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特開2023-70671情報処理装置、情報処理方法、情報処理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023070671
(43)【公開日】2023-05-19
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、情報処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 10/30 20230101AFI20230512BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20230512BHJP
【FI】
G06Q10/00 400
G06T7/00 350B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022179330
(22)【出願日】2022-11-09
(31)【優先権主張番号】P 2021182306
(32)【優先日】2021-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022152026
(32)【優先日】2022-09-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】521491152
【氏名又は名称】株式会社EVERSTEEL
(74)【代理人】
【識別番号】110003605
【氏名又は名称】弁理士法人六本木通り特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 真
(72)【発明者】
【氏名】田島 圭二郎
(72)【発明者】
【氏名】唐澤 拓己
【テーマコード(参考)】
5L049
5L096
【Fターム(参考)】
5L049CC11
5L096CA05
5L096DA02
5L096HA09
5L096KA04
5L096KA15
(57)【要約】
【課題】1又は複数の等級の鉄スクラップを含む鉄スクラップ群をより正確に判定できる情報処理装置を提供する。
【解決手段】本発明の一実施形態は、判定対象となる鉄スクラップ群に含まれる各等級の等級割合を判定するための情報処理装置であって、判定対象となる鉄スクラップ群を荷台からの荷下ろしの進行に沿って撮像した、一組の鉄スクラップ群データを受信する受信部と、1又は複数の等級の鉄スクラップを含む鉄スクラップ群を荷台からの荷下ろしの進行に沿って撮像した一組の学習用画像データと、当該一組の学習用データの対象である鉄スクラップ群全体に関連付けられた1又は複数の等級の等級割合を含むラベルとを用いた学習により作成された学習モデルを用い、当該一組の鉄スクラップ群データを当該学習モデルに対する入力として、当該判定対象となる鉄スクラップ群全体に含まれる各等級の等級割合を判定する等級判定部とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
判定対象となる鉄スクラップ群に含まれる各等級の等級割合を判定するための方法であって、
前記判定対象となる鉄スクラップ群を荷台からの荷下ろしの進行に沿って撮像した、一組の鉄スクラップ群データを受信する工程と、
1又は複数の等級の鉄スクラップを含む鉄スクラップ群を荷台からの荷下ろしの進行に沿って撮像した一組の学習用画像データと、前記一組の学習用データの対象である鉄スクラップ群全体に関連付けられた1又は複数の等級の等級割合を含むラベルとを用いた学習により作成された学習モデルを用い、前記一組の鉄スクラップ群データを前記学習モデルに対する入力として、前記判定対象となる鉄スクラップ群全体に含まれる各等級の等級割合を判定する工程と
を含む。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記判定する工程は、入力された前記一組の鉄スクラップ群データに含まれる複数の画像データから抽出した特徴間の相関値を中間特徴として取得する工程を含む。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、
前記等級判定部は、前記判定対象となる鉄スクラップ群に所定の鋼材が含まれる場合に前記所定の鋼材に予め紐づけられた等級を判定する。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の情報処理装置であって、
