230512BHJP
【FI】
G02B7/00 A
G02B7/02 C
G02B7/00 B
G02B27/62
G06N20/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022178650
(22)【出願日】2022-11-08
(31)【優先権主張番号】10 2021 212 601.4
(32)【優先日】2021-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ベンノ ガイセルマン
(72)【発明者】
【氏名】トビアス ヴィンディッシュ
(72)【発明者】
【氏名】シュテフェン レーヴェンドルフ
【テーマコード(参考)】
2H043
2H044
【Fターム(参考)】
2H043AA01
2H043AA15
2H043AA23
2H043AA27
2H043AB01
2H043AB08
2H044AC01
(57)【要約】
【課題】レンズシステム(L)のアライメント(A)を決定するための方法(100)に関する。
【解決手段】この方法は、a.提供された第1のアライメントに従ってレンズシステム(L)をアライメントする(101)ステップと、b.第1のアライメントに従ってアライメントされたレンズシステム(L)における、第1の送出された光信号(E)の屈折によって、第1の屈折光信号(G)を決定する(102)ステップと、c.第1の屈折光信号(G)の特性を表す第1の特性値を決定する(103)ステップと、d.第1のアライメントと決定された第1の特性値とに関連して第1の機械学習システムをトレーニングする(104)ステップであって、機械学習システムは、アライメントのために、アライメントの特性を表すアウトプットを決定するように構成されている、ステップと、e.第1の機械学習システムのアウトプットに基づいてレンズシステム(L)のアライメント(A)を決定するステップと、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズシステム(L)のアライメント(A)を決定するための方法(100)であって、
a.提供された第1のアライメントに従って前記レンズシステム(L)をアライメントする(101)ステップと、
b.前記第1のアライメントに従ってアライメントされた前記レンズシステム(L)における、第1の送出された光信号(E)の屈折によって、第1の屈折光信号(G)を決定する(102)ステップと、
c.前記第1の屈折光信号(G)の特性を表す第1の特性値を決定する(103)ステップと、
d.前記第1のアライメントと決定された前記第1の特性値とに関連して第1の機械学習システムをトレーニングする(104)ステップであって、前記機械学習システムは、アライメントのために、前記アライメントの特性を表すアウトプットを決定するように構成されている、ステップと、
e.前記第1の機械学習システムのアウトプットに基づいて前記レンズシステム(L)の前記アライメント(A)を決定するステップと、
を含む方法(100)。
【請求項2】
前記第1の機械学習システムを、前記方法(100)に前置されるステップにおいて事前トレーニングする、
請求項1に記載の方法(100)。
【請求項3】
前記第1の機械学習システムの前記アウトプットに基づいて前記レンズシステム(L)の前記アライメント(A)を決定する前記ステップは、
f.第2のアライメントに対して決定された、前記第1の機械学習システムのアウトプットが事前に設定可能な値範囲内に位置するように前記第2のアライメントを決定する(105)ステップと、
g.前記第2のアライメントに従ってアライメントされた前記レンズシステム(L)における、第2の送出された光信号(E)の屈折によって、第2の屈折光信号(G)を決定する(106)ステップと、
h.前記第2の屈折光信号(G)の特性を表す第2の特性値を決定する(107)ステップと、
i.前記第2のアライメントに対する前記第2の特性値が、前記第2の特性値に対する事前に設定可能な値範囲内に位置していない場合に、前記ステップd.と前記ステップf.と前記ステップg.と前記ステップh.とを繰り返し、ここでは、前記第2のアライメントを、前記第1の機械学習システムのトレーニングのための付加的な第1のアライメントとして使用し、
前記第2のアライメントに対する前記第2の特性値が、前記第2の特性値に対する事前に設定可能な値範囲内に位置している場合に、前記第2のアライメントを前記レンズシステム(L)のアライメント(A)として提供するステップと、
を含む、
請求項1又は2に記載の方法(100)。
【請求項4】
前記第2のアライメントを最適化に基づいて決定し、
前記最適化の制約条件は、前記事前に設定可能な値範囲の少なくとも1つの境界の遵守を表す、
請求項3に記載の方法(100)。
【請求項5】
