(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023007069
(43)【公開日】2023-01-18
(54)【発明の名称】スイッチ
(51)【国際特許分類】
H01H 13/14 20060101AFI20230111BHJP
H01H 13/06 20060101ALI20230111BHJP
【FI】
H01H13/14 A
H01H13/06 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021110077
(22)【出願日】2021-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】500309126
【氏名又は名称】株式会社ヴァレオジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100148301
【弁理士】
【氏名又は名称】竹原 尚彦
(74)【代理人】
【識別番号】100176991
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 由布子
(74)【代理人】
【識別番号】100217696
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 英行
(72)【発明者】
【氏名】黒羽 崇
【テーマコード(参考)】
5G206
【Fターム(参考)】
5G206AS27H
5G206AS38H
5G206AS38N
5G206HW01
5G206HW36
5G206JU32
5G206NS05
(57)【要約】
【課題】操作子の変位を阻害され難くする。
【解決手段】スイッチ1は、タクトスイッチ4を収容するケース3に組み付けられたノブ5を有する。ノブ5は、タクトスイッチ4の被操作部41に対向配置された操作子53と、操作子53を支持するキートップ51と、操作子53の外周を間隔を開けて囲むと共に、キートップ51を操作方向に変位可能に支持する可撓性の周壁部52と、を有する。操作子53と周壁部52とを接続する可撓性のリブ54を設けて、周壁部52の内側で操作子53との間に形成される空間を複数に区画した。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スイッチ部品を収容するケースと、
前記ケースに組み付けられたノブと、を有し、
前記ノブは、
前記スイッチ部品の操作方向で、前記スイッチ部品に対向配置された操作子と、
前記操作子を支持する被操作部と、
前記操作子の外周を間隔をあけて囲むと共に、前記被操作部を前記操作方向に変位可能に支持する可撓性の周壁部と、を有し、
前記操作子と前記周壁部とを接続する可撓性のリブを設けて、前記周壁部の内側で前記操作子との間に形成される空間を複数に区画した、スイッチ。
【請求項2】
請求項1において、
前記操作方向から見て、前記リブは、前記操作子の周囲に、周方向に間隔を開けて複数設けられている、スイッチ。
【請求項3】
請求項1において、
前記操作方向から見て、前記リブは、前記操作子を間に挟んで直列に並んだ一対のリブ組である、スイッチ。
【請求項4】
請求項3において、
前記リブ組は、前記操作方向に沿うと共に前記操作子の中心を通る軸線周りの周方向に、間隔を開けて複数設けられている、スイッチ。
【請求項5】
請求項1から請求項4の何れか一項において、
前記ケースは、前記ノブの組付面に、前記スイッチ部品を露出させる開口を有しており、前記開口は、前記組付面に取り付けられた可撓性を持つシール材で封止されており、
前記操作子は、当該操作子が接触する前記シール材を介して、前記スイッチ部品を前記操作方向に押圧する、スイッチ。
【請求項6】
請求項5において、
前記ケースでは、前記ノブの組付面に、前記シール材を収容可能な凹部が設けられており、前記シール材は、前記ケースにおける前記ノブの組付面と面一に設けられている、スイッチ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両ドアの施錠や解錠をする際に操作されるスイッチが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【0004】
図11に示すように、特許文献1のスイッチ200は、車外からの押圧操作が可能な被押圧部201(ノブ)を有している。被押圧部201は、当該被押圧部201の操作方向(
図11における左右方向)に進退移動可能に設けられている。
【0005】
被押圧部201は、操作子203を裏面に持つキートップ202と、操作子203と、を有している。操作子203は、キートップ202の裏面から基板210側に突出している。