前記一組の鉄スクラップ群データに基づいて、前記判定対象となる鉄スクラップ群に含まれる品種を判定する工程をさらに含む。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の方法であって、
前記学習モデルは、各等級の鉄スクラップを落下させた際に生じる音を収音した学習用音データをさらに用いて作成されたものであり、
前記判定は、前記判定対象となる鉄スクラップ群を落下させた際に生じる音を取得した音データをさらに前記学習モデルに対する入力とする。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の方法であって、
前記判定対象となる鉄スクラップ群に含まれる異物を検出する工程をさらに含む。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、
前記学習モデルは、前記一組の学習用画像データのうちの少なくともいずれかによる画像に異物を撮像した画像を合成して得られた合成データを用いて作成されたものである。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の方法であって、
前記判定対象となる鉄スクラップ群に含まれる各等級の割合に応じて、前記判定対象となる鉄スクラップ群の価値を算出する工程をさらに含む。
【請求項9】
コンピュータに、判定対象となる鉄スクラップ群に含まれる各等級の等級割合を判定するための方法を実行させるためのプログラムであって、前記方法は、
前記判定対象となる鉄スクラップ群を荷台からの荷下ろしの進行に沿って撮像した、一組の鉄スクラップ群データを受信する工程と、
1又は複数の等級の鉄スクラップを含む鉄スクラップ群を荷台からの荷下ろしの進行に沿って撮像した一組の学習用画像データと、前記一組の学習用データの対象である鉄スクラップ群全体に関連付けられた1又は複数の等級の等級割合を含むラベルとを用いた学習により作成された学習モデルを用い、前記一組の鉄スクラップ群データを前記学習モデルに対する入力として、前記判定対象となる鉄スクラップ群全体に含まれる各等級の等級割合を判定する工程と
を含む。
【請求項10】
判定対象となる鉄スクラップ群に含まれる各等級の等級割合を判定するための装置であって、
前記判定対象となる鉄スクラップ群を荷台からの荷下ろしの進行に沿って撮像した、一組の鉄スクラップ群データを受信し、
1又は複数の等級の鉄スクラップを含む鉄スクラップ群を荷台からの荷下ろしの進行に沿って撮像した一組の学習用画像データと、前記一組の学習用データの対象である鉄スクラップ群全体に関連付けられた1又は複数の等級の等級割合を含むラベルとを用いた学習により作成された学習モデルを用い、前記一組の鉄スクラップ群データを前記学習モデルに対する入力として、前記判定対象となる鉄スクラップ群全体に含まれる各等級の等級割合を判定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
鉄鉱石から鉄を製造する場合、高炉で鉄鉱石と石炭を用いた製鉄の過程で膨大な二酸化炭素が排出される。二酸化炭素の低減が求められている現在、鉄スクラップのリサイクルがより重要となっている。
【0003】
ここで、回収業者によって回収された鉄スクラップは、集積場に集積された後、電炉メーカなどに搬送され、測定された重量、鉄スクラップの等級などに基づいて価格が算出されている。
【0004】
従来は、電炉メーカのスクラップ受入現場において、運び込まれた鉄スクラップの等級の割合を検収員による目視で査定していたために非常に非効率であったところ、スクラップ積載車両の荷台に積み重なった鉄スクラップから一部の鉄スクラップをリフティングマグネットにより持ち上げる毎に、当該荷台に残された鉄スクラップ及び当該リフティングマグネットに持ち上げられた鉄スクラップを撮影し、部分割合決定部が、当該リフティングマグネットが鉄スクラップを持ち上げる毎に、持ち上げ直前に車両撮影カメラにより生成された画像から推定された等級割合と、持ち上げ時にリフマグ撮影カメラにより生成された画像から推定された等級割合とを平均化して、持ち上げられた鉄スクラップの等級割合を決定し、全体割合決定部が、当該リフティングマグネットが鉄スクラップを持ち上げる毎に当該部分割合決定部により決定された鉄スクラップの等級割合を集計し、平均値を算出することで、スクラップ積載車両からスクラップヤードへ荷下ろしされた鉄スクラップ全体の等級割合を決定する等級判定システムが提案されている。