前記第1の機械学習システムは、多項式モデルを含み、前記多項式モデルは、アライメントのために、前記特性を表すアウトプットを決定するように構成されている、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項6】
前記第1のアライメントを、ベイズ最適化(英語でBayesian Optimization)方法に基づいて提供する、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項7】
前記第1のアライメントを第2の機械学習システムに基づいて決定し、
前記第2の機械学習システムは、アライメントに基づいて、前記アライメントの変更を特定するように構成されている、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項8】
前記第2の機械学習システムを、強化学習(英語でReinforcement Learning)方法によってトレーニングする、
請求項7に記載の方法(100)。
【請求項9】
前記レンズシステム(L)は、光学センサの一部である、
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の方法(100)。
【請求項10】
レンズシステム(L)をアライメントするための装置(200)であって、
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の方法を実施するように構成されている装置(200)。
【請求項11】
プロセッサ(45)によって実行されるときに、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の方法を実施するために構成されているコンピュータプログラム。
【請求項12】
請求項11に記載のコンピュータプログラムが記憶されている機械可読記憶媒体(46)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズシステムのアライメントを決定するための方法、レンズシステムをアライメントするための装置、コンピュータプログラム及び機械可読記憶媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の利点
光学センサ、望遠鏡又は顕微鏡などの光学システムの製造時に、レンズシステム、たとえば1つのレンズ又は複数のレンズが光学システムの対物レンズにおいて適当にアライメントされるべきであることが繰り返し問題とされる。たとえば、レンズシステムが、自身の焦点が事前に設定可能な点に位置するようにアライメントされていること、及び/又は、光学システムの焦点距離が事前に設定可能な値に達するようにアライメントされていることが必要とされていることがある。
【0003】
レンズシステムと光学システムの他のコンポーネントとの両方が製造公差の影響を受ける場合、レンズシステムの適当なアライメントを見出すことは、困難な問題となる。対応する公差によって、第1のレンズシステムの適当なアライメントが第2のレンズシステムの適当なアライメントであるとは一概に仮定することができない状況が生じる。従って、多くの個数の光学システムが製造されるべき場合には、光学システムに適合するようにレンズシステムをアライメントするための方法が望まれる(同一の製造プロセスの製品間において特性が様々に変動するという意味において)。
【0004】
特に複数の光学システムのレンズシステムがアライメントされるべき場合には、レンズシステムのアライメントプロセスが可能な限り短い時間で実行されることが望まれる。たとえば、事前に設定可能な複数のアライメントをアライメントする場合には、それぞれ、レンズシステムの各アライメントが光学システムに適しているか否かを決定することができる。このために特に、レンズシステムの可能なアライメントが等間隔のステップで量子化されるものとしてよく、レンズシステムが、このように量子化されたアライメントに対応してアライメントされるものとしてよい。このようなアプローチは、グリッドサーチ(英語でGrid Search)としても知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、このような網羅的アプローチの欠点は、通常、適当なアライメントが量子化によって少なくとも近似的に写し取られるように、量子化は、極めて細かくなければならず、「飛ばして行われない」ということである。従って、レンズシステムのアライメントを見出すこのような形態は、通常、多くの時間を必要とする。なぜなら、レンズシステムが、グリッドのすべてのアライメントに従ってアライメント・評価される必要があるからである。
【0006】
検査されるべきアライメントの数を可能な限り少なく抑制することが望まれている。これは、困難な問題である。なぜなら、上述の公差が原因となって、事前に限定された範囲においてしか、対応するレンズシステムに適したアライメントの限局を行うことができないからである。