スイッチ200では、キートップ202の表面が押圧されると、操作子203がキートップ202の押圧方向に変位する。これにより、基板210上のタクトスイッチ211が、変位した操作子203でオンされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
スイッチ200の被押圧部201(ノブ)は、車外からの押圧操作を可能とするために、車両ドアの表面に露出している。そのため、被押圧部201の内部に雨水などの水分が浸入することがある。浸入した水分がスイッチ200の内部で凍結すると、凍結した水分が、被押圧部201(ノブ)の周囲に氷の塊を形成する可能性がある。
図11に示すように、スイッチ200では、操作子203の周囲に、操作子203を囲むリング状の隙間Saがある。この隙間Saを満たす水分が完全に凍ると、被押圧部201(ノブ)の変位が阻害される可能性がある。
そこで、内部に水分が浸入して凍結しても、スイッチの動作に支障が生じないようにすることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、
スイッチ部品を収容するケースと、
前記ケースに組み付けられたノブと、を有し、
前記ノブは、
前記スイッチ部品の操作方向で、前記スイッチ部品に対向配置された操作子と、
前記操作子を支持する被操作部と、
前記操作子の外周を間隔をあけて囲むと共に、前記被操作部を前記操作方向に変位可能に支持する可撓性の周壁部と、を有し、
前記操作子と前記周壁部とを接続する可撓性のリブを設けて、前記周壁部の内側で前記操作子との間に形成される空間を複数に区画した構成のスイッチとした。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ノブの内部に水分が浸入して凍結しても、スイッチの動作に支障が生じ難くなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】車両におけるスイッチの配置を説明する図である。
【
図9】比較例にかかるスイッチを説明する図である。
【
図10】変形例にかかるスイッチを説明する図である。
【
図11】従来例にかかるスイッチを説明する図である。
【
図12】従来例にかかるスイッチの操作子と氷との関係を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を、スイッチ1が、ドアノブ90に採用された場合を例に挙げて説明する。
図1は、車両Vにおけるスイッチ1の配置を説明する図である。
図2は、
図1におけるA-A線に沿ってスイッチ1を切断した断面図である。
図3は、スイッチ1の分解斜視図である。
【0011】
図1に示すように、スイッチ1は、車両ドアDのドアノブ90に設けられている。スイッチ1は、車両ドアDの施錠や解錠をする際に操作されるプッシュ式のスイッチである。
図2および
図3に示すように、スイッチ1は、タクトスイッチ4が搭載された基板2と、基板2を収容するケース3と、ケース3の筒壁部35に外嵌したノブ5と、シール材6、7と、を有する。
【0012】
スイッチ1では、ノブ5の操作方向が、基板2の直交方向(図中、軸線X方向)に設定されている。ノブ5が操作されると、ノブ5の操作子53が、軸線Xに沿って基板2側に変位する。基板2では、タクトスイッチ4が、操作子53に対向する位置に配置されている。タクトスイッチ4と操作子53は、軸線X上で、シール材6を間に挟んで対向している。ノブ5が操作されると、シール材6に接触した操作子53が、タクトスイッチ4を押圧して、タクトスイッチ4がオン信号を出力する(タクトスイッチ4がオンされる)。
【0013】
なお、以下の説明においては、必要に応じて、スイッチ1の各構成要素の位置関係を、スイッチ1におけるノブ5の操作方向(軸線X方向)を基準として説明する。
なお、以下の説明における軸線Z方向は、スイッチ1の車両への設置状態を基準とした鉛直線方向に相当する。軸線Y方向は、スイッチ1の車両への設置状態を基準とした水平線方向に相当する。
【0014】
図4の(A)は、ケース3の平面図である。
図4の(B)は、
図4の(A)におけるA-A線に沿ってケース3を切断した断面図である。
図4の(C)は、
図4の(B)におけるB-B線に沿ってケース3を切断した断面図である。
なお、
図4の(B)では、タクトスイッチ4が搭載された基板2を仮想線で示している。
図5の(A)は、
図4の(B)におけるC-C線に沿ってケース3を切断した断面図である。
図5の(B)は、
図5の(A)におけるA-A線に沿ってケース3を切断した断面図である。なお、