部分割合決定部が、リフティングマグネットにより持ち上げられる鉄スクラップを異なる視点から表した画像ごとに等級割合を推定して、それらの平均として持ち上げられた鉄スクラップごとの等級割合を決定し、全体割合判定部が、これらの持ち上げられた鉄スクラップごとの等級割合をさらに平均化して、鉄スクラップ全体の等級割合を決定する(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2020-95709号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の技術には、鉄スクラップの判定精度に向上の余地がある。
【0007】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、その課題は、1又は複数の等級の鉄スクラップを含む鉄スクラップ群をより正確に判定できる情報処理装置、情報処理方法又は情報処理プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような課題を解決するために、本発明の第1の態様は、判定対象となる鉄スクラップ群に含まれる各等級の等級割合を判定するための方法であって、前記判定対象となる鉄スクラップ群を荷台からの荷下ろしの進行に沿って撮像した、一組の鉄スクラップ群データを受信する工程と、1又は複数の等級の鉄スクラップを含む鉄スクラップ群を荷台からの荷下ろしの進行に沿って撮像した一組の学習用画像データと、前記一組の学習用データの対象である鉄スクラップ群全体に関連付けられた1又は複数の等級の等級割合を含むラベルとを用いた学習により作成された学習モデルを用い、前記一組の鉄スクラップ群データを前記学習モデルに対する入力として、前記判定対象となる鉄スクラップ群全体に含まれる各等級の等級割合を判定する工程とを含む。
【0009】
また、本発明の第2の態様は、第1の態様の方法であって、前記判定する工程は、入力された前記一組の鉄スクラップ群データに含まれる複数の画像データから抽出した特徴間の相関値を中間特徴として取得する工程を含む。
【0010】
また、本発明の第3の態様は、第1の態様の方法であって、前記判定する工程は、前記判定対象となる鉄スクラップ群に所定の鋼材が含まれる場合に前記所定の鋼材に予め紐づけられた等級を判定する工程を含む。
【0011】
また、本発明の第4の態様は、第1又は第2の態様の方法であって、前記一組の鉄スクラップ群データに基づいて、前記判定対象となる鉄スクラップ群に含まれる品種を判定する工程をさらに含む。
【0012】
また、本発明の第5の態様は、第1又は第2の態様の方法であって、前記学習モデルは、各等級の鉄スクラップを落下させた際に生じる音を収音した学習用音データをさらに用いて作成されたものであり、前記判定は、前記判定対象となる鉄スクラップ群を落下させた際に生じる音を取得した音データをさらに前記学習モデルに対する入力とする。
【0013】
また、本発明の第6の態様は、第1又は第2の態様の方法であって、前記判定対象となる鉄スクラップ群に含まれる異物を検出する工程をさらに含む。
【0014】
また、本発明の第7の態様は、第6の態様の方法であって、前記学習モデルは、前記一組の学習用画像データのうちの少なくともいずれかによる画像に異物を撮像した画像を合成して得られた合成データを用いて作成されたものである。
【0015】
また、本発明の第8の態様は、第1又は第2の態様の方法であって、前記判定対象となる鉄スクラップ群に含まれる各等級の割合に応じて、前記判定対象となる鉄スクラップ群の価値を算出する工程をさらに含む。
【0016】
また、本発明の第9の態様は、コンピュータに、判定対象となる鉄スクラップ群に含まれる各等級の等級割合を判定するための方法を実行させるためのプログラムであって、前記方法は、前記判定対象となる鉄スクラップ群を荷台からの荷下ろしの進行に沿って撮像した、一組の鉄スクラップ群データを受信する工程と、1又は複数の等級の鉄スクラップを含む鉄スクラップ群を荷台からの荷下ろしの進行に沿って撮像した一組の学習用画像データと、前記一組の学習用データの対象である鉄スクラップ群全体に関連付けられた1又は複数の等級の等級割合を含むラベルとを用いた学習により作成された学習モデルを用い、前記一組の鉄スクラップ群データを前記学習モデルに対する入力として、前記判定対象となる鉄スクラップ群全体に含まれる各等級の等級割合を判定する工程とを含む。