【0007】
独立請求項1の特徴を有する方法は、機械学習システムに基づいて、レンズシステムの適当なアライメントを決定することができる。発明者らは、機械学習システムを適当に投入することによって、既知の方法と比較して、評価される必要のあるアライメントの数が格段に少なくなることを確認することができた。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の開示
第1の態様においては、本発明は、レンズシステムのアライメントを決定するための方法に関しており、この方法は、
a.提供された第1のアライメントに従ってレンズシステムをアライメントするステップと、
b.第1のアライメントに従ってアライメントされたレンズシステムにおける、第1の送出された光信号の屈折によって、第1の屈折光信号を決定するステップと、
c.第1の屈折光信号の特性を表す第1の特性値を決定するステップと、
d.第1のアライメントと決定された第1の特性値とに関連して第1の機械学習システムをトレーニングするステップであって、機械学習システムは、アライメントのために、アライメントの特性を表すアウトプットを決定するように構成されている、ステップと、
e.第1の機械学習システムのアウトプットに基づいてレンズシステムのアライメントを決定するステップと、
を含む。
【0009】
レンズシステムは、1つのレンズとして理解され得る。選択的に、レンズシステムは、複数のレンズとしても理解され得る。たとえば、1つの対物レンズは、1つのレンズシステムとして理解され得る。
【0010】
レンズシステムのアライメントは、事前に設定された点に関するレンズシステムの相対的な配置として理解され得る。たとえば、レンズシステムが、所望の焦点に関して及び/又は所望の焦点距離に関してアライメントされるものとしてよい。言い換えれば、アライメントは、それに応じて三次元空間においてレンズシステムがアライメントされ得る自由度を表すものである。
【0011】
アライメントは、特に、三次元空間におけるレンズシステムの配向及び位置付けとして理解され得る。特に、アライメントを、六次元ベクトルによって表すことができ、この場合には、このベクトルは、三次元空間の3つの軸線に沿った位置を表し、これと並んで、これらの軸線を中心としたそれぞれ1つの回転を表す。選択的に、四元数によってアライメントを表すこともできる。選択的に、アライメントを、オイラー角によって表すこともできる。
【0012】
アライメントを決定するための方法は、特に、コンピュータに実装される方法として理解され得る。即ち、上述のステップは、コンピュータによって実施される。この場合には、レンズシステムをアライメントするステップは、レンズシステムを適当にアライメントする駆動制御信号がコンピュータによって決定されるステップと理解され得る。
【0013】
この方法は、第1のアライメントに対して第1の特性値を決定し、第1の特性値に基づいて、このアライメントがこの特性に関して適当であるか否かを決定するための方法と理解され得る。このために、光信号が、第1のアライメントに対応してアライメントされているレンズシステムを通して送出される(送出された光信号)。このレンズシステムによって、送出された光信号が屈折する。このように屈折した光信号は、次に、たとえば、受信ユニットにおいて受信され得る。続いて、屈折信号の特性値が決定され得る。
【0014】
好ましくは、送出された光信号は、送出ユニットによって送出される。好ましくは、さらに、送出ユニット及び受信ユニットは、位置及び配向において固定されており、この結果として、レンズシステムに対する第1の特性値は、第1のアライメントによってのみ影響される。
【0015】
特性はたとえば、受信ユニットによって測定される、屈折光信号のフォーカシング、強度又は位置を表し得る。屈折光信号は主に第1のアライメントによって特定されるので、決定された第1の特性値は、第1のアライメントに対するゲージとして理解され得る。概して、以降においては、アライメントに関する特性値が、レンズシステムがこのアライメントに従ってアライメントされ、屈折光信号が特性値に関して評価される場合に決定される特性値であることが理解される。特に、たとえば、アライメントの複数の特性が検査されるべき場合、又は、レンズシステムのアライメントの最適化に含まれるべき場合には、複数の第1の特性値が第1の機械学習システムによって決定されるものとしてもよい。
【0016】