図5の(A)では、係止溝351の範囲を判りやすくするために、筒壁部35の外周35aの位置を仮想線で示している。
【0015】
図4の(A)、(B)に示すように、樹脂成形品であるケース3は、上面視において略矩形形状をなす壁部31を有している。壁部31は、軸線X方向に所定の厚みを持つ板状の部位である。
ケース3では、軸線X方向における壁部31の一方側の空間S1に、基板2が収容されており、他方側の空間S2に、基板2上のタクトスイッチ4が収容されている。
【0016】
図4の(C)に示すように、壁部31の一方側の面には、壁部31の外周に沿う側壁部32が設けられている。側壁部32は、間隔を開けて互いに平行に配置された第1壁部321および第2壁部322と、第1壁部321と第2壁部322の端部同士を接続する第3壁部323と、を有する。側壁部32は、矩形形状の壁部31が持つ連続する3つの側縁に跨がって設けられている。
【0017】
第1壁部321の端部321aと、第2壁部322の端部322aから第3壁部323側(
図4の(C)における右側)にオフセットした位置には、第4壁部324が設けられている。第4壁部324は、第3壁部323に対して平行に設けられている。第4壁部324は、第1壁部321の内周と第2壁部322の内周とを接続している。これら第1壁部321から第4壁部324の内側が、空間S1となっている。
【0018】
軸線X方向から見て空間S1は、基板2の外形と整合する形状で形成されている。
第1壁部321から第4壁部324における空間S1側の面には、係止爪321b、322b、323b、324b、324bが設けられている。
係止爪321b、322b、323b、324b、324bは、空間S1内に挿入した基板2が係止されて、基板2を、壁部31に当接した位置で保持するために設けられている。
【0019】
図4の(C)に示すように、係止爪321bは、第1壁部321における軸線Zと交差する位置に設けられている。係止爪322bは、第2壁部322における軸線Zと交差する位置に設けられている。軸線Zは、軸線Xおよび軸線Yと直交する。軸線Zは、スイッチ1の車両Vへの設置状態を基準とした鉛直線に沿う直線である。
係止爪323bは、第3壁部323における軸線Yと交差する位置に設けられている。
係止爪324b、324bは、第4壁部324において軸線Yを間に挟んだ一方側と他方側に設けられている。係止爪324b、324bは、軸線Yを間に挟んで対称となる位置関係で設けられている。
【0020】
第4壁部324では、軸線Yと交差する領域に開口324aが設けられている。
図2に示すように、スイッチ1では、基板2に接続された配線8が、空間S1から開口324aを通って、ケース3の外部に引き出されている。
【0021】
スイッチ1では、絶縁性の樹脂材料からなる耐水性のシール材7が、空間S1内に封入されている。配線8、8(
図3参照)における空間S1内に位置する領域もまた、基板2と共にシール材7の内部に封入されている。
スイッチ1では、空間S1をシール材7で封止することにより、空間S1内への水分の浸入を阻止している。
【0022】
図4の(B)、(C)に示すように、ケース3の壁部31では、空間S1と空間S2とを連通する連通孔30(開口)が設けられている。
図4の(B)に示すように、軸線X方向における壁部31の一方の面には、連通孔30を囲む筒壁部35が設けられている。
図4の(A)に示すように、上面視において筒壁部35は、矩形形状をしており、壁部31よりも小さい外形で形成されている。
【0023】
筒壁部35は、壁部31からZ方向に突出している。筒壁部35は、軸線X周りの周方向の全周に亘って同じ高さh(
図4の(B)参照)で形成されている。筒壁部35の端面35aは、発明における「組付面」に相当する。
図4の(A)に示すように連通孔30は、略矩形形状の第1領域301と、略楕円形状の第2領域302、302と、を組み合わせた形状で形成されている。
壁部31では、連通孔30の開口縁に、全周に亘って面取部30aが設けられており、連通孔30の開口径は、
図4の(A)における紙面手前側に向かうにつれて、広くなっている。
【0024】
第1領域301は、筒壁部35の内側の略中央領域に位置している。第2領域302、302は、軸線Y方向における第1領域301の一方側で、軸線Yを間に挟んで対称となる位置関係で設けられている。
第2領域302、302は、軸線Z側の一部の領域が、矩形の第1領域301と重なっている。スイッチ1の車両Vへの設置状態を基準とした鉛直線方向(軸線Z方向)で、第2領域302、302は、第1領域301から、上側と下側にそれぞれ膨出している。
【0025】