【0017】
また、本発明の第10の態様は、判定対象となる鉄スクラップ群に含まれる各等級の等級割合を判定するための装置であって、前記判定対象となる鉄スクラップ群を荷台からの荷下ろしの進行に沿って撮像した、一組の鉄スクラップ群データを受信し、1又は複数の等級の鉄スクラップを含む鉄スクラップ群を荷台からの荷下ろしの進行に沿って撮像した一組の学習用画像データと、前記一組の学習用データの対象である鉄スクラップ群全体に関連付けられた1又は複数の等級の等級割合を含むラベルとを用いた学習により作成された学習モデルを用い、前記一組の鉄スクラップ群データを前記学習モデルに対する入力として、前記判定対象となる鉄スクラップ群全体に含まれる各等級の等級割合を判定する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一態様によれば、鉄スクラップ群をより正確に判定できる情報処理装置、情報処理方法又は情報処理プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態に係る鉄スクラップヤードの概略構成図である。
図2】本実施形態に係る情報処理システムの概略構成の一例を示す図である。
図3】本実施形態に係るサーバのハード構成の一例を示す図である。
図4】本実施形態に係るサーバの機能構成の一例を示す図である。
図5】本実施形態に係るユーザ端末の表示装置に表示される表示画面の一例を示す図である。
図6】本実施形態に係るユーザ端末の表示装置に表示される表示画面の一例を示す図である。
図7】本実施形態に係るサーバで実行される処理の一例を示すフローチャートである。
図8】本実施形態にかかる学習モデルによる判定結果を示すグラフである。
図9】従来技術にかかる学習モデルによる判定結果を比較例として示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1の概略構成図に示すように、本発明の一実施形態に係る鉄スクラップヤードは、所定の位置に停車したトラック40の荷台に積載された、1又は複数の等級を含む鉄スクラップ群10に対して、磁力を制御して吸着及びその解除を行うリフトマグネット30と、リフトマグネット30に吸着した鉄スクラップ群10の一部を鉄スクラップ載置場20へ移動させるクレーンレール50とを有する。また、鉄スクラップヤードは、荷台に鉄スクラップ群10を積載したトラック40の重量を計測する計測機器(不図示)を有してもよい。この計測機器で計測された重量からトラック40の重量を差し引いた値を鉄スクラップ群10の重量として、図2に示すサーバ3に入力可能である。
【0021】
本実施形態に係る情報処理システム1は、トラック40の荷台に積載された鉄スクラップ群10を撮影する1又は複数の撮像装置2を有し、図2に示すように、各撮像装置2は、ネットワーク5を介してサーバ又は情報処理装置3とデータ通信可能に接続されている。また、サーバ3は、ネットワーク5を介してユーザ端末4とデータ通信可能に接続されている。なお、サーバ3と、このサーバ3とネットワーク5を介して接続されたユーザ端末4及び撮像装置2の数はそれぞれ任意である。
【0022】
(撮像装置2)
撮像装置2は、鉄スクラップ群10を好ましくは真上から撮影できる位置に設置され、鉄スクラップ群10を撮像し、撮像した鉄スクラップ群データ(画像データ)をサーバ3へ送信する。撮像装置2は、一例として、所定の位置に停車したトラック40の荷台に積載された鉄スクラップ群10から、リフトマグネット30が一部の鉄スクラップを持ち上げる毎に、トラック40の荷台に残された鉄スクラップ群10の表面を撮影する。撮像装置2は、現れてくる新たな表面について、この撮影をトラック40の荷台から鉄スクラップが無くなるまで繰り返す。このようにして、リフトマグネット30による鉄スクラップ群10の荷台からの荷下ろしの進行に沿って撮像された複数の鉄スクラップ群データが得られる。
【0023】
また、撮像装置2は、所定の位置に停車したトラック40の荷台に積載された鉄スクラップ群10を真下に見下ろす位置に設置配置されることが好ましいが、撮像に際して、鉄スクラップヤードの所定物、例えばリフトマグネット30やクレーンレール50が撮像範囲に入る場合には、リフトマグネット30やクレーンレール50が撮像範囲又はその中心部分から外れる位置に設置してもよい。