方法の目的は、好ましくは、1つの第1の特性値が事前に設定可能な値範囲内に位置するように、又は、複数の第1の特性値が事前に設定可能な各値範囲内に位置するように、レンズシステムをアライメントすることであり得る。有利には、このために、第1の機械学習システムのアウトプットに基づいて、レンズシステムの適当なアライメントが推定される。このために、レンズシステムがはじめに第1のアライメントに従ってアライメントされ、1つの第1の特性値又は複数の第1の特性値が決定される。続いて、第1の機械学習システムが、第1のアライメントに関して1つの第1の特性値又は複数の第1の特性値を予測するようにトレーニングされるものとしてよい。言い換えれば、第1の機械学習システムは、どのアライメントがどの特性値につながるのかをレンズシステムに対して固有に学習するようにトレーニングされるものとしてよい。この方法が、複数のレンズをアライメントするために使用される場合には、1つのレンズシステムに対して固有のそれぞれ1つの第1の機械学習システムがトレーニングされるものとしてよい。
【0017】
好ましくは、方法において、複数の第1のアライメントが提供されるものとしてもよく、これらの第1のアライメントに対してそれぞれ1つの第1の特性値又は複数の第1の特性値が決定されるものとしてよい。第1の機械学習システムのアウトプットは、第1の機械学習システムに渡されたアライメントの1つの特性値又は複数の特性値の推定として理解され得る。
【0018】
アライメントに関して1つの特性値又は複数の特性値を決定するために、レンズシステムが、このアライメントに対応してアライメントされ、かつ、1つの特性値又は複数の特性値を推定するために、第1の機械学習システムだけが評価されればよい。発明者らは、この方法によって、レンズシステムのアライメントが適当になるまで決定される必要がある第2のアライメントの数が格段に少なくなり、従って、レンズシステムのアライメントプロセスが格段に速くなることを確認することができた。
【0019】
明細書の残余の部分では、特に、特性値の決定及び特性値のアウトプットに関する実施形態を説明する。すべての箇所において、当業者には、複数の特性値の決定又はアウトプットも可能であることが自明であることを理解されたい。
【0020】
有利には、この方法によって、比較的少数の第1のアライメントだけがレンズシステムのために調節・評価されればよくなる。推定のプロセスは、レンズシステムの仮想のアライメント及びアライメントの評価として理解され得る。これによって、多数のアライメントを、レンズシステムの実際のアライメント及び評価と比較して格段に迅速に評価することができるようになる。
【0021】
特に、アライメントにしたがったレンズシステムのアライメントは、レンズシステムがテストスタンド上でアライメントされることであると理解され得る。この場合には、アライメントの特性の評価は、テストスタンド上で、光信号がレンズシステムを通して送信され、光信号がレンズシステムにおいて屈折し、続いて、特性を表す特性値を決定するために、屈折光信号が受信ユニットによって処理されることであると理解され得る。
【0022】
この方法の種々の好適な実施形態においては、第1の機械学習システムのアウトプットに基づいてレンズシステムのアライメントを決定するステップが、
f.第2のアライメントに対して決定された、第1の機械学習システムのアウトプットが事前に設定可能な値範囲内に位置するように第2のアライメントを決定するステップと、
g.第2のアライメントに従ってアライメントされたレンズにおける、第2の送出された光信号の屈折によって、第2の屈折光信号を決定するステップと、
h.第2の屈折光信号の特性を表す第2の特性値を決定するステップと、
i.第2のアライメントに対する第2の特性値が、第2の特性値に対する事前に設定可能な値範囲内に位置していない場合に、ステップd.とステップf.とステップg.とステップh.とを繰り返し、ここでは、第2のアライメントが、第1の機械学習システムのトレーニングのための付加的な第1のアライメントとして使用され、
第2のアライメントに対する第2の特性値が、第2の特性値に対する事前に設定可能な値範囲内に位置している場合に、第2のアライメントをレンズシステムのアライメントとして提供するステップと、
を含み得る。
【0023】
上述の実施形態は、反復方法として理解され得る。各反復において、それぞれ1つのアライメントが決定され、機械学習システムがこのアライメントによってトレーニングされ、続いて、レンズシステムのより良好なアライメントが機械学習システムのアウトプットに基づいて決定される。これは、レンズシステムの適当なアライメントに関する機械学習システムの推定が、実際において、レンズシステムのアライメントに関して、及び、アライメントに関する特性値の決定に関して、検査されることと理解され得る。これによって、機械学習システムはより一層、アライメントに関する実際の特性値をますます正確に推定する方向に収束していく。発明者らは、有利に、この収束が極めて迅速に始まり、従って、早くも数少ない反復の後にレンズシステムの適当なアライメントが決定されることを確認することができた。
【0024】