これら、第2領域302、302のうちの一方は、スイッチ1の車両Vへの設置状態を基準とした鉛直線方向で、基板2上のタクトスイッチ4よりも下側に配置される。タクトスイッチ4を収容する空間S2内に水分が浸入しても、浸入した水分がタクトスイッチ4周りに留まらずに、第2領域302側に捕捉されるようにしている。
【0026】
軸線Z方向における第2領域302、302の間の領域には、基板2側に窪んだ凹部36が設けられている。凹部36は、軸線Yと交差する位置に設けられている。
連通孔30から見て、凹部36とは反対側にも、基板2側に窪んだ凹部37が設けられている。凹部37と凹部36は、軸線X方向に同じ深さで形成されている(
図4の(B)参照)。
【0027】
図4の(A)に示すように、凹部37は、間隔を開けて互いに平行に配置された第1凹部371および第2凹部372と、第1凹部371および第2凹部372の端部同士を接続する第3凹部373と、を有する。凹部37は、連通孔30の第1領域301が持つ3つの側縁、すなわち、第2領域302、302が設けられていない側の3つの側縁に沿って設けられている。
【0028】
第3凹部373は、軸線Zに沿って設けられている。第1凹部371と第2凹部372は、軸線Yに沿って設けられており、軸線Zを、連通孔30の第1領域301側から第2領域302側に横切っている。第1凹部371と第2凹部372の先端は、第2領域302の近傍に位置している。
第2凹部372と第3凹部373との接続部分は、後記する係止領域352との干渉を避けるために、外周側の領域が切り欠かれている。
【0029】
図4の(B)に示すように、筒壁部35の外周では、壁部31との境界部分に係止溝351が形成されている。
図5の(A)に示すように、係止溝351は、筒壁部35の外周に全周に亘って設けられている。係止溝351は、筒壁部35の4つの角部のうちの対角線上に位置する2つの角部において、他の領域よりも軸線X側に大きく切り欠かれている。この大きく切り欠かれた領域が、ノブ5側の係合領域554、554が係止される係止領域352、352となっている。
【0030】
図2に示すように、筒壁部35には、シール材6が内嵌して取り付けられている。
シール材6は、空間S2のノブ5側の開口を封止するために設けられている。
図6の(A)は、シール材6を、ケース3側から見た平面図である。
図6の(B)は、
図6の(A)におけるA-A線に沿ってシール材6を切断した断面図である。
図6の(C)は、シール材6を、ケース3側から見た斜視図である。
なお、
図6の(B)では、説明の便宜上、ケース3とノブ5の一部をハッチングを付した仮想線で示している。
【0031】
シール材6(エラストマー)は、絶縁性の樹脂材料からなる耐水性のシール材である。
図6に示すようにシール材6は、略矩形形状の基部61を有する。基部61は、ケース3側の筒壁部35に内嵌可能な外形で形成されている。
基部61におけるノブ5側の表面61aは、平坦面である。シール材6を筒壁部35に内嵌して取り付けた状態で、基部61の表面61aは、筒壁部35の端面35aに対して面一となる。
【0032】
図6の(A)および(B)に示すように、基部61では、ケース3との対向面61bに、凸部66、67が形成されている。
凸部66は、前記した凹部36と整合する形状で形成されている。軸線X方向から見た凸部66の形状は、ケース3側の凹部36の形状と同じである。
【0033】
凸部67は、前記した凹部37と整合する形状で形成されている。凸部67は、第1凹部371に嵌入する第1凸部671と、第2凹部372に嵌入する第2凸部672と、第3凹部373に嵌入する第3凸部673と、を有している。軸線X方向から見た凸部67の形状は、ケース3側の凹部37の形状と同じである。
【0034】
凸部66、67の間の領域には、押圧部68が設けられている。軸線X方向から見て、押圧部68は、四隅がR加工された長方形形状を成している。
押圧部68は、タクトスイッチ4の被操作部41よりも僅かに大きい外形で形成されている。
シール材6を筒壁部35に組み付けると、押圧部68が、タクトスイッチ4の被操作部41に接触した状態で保持されるようになっている。
基部61では、押圧部68を囲むように薄肉領域610が設けられている。薄肉領域610は、押圧部68の領域と、基部61における押圧部68以外の領域と、を軸線X方向で相対変位可能にするために設けられている。薄肉領域610は、シール材6を筒壁部35に組み付けた状態で、押圧部68の部分のみが軸線X方向に変位可能となるようにしている。
【0035】
前記したように、シール材6の凸部66、67は、シール材6を筒壁部35に内嵌して取り付けた際に、それぞれ対応する凹部36、37に嵌入する。
凹部36、37に凸部66、67が嵌入していることで、シール材6の内側に水分が浸入しても、凹部36、37に嵌入した凸部66、67の部分が、連通孔30(開口)への水分の到達を規制するようになっている。
