(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023070670
(43)【公開日】2023-05-19
(54)【発明の名称】発光素子及びそれを含む表示装置
(51)【国際特許分類】
H10K 50/16 20230101AFI20230512BHJP
H10K 50/00 20230101ALI20230512BHJP
H10K 59/00 20230101ALI20230512BHJP
H05B 33/12 20060101ALI20230512BHJP
H05B 33/02 20060101ALI20230512BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20230512BHJP
【FI】
H05B33/22 A
H05B33/14 A
H01L27/32
H05B33/12 C
H05B33/12 B
H05B33/02
G09F9/30 365
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179112
(22)【出願日】2022-11-08
(31)【優先権主張番号】10-2021-0153371
(32)【優先日】2021-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】512187343
【氏名又は名称】三星ディスプレイ株式會社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Display Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】1, Samsung-ro, Giheung-gu, Yongin-si, Gyeonggi-do, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110002619
【氏名又は名称】弁理士法人PORT
(72)【発明者】
【氏名】リ ジョンウォン
(72)【発明者】
【氏名】キム デヒョン
(72)【発明者】
【氏名】キム スンチョル
(72)【発明者】
【氏名】パク フンス
(72)【発明者】
【氏名】イ チャンミン
(72)【発明者】
【氏名】イ ヒョンシク
【テーマコード(参考)】
3K107
5C094
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC04
3K107CC09
3K107CC22
3K107DD52
3K107DD71
3K107DD75
3K107DD77
3K107DD78
3K107DD86
3K107EE21
3K107FF13
3K107FF14
3K107FF15
5C094AA22
5C094AA31
5C094BA27
5C094DA13
5C094FB01
5C094JA08
(57)【要約】
【課題】画素収縮現象が防止され、発光効率及び素子寿命が改善された発光素子を提供する。
【解決手段】本発明の一実施形態による発光素子は、第1電極と、第1電極の上に配置される正孔輸送領域と、正孔輸送領域の上に配置され、第1波長の光を発光する第1発光層と、正孔輸送領域の上に配置され、第1波長とは異なる第2波長の光を発光する第2発光層と、第1発光層及び第2発光層の上に配置される電子輸送層と、電子輸送層の上に配置される電子注入層とを含む電子輸送領域と、電子輸送領域の上に配置される第2電極と、を含み、電子注入層はマグネシウム(Mg)とイッテルビウム(Yb)とを含む。
【選択図】
図5A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極と、
前記第1電極の上に配置される正孔輸送領域と、
前記正孔輸送領域の上に配置され、第1波長の光を発光する第1発光層と、
前記正孔輸送領域の上に配置され、前記第1波長とは異なる第2波長の光を発光する第2発光層と、
前記第1発光層及び前記第2発光層の上に配置される電子輸送層と、前記電子輸送層の上に配置される電子注入層とを含む電子輸送領域と、
前記電子輸送領域の上に配置される第2電極と、を含み、
前記電子注入層は、マグネシウム(Mg)とイッテルビウム(Yb)とを含む、発光素子。
【請求項2】
前記マグネシウム(Mg)とイッテルビウム(Yb)の質量比は5:5~8:2である、請求項1に記載の発光素子。
【請求項3】
前記電子注入層の厚さは、1nm以上2nm以下である、請求項1に記載の発光素子。
【請求項4】
前記電子注入層は、前記第2電極の下面に直接配置される、請求項1に記載の発光素子。
【請求項5】
前記電子注入層は、
前記電子輸送層の上に配置され、前記マグネシウム(Mg)を含む第1サブ電子注入層と、
前記第1サブ電子注入層の上に配置され、前記イッテルビウム(Yb)を含む第2サブ電子注入層と、を含む、請求項1に記載の発光素子。
【請求項6】
前記第1サブ電子注入層の厚さは、0.5nm以上0.9nm以下であり、
前記第2サブ電子注入層の厚さは、0.1nm以上0.5nm以下である、請求項5に記載の発光素子。
【請求項7】
前記第1波長は、420nm以上480nm以下であり、前記第2波長は、520nm以上600nm以下である、請求項1に記載の発光素子。
【請求項8】
前記第1発光層と前記第2発光層との間に配置される第1電荷生成層を更に含む、請求項1に記載の発光素子。
【請求項9】
前記第1電荷生成層は、
p-ドーパントがドーピングされた第1p型電荷生成層と、
n-ドーパントがドーピングされた第1n型電荷生成層と、を含む、請求項8に記載の発光素子。
【請求項10】
前記正孔輸送領域と前記電子輸送領域との間に配置され、前記第1波長の光を発光する追加発光層を更に含む、請求項1に記載の発光素子。
【請求項11】
前記追加発光層は、
前記第1発光層と前記第2発光層との間に配置される第1追加発光層と、
前記第1追加発光層と前記第2発光層との間に配置される第2追加発光層と、を含む、請求項10に記載の発光素子。
【請求項12】
前記追加発光層は、
前記第2電極と前記第2発光層との間に配置され、前記第1波長の光を発光する第3追加発光含む、請求項10に記載の発光素子。
【請求項13】
前記第2発光層は、前記第1発光層と前記第2電極との間に配置される、請求項1に記載の発光素子。
【請求項14】
前記第1発光層と前記第2発光層との間に配置される中間電子輸送層と、中間正孔輸送層とを更に含む、請求項1に記載の発光素子。
【請求項15】
第1波長の光を放出する第1画素領域と、前記第1波長とは異なる第2波長の光を放出する第2画素領域と、前記第1波長及び前記第2波長とは異なる第3波長の光を放出する第3画素領域とが定義された基板と、
前記基板上において、前記第1画素領域と、前記第2画素領域と、前記第3画素領域とに重畳するように配置される複数の発光素子と、を含み、
前記複数の発光素子それぞれは、
第1電極と、
前記第1電極の上に配置される正孔輸送領域と、
前記正孔輸送領域の上に配置され、前記第1波長の光を発光する第1発光層と、
前記正孔輸送領域の上に配置され、前記第2波長の光を発光する第2発光層と、
前記第1発光層及び前記第2発光層の上に配置される電子輸送層と、前記電子輸送層の上に配置される電子注入層とを含む電子輸送領域と、
前記電子輸送領域の上に配置される第2電極と、を含み、
前記電子注入層はマグネシウム(Mg)とイッテルビウム(Yb)と、を含む、表示装置。
【請求項16】
前記複数の発光素子の上に配置される光制御層を更に含み、
前記光制御層は、
前記第1画素領域に重畳し、前記第1波長の光を透過させる第1光制御部と、
前記第2画素領域に重畳し、前記第2波長の光を透過させる第2光制御部と、
前記第3画素領域に重畳し、前記第3波長の光を透過させる第3光制御部と、を含む、請求項15に記載の表示装置。
【請求項17】
前記基板に白色光を放出する第4画素領域が定義され、
前記光制御層は、
前記第4画素領域に重畳し、前記白色光を透過させる透過部を更に含む、請求項16に記載の表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子、及びそれを含む表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光素子は応答速度が速く、低電圧で駆動される自発光型素子である。それによって、有機電界発光素子を含む有機電界発光表示装置は別途の光源を省略することができるため軽量薄型が可能で、輝度が優れており視野角依存性がないなど、様々な長所を有する。
【0003】
有機電界発光素子は、アノード電極とカソード電極との間に有機物からなる発光層を有する表示素子である。アノード電極から提供される正孔とカソード電極から提供される電子が発光層で結合して励起子を形成した後、励起子から正孔と電子との間のエネルギーに当たる光が放出される。
【0004】
タンデム(Tandem)構造の有機電界発光素子は、アノード電極とカソード電極との間に正孔輸送層/発光層/電子輸送層のスタック(stack)が2つ以上の複数個からなる構造を有し、各スタックの間に電荷の生成及び移動を助ける電荷生成層(Charge Generation Layer)が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、画素収縮現象が防止され、発光効率及び素子寿命が改善された発光素子を提供することを目的とする。
【0006】
本発明は、表示効率及び信頼性が改善された表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態による発光素子は、第1電極と、前記第1電極の上に配置される正孔輸送領域と、前記正孔輸送領域の上に配置され、第1波長の光を発光する第1発光層と、前記正孔輸送領域の上に配置され、前記第1波長とは異なる第2波長の光を発光する第2発光層と、前記第1発光層及び前記第2発光層の上に配置される電子輸送層と、前記電子輸送層の上に配置される電子注入層とを含む電子輸送領域と、前記電子輸送領域の上に配置される第2電極と、を含み、前記電子注入層はマグネシウム(Mg)とイッテルビウム(Yb)とを含む。
【0008】
前記マグネシウム(Mg)とイッテルビウム(Yb)の質量比は5:5~8:2であってもよい。
【0009】
前記電子注入層の厚さは、1nm以上2nm以下であってもよい。
【0010】
前記電子注入層は、前記第2電極の下面に直接配置されてもよい。
【0011】
前記電子注入層は、前記電子輸送層の上に配置され、前記マグネシウム(Mg)を含む第1サブ電子注入層と、前記第1サブ電子注入層の上に配置され、前記イッテルビウム(Yb)を含む第2サブ電子注入層とを含んでもよい。
【0012】
前記第1サブ電子注入層の厚さは0.5nm以上0.9nm以下で、前記第2サブ電子注入層の厚さは0.1nm以上0.5nm以下であってもよい。
【0013】
前記第1波長は420nm以上480nm以下であってもよく、前記第2波長は520nm以上600nm以下であってもよい。
【0014】
前記第1発光層と前記第2発光層との間に配置される第1電荷生成層を更に含んでもよい。
【0015】
前記第1電荷生成層は、p-ドーパントがドーピングされた第1p型電荷生成層と、n-ドーパントがドーピングされた第1n型電荷生成層と、を含んでもよい。
【0016】
前記正孔輸送領域と前記電子輸送領域との間に配置され、前記第1波長の光を発光する追加発光層を更に含んでもよい。
【0017】
前記追加発光層は、前記第1発光層と前記第2発光層との間に配置される第1追加発光層と、前記第1追加発光層と前記第2発光層との間に配置される第2追加発光層と、を含んでもよい。
【0018】
前記追加発光層は、前記第2電極と前記第2発光層との間に配置され、前記第1波長の光を発光する第3追加発光層を含んでもよい。
【0019】
前記第2発光層は、前記第1発光層と前記第2電極との間に配置されてもよい。
【0020】
前記第1発光層と前記第2発光層との間に配置される中間電子輸送層と、中間正孔輸送層とを更に含んでもよい。
【0021】
本発明の一実施形態による発光素子は、第1電極と、前記第1電極の上に配置されて第1波長の光を発光する複数の第1発光層と、前記第1電極の上に配置されて前記第1波長とは異なる第2波長の光を発光する第2発光層と、前記第1発光層及び前記第2発光層の上に配置される電子輸送層と、前記電子輸送層の上に配置される電子注入層とを含む電子輸送領域と、前記電子輸送領域の上に配置される第2電極と、を含み、複数の第1発光層は第1-1発光層と、第1-2発光層と、第1-3発光層とを含み、前記電子注入層はマグネシウム(Mg)とイッテルビウム(Yb)とを含む。
【0022】
本発明の一実施形態による表示素子は、第1波長の光を放出する第1画素領域と、前記第1波長とは異なる第2波長の光を放出する第2画素領域と、前記第1波長及び前記第2波長とは異なる第3波長の光を放出する第3画素領域とが定義された基板と、前記基板上において、前記第1画素領域と、前記第2画素領域と、前記第3画素領域とに重畳するように配置される複数の発光素子と、を含み、前記複数の発光素子それぞれは、第1電極と、前記第1電極の上に配置される正孔輸送領域と、前記正孔輸送領域の上に配置されて前記第1波長の光を発光する第1発光層と、前記正孔輸送領域の上に配置されて前記第2波長の光を発光する第2発光層と、前記第1発光層及び前記第2発光層の上に配置される電子輸送層と、前記電子輸送層の上に配置される電子注入層とを含む電子輸送領域と、前記電子輸送領域の上に配置される第2電極と、を含み、前記電子注入層はマグネシウム(Mg)とイッテルビウム(Yb)とを含む。
【0023】
前記複数の発光素子の上に配置される光制御層を更に含んでもよく、前記光制御層は、前記第1画素領域に重畳し、前記第1波長の光を透過させる第1光制御部と、前記第2画素領域に重畳し、前記第2波長の光を透過させる第2光制御部と、前記第3画素領域に重畳し、前記第3波長の光を透過させる第3光制御部と、を含んでもよい。
【0024】
前記基板に白色光を放出する第4画素領域が定義されてもよく、前記光制御層は前記第4画素領域に重畳し、前記白色光を透過させる透過部を更に含んでもよい。
【発明の効果】
【0025】
本発明の一実施形態によると、発光素子において電子注入特性が向上され、画素収縮現象が防止されて、発光効率及び素子寿命が改善され、優れた信頼性を有する発光素子及び表示素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の一実施形態による表示装置の分解斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態による表示モジュールの断面図である。
【
図3】本発明の一実施形態による表示装置に含まれている表示パネルの一部を拡大して示す平面図である。
【
図4A】本発明の一実施形態による表示装置に含まれている表示モジュールの一部を拡大して示す断面図である。
【
図4B】本発明の一実施形態による表示装置に含まれている表示モジュールの一部を拡大して示す断面図である。
【
図4C】本発明の一実施形態による表示装置に含まれている表示モジュールの一部を拡大して示す断面図である。
【
図5A】本発明の一実施形態による発光素子を概略的に示す断面図である。
【
図5B】本発明の一実施形態による発光素子を概略的に示す断面図である。
【
図5C】本発明の一実施形態による発光素子を概略的に示す断面図である。
【