有利には、反復において決定された、第2のアライメントと第2の特性値との対を、後続の反復において、第1の機械学習システムのトレーニングデータに付け加えることができる。これによって、第1の機械学習システムに、各反復において、アライメントと、このアライメントに関する特性値との関係に関するより多くの知識が伝達される。これによって、この方法はより迅速に収束する。
【0025】
このような手法は、能動学習(英語でactive learning)の形態としても理解され得る。第1の機械学習システムによって反復点が決定され(第2のアライメント)、この反復点に対してそれぞれ、実際において、第1の機械学習システムによって特定されるべき値(第2の特性値)が決定される。このようにして決定された対は、次に、第1の機械学習システムのさらなるトレーニングのために使用され得る。
【0026】
従って、適当なアライメントの手間のかかる計算を、有利には、近似の最適化によって決定することができ、ここで、この近似は、機械学習システムによって決定される。続いて、近似の最適化によって得られたアライメントがテストされるものとしてよく、これは、レンズシステムが、得られたアライメントに対応してアライメントされることによって行われる。この反復方法によって、近似はますます正確になり、これによって、有利には、早くも数少ない反復ステップの後に適当なアライメントが見出される。
【0027】
第2の特性値が事前に設定可能な値範囲内に位置する場合には、第2のアライメントは適当であると理解され得る。第2の特性値の事前に設定可能な値範囲は、特に、第1の特性値に対する事前に設定可能な値範囲と同一であってよい。
【0028】
第2のアライメントを特定するために、特に、最適化問題が解決されるものとしてよく、ここでは、アライメントは、第2のアライメントとして提供され、これに対して、対応する第2の特性値が最大化又は最小化される。
【0029】
好ましくは、この方法において、第2のアライメントを最適化に基づいて決定することも可能であり、この場合には、制約条件は、第2の特性値の事前に設定可能な値範囲の少なくとも1つの境界の遵守を表す。
【0030】
最適化は好ましくは次の式
【数1】
によって表されるものとしてよく、ここで、xは、アライメントであり、p(x)は、第1の機械学習システムによって、このアライメントに対して決定された第2の特性値であり、lは、事前に設定可能な値範囲の下方の境界であり、uは、事前に設定可能な値範囲の上方の境界である。
【0031】
この方法のすべての形態において、基本的には、1つよりも多くの特性が1つのアライメントに対して検査されることも可能である。第2の特性値が、直接に最適化されるケースにおいては、検査されるべき特性が複数の場合に(即ち、複数の第1の特性値又は複数の第2の特性値が存在する場合に)、パレート最適化が実行されるものとしてよい。制約条件下での最適化の場合には、各特性に対して事前に設定可能な値範囲に関して各制約条件が付け加えられるものとしてよい。
【0032】
好ましくは、はじめに、第1の機械学習システムを事前トレーニングすることも可能である。この場合、これに続く第1の機械学習システムのトレーニングは、第1の機械学習システムのファインチューニング(英語でfinetuning)として理解され得る。この事前トレーニングによって、第1の機械学習システムは、早くも数少ない反復ステップの後に十分に正確な推定を決定することができるようになる。事前トレーニングはたとえば、1つのレンズシステム又は複数のレンズシステムに対して、テストスタンド上でそれぞれ異なる第1のアライメントにアプローチし、対応する第1の特性値を決定するように実行されるものとしてよい。このように決定された、第1のアライメントと第1の特性値との対が、次に、第1の機械学習システムのトレーニングデータセットとして事前トレーニングに使用されるものとしてよい。
【0033】
第1の機械学習システムの事前トレーニングは第1の機械学習システムのプルーニング(英語でpruning)も含むものとしてよく、これはたとえば、第1の機械学習システムのトレーニング可能なパラメータの除去である。プルーニングされるべきパラメータを特に、検証用データセットに基づいて決定することができる。
【0034】
好ましくは、第1の機械学習システムは多項式モデルを含むものとしてよく、多項式モデルは、アライメントのために、特性を表すアウトプットを決定するように構成されている。
【0035】
多項式モデルは、特に、第1のアライメントに関して、1つの第1の特性値又は複数の第1の特性値を推定するように構成されるものとしてよい。機械学習システムは、複数の多項式モデルも含むものとしてよく、特に予測されるべき第1の特性値に対して1つの多項式モデルを含むものとしてよい。多項式モデルを使用する利点は、多項式モデルが極めて迅速にトレーニング可能であることである。これによって、レンズシステムのアライメントを決定するための時間がさらに短くなる。
【0036】