【0024】
(サーバ3)
図3は、サーバ3のハード構成及び機能構成の一例を示す図である。図3に示すように、サーバ3は、通信IF300A、記憶装置300B、CPU300Cなどを備える。なお、サーバ3に入力装置(例えば、キーボード、タッチパネルなど)及び表示装置(例えば、液晶モニタや有機ELモニタなど)を備えるようにしてもよい。
【0025】
通信IF300Aは、外部端末(本実施形態では、ユーザ端末4など)と通信するためのインターフェースである。
【0026】
記憶装置300Bは、例えば、HDDや半導体記憶装置である。記憶装置300Bには、サーバ3で利用する情報処理プログラム及び各種データベースなどが記憶されている。例えば、記憶装置300Bには、鉄スクラップ群10の価値算出用のテーブルデータが記憶されている。例えば、記憶装置300Bには、鉄スクラップの等級に応じた単価(所定重量の値段)が品種ごとに記憶されている。なお、本実施形態では、情報処理プログラム及び各種データベースは、サーバ3の記憶装置300Bに記憶されているが、USBメモリなどの外部記憶装置やネットワークを介して接続された外部サーバに記憶し、必要に応じて参照したり、ダウンロード可能に構成されていてもよい。
【0027】
CPU300Cは、サーバ3を制御し、例えば、図示しないROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を備えている。
【0028】
図4に示すように、サーバ3は、受信部301、送信部302、記憶装置制御部303、品種判定部304、等級判定部305、異物検出部306、価値算出部307などの機能を有する。なお、図4に示す各処理又は各動作は、サーバ3の記憶装置300B等に記憶された情報処理プログラムに含まれる命令をCPU300Cが実行することにより実現される。当該プログラムは、1又は複数のプログラムを含むことがあり、また、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記録して非一過性のプログラムプロダクトとすることができる。
【0029】
受信部301は、例えば、撮像装置2から送信される鉄スクラップ群10を撮像した撮像データ(画像データ)を受信する。また、例えば、受信部301は、鉄スクラップ群10を納入する納入業者などの検収情報(図5左側を参照)を受信する。また、受信部301は、例えば、鉄スクラップ群10の重量の情報を受信する。
【0030】
送信部302は、例えば、サーバ3での鉄スクラップ群10の品種(例えば、ダライ、ヘビー、シュレッダ、新断、故銑など)及び等級の判定結果、鉄スクラップ群10に含まれる異物の検出結果、算出した鉄スクラップ群10の価値などの情報をユーザ端末4へ送信する。また、送信部302は、検出された異物を認識可能な態様で表示させる情報を送信することができる。
【0031】
記憶装置制御部303は、記憶装置300Bを制御する。例えば、記憶装置制御部303は、記憶装置300Bへの情報の書き込みや読み出しを行う。
【0032】
品種判定部304は、例えば、鉄スクラップ群を撮像した学習用画像データと、当該学習用画像データに関連付けられた品種を含むラベルとを用いた機械学習により作成された学習モデルを用い、受信部301が受信した鉄スクラップ群データを当該学習モデルに対する入力として、判定対象となる鉄スクラップ群10に含まれる鉄スクラップの品種を判定することができる。「ラベル」は、鉄スクラップの品種、例えば、ダライ、ヘビー、シュレッダ、新断、故銑などである。「ラベル」には、例えば検収員によって判断された品種が付与されてもよい。なお、品種については、品種判定部304が判定するのではなく、ユーザ端末4から、例えば、作業員などのユーザが入力する構成としてもよい。
【0033】
等級判定部305は、品種判定部304が判定した品種又は(例えば、ユーザが)ユーザ端末4から入力した品種に対応する学習モデルを用いてもよいし、品種ごとに学習モデルを用意せずに、一つの学習モデルとしてもよい。
【0034】