図5D】本発明の一実施形態による発光素子を概略的に示す断面図である。
【
図6】実施例及び比較例それぞれの発光素子から時間経過に伴い画素収縮サイズ(pixel shrinkage size)の変化を測定して示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本明細書において、ある構成要素(または領域、層、部分など)が他の構成要素の「上にある」、「接続される」、または「結合される」と言及されれば、それは他の構成要素の上に直接配置・接続・結合され得るか、またはそれらの間に第3の構成要素が配置され得ることを意味する。
【0028】
同じ図面符号は同じ構成要素を指す。また、図面において、構成要素の厚さ、割合、及び寸法は技術的内容の効果的な説明のために誇張されている。「及び/または」は、関連する構成要素が定義する一つ以上の組み合わせを全て含む。
【0029】
第1、第2などの用語は多様な構成要素を説明するのに使用されるが、該構成要素は該用語に限らない。該用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的にのみ使用される。例えば、本発明の権利範囲を逸脱しない限り第1構成要素は第2構成要素と称されてもよく、同様に第2構成要素は第1構成要素と称されてもよい。単数の表現は、文脈上明白に異なるように意味しない限り、複数の表現を含む。
【0030】
また、「下に」、「下側に」、「上に」、「上側に」などの用語は、図面に示した構成要素の相関関係を説明するために使用される。該用語は相対的な概念であって、図面に示した方向を基準に説明される。
【0031】
「含む」または「有する」などの用語は明細書に記載された特徴、数字、ステップ、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものが存在することを意味するものであって、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、ステップ、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除しないと理解すべきである。
【0032】
異なるように定義されない限り、本明細書で使用された全ての用語(技術的及び科学的用語を含む)は、本発明の属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるようなものと同じ意味を有する。また、一般的に使用される辞書で定義された用語のような用語は、関連技術での脈絡で有する意味と一致する意味を有すると解釈すべきであって、ここで明示的に定義されない限り、過度に理想的であるか形式的な意味で解釈してはならない。
【0033】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態による表示装置及び発光素子について説明する。
【0034】
図1は、本発明の一実施形態による表示装置の分解斜視図である。
図2は、本発明の一実施形態による表示モジュールの断面図である。
図2では
図1のI-I’線に対応する断面を示している。
【0035】
一実施形態において、表示装置ESは、テレビ、モニター、または外部広告板のような大型表示装置であることができる。また、表示装置ESは、パソコン、ノートパソコン、個人情報端末、カーナビゲーションユニット、ゲーム機、スマートフォン、タブレット、及びカメラのような中小型製品に使用される表示装置であってもよい。また、これらは単に実施形態として提示されたものであって、本発明の概念から逸脱しない限り他の表示装置としても採用される。
【0036】
一実施形態の表示装置ESは、ウィンドウWMと、表示モジュールDMと、筐体HAUと、を含む。表示モジュールDMは表示パネルDPを含む。一方、図示していないが、表示装置ESは、表示素子以外にもタッチ素子または検出素子など、電気的信号によって活性化される多様な素子を含む。
【0037】
一方、
図1及び以下の図面には第1方向DR1~第3方向DR3を示したが、本明細書で説明される第1~第3方向DR1、DR2、DR3が指示する方向は相対的な概念であって、他に変換されてもよい。
【0038】
本明細書では、説明の便宜上、第3方向DR3はユーザに映像が提供される方向と定義される。また、第1方向DR1と第2方向DR2は互いに直交し、第3方向DR3は第1方向DR1と第2方向DR2が定義する平面に対する法線方向である。
図1において、第1方向DR1及び第2方向DR2が定義する平面は映像が提供される表示面である。
【0039】
一実施形態の表示装置ESにおいて、ウィンドウWMは表示モジュールDMの上に配置される。ウィンドウWPは、ガラス、サファイヤ、またはプラスチックを含む材質である。ウィンドウWPは、表示モジュールDMから提供される映像を透過する透過領域TAと、透過領域TAに隣接し、映像が透過しない遮光領域BAとを含む。一方、
図1の図示とは異なって、一実施形態の表示装置ESにおいてウィンドウWPは省略されてもよい。
【0040】
一実施形態の表示装置ESにおいて、表示モジュールDMはウィンドウWMの下部に配置される。表示装置ESは、表示パネルDPと、表示パネルDPの上に配置される光制御部材CCMとを含む。
【0041】
表示パネルDPは発光型表示パネルである。例えば、表示パネルDPは、LED(light-emitting diode、LED)表示パネル、有機電界発光(Organic Electroluminescence)表示パネル、または量子ドット発光表示パネルである。しかし、実施形態はこれらに限らない。
【0042】
LED表示パネルは発光ダイオードを含み、有機電界発光表示パネルの発光層は有機電界発光物質を含み、量子ドット表示パネルの発光層は量子ドットまたは量子ロッドなどを含む。以下、本明細書の一実施形態では、表示装置ESに含まれる表示パネルDPが有機電界発光表示パネルである場合を説明する。但し、実施形態はこれに限らない。
【0043】
一実施形態の表示装置ESは、表示パネルDPと、表示パネルDPの上側に配置される光制御部材CCMとを含み、一実施形態の表示装置ESは、有機電界発光表示パネルを含む有機電界発光表示装置である。表示パネルDPは、所定の波長を有する第1光を提供する。例えば、表示パネルDPは第1光として青色光を提供する。但し、これに限らず、表示パネルDPは白色光を放出してもよい。
【0044】
光制御部材CCMは、表示パネルDPから提供される第1光の波長を変換するか、または表示パネルDPから提供される第1光を透過させる。
【0045】
平面上において、映像が表示される表示パネルDPの一面は表示面と定義される。表示面は、映像が表示される表示領域DAと、映像が表示されない非表示領域NDAとを含む。表示領域DAは、平面上において表示パネルDPの中央に定義されて、ウィンドウWPの透過領域TAと重畳する。
【0046】
筐体HAUは、表示パネルDPの下部に配置されて表示パネルDPを収納する。筐体HAUは、表示パネルDPの表示面である上部面が露出されるように表示パネルDPをカバーして配置される。筐体HAUは、表示パネルDPの側面と底面をカバーし、上部面全体を露出させる。
【0047】
図2を参照すると、表示パネルDPは、ベース基板BSと、ベース基板BSの上に配置されう回路層DP-CLと、表示素子層DP-ELとを含む。一実施形態において、ベース基板BS、回路層DP-CL、及び表示素子層DP-ELは、第3方向DR3の方向に順次に積層される。
【0048】
ベース基板BSは、表示素子層DP-ELが配置されるベース面を提供する部材である。ベース基板BSは、ガラス基板、金属基板、プラスチック基板などである。但し、実施形態はこれらに限らず、ベース基板BSは、無機層、有機層、または複合材料層であってもよい。
【0049】
一実施形態において、回路層DP-CLは、ベース基板BSの上に配置される。回路層DP-CLは、複数のトランジスタ(図示せず)を含む。トランジスタ(図示せず)は、それぞれ制御電極、入力電極、及び出力電極を含む。例えば、回路層DP-CLは、表示素子層DP-ELの有機電界発光素子ED(
図4A)を駆動するためのスイッチングトランジスタと駆動トランジスタとを含んでもよい。
【0050】
光制御部材CCMは、表示パネルDPの上に配置される。光制御部材CCMは、光制御層CCLと、カラーフィルタ層CFLと、上部ベース層BLとを含む。例えば、表示パネルDPは第1光を放出する発光素子ED(
図4A)を含み、光制御部材CCMは発光素子ED(
図4A)から放出される光の波長を変換するか光を透過させる光制御層CCL(
図4A)を含んでもよい。
【0051】
図3は、本発明の一実施形態による表示装置ESに含まれている表示パネルDPの一部を拡大して示す平面図である。
図4A~
図4Cは、本発明の一実施形態による表示装置ESに含まれている表示モジュールDMの一部を拡大して示す断面図である。
図3では、本発明の一実施形態による表示パネルDPのうち表示領域DAの一部を示している。
図4A及び
図4Bでは、
図3のII-II’線に対応する部分を示している。
図4Cでは、他の実施形態の表示モジュールを
図4Aに対応する断面で示している。
【0052】
以下、
図3、
図4A~
図4Cを参照して説明する一実施形態の表示モジュールDM、DM-1M、DM-2は、
図1で説明した一実施形態の表示装置ESに含まれ、表示モジュールDM、DM-1M、DM-2は表示パネルDPと光制御部材CCMとを含む。
【0053】
一実施形態による表示モジュールDMは、表示パネルDPと表示パネルDPの上に配置される光制御部材CCMとを含み、光制御部材CCMは、光制御層CCLとカラーフィルタ層CFLとを含む。光制御部材CCMは、上部ベース層BLと、上部ベース層BLの下側に配置される光制御層CCLと、光制御層CCLと上部ベース層BLとの間に配置されるカラーフィルタ層CFLとを含む。光制御部材CCMにおいて、光制御層CCLが表示パネルDPに隣接して配置される。
【0054】
光制御層CCLは、複数個の隔壁BKと、隔壁BKの間に配置される光制御部CCP-R、CCP-B、CCP-Gとを含む。
【0055】
図3、
図4A及び
図4Bを参照すると、表示モジュールDMは、非画素領域NPXAと画素領域PXA-R、PXA-B、PXA-Gとを含む。画素領域PXA-R、PXA-B、PXA-Gそれぞれは、発光素子EDから生成された光が放出される領域である。画素領域PXA-R、PXA-B、PXA-Gそれぞれの面積は互いに異なってもよく、この場合、面積は表示モジュールDMを平面上から見た際の面積を意味する。
【0056】
画素領域PXA-R、PXA-B、PXA-Gは、放出される光のカラーによって複数個のグループに区分される。
図3、
図4A及び
図4Bに示した一実施形態の表示モジュールDMには、赤色光、青色光、緑色光を発する3つの画素領域PXA-R、PXA-G、PXA-Bを例示的に示している。例えば、一実施形態の表示装置ES(
図1)は、互いに区分される赤色画素領域PXA-Rと、青色画素領域PXA-Bと、緑色画素領域PXA-Gとを含む。赤色画素領域PXA-Rは発光波長が620nm以上700nm以下の光を発し、青色画素領域PXA-Bは発光波長が410nm以上480nm以下の光を発し、緑色画素領域PXA-Gは発光波長が500nm以上600nm以下の光を発する。
【0057】
図4A及び
図4Bに示した一実施形態の表示モジュールDM、DM-1において、表示パネルDPは、有機層OLを共通層として含む発光素子EDを含む。つまり、
図4A及び
図4Bに示された一実施形態の表示モジュールDM、DM-1において、表示パネルDPは、表示モジュールDMの画素領域PXA-R、PXA-B、PXA-Gに関わらず同じ光を放出する。例えば、表示パネルDPは、第1光として青色光を光制御部材CCMに提供する。または、表示パネルDPは、第1光として白色光を光制御部材CCMに提供してもよい。
【0058】
図3、
図4A及び
図4Bに示した一実施形態の表示モジュールDM、DM-1において、画素領域PXA-R、PXA-B、PXA-Gのうち赤色画素領域PXA-R及び緑色画素領域PXA-Gは同じ面積を有し、青色画素領域PXA-Bは赤色画素領域PXA-R及び緑色画素領域PXA-Gより小さい面積を有する。但し、これに限らず、画素領域PXA-R、PXA-B、PXA-Gそれぞれは同じ面積を有するか、光制御部CCP-R、CCP-B、CCP-Gから放出される色によって多様な面積を有してもよい。例えば、一実施形態の表示モジュールDMでは青色画素領域PXA-Bが最も大きい面積を有してもよく、緑色画素領域PXA-Gが最も小さい面積を有してもよい。しかし、実施形態はこれに限らず、画素領域PXA-R、PXA-B、PXA-Gは赤色光、青色光、緑色光以外の他の色の光を発してもよく、他の面積割合で発光領域PXA-R、PXA-B、PXA-Gが提供されてもよい。
【0059】
画素領域PXA-R、PXA-B、PXA-Gそれぞれは、画素定義膜PDLで区分される領域である。非画素領域NPXAは隣り合う画素領域PXA-R、PXA-B、PXA-Gの間の領域であって、画素定義膜PDLと対応する領域である。
【0060】
図3に示したように、画素領域PXA-R、PXA-B、PXA-Gのうち、赤色画素領域PXA-R及び緑色画素領域PXA-Gは第2方向DR2に延長される基準軸を中心に対称の形状を有し、青色画素領域PXA-Bは赤色画素領域PXA-R及び緑色画素領域PXA-Gの間に配置される。第1方向DR1から見る場合、青色画素領域PXA-Bのうち一部分は赤色画素領域PXA-R及び緑色画素領域PXA-Gと重畳しない。但し、これに限らず、画素領域PXA-R、PXA-B、PXA-Gは多様な多角形状または円形状を有してもよく、画素領域の配列構造も制限されない。配列構造は、例えば、青色画素領域PXA-B、緑色画素領域PXA-G、赤色画素領域PXA-Rが順次に交互に配列される縞状であってもよく、画素領域PXA-R、PXA-B、PXA-Gの配列構造はペンタイル(PENTILE(登録商標))構造であってもよい。
【0061】
図4A~
図4Cを参照すると、一実施形態による表示パネルDPは、ベース基板BSと、ベース基板BSの上に配置される回路層DP-CLと、回路層DP-CLの上に配置される表示素子層DP-ELとを含む。表示素子層DP-ELは、画素定義膜PDLと、画素定義膜PDLの間に配置される発光素子EDと、発光素子EDの上に配置される薄膜封止層TFEと、を含む。
【0062】
画素定義膜PDLは、高分子樹脂からなる。例えば、画素定義膜PDLは、ポリアクリレート系樹脂、またはポリイミド系樹脂を含む。また、画素定義膜PDLは、高分子樹脂以外に無機物を更に含んでもよい。一方、画素定義膜PDLは、光吸収物質を含んでもよく、黒色顔料または黒色染料を含んでもよい。また、画素定義膜PDLは無機物からなってもよい。例えば、画素定義膜PDLは、窒化ケイ素(SiNx)、酸化ケイ素(SiOx)、窒酸化ケイ素(SiOxNy)などを含んでもよい。画素定義膜PDLは、画素領域PXA-R、PXA-B、PXA-Gを定義する。画素定義膜PDLによって画素領域PXA-R、PXA-B、PXA-Gと非画素領域NPXAとが区分される。
【0063】
画素定義膜PDLは隔壁BKと重畳する。つまり、複数個の画素定義膜PDLそれぞれは、複数の隔壁BKそれぞれに対応して重畳する。
【0064】