方法の好適な形態においては、さらに、複数の第1のアライメントを、ベイズ最適化(英語でBayesian Optimization)方法に基づいて、ステップa.において提供することが可能である。
【0037】
有利には、このようにして、適当なアライメントの少なくとも1つの初期の制限を表す複数の第1のアライメントを決定することができる。これによって、第1の機械学習システムの近似がより迅速に収束し、この方法は、さらに加速される。
【0038】
選択的に、第1のアライメントを第2の機械学習システムに基づいて決定することも可能であり、この場合には、第2の機械学習システムは、アライメントに基づいて、適当なアライメントにつながるアライメントの変更を特定するように構成されている。
【0039】
たとえば、暫定的なアライメントをランダムに特定することが可能であり、この場合には暫定的なアライメントは、好ましくは、複数の反復ステップにおいて反復して、第2の機械学習システムに基づいて改良される。各反復において、たとえば、暫定的なアライメントに対して、変更が、第2の機械学習システムによって決定されるものとしてよく、暫定的なアライメントは、決定された変更に従って調整され、調整されたアライメントは、次の反復の暫定的なアライメントとして提供される。続いて、1つの暫定的なアライメント又は複数の暫定的なアライメントが、1つの第1のアライメント又は複数の第1のアライメントとして、この方法において使用されるものとしてよい。有利には、1つの第1のアライメント又は複数の第1のアライメントは、早くもこの方法の実施前に適当に制限され、これによって、この方法はさらに迅速に収束し、このようにして、レンズシステムのアライメントをより迅速に決定することが可能になる。
【0040】
第2の機械学習システムは、特に、アライメントのために、適当な変更を予測するように構成されているニューラルネットワークを含むものとしてよい。
【0041】
好ましくは、第2の機械学習システムは、強化学習(英語でReinforcement Learning)方法によってトレーニングされるものとしてよい。
【0042】
強化学習方法の投入によって、第2の機械学習システムに対して状態及び行動が規定される。状態として、特にアライメントが使用され得る。従って、第2の機械学習システムは、アライメントを処理するように構成されるものとしてよい。選択的又は付加的に、アライメントに対して決定された1つ又は複数の特性値を状態として用いることも可能である。第2の機械学習システムによって決定される行動は、特に、機械学習システムに渡されたアライメントがどのように変更されるべきかを示す変更であってよい。
【0043】
強化学習方法を用いてトレーニングするために、報酬関数(英語でreward function)が使用される。報酬関数は、この方法において特に、第2の機械学習システムの複数の行動にわたった、それぞれ決定された暫定的なアライメントに関する累積クオリティであってよい。たとえば、第2の機械学習システムのトレーニングデータを決定するために、ランダムに選択された暫定的なアライメントに基づいて、複数のさらなる暫定的なアライメントが決定されるものとしてよく、これは、各反復ステップにおいて、暫定的なアライメントを、先行する暫定的なアライメントに基づいて決定することによって行われる。選択的又は付加的に、複数の暫定的なアライメントを第2の機械学習システムのトレーニングデータとして使用することも可能であり、これはたとえば、アライメントの空間におけるグリッドに沿った、事前に設定可能な数のアライメントである。複数の暫定的なアライメントの各アライメントに対して、この場合には、それぞれテストスタンド上で対応する特性値が決定されるものとしてよい。さらに、このように決定された特性値に対して、これらの特性値が、特性値の事前に設定可能な値範囲の対応する境界からどれくらい離れて位置しているのか、同時にこの値範囲内に位置しているのかが決定されるものとしてよく、ここでは、境界からの距離が、各暫定的なアライメントのクオリティゲージとして理解され得る。このように決定された複数の暫定的なアライメントに対する報酬は、クオリティゲージの総計であってよい。続いて、第2の機械学習システムが、好ましくは方策勾配(英語でpolicy gradients)方法を使用してトレーニングされるものとしてよい。
【0044】
第2の機械学習システムのトレーニングの利点は、第2の機械学習システムによって決定された各変更が、対応する暫定的なアライメントの可能な範囲において最善の改良をもたらすように、第2の機械学習システムがトレーニングされるということである。従って、1つの第1のアライメント又は複数の第1のアライメントが効率的に適当な値に制限されることによって、さらに短い時間でのレンズシステムのアライメントの後続の決定が可能になる。
【0045】