等級判定部305は、例えば、1又は複数の等級の鉄スクラップを含む鉄スクラップ群を荷台からの荷下ろしの進行に沿って撮像した一組の学習用画像データと、当該一組の学習用画像データに対応する、当該鉄スクラップ群全体に関連付けられた1又は複数の等級の等級割合を含むラベルとを用いた機械学習により作成された学習モデルを用いてもよい。受信部301が受信した、判定対象となる鉄スクラップ群10を荷台からの荷下ろしの進行に沿って撮像した一組の鉄スクラップ群データを当該学習モデルに対する入力として、鉄スクラップ群10全体に含まれる各等級の割合を判定することもできる。鉄スクラップ群を荷台からの荷下ろしの進行に沿って撮像した一組の学習用画像データに対して、当該一組の学習用画像データの対象である鉄スクラップ群全体に関連づけられた等級割合をラベルとして用いることで、学習用画像データごとのラベルのアノテーションが不要となる。この場合、品種判定、異物検出その他の処理又は動作のための学習に際して、一組の学習用画像データのすべてを必ずしも用いる必要はなく、また、品種判定、異物検出その他の処理又は動作に際して、一組の鉄スクラップ群データのすべてを必ずしも用いる必要はない。
【0035】
従来技術のように、リフトマグネット30がトラック40の荷台から荷下ろしする過程で撮像した学習用画像データごとに、当該学習用画像データにより特定される鉄スクラップ10の等級割合を判定し、その判定結果を各学習用画像データのアノテーションとして用いて鉄スクラップ10全体の等級割合を判定することが、より多くのアノテーションを用いることになり、機械学習を用いる上で適切であると一見思われるものの、検収員が従来行ってきた1台ごとの目視による査定の業務にない作業となることから、機械学習に必要な一組の学習用画像データを多数組作成することの負担が大きく、データの蓄積を通じて実用的に精度を向上させていくことのできる方式ではない。さらに、発明者らは、鉄スクラップ群に含まれる各等級の割合の研修員による査定精度は、熟練工とそうでない者との間で開きがあり、学習用画像データごとの査定という新たな業務においては、熟練工を含めて高い精度を期待することができないこと、したがって、学習用画像データごとのアノテーションの信頼性は低く、よって、そのようなアノテーションを用いて得られた学習モデルの信頼性も低いことに着目し、学習用画像データごとのラベルのアノテーションを必ずしも必要としない本発明を見い出した。後述するように、本発明は、従来技術よりも高い判定精度を実現しており、そのさらなる向上が期待できるものであり、検収員による属人的な査定業務を客観的に検証又は代替し、今後さらに求められていく鉄スクラップのリサイクルに寄与するものである。
【0036】
一組の学習用画像データの数は、例として、3以上15以下であることが好ましい。3未満であると等級判定に必要な情報が不足し、学習モデルの推論精度が低下するおそれが高まる。15を超えると解析時間が長くなり得るものの、解析自体は行うことができる。
【0037】
「ラベル」は、例えば、等級割合として、鉄スクラップ群10に含まれるヘビー屑の各等級の割合を含んでいる。等級は、例えば、HS、H1、H2、H3、及びH4などで示される。「ラベル」には、例えば検収員によって判断された値が付与されてもよいし、実際に測定された値が付与されてもよい。割合は、例えば重量割合であるが、これに限らず、面積割合であってもよいし、体積割合であってもよい。
【0038】
なお、等級判定部305は、所定の鋼材について、この所定の鋼材と、所定の鋼材の等級とを対応付けたデータを教師データとした学習により作成された学習モデルを用い、撮像データに基づいて鉄スクラップ群10に含まれる所定の鋼材の等級を判定するようにしてもよい。この場合、所定の鋼材を学習させた学習モデルにより、所定の鋼材を検出し、別途鋼材と等級が予め紐づいた情報を参照して等級を判定する。スクラップヤードでは、所定の鋼材には決まった等級が定められている場合があり、等級判定の重要な基準の一つとなっているため、単に等級を学習するのみではなく、特定の鋼材の情報も学習することでより精度の高い判定が可能となる。
【0039】
異物検出部306は、例えば、異物(例えば、銅、錫、鉛、亜鉛などを多く含むワイヤーハーネスやモータなど)を含む鉄スクラップ群を撮像した学習用画像データと、当該学習用画像データに関連付けられた異物の種類(モータなど)をラベルとして用いた機械学習により作成された学習モデルを用い、受信部301が受信した鉄スクラップ群データを当該学習モデルに対する入力として、鉄スクラップ群10に含まれる異物を検出することができる。ここで、学習用画像データは、異物を含む鉄スクラップ群を撮像した画像データのほかに、異物を撮像した画像と鉄スクラップ群の画像とを合成して得られた合成データが挙げられる。このように、通常、異物が含まれた種々のパターンの画像を入手することは困難であるが、異物が含まれた種々のパターンの画像を合成により生成して学習用の合成データとすることができ、学習モデルを効率化することができる。