発光素子EDは、互いに向かい合う第1電極EL1と第2電極EL2、及び第1電極EL1と第2電極EL2との間に配置される有機層OLを含む。発光素子EDの有機層OLは、複数のスタック構造ST1、ST2、ST3、ST4を含む。複数のスタック構造ST1、ST2、ST3、ST4それぞれには正孔輸送物質及び電子輸送物質を含む機能層と、発光物質を含む発光層が含まれる。つまり、一実施形態の表示モジュールDMに含まれる発光素子EDは、複数の発光層を含むタンデム構造の発光素子である。以下、発光素子EDに含まれる各機能層と発光層に関する説明は後述する。
【0065】
図4A及び
図4Bでは有機層OLに含まれる複数のスタック構造ST1、ST2、ST3、ST4がそれぞれの画素領域PXA-R、PXA-B、PXA-Gと非画素領域NPXA全体で共通に設けられる実施形態を示している。つまり、発光素子EDに含まれる複数のスタック構造ST1、ST2、ST3、ST4それぞれは、一部が画素定義膜PDLの上に配置され、画素領域PXA-R、PXA-B、PXA-Gに位置する複数のスタック構造ST1、ST2、ST3、ST4が画素定義膜PDLの上で互いに連結されて一体の形状を有する共通層を形成する。それによって、複数のスタック構造ST1、ST2、ST3、ST4内に配置される各機能層と発光層も画素領域PXA-R、PXA-B、PXA-G及び非画素領域NPXA全体で一体の形状を有する共通層を形成する。但し、実施形態はこれに限らず、
図4A及び
図4Bの図示とは異なって、一実施形態において複数のスタック構造ST1、ST2、ST3、ST4のうち少なくとも一部、は画素定義膜PDLに定義された開口部の内部にパターニングされて設けられてもよい。複数のスタック構造ST1、ST2、ST3、ST4のうち少なくとも一部、または複数のスタックST1、ST2、ST3、ST4内に含まれる機能層と発光層とのうち少なくとも一部は、インクジェットプリント法でパターニングされて、画素領域PXA-R、PXA-B、PXA-Gに重畳するように定義された画素定義膜PDLの開口部の内部に設けられてもよい。
【0066】
発光素子EDの上には薄膜封止層TFEが配置される。薄膜封止層TFEは、第2電極EL2の上に配置される。薄膜封止層TFEは、第2電極EL2の上に直接配置されてもよい。薄膜封止層TFEは、一層または複数の層が積層されている。薄膜封止層TFEは、少なくとも一つの絶縁層を含む。一実施形態による薄膜封止層TFEは、少なくとも一つの無機膜(以下、封止無機膜)を含む。また、一実施形態による薄膜封止層TFEは、少なくとも一つの有機膜(以下、封止有機膜)、及び少なくとも一つの封止無機膜を含む。
【0067】
封止無機膜は水分/酸素から発光素子EDを保護し、封止有機膜はほこり粒子のような異物から発光素子EDを保護する。封止無機膜は、窒化ケイ素、酸窒化ケイ素、酸化ケイ素、酸化チタン、または酸化アルミニウムなどを含んでもよいが、特にこれらに限らない。封止有機膜は、アクリル系化合物、エポキシ系化合物などを含む。封止有機膜は、光重合可能な有機物質を含むが、特にこれに限らない。
【0068】
一実施形態の表示装置ESは、表示パネルDPの上に配置される光制御部材CCMを含む。光制御部材CCMは、上部ベース層BLと、上部ベース層BLの下側に配置される光制御層CCLと、を含む。光制御層CCLは、互いに離隔されて配置される複数の隔壁BKと、隔壁BKの間に配置される複数の光制御部CCP-R、CCP-B、CCP-Gと、を含む。つまり、一実施形態による光制御部材CCMは、上部ベース層BLと、上部ベース層BL上に配置される複数の隔壁BKと、互いに離隔される複数の隔壁BKの間に配置される光制御部CCP-R、CCP-B、CCP-Gと、を含む。
図4Aでは光制御層CCLが配置される基準面を提供する上部ベース層BLが別途に設けられることを例示的に示したが、これに限らず、光制御層CCLは表示素子層DP-ELの薄膜封止層TFEが提供する基準面の上に配置されてもよい。
【0069】
一実施形態の光制御部材CCMは、複数の光制御部CCP-R、CCP-B、CCP-Gを含む。光制御部CCP-R、CCP-B、CCP-Gは、第1波長の光を透過させる第1光制御部CCP-Bと、第2波長の光を透過させる第2光制御部CCP-Gと、第3波長の光を透過させる第3光制御部CCP-Rと、を含む。第2波長の光は第1波長の光より長波長領域の光であり、第3波長の光は第1波長の光及び第2波長の光より長波長領域の光である。例えば、第1波長の光は青色光、第2波長の光は緑色光で、第3波長の光は赤色光であってもよい。第1波長の光は発光波長が410nm以上480nm以下の光であり、第2波長の光は発光波長が500nm以上600nm以下の光であり、第3波長の光は発光波長が620nm以上700nm以下の波長領域の光である。一方、第1波長の光は表示パネルDPから光制御層CCLに提供されるソース光である。
【0070】
第1光制御部CCP-B、第2光制御部CCP-G、及び第3光制御部CCP-Rそれぞれには、発光体が含まれる。発光体は、入射する光の波長を変換させて他の波長の光を発する粒子である。一実施形態において、第2光制御部CCP-G及び第3光制御部CCP-Rに含まれる発光体は量子ドット(Quantum Dot)または蛍光体である。但し、これらに限らず、第1光制御部CCP-Bは、第1光の波長を変換させずに透過させる透過部であってもよい。第1光制御部CCP-Bには、量子ドットなどの発光体が含まれなくてもよい。
【0071】
量子ドットは提供される光の波長を変換する粒子である。量子ドットのコアはII-VI族化合物、III-VI族化合物、I-III-VI族、III-V族化合物、III-II-V族化合物、IV-VI族化合物、IV族元素、IV族化合物、及びこれらの組み合わせから選択される。
【0072】
II-VI族化合物は、CdSe、CdTe、CdS、ZnS、ZnSe、ZnTe、ZnO、HgS、HgSe、HgTe、MgSe、MgS、及びこれらの混合物からなる群より選択される二元化合物、CdSeS、CdSeTe、CdSTe、ZnSeS、ZnSeTe、ZnSTe、HgSeS、HgSeTe、HgSTe、CdZnS、CdZnSe、CdZnTe、CdHgS、CdHgSe、CdHgTe、HgZnS、HeZnSe、HeZnTe、MgZnSe、MgZnS、及びこれらの混合物からなる群より選択される三元化合物、及びHgZnTeS、CdZnSeS、CdZnSeTe、CdZnSTe、CdHgSeS、CdHgSeTe、CdHgSTe、HgZnSeS、HgZnSeTe、HgZnSTe、及びこれらの混合物からなる群より選択される四元化合物からなる群より選択される。
【0073】
III-VI族化合物は、In2S3、In2Se3などのような二元化合物、InGaS3、InGaSe3などのような三元化合物、またはこれらの任意の組み合わせを含む。
【0074】
I-III-VI族化合物は、AgInS、AgInS2、CuInS、CuInS2、AgGaS2、CuGaS2、CuGaO2、AgGaO2、AgAlO2、及びこれらの混合物からなる群より選択される三元化合物、またはAgInGaS2、CuInGaS2などの四元化合物から選択される。
【0075】
III-V族化合物は、GaN、GaP、GaAs、GaSb、AlN、AlP、AlAs、AlSb、InN、InP、InAs、InSb、及びこれらの混合物からなる群より選択される二元化合物と、GaNP、GaNAs、GaNSb、GaPAs、GaPSb、AlNP、AlNAs、AlNSb、AlPAs、AlPSb、InGaP、InAlP、InNP、InNAs、InNSb、InPAs、InPSb、及びこれらの混合物からなる群より選択される三元化合物と、GaAlNP、GaAlNAs、GaAlNSb、GaAlPAs、GaAlPSb、GaInNP、GaInNAs、GaInNSb、GaInPAs、GaInPSb、InAlNP、InAlNAs、InAlNSb、InAlPAs、InAlPSb、及びこれらの混合物からなる群より選択される四元化合物とからなる群より選択される。一方、III-V族化合物はII族金属を更に含んでもよい。例えば、III-II-V族化合物としてInZnPなどが選択されてもよい。
【0076】
IV-VI族化合物は、SnS、SnSe、SnTe、PbS、PbSe、PbTe、及びこれらの混合物からなる群より選択される二元化合物と、SnSeS、SnSeTe、SnSTe、PbSeS、PbSeTe、PbSTe、SnPbS、SnPbSe、SnPbTe、及びこれらの混合物からなる群より選択される三元化合物と、SnPbSSe、SnPbSeTe、SnPbSTe、及びこれらの混合物からなる群より選択される四元化合物とからなる群より選択される。IV族元素は、Si、Ge、及びこれらの混合物からなる群より選択される。IV族化合物は、SiC、SiGe、及びこれらの混合物からなる群より選択される二元化合物である。
【0077】
この際、二元化合物、三元化合物、または四元化合物は均一な濃度で粒子内に存在するか、濃度分布が部分的に異なる状態に分けられて同一粒子内に存在する。また、一つの量子ドットが他の量子ドットを囲むコア-シェル構造を有してもよい。コア-シェル構造において、シェルに存在する元素の濃度がコアに行くほど低くなる濃度勾配(gradient)を有する。
【0078】
いくつかの実施形態において、量子ドットは上述したナノ結晶を含むコア、及び該コアを囲むシェルを含むコア-シェル構造を有する。量子ドットのシェルは、コアの化学的変性を防止して半導体特性を維持するための保護層の役割、及び/または量子ドットに電気泳動特性を与えるためのチャージング層(charging layer)の役割をする。シェルは単層または多重層である。量子ドットのシェルの例としては、金属または非金属の酸化物、半導体化合物、またはこれらの組み合わせなどが挙げられる。
【0079】
例えば、該金属または非金属の酸化物は、SiO2、Al2O3、TiO2、ZnO、MnO、Mn2O3、Mn3O4、CuO、FeO、Fe2O3、Fe3O4、CoO、Co3O4、NiOなどの二元化合物、またはMgAl2O4、CoFe2O4、NiFe2O4、CoMn2O4などの三元化合物などが挙げられるが、本発明はこれらに限らない。
【0080】
また、該半導体化合物は、CdS、CdSe、CdTe、ZnS、ZnSe、ZnTe、ZnSeS、ZnTeS、GaAs、GaP、GaSb、HgS、HgSe、HgTe、InAs、InP、InGaP、InSb、AlAs、AlP、AlSbなどが挙げられるが、本発明はこれらに限らない。
【0081】
量子ドットは、約45nm以下、好ましくは約40nm以下、より好ましくは約30nm以下の発光波長スペクトルの半値幅(full width of half maximum、FWHM)を有し、この範囲で色純度や色再現性を向上させることができる。また、このような量子ドットを介して発光される光は全方向に放出されるため、光視野角が向上される。
【0082】
また、量子ドットの形態は当分野で一般的に使用する形態のものであって特に限らないが、より詳しくは、球状、ピラミッド状、多腕(multi-arm)状、立方体(cubic)のナノ粒子、ナノチューブ、ナノワイヤ、ナノ繊維、ナノ板状粒子などの形態のものを使用してもよい。
【0083】
量子ドットは、粒子のサイズによって放出する光の色相が調節されるが、それによって量子ドットは青色、赤色、緑色など多様な発光色相を有する。量子ドットの粒子サイズが小さいほど短波長領域の光を発光する。例えば、緑色光を放出する量子ドットの粒子サイズは、赤色光を放出する量子ドットの粒子サイズより小さく、青色光を放出する量子ドットの粒子サイズは、緑色光を放出する量子ドットの粒子サイズより小さい。
【0084】
光制御層CCLに含まれる複数の光制御部CCP-R、CCP-B、CCP-Gそれぞれは、散乱体SPを更に含む。第1光制御部CCP-Bは、第1量子ドットQD1と散乱体SPを含み、第2光制御部CCP-Gは、第2量子ドットQD2と散乱体SPを含み、第3光制御部CCP-Rは、第3量子ドットQD3と散乱体SPを含む。但し、これに限らず、第1光制御部CCP-Bにおいて、第1量子ドットQD1は省略されて、第1光制御部CCP-Bは散乱体SPのみを含んでもよい。
【0085】
散乱体SPは無機粒子である。例えば、散乱体SPは、TiO2、ZnO、Al2O3、SiO2、及び中空シリカのうち少なくとも一つを含んでもよい。散乱体SPは、TiO2、ZnO、Al2O3、SiO2、及び中空シリカのうち少なくともいずれか一つを含むか、TiO2、ZnO、Al2O3、SiO2、及び中空シリカのうちから選択される2種以上の物質が混合されたものである。
【0086】
第1光制御部CCP-B、第2光制御部CCP-G、及び第3光制御部CCP-Rそれぞれは、量子ドットQD1、QD2、QD3及び散乱体SPを分散させるベース樹脂BR1、BR2、BR3を含む。一実施形態において、第1光制御部CCP-Bは、第1ベース樹脂BR1内に分散されている第1量子ドットQD1と散乱体SPを含み、第2光制御部CCP-Gは、第2ベース樹脂BR2内に分散されている第2量子ドットQD2と散乱体SPを含み、第3光制御部CCP-Rは、第3ベース樹脂BR3内に分散されている第3量子ドットQD3と散乱体SPを含む。上述したように、第1光制御部CCP-Bにおいて、第1量子ドットQD1は省略されてもよい。ベース樹脂BR1、BR2、BR3は、量子ドットQD1、QD2、QD3及び散乱体SPが分散される媒質であって、一般にバインダと称される多様な樹脂組成物からなる。例えば、ベース樹脂BR1、BR2、BR3は、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、シリコン系樹脂、エポキシ系樹脂などである。ベース樹脂BR1、BR2、BR3は透明樹脂である。一実施形態において、第1ベース樹脂BR1、第2ベース樹脂BR2、及び第3ベース樹脂BR3それぞれは、互いに同じであるか異なる。
【0087】
隔壁BKは、光制御層CCLと重畳する画素領域PXA-R、PXA-B、PXA-Gそれぞれを区分する開口部を定義する。光制御部CCP-R、CCP-B、CCP-Gは、隔壁BKに定義された開口部を充填する。一方、隔壁BKは、光吸収物質を含んで形成されるか、黒色顔料または黒色染料を含んで形成される。
【0088】
一実施形態による光制御部材CCMは、カラーフィルタ層CFLを更に含む。カラーフィルタ層CFLは、上部ベース層BLと光制御層CCLとの間に配置される。カラーフィルタ層CFLは、遮光部BMとフィルタCF-B、CF-G、CF-Rとを含む。カラーフィルタ層CFLは、青色光を透過させる第1フィルタCF-Bと、緑色光を透過させる第2フィルタCF-Gと、赤色光を透過させる第3フィルタCF-Rとを含む。例えば、第1フィルタCF-Bは青色フィルタ、第2フィルタCF-Gは緑色フィルタ、第3フィルタCF-Rは赤色フィルタであってもよい。第1~第3フィルタCF-B、CF-G、CF-Rそれぞれは、高分子感光樹脂と、顔料または染料を含む。第1フィルタCF-Bは青色の顔料または染料を含み、第2フィルタCF-Gは緑色の顔料または染料を含み、第3フィルタCF-Rは赤色の顔料または染料を含む。一方、実施形態はこれに限らず、第1フィルタCF-Bは顔料または染料を含まなくてもよい。この場合、第1フィルタCF-Bは高分子感光樹脂を含み、顔料または染料を含まない。第1フィルタCF-Bは透明であってもよく、第1フィルタCF-Bは透明感光樹脂からなってもよい。
【0089】
また、一実施形態において、第2フィルタCF-Gと第3フィルタCF-Rは黄色(yellow)フィルタであってもよい。この場合、第2フィルタCF-Gと第3フィルタCF-Rは、互いに区分されずに一体で提供される。