【0036】
さらに、凹部36、37に嵌入した凸部66、67により、シール材6と筒壁部35との位置ずれが規制される。これにより、押圧部68の部分のみが、タクトスイッチ4の被操作部41との位置関係を保持したままで、軸線X方向に変位できるようになっている。
【0037】
薄肉領域610の外側には、接触片69が設けられている。軸線X方向から見て接触片69は、前記したケース3側の連通孔30(
図4の(A)参照)と整合する形状で形成されている。
接触片69は、基部61からケース3側に離れるにつれて幅が狭くなる先細り形状で形成されている。接触片69は、軸線Xに直交する方向に弾性変位可能である。シール材6を筒壁部35に組み付けた際に、連通孔30の開口縁に設けた面取部30aに、全周に亘って弾発的に係合する。これにより、タクトスイッチ4が収容された空間S2が気密にシールされるようになっている。
【0038】
筒壁部35には、シール材6を組み付けたのちに、ノブ5が外嵌して組み付けられる。
図7の(A)は、ノブ5の断面図である。
図7の(B)は、
図7の(A)におけるA-A線に沿ってノブ5を切断した断面図である。
図7の(C)は、
図7の(A)におけるB-B線に沿ってノブ5を切断した断面図である。
【0039】
図7に示すように、ノブ5は、キートップ51と、キートップ51の外周を全周に亘って囲む周壁部52と、操作子53と、リブ54と、嵌合部55と、を有する。
ノブ5は、ゴムなどの可撓性に富む弾性材料で形成される。ノブ5は、変形可能であり、変形しても、
図7の(A)に示す基本形状に復帰できるようになっている。
【0040】
図3に示すように、軸線X方向から見てキートップ51は、略正方形形状を成している。
図7の(A)に示すように、キートップ51の表面51aは、スイッチ1をオン操作する際にユーザにより操作される被操作部である。キートップ51の裏面51bでは、軸線X方向から見た略中央部に、操作子53が設けられている。
図7の(B)に示すように、断面視において操作子53は、四隅にR加工が施された四角柱形状を成している。
図7の(A)に示すように、操作子53は、キートップ51に直交する向きで設けられている。操作子53は、周壁部52の内側を、嵌合部55側に延びている。
【0041】
図7の(A)に示すように、周壁部52は、キートップ51よりも薄肉で形成されている。周壁部52は、操作子53の外周を間隔をあけて囲んでおり、操作子53の外周との間に空間S3持って配置される。これにより、キートップ51が押圧された際に周壁部52の部分が撓むことで、キートップ51と操作子53の軸線X方向への変位が可能となる。
【0042】
周壁部52の端部52aは、嵌合部55のフランジ状の当接部551に接続されている。
当接部551の内周面551aと、操作子53の端面53aは、軸線X方向の位置が同じである(図中、直線Lv参照)。
図6の(B)に示すように、ノブ5を、ケース3側の筒壁部35に取り付けた際に、操作子53の端面53aが、シール材6の表面61aに着座する。さらに、当接部551が、シール材6の表面61aと、筒壁部35の端面35aに跨がって着座する。
【0043】
図7に示すように、当接部551は、軸線Xに対して直交する向きで設けられており、周壁部52の外周を全周に亘って囲んでいる。周壁部52の外周には、筒壁部35に外嵌する筒状の嵌合壁552が設けられている。
嵌合壁552の先端側の内周には、前記した筒壁部35の係止溝351に係合する係合突起552aが設けられている。
【0044】
図7の(C)に示すように、係合突起552aは、筒状の嵌合壁552の内周の全周に亘って設けられている。
係合突起552aは、嵌合壁552の4つの角部のうちの対角線上に位置する2つの角部において、他の領域よりも軸線X側(内側)に大きく膨らんでいる。この膨らんだ領域が、ケース3側の係止領域352、352(
図5の(A)参照)に係合される係合領域554、554となっている。
【0045】
ノブ5の嵌合部55を、ケース3側の筒壁部35に外嵌して取り付けた際に、係合領域554、554と、係合突起552aが、ケース3側の係止領域352、352と係止溝351に係合する。
これにより、ノブ5の嵌合部55から脱落する方向(軸線X方向)の移動が阻止されるようになっている。
【0046】
図7の(A)、(B)に示すように、当接部551では、嵌合壁552とは反対側にリップ部553が設けられている。リップ部553は、周壁部52の外周を全周に亘って囲んでいる。リップ部553は、軸線Xに沿う向きで延びている。リップ部553は、嵌合壁552から離れるについて周壁部52の外周との間隔が広がるように、軸線Xに対して傾斜している。