以下においては、本発明の実施形態を、添付の図面を参照してより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】レンズのアライメントを決定するための方法のフローを概略的に示す図である。
【
図2】レンズのアライメントを決定するための方法を実施するための装置を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
実施例の説明
図1は、レンズのアライメント(A)を決定するための方法のフローを表すフローチャートを示している。方法の第1のステップ(101)において、はじめに、第1のアライメントが提供される。このアライメントは、たとえば、第2の機械学習システムに基づいて提供されるものとしてよい。選択的に、第1のアライメントが、アライメントの可能な数値に基づいて、ランダムに決定されるものとしてもよい。たとえば、アライメントは六次元ベクトルによって表されるものとしてよく、この場合には、第1のアライメントを提供するために、六次元ランダムベクトルが描画されるものとしてよい。好ましくは、第1のステップ(101)において、複数の第1のアライメントが提供されるものとしてもよい。
【0048】
1つの第1のアライメント又は複数の第1のアライメントに対して、第2のステップ(102)においてそれぞれ1つの第1の特性値が決定される。選択的に、1つの第1のアライメント又は複数の第1のアライメントに対して、複数の第1の特性値が決定されるものとしてもよい。第1のアライメントに対して、1つの第1の特性値又は複数の第1の特性値が次のように決定され得る。即ち、はじめに、レンズシステムが第1のアライメントに従ってアライメントされる。次に光信号、たとえば光の可視領域の光信号がレンズシステムを通して送信される。光信号は、レンズシステムによって屈折する。続いて、このように屈折した光信号が受信ユニットにおいて受信されるものとしてよい。受信ユニットは、たとえば画像センサを含むものとしてよく、画像センサによって、屈折光信号が検出されるものとしてよい。
【0049】
検出された信号に基づいて、次に、方法(100)の第3のステップ(103)において、1つの第1の特性値又は複数の第1の特性値が決定される。第1の特性値はたとえば、フォーカシングのゲージ、屈折信号の強度又は画像センサに関する屈折信号の位置を表していてよい。
【0050】
第1のステップ(101)において複数の第1のアライメントが提供される場合には、好ましくはそれぞれ1つの第1の特性値又は複数の第1の特性値が、各第1のアライメントに対して決定されるものとしてよい。
【0051】
次に、決定されたすべての、第1のアライメントと1つの第1の特性値又は複数の第1の特性値との対が第4のステップ(104)において、第1の機械学習システムのトレーニングのために使用される。第1の機械学習システムは、好ましくは、多項式モデルを含み、この多項式モデルは、第1のアライメントに基づいて、対応する第1の特性値を予測するように構成されている。多項式モデルは好ましくは、方法(100)に前置される事前トレーニングにおいて事前トレーニングされるものとしてよい。事前トレーニングは特に、多項式モデルの適当な次数が選択されるような多項式モデルの係数の調整を含むものとしてよい。特に、これは、交差検証によって行われてよい。続いて、好ましく事前トレーニングされた多項式モデルが、これらの対に基づいて精密化されるものとしてよい。
【0052】
1つのアライメントに対して、複数の第1の特性値が第1の機械学習システムによって予測されるべき場合には、この多項式モデルが、すべての第1の特性値を予測するように構成されるものとしてもよい。選択的に、第1の機械学習システムが、それぞれ1つの第1の特性値を予測するために、1つの固有の多項式モデルも含み得る。
【0053】
次に、第5のステップ(105)において、第4のステップ(104)においてトレーニングされた第1の機械学習システムに基づいて、第2のアライメントが決定される。このために、好ましくは、第2のアライメントに対して第1の機械学習システムによって推定された特性値が、事前に設定可能な値範囲内に位置するように最適化問題が解決されるものとしてよい。事前に設定可能な値は、特に、下方の境界及び/又は上方の境界によって表されるものとしてよく、ここでは、最適化の目的関数は、好ましくは、上方の境界及び/又は下方の境界に対する、推定された特性値の距離を表す。最適化の目的は、特に、第2のアライメントに対して推定された特性値が下方の境界及び/又は上方の境界に対して可能な範囲において最長の距離を有するように第2のアライメントが決定されることであると理解され得る。最適化問題を解決するために、特に、非線形最適化の領域からの既知の方法が使用され得る。たとえばこの方法は、非線形計画法である。
【0054】
次に第6のステップ(106)において、レンズシステムが、第2のアライメントに対応してアライメントされる。続いて、光信号が、レンズシステムを通して送信され、屈折光信号が決定される。