【0090】
遮光部BMはブラックマトリクスである。遮光部BMは、黒色顔料または黒色染料を含む有機遮光物質または無機遮光物質を含んで形成される。遮光部BMは、光漏れ現象を防止し、隣接するフィルタCF-B、CF-G、CF-Rの間の境界を区分する。また、一実施形態において、遮光部BMは、青色フィルタで形成されてもよい。複数の遮光部BMそれぞれは、複数の隔壁BKそれぞれに対応して重畳する。
【0091】
第1~第3フィルタCF-B、CF-G、CF-Rそれぞれは、青色画素領域PXA-B、緑色画素領域PXA-G、及び赤色画素領域PXA-Rそれぞれに対応して配置される。
【0092】
カラーフィルタ層CFLの上には上部ベース層BLが配置される。上部ベース層BLは、カラーフィルタ層CFL及び光制御層CCLなどが配置されるベース面を提供する部材である。上部ベース層BLは、ガラス基板、金属基板、プラスチック基板などである。しかし、実施形態はこれらに限らず、上部ベース層BLは無機層、有機層、または複合材料層であってもよい。また、図示とは異なって、一実施形態において上部ベース層BLは省略されてもよい。
【0093】
図示していないが、カラーフィルタ層CFLは低屈折層を更に含んでもよい。低屈折層は、フィルタCF-B、CF-G、CF-Rと光制御層CCLとの間に配置される。低屈折層の屈折率は、1.1以上1.5以下である。低屈折層の屈折率値は、低屈折層に含まれる中空無機粒子、及び/またはボイド(void)などの割合によって調節される。
【0094】
図示していないが、表示モジュールDMは、カラーフィルタ層CFLの上部または下部に設置され、表示モジュールDMに入射する外部光を遮断する反射防止層を更に含んでもよい。反射防止層は、外部光のうち一部を遮断する。反射防止層は、外部光によって表示パネルDPから発生する反射光を低減させる。反射防止層は、例えば、偏光層である。一実施形態において、表示モジュールDMは、上部ベース層BLの下部に配置される偏光層を更に含み、カラーフィルタ層CFLは省略されてもよい。
【0095】
光制御部材CCMは、水分及び酸素などを遮断し、上部及び下部に配置される構成を保護するバッファ層BFL1、BFL2を更に含む。バッファ層BFL1、BFL2は、第1バッファ層BFL1と第2バッファ層BFL2とを含む。第1バッファ層BFL1は、薄膜封止層TFEと光制御層CCLとの間に配置される。第2バッファ層BFL2は光制御層CCLとカラーフィルタ層CFLとの間に配置される。
【0096】
第1バッファ層BFL1は、光制御層CCLに水分及び/または酸素(以下、「水分/酸素」と称する)が浸透することを防ぐ役割をする。第1バッファ層BFL1は光制御層CCLの下部に配置され、光制御層CCLが水分/酸素に露出されることを遮断する。第1バッファ層BFL1は、少なくとも一つの無機層を含む。つまり、第1バッファ層BFL1は、無機物質を含んで形成される。例えば、第1バッファ層BFL1は、シリコン窒化物、アルミニウム窒化物、ジルコニウム窒化物、チタン窒化物、ハフニウム窒化物、タンタル窒化物、シリコン酸化物、アルミニウム酸化物、チタン酸化物、錫酸化物、セリウム酸化物、及びシリコン酸窒化物や、光透過率が確保された金属薄膜などを含んで形成される。一方、第1バッファ層BFL1は、有機膜を更に含んでもよい。第1バッファ層BFL1は単一層または複数の層からなる。
【0097】
第2バッファ層BFL2は、光制御層CCL及びカラーフィルタ層CFLを保護する保護層である。第2バッファ層BFL2は、シリコン窒化物、シリコン酸化物、シリコン酸窒化物のうち少なくとも一つの無機物を含む無機物層である。第2バッファ層BFL2は単一層または複数の層からなる。
【0098】
図4Bを参照すると、一実施形態による表示モジュールDM-1は、表示パネルDPと表示パネルDPの上に配置される光制御部材CCM-1とを含み、光制御部材CCM-1は光制御層CCL-1とカラーフィルタ層CFL-1とを含む。一実施形態による表示モジュールDM-1において、光制御層CCL-1は、表示パネルDPの上に配置される。光制御層CCL-1は、第1バッファ層BFL1を間に挟んで表示パネルDPの上に配置される。
【0099】
光制御部材CCM-1の光制御層CCL-1は、複数の隔壁BKと、隔壁BKの間に配置される光制御部CCP-R、CCP-B、CCP-Gとを含む。カラーフィルタ層CFL-1は、遮光部BM-1とフィルタCF-R1、CF-B1、CF-G1とを含む。
【0100】
図4Aに示した表示モジュールDMとは異なり、
図4Bに示した一実施形態による表示モジュールDM-1は、上部ベース層BLが省略され、光制御層CCL-1及びカラーフィルタ層CFL-1が薄膜封止層TFEの上面をベース面にして形成される実施形態である。つまり、光制御層CCL-1の光制御部CCP-R、CCP-B、CCP-Gは、表示パネルDPの上に連続工程で配置され、カラーフィルタ層CFL-1のフィルタCF-R1、CF-B1、CF-G1は、光制御層CCL-1の上に連続工程によって順次形成される。
【0101】
図示していないが、カラーフィルタ層CFL-1は、低屈折層を含んでもよい。カラーフィルタ層CFL-1に含まれる遮光部BM-1及びフィルタ部CF-R1、CF-B1、CF-G1のうち一部は省略されてもよい。光制御部材CCM-1は、水分及び酸素などを遮断し、上部及び下部に配置される構成を保護するバッファ層BFL1、BFL2を更に含む。バッファ層BFL1、BFL2は、薄膜封止層TFEと光制御層CCLとの間に配置される第1バッファ層BFL1と、光制御層CCLとカラーフィルタ層CFL-1との間に配置される第2バッファ層BFL2と、を含む。
【0102】
図4Aに示した表示モジュールDMとは異なり、
図4Cに示した一実施形態による表示モジュールDM-2は、画素領域PXA-R、PXA-B、PXA-Gに加え、白色画素領域PXA-Wを更に含む。一実施形態の表示モジュールDM-2において、発光素子EDは白色光を生成し、白色画素領域PXA-Wは発光素子EDで生成された光が変換されずに透過される領域である。
図4Cでは画素領域PXA-R、PXA-B、PXA-G、PXA-Wの平面上の面積が同じく示されているが、白色画素領域PXA-Wは他の画素領域PXA-R、PXA-B、PXA-Gそれぞれの面積とは異なる面積を有してもよい。白色画素領域PXA-Wから放出される白色光は、多様な波長の光が混合されている。
【0103】
一実施形態による表示モジュールDM-2の光制御層CCL-2は、第1光制御部CCP-Bと、第2光制御部CCP-Gと、第3光制御部CCP-Rに加えて第4光制御部CCP-Tを更に含む。第4光制御部CCP-Tは、白色画素領域PXA-Wに重畳するように配置される。第4光制御部CCP-Tと隣接する他の光制御部との間には隔壁BKが提供される。第4光制御部CCP-Tには、量子ドットなどの発光体が含まれない。第4光制御部CCP-Tは、入射した光の波長を変換せずに透過させる透過部である。第4光制御部CCP-Tは、第4ベース樹脂BR4内に分散されている散乱体SPのみを含む。第4ベース樹脂BR4及び散乱体SPに関する説明は上述した説明と同じ説明が適用される。
【0104】
一実施形態による表示モジュールDM-2のカラーフィルタ層CFL-2では、白色画素領域PXA-Wに重畳する開口部が、設けられる。カラーフィルタ層CFL-2に含まれるフィルタCF-B、CF-G、CF-R及び遮光部BMは、白色画素領域PXA-Wには重畳しない。詳しくは、第1フィルタCF-Bに白色画素領域PXA-Wに対応する開口部が設けられ、それによってフィルタCF-B、CF-G、CF-R及び遮光部BMは白色画素領域PXA-Wに重畳しない。但し、これに限らず、白色画素領域PXA-Wに第1フィルタCF-Bが重畳し、第1フィルタCF-Bは透明感光樹脂からなってもよい。
【0105】
図5Aは、本発明の一実施形態による発光素子EDを概略的に示す断面図である。以下、
図5Aを参照して本発明の一実施形態の発光素子EDについて説明する。
【0106】
図5Aを参照すると、一実施形態の発光素子EDは、第1電極EL1と、第1電極EL1と向かい合う第2電極EL2と、第1電極EL1と第2電極EL2との間に配置される複数のスタック構造ST1、ST2、ST3、ST4とを含む。複数のスタック構造ST1、ST2、ST3、ST4は、第1スタック構造ST1と、第2スタック構造ST2と、第3スタック構造ST3と、第4スタック構造ST4とを含む。第1スタック構造ST1、第2スタック構造ST2、第3スタック構造ST3、及び第4スタック構造ST4それぞれは、発光層を含む。
図5Aでは発光素子EDが計4つのスタック構造ST1、ST2、ST3、STS4を含む場合を例示的に示したが、これに限らず、発光素子EDは2つ、3つ、または5つ以上のスタック構造を含んでもよい。例えば、
図5Aに示した発光素子EDにおいて、第2スタック構造ST2及び第3スタック構造ST3は省略され、第1スタック構造ST1及び第4スタック構造ST4の2つのスタック構造を有する発光素子が提供されてもよい。
【0107】
一実施形態の発光素子EDにおいて、第1電極EL1と複数のスタック構造ST1、ST2、ST3、ST4との間には正孔輸送領域HTRが配置される。第2電極EL2と複数のスタック構造ST1、ST2、ST3、ST4との間には電子輸送領域ETRが配置される。一実施形態において、発光素子EDは、第1電極EL1から第2電極EL2の方向に光を出射する。一実施形態の発光素子EDは、光を出射する方向を基準に、正孔輸送領域HTRが複数のスタック構造ST1、ST2、ST3、ST4の下部に配置され、電子輸送領域ETRが複数のスタック構造ST1、ST2、ST3、ST4の上部に配置される構造を例示的に示している。但し、これに限らず、光を出射する方向を基準に、電子輸送領域ETRが複数のスタック構造ST1、ST2、ST3、ST4の下部に配置され、正孔輸送領域HTRが複数のスタック構造ST1、ST2、ST3、ST4の上部に配置される逆の素子構造を有してもよい。
【0108】
一実施形態の発光素子EDは、第2電極EL2の下に配置される電子輸送領域ETRを含む。電子輸送領域ETRは、第1発光層BEML-1、BEML-2、BEML-3と、第2発光層GEMLの上に配置される電子輸送層ETLと、電子輸送層ETLの上に配置される電子注入層EILとを含む。電子注入層EILは、第2電極EL2の下に配置されて、第2電極EL2から注入された電子を発光層BEML-1、BEML-2、BEML-3に円滑に移動させる役割をする。例えば、
図5Aに示した発光素子EDにおいて、電子注入層EILは、第2電極EL2から注入される電子を第2発光層GEMLに円滑に移動させる役割をしてもよい。電子注入層EILは、第2電極EL2と電子輸送層ETLとの間に配置される。電子注入層EILは、第2電極EL2の下面に直接配置される。電子注入層EILの上面と第2電極EL2の下面とは互いに接触する。
【0109】
一実施形態において、電子注入層EILは、マグネシウム(Mg)及びイッテルビウム(Yb)を含む。電子注入層EILは、マグネシウム(Mg)及びイッテルビウム(Yb)からなってもよい。イッテルビウム(Yb)は、低い仕事関数の金属で浅い(shallow)LUMO(lowest unoccupied molecular orbital)特性を有するため、第2電極EL2と電子注入層EILとの界面の間のエネルギー障壁を下げる役割をする。それによって、第2電極EL2の下に配置される電子注入層EILにイッテルビウム(Yb)が含まれれば、第2電極EL2から注入される電子を発光層EMLに円滑に移動させることができ、発光素子EDの効率及び寿命特性が改善される。
【0110】
マグネシウム(Mg)は、電子注入層EILに含まれて、電子注入層EILに含まれるイッテルビウム(Yb)の凝集及び移動(migration)を抑制し、電子注入層EILの上部に配置される第2電極EL2のカバレッジ効果を向上させる役割をする。また、マグネシウム(Mg)はイッテルビウム(Yb)と共に電子注入層EILに含まれて、発光層から出光される光の透過効率を向上させる。
【0111】
一実施形態の電子注入層EILは、マグネシウム(Mg)及びイッテルビウム(Yb)をいずれも含むことで、時間の経過に伴う第2電極EL2と電子注入層EILとの間の界面の変化を防止する。例えば、発光素子EDに電場が印加されると、電子注入層EILに含まれている金属物質は元素間の凝集や移動によって電子注入層EILの上部表面に島(island)を形成する。電子注入層EILの上部表面に島が形成されると、第2電極EL2のカバレッジ(coverage)特性が低下して画素の収縮を誘発する恐れがある。本発明によると、電子注入層EILがマグネシウム(Mg)とイッテルビウム(Yb)とをいずれも含むことで、第2電極EL2と電子注入層EILとの間の界面が安定化され、第2電極EL2のカバレッジ特性が増大されて、発光素子EDの安定性が高くなる。一方、本明細書において、「カバレッジ」とは第2電極EL2と電子注入層EILの互いに向かい合う表面の面積のうち、第2電極EL2の金属と電子注入層EILの金属とが互いに直接接触する表面の面積を意味する。
【0112】
電子注入層EILに含まれるマグネシウム(Mg)は、発光素子EDの透過率を増加させ、第2電極EL2のカバレッジ特性を向上させるために、イッテルビウム(Yb)に比べ質量比が高いか同じである。一実施形態において、電子注入層EIL内でのマグネシウム(Mg)及びイッテルビウム(Yb)の質量比は5:5~8:2である。マグネシウム(Mg)及びイッテルビウム(Yb)の質量比が上述した範囲を満たせば、電子注入特性が向上されながら、電子注入層EILによる第2電極EL2のカバレッジ特性が向上される。それによって、発光素子EDの発光効率及び寿命が改善され、画素の収縮が防止される。
【0113】
マグネシウム(Mg)及びイッテルビウム(Yb)の全体質量を基準に、イッテルビウム(Yb)の含量は10%以上50%以下である。イッテルビウム(Yb)の含量が10%未満であれば、電子注入特性が減少し、発光素子EDの発光効率が低下する恐れがある。イッテルビウム(Yb)の含量が50%を超過すれば、イッテルビウム(Yb)元素間の凝集力が大きくなって、電子注入層EILの特性が不安定になる恐れがある。そのため、第2電極EL2と電子注入層EILとの間の界面が変形される可能性があり、これは発光素子EDの劣化に繋がって画素の収縮及び寿命の低下を引き起こす恐れがある。
【0114】
マグネシウム(Mg)及びイッテルビウム(Yb)の全体質量を基準に、マグネシウム(Mg)の含量は50%以上80%以下である。マグネシウム(Mg)の含量が50%未満であれば、第2電極EL2のカバレッジ効果が低下し、透過率が低下して発光効率が減少する恐れがある。マグネシウム(Mg)の含量が80%を超過すれば、電子注入特性の低下のため、駆動電圧が上昇し、発光効率が低下する恐れがある。
【0115】
一実施形態において、電子注入層EILの厚さd1は1nm以上2nm以下である。電子注入層EILの厚さd1が上述した範囲を満たせば、実質的な駆動電圧の上昇なしに優れた電子注入特性を実現することができ、発光素子の発光効率が向上される。電子注入層EILの厚さd1が1nm未満であれば、薄い厚さのため電子注入層EILの表面が不安定になり、第2電極EL2のカバレッジ特性が低下する恐れがある。電子注入層EILの厚さd1が2nmを超過すれば、厚さのために駆動電圧が上昇し、素子寿命が減少する恐れがある。
【0116】