【0047】
図2に示すように、スイッチ1をドアノブ90に設置すると、ドアノブ90側の筒壁部91が、周壁部52とリップ部553との間に挿入される。スイッチ1は、車両Vの表面に露出しており、雨水などの水分が作用することがある。
そのため、周壁部52とリップ部553との間に、ドアノブ90側の筒壁部91を挿入することで、水分のドアノブ90内への侵入を抑制するためのラビリンスシールが形成されている。
【0048】
図7の(B)に示すように、周壁部52の内側では、操作子53の外周と、周壁部52の内周とを接続するリブ54が設けられている。
本実施形態では、合計4つのリブ54が設けられている。4つのリブ54のうちの2つ(一対のリブ組)は、軸線Z上で操作子53を間に挟んで直列に並んでいる。4つのリブ54のうちの残りの2つ(一対のリブ組)は、軸線Y上で操作子53を間に挟んで直列に並んでいる。
【0049】
操作子53と周壁部52との間の空間S3は、これら4つのリブ54により4つの空間に区画されている。
リブ54は、キートップ51が押圧された際の操作子53の軸線X方向の変位が阻害されることがないようにするために、周壁部52よりも薄肉で形成されている。
【0050】
図8は、スイッチ1の動作を説明する図である。なお、
図8では、水分が凍結して形成された氷の領域に交差したハッチングを付して示している。
図8の(A)は、ドアノブ90にスイッチ1が設置された状態の断面図である。図中、軸線Z方向が、スイッチ1の車両Vへの設置状態を基準とした鉛直線方向である。なお、説明の便宜上、リブ54に代えて空間S3が現れる断面が示されている。
図8の(B)は、
図8の(A)におけるA-A線に沿ってスイッチ1を切断した断面図である。
図8の(C)は、
図8の(A)に示すスイッチ1のノブ5が押圧された状態を示している。
図8の(D)は、
図8の(C)に示すスイッチ1のノブ5が押圧された状態を示している。
図9は、比較例にかかるスイッチ100の場合を説明する図である。
【0051】
ドアノブ90に搭載されたスイッチ1は、ノブ5の操作方向(軸線X方向)が、略水平線方向となる。スイッチ1は、車両Vの外側面に露出しており、ノブ5の表面に雨水が作用する。
ノブ5では、周壁部52の外周を、リップ部553が囲んでいる。周壁部52とリップ部553との間に、ドアノブ90側の筒壁部91が挿入されているので、ドアノブ90内への水分の浸入が抑制されるようになっているものの、ドアノブ90内への水分の浸入を完全に阻止することは難しい。
【0052】
ドアノブ90内に浸入した水分は、毛細管現象により、ケース3側の筒壁部35と、ノブ5側の嵌合部55との接合面を通って、ノブ5の内部に侵入することがある。
前記したように、ノブ5の周壁部52の内側には、空間S3が形成されている。そのため、ノブ5の内部に侵入した水分が、空間S3内に溜まることがある。
空間S3内への水分の浸入は、ノブ5の押圧操作が繰り返される度に生じるので、場合によっては、空間S3内の総てが、浸入した水分で満たされることがある。
ここで、冬季などの低温環境下に車両Vが置かれると、空間S3内の水分が凍結して氷になることがある。
【0053】
図9に示すスイッチ100は、操作子53の周りにリブが設けられていない従来のノブ5Xである。このスイッチ100では、操作子53の周りにリング状の空間Sが形成されている。そのため、ノブ5Xの内部に浸入した水分が凍結すると、リング状の氷の塊が、ノブ5Xの内部に生じることになる。
この生じた氷は、リング状のひとつの氷の塊である。そのため、ノブ5Xが押圧された際のノブ5Xの変形が、リング状の氷の塊により阻止されるので、操作子53の軸線X方向への変位が阻止されて、スイッチ100のオン操作に支障を生じる可能性がある。
【0054】
これに対して、本実施形態のスイッチ1では、ノブ5の周壁部52の内部にリブ54が設けられており、ノブ5内の空間が複数の空間S3に区画されている。
そのため、ノブ5の内部に侵入した水分が凍結すると、複数の氷の塊がノブ5の内部に生成される。
【0055】
ここで、本実施形態のノブ5の場合、個々の氷の塊の大きさが、
図9に示すスイッチ100の場合に比べて小さいので、ノブ5を押圧する操作力で、簡単に砕くことができる。そのため、スイッチ1のオン操作が阻害される可能性が低くなる。
また、生成された個々の氷は、固体状態でも独立して変位することが可能である。また、氷を収容するノブ5は、ゴムなどの可撓性を持つ弾性材料で形成されているので、変位した氷に押されて伸張することができる。
よって、空間S3内の氷が凍った状態でノブ5が押圧されると、個々の氷がノブ5の周壁部52等を変形(伸張)させつつ変位する(