【0055】
このように決定された屈折光信号に対して、方法(100)の第7のステップ(107)において、第1のアライメントの場合のように、特性値が決定されるものとしてよい。このような特性値は、ここでは第2の特性値として提供されるものとしてよい。次に、第2の特性値が事前に設定可能な値範囲内に位置している否かが検査されるものとしてよい。第2の特性値が事前に設定可能な値範囲内に位置している場合には、第2のアライメントが、レンズシステムのアライメント(A)として提供され、この方法が終了するものとしてよい。
【0056】
第2の特性値が事前に設定可能な値範囲内に位置していない場合には、特に、方法(100)の第4のステップ(104)~第7のステップ(107)が繰り返されるものとしてよい。好ましくは、この場合には、トレーニングセットに含まれる、第2のアライメントと第2の特性値との対が、さらなる第1のアライメント及びさらなる第1の特性値として提供されるものとしてよい。方法(100)の第4のステップ(104)~第7のステップ(107)は特に、第2の特性値が事前に設定可能な値範囲内に位置するまで、反復して繰り返されるものとしてよい。
【0057】
物理的な状況又は不適当な第1のアライメントが原因で、方法がアライメントを決定することができず、その結果、1つの第1の特性値又は複数の第1の特性値が自身の事前に設定可能な各値範囲内に位置する場合もある。このような場合、この方法が、事前に設定可能な数の反復ステップの後に中断されるものとしてよい。反復ステップの事前に設定可能な数は特に反復ステップの予期される数に基づいて規定されるものとしてよく、予期される数は、典型的に、1つの第1の特性値又は複数の第1の特性値が事前に設定可能な各値範囲内に位置するように、方法がアライメントを特定した後のステップの数を表す。反復ステップの事前に設定可能な数はたとえば、反復ステップの予期される数の倍数であってよい。選択的に、反復ステップの事前に設定可能な数に達した場合又は反復ステップの事前に設定可能な数を超えた場合に、この方法が、新たな第1のアライメントを伴うレンズシステムに対して、新たに開始されるものとしてもよい。
【0058】
図2は、方法(100)を実施するように構成されている装置(200)を示している。装置(200)は、方法(100)のステップを実施するように構成されている制御ユニット(40)を含む。制御ユニット(40)は、事前に設定可能なアライメントに従ってレンズシステム(L)をアライメントすることができるアクチュエータ(10)を制御する。アクチュエータ(10)は特に、レンズシステム(L)を機械的にアライメントすることができるモータであってよい。
【0059】
アライメントに関する特性値を決定するために、制御ユニット(40)は、レンズシステム(L)がこのアライメントに従ってアライメントされるようにアクチュエータ(10)を駆動制御することができる。次に、制御ユニット(40)は、送信ユニット(U1)を、送信ユニットが光信号(E)を送出するように駆動制御することができる。光信号(E)は、レンズシステム(L)において屈折し、このように決定された屈折光信号(G)が受信ユニット(U2)において受信される。受信ユニット(U2)は、好ましくは画像センサを含むものとしてよく、画像センサによって、屈折光信号(G)が測定されるものとしてよい。
【0060】
次に、受信ユニット(U2)において受信された信号(G)が、特性値を決定するために評価されるものとしてよい。このように決定された特性値は、次に、制御ユニット(40)に戻るように伝達されるものとしてよい。選択的に、画像センサの測定自体が制御ユニット(40)に伝達され、続いて、制御ユニット(40)が特性値を決定することも可能である。
【0061】
他の好適な実施形態においては、制御ユニット(40)は、少なくとも1つのプロセッサ(45)と、少なくとも1つの機械可読記憶媒体(46)と、を含み、少なくとも1つの機械可読記憶媒体(46)には、少なくとも1つのプロセッサ(45)上において実行されるときに、制御ユニット(40)に上記方法(100)を実施させるための命令が記憶されている。
【0062】
用語「コンピュータ」は、事前に設定可能な計算規則を処理する任意の装置を含む。このような計算規則は、ソフトウェアの形態で存在するものとしてよく、又は、ハードウェアの形態で存在するものとしてよく、又は、ソフトウェアとハードウェアとの混合形態で存在するものとしてよい。
【0063】
概して、「複数」はインデックスが付けられたものとして理解され得る。即ち、好ましくは、「複数」に含まれている要素に、連続した整数を割り当てることによって、「複数」の各要素に一義的なインデックスが割り当てられる。好ましくは、「複数」がN個の要素を含む場合、Nは「複数」内の要素の数であり、これらの要素に1~Nの整数が割り当てられる。
【外国語明細書】