表示装置は、電子注入特性を向上させるために第2電極と発光層との間に電子注入層を備える。従来の表示装置は、電子注入特性を向上させるために、マグネシウム(Mg)のような金属とフッ化リチウム(LiF、Lithium fluoride)のような金属ハロゲン化合物の混合物を含む電子注入層を適用していた。フッ化リチウムのような金属ハロゲン化合物は、分子に存在する双極子(dipole)によって真空準位(vacuum level)が下に移動し、第2電極と電子注入層との間のイオン化ポテンシャルの差が相殺される効果があって、電子注入特が向上されたが、その一方で、金属と共に電子注入層に含まれた場合、素子作動の際に画素の収縮(pixel shrinkage)が発生する問題がある。
【0117】
本発明では、電子注入層EILがマグネシウム(Mg)及びイッテルビウム(Yb)からなって、第2電極EL2と電子注入層EILとの間の界面の変形(deformation)を防止し、電子注入層EILによる第2電極EL2のカバレッジ特性が向上されて画素収縮現象を防止する効果を有する。発光素子EDでは、電子注入層EILの組成(composition)の変化による膜質の低下や、第2電極EL2と電子注入層EILとの間の界面特性の変化による発光素子EDの寿命の減少や、画素の収縮が発生する恐れがある。本発明の一実施形態による発光素子EDは、第2電極EL2の下に配置される電子注入層EILマグネシウム(Mg)及びイッテルビウム(Yb)を含むことで、従来の電子注入層EILと同程度か更に改善された発光効率及び寿命特性を示しながらも、第2電極と電子注入層EILとの間の界面の特性変化を効果的に抑制し、画素の収縮を防止する。それによって、一実施形態の発光素子EDを表示装置ESに適用すれば、優れた効率及び信頼性を示す表示装置ESを実現することができる。
【0118】
更に
図5Aを参照すると、一実施形態による発光素子EDは、複数のスタック構造ST1、ST2、ST3、ST4の間に配置される電荷生成層CGL1、CGL2、CGL3を含む。一実施形態による発光素子EDは、第1スタック構造ST1と第2スタック構造ST2との間に配置される第1電荷生成層CGL1と、第2スタック構造ST2と第3スタック構造ST3との間に配置される第2電荷生成層CGL2と、第3スタック構造ST2と第4スタック構造ST3との間に配置される第3電荷生成層CGL3と、を含む。
【0119】
第1~第3電荷生成層CGL1、CGL2、CGL3は、電圧が印加されると、酸化-還元反応によって錯体を形成することで電荷(電子及び正孔)を生成する。そして、第1~第3電荷生成層CGL1、CGL2、CGL3は、生成された電荷を隣接したスタック構造ST1、ST2、ST3、ST4それぞれに提供する。第1~第3電荷生成層CGL1、CGL2、CGL3は隣接したそれぞれのスタック構造ST1、ST2、ST3、ST4に生じる電流の効率を倍に増加させ、隣接したスタック構造ST1、ST2、ST3、ST4の間で電荷の均衡を調節する役割をする。
【0120】
第1~第3電荷生成層CGL1、CGL2、CGL3それぞれは、n型電荷生成層n-CGL1、n-CGL2、n-CGL3とp型電荷生成層p-CGL1、p-CGL2、p-CGL3が互いに接合された層構造を有する。第1電荷生成層CGL1は、第1n型電荷生成層n-CGL1と第1p型電荷生成層p-CGL1が互いに接合した層構造を有する。第2電荷生成層CGL2は、第2n型電荷生成層n-CGL2と第2p型電荷生成層p-CGL2が互いに接合した層構造を有する。第3電荷生成層CGL3は、第3n型電荷生成層n-CGL3と第3p型電荷生成層p-CGL3が互いに接合した層構造を有する。
【0121】
第1~第3n型電荷生成層n-CGL1、n-CGL2、n-CGL3は、隣接したスタック構造に電荷を提供する電荷生成層である。第1~第3n型電荷生成層n-CGL1、n-CGL2、n-CGL3は、ベース物質にn型ドーパントがドーピングされた層である。第1~第3p型電荷生成層p-CGL1、p-CGL2、p-CGL3は、隣接したスタック構造に正孔を提供する電荷生成層である。図示していないが、第1~第3n型電荷生成層電荷生成層n-CGL1、n-CGL2、n-CGL3と第1~第3p型電荷生成層p-CGL1、p-CGL2、p-CGL3との間にはバッファ層が更に配置される。
【0122】
第1~第3電荷生成層CGL1、CGL2、CGL3それぞれは、n型アリールアミン系物質を含むか、p型金属酸化物を含む。例えば、第1~第3電荷生成層CGL1、CGL2、CGL3それぞれは、アリールアミン系物質の有機化合物、金属、金属の酸化物、炭化物、フッ化物、またはこれらの混合物からなる電荷発生化合物を含む。
【0123】
例えば、アリールアミン系の有機化合物はα-NPD、2-TNATA、TDATA、MTDATA、spiro-TAD、またはspiro-NPBである。例えば、金属はセシウム(Cs)、モリブデン(Mo)、バナジウム(V)、チタン(Ti)、タングステン(W)、バリウム(Ba)、またはリチウム(Li)である。また、例えば、金属の酸化物、炭化物、及びフッ化物はRe2O7、MoO3、V2O5、WO3、TiO2、Cs2CO3、BaF、LiF、またはCsFである。
【0124】
一実施形態による発光素子EDにおいて、第1スタック構造ST1、第2スタック構造ST2、及び第3スタック構造ST3それぞれには、第1波長の光を放出する第1発光層BEML-1、BEML-2、BEML-3が含まれる。第1波長の光は、青色波長領域の光である。一実施形態において、第1波長は420nm以上480nm以下である。第1発光層BEML-1、BEML-2、BEML-3は、420nm以上480nm以下の波長の光を発光する有機材料を含む。第1発光層BEML-1、BEML-2、BEML-3は、例えばホスト及びドーパントを含む。
【0125】
一実施形態において、第1発光層BEML-1、BEML-2、BEML-3は、第1スタック構造ST1に含まれる第1-1発光層BEML-1、第2スタック構造ST2に含まれる第1-2発光層BEML-2、及び第3スタック構造ST3に含まれる第1-3発光層BEML-3を含む。
【0126】
第1発光層BEML-1、BEML-2、BEML-3は、単一層構造を有する。例えば、第1発光層BEML-1、BEML-2、BEML-3に含まれる第1-1発光層BEML-1、第1-2発光層BEML-2、及び第1-3発光層BEML-3は、それぞれ単一層構造を有してもよい。単一層構造を有する第1発光層BEML-1、BEML-2、BEML-3は10nm以上40nm以下の厚さを有するが、これに限らない。例えば、
図5Aの図示とは異なって、第1発光層BEML-1、BEML-2、BEML-3のうち少なくとも一部は二層構造を有してもよい。この場合、第1発光層BEML-1、BEML-2、BEML-3のうち少なくとも一部が有する二層構造では、二層が互いに異なるホスト物質を含んでもよいが、これに限らない。
【0127】
第1発光層BEML-1、BEML-2、BEML-3はホスト及びドーパントを含む。一実施形態において、第1発光層BEML-1、BEML-2、BEML-3は、ホストと、第1波長の光を発光する第1ドーパントを含む。第1発光層BEML-1、BEML-2、BEML-3それぞれに含まれるホストは、青色蛍光ホストであり、第1ドーパントは青色蛍光ドーパントである。
【0128】
一実施形態による発光素子EDにおいて、第1発光層BEML-1、BEML-2、BEML-3に含まれるホストは下記化合物H1-1~化合物H1-9のうちから選択されるいずれか一つを含む。但し、第1発光層BEML-1、BEML-2、BEML-3に含まれるホスト物質は下記化合物に限らない。
【化1】
【0129】
一実施形態において、上記化合物H1-1~化合物H1-9は、それぞれ独立して水素原子のうちいずれか一つが重水素原子に置換されてもよい。例えば、化合物H1-1は下記化合物H1-1Dであってもよい。
【化2】
【0130】
一実施形態による発光素子EDにおいて、第1発光層BEML-1、BEML-2、BEML-3に含まれる第1ドーパントは下記化合物FD1~化合物FD33のうちから選択されるいずれか一つを含む。但し、第1発光層BEML-1、BEML-2、BEML-3に含まれる第1ドーパント物質は下記化合物に限らない。
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【0131】
一実施形態による発光素子EDにおいて、第4スタック構造ST4には、第2波長の光を放出する第2発光層GEMLが含まれる。第2波長の光は、緑色波長領域の光である。一実施形態において、第2波長は520nm以上600nm以下である。第2発光層GEMLは、520nm以上600nm以下の波長の光を発光する有機材料を含む。
【0132】
第2発光層GEMLは単一層構造を有する。単一層構造を有する第2発光層GEMLは、一つの層に互いに異なる2つのホスト物質が混合された層構造を有する。一実施形態において、第2発光層GEMLは、一つの層に正孔輸送性ホスト物質と電子輸送性ホスト物質が混合されている構造を有する。単一層構造を有する第2発光層GEMLは、10nm以上40nm以下の厚さを有する。例えば、
図5Aの図示とは異なって、第2発光層GEMLは、二層構造を有してもよい。第2発光層GEMLが二層構造を有する場合、二層は互いに異なるホスト物質を含んでもよいが、これに限らない。
【0133】
一実施形態において、第2発光層GEMLは、第1正孔輸送性ホストと、第1電子輸送性ホストと、第2ドーパントとを含む。第2発光層GEMLは、第1正孔輸送性ホスト及び第1電子輸送性ホストが混合されている層に、第2波長の光を発する第2ドーパントがドーピングされた層である。一実施形態において、第2発光層GEMLに含まれる第1正孔輸送性ホスト及び第1電子輸送性ホストは、第1発光層BEML-1、BEML-2、BEML-3に含まれるホスト物質とは異なる物質である。第2ドーパントは、りん光ドーパントである。第2ドーパントは、緑色のりん光ドーパントである。
【0134】
一実施形態による発光素子EDにおいて、第2発光層GEMLに含まれる第1正孔輸送性ホストは、下記化合物H4-1~化合物H4-11のうちから選択されるいずれか一つを含む。但し、第2発光層GEMLに含まれる第1正孔輸送性物質は下記化合物に限らない。
【化9】
【0135】
一実施形態による発光素子EDにおいて、第2発光層GEMLに含まれる第2電子輸送性ホストは、下記化合物H3-1~化合物H3-23のうちから選択されるいずれか一つを含む。但し、第2発光層GEMLに含まれる第2電子輸送性物質は、下記化合物に限らない。
【化10】
【化11】
【0136】
一実施形態による発光素子EDにおいて、第2発光層GEMLに含まれる第2ドーパントは、下記化合物PD1~化合物PD25のうちから選択されるいずれか一つを含む。但し、第2発光層GEMLに含まれる第2ドーパント物質は、下記化合物に限らない。
【化12】
【化13】
【化14】
【0137】
第1スタック構造ST1は、第1電極EL1から提供される正孔を第1発光層BEML-1に輸送する正孔輸送領域HTRと、第1電荷生成層CGL1から生成された電子を第1-1発光層BEML-1に輸送する第1中間電子輸送領域と、を更に含む。
【0138】
正孔輸送領域HTRは、第1電極EL1の上に配置される正孔注入層HILと、正孔注入層HILの上に配置される正孔輸送層HTLと、を含む。正孔輸送層HTLは、第1-1発光層BEML-1の下面に接触する。但し、これに限らず、正孔輸送領域HTRは、正孔輸送層HTLの上に配置される正孔側追加層を更に含んでもよい。正孔側追加層は、正孔バッファ層と、発光補助層と、電子阻止層とのうち少なくとも一つを含む。正孔バッファ層は、発光層から放出される光の波長による共振距離を補償して光放出効率を増加させる層である。電子阻止層は、電子輸送領域から正孔輸送領域への電子注入を防止する役割をする層である。
【0139】
第1中間電子輸送領域は、第1-1発光層BEML-1の上に配置される第1中間電子輸送層METL1を含む。第1中間電子輸送層METL1は、第1-1発光層BEML-1と第1電荷生成層CGL1との間に配置され、第1-1発光層BEML-1及び第1電荷生成層CGL1それぞれと接触する。但し、これに限らず、第1中間電子輸送領域は第1中間電子輸送層METL1と第1-1発光層BEML-1との間に配置される第1中間電子側追加層を更に含んでもよい。第1中間電子側追加層は、電子バッファ層と、正孔阻止層とのうち少なくとも一つを含む。また、第1中間電子輸送層METL1と第1電荷生成層CGL1との間には第1中間電子注入層が配置されてもよい。
【0140】
第2スタック構造ST2は、第1電荷生成層CGL1から生成された正孔を第1-2発光層BEML-2に輸送する第1中間正孔輸送領域MHTR1と、第2電荷生成層CGL2から提供される電子を第1-2発光層BEML-2に輸送する第2中間電子輸送領域を更に含む。
【0141】
第1中間正孔輸送領域MHTR1は、第1電荷生成層CGL1の上に配置される第1中間正孔注入層MHIL1と、第1中間正孔注入層MHIL1の上に配置される第1中間正孔輸送層MHTL1と、を含む。第1中間正孔輸送層MHTL1は、第1-2発光層BEML-2の下面に接触する。但し、これに限らず、第1中間正孔輸送領域MHTR1は、第1中間正孔輸送層MHTL1の上に配置される第1中間正孔側追加層を更に含んでもよい。第1中間正孔側追加層は、正孔バッファ層と、発光補助層と、電子阻止層とのうち少なくとも一つを含む。
【0142】
第2中間電子輸送領域は、第1-2発光層BEML-2の上に配置される第2中間電子輸送層METL2を含む。第2中間電子輸送層METL2は、第1-2発光層BEML-2と第2電荷生成層CGL2との間に配置され、第1-2発光層BEML-2及び第2電荷生成層CGL2それぞれと接触する。但し、これに限らず、第2中間電子輸送領域は、第2中間電子輸送層METL2と第1-2発光層BEML-2との間に配置される第2中間電子側追加層を更に含んでもよい。第2中間電子側追加層は、電子バッファ層と、正孔阻止層とのうち少なくとも一つを含む。また、第2中間電子輸送層METL2と第2電荷生成層CGL2との間には、第2中間電子注入層が配置されてもよい。
【0143】
第3スタック構造ST3は、第2電荷生成層CGL2から生成された正孔を第1-3発光層BEML-3に輸送する第2中間正孔輸送領域MHTR2と、第3電荷生成層CGL3から提供される電子を第1-3発光層BEML-3に輸送する第3中間電子輸送領域を更に含む。
【0144】
第2中間正孔輸送領域MHTR2は、第2電荷生成層CGL2の上に配置される第2中間正孔注入層MHIL2と、第2中間正孔注入層MHIL2の上に配置される第2中間正孔輸送層MHTL2と、を含む。第2中間正孔輸送層MHTL2は、第1-3発光層BEML-3の下面に接触する。但し、これに限らず、第2中間正孔輸送MHTL2は、第2中間正孔輸送層MHTL2の上に配置される第2中間正孔側追加層を更に含んでもよい。第2中間正孔側追加層は、正孔バッファ層と、発光補助層と、電子阻止層とのうち少なくとも一つを含む。
【0145】
第3中間電子輸送領域は、第1-3発光層BEML-3の上に配置される第3中間電子輸送層METL3を含む。第3中間電子輸送層METL3は、第1-3発光層BEML-3と第3電荷生成層CGL3との間に配置され、第1-3発光層BEML-3及び第3電荷生成層CGL3それぞれと接触する。但し、これに限らず、第3中間電子輸送領域は第3中間電子輸送層METL3と第1-3発光層BEML-3との間に配置される第3中間電子側追加層を更に含んでもよい。第3中間電子側追加層は、電子バッファ層と、正孔阻止層とのうち少なくとも一つを含む。また、第3中間電子輸送層METL3と第3電荷生成層CGL3との間には第3中間電子注入層が配置されてもよい。