図8の(C)、(D)参照)。そのため、操作子53の軸線X方向に変位させるためのノブ5の変形が可能となる。これにより、スイッチ1のオン操作が阻害される可能性が低くなる。
【0056】
図10は、変形例にかかるノブ5A、5Bを説明する図である。
前記した実施形態では、ノブ5におけるリブ54の総数が4つである場合を例示した。リブの総数は、ノブ5内に生じた氷の変位が可能でノブ5の押圧操作が阻害されない範囲内で、任意で決定できる。
【0057】
例えば、
図10の(A)に示すノブ5Aのように、軸線X周りの周方向に等しい角で、放射状に並んだリブ54を採用しても良い。
このノブ5Aでは、操作子53を間に挟んで直列に並んだ2つのリブ54(一対のリブ組)が、軸線X周りの周方向に、同じ間隔で4つ設けられている。
そのため、周壁部52と操作子53との間の空間が、合計8つのリブ54により、8つの空間S3に区画されている。
【0058】
また、
図10の(B)に示すノブ5Bのように、ノブ5B内の空間を2つに区画するように、操作子53を間に挟んで直列に並んだ2つのリブ54(一対のリブ組)を1つ採用してもよい。
【0059】
何れの場合においても、操作子53を囲むリング状の1つの氷の塊を形成させずに済むので、スイッチ1のオン操作が阻害される可能性が低くなる。
【0060】
以上の通り、本実施形態にかかるスイッチ1は、以下の構成を有している。
(1)スイッチ1は、
タクトスイッチ4(スイッチ部品)を収容するケース3と、
ケース3に組み付けられたノブ5と、を有する。
ノブ5は、
タクトスイッチ4の操作方向(軸線X方向)で、タクトスイッチ4の被操作部41に対向配置された操作子53と、
操作子53を支持するキートップ51(被操作部)と、
操作子53の外周を間隔を開けて囲むと共に、キートップ51を操作方向に変位可能に支持する可撓性の周壁部52と、を有する。
操作子53と周壁部52とを接続する可撓性のリブ54を設けて、周壁部52の内側で操作子53との間に形成される空間を、複数の空間S3に区画した。
【0061】
このように構成すると、ノブ5内の空間が、リブ54により、複数の空間S3に区画されているので、ノブ5の内部に侵入した水分が凍結しても、1つの大きな氷の塊ではなく、分割された複数の氷の塊が生成される。
そのため、個々の氷の塊の大きさが、
図9に示すスイッチ100の場合に比べて小さいので、ノブ5を押圧する操作力で、簡単に砕くことができる。そのため、スイッチ1のオン操作が阻害される可能性が低くなる。
さらに、個々の氷は、固体状態でも独立して変位することが可能である。また、氷を収容するノブ5は、ゴムなどの可撓性を持つ弾性材料で形成されているので、変位した氷に押されて膨張することができる。
よって、空間S3内の氷が凍った状態でノブ5が押圧されると、個々の氷がノブ5の周壁部52等を変形させつつ変位する。そのため、操作子53の軸線X方向に変位させるためのノブ5の変形が可能となる。これにより、スイッチ1のオン操作が阻害される可能性が低くなる。
【0062】
また、
図11に示す特許文献1のスイッチ200の場合、操作子203の周囲に形成された氷(
図12参照)を、操作子203から剥がすためのリブ204が設けられている。
そのため、被押圧部201(ノブ)の押し下げに伴って操作子203が変位する際に、周囲の凍結物(氷)をリブ204で砕いて、剥がすことができるようになっている(
図12参照)。
【0063】
このスイッチ200の場合、棒状の操作子203の周りを囲むように氷が生成した場合、被押圧部201の押し下げに必要な押圧力が大きくなる。
また、操作子203の周りに形成された氷が、リブ204まで及んで形成されてしまうと、被押圧部201の押し下げに支障が生じる可能性がある。
さらに、リブ204で氷を剥がす仕様であるため、リブ204が経時的に摩耗する。その結果、リブ204の部分が摩耗して機能しなくなる可能性や、リブ204の部分が破損してしまう可能性もある。
【0064】
上記のとおり、本件発明のスイッチ1では、可撓性を持つ材料で形成されたノブ5内の空間が、リブ54により、複数の空間S3に区画されているので、ノブ5の内部に侵入した水分が凍結しても、1つの大きな氷の塊ではなく、分割された複数の氷の塊が生成される。
そのため、個々の氷の塊の大きさが、
図9に示すスイッチ100の場合に比べて小さいので、ノブ5を押圧する操作力で、簡単に砕くことができる。そのため、スイッチ1のオン操作が阻害される可能性が低くなる。
さらに、ノブ5が可撓性を持つ材料、例えばゴムで形成されているので、樹脂性のリブのように経時的に摩耗してしまうこともない。よって、内部に形成された氷を砕くことができるという作用が、経時的に大きく損なわれることがない。よって、長期間に亘って、安定的に使用できるスイッチ1となる。