【0040】
価値算出部307は、例えば、鉄スクラップ群10の価値を算出する。ここで、価値算出部307は、品種判定部304及び等級判定部305での判定結果に基づいて、鉄スクラップ群10の価値を算出する。ここで、価値算出部307は、鉄スクラップ群10に含まれる鉄スクラップ以外(例えば、異物、ダスト、水分など)の割合又は重量に応じて、鉄スクラップ群10の価値を算出する。具体的には、鉄スクラップ群10に含まれる鉄スクラップ以外(異物、ダスト、水分など)の重量を鉄スクラップ群10の重量から減算(「重量引き」)した後、品種判定部304で判定された品種(品種はユーザが入力してもよい)及び等級判定部305で判定された各等級の重量に単価を乗算して鉄スクラップ群10の価値を算出する。なお、価値算出部307は、鉄スクラップ群10に含まれる鉄スクラップ以外の割合又は重量を受信部301で受信した撮像データから自動で判定してもよいし、ユーザがユーザ端末4から入力した鉄スクラップ以外の割合又は重量を利用してもよい。
【0041】
(表示画面例)
図5及び図6は、実施形態に係るユーザ端末4の表示装置に表示される画面の一例を示す図である。以下、図5及び図6を参照してユーザ端末4の表示装置に表示される画面について説明する。なお、以下の説明では同一の構成には同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【0042】
図5は、検収情報入力画面51の一例を示す図である。図5に示すように、画面左側には、検収情報、例えば、納入業者の業者名、商社名、品種、荷下ろし場所などの情報を入力ボックス52~55にそれぞれ入力することができる。また、図5に示すように、画面右側には、撮像装置2が撮像した画像56(トラック40の荷台に積載された鉄スクラップ群10を見下ろした画像)が表示される。また、ユーザがユーザ端末4の入力装置を操作して、検収開始ボタン57を選択すると鉄スクラップ群の解析(例えば、等級の判定、価値の算出など)が開始される。
【0043】
図6は、検収結果の表示画面の一例を示す図である。図6に示すように、検収結果の画面71の左側には、検収開始時刻、検収終了時刻、検収時間、納品業者、担当商社、担当検収者、荷下ろし場所、(重量引き前の)鉄スクラップ群10の重量、(重量引き後の)鉄スクラップ群10の重量などの情報が表示される。図6に示すように、検収結果の画面の右側には、検収を行った鉄スクラップ群10の品種、等級、各等級の割合、単価、価格、割引き事由、購入価格(価値)などの情報が表示される。
【0044】
(価値算出処理)
図7は、サーバ3で実行される価値算出処理の一例を示すフローチャートである。以下、図7を参照して、サーバ3で実行される価値算出処理について説明する。
【0045】
(ステップS701)
サーバ3の受信部301は、鉄スクラップ群10に含まれる鉄スクラップ以外(例えば、ダスト、水分など)の割合又は重量を受信する。なお、鉄スクラップ群10に含まれるダスト、水分などの割合又は重量を、受信部301で受信した撮像データから自動で判定してもよい。
【0046】
(ステップS702)
価値算出部307は、鉄スクラップ群10の価値を算出する。具体的には、価値算出部307は、鉄スクラップ群10に含まれる鉄スクラップ以外(異物、ダスト、水分など)の重量を鉄スクラップ群10の重量から減算(「重量引き」)する。次いで、価値算出部307は、記憶装置300Bに記憶された価値算出用のテーブルデータの対応する品種の価格データを参照する。次いで、価値算出部307は、重量引き後の鉄スクラップ群10の重量と、等級判定部305が判定した鉄スクラップ群10に含まれる各等級の割合に基づいて、鉄スクラップ群10に含まれる各等級の重量を算出する。次いで、価値算出部307は、価格データを参照して、等級ごとに、重量に単価を乗算した値を加算した値(合計値)を算出する。
【0047】
(ステップS703)
送信部302は、算出した鉄スクラップ群10の価値をユーザ端末4へ送信する。これにより、図6で例示したように、ユーザ端末4の表示装置には、鉄スクラップ群の価値が表示される。
【0048】
比較実験