【0146】
第4スタック構造ST4は、第3電荷生成層CGL3から生成された正孔を第2発光層GEMLに輸送する第3中間正孔輸送領域MHTR3と、第2電極EL2から提供される電子を第2発光層GEMLに輸送する電子輸送領域ETRを含む。第4スタック構造ST4は、上述した一実施形態の電子注入層EILを含む電子輸送領域ETRを含む。
【0147】
第3中間正孔輸送領域MHTR3は、第3電荷生成層CGL3の上に配置される第3中間正孔注入層MHTL3と、第3中間正孔注入層MHIL3の上に配置される第3中間正孔輸送層MHTL3と、を含む。第3中間正孔輸送層MHTL3は、第2発光層GEMLの下面に接触する。但し、これに限らず、第3中間正孔輸送領域MHTR3は、第3中間正孔輸送層MHTL3の上に配置される第3中間正孔側追加層を更に含んでもよい。第3中間正孔側追加層は、正孔バッファ層と、発光補助層と、電子阻止層とのうち少なくとも一つを含む。
【0148】
電子輸送領域ETRは、第2発光層GEMLの上に配置される電子輸送層ETLと、電子輸送層ETLの上に配置される電子注入層EILと、を含む。電子輸送層ETLは、第2発光層GEMLと接触する。但し、これに限らず、電子輸送領域ETRは、電子輸送層ETLと第2発光層GEMLとの間に配置される電子側追加層を更に含んでもよい。電子側追加層は、電子バッファ層と、正孔阻止層とのうち少なくとも一つを含む。
【0149】
図5B~
図5Dそれぞれは、別の一実施形態による発光素子ED-1、ED-2、ED-3の断面図である。以下、
図5B~
図5Dを参照して本発明の別の一実施形態による発光素子ED-1、ED-2、ED-3を説明するに当たって、先の
図5Aで説明した構成については同じ参照符号を付与し、詳細な説明は省略する。
【0150】
図5Bを参照すると、第2電極EL2の下に電子輸送領域ETR-1が配置される。電子輸送領域ETR-1は、第2電極EL2の下に配置される電子注入層EIL-1と、電子注入層EIL-1の下に配置される電子輸送層ETLとを含む。一実施形態による発光素子ED-1は、
図5Aに示した発光素子EDとは異なり、電子注入層EIL-1が二層構造を有する。一実施形態の電子注入層EIL-1は、第1サブ電子注入層SEIL1と第2サブ電子注入層SEIL2とを含む。第1サブ電子注入層SEIL1及び第2サブ電子注入層SEIL2は、互いに接触する層である。
【0151】
本発明の一実施形態による発光素子ED-1は、電子注入層EIL-1が金属物質からなる二層構造を含むことで、電子注入層EIL-1と隣接した機能層との間の界面が安定化され、それによって薄膜の安定性が向上されて、発光素子ED-1の発光効率及び寿命特性が改善される。
【0152】
第2サブ電子注入層SEIL2は、第2電極EL2の下に配置される。第2サブ電子注入層SEIL2は、第2電極EL2の下面に直接配置される。第2サブ電子注入層SEIL2の上面と第2電極EL2の下面は互いに接触する。
【0153】
第2サブ電子注入層SEIL2は、イッテルビウム(Yb)を含む。イッテルビウム(Yb)は、仕事関数(work function)が低い金属であって、発光層への電子の注入を円滑にして駆動電圧を下げる。よって、第2電極EL2の下面に直接配置される第2サブ電子注入層SEIL2にイッテルビウム(Yb)を含むことで、より向上された電子注入特性を期待することができる。また、マグネシウム(Mg)よりも自己拡散係数(self-diffusion coefficient)が小さいイッテルビウム(Yb)を含む第2サブ電子注入層SEIL2を第2電極EL2に隣接して配置することで、第2電極EL2と電子注入層EIL-1との間の界面が安定化されて発光素子ED-1の安定性が増大される。一実施形態において、第2サブ電子注入層SEIL2は、イッテルビウム(Yb)単一物質からなる。第2サブ電子注入層SEIL2がイッテルビウム(Yb)単一物質からなる場合、第2電極EL2と第2サブ電子注入層SEIL2との間の界面で金属間の有効接合面積が大きくなる。それによって、第2電極EL2のカバレッジ特性が向上されて発光素子ED-1の画素の収縮を防止し、発光素子ED-1の寿命が向上される。
【0154】
第1サブ電子注入層SEIL1は、マグネシウム(Mg)を含む。一実施形態において、第1サブ電子注入層SEIL1は、マグネシウム(Mg)単一物質からなる。マグネシウム(Mg)を含む第1サブ電子注入層SEIL1を第2サブ電子注入層SEIL2の下に配置すると、電子注入層EIL-1の光透過率が高くなって発光素子ED-1の効率が向上される。また、第1サブ電子注入層SEIL1に含まれるマグネシウム(Mg)は、第2サブ電子注入層SEIL2に含まれるイッテルビウム(Yb)が電子注入層EIL-1の下に配置される機能層に拡散することを防止する。電子注入層EIL-1に含まれる金属の材料的特性によっては、金属粒子のうち一部が移動する物理的拡散(physical distribution)が起こる。第1サブ電子注入層SEIL1は、第2サブ電子注入層SEIL2の下に配置されて、第2サブ電子注入層SEIL2に含まれている金属粒子が下部層、例えば、電子輸送層ETL及び発光層BEML-1、BEML-2、BEML-3に拡散することを防止する。それによって、素子駆動の際に画素の収縮や暗点のような欠陥の発生を減らすことができる。
【0155】
一実施形態において、電子注入層EIL-1の厚さd1-1は、1nm以上2nm以下である。電子注入層EIL-1の厚さd1-1が上述した範囲を満たせば、実質的な駆動電圧の上昇なしに優れた電子注入特性を実現することができ、発光効率ED-1の発光効率が向上される。電子注入層EIL-1の厚さd1-1が1nm未満であれば、薄い厚さのため電子注入層EIL-1の表面が不安定になり、第2電極EL2のカバレッジ特性が低下する恐れがある。電子注入層EIL-1の厚さd1-1が2nmを超過すれば、厚さのため駆動電圧が上昇し、素子寿命が減少する恐れがある。
【0156】
一実施形態において、第1サブ電子注入層SEIL1の厚さdS1は0.5nm以上0.9nm以下である。第1サブ電子注入層SEIL1の厚さdS1が0.5nm未満であれば、薄い厚さのため薄膜安定性が低下して素子寿命が減少し、透過率が低下されて発光効率が低下する恐れがある。第1サブ電子注入層SEIL1の厚さdS1が0.9nmを超過すると、電子注入特性が低下して駆動電圧が上昇し、発光効率及び寿命が低下する恐れがある。第1サブ電子注入層SEIL1の厚さが上述した範囲を満たせば、電子注入特性を確保しながらも発光層EMLから出光する光の透過率を増大することができる。
【0157】
一実施形態において、第2サブ電子注入層SEIL2の厚さdS2は0.1nm以上0.5nm以下である。第2サブ電子注入層SEIL2の厚さdS2が0.1nm未満であれば、薄い厚さのため第2電極EL2のカバレッジ特性が低下し、それによって画素の収縮が発生して、寿命特性が低下する恐れがある。第2サブ電子注入層SEIL2の厚さdS2が0.5nmを超過すると、透過率が低下し、電子注入特性が低下して発光素子ED-1の発光効率及び寿命特性が低下する恐れがある。
【0158】
図5C及び
図5Dを参照すると、別の一実施形態の発光素子ED-2、ED-3は
図5Aに示した発光素子EDとは異なり、第2発光層GEMLが第4スタック構造ST4に含まれずに他のスタック構造に含まれる。例えば、
図5Cに示した一実施形態の発光素子ED-2のように、第3スタック構造ST3が第2発光層GEMLを含み、第1スタック構造ST1、第2スタック構造ST2、及び第4スタック構造ST4がそれぞれ、第1発光層BEML-1、BEML-2、BEML-3を含んでもよい。または、
図5Dに示した一実施形態の発光素子ED-3のように、第1スタック構造ST1が第2発光層GEMLを含み、第2スタック構造ST2、第3スタック構造ST3、及び第4スタック構造ST4がそれぞれ、第1発光層BEML-1、BEML-2、BEML-3を含んでもよい。図示していないが、第2スタック構造ST2が第2発光層GEMLを含み、残りの第1スタック構造ST1、第3スタック構造ST3、及び第4スタック構造ST4が、それぞれ第1発光層BEML-1、BEML-2、BEML-3を含んでもよい。
【0159】
図5A~
図5Dを共に参照すると、一実施形態による発光素子ED、ED-1、ED-2、ED-3において、第1電極EL1は導電性を有する。第1電極EL1は金属材料、金属合金、または導電性化合物からなる。第1電極EL1はアノード(anode)またはカソード(cathode)である。しかし、実施形態はこれに限らない。また、第1電極EL1は画素電極である。
【0160】
一実施形態による発光素子ED、ED-1、ED-2、ED-3において、第1電極EL1は反射型電極であってもよい。例えば、第1電極EL1は、反射率が高いAg、Mg、Cu、Al、Pt、Pd、Au、Ni、Nd、Ir、Cr、Li、Ca、LiF/Ca、LiF/Al、Mo、Ti、W、In、Zn、Sn、またはこれらの化合物や混合物(例えば、AgとMgの混合物)を含む。または、第1電極EL1は、上記物質からなる反射膜及びITO(indium tin oxide)、IZO(indium zinc oxide)、ZnO(zinc oxide)、ITZO(indium tin zinc oxide)などからなる透明導電膜を含む複数の層構造を有してもよい。例えば、第1電極EL1は、ITO/Agの2層構造及びITO/Ag/ITOの3層構造を有してもよいが、これらに限らない。また、実施形態はこれに限らず、第1電極EL1は、上述した金属材料、上述した金属材料のうちから選択された2種以上の金属材料の組み合わせ、または上述した金属材料の酸化物などを含んでもよい。第1電極EL1の厚さは、約70nm~約1000nmである。例えば、第1電極EL1の厚さは、約100nm~約300nmであってもよい。
【0161】
一実施形態による発光素子ED、ED-1、ED-2、ED-3において、正孔輸送領域HTR及び中間正孔輸送領域MHTR1、MHTR2、MHTR3は、単一物質からなる単一層、複数の互いに異なる物質からなる単一層、または複数の互いに異なる物質からなる複数の層を有する多層構造を有する。
【0162】
正孔輸送領域HTR及び中間正孔輸送領域MHTR1、MHTR2、MHTR3それぞれは、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法(Langmuir-Blodgett)、インクジェットプリント法、レーザプリント法、レーザ熱転写法(Laser Induced Thermal Imaging、LITI)などのような多様な方法を利用して形成される。
【0163】
正孔輸送領域HTR及び中間正孔輸送領域MHTR1、MHTR2、MHTR3それぞれは、銅フタロシアニンなどのフタロシアニン化合物、DNTPD(N1,N1’-([1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジイル)ビス(N1-フェニル-N4,N4-ジ-m-トリルベンゼン-1,4-ジアミン))、m-MTDATA(4,4’,4”-[トリス(3-メチルフェニル)フェニルアミノ)トリフェニルアミノ]、TDATA(4,4’,4”-トリス(N,N-ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン)、2-TNATA(4,4’,4”-トリス[N(2-ナフチル)-N-フェニルアミノ]-トリフェニルアミン)、PEDOT/PSS(ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(4-スチレンスルフォナート)、PANI/DBSA(ポリアニリン/ドデシルベンゼンスルホン酸)、PANI/CSA(ポリアニリン/カンファースルホン酸)、PANI/PSS((ポリアニリン)/ポリ(4-スチレンスルフォナート))、NPB(N,N’-ジ(ナフタレン-1-イル)-N,N’-ジフェニル-ベンジジン)、トリフェニルアミンを含むポリエテールケトン(TPAPEK)、4-イソプロピル-4’-メチルジフェニルヨードニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラート、HATCN(ジピラジノ[2,3-f:2’,3’-h]キノキサリン-2,3,6,7,10,11-ヘキサカルボニトリル)などを含んでもよい。
【0164】
正孔輸送領域HTR及び中間正孔輸送領域MHTR1、MHTR2、MHTR3それぞれは、例えば、N-フェニルカルバゾール、ポリビニルカルバゾールなどのカルバゾール系誘導体、フルオレン系誘導体、TPD(N,N’-ビス(3-メチルフェニル)-N,N’-ジフェニル-[1,1’-ビフェニル]-4,4’-ジアミン)、TCTA(4,4’,4”-トリス(N-カルバゾリル)トリフェニルアミン)などのようなトリフェニルアミン系誘導体、NPB(N,N’-ジ(ナフタレン-1-イル)-N,N’-ジフェニル-ベンジジン)、TAPC(4,4’-シクロへキシリデンビス[N,N-ビス(4-メチルフェニル)ベンゼンアミン])、HMTPD(4,4’-ビス[N,N’-(3-トリル)アミノ]-3,3’-ジメチルビフェニル)、mCP(1,3-ビス(N-カルバゾリル)ベンゼン)などを含んでもよい。
【0165】
また、正孔輸送領域HTR及び中間正孔輸送領域MHTR1、MHTR2、MHTR3それぞれは、CzSi(9-(4-tert-ブチルフェニル)-3,6-ビス(トリフェニルシリル)-9H-(カルバゾール)、CCP(9-フェニル-9H-3,9’-ビカルバゾール)、またはmDCP(1,3-ビス(1,8-ジメチル-9H-カルバゾール-9-イル)ベンゼン)などを含んでもよい。
【0166】
正孔輸送領域HTRは、上述した正孔輸送領域の化合物を正孔孔注入層HIL、正孔輸送層HTL、及び正孔側追加層のうち少なくとも一つに含む。中間正孔輸送領域MHTR1、MHTR2、MHTR3は、上述した正孔輸送領域の化合物を中間正孔注入層MHIL1、MHIL2、MHIL3、中間正孔輸送層MHTL1、MHTL2、MHTL3、及び中間正孔側追加層のうち少なくとも一つを含む。
【0167】
正孔輸送領域HTR及び中間正孔輸送領域MHTR1、MHTR2、MHTR3それぞれの厚さは、約10nm~約1000nm、例えば、約10nm~約500nmである。正孔注入層HIL及び中間正孔注入層MHIL1、MHIL2、MHIL3それぞれの厚さは、例えば、約5nm~約100nmである。正孔輸送層HTL及び中間正孔輸送層MHTL1、MHTL2、MHTL3それぞれの厚さは、約5nm~約100nmである。正孔輸送領域HTRが正孔側追加層を含む場合、正孔側追加層の厚さは、約1nm~約100nmである。中間正孔輸送領域MHTR1、MHTR2、MHTR3が中間正孔側追加層を含む場合、中間正孔側追加層の厚さは、約1nm~約100nmである。正孔輸送領域HTR及び中間正孔輸送領域MHTR1、MHTR2、MHTR3と、これらに含まれる各層の厚さが上述した範囲を満たせば、実質的な駆動電圧の上昇なしに十分な正孔輸送特性が得られる。
【0168】