【0065】
(2)タクトスイッチ4の操作方向(軸線X方向)からみて、リブ54は、操作子53の周囲に、軸線X周りの周方向に間隔をあけて複数設けられている。
【0066】
このように構成すると、リブの総数を増やすことで、ノブ5の内部に侵入した水分が凍結して生成される氷の塊の数を増やしつつ、個々の氷の塊の大きさを小さくできる。
これにより、操作子53の軸線X方向に変位させるためのノブ5の変形がいっそう容易となり、スイッチ100のオン操作が阻害される可能性が低くなる。
【0067】
(3)タクトスイッチ4の操作方向(軸線X方向)からみて、リブ54は、操作子53を間に挟んで直列に並んだ一対のリブ組(リブ54、54)である。
【0068】
このように構成すると、一対のリブ組(リブ54、54)が、操作子53の軸線Xに対して傾くことを規制する。これにより、キートップ51に作用する操作力で、周壁部52が弾性的に変位しつつ、キートップ51から延びる操作子53を軸線X方向に変位させる際に、操作子53が軸線Xに対して傾いた状態で、軸線X方向に変位することを好適に抑制できる。これにより、タクトスイッチ4のオン操作に支障が生じることを好適に抑制できる。
【0069】
(4)一対のリブ組(リブ54、54)は、タクトスイッチ4の操作方向(軸線X方向)に沿うと共に、操作子53の中心を通る軸線X周りの周方向に、間隔を開けて複数設けられている。
【0070】
このように構成すると、一対のリブ組(リブ54、54)の総数を増やすことで、ノブ5の内部に侵入した水分が凍結して生成される氷の塊の数を増やしつつ、個々の氷の塊の大きさを小さくできる。
これにより、操作子53の軸線X方向に変位させるためのノブ5の変形がいっそう容易となり、スイッチ100のオン操作が阻害される可能性が低くなる。
【0071】
(5)ケース3は、ノブ5の組付面に、タクトスイッチ4を露出させる連通孔30(開口)を有している。連通孔30は、組付面に取り付けられた可撓性を持つシール材6で封止されている。
操作子53は、当該操作子53が接触するシール材6を介して、タクトスイッチ4の被操作部41を、操作方向に押圧する。
【0072】
このように構成すると、連通孔30がシール材6で封止されているので、ノブ5の内部に浸入した水分が、ケース3内のタクトスイッチ4を収容する空間S2内に浸入することを好適に防止できる。
【0073】
(6)ケース3では、ノブ5の組付面に、シール材6を収容可能な凹部が設けられている。シール材6は、ケース3におけるノブ5の組付面と面一に設けられている。
【0074】
このように構成すると、シール材6から、ノブ5の周壁部52内に突出する部位がないので、ノブ5の軸線X方向の厚みを薄くできる。これにより、スイッチ装置の軸線X方向の小型化に寄与できる。
図9に示す従来のスイッチ100では、操作子53の外周を所定間隔で囲むガイド筒620が設けられている。このガイド筒620は、ノブ5Xの操作時に操作子53が軸線Xに対して傾くことを防止するために設けられている。
【0075】
スイッチ100は、ノブ5Xの押圧操作時に、変形したノブ5Xがガイド筒620と干渉することを避けるために、軸線X方向の大きさが大きくなる。
本願発明の実施形態に係わるスイッチ1の場合、操作子53は、リブ54を介して周壁部52で支持されているので、スイッチ100のガイド筒620に相当する部品を必要としない。
そのため、シール材6は、ケース3におけるノブ5の組付面と面一に設けることができ、これにより、スイッチ装置の軸線X方向の大きさを、スイッチ100に比して小型化できる。
【0076】
以上、本願発明の実施形態および変形例を説明したが、本願発明は、これらのものに限定されるものではなく、発明の技術的な思想の範囲内で適宜変更可能である。
また、スイッチ1が、車両ドアDのドアノブ90に設けられている場合を例示したが、例えば、雨水などの水分が作用する位置に設けられた他のスイッチであってもよい。
【符号の説明】
【0077】
1 スイッチ
2 基板
3 ケース
30 連通孔
31 壁部
32 側壁部
35 筒壁部
35a 端面
35b 外周
351 係止溝
352 係止領域
36、37 凹部
4 タクトスイッチ
41 被操作部
5、5A、5B ノブ
51 キートップ
52 周壁部
53 操作子
54 リブ
55 嵌合部
551 当接部
552 嵌合壁
552a 係合突起
553 リップ部
554 係合領域
6、7 シール材
61 基部
61a 表面
61b 対向面
610 薄肉領域
66、67 凸部
68 押圧部
69 接触片
90 ドアノブ
91 筒壁部
D 車両ドア
S、S1、S2、S3 空間
V 車両
X、Y、Z 軸線