検収員がトラック1台ごとに当該トラックの荷台に積まれた鉄スクラップ全体に含まれる各等級の割合を査定した結果を530台分用意し、検収員が各トラックについて、鉄スクラップ群の表面を荷台からの荷下ろしの進行に沿って撮像した5枚の画像データに対して行った査定の結果を100台分用意した。また、HS、H1、H2、H3、L1及びL2の6つの等級を判定候補とした。前者のデータを用いて、本実施形態にかかる学習モデル(以下「複数入力モデル」ともいう)。を生成し、後者のデータを用いて、従来技術にかかる学習モデル(以下「単一入力モデル」ともいう。)を生成した。より具体的には、本実施形態については、畳み込みニューラルネットワークであるResNet50をバックボーンとし、複数の画像データから抽出した特徴間の相関値を中間特徴として用いて学習することでトラック1台の等級を予測するモデルを構築し、従来技術については、同様にResNet50をバックボーンとし、単一の画像データから等級を予測するモデルを構築し、トラック1台の等級の予測については複数の画像データに対する予測を平均して算出した。いずれの方式についても、k-分割交差検証(k=5)によってデータ分割を行った。
【0049】
評価方法としては、検収員によるトラックごとの査定結果を答え(grand trueth(GT))として、等級ごとの誤差の最大値が10pt以内であれば正解(true)であると評価した。表1に評価例を挙げる。
【0050】
【表1】
【0051】
図8に複数入力モデルの結果を示し、図9に単一入力モデルの結果を示す。前者では57.7%、後者では45.0%の正答率(accuracy)となり、前者の方が約12.7%精度が高い結果となった。
【0052】
上記実施形態に加えて、各品種又は各等級の鉄スクラップを落下させた際に生じる音データをさらに用いた学習により作成された学習モデルにより鉄スクラップ群10の品種又は等級を判定するようにしてもよい。なお、鉄スクラップを落下させた際に生じる音データを用いる場合、鉄スクラップヤードごとに学習用音データを作成することが好ましい。
【0053】
鉄スクラップを落下させた際に生じる音データをさらに用いた学習により作成された学習モデルとする場合、鉄スクラップヤードに鉄スクラップ群10を落下させた際に生じる音を収音するマイクを備え、サーバ3は、撮像装置2で撮像された撮像データ加え、鉄スクラップ群10を落下させた際に生じる音を取得した音データを受信する。
【0054】
また、上記実施形態において、「××のみに基づいて」、「××のみに応じて」、「××のみの場合」というように「のみ」との記載がなければ、本明細書においては、付加的な情報も考慮し得ることが想定されていることに留意されたい。また、一例として、「aの場合にbする」という記載は、明示した場合を除き、「aの場合に常にbする」こと、「aの直後にbする」ことを必ずしも意味しないことに留意されたい。また、「Aを構成する各a」という記載は、必ずしもAが複数の構成要素によって構成されることを意味するものではなく、構成要素が単数であることを含む。
【0055】
また、念のため、なんらかの方法、プログラム、端末、装置、サーバ又はシステム(以下「方法等」)において、本明細書で記述された動作と異なる動作を行う側面があるとしても、本発明の各態様は、本明細書で記述された動作のいずれかと同一の動作を対象とするものであり、本明細書で記述された動作と異なる動作が存在することは、当該方法等を本発明の各態様の範囲外とするものではないことを付言する。
【0056】
図7において示されるフローチャートは、一例を示すものに過ぎず、図示された手順で必ず開始され、図示された手順で必ず終了することを意味するものではない。
【0057】
その他、上記実施形態及び変形例は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【符号の説明】
【0058】
1 情報処理システム
2 撮像装置
3 サーバ
4 ユーザ端末
5 ネットワーク
10 鉄スクラップ群
20 鉄スクラップ載置場
30 リフトマグネット
40 トラック
50 クレーンレール
51 情報入力画面
52、53、54、55 入力ボックス
56 撮像された画像
57 開始ボタン
71 解析結果画面
300A 通信IF
300B 記憶装置
300C CPU
301 受信部
302 送信部
303 記憶装置制御部
304 品種判定部
305 等級判定部
306 異物検出部
307 価値算出部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9