正孔輸送領域HTR及び中間正孔輸送領域MHTR1、MHTR2、MHTR3それぞれは、上述した物質以外に、導電性を向上するために電荷生成物質を更に含んでもよい。電荷発生物質は、正孔輸送領域HTR及び中間正孔輸送領域MHTR1、MHTR2、MHTR3内に均一にまたは不均一に分散されている。電荷発生物質は、例えば、p型ドーパント(dopant)である。p型ドーパントは、ハロゲン化金属化合物、キノン誘導体、金属酸化物及びシアノ基含有化合物のうち少なくとも一つを含んでもよいが、これらに限らない。例えば、p-ドーパントは、CuI及びRbIなどのハロゲン化金属化合物、TCNQ(テトラシアノキノジメタン)及びF4-TCNQ(2,3,5,6-テトラフルオロ-7,7’,8,8-テトラシアノキノジメタン)などのようなキノン誘導体、タングステン酸化物、及びモリブデン酸化物のような金属酸化物などが挙げられるが、実施形態はこれらに限らない。
【0169】
第1発光層BEML-1、BEML-2、BEML-3及び第2発光層GEMLは、正孔輸送領域HTRまたは及び中間正孔輸送領域MHTR1、MHTR2、MHTR3の上にそれぞれ配置される。第1-1発光層BEML-1は正孔輸送領域HTRの上に設けられ、第1-2発光層BEML-2は第1中間正孔輸送領域MHTR1の上に設けられ、第1-3発光層BEML-3は第2中間正孔輸送領域MHTR3の上に設けられ、第1発光層GEMLは第3中間正孔輸送領域MHTR3に設けられる。
【0170】
第1発光層BEML-1、BEML-2、BEML-3及び第2発光層GEMLは、上述したホスト材料及びドーパント材料を含む。第1発光層BEML-1、BEML-2、BEML-3及び第2発光層GEMLは、正孔輸送性ホスト材料としてカルバゾール誘導体部分構造、またはアミン誘導体部分構造を含む物質を含む。第1発光層BEML-1、BEML-2、BEML-3及び第2発光層GEMLは、電子輸送性ホスト材料としてピリジン誘導体部分構造、ピリダジン誘導体部分構造、ピリミジン誘導体部分構造、ピラジン誘導体部分構造、トリアジン誘導体部分構造などの含窒素芳香族環構造を含む物質を含む。
【0171】
第1発光層BEML-1、BEML-2、BEML-3及び第2発光層GEMLは、ホスト材料としてアントラセン誘導体、ピレン誘導体、フルオランテン誘導体、クリセン誘導体、ジヒドロベンズアントラセン誘導体、またはトリフェニレン誘導体などを含んでもよい。また、第1発光層BEML-1、BEML-2、BEML-3及び第2発光層GEMLは、ホスト材料として当技術分野で知られている一般的な材料を更に含んでもよい。例えば、第1発光層BEML-1、BEML-2、BEML-3及び第2発光層GEMLは、ホスト材料として、DPEPO(ビス[2-(ジフェニルホスフィノ)フェニル]エーテルオキシド)、CBP(4,4-ビス(カルバゾール-9-イル)ビフェニル)、mCP(1,3-ビス(カルバゾール-9-イル)ベンゼン)、PPF(2,8-ビス(ジフェニルホスホリル)ジベンゾ[b,d]フラン)、TCTA(4,4’,4”-トリス(カルバゾール-9-イル)-トリフェニルアミン)、及びTPBi(1,3,5-トリス(1-フェニル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)ベンゼン)のうち少なくとも一つを含んでもよい。但し、これらに限らず、例えば、Alq3(トリス(8-ヒドロキシキノリノ)アルミニウム)、PVK(ポリ(N-ビニルカルバゾール)、ADN(9,10-ジ(ナフタレン-2-イル)アントラセン)、TBADN(3-tert-ブチル-9,10-ジ(ナフト-2-イル)アントラセン)、DSA(ジスチリルアリーレン)、CDBP(4,4’-ビス(9-カルバゾリル)-2,2’-ジメチル-ビフェニル)、MADN(2-メチル-9,10-ビス(ナフタレン-2-イル)アントラセン)、CP1(ヘキサフェニルシクロトリホスファゼン)、UGH2(1,4-ビス(トリフェニルシリル)ベンゼン)、DPSiO3(ヘキサフェニルシクロトリシロキサン)、DPSiO4(オクタフェニルシクロテトラシロキサン)などをホスト材料として使用してもよい。
【0172】
一実施形態において、第1発光層BEML-1、BEML-2、BEML-3は、公知の蛍光ドーパント材料として、スチリル誘導体(例えば、1,4-ビス[2-(3-N-エチルカルバゾリル)ビニル]ベンゼン(BCzVB)、4-(ジ-p-トリルアミノ)-4’-[(ジ-p-トリルアミノ)スチリル]スチルベン(DPAVB)、N-(4-((E)-2-(6-((E)-4-(ジフェニルアミノ)スチリル)ナフタレン-2-イル)ビニル)フェニル)-N-フェニルベンゼンアミン(N-BDAVBi))、4,4’-ビス[2-(4-(N,N-ジフェニルアミノ)フェニル)ビニル]ビフェニル(DPAVBi)、ぺリレン及びその誘導体(例えば、2,5,8,11-テトラ-t-ブチルぺリレン(TBP))、ピレン及びその誘導体(例えば、1,1-ジピレン、1,4-ジピレニルベンゼン、1,4-ビス(N、N-ジフェニルアミノ)ピレン)などを含んでもよい。
【0173】
第2発光層GEMLは、公知のりん光ドーパント物質を含んでもよい。例えば、りん光ドーパントとしては、イリジウム(Ir)、白金(Pt)、オスミウム(Os)、金(Au)、チタン(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、ユウロピウム(Eu)、テルビウム(Tb)、またはツリウム(Tm)を含む金属錯体が使用されてもよい。詳しくは、Flrpic(イリジウム(III)ビス(4,6-ジフルオロフェニルピリジナト-N,C2’)ピコリナート)、Fir6(ビス(2,4-ジフルオロフェニルピリジナト)-テトラキス(1-ピラゾリル)ボラートイリジウム(III))、またはPtOEP(白金-オクタエチルポルフィリン)がりん光ドーパントとして使用されてもよい。第2発光層GEMLは、緑色発光するりん光ドーパント物質を含む。
【0174】
電子輸送領域ETR及び中間電子輸送領域それぞれは、第1発光層BEML-1、BEML-2、BEML-3及び第2発光層GEMLの上に配置される。電子輸送領域ETR及び中間電子輸送領域それぞれは、単一物質からなる単一層、複数の互いに異なる物質からなる単一層、または複数の互いに異なる物質からなる複数の層を有する多層構造を有する。
【0175】
電子輸送領域ETR及び中間電子輸送領域それぞれは、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法、インクジェットプリント法、レーザプリント法、レーザ熱転写法(LITI)などのような多様な方法を利用して形成される。
【0176】
電子輸送領域ETRは、上述したマグネシウム(Mg)及びイッテルビウム(Yb)金属を一実施形態の電子注入層EIL、EIL-1に含む。一実施形態の電子注入層EIL、EIL-1は上述したマグネシウム(Mg)及びイッテルビウム(Yb)金属からなる。但し、これに限らず、電子注入層EIL、EIL-1は上述したマグネシウム(Mg)及びイッテルビウム(Yb)以外に後述する化合物をさらに含んでもよい。
【0177】
電子輸送領域ETR及び中間電子輸送領域それぞれは、アントラセン系化合物を含んでもよい。但し、これに限らず、電子輸送層ETL及び中間電子輸送領域それぞれは、例えば、Alq3(トリス(8-ヒドロキシキノリナト)アルミニウム)、1,3,5-トリ[(3-ピリジル)-フェン-3-イル]ベンゼン、T2T(2,4,6-トリス(3’-(ピリジン-3-イル)ビフェニル-3-イル)-1,3,5-トリアジン)、2-(4-(N-フェニルベンゾイミダゾール-1-イル)フェニル)-9,10-ジナフチルアントラセン、TPBi(1,3,5-トリ(1-フェニル-1H-ベンゾ[d]イミダゾール-2-イル)ベンゼン)、BCP(2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)、Bphen(4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)、TAZ(3-(4-ビフェニルイル)-4-フェニル-5-テルト-ブチルフェニル-1,2,4-トリアゾール)、NTAZ(4-(ナフタレン-1-イル)-3,5-ジフェニル-4H-1,2,4-トリアゾール)、tBu-PBD(2-(4-ビフェニルイル)-5-(4-テルトーブチルフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール)、BAlq(ビス(2-メチル-8-キノリノラト-N1,O8)-(1,1’-ビフェニル-4-オラト)アルミニウム)、Bebq2(ベリリウムビス(ベンゾキノリン-10-オラト)、ADN(9,10-ジ(ナフタレン-2-イル)アントラセン)、BmPyPhB(1,3-ビス[3,5-ジ(ピリジン-3-イル)フェニル]ベンゼン)、及びこれらの混合物を含んでもよい。
【0178】
また、電子輸送領域ETR及び中間電子輸送領域それぞれは、LiF、NaCl、CsF、RbCl、RbI、CuI、KIのようなハロゲン化金属、Ybのようなランタノイド族金属、または上述したハロゲン化金属とランタノイド族金属の共蒸着材料を含んでもよい。例えば、電子輸送領域ETR及び中間電子輸送領域は、共蒸着材料として、KI:Yb、RbI:Ybなどを含んでもよい。一方、電子輸送領域ETR及び中間電子輸送領域には、Li2O、BaOのような金属酸化物、またはLiq(8-ヒドロキシ-リチウムキノラート)などが使用されてもよいが、実施形態はこれらに限らない。電子輸送領域ETR及び中間電子輸送領域それぞれは、電子輸送物質と絶縁性の有機金属塩(organo metal salt)が混合された物質を含んでもよい。有機金属塩は、エネルギーバンドギャップ(energy band gap)が約4eV以上の物質である。詳しくは、例えば、有機金属塩は、酢酸金属塩(metal acetate)、安息香酸金属塩(metal benzoate)、アセト酢酸金属塩(metal acetoacetate)、金属アセチルアセトネート(metal acetylacetonate)、またはステアリン酸金属塩(metal stearate)を含む。
【0179】
電子輸送領域ETR及び中間電子輸送領域それぞれは、上述した材料以外に、BCP(2,9-ジメチル-4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)、及びBphen(4,7-ジフェニル-1,10-フェナントロリン)のうち少なくとも一つを更に含んでもよいが、これらに限らない。
【0180】
電子輸送領域ETRは、上述した電子輸送領域の化合物を電子注入層EIL、EIL-1または電子輸送層ETLに含む。電子輸送領域ETRが電子側追加層を含む場合、電子側追加層は上述した物質を含んでもよい。中間電子輸送領域は、上述した電子輸送領域の化合物を中間電子輸送層METL1、METL2、METL3に含んでもよい。中間電子輸送領域は、上述した電子輸送領域の化合物を中間電子側追加層または中間電子注入層に含んでもよい。
【0181】
電子輸送領域ETR及び中間電子輸送領域それぞれの厚さは、例えば、約10nm~約150nmである。電子輸送層ETLの厚さは、約0.1nm~約100nm、例えば、約0.3nm~約50nmである。電子輸送層HTLの厚さが上述したような範囲を満たせば、実質的な駆動電圧の上昇なしに十分な電子輸送特性が得られる。中間正孔輸送領域に含まれる中間電子輸送層METL1、METL2、METL3の厚さは、約0.1nm~約100nm、例えば、約0.1nm~約50nmである。
【0182】
第2電極EL2は、電子輸送領域ETRの上に設けられる。表示パネルDPにおいて、第2電極EL2は共通電極であってもよい。第2電極EL2はカソードまたはアノードであってもよいが、実施形態はこれに限らない。例えば、第1電極EL1がアノードであれば第2電極はカソードで、第1電極EL1がカソードであれば第2電極EL2はアノードであってもよい。
【0183】
第2電極EL2は、半透過型電極または透過型電極である。。第2電極EL2が透過型電極であれば、第2電極EL2は透明金属酸化物、例えば、ITO、IZO、ZnO、ITZOなどからなる。
【0184】
第2電極EL2が半透過型電極または反射型電極であれば、第2電極EL2は、Ag、Mg、Cu、Al、Pt、Pd、Au、Ni、Nd、Ir、Cr、Li、Ca、LiF/Ca、LiF/Al、Mo、Ti、Yb、W、In、Zn、Sn、またはこれらを含む化合物や混合物(例えば、AgMg、AgYb、またはMgAg)を含む。または、第2電極EL2は、上述した物質からなる反射膜や半透過膜、及びITO、IZO、ZnO、ITZOなどからなる透明導電膜を含む複数の層構造を有してもよい。例えば、第2電極EL2は、上述した金属材料、上述した金属材料のうちから選択された2種以上の金属材料の組み合わせ、または上述した金属材料の酸化物などを含んでもよい。
【0185】
図示していないが、第2電極EL2は、補助電極と接続されてもよい。第2電極EL2が補助電極と接続されると、第2電極EL2の抵抗を減少させることができる。
【0186】
一実施形態の発光素子ED、ED-1、ED-2、ED-3の第2電極EL2の上には、キャッピング層CPLが更に配置されてもよい。キャピング層CPLは、多層または単層を含む。
【0187】
一実施形態において、キャッピング層CPLは、有機層または無機層である。例えば、キャッピング層CPLが無機物を含む場合、無機物は、LiFなどのアルカリ金属化合物、MgF2などのアルカリ土類化合物、SiON、SiNx、SiOyなどを含んでもよい。
【0188】
例えば、キャッピング層CPLが有機物を含む場合、有機物は、α-NPD、NPB、TPD、m-MTDATA、Alq
3、CuPc、TPD15(N4,N4,N4’,N4’-テトラ(ビフェニル-4-イル)ビフェニル-4,4’-ジアミン)、TCTA(4,4’,4”-トリス(カルバゾール ソル-9-イル)トリフェニルアミン)などを含むか、エポキシ樹脂、またはメタクリレートなどのようなアクリレートを含んでもよい。但し、実施形態はこれらに限らず、キャッピング層CPLは、下記のような化合物P1~化合物P5のうち少なくとも一つを含んでもよい。
【化15】
【化16】
【0189】
キャッピング層CPLの屈折率は、1.6以上であることが好ましい。詳しくは、550nm以上660nm以下の波長範囲の光に対して、キャッピング層CPLの屈折率は1.6以上である。
【0190】
一実施形態の表示装置ESに含まれる発光素子ED、ED-1、ED-2、ED-3は、複数の第1発光層BEML-1、BEML-2、BEML-3と第2発光層GEMLを含む構造を有し、複数の共振距離における発光を利用することができて、発光効率が大きく向上する。特に、
図5Aに示した発光素子EDでは、420nm以上480nm以下の波長範囲を有する第1光の4次共振領域において効率が最大化されるように、520nm以上600nm以下の波長範囲の第2光を発光する第2発光層を第4スタックST4に配置し、発光素子の発光効率を向上させる。
【0191】
以下では実施例及び比較例を参照しながら、本発明の一実施形態による発光素子の特性評価の結果を説明する。また、以下に示す実施例は本発明の理解を助けるための一例示であって、本発明の範囲はこれに限らない。
【0192】
(発光素子の作製)
以下に述べる実施例及び比較例において、420nm以上480nm以下の波長範囲の光を発光する第1発光層を含む第1スタック構造、第2スタック構造、及び第3スタック構造が積層され、520nm以上600nm以下の波長範囲の光を発光する第2発光層を含む第4スタック構造が第3スタック構造の上に積層されるタンデム発光素子を作製した。各スタック構造の間にはTPM-TAZ(2,4,6-トリス(3-(ピリミジン-5-イル)フェニル)1,3,5-トリアジン)にLiqをドーピングしたn型電荷生成層と、CBP(4,4’-ビス(N-カルバゾリル)-1,1’-ビフェニル)にLiをドーピングしたp型電荷生成層とを配置した。また、第1電極としてITO/Ag/ITOを、第2電極としてAgMgを使用し、正孔注入層及び中間正孔注入層物質としてHATCN(1,4,5,8,9,11-ヘキサアザトリフェニレンヘキサカルボニトリル)、正孔輸送層及び中間正孔輸送層物質としてNPB(N,N’-ジ(1-ナフチル)-N,N’-ジフェニル-(1,1’-ビフェニル)-4,4’ージアミン)、中間電子輸送層物質としてT2T(2,4,6-トリス(ビフェニル-3-イル)-1,3,5-トリアジン)、電子輸送層物質としてTPM-TAZにLiqをドーピングした層、電子注入層物質としてMgとYbを使用した。各層は、真空条件下で蒸着法によって形成した。第2電極の上には上述した化合物P4によって厚さ70nmのキャッピング層を形成した。各スタック構造における各層の厚さは以下のとおりである。第1スタック構造において、正孔注入層(HIL)の厚さは47nmとし、正孔輸送層(HTL)の厚さを185nmとし、第1発光層(BEML-1)の厚さを161nmとし、第1中間電子輸送層(METL1)の厚さを142nmとした。第2スタック構造において、第1中間正孔注入層(MHIL1)の厚さを522nmとし、第1中間正孔輸送層(MHTL1)の厚さを71nmとし、第1発光層(BEML-2)の厚さを161nmとし、第2中間電子輸送層(METL2)の厚さを12nmとした。第3スタック構造において、第2中間正孔注入層(MHIL2)の厚さを466nmとし、第2中間正孔輸送層(MHTL2)の厚さを71nmとし、第1発光層(BEML-3)の厚さを161nmとし、第3中間電子輸送層(METL3)の厚さを142nmとした。第4スタック構造において、第3中間正孔注入層(MHIL3)の厚さを285nmとし、第3中間正孔輸送層(MHTL3)の厚さを47nmとし、第2発光層(GEML)の厚さを266nmとし、電子輸送層(ETL)の厚さを456nmとした。第1スタック構造と第2スタック構造との間、第2スタック構造と第3スタック構造との間、及び第3スタック構造と第4スタック構造との間に位置する第1~第3電荷生成層(CGL1~CGL3)において、n型電荷生成層(n-CGL)の厚さをそれぞれ38nmとし、p型電荷生成層(p-CGL)の厚さをそれぞれ66nmとした。
【0193】
実施例及び比較例において、第1発光層に含まれるホスト材料としては、上述した化合物H1-1を使用した。第1発光層に含まれるドーパント材料としては、上述した化合物FD32を使用した。第2発光層に含まれ正孔子輸送性ホスト材料としては、上述した化合物H4-3を使用した。第2発光層に含まれる電子輸送性ホスト材料としては、化合物H3-23を使用した。第2発光層に含まれるドーパント材料としては、化合物PD13を使用した。
【0194】
実施例及び比較例の素子では、第1スタック構造、第2スタック構造、第3スタック構造に含まれる第1発光層BEML-1、BEML-2、BEML-3及び第2発光層GEMLそれぞれが単一層構造を有するように作製した。一方、実施例及び比較例の素子において、第2発光層GEMLはいずれも正孔輸送性ホスト材料と電子輸送性ホスト材料とが混合されている単一層構造を有するように作製した。
【0195】
(実施例1~4及び比較例1~9の特性評価)
実施例1~4の発光素子では、
図5Aに示した積層構造のように電子注入層が単一層構造を有するように作製した。実施例1では、電子注入層におけるマグネシウム(Mg)とイッテルビウム(Yb)の質量比を5:5にし、電子注入層の厚さを1.0nmにして発光素子を作製した。実施例2では、電子注入層におけるマグネシウム(Mg)とイッテルビウム(Yb)の質量比を7:3にし、電子注入層の厚さを1.0nmにして発光素子を作製した。実施例3では、電子注入層におけるマグネシウム(Mg)とイッテルビウム(Yb)の質量比を8:2にし、電子注入層の厚さを1.0nmにして発光素子を作製した。実施例4では、電子注入層におけるマグネシウム(Mg)とイッテルビウム(Yb)の質量比を8:2にし、電子注入層の厚さを2.0nmにして発光素子を作製した。
【0196】
比較例1及び2では、電子注入層がマグネシウム(Mg)またはイッテルビウム(Yb)の単一物質からなっており、電子注入層の厚さをそれぞれ1.0nmにして発光素子を作製した。比較例3では、電子注入層を形成する際にマグネシウム(Mg)の代わりにフッ化リチウム(LiF)を使用したことを除いては、実施例3と同様に発光素子を作製した。比較例4では、電子注入層を形成する際にイッテルビウム(Yb)の代わりにフッ化リチウム(LiF)を使用し、フッ化リチウム(LiF)とマグネシウム(Mg)の質量比を8:2にしたことを除いては、実施例3と同様に発光素子を作製した。比較例5では、電子注入層の厚さを0.5nmにしたことを除いては実施例3と同様に発光素子を作製した。比較例6では、電子注入層の厚さを2.5nmにしたことを除いては実施例3と同様に発光素子を作製した。比較例7では、マグネシウム(Mg)及びイッテルビウム(Yb)の質量比を4:6にしたことを除いては実施例3と同様に発光素子を作製した。比較例8では、マグネシウム(Mg)及びイッテルビウム(Yb)の質量比を9:1にしたことを除いては実施例3と同様に発光素子を作製した。比較例9では、マグネシウム(Mg)及びイッテルビウム(Yb)の質量比を9.5:0.5にしたことを除いては実施例3と同様に発光素子を製造した。
【0197】
実施例1~4、比較例1~9の評価結果を下記表1に示す。表1の発光素子の評価において、駆動電圧は3500nitの輝度に当たる電圧値を示す。素子寿命は発光素子の輝度が初期の97%に落ちるまでにかかる時間を測定したものである。駆動電圧、発光効率、及び素子寿命は比較例1の駆動電圧、発光効率、素子寿命100%を基準にし、相対的な比較値を示した。
【表1】
【0198】
表1の結果を参照すると、実施例の発光素子は比較例の発光素子に比べて同程度かより低いレベルの駆動電圧、同程度かより優れた発光効率及び素子寿命特性を示すことが分かった。本発明の一実施形態による発光素子EDは、第2電極EL2の下部に配置される電子輸送領域ETRにマグネシウム(Mg)及びイッテルビウム(Yb)を含む電子注入層EILを含むことで、第2電極EL2のカバレッジを向上させ、第2電極EL2と電子輸送領域ETRとの間の界面の安定的に維持する。一実施形態の発光素子EDは、電子注入層EILにマグネシウム(Mg)及びイッテルビウム(Yb)からなり、第2電極EL2と電子注入層EILとの間の界面で金属間有効接合面積が大きくなる。つまり、第2電極EL2のカバレッジ特性が向上される。それによって、第2電極EL2と電子注入層EILとの間の界面特性が安定化されて発光素子EDの劣化を防止し、画素の収縮などのような欠陥を抑制して素子寿命を向上させる。
【0199】
比較例1及び2と類似した構造を有する実施例1~3を比べると、電子注入層がマグネシウム(Mg)またはイッテルビウム(Yb)の単一物質からなる比較例1及び2は、、マグネシウム(Mg)とイッテルビウム(Yb)を共に使用した実施例1~3に比べ発光効率及び寿命が低下したことが分かる。実施例1~3は、比較例1及び2に比べ電子注入層にマグネシウム(Mg)とイッテルビウム(Yb)を同時に適用して電子注入特性が高く、特に第2電極のカバレッジ特性が向上されることで、発光素子の安定性が高くなる。それによって、実施例1~3は比較例1及び2に比べ優れた発光効率及び寿命特性を示しながら一実施形態の表示装置に適用される。
【0200】
比較例3と類似した構造を有する実施例1~3を比べると、電子注入層がイッテルビウム(Yb)とフッ化リチウム(LiF)の混合物を含む比較例3の場合、実施例1~3に比べ、発光効率及び寿命がいずれも低下したことが分かった。比較例3の場合、イッテルビウム(Yb))金属にフッ化リチウム(LiF)を混合して電子注入特性は向上されたが、第2電極のカバレッジ特性が低下して発光効率及び素子寿命が減少したと判断される。
【0201】
比較例4と類似した構造を有する実施例1~3を比べると、電子注入層がマグネシウム(Mg)とフッ化リチウム(LiF)の混合物を含む比較例4の場合、実施例1~3に比べ、寿命がいずれも低下したことが分かった。比較例4の場合、マグネシウム(Mg)金属にフッ化リチウム(LiF)を混合して電子注入特性は向上されたが、第2電極のカバレッジ特性が低下して素子寿命が減少したと判断される。
【0202】
実施例1~4及び比較例5及び6を比べると、電子注入層の厚さが1.0nm以上2.0nm以下であることが好ましいことが分かる。比較例5及び6によると、本発明の実施例1~4に比べ駆動電圧が高くなり、発光効率及び寿命が低下したことが分かった。比較例5のように電子注入層の厚さが1.0nm未満であれば、第2電極と電子注入層との間の界面特性が不安定になることで薄膜の安定性が落ちて駆動電圧が高くなり、発光効率及び寿命が低下する。また、比較例6のように電子注入層の厚さが2.0nmを超過すれば電子注入特性が低下し、駆動電圧が上昇して発光効率及び寿命が低下する。よって、電子注入層の厚さは1.0nm以上2.0nm以下であることが好ましい。
【0203】
実施例1~4及び比較例7~9を比べると、電子注入層に含まれるマグネシウム(Mg)及びイッテルビウム(Yb)の質量比が5:5~8:2であることが好ましいことが分かる。比較例7~9によると、マグネシウム(Mg)及びイッテルビウム(Yb)の質量比が5:5~8:2の範囲を逸脱しているため、本発明の実施例1~4に比べ発光効率及び素子寿命が低下したことが分かった。
【0204】
(実施例5~7の特性評価)
実施例5~7の発光素子を、
図5Bに示した発光素子ED-1のように、電子注入層EIL-1がマグネシウム(Mg)を含む第1サブ電子注入層SEIL1と、第1サブ電子注入層SEIL1の上部にイッテルビウム(Yb)を含む第2サブ電子注入層SEIL2を分離して二層構造を有するように作製した。実施例5では、電子注入層が上述した二層構造を有し、第1サブ電子注入層を厚さ0.9nm、第2サブ電子注入層を厚さ0.1nmにした発光素子を作製した。実施例6では、電子注入層が二層構造を有し、第1サブ電子注入層を厚さ0.8nm、第2サブ電子注入層を厚さ0.2nmにした発光素子を作製した。実施例7では、電子注入層が二層構造を有し、第1サブ電子注入層及び第2サブ電子注入層それぞれを厚さ0.5nmにした発光素子を作製した。
【0205】
比較例10では、第1サブ電子注入層を厚さ0.95nm、第2サブ電子注入層を厚さ0.05nmにしたことを除いては実施例5と同様に発光素子を作製した。比較例11では、第1サブ電子注入層を厚さ0.4nm、第2サブ電子注入層を厚さ0.6nmにしたことを除いては実施例5と同様に発光素子を作製した。比較例12では、第1サブ電子注入層を厚さ0.2nm、第2サブ電子注入層を厚さ0.8nmにしたことを除いては実施例5と同様に発光素子を作製した。実施例5~7、及び比較例10~12の評価結果を下記表2に示す。表2の発光素子の評価において、駆動電圧は3500nitの輝度に当たる電圧値を示す。素子寿命は発光素子の輝度が初期輝度の97%に落ちるまでにかかる時間を測定したものである。駆動電圧、発光効率、及び素子寿命は比較例1の駆動電圧、発光効率、素子寿命100%を基準にし、相対的な比較値を示した。
【表2】
【0206】
表2を参照すると、比較例10~12の場合、本発明の実施例5~7に比べ寿命が低下したことが分かった。電子注入層が第1サブ電子注入層と第2サブ電子注入層の二層構造を有する場合、電子注入特性を向上させ第2電極のカバレッジ特性を増加させるために、第1サブ電子注入層の厚さは0.5nm以上0.9nm以下であることが好ましく、第2サブ電子注入層の厚さは0.1nm以上0.5nm以下であることが好ましい。
【0207】
図6は、実施例3、実施例6、比較例1、比較例4それぞれの発光素子の時間経過に伴う画素収縮サイズの変化を測定した結果を示すグラフである。実施例3、実施例6、比較例1、比較例4それぞれに1500nit条件でエイジング(aging)を実施し、光学顕微鏡で時間による画素収縮サイズの変化の程度を測定した。
図6において、X軸は時間(hr)を示し、Y軸は画素収縮サイズを示す。
【0208】
図6を参照すると、マグネシウム(Mg)及びイッテルビウム(Yb)を含む電子注入層を含む実施例3の場合、フッ化リチウム(LiF)及びマグネシウム(Mg)を含む電子注入層を含む比較例4に比べ、画素収縮サイズの増加の程度が著しく低いことが分かった。例えば、120時間が経過した際、実施例3の画素収縮比率は5%未満であるが、比較例4の画素収縮比率は35%以上で、実施例3に比べ約7倍以上に画素収縮サイズが増加したことが分かった。フッ化リチウム(LiF)のような金属ハロゲン化合物はイオン化する傾向が高いため、電子注入層に導入された金属ハロゲン化合物がイオンに分離されて電子注入層内で物理的拡散が発生する。それによって、発光素子の駆動時間が経過すると電子注入層の膜成分が変化し、界面特性に影響を及ぼす。
【0209】
また、実施例6の場合、電子注入層がマグネシウム(Mb)を含む第1サブ電子注入層と、第1サブ電子注入層の上部にイッテルビウム(Yb)を含む第2サブ電子注入層を含む二層構造を有し、比較例4に比べ画素収縮サイズの増加の程度が著しく低いことが分かった。
【0210】
表1及び
図6を共に参照すると、比較例1の場合は画素収縮現象が殆ど発生していないが、発光効率及び寿命がいずれも実施例に比べ低いことが分かった。これは、比較例1のようにイッテルビウム(Yb)のみで電子注入層を形成すると、第2電極のカバレッジ特性が増加して画素収縮現象は防止されるが、実施例に比べ透過率が減少し、薄膜の安定性が低下して発光効率及び寿命が減少されるためである。
【0211】
本発明の一実施形態による発光素子は、第2電極の下に配置される電子注入層がマグネシウム(Mg)及びイッテルビウム(Yb)を含むことで、第2電極と電子注入層との間の界面が安定化されて第2電極のカバレッジ特性を向上させる。それによって、素子駆動時に発生する画素収縮現象を防止し、電子注入層による電子注入特性を向上させて、発光素子の発光効率及び素子寿命特性が改善される。一実施形態の表示装置は、一実施形態の発光素子を含むことで改善された発光効率及び寿命特性を有しながら、画素の収縮のような欠陥を防止することができ、優れた信頼性を示す。
【0212】
これまで本発明の好ましい実施形態を参照して説明したが、該当技術分野における熟練した当業者または該当技術分野における通常の知識を有する者であれば、後述する請求の範囲に記載の本発明の思想及び技術領域から逸脱しない範囲で本発明を多様に修正及び変更し得ることを理解できるはずである。よって、本発明の技術的範囲は明細書の詳細な説明に記載の内容に限らず、特許請求の範囲によって決められるべきである。
【符号の説明】
【0213】
ES:表示装置 ED:発光素子
EL1:第1電極 EL2:第2電極
BEML-1:第11発光層 BEML-2:第12発光層
BEML-3:第13発光層 GEML:第2発光層
EIL:電子注入層 SEIL1:第1サブ電子注入層
SEIL2:第2サブ電